各会計決算特別委員会第一分科会速記録第三号

平成十五年十月十七日(金曜日)
第十一委員会室
   午後一時三分開議
 出席委員 十名
委員長串田 克巳君
副委員長野田 和男君
副委員長河西のぶみ君
北城 貞治君
長橋 桂一君
野上じゅん子君
松村 友昭君
大河原雅子君
立石 晴康君
藤川 隆則君

欠席委員 なし

 出席説明員
出納長室出納長大塚 俊郎君
理事津島 隆一君
副出納長中路 有一君
副出納長宇藤 雅隆君
参事岳野 尚代君
参事関  敏樹君
主税局局長川崎 裕康君
総務部長菅原 秀夫君
税制部長三橋  昇君
参事関口 修一君
参事後関 治久君
課税部長吉田 勝武君
資産税部長山本 武志君
徴収部長小林 宣光君
特別滞納整理担当部長尾芦 健二君
収用委員会事務局局長山内 隆夫君
参事三枝 秀雄君

本日の会議に付した事件
 平成十四年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
  出納長室関係
   ・平成十四年度東京都一般会計決算(質疑)
  主税局関係
   ・平成十四年度東京都一般会計決算(質疑)
   ・平成十四年度東京都地方消費税清算会計決算(質疑)
  収用委員会事務局関係
   ・平成十四年度東京都一般会計決算(質疑)

○串田委員長 ただいまから平成十四年度各会計決算特別委員会第一分科会を開会いたします。
 本日は、出納長室、主税局及び収用委員会事務局関係の決算に対する質疑を行います。よろしくお願いいたします。
 これより出納長室関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十四年度東京都一般会計決算中、出納長室所管分を議題といたします。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○串田委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、これをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○串田委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で出納長室関係を終わります。

○串田委員長 これより主税局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十四年度東京都一般会計決算中、主税局所管分及び平成十四年度東京都地方消費税清算会計決算を一括して議題といたします。
 本件につきまして、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○菅原総務部長 先般の分科会におきまして要求のございました主税局関係の資料につきまして、ご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の平成十四年度各会計決算特別委員会第一分科会要求資料の一ページをお開きいただきたいと存じます。
 要求資料第1号、都税の当初予算額と決算額の推移につきましてご説明申し上げます。
 この表は、都税総額と主要税目の法人二税及び固定資産税、都市計画税の当初予算額と決算額について、平成五年度から平成十四年度までの十年間の推移をお示ししたものでございます。
 以上、簡単でございますが、要求のございました資料に関する説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○串田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○北城委員 平成十四年度の決算にかかわりまして、小規模非住宅用地にかかわる固定資産税、都市計画税の減免について、何点かお伺いさせてもらいたいと、こんなふうに思っております。
 まず、現行の固定資産税制とありますけれども、一つが地価が下がっているのに税負担が下がらない、そしてまた商業地等の税負担が特に過重となっている、そしてさらには仕組みが複雑でわかりにくい等々がさまざまな視点で指摘されているわけでございます。
 これは、ある意味では、バブルが崩壊をしまして急激な状況の変化があった、しかしながら固定資産税制そのものが十分に対応をし切れていなかった、そんなことなどかなと思わざるを得ないわけであります。したがいまして、その結果としまして、経営基盤が脆弱な中小零細事業者に負担が重くのしかかり、その経営を圧迫しているといわざるを得ないわけであります。
 そこで、私ども都議会自由民主党としましては、緊急の中小企業対策の一環としまして、東京都独自に中小零細事業者の過重な税負担を軽減するよう強く申し入れてきた経過があるわけでございます。その結果、平成十四年度に小規模非住宅用地にかかわる固定資産税、都市計画税の減免が創設をされたわけであります。そのご努力を高く評価をしたいと思っております。
 そこで、改めて、この減免の概要につきましてお伺いをしたい、こんなふうに思います。

○三橋税制部長 小規模非住宅用地にかかわります減免でございますけれども、現行の固定資産税制のもとで、特に過重となっております二十三区の非住宅用地の税負担を緩和いたしますとともに、極めて厳しい経済状況下におきます中小企業に対しまして、緊急かつ特別な支援を行う、そういう観点から平成十四年度の措置として実施をいたしたものでございます。
 その概要を申し上げますと、一画地の面積が四百平方メートル以下の非住宅用地のうち、二百平方メートルまでのいわゆる小規模非住宅用地で、個人または中小企業が所有するものについて、その申請に基づきまして、固定資産税及び都市計画税を二割減免するというものでございます。

○北城委員 平成十四年度の措置として措置をされた、こんなご答弁があったわけでございます。この減免措置というのは、単年度措置となっているわけでございます。なぜ単年度措置とされたのか。また同時に東京都は、平成十四年度に引き続きまして、平成十五年度もこの減免措置をされているわけでありますけれども、この理由につきましてお伺いをしたい、こんなふうに思います。

○三橋税制部長 小規模非住宅用地に係ります減免でございますけれども、お話しのとおり、平成十四年度の単年度措置として導入したものでございます。
 これは、現行制度の特例として実施するものでございまして、平成十五年度以降の取り扱いにつきましては、景気の状況、地価や税制改正の動向、都財政の状況等を勘案して判断することが適当である、そういうふうに考えたものでございます。
 また、平成十五年度に継続することといたしましたのは、極めて厳しい経済状況下におきまして、引き続き中小企業を支援することが必要であると判断したものでございます。

○北城委員 実は、私の住んでいる地元の荒川区なんですけれども、これは、小規模零細事業者が数多く集積をしている区であります。それぞれの事業者がその経営の維持のために、血のにじむような努力をされている区であります。そんな事業者の方々から、この減免措置によりまして非常に助かったと、こんな声がたくさん寄せられております。あえてご報告を申し上げたいと、こんなふうに思っております。
 そこで、平成十四年度及び平成十五年度の減免の実績、及び減免ということでこの適用を受けるためには、納税者の申請が必要であると思うわけでありますけれども、申請率はどのくらいか、あわせてお伺いをしたい。

○山本資産税部長 小規模非住宅用地にかかわる固定資産税、都市計画税の減免の実績でございますけれども、平成十四年度におきましては、減免額は約二百十三億六千万円でございます。これに係る人数は約十八万一千人でございます。申請率は八八・三%となります。
 次に、平成十五年度でございますが、十月随時課税の時点まででございますけれども、減免額は約二百二十億七千万円でございます。これに係る人数は十九万四千人でございまして、申請率は九三・三%でございます。

○北城委員 前年度と比較をしまして、申請率は五ポイントほど上がっておるわけでありますよね。ただ、やはり限りなく一〇〇%に申請率を近づけていく、せっかくの制度でありますから、これが必要なのかなあと私は思います。この周知につきましてどのような方法で周知をされているのか、ご答弁をお願いしたい。

○山本資産税部長 この減免制度の目的が十分達成できますように、各種広報媒体を活用いたしまして、制度や手続のPRを行うとともに、減免の対象となりますと思われる方に対しましては、直接減免申請のご案内をお送りいたしまして周知に努めてきておるところでございます。今後とも引き続き、きめ細かい対応を心がけ、制度の周知に努めてまいります。

○北城委員 今後ともぜひ周知のご努力をお願いしたい、こんなふうに思っております。
 そこで、平成六年からの七割評価につきまして争われた裁判で、最高裁の判決がこの六月に出されたわけであります。その概要を簡単に説明をしていただきたいのと、あわせて東京都はこの判決をどのように受けとめられておるのか、ご見解をお伺いをしたい。

○山本資産税部長 ご質問の裁判は、平成六年度の土地の評価について、東京都が評価基準に基づきまして、平成五年一月一日時点の地価公示価格の七割で評価いたしましたのに対し、原告が所有する土地は、平成五年中に三割以上の下落があったとして争われていたものでございます。
 本年六月の最高裁判決は、七割評価そのものは認めつつも、固定資産税における適正な時価とは、賦課期日であります平成六年一月一日時点の価格をいうものであるとして、評価額のうち、これを上回った分については違法であるというふうにしたものでございます。
 判決により、評価額を修正いたしましても、税額そのものには影響がないところではありますが、そもそもこのような問題が生じた背景には、現行の固定資産税制がバブルの発生、崩壊という大きな環境変化に対応できていないことがあると考えております。

○北城委員 ご答弁のとおりだと思います。やはりこの判決というのは、地価の下落が続いているのに、税額が高どまっているというような逆転現象に違法性を認めたわけであります。同時に、固定資産税制の抜本的な見直しを指摘した判決であると私は思っております。
 もちろん、東京都からの国に対する強い働きかけの中で、一日も早い抜本的な見直しが実現できますることを期待しておるものでございますけれども、やはりその間も、中小零細事業者は事業の継続のために血のにじむような努力をされているということも、否定でき得ない事実だと私は思っております。先ほども申し上げましたように、この減免措置というのは、事業の継続に大きな力添えになっているわけであります。
 そんなことを考え合わせますると、現在の中小零細事業者の状況を考えたときに、東京都がこの減免を来年度も継続しなかった場合には、中小零細事業者に与える経済的、そして心理的影響は極めて大きいものがあるといわざるを得ないと私は確信をしております。
 そうしますると、東京都の責任は、平成十五年度に引き続きまして来年度もこの減免を継続すべきであると考えますが、最後に、主税局長のご見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたい、こんなふうに思います。

○川崎主税局長 現行の固定資産税制は、バブルの発生、崩壊に伴う急激な地価の上昇、下落という環境変化の中で、その時々の改正を重ねてきました。結果として、先生ご指摘のとおり、地価の上昇、下落が著しかった二十三区の商業地等の負担水準が、全国と比べ高くなっているなどの問題点が生じました。
 こうした中で、小規模非住宅用地にかかわる減免は、過重となっております二十三区の商業地等の税負担を緩和するとともに、極めて厳しい経済状況下における中小企業に対し、緊急かつ特別な支援を行うために導入したものであります。
 一方、固定資産税は、都税の基幹税目の一つであり、また、なお不十分な点はあるものの、商業地等の負担水準の上限の引き下げなど、少しずつ制度改善が図られつつあり、全国と二十三区の負担水準の乖離も縮小してきております。
 来年度の取り扱いにつきましては、このような状況に加え、税制改正の動向、景気状況、都財政の状況等を勘案し、今後検討をしてまいります。

○北城委員 最後、要望とさせてもらいたいと思いますけれども、もちろん固定資産税につきましては、東京都の基幹税目、十二分に承知をしているところであります。ただ、どう考えても、固定資産税制そのものにやはり矛盾があるわけですよね。これが一つ。
 その結果としまして、中小零細事業者に対しましてその負担が過重にのしかかっている。やはり現行の社会経済状況等々を考えますると、減免の継続を措置するということが私は東京都の責任になるのかなあと思いますので、継続の要望を強くお願いをしまして、私の質疑を終了させてもらいたい、こんなふうに思います。

○河西委員 それでは、私の方からも何点か質問させていただきます。
 主税局は、都の財政状況は現在極めて厳しい中、唯一の歳入局として、平成十四年度には法定外目的税として宿泊税を創設したのを初め、さまざまな取り組みを行ってきているところだと思います。また、徴収面におきましても、徴収率のアップに向けた努力を重ねているということは聞いているところです。
 そこで、私は、課税、そして徴収の両面にわたる東京都の独自の取り組みを中心に、何点かお尋ねをさせていただきたいと思っています。
 まず初めに、地方税制は枠法である国の地方税法でほとんど決められておりますから、地方自治体の裁量は極めて限定をされているといえると思います。そうした中で、東京都は先ほど申し上げました宿泊税の創設を初め、どのような都独自の取り組みを行っているのか、税収確保につながるものあるいは減収となるものに分けてお伺いしたいと思います。あわせて、そうした施策の都税制における位置づけについても、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

○三橋税制部長 都独自の取り組みでございますけれども、まず、税収確保につながるものといたしまして、法人二税におきます超過課税、銀行業に対する外形標準課税、お話しのありました宿泊税などがございます。また、減収となるものといたしまして、小規模住宅用地に係る都市計画税の軽減、新築住宅や小規模非住宅用地に係る固定資産税等の減免などがございます。これらによる税収への影響でございますが、平成十五年度予算ベースで申し上げますと、増減税差し引きでトータル約八百億円の増収となっております。
 また、施策の位置づけでございますが、都の財源確保を図る一方、特定の政策目的を実現するための税制を活用することが有効な場合、あるいは東京特有の事情を踏まえ、特に必要と考えられる場合におきまして、納税者の負担を緩和しているものでございます。

○河西委員 今ご答弁いただきました増収関連の三課税、そして減収に関連する三つの減免措置の税金についてご答弁いただきまして、差し引き約八百億だというご答弁でした。
 今出ています、これ減免の方ですが、新築住宅の減免のお話がありましたけれども、ちょっとこれに焦点を当てて、何点かお尋ねさせていただきたいと思います。
 この制度は、そもそも新築住宅の取得を促進するということによって、結果的に景気対策になる、このことも目的の一つに置いてスタートした制度であるというふうに認識をしておりますけれども、景気が浮揚すれば税収確保にもつながるわけで、いい制度だというふうに思っています。活用も促進をされるということが大事だろうというふうに思っています。
 そこで、新築住宅の減免の趣旨と概要を、改めてここでお伺いさせていただきます。

○三橋税制部長 新築住宅に対する固定資産税、都市計画税の減免でございますが、新築住宅の取得を税制面から支援し、景気対策や良質な住宅ストックの形成に資することを目的といたしまして導入したものでございます。
 その概要ですが、新築住宅について、新たに固定資産税、都市計画税が課される年度から三年間、税額の二分の一ないし全額を減免するというものでございます。
 また、適用対象については、当初、平成十二年一月二日から平成十五年一月一日までの間に新築された住宅としておりましたけれども、昨年、厳しい経済状況等にかんがみまして、一年間延長したところでございます。

○河西委員 それでは、この減免による実績についてどのようになっているか、お答えをいただきたいと思います。

○山本資産税部長 新築住宅にかかわる固定資産税、都市計画税の減免実績でございますが、初年度に当たります平成十三年度は九万七千件でございまして、減免額は約八十億円でございました。平成十四年度は十八万四千件で、約百五十一億円、平成十五年度は二十七万三千件で、約二百二億円となっております。

○河西委員 十二年度一月一日時点から対象物件が決まって、十五年度の額が、三カ年間の対象物件の積み重ねになると思いますが、二百億ぐらいだと。一年間延長されていますので、その結果十六年度の減免額も生じてきますけれども、参考数字として約二百億円強という影響額が予測できるわけでございます。
 この施策の効果についてなんですが、趣旨、目的と照らして、東京都はどのように評価されているのか、次にお伺いしたいと思います。

○三橋税制部長 住宅産業でございますけれども、関連産業が非常に多岐にわたっておりまして、すそ野が広い産業でありますことから、経済波及効果は極めて大きいというふうにされております。二十三区の新設着工戸数は、減免する前の平成十一年には約十万四千戸でありましたけれども、減免制度が創設をされました平成十二年には約十一万九千戸、平成十三年には約十一万三千戸、平成十四年には約十二万四千戸と増大をいたしてきております。
 住宅ローン金利が引き続き低水準にございまして、また、工場跡地等が分譲マンション用地として供給されるようなそういった状況がある中で、相前後して拡充をされました所得税の住宅ローン減税などとあわせまして、本制度は景気対策としての効果を上げているものと考えております。

○河西委員 今、住宅の着工戸数の増加傾向の数字をいただきながら、景気対策として効果あり、こういうご答弁をいただいたところです。この固定資産税、都市計画税の減免制度だけで景気対策上の効果が上がっているということではないというのはそうだと思いますけれども、実は事前に調査した数値から見ましても、この住宅の着工戸数の変化は、この制度のスタートであります十二年度から急増して、前年度の十一年度と比べるとかなりの戸数が増加をしているという、そういう数字もございます。減収にはなりますけれども、景気対策としての効果は、都がご認識のように上がっているというふうに私も認識をしているところです。
 ところで、この施策が都内二十三区のみ対象だということでございますけれども、施策の効果が及ばない市町村においても、都は何らかの配慮をしてほしい、こういうご要望もあるやに聞いておりますけれども、こうした要望について、現時点で東京都はどのようにお受けとめになっていらっしゃるのか、その点についてお尋ねいたします。

○三橋税制部長 新築住宅減免につきましては、当初、都内の市町村が同様の措置を講じた場合には、市町村調整交付金として、減収額の二分の一の金額を助成することを検討した経緯もございましたけれども、各市町村の財政状況が非常に厳しい中にありまして、減免を実施したところはなかったというふうに伺っております。
 市町村が減免を行うかどうかということにつきましては、基本的には課税権を有しております各市町村が判断するものでございますけれども、いずれにいたしましても、きょうのご意見のご趣旨等につきましては、所管局の方にお伝えをしてまいりたいというふうに考えております。

○河西委員 わかりました。この問題、最後に税源移譲との絡みもございますので、今のご答弁受けとめて、次に移りたいと思うんですけれども、減免の今後の扱いについてでございます。
 都財政が厳しい中で、固定資産税、都市計画税が貴重な財源であるということは、税収の内訳を見ましても承知をしております。しかしながら、この施策は住宅建設促進に大きく貢献している。したがって、景気は一部で持ち直しの動きがあるといわれておりますけれども、私が耳にする中小企業の状況は依然として厳しいというふうに思います。やはり引き続き景気への配慮が必要でありますから、この制度をぜひ継続をしていただきたい、そういうふうに考えますが、いかがでいらっしゃいましょうか。

○三橋税制部長 新築住宅減免は、景気対策としての効果を勘案いたしまして、期限を区切って実施しているものでございます。平成十六年度のあり方につきましては、景気の状況、都の税収状況、施策の効果等を勘案いたしまして、今後検討してまいります。

○河西委員 制度の趣旨、目的を勘案されて、最終的には政策判断ということになろうかと思いますけれども、ぜひ継続の方向でのご検討をお願いしておきたいというふうに思います。
 続いて、今度、徴税率、徴収の問題で一、二、お尋ねをさせていただきたいと思うんですが、都税の徴収率の向上についてです。都税の徴収率は、平成七年度に九〇・四%であったものが、十四年度決算では九六・二%まで向上をしてきています。また未納となって翌年度に繰り越される滞納金についても、かなりの圧縮がされているようでございますが、この間、どのような取り組みを行っていらっしゃったのか、お伺いをさせていただきます。

○小林徴収部長 徴収率の向上と滞納繰越額圧縮の取り組みについてでございますが、徴収部門では、督促状の発付後、早期に文書、電話による催告や夜間、休日を含めた積極的な臨戸、臨場を行っております。
 それでもなお納税がされない場合、納税資力のない方には、徴収緩和措置を講じる一方、資力がありながら納税に協力いただけない場合には、財産調査の上、差し押さえし、最終的には公売を行うなど、強力な滞納整理を行ってきたところでございます。
 また、組織も、職員個々の判断で催告から差し押さえまで担当していた自己完結型から、催告、差し押さえ、公売など、処理段階に応じて担当者がかわる機能分担型へと改めました。その結果、事案の内容を組織全体で把握でき、困難案件についても職員個人に滞留することなく、計画的に処理が促進されてまいりました。
 さらに、民間に倣った目標管理方式を導入し、各組織や職員が達成すべき数値目標と時期を具体的に定め、その確実な達成に向け、進行管理を徹底することなどにより、滞納額の圧縮と徴収率の向上を図ってきたところでございます。

○河西委員 今、この事務処理、徴収の方法につきましても、従来の自己完結型から機能分担型に改める、あるいはその目標数値を決めて目標管理方式に改める等々の改善策を講じて、徴税率のアップにつなげてきたということでございます。
 その結果、この間の徴税率、徴収率のアップは、税収への効果額としてはどの程度になるのか、数字を示していただければと思います。

○小林徴収部長 平成七年度の徴収率九〇・四%を、平成十四年度には九六・二%まで引き上げることができました。この間の都税調定額が四兆円前後で推移しておりますので、この収入率のアップは、おおよそ二千三百億円の税収増に寄与したことになると考えております。

○河西委員 ご努力の結果、二千三百億円の税収増になってきたということでございます。よく一%四百億円と、こういわれていますので、換算しますとそういう数字になるかなというふうに思いますが、私も東京都が頑張っているという話は、他県なり政令市等からも耳にしたことがございます。何か近く東京都がお声をかけて、都の施設を使ってシンポジウムでしょうか、フォーラムでしょうか、徴税率アップのためのフォーラムを開くというお話も聞き及んでおりますけれども、ぜひ東京が先頭になって、他県にも参考にしていただけるような形で取り組んでいただきたいし、逆に、他の道府県からも参考になるアイデアが出されるかと思いますので、引き続き、この徴収率のアップにはご努力いただきたいというふうに思っています。
 ただ、既にもう九六・二%ですか、一〇〇%が目標でしょうけれども、なかなかこれを一〇〇に上げるというのは大変なことだろうというふうに思うんですね。引き続きアップをお願いするんですけれども、私は、基本的には、東京都の財政が好転するためには、先ほどちょっと触れましたけれども、税源移譲の問題が不可欠だというふうに思います。現行の国と地方との税源配分を見直して、税源の移譲を図っていくということが必要だということは、私から申し上げるまでもないと思います。
 先ほど、新築住宅の減免制度の多摩への適用の話もちょっと触れましたけれども、自主自立の財政基盤の確立というところからいきますと、今ご報告あったとおり大変厳しいそれぞれの市町村の財政状況から、二分の一を持ち出して、二分の一援助いただいても、なかなかこの制度の適用に踏み切れなというのはそのとおりだろうというふうに認識をしています。
 そこで、経済、財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三では、十八年度までを目途に、税源移譲、地方交付税、国庫補助金の三位一体の改革によって、地方税財政制度の改革を進めていくということが明記をされました。しかし現実は、その具体的な道のりは極めて不透明であるというふうに認識をしています。
 東京都は、税源移譲が進まない理由についてどのようにお考えになっているのか、ご見解を伺いたいと思います。

○三橋税制部長 現在、国におきましては、地方税財政制度につきまして、お話しのとおり、税源移譲、地方交付税、国庫補助負担金の三位一体の改革を行うことといたしております。
 しかしながら、財務省は、国の財政再建を優先いたしておりまして、税源移譲そのものには反対をいたしております。また、国庫補助負担金を所管する各省庁はその削減に抵抗するなど、国の壁が依然として厚いというのが実情でございます。

○河西委員 この税源移譲につきましては、地方自治体の自主自立の財政運営の確立には不可欠であるということを重ねて申し上げるんですけれども、地方分権あるいは地方主権、市民自治、これはひいては地方の再生であり、東京の再生であり、日本社会の再生につながっていくと私は確信をしているところなんです。
 そこで、最後にお伺いいたしますけれども、東京都は税源移譲の実現に向けまして、これまでどのような取り組みを行ってきたのか、また今後どのような取り組みを行っていくつもりか、決意も含めてお伺いして、私の質問を終わりたいと思いますが、よろしくお願いします。

○川崎主税局長 これまでも税源移譲、国への提案要求の最重点事項の一つとして位置づけ、税源移譲を速やかに実現するよう国に強く求めてきました。また、最近の国における三位一体改革の論議に対しましては、あくまでも税源移譲を基本とするよう都税調において緊急提言を行うとともに、大阪府と共同で、あるいはまた八都県市で連携してアピールを出すなどの取り組みを行ってまいりました。
 今後とも、全国の自治体とさらに連携を図るとともに、都議会のご協力もいただきながら、積極的に取り組んでまいります。

○松村委員 銀行税について一、二質問したいんですが、この平成十四年度決算、すなわち二〇〇三年、平成十五年の一月三十日に高裁判決が出たわけですが、この判決で敗訴になった唯一の点、均衡要件についてどのように検討したのか。つまり、地方税法第七十二条の二十二の第九項、従前の課税標準及び税率による税負担と著しく均衡を失することのないように条例制定をすることが要求されているというふうにこの条文は解釈されると思いますけれども、ですから当然、条例制定に当たってこの点を検討したと思いますが、主税局所管局では、この均衡要件について、導入時にどのように検討したのかを伺いたいと思います。

○三橋税制部長 地方税法におきましては、今お話がございましたように、外形課税を行う場合には、その税負担は、所得課税による場合の税負担と著しく均衡を失することのないようにしなければならないとされているわけでございます。
 これは、一定期間におきます所得課税を行った場合の負担と外形課税を行った場合の負担とが著しく異ならないことをいうものというふうに考えておりまして、この考え方は、地方税法の所管官庁でございます自治省の公式見解でもございます。
 こういった考え方に基づきまして、当時の銀行業の税収動向がバブル期を挟みまして極めて不安定でありましたことから、バブル前、バブル期、バブル後を含めました過去十五年間の平均税収の実績をもとに、税率を算定したものでございます。

○松村委員 いや、その答弁、それはもう何度も聞いていますけれども、それじゃちょっとわからないというか、じゃそれがどのように--今いった平均の税収をとったものだということですけれども、それと新たな条例で課税しようというのが著しく不均衡じゃないというふうに、どうやって証拠立てたのかというか、立証したのですか。

○三橋税制部長 ただいまご答弁申し上げましたように、地方税法第七十二条の二十二第九項のその均衡要件というものの解釈でございますけれども、高裁判決のいっている内容は内容といたしまして、当時から一貫して自治省が行っております解釈あるいは私どもの解釈といたしましては、先ほどご答弁申し上げましたように、一定期間におきます所得課税による負担と、外形標準課税による負担とが均衡していればいいんだ、こういった考え方に基づきまして、そういった考え方に基づいて税率を算定したということでございます。

○松村委員 もう少し具体的に、私、裁判の判決も改めて読ませていただきましたけれども、一審被告東京都の公式の説明の要旨はというんで、判決文にその中身触れてありますよね。それは、東京都は昭和五十九年度から平成十年度までを選択して、その間における大手銀行三十行の一審被告東京都における法人事業税の税収実績、これはこの間年間平均額が約千八十億円ですか、それで、今度新たに業務粗利益、昭和五十五年から平成十年度までの間の千八十八億円、それとその額を今度新たな業務粗利益の三%で、その額がつまり不均衡になっていない、均衡しているんだということを立証したというか、それを示したということですか。

○三橋税制部長 繰り返しになりますけれども、税率を設定するにはどうあるべきかにつきましては、お話しのように、地方税法第七十二条の二十二第九項に、均衡を失しないようにし、定めなければならないというふうにされておるわけでございますけれども、具体的にどういうふうに税率を設定すべきかということにつきましては、当時の私どもの考え方としましては、過去の一定期間の平均税収をもとに税率を算定すればいいんではないか、こういうふうに考えてきたわけでございまして、その考え方も、繰り返しになりますけれども、従来、国の方でとっております考え方、昔からの立法例でございますとか、昭和五十二年の全国知事会の外形標準課税導入試案を考えたときの税率設定の考え方も、そのときは過去五年間の平均税収で税率を決めておりますけれども、それと同じように、私どもとしましては、バブル期を挟みました十五年間の平均税収、これとイコールになるように税率を設定をしたということでございます。

○松村委員 当然所管局だから、しかも裁判もやっているわけですから、よくその判決文だとか、一審含めて高裁判決でも分析していると思われるんですよね。
 特に、高裁判決ではほぼ勝利したけど、この均衡要件の点での、ただ一点の敗訴だというふうに私も思うんですよね。それがだからどうして敗訴になったのかという点では、著しく均衡を失してはならないという点を、どういうふうに、当然法律をつくるプロの専門家ですから、今いった自治省の見解だとか過去のといいましたけれども、それが平均十五年間でこういう税収を払っていたから、今度正しいと認められた業務粗利益にとってみれば、それが三%だったということだけじゃというか、余りにも法律というか条例をつくる側にとってそれでいいのかというか、もう少しいいますと、いやもう少し具体的に検討しているんですよ。
 そのときに、つまり、全法人事業税のその間の十五年間の、銀行、例えば三十行なら三十行が払ったこの割合、それを比較して、今度新たな条例で業務粗利益の三%とした場合、その全法人事業税に占める割合が均衡しているんだと。裁判の判決で私何度も読ませていただきましたけれども、一審被告東京都の全事業税額のうち、資金量五兆円を超える銀行三十行が納付した事業税額の占める割合の、昭和五十九年から平成十年度までの平均が約九・八%あるのに対して、本件条例が適用された初年度、つまり平成十二年度の確定申告額約一千二十九億円が一審被告東京都の全法人事業税額に占める割合が九・六と。だから、全法人事業税に占める銀行三十行の過去の平均が九・八%、それから今度直近でやってみた、均衡に著しく失しない--九・六%だから、この納税額の割合で比較したら、均衡要件に合致しているんだと、こういうふうに東京都はそれを証拠立ててというか説明したということでしょう。だから今部長さんがお答えになっているよりもっと判決の方が、具体的に東京都が何を均衡してないか、政府のあれだとかということじゃなくて、唯一銀行税を条例化しようとしたときに、この附則の、第七十二条の二十二の第九項、これも合致しているんだというんで、証拠立ててやったのがこのことだって書いてあるんですよ、判決に。そうじゃないんですか。

○三橋税制部長 そういう意味で、お話しのとおりでございまして、簡潔にご答弁申し上げるという趣旨で余り申し上げなかったわけでございますけれども、今お話しのとおり、過去数年間の平均税収をとるということだけではなくて、全産業の事業税収に占める割合、銀行業の大手銀行の全事業税収に占める割合が過去十五年間の平均で見ますと、九・八%に相当しておるということでございます。それで、十二事業年度から課税を始めたわけでございますけれども、その平均でとってみましても九・六%ということですから、そういう意味でも均衡要件に合致しているというふうに、高裁の裁判の中でもそういった主張をいたしております。
 そのほか細かい話も出ましたので、もう少し申し上げますと、例えば、収入金額課税法人との比較もしなければいけないだろうということで、収入金額課税法人につきましては、赤字法人でありましても外形標準課税を導入しているということで、相応の事業税負担をしておるわけでございますけれども、銀行業につきましては、七割を超える銀行業あるいは訴訟行でついていきますと、十七行中十六行が赤字法人で税負担を一銭もしていない、そういう状況の中にございます。同じ金融類似事業でありながら、片や大銀行は負担を免れ、生命保険業あるいは損害保険事業につきましては相応の負担をしているということは、これは不均衡である、こういった主張でありますとか、あるいは全産業と業種別の数値を比較いたしまして、銀行の業務粗利益に相当する一般の法人につきましては売上総利益をとりまして、それと税負担とのバランス、相関関係を見ましても、業務粗利益なり売上総利益が現状維持なり伸びていながら、税負担が減少しているのは銀行業だけである、こういったようなデータもお出しをしているところでございます。

○松村委員 ところが、その判決では、ただそれ一点だけでは均衡要件を失しないという証明にならないというふうに判決されているんですよね。その判決が挙げているのは、例えば、さらに本件条例が銀行業という特定の業種に限って外形標準課税を導入するものであることから、一審被告東京都の全事業税額において大手銀行の事業税額の占める割合という観点からの検討が行われたことは理解できないわけではないがって、それは評価しているんですよ。
 一方、平成二年度から平成十一年度の間に、事業活動価値基準、物的人的基準、給与基準といった他の外形基準によって推計した資金量五兆円以上の銀行の事業税額は、一審被告東京都の全事業税額に占める割合の平均値はおおむね二%であるとの推計があり、一審被告東京都が主張する九・六%ないし九・八%という、さっきの数字ですよね、割合と相当乖離があることも考え合わせると、一審被告東京都が過去の実績から割り出した、一審被告東京都の全事業税額に占める大手銀行の事業税額の負担割合だけから、本件条例により一審原告から--受ける税負担が所得を課税標準とした場合の税負担と比べて、著しく均衡を失していない税負担となっているものと認めてよいか疑問の残るところである、こういう判決の指摘なんですよね。この点においてはどうですか。

○三橋税制部長 高裁判決がほとんど東京都側の主張を認めながら、唯一税負担の均衡のところだけを問題にしたわけでございますけれども、そこの最も大きなポイントはどこかというふうに申し上げますと、今委員のいったところというよりも、むしろ将来の税負担と比較をして、その立法時から見て将来の負担でございますけれども、将来の所得課税による負担と外形標準課税による負担、これを将来予測をしろといっておりまして、将来の二、三年後の所得課税による負担を予測し、外形標準課税による負担を予測して、それをしっかり予測をして、その二、三年の比較を基本として比べろ、こういうふうにいっております。
 ところが、我々としましては、もちろん将来の予測というのは、一般概括的に税収予測もしておるわけですから、ある程度はわかるにしましても、将来の法人税収、所得課税の税収を正確にこれを予測することは困難ではないかということが一つあります。
 それから、仮に、所得とそういうふうに比べるにしましても、判決におきましては、既に平成十二事業年度と平成十三事業年度というものが実績としてもう申告納付をされておりますので、そういった将来予測といいながら、実際はその実績を比較している。その実績の比較も、先ほどもちょっとご答弁申し上げておりますけれども、訴訟行十七行のうち十六行が赤字法人で、具体的な所得税負担がゼロというような年度もございます。そのゼロと外形標準課税の一千億オーダーの税負担を比較して、三千何倍でありますとか、ほとんど無限大に近いような数字を挙げて、それを著しく均衡を失している可能性が高い、出発点はそこでございまして、そもそも十七という標本数があって、十六がゼロというようなものの税負担を比較する仕方として、ゼロがいっぱい入っているものを比較していいんだろうか、そこに根本的に高裁判決の誤りがあるんだろうと私どもは理解をしておるわけでございまして、そういった意味で、そういった土俵の上に立って高裁判決が立論されておるわけでございますけれども、そういった土俵の中で論証が不十分だというのは、私どもとしては到底受け入られるものではないというふうに考えておりますし、委員のおっしゃった合理的納税シェア二・数%というものにつきましても、我々は控訴審判決を受ける前に、その中で反論もしておりまして、そもそも二・数%という数字自体に問題があるというふうに抗弁をいたしております。
 特に、税負担のところ、先ほど申し上げました全事業税収に占める九・八%ですとか、九・六%というのは、具体的に税負担をしているもの同士の比較でございまして、そういう意味では、現在、事業税の約半分は赤字法人ということになっております。
 ところが、合理的納税シェアで、銀行側が主張し、誤って高裁判決が採用した二・数%が一点正しいだろうというふうにして引用している部分につきましては、赤字法人も含めた全法人の従業員の給料ですとか、付加価値ですとか、そういったものを持ってきておりまして、到底比較をしてはいけないものを比較している、こういうことでございまして、そういったことにつきましては、我々は非常に高裁判決には問題があるんだということで、上告受理申し立て理由書の中にもそういったことを整理をして主張しているところでございます。

○松村委員 判決を不当判決だというような一点だけからも、今いった議会の答弁というのは記録に残るから、後でよく私も検証したいけれども、私は何度もこの裁判--それはだから私たちもいい分があったから、それに沿って検証し直してみたけれども、やはりつかれているところはつかれているから、きちっとそれに対して、私たちだって条例つくって賛成したわけですから、これ検証されるというふうに思うんですよ。そういう立場からいっているんですけれども、部長さん、どの程度読んで総合的に所管局として検討されたか定かじゃないから、私はそれも聞きたいんですけれども、今のような答弁よりも、例えば、どの程度になれば著しく均衡を失することにならないかどうかというのは、具体的な線引きをすることは困難であり、結局のところ総合判断によるしかないということまでいっているんですね。東京都のこの今いった業務粗利益の三%、過去の十五年間の平均税収、そのことを問題にしているんじゃないという非常に慎重に丁寧にいいながら、じゃどういう点が総合的な判断なのかということをいろんな形から逆に検証しているんですよね。
 もう一つお聞きしたいのは、東京都の過去十五年間で業務粗利益のその水準の税収を得るためには、業務粗利益の三%というその直近の--しましたけれども、銀行側から、銀行協会から、もしそれが妥当だとするならば、過去に納めた銀行側が、一審被告東京都が根拠として挙げている過去十五年間の数値について、仮に大手銀行十九行の昭和五十五年度から平成十一年度までの一審被告東京都に納付済みの事業税額をもとに、本件条例でとられている業務粗利益掛ける三%の計算式に当てはめて事業税額を推計すると、昭和五十五年度から平成十一年度までの間の事業税約三千八百億円が支払い超過となっており、その大半は平成六年度から平成十一年度までの間に生じているとの反論がなされていると。だからそういうことまで、反論に対して東京都がきちっと、そういう反論があるということは、当然予想されているわけですよね。つまり今のが妥当だと。当然銀行側が不良債権後の所得利益でやったら限りなくゼロに近づいちゃうと。現にその時点でも少なくなっていると。それを業務粗利益の三%が妥当だというふうにしたら、逆にそれが銀行側にとってみては、過去そんな、東京都がそれでいくんだったら三千八百億円もの支払い超過になっている、これどうなんだというふうな、銀行側から反論があると。裁判でもこの反論をそのまま採用することはできないが、少なくともこうした推計が可能であること自体から見れば、一審被告東京都においても、過去十五年間の主要銀行三十行の既納付の事業税額をもととして、これら各年度ごとに本件条例の課税標準及び税率で再計算して推計した事業税額を算出することが可能であり、これらを比較することにより、一審被告東京都の立場から見れば、どの時点からはともかく、本件条例の適用年度以前から望ましい事業税額になっていたかが判明するはずであると、そういう検討もなされていないんじゃないかということも具体的に指摘しているんですよね。
 この点については、こういうふうに裁判からも銀行側からも、既に全国銀行協会からですか、都の答弁、説明に対して七つの疑問点というのが出されて、それも裁判では証拠採用されているんですよね。しかし、それすら東京都は具体的な検証、当の銀行からこんな疑問があるということを、当然だからそういうこともやってしかるべきじゃなかったのかというふうな裁判所の指摘があるんですけれども、この点についてはどうですか。

○三橋税制部長 今の、委員から三千八百億円のお話がございましたけれども、この三千八百億円の指摘は、私ども所管局としましては、高裁判決が大きな誤りを犯している、単純ミスを犯しているんじゃないかというふうに認識をいたしております。三千八百億円というのは、銀行側の主張は主張として、正しいかどうかはわかりません、事実の問題として、銀行側の主張は主張としてわかるわけでございます。
 どういう主張かといいますと、仮に、業務粗利益三%で過去十五年間計算をしてみたら、本来、過去十五年間所得課税で払っていたわけでございますけれども、それをそっくりそのまま外形標準課税でやりますと、三千八百億円払い過ぎになっちゃいますよと、こういう主張を銀行側はしたわけでございます。それは高裁にも書いてありますが、根拠が定かじゃありませんから、その真偽のほどはわかりませんけれども、仮に三千八百億円が正しいといたしましても、我々としましては、三千八百億円が払い過ぎだというのは、過去において払い過ぎだということでございますので、ということは、三%の税率は結果として、我々としては、その低い一千億オーダーの税率を定めたわけでございますから、我々の立場からすると、むしろ税率を控え目に設定をしたことになるということにほかならないんだと。要するに、我々は過去十五年間の平均税収で三%というふうに設定して、それが約一千八十八億円だったわけでございますけれども、銀行側は、それをそっくり三%の業務粗利益で計算すると、一千八十八億円よりも多く負担をするようになってしまいますよということをご指摘したわけでございます。
 そういう意味では、我々は、もしそうであれば、その率というのは、最終的には三%よりももっと高くてよかったのかもしれないけれども、過去十五年間の平均税収でそれなら穏当だろうということで、やや控え目な数字を示したということに結果としてはなるんではないか、そういう主張をしたわけでございます。
 ところが、高等裁判所は、どこをどう勘違いしたのかちょっとわかりませんけれども、その辺は意味不明のくだりでございまして、その三千八百億円支払い過ぎというところを誤って理解をしているんじゃないかと思います。
 それから、繰り返しになりますけれども、高裁判決はいろんな諸事情を総合的に判断をするというふうに一般的にはいっておりますけれども、現実具体的に例を引いておるのは、先ほど繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、導入した平成十二事業年度、それから平成十三事業年度の具体的な所得税による税負担と外形標準課税による税負担とを、それも訴訟行だけ、ゼロ負担も含めた単なる数字遊びとしか思えないような数字をあげつらいまして、三千何倍だとかそういうことを、通常であれば、三千何倍なんて引用するということは考えられないわけでございますけれども、それもあえて引用して、で、著しく均衡を失している可能性が高いといい、あるいは全然別のところでは、明らかに均衡を失しているというふうに断定的に書いている部分もございますので、これは、委員がおっしゃっておられるようなところよりも、むしろ本質はどこにあるかといいますと、将来の税負担を的確に予測をして、その将来の税負担、外形標準課税による負担と所得課税の税負担とをきちっと比較をしろと、将来をですね、過去じゃないんだ、将来だといっているところに高裁判決の大きな誤りがあるんだというふうに認識をいたしておるところでございます。

○松村委員 それは違いますよ。しかも、これも、少なくともこうした推計が可能であること自体から見れば、一審被告東京都というか、逆に、私はこれを見て、からかわれているというか、その均衡要件があるにもかかわらず、それを本当に具体的に検証していない。つまり、法律というか条例をつくるわけですから、それに耐え得るものの検討の証拠というか、出されていない。だからそういうことなんですよ。
 それから、部長は一生懸命将来なんか推計できないと、そこで逃げ込むといっては失礼ですけれども、そこをいっている。そこもよく読みました。でも、著しく不均衡になるかどうかというのは、それは今までの所得税による課税標準とする場合と、外形による標準が、過去それから直近においても、またその後の将来においても、ということを検討するというか、それはだから当然ではないでしょうかというあれなんですよ。将来が予想されることだけで、三千何倍というそんなこともいえるじゃないかという指摘も確かにありますよね。でもそれはだって、不良債権処理をやるんだから限りなく低くなってしまって、今部長さんおっしゃるような、それは前に比べたら、ゼロから今度新しく業務粗利益の三%掛ければ、それは相当の差が出るということは、それはもう想定されているというか、それがだからできていないからなんということだけを、私はこの裁判の判決からは読み取れないわけですよ。
 そこも含めた検討が一つは導入時になされていたのかという点で、具体的な証拠立てたのが、唯一今いったみたいに全法人事業税に占めるその割合が何%、今度は業務粗利益の三%で掛けた場合には、それがさっきいった六%か七%で均衡を失してないというその一点しか出していないから、それではその七十二条二十二の項目ですね、九項についての問題点で立証されていない。大体条例をそもそもつくる側に、積極的に九項にも適用しているんだということをやっぱり出さなきゃいけない責任がある。それが全くやられていないからだということにほかならないんですよ。だから、将来の点がまだ資料というか、実際銀行側がどういう決済になるかわかりませんから、それ予測できないというだけのような単純な判決の仕方には私はなっていないというふうに、ぜひこれ--そういうことを今部長さんお答えですけれども、それは主税局全体で、また弁護団なんかも含めて、そういう見解に立ったんですか。だったら徹底的に、なぜそんな和解というか、政治判断じゃない、後でいう、なぜそれが〇・九%になったのかと、私、決算だから、余り和解までさかのぼっていいたくありませんけれども、そういう結論になったのか。そこまで不当でとんでもないということは、一主税局さんや今全体の検討した結果をここで述べているんだったら、もうとんでもない、からかわれていたとか、そういう判決だったら、なぜそういうことを主張して争わないんですか。そういうのに都民を代表して、都民を代表してというか、屈したんですか。
 私は、だから、この判決をもう何回も何回も読ませていただきましたけれども、要するに検討されていないと。それが立証できていないということなんですよ。もう少しもしあれだったら具体的に証拠というか資料を出してくださいよ、導入時に主税局が。本当にそれを検討してあるんだったら、私は全然認識を変えたいと思いますけれども、だって少なくとも裁判という場の中で証拠採用して出したときに、こういう判決が出されるということにおいては、正直な話、後でも触れたいですけれども、検討過程における密室性というか、そういう点にも深くかかわりのある問題だというふうに私は認識持っていますから、そういう点を今るるいったわけですけれども、その点についても答弁を……。

○三橋税制部長 主税局の名誉のためでございますので、繰り返しになるかもしれませんけれども、ご答弁をさせていただきたいと思います。
 まず、証拠不十分、説明不十分だったんではないかということでございますけれども、それからほとんど証明していないんじゃないか、事実を出していないんじゃないかと、こういうお話もありましたけれども、決してそんなこともありませんで、我々としましては、委員もおっしゃっておりましたけれども、過去十五年間の平均税収と同一の税率を定めたというだけではなくて、全事業税収に占めます銀行業の税収の割合、これも過去の十五年の平均九・八%と、導入した初年度というものは、それが九・六%でおおむね合致しているんですよという。
 裁判所の高裁判決を読みますと、たかだかそこだけしか検討していないように受け取られる表現になっておるわけでございますけれども、結果として、残念ながらその証拠として採用されなかったということだけでございまして、我々としましては、先ほども申し上げておりますけれども、生損保業、生命保険事業でありますとか損害保険事業につきましては、収入金額課税ということで、赤字でありましても相応の事業税負担をしていると。これに対しまして、同じ金融類似業であります銀行業がほとんど七割以上が赤字で、これも繰り返しになりますけれども、訴訟行十七行のうち十六行までが赤字だと、全然税負担をしていないと、これは均衡を失しているんじゃないかというような主張。それから、他の業種との比較の数字も挙げて、業務粗利益と売上総利益との相関関係で税負担がどうなっているかということも示しておりますし、そういったことで、我々としては主張できることは主張していて、結果的に採用されなかったということが一つです。
 それから、東京高等裁判所が第七十二条の二十二の九項というものを解釈としてみずから示したわけですね。みずからつくった土俵で、その土俵に乗せて、ここをやっていないじゃないかということは、それはたやすいことだと思うんでございますけれども、少なくとも条例立案当時、第七十二条の二十二の第九項の解釈はどうであったかということでございますけれども、そもそも外形標準課税の税率を設定する場合に、これは私どもは直接経験ありませんけれども、国の方では、例えば昭和二十四年に当時の電気供給業とガス供給業、外形標準課税を導入する際に税率を決めておるわけでございますけれども、そのときはどういうことをしたかといいますと、昭和二十四年当時に定めたときは、昭和十七年当時のその税収、電気供給業とガス供給業の税収、これをもとにして税率を定めております。
 なぜそのときは一年間かといいますと、それはそのときが、当時、昭和二十年前後ですから、戦争を挟んでおりますから、昭和十七年というのが電気供給業なりガス供給業の平常の経営状況、経営状態をあらわしているんだろうと。そういうことで、昭和十七年当時の経営状況を参考にして税率を定めたという経緯があります。
 それから、昭和五十二年の全国知事会でございますけれども、これは当然、総務省のいろいろな協力のもとに、全国の都道府県が一斉に条例改正して、製造業を対象にして外形標準課税を導入しようとしたものでございますけれども、これも導入直前までいったものでございますけれども、この税率の設定の仕方というのは、これは当然第七十二条の二十二第九項が直接絡んでくるわけでございますけれども、その当時の過去五年間の平均税収をもとにして税率を設定いたしております。
 それから、その後、今日、国で法改正が行われまして外形標準課税が導入されておるわけでございますけれども、今の案が出される前の旧自治省案というのがございまして、これの案の考え方によりましても、過去十年間の平均税収をもとにして税率を設定しているわけでございます。
 そういった大きな流れの中にあって、また旧自治省の公式見解も示されている中で、我々が過去十五年間の平均税収をもとにして税率を設定したことについて、いささかも誤りはあるというふうには考えておりませんし、むしろ高等裁判所がみずから設定した、その設定した条件ですか、土俵といいますか、それ自体、我々は問題があるというふうに思っておるわけでございまして、みずからつくった土俵のところで、ここを検討していないじゃないかというのは、それ自体に論理矛盾もありますし、もっと根源的にいいますと、第七十二条の十九で事業税の外形標準課税を認めておきながら、それはなぜ認めたかというと、委員も再三お話しされておりますように、税負担をほとんどしていない、そういったことを回避するために、それを改善するために外形標準課税を導入するんだと、そういうことは適法だと、結構なことだというふうに認めたわけですね。
 認めたところまではよかったんですけれども、今度、税負担の水準を決めるときになりますと、具体的な現実の所得税負担と比較しろというのは、大きな論理の矛盾がそこにあるというふうに私どもは考えているところでございまして、繰り返しになりますけれども、まとめて総括いたしますと、私どもとしては、従前の国の考え方によって税率を設定したものでありまして、決して間違ったことをしていない。いろいろな主張も十分したと。しかし、残念ながら高等裁判所の受け入れるところにはならなかった、理解を得るところにはならなかった。しかし、それにはいろいろ問題があるんだということで、その問題点については、先ほど来申し上げましたので繰り返しませんけれども、それは上告受理申し立て理由書、上告理由書にるる申し上げたというところでございます。

○松村委員 今るるお話聞きましたけれども、そうしますと、私は今、例えばというか、そういう判決が下されましたよね。それで、上告しましたけれども、そうしたら具体的にどういう、今度の和解に至る過程にもなるんですけれども、それがだから正しいというか、三%ということでしたら、具体的に合理的な水準というけれども、そこは物すごい乖離があるじゃないですか。業務粗利益は、引き続き落ちるどころか、相当上がっている。それがなぜ、その後分析して〇・九が合理的な水準なんですか。導入時においても検討した。判決が出されても、この判決は不当判決でおかしいと、全く正しいんだということと、今日のそれが〇・九%。
 形の上では、確かに業務粗利益に対する課税ということの形は残しているかもしれませんけれども、それはもともと当初から、今裁判でも認めたという、その銀行に限っての異常な不良債権処理というものを取り除いて、その活動量とか企業の規模だとか、それに最もふさわしいのが業務粗利益だと。だから、そこに対する課税がほとんどその当初の知事が目指していたものとは実態的に違うじゃないですか。
 それと、もう一つは、今裁判のことで批判されましたけれども、裁判所というのは、もともと、だって今ある法律、地方税法、しかもその附則なり、そういう項目の中の検討しかできないんじゃないですか、幾らそれが不当だっていったって。だから、そこの解釈というか、著しく均衡を失するかどうかということから、私は検討を裁判というものはするというのは、これはやむを得ないというか、いや、もともと課税自主権といったって、地方税法のこの中に基づくんでしょう。それを全然離れて、課税自主権だからといって、地方税法のこの第七十二条の二十二の第九項を全然無視して知事は考えて、新たな法改正までやらせるんだと、そういう立場に立ってなければ、裁判所がその中での課税自主権なのかどうかと。
 そして、均衡要件というのがあるんだから、それに対して厳密に東京都は検討が行われているのかということを問題にして、それで裁判所を納得させるというか、そういうことにはなっていないという、その一点をもって敗訴にしたということなんではないでしょうか。
 もう大分時間、予定したのが来ておりますので、やめたいと思いますけれども、部長の答弁が余りにも長過ぎるし、説得力をもって私を理解させてくれればいいけれども、理解できないんですよ。それだけいうんだったら、その和解に至った〇・九%というのはどういうことなんですか。公式的じゃなくて、その裁判との流れの中で、導入時から正しいという根拠に基づいて、なぜそれが〇・九%に落ちつくのがこの銀行税の趣旨だったのか。

○三橋税制部長 済みません、答弁が長いことはご容赦いただいて。
 私どもとしましては、三%の税率は正しいし、このまま裁判を続けても勝訴できると、事務当局としてはそういうふうに確信しているところでございますけれども、また、そういう意味で、高裁判決に大きな矛盾もありまして、これは最高裁においても必ずや理解をいただけるんではないかというふうに考えていたところでございます。
 しかしながら、一方で委員もおっしゃられましたように、高裁判決は高裁判決として厳然としてあるわけでございますし、またこれはさきの常任委員会あるいは定例会の知事答弁等でもございましたけれども、唯一、税負担の水準のところだけが問題になっていたということでございます。
 それから、高裁判決の中でも、第七十二条の二十二の九項というのは、著しく均衡を失しないようにということですから、非常に解釈の幅のある規定だというふうに高裁判決もいわれていたところでございます。
 そういった中で、いわば双方の弁護団におきまして、話し合いの機運というものが生まれてきたということでございます。それが一つでございます。
 それから、大きな客観的な状況の変化としましては、繰り返しになりますけれども、地方税法の改正に伴って外形標準課税が導入されたことでありますとか、銀行の体力というものが平成十五年三月期には著しく落ち込んでいたというふうなこと。りそな銀行に公的資金が導入されたというようなこと等々を踏まえまして、両方の弁護団の方で話し合いが始まった。
 そういったことについても知事も理解を示したということで、最終的に〇・九%ということで落ちついたわけでございますけれども、〇・九%、それ自体についても、過去十年間、直近十年間の平均税収をもとに算定したものでございまして、私が先ほど来ずっとご説明しているものと一貫しておるわけでございますけれども、過去の相当期間、過去の中長期的な期間をもとにして税率を設定しているという考え方は変えておりませんし、業務粗利益を課税標準としているということについても変えておりません。
 それから、所得課税との比較で、単純比較でいきましても、今回の〇・九%の税率によりましても、所得課税で行った場合に比べまして約四倍もの税収を確保できているということでございますから、そういった意味で、外形標準課税の導入の意義は、導入当初と今とでもいささかも変わっていないんではないかと、応益課税という考え方も変わっていないというふうに理解しているところでございます。

○松村委員 最後に意見だけいいますけれども、不当判決とか、そういう立場に立たれることは結構ですけれども、やはり私は裁判のこの条文をちょっと読ませていただいて、地方税法第七十二条十九に基づき導入する外形標準課税が同法第七十二条の二十二第九項の均衡要件を満たすことについては、外形標準課税を導入する条例を制定した地方公共団体側において客観的な指標に基づき、積極的に証明すべき責任があるところ、以上を総合勘案すると、本件条例による税負担が所得を課税標準とした場合の税負担と著しく均衡を失することのないようなものであることを認めるに足る証拠はなく、一審被告東京都は、本件条例が均衡要件を満たすとの証明ができていないことになるという、やったけれども、それが認めなかったとかいうことでは、私は違う。
 それは、その根底には、導入過程から都民にも私たち議会にも全くわからないところでの、しかも当時、そういう均衡要件をどうあれしたかというようなこと、全くそういう議論や材料がないままやったから、私は今後、最高裁判所において勝てるという、それは確信はいいんですけれども、もう既に、だって出していないんだもの、証拠。
 それはだから、今からだって証拠をつくるわけにいかないから、逆にいえば、最高裁判所で、今の部長さんや主税局の方は勝てるという判断があったかもしれませんけれども、少なくともこれを判断、和解というか、判断した方は、既に証拠は出していないと、裁判でここまで断定されているということで、敗訴を私は覚悟したんじゃないかということが、こういう政治決着というか、至ったものと、私は少なくとも考えざるを得ません。
 それから、また、今の和解することを私たちは否定しませんでしたけれども、それがどの時点でその何%か、わざわざさかのぼる必要があるのかどうか。それで確信があって正しいんだと。そもそも、だから不良債権処理によって税金逃れは許さないという、その立場にあるんだったら、もっと厳密に、この年度はこのパーセントで適用すると、この年度は何%とかいうことを幾らでも、都民の例えば税収確保という点からやれる余地があったにもかかわらず、〇・九にして形だけ残して、しかもさかのぼって過去の還付金まで出すようになるという、これは私は都民は絶対納得できないということを強く、きょうの質疑においても感じております。
 以上で、意見を申し述べまして終わります。

○大河原委員 私からは、もう一つの課税自主権の行使であります宿泊税のことについて伺っていきたいと思います。
 地道にというか、ひっそりというか、昨年十月から始まって一年になります。東京の観光振興、観光を一つの産業として育てていくということでは、非常にすそ野の広い産業でございますので、経済効果も非常に大きいということは認識しております。そして、十二年十一月に都税調からの提言を受けて、観光振興を図るという、またその税収を観光に充てると、費用に充てると、振興に充てるということで導入した税でございますけれども、とりあえず一年たって、今、宿泊税の制度というのは順調に定着したというふうに見えるのでしょうか、その辺をまず伺います。

○吉田課税部長 宿泊税は、委員がご指摘のとおり、その税収を観光資源の開発、受け入れ体制の充実など、旅行者等の利便性、快適性を図る観光振興の施策に充てることになっております。そのために東京都が独自に導入した法定外目的税でございます。
 実施に当たりましては、十分な周知期間を設け、その間、ホテル、旅館業界、旅行業界等の団体に説明を行ってまいりました。また、特別徴収義務者となることが想定されております個々のホテル、旅館に対しましては、事前説明会を数回実施するなど、宿泊税への理解、導入の円滑化に努めてまいりました。
 さらには、宿泊税を所管する千代田都税事務所以外のどこの都税事務所や支所においても申告を受け付ける体制をとるなど、特別徴収義務者の便宜を図ってまいったところでございます。
 導入後一年を経過いたしましたが、宿泊者などから苦情はほとんどなく、申告納入も滞りなく行われているところから、宿泊税は順調に定着しているものと考えております。

○大河原委員 新税の創設に当たっては、他県の首長さんからも批判的なご意見も出まして、私たちネットも法定外目的税ということで、その目的、使途について非常に注目しておりました。そして、ちょっと一部危惧する面もあったということがありますけれども、改めまして、今、観光目的、観光振興目的ということでしたけれども、その税の使途について具体的にお聞かせいただきたいと思います。

○吉田課税部長 お話のように、目的税である宿泊税は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てることとなっております。具体的には、一昨年十一月に産業労働局で策定いたしました観光産業振興プランに掲げる経費に充てられております。
 平成十四年度について具体的に申し上げますと、まず東京観光情報センターの運営に三億七百万円余が充てられました。それから、東京国際アニメフェアの開催、絵文字等を活用した観光案内標識の設置、ウエルカムボードの設置等の事業費に充てられております。
 また、ご参考までに、十五年度当初予算でございますが、ウエルカムボードの設置等に二億七千万円の予算が計上されております。さらに、東京観光情報センターの運営、東京国際アニメフェアの開催、絵文字等を活用した観光案内標識の設置などに充てられております。

○大河原委員 十五年度当初予算の計上までご説明いただきましたけれども、インフォメーションセンターに立ち寄る観光客の方々もお見かけしますし、そういった方々に向けてのガイドブックですとか、マップのたぐいもかなり充実してきたという印象ももちろん持っております。
 都外からおいでになる宿泊者だけでなくて、実は都民からも制度自体、もっと理解を深めていただけないかというふうにも思いまして、PRなど、どのように行ってきたのか、その点はどうでしょうか。

○吉田課税部長 宿泊税は、導入前から東京都広報、主税局ホームページ、全国の主要駅にポスターを掲示するなど、さまざまな機会を通じ、広く周知に努めて理解をお願いしてまいりました。
 また、宿泊税を財源とした観光振興施策につきましても、産業労働局ホームページなどを通じまして、その使途のPRに努めているところでございます。

○大河原委員 一万円から一万五千円までは百円、一万五千円以上の宿泊費に二百円という形で、かなりわかりやすい税ではあるんですけれども、そこが自分が払ったものにそれが入っているかどうかをなかなかごらんになっていない方も多いかなというふうにも実は思います。
 この宿泊税にだけどう思うかというようなアンケートでは、ちょっと難しいかと思うんですが、この制度、そして使途、目的も含めて、このPRを行ってきたわけですけれども、ぜひアンケートをとって、この制度を広く理解していただくというようなことも必要ではないかというふうに少し意見を述べさせていただきます。
 それで、決算でございますが、決算書の五ページの収入決算書を見ますと、ことし収入は四億九千六百万円を確保しております。予算額を見れば、ちょっと三角がついていたりしますけれども、何か理由があると思います。そして、今年度以降、今年度の四月以降の状況はどうだったのか。春にはSARS問題もありましたけれども、この点、ご説明ください。

○吉田課税部長 今年度の宿泊税は、九月末現在、調定ベースで五億四千五百万円となっております。委員ご指摘のとおり、今年度当初にはSARS、重症急性呼吸器症候群、またイラク戦争などの影響もありまして、年度前半の予算進捗率は三六・四%でございます。
 今後は、秋の行楽シーズンの時期の宿泊客の増加に期待しているところでございます。

○大河原委員 春は、SARSでなかなか厳しかったようですけれども、お盆などは逆に海外に行かずに国内でという方々が、都内の新しい高級ホテルに泊まられるという形で、かなり成績はよかったようなこともニュースで聞いております。
 税収を確保するためには、この特別徴収義務者登録ですか、この数がふえていくということが重要だと思いますけれども、ことしの四月には例の六本木ヒルズでグランドハイアット東京ですか、それから七月にはロイヤルパーク汐留タワー、こういったところで次々に開業されております。宿泊税の登録施設数、この一年でどのように推移してきているでしょうか。

○吉田課税部長 宿泊税の登録施設数は、昨年十月の導入時期に三百八施設ございました。ことしの三月末、つまり平成十四年度末におきましては三百二十四施設、一年を経過しました十五年九月末現在では三百三十二施設となっておりまして、この一年間で二十四施設増加いたしました。
 なお、九月末の登録施設の内訳は、ホテル二百八十四施設、旅館四十八施設でございます。

○大河原委員 新しいホテルが次々に開業して、実は宿泊税には好都合かなというふうにも思えるんですけれども、このところしばしば東京のホテルの二〇〇七年問題、こういう言葉を聞くようになりました。今のご説明で、今、登録数などもご紹介いただいているんですけれども、今後この登録施設の見込み、そしてこれが本当に税収増につながるかどうか、この点についてはどうでしょうか。

○吉田課税部長 委員ご指摘ございましたように、東京の都心部におきましては、六本木や汐留など大型ホテルが開業いたしまして、今後も平成十九年にかけまして次々に開業する見込みでございます。
 このため、宿泊税の対象となる登録施設数や客室数の増加が見込まれておるところでございます。しかしながら、今後の宿泊税の増収見込みにつきましては、ホテル間の過当競争による宿泊料の値引きや客室稼働率の低下などの問題も考えられますために、現在の時点での予測は大変難しいと思われますが、都の観光振興施策の積極的な取り組みに伴う宿泊客の増加に期待しているところでございます。

○大河原委員 主税局ですから、具体的に何がしたいというふうにはなかなかお答えが難しいと思います。
 大型ホテルがこれ以降、十施設ぐらいできて、部屋数も三千ぐらいふえるんだということも聞いておりますけれども、こういう高級ホテルが東京にできるということで、すごく東京に魅力が増す。そして、東京でそのホテルに行った人が、今度は海外に行ったときにそのチェーン店を利用するというようなことで、またその効果が外に向けても広がるというふうにも思いますし、一つはいい面というふうにいえるんだと思うんです。
 ただ、SARSのこと、ご紹介がありましたが、非常にこの宿泊税の増なのか減なのかというのはデリケートな問題で、本当に東京の魅力が安定したものになるかどうか。東京が信用を落とすようなことがあると、がくんと減るということがあるので、この税の課税、導入いたしましたけれども、かなりデリケートなものだなというふうに思います。
 そして、もちろん新しいホテルができる一方で、東京では建てかえをしなければいけないような、そういうホテルも数多くありまして、都庁に来るときに、この近辺のホテルに宿泊していらっしゃる方たちが大分さま変わりしてきたなというのも感じます。
 この宿泊税は、一万円というところに宿泊料にかけられるわけで、今見ていますと、パック料金で一万円というふうにいっても、中に食事が入っていたり、いろいろなエンターテインメントが入っていたりして、なかなかこの宿泊税がかけられないというような実態もあるんじゃないかと思います。
 建てかえ期を迎えるホテルなど、自然に淘汰されていくといっちゃうと、何か寂し過ぎますけれども、東京の魅力を増すときに、こういった建てかえの部分も他の分野でぜひ補強していかなければならないと思います。
 そして、もちろんこの宿泊税、丁寧な取り組みをお願いしたいというところでは、東京都のこの産業振興、都内に訪れる方を五年間で倍増しようという計画ですから、それにはまず東京の魅力、ユニバーサルデザインのまち、そしてまたエコシティーとして東京が名をはせるというような、そのような取り組みも必要かと思います。千客万来のといいますので、ぜひとも東京が世界じゅうから愛されるまちとして発展するような丁寧な取り組みを今後とも主税局にもお願いしたいと思います。
 質問を終わります。

○串田委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、これをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○串田委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。

○串田委員長 これより収用委員会事務局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十四年度東京都一般会計決算中、収用委員会事務局所管分を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言をお願いいたします。

○河西委員 まず、今月三日に決定がございました圏央道のあきる野市内の土地収用にかかわる問題から、ちょっとお尋ねしたいと思います。
 あきる野市内の圏央道の土地収用にかかわる執行停止申し立てについて、東京地裁は今月十月三日、本判決のいい渡しの日から十五日後までの間、代執行手続を停止する旨の決定を行いました。また、明け渡しの裁決の効力停止を求める申し立ては却下した。この決定に対しまして、起業者であります知事及び国は、十月七日に即時抗告し、十月十日に抗告理由書を提出したというところがマスコミ報道等でも私どもに知らされているところです。
 この問題につきましては、事業認定のところから収用委員会を経て、そして収用執行のところと経過があるわけで、この判決そのものの問題とか今後の訴訟の成り行きというのは、収用委員会の所管外のお話だというふうに思いますので、ちょっと全容についてのご質疑ということになりませんが、それを承知の上で、収用委員会における部分にだけ限定してお尋ねさせていただきたいと思います。
 まず、収用委員会における審理の経過についてご説明いただきたいと思います。

○三枝参事 あきる野市内の圏央道に関する収用事件につきましては、起業者である国土交通大臣及び日本道路公団から、平成十二年十月及び十一月の二回に分けて収用委員会に裁決申請及び明け渡し裁決申し立てがなされました。
 収用委員会は、同年十二月及び十三年一月に裁決手続開始を決定した後、同年五月から審理を開始し、平成十四年五月まで計十回の審理を行い、同年九月に裁決いたしました。

○河西委員 それで、その裁決以降のことになるわけですけれども、その収用委員会にかかわっていた審理の最中の問題に限定して伺います。
 圏央道の事業に反対の立場の権利者の皆さんは、この収用委員会による審理においてどのような主張をされていたか、お知らせいただける限りお願いしたいと思います。

○三枝参事 圏央道事業に反対している権利者は、交通渋滞、健康、騒音被害、自然、文化財の破壊をもたらすなど、本事業は土地の適正かつ合理的な利用に寄与せず、また公益性が全くないので、建設大臣の事業認定には重大かつ明白な瑕疵があるとして、土地収用の裁決申請及び明け渡し裁決申し立てを却下するよう申し立てておりました。
 さらに、起業者である国土交通大臣及び日本道路公団が行った調査結果に誤りがあること、損失補償の見積もり額が低過ぎることを申し立てておりました。

○河西委員 そのような申し立てと地権者の見解、意見、主張、それを受けて、これに対して収用委員会は去年九月に裁決を決定いたしましたけれども、その内容をどのような判断でお示しになったのか、内容についてお示しいただきたいと思います。

○三枝参事 権利者からの収用裁決申請の却下の申し立てにつきましては、収用委員会は事業認定を無効とすべき重大かつ明白な瑕疵は認められないので、却下すべき理由がないと判断いたしました。
 また、起業者の調査結果に誤りがあること、損失補償の見積もり額が低過ぎることの申し立てにつきましては、収用委員会が行った現地調査の結果を踏まえ、収用委員会の命じた鑑定内容等を総合的に考慮して、損失の補償金について判断いたしました。

○河西委員 概要、裁決書の中身からのご説明だったと思いますが、一応了承いたします。
 それで、権利者の皆さんは、昨年の十四年十一月、東京地方裁判所にこの収用委員会の裁決の取り消し訴訟の提起、そして裁決の執行停止の申し立てを行ったわけですけれども、その推移についてご説明いただきたいと思います。

○三枝参事 裁決取り消し訴訟につきましては、本年一月に既に提起されておりました事業認定庁である国土交通大臣を被告とする事業認定取り消し訴訟と併合された後、九月までに五回の口頭弁論が行われました。今後、さらに三回の口頭弁論を経て、来年四月ごろに判決が出される見通しでございます。
 また、明け渡し裁決の効力停止の申し立てにつきましては、本年一月に申し立てられた代執行手続の停止の申し立てとあわせて、十月三日に裁判所の判断が示され、明渡し裁決の効力の停止を求める申し立てについては、行政事件訴訟法二十五条二項ただし書きにより、不適法であると却下されました。
 なお、収用委員会の所管ではありませんが、都知事の行う代執行手続につきまして、第一審判決いい渡しの日から起算して十五日後までの間、停止する決定がなされました。

○河西委員 今、ほんの収用委員会での審査、その後の経緯を含めて、大変複雑といいますか、圏央道の今回の事案はさまざまな要素があるというふうに思いますけれども、これはちょっとまた後で触れますが、要は起業者、事業者が計画を立てて、事業を一定の手続を踏んで認定を受け、着工していくと。それに必要な補償等の収用については収用委員会がやっていくと。
 こういう手続の中で、事業認可といいますか、認定がおりるまでの間の手続のところがもう少し丁寧に行われるということが、その後の手続にも影響を与えてくるんではないかなという印象を持っているということだけ、ここでちょっと触れさせていただきたいと思います。
 次に、収用委員会の審理あるいは裁決について、一つだけちょっとお尋ねしたいんですけれども、収用委員会で七人の収用委員の皆さんがおいでになるんですが、七人の委員全員ではなくて、特定の指名委員によって事件を取り扱う制度を十三年度より本格的に活用するようになったというふうに聞いています。なぜその制度を活用するようになったのか。また、そのことによって、公正性あるいは中立性などが担保できるのか。公正、中立な立場で事件の処理を行うことに支障が生じないかどうかについてお伺いさせていただきたいと思います。

○三枝参事 指名委員制度についてのお尋ねでございますが、土地収用法六十条の二により、収用委員会は、必要があると認めるときは、審理または調査に関する事務の一部を特定の委員に委任することができることになっております。
 東京都収用委員会では、取扱事件数が増加する状況の中でも、権利者の権利保護を図りつつ、審理手続に遅滞が生ずることのないよう、平成十三年十月から、一部の事件を除き、この指名委員制度を活用しております。
 なお、裁決等につきましては、土地収用法により、七人の委員全員の会議で決定することになっており、公正、中立な立場で事件処理が行われております。ご懸念のような支障が生ずることはあり得ないと考えております。

○河西委員 ありがとうございます。
 それでは、最後の質問になろうかと思いますけれども、先ほどちょっと触れました事業認定の透明性等の向上及び収用手続の合理化を図るために、昭和四十二年以来、三十四年ぶりに土地収用法の大改正が平成十三年七月に行われて、昨年十四年七月から施行されていると思います。
 土地収用の実が上がるような新たなルールづくりだということで、今回の改正の概要は、一つは事業の公益性の認定を行う事業認可庁と補償金額の確定を行う収用委員会との役割分担の明確化を図っていく、もう一つは、所用の手続内容の充実であるということをうたっているかと思います。
 事業認定の手続については、情報公開と住民参加を保障し、透明性、公益性を確保する観点から、公聴会の義務づけや第三者機関意見聴取及び事業認定理由の公表が主な改正内容であるかと思います。
 また、起業者については、事前認定前の事前説明会の義務づけ、収用委員会裁決後の補償金の支払い方法の合理化などが盛り込まれているというふうに思います。
 そこで、収用委員会に係る部分でどのような改正が行われたかについてご説明をいただきたいと思います。

○三枝参事 収用委員会にかかわる土地収用法の主な改正点は、主張内容を制限する規定が明文化されたこと、多数の権利者がいる場合に、代表当事者を選定、勧告できる制度が創設されたこと、そして補償基準が政令で規定されたことの三つでございます。
 この改正点の中で、最も重要な主張内容の制限とは、先ほどありました事業認定に対する不服に関することなど、収用委員会の審理と関係がない事項につきまして意見書に記載すること、または口頭で意見を述べることができなくなったということでございます。

○河西委員 今のご説明でよりはっきりいたしましたのは、事業の計画を立て、事業認定を受け、そして実際に収用手続に入っていくというプロセスの中で、より今まで以上に収用委員会の役割を限定的にといいますか、規定したと。審理においては、補償の内容を中心に審理を進めるということで、主張内容の制限というか、整理をされたということがポイントだろうというふうに思います。
 そこで、今回の法改正によって、今までの収用委員会の審理が従来と具体的にどのように変わっていくのかについて、局長の取り組みの決意も含めて、最後にお尋ねさせていただきたいと思います。

○山内収用委員会事務局長 今回の土地収用法の改正によりまして、事業の公益性の認定を行う事業認定庁と補償金額の確定を行う収用委員会との役割分担が、従来より一層明らかになったわけでございます。収用委員会は、補償問題を中心に審理を行うことが、よりそういう意味では明確になったということでございます。
 法改正の前から、土地収用法の規定によりまして、収用委員会は審理の促進を図り、裁決が遅延することのないように努めることが求められていたわけでございますけれども、今回の法改正を踏まえまして、収用委員会が支障なくその職務を果たせるよう、事務局として適切にその補佐をしてまいりたいというふうに考えております。

○河西委員 最後に、質問ではありませんが、また収用委員会の所管を超えるお話かと思いますけれども、この収用委員会にかかっている案件の数、それに関連する訴訟の数も決して少なくないと思います。今後も東京におけるさまざまな開発の問題は、新たな事業を起こすに当たって、従来からありますが、より現代的な課題として、環境の問題、環境保全か開発かという、このテーマについて、これまで以上に住民の意識、あるいは直接当事者ではない市民の関心も高まってきているわけで、そういう中では、ぜひ事業を起こす、いわゆる起業者に東京都もなることが多いわけですが、事業を計画して事業認定を受けるまでの手続のところで十分に当事者間の話し合い、調整、もちろん情報の提供と、合意形成のところで十分な時間と、それから誠意を示すということが、ひいてはこの収用委員会での収用法の改正の目的にも合致する形での事務事業の進行につながると思います。
 またほかの局の、原局、原部課の方々には、機会があれば申し上げますが、収用委員会としても、機会があったら、そういう視点でお話いただければありがたいなというふうに要望を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

○野上委員 私の方からは、首都圏中央連絡自動車道、いわゆる圏央道についてご質問いたします。この本事業におきます収用裁決手続の現状と、今後の見通しについてお尋ねしたいと思います。
 現在、国により整備が進められております圏央道につきましては、首都圏三環状道路の一つに位置づけられております。首都圏における環状方向の道路ネットワークを形成し、都内の交通渋滞の緩和や環境の改善に資するとともに、産業の活性化などに寄与するための重要路線として早期開通が強く望まれているところでございます。
 首都圏の幹線道路をそれぞれに結ぶ、この圏央道が完成すると、交通の流れがスムーズになり、自然環境にも優しい、毎日の暮らしができるのではないかという観点もあります。特に、多摩地域においては、南北方向の幹線道路として、国道一六号線などの交通煩雑を解消することができると。それから、周辺市街地の生活道路に流入していた通過車両の排除がなされることから、本来の生活道路や都市機能を回復する上で整備効果が期待されるのではないかと思います。
 国は、日の出のインターチェンジからあきる野インターチェンジまでの区間は、平成十五年度中の供用開始を約束しておりますし、またあきる野インターチェンジから八王子ジャンクションまでの区間については、平成十六年度中の供用開始を目指し、現在工事を進めていると伺っております。
 しかしながら、この本事業の実施に当たっては、いずれの区間においても事業への協力を得ることのできない権利者が存在することから、これらの権利者に対し、国及び日本道路公団はやむを得ず土地収用法に基づく法的手続を講じてきたと伺っております。
 あきる野インターチェンジ付近におきましては、昨年九月、都の収用委員会による収用の裁決がありましたけれども、なお明け渡しを拒んでいる者に対して代執行の手続が進められていましたが、先般、東京地裁において代執行手続の停止が決定されたと聞いております。
 しかしながら、さきにも述べたとおり、圏央道は首都圏及び多摩地域の発展にとっては欠くことのできない重要な事業でありますので、一日も早い解決をお願いいたしたいと思います。
 また、あきる野インターチェンジから八王子ジャンクション区間についても、任意での用地取得率が九九%に達しているのにもかかわらず、多数の当事者による事業反対運動が展開されていることなどにより、任意での用地取得が困難となったため、国及び日本道路公団は都の収用委員会に収用裁決の申請を行ったと伺っております。
 そこで、裁決手続の状況について、八王子ジャンクション部分を中心にお尋ねいたします。
 まず、八王子ジャンクション部分における収用事件の概要及び現在までの主な手続の経過についてお聞かせください。

○三枝参事 八王子ジャンクション部分における事件の概要でありますが、収用裁決の事件数は十八件でございます。本件申請により、収用及び使用する土地の面積は八千三百三十二・二一平方メートル、当該区域における権利者の内訳は、土地所有者が六名、その他立ち木所有者等の関係人が約千九百名となっております。
 次に、主な経過でございますが、本件収用裁決につきましては、平成十五年三月二十四日、起業者である日本道路公団より申請を受け、収用委員会は同年六月二日、裁決手続の開始を決定いたしました。また、開始決定後は、第一回審理を同年八月二十一日、八王子市民会館において、第二回審理を同年十月九日、同じく八王子市民会館において実施したところでございます。

○野上委員 八王子ジャンクションは、圏央道と中央自動車道をつなぐ重要なポイントであることから、それにかかわる収用手続を円滑に進めることは極めて大切なものと思います。ただいまご説明がありましたが、現時点において審理を二回ほど実施されたとのことでございますけれども、今回実施されました圏央道の審理では、どのような説明が行われ、どのような意見が出されたのでしょうか。また、次回以降の審理はどのような内容で行うのか、お答えできる範囲で結構ですので、お尋ねいたします。

○三枝参事 第一回及び第二回審理におきましては、まず起業者である日本道路公団から、事業の概要、協議の経過、収用または使用する土地の区域、損失の補償、権利取得の時期及び明け渡しの時期についての説明を受けました。
 また、第二回審理におきましては、土地所有者二名から陳述があり、事業に異議はないことなどの意見がございました。
 なお、今後の審理でありますが、他の土地所有者等から収用または使用する土地の区域、損失の補償及び明け渡し期限などについて意見陳述を聞く予定となっております。

○野上委員 今回のケースでも見られますけれども、トラスト運動によって審理が長引くケースは全国的にも見受けられます。本来、裁決手続の審理とは関係のない事業認定にかかわる問題を取り上げることによって、いたずらに審理を引き延ばす事例が後を絶たない現状にあると思います。
 このような状況の中で、平成十四年七月に施行された改正土地収用法では、収用委員会の審理において事業認定に関する意見を述べることができない旨、明文化されております。このことは、審理を真に必要な事項に集中し、効率的な手続の推進を図るためのものであると考えるところであります。
 地元においては、圏央道は多摩地域の発展に欠くことのできない事業として、その整備促進に向け一丸となっております。そのためにも、審理を効率的に進めることが最も大切なことであると認識しております。
 そこで、最後になりますけれども、審理の今後の取り組みについて局長の決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。

○山内収用委員会事務局長 裁決手続を適正かつ効率的に進めることは、委員ご指摘のとおり、大変重要であると考えております。そのため、今回の法改正の趣旨を踏まえまして、審理において意見を聞く必要のある事項を整理するとともに、委員会における審理が円滑かつ迅速に進めることができるよう、事務局としても万全の体制で補佐する所存でございます。

○大河原委員 二点だけ伺います。
 資料によりますと、十四年度の収用事件の取扱件数が百四十三件というふうに出ております。毎年の繰越件数もありまして、また新規に年度ごとに出てくるものも、お見かけしますと六十件以上、新規にコンスタントに出ているというように見えますが、裁決を前提として、都市計画事業なのか、収用法による事業なのか、どっちが多いんでしょうか。

○三枝参事 平成十四年度における取扱件数の総数は、先ほど委員がお話になりましたように、新規、繰り越しを含めて百四十三件でございます。このうち、都市計画法に基づく事業認可により申請してきた事件の数は七十九件、また収用法に基づく事業認定により申請してきた事件の数は六十四件となっておりまして、都市計画法に基づく事業認可の方が多くなっております。

○大河原委員 今の数の中で、圏央道、収用法に基づくものは何件でしょうか。

○三枝参事 先ほど申し上げました事業認定を取得した事業六十四件は、すべて圏央道ということでございます。

○大河原委員 二人の委員から、圏央道については、収用委員会の審理の流れなどもご紹介いただいているわけですけれども、国土交通省が起業者で、国土交通省のホームページを見ますと、計画がどのぐらいおくれているだとか、非常に進める側としての意見のみが出ているホームページなんです。
 私は、トラストをしてまで事業に関しての疑問があるという人たちがいることというのは、やはり真摯に受けとめなきゃならないというふうに思う側におりまして、この収用委員会も非常に限られた権限の場所ですから、収用委員会についてどうこういうつもりはありませんけれども、本当に事業認定に疑問があって、本当にたくさんのそういう疑義が出されるような事業、それにかかわる収用などは審理拒否を収用委員会自体ができるような制度になったらいいなというふうに思うぐらいです。
 もう一点は、都市計画による事業認定が多いということですから、本来の収用委員会の仕事が公正、中立、本当にそういった役割をきちんとやっていくということだけ、先ほど事務局長がおっしゃいましたので、そういう運営を委員の皆さんにもぜひお願いしたいと思います。
 それで、私はちょっと収用委員会のホームページを見てみたんです。パンフレットはこのようなものをいただいているんですけれども、ホームページは字ばかりでして、なかなか読みづらいです。一つ一つクリックしてあけていかないと、流れも追えない形になっています。
 他県はどうかというふうにあけてみましたら、例えば島根県はこんなカラフルなもので、流れもかなりわかりやすく書いてあります。ぜひホームページを改定して、わかりやすいものにしていただきたい。収用委員会の役割もきちんとわかるものにするということが必要ではないかと思いますので、お願いしたいと思います。もしお答えがあるんでしたらいただく、なければ結構でございます。

○山内収用委員会事務局長 委員から今、収用委員会としてPRといいますか、そういう都民に対しての事業の内容の説明がちょっと不十分じゃないかというお話がありましたけれども、確かに、今ご指摘のあったホームページについては、今後私どもの委員会としても課題だというふうに思っていますので、検討させていただきたいと思います。

○串田委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○串田委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で収用委員会事務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後三時十一分散会

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