各会計決算特別委員会第二分科会速記録第三号

平成十三年十月二十二日(月曜日)
   午後一時四分開議
 出席委員 九名
委員長馬場 裕子君
副委員長いなば真一君
副委員長大山とも子君
中屋 文孝君
野上じゅん子君
林田  武君
清水ひで子君
花川与惣太君
木内 良明君

欠席委員 一名

 出席説明員
福祉局局長前川 燿男君
次長藤堂 義弘君
総務部長上條 弘人君
生活福祉部長上野 純宏君
高齢者部長若林 統治君
子ども家庭部長笠原  保君
障害福祉部長高橋 義人君
保険部長吉川 和夫君
企画担当部長村山 寛司君
施設調整担当部長反町 純夫君
参事有留 武司君
参事菅原 眞廣君

本日の会議に付した事件
 平成十二年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
  福祉局関係
  ・一般会計決算(質疑)
  ・母子福祉貸付資金会計決算(質疑)
  ・心身障害者扶養年金会計決算(質疑)

○馬場委員長 ただいまから平成十二年度各会計決算特別委員会第二分科会を開会いたします。
 初めに、理事者の欠席について申し上げます。
 福祉局技監は、公務のため、本日の分科会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 本日から四日間にわたり、本分科会所管局の決算に対する局別の質疑を行っていただきます。
 本日は、福祉局関係の決算に対する質疑を行います。よろしくお願いいたします。
 これより福祉局関係に入ります。
 決算の審査を行います。
 平成十二年度東京都一般会計決算中、福祉局所管分、平成十二年度東京都母子福祉貸付資金会計決算及び平成十二年度東京都心身障害者扶養年金会計決算を一括して議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○上條総務部長 過日の分科会で要求のございました資料につきまして、お手元の平成十二年度各会計決算特別委員会第二分科会要求資料により、説明させていただきます。
 表紙の次のページ、目次をお開き願います。資料の一覧表でございます。次のページにわたり、全部で二十六項目となっております。
 それでは、順を追って説明させていただきます。
 まず、一ページをお開き願います。福祉費の予算及び決算の推移でございます。
 平成三年度から十二年度までの福祉費の予算現額、決算額及びそれぞれの一般会計に占める割合などについて記載してございます。
 次に、二ページをお開き願います。使用料及び手数料の予算・決算の内訳でございます。
 各項目について、平成十二年度の予算現額、収入済額及び収入率を記載してございます。
 三ページには、平成十二年度の各種手当制度及び医療費助成制度の見直し内容を記載してございます。
 次に、四ページをお開き願います。福祉手当及び医療費助成等の予算と決算の推移でございます。
 平成八年度から十二年度までの予算現額、支出済額などを、次のページにわたり記載してございます。
 次に、六ページをお開き願います。民間社会福祉施設に対する補助実績でございます。
 施設種別ごとの平成十一年度、十二年度の補助実績を記載してございます。
 七ページには、生活保護開始人員の推移でございます。
 東京都内における生活保護開始人員については、平成八年度から十二年度までを記載してございます。
 次に、八ページをお開き願います。年齢階級別被保護人員の推移でございます。
 被保護者全国一斉調査による平成八年から十二年までの東京都分の人員について、年齢を三区分に分けて記載してございます。
 九ページは、シルバーパスの区市町村別交付数でございます。
 現時点で集計が整っている、平成十二年九月から十三年七月までの区市町村別の交付数と、右下にございますように、費用負担額ごとの交付数を記載してございます。
 次に、一〇ページをお開き願います。特別養護老人ホームに対する補助の推移でございます。
 (1)に、平成八年度から十一年度までの施設運営費都加算・職員給与公私格差是正事業の決算額を、(2)に、平成十二年度の特別養護老人ホーム経営支援事業の決算額を記載してございます。
 一一ページには、特別養護老人ホーム施設整備助成費及び対象箇所数の推移として、平成八年度から十二年度までの決算額と対象箇所数を記載してございます。
 次に、一二ページをお開き願います。認可保育所入所待機児童数の推移でございます。
 次のページにわたり、平成三年度から十二年度までの、四月一日と十月一日現在の認可保育所入所待機児童数を区市町村別に記載してございます。
 次に、一四ページをお開き願います。認可保育所に対する補助実績の推移として、平成八年度から十二年度までの補助実績を記載してございます。
 一五ページには、子どもの権利擁護委員会の相談実績として、事業を開始した平成十年度の五カ月分と、十一年度、十二年度の相談内容別件数等を記載してございます。
 次に、一六ページをお開き願います。子どもの権利ノートの作成・配布状況でございます。
 (1)に印刷年度及び部数を、(2)に配布年度及び部数を記載してございます。
 一七ページは、「東京子どもネット」児童用カードでございます。
 このカードには、相談受け付けの電話番号などを記載してございます。(1)に印刷部数を、(2)に配布先及び部数を記載してございます。
 次に、一八ページをお開き願います。児童虐待受理件数として、平成三年度から十二年度までの児童相談所別に記載してございます。
 一九ページには、平成三年度から十二年度までの児童福祉司定数を、児童相談所別に記載してございます。
 次に、二〇ページをお開き願います。児童養護施設の定員数と措置児童数の推移でございます。
 平成三年度から十二年度までの、十月一日現在の定員数及び措置児童数を記載してございます。
 二一ページから二三ページには、児童扶養手当区市町村別実績として、平成八年度から十二年度までの区市町村別受給者数を記載してございます。
 次に、二四ページをお開き願います。高次脳機能障害についての講習会の概要と平成十二年度の取り組みでございます。
 (1)に、平成十三年二月十五日に開催した講習会の概要を、(2)に、心身障害者(児)通所訓練等事業における高次脳機能障害者の受け入れについて記載してございます。
 二五ページには、要介護(要支援)認定者数でございます。
 平成十三年三月末の認定者数を、第一号、第二号被保険者別、要介護度別に記載してございます。
 次に、二六ページをお開き願います。居宅介護(支援)サービス受給者数でございます。
 平成十三年三月のサービス受給者数を、第一号、第二号被保険者別、要介護度別に記載してございます。
 二七ページは、施設介護サービス受給者数でございます。
 平成十三年三月の施設種別ごとのサービス受給者数を第一号、第二号被保険者別に、また、表の下段には平成十二年度計画数について記載してございます。
 次に、二八ページをお開き願います。各施設介護サービスの圏域別の整備目標と実績として、平成十二年度整備目標数と整備実績数を施設種別ごとに記載してございます。
 二九ページには、第一号被保険者の所得分布状況として、平成十二年十月一日現在の所得段階別の第一号被保険者数と構成比を記載してございます。
 最後に、三〇ページをお開き願います。平成十二年度介護保険料普通徴収対象者、調定額、収納率状況を区市町村別に記載してございます。
 以上、要求のございました資料につきまして、ご説明申し上げました。
 よろしくご審議のほどをお願い申し上げます。

○馬場委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○林田委員 それでは、質問をさせていただきたいと思います。
 東京都の福祉改革についてお伺いしたいと思います。
 都が強力に推進する福祉改革の取り組みは、これまでの措置制度、行政が広範にわたってコントロールする仕組み、いわゆる削るとか縮小するとかといった後ろ向きの改革を改めまして、利用者本位の新しい福祉を築くことにあると聞いております。
 こうした新しい福祉改革、新しい福祉の構築に向け、東京都は、昨年十二月に福祉改革推進プランを策定し、改革の基本理念と展望をわかりやすく示すとともに、選択、競い合い、地域の三つのキーワード、それと五つの改革プラン、八つの戦略、十二の戦略プロジェクトを示し、福祉改革を強力に先導するための都独自の取り組みを始めたわけであります。
 特に、三つのキーワードは、それぞれ新しい福祉を象徴するものとなっておりますけれども、特に近年、住民のニーズが地域ごとに多様化、高度化する中にあって、地方分権の観点を含め、私は、地域というキーワードを福祉改革の基本理念に据えられた都の考え方を評価するものであります。
 今後は、住民に身近な区市町村が核となって、それぞれの地域のニーズや特性に合わせて、NPOやボランティアなどの地域の力を組み合わせて、きめ細かい福祉サービスを利用者に提供していくことが重要であると思います。
 しかし、ご案内のとおり、区市町村は財政的にも大変厳しく、みずからよい福祉に関するいろいろなアイデアがあっても、それを事業化し、住民サービスを提供するまでにはなかなか至らないというのが現実であります。
 こうした状況の中で、我が都議会自由民主党の要望を全面的に取り入れ、十二年度から新たに創設された包括補助制度であります福祉改革推進事業は、区市町村の主体的な創意工夫を生かす仕組みであり、まさに地域の福祉サービス基盤を充実していく上で極めて必要かつ重要な、時代を見た福祉制度といえると思います。
 そこで、四つばかり質問をさせていただきます。
 決算委員会ということでございますので、この包括補助制度、福祉改革推進事業の十二年度の取り組み状況を伺いたいと思いますが、平成十二年度福祉改革事業費は、予算現額三十億円、支出済額二十八億三千九百六十万円余、執行率九四・七%とありますが、この事業が新たに始まる際に、一部では、裏負担の問題などから、財政力の弱い自治体にまことに不利であり、特に多摩地域では利用自治体が進まないのではないかというような意見があったとお聞きしております。
 そこでまず、福祉改革推進事業の実績は区部と市町村部ではどのような割合だったのか、執行額も含めてお伺いしたいと思います。

○村山企画担当部長 福祉改革推進事業の平成十二年度の実績は、総額二十八億三千九百万余円のうち、区部で約十四億二千万円、市町村部で約十四億一千九百万円でございまして、区部と市町村部の割合はほぼ半々ということになってございます。

○林田委員 半々ということでございますので、多摩地域にも過分な執行額が行っているということで、本当にありがとうございます。今後もよろしくお願い申し上げます。
 次に、都としても、新しい福祉の基盤づくりの中で、福祉改革推進事業の目的として、子どもや障害者の地域の中での生活を支える基盤整備を強力に推進する方針であり、こうした地域の福祉基盤の整備に積極的に取り組んでいる区市町村に対しまして、既存の補助制度とあわせて、この包括補助制度を組み合わせて支援する仕組みとなっているということでございますけれども、初年度となります十二年度では、包括補助制度を活用してどの程度基盤整備が進んだか、お伺いしたいと思います。

○村山企画担当部長 区市町村が地域でいろいろ福祉基盤を整備しようという場合に、幾つかハードルがございまして、例えば、開設時にいろいろ初度調弁とか準備経費というような、普通のベースとなる補助制度の中には含まれていない経費が必要であり、財政が厳しい区市町村の場合だとそれに対応するのが大変である、あるいは、どうしても、通常の補助制度は共通のベースでございますので、個々の団体の特性などというものについてはなかなか反映しづらいというようなものがございます。
 そういう区市町村の問題を打開するために、この福祉改革推進事業におきましては、事業の実施主体あるいは実施方法について、区市町村の独自性をできるだけ生かしたい。あるいは、積極的に取り組んでいただけばいただくほど、補助金の額が多くなるというような仕組みにしてある。あるいは、ほかの事業とうまく結びつけられるというふうな、そういう点に配慮させていただいておりまして、その結果、この事業を始めました十二年度だけで、子ども家庭支援センターが五カ所、それから障害者の地域自立生活支援センターが三カ所、学童クラブに障害児を受け入れるためにはいろいろ配慮が必要なわけですが、バリアフリー化といったようなものが必要なわけですが、それらができましたケースが十五カ所というような、さまざまな事業の推進の状況が含まれております。また、NPOなどを初めて先駆的に自治体が活用していただいて、知的障害者の生活寮を設置して、それが全体に広がったというようなこともございます。

○林田委員 積極的な区市町村に対しましては、積極的でない区市町村よりも予算が行っているということで、それは本当に結構なことだと思います。こういうことが重なれば、各区市町村もそのつもりで一生懸命福祉に取り組まれる。財源があるということは、本当にいいことだと思います。
 次に、三番目の質問をさせていただきます。
 平成十二年度は初年度ということでございますので、年度途中から事業が始まったわけでございますけれども、包括補助制度が起爆剤となって、地域の福祉基盤の整備が大きく進展したというようなことがわかりますけれども、今後さらにそれが期待されるわけであります。また、区市町村の独自なアイデアを生かすというコンセプトも大きく花開いたと聞いておりましたが、重立った先駆的な取り組みをしたのがありましたら、お伺いしたいと思います。

○村山企画担当部長 確かに、今お話しのように、最初の年でございまして、各区市町村では補正で対応しなければいけないというような事情もあって、当初、我々も心配していたわけでございますけれども、相当積極的に取り組んでいただけました。
 この事業の中には、区市町村が実情を踏まえて創意工夫を生かしていただこうということで、先駆的事業に対して、上限で、一事業一千万、事業費全額補助というような制度がございます。これを活用して、十二年度には、ある山間部の自治体で、そこはワサビが名産でございまして、従来から、傾斜地にあるワサビ田に、モノレールのようなものを、荷物を運んだりするのに使っていたわけですが、それにヒントを得まして、車いすでも乗れるような、高齢者あるいは障害者のための福祉モノレールというようなものをつくっていただいたというようなことがございます。
 また、商店街の店主さんなどの協力を得まして、ボランティアで、軽自動車を活用して地域の人々の足がわりの送迎サービスを行うとか、あるいは商店街の空き店舗を利用して、アンテナショップを整備して、障害者のつくった商品を販売して、障害者就労の場をつくり出したような事業というような、それぞれの地域の特性あるいはそれぞれのアイデアを生かしたいろいろな取り組みがなされてまいりまして、これから一層こういう取り組みがなされればと思っております。

○林田委員 奥多摩町のモノレールがそうですか。--ありがとうございます。せんだって、台風の災害を見に行かせていただいたときに、これが一千万かかったモノレールだといっておりました。ありがとうございます。
 次に、霞が関の官庁や、あるいは都庁の中ではなかなか思いつかない、区市町村の独自性があるということでございますが、区市町村の取り組みが核となる新しい福祉の到来が、これから十三年度、十四年度と期待されるわけでございますけれども、こうした地域で芽生え始めた独自性あふれる積極的な取り組みを推進し、それぞれの特徴や力を生かしていくことは、真の意味での利用者本位を徹底する新しい福祉基盤の構築となると思います。
 都といたしましても、こうした地域の取り組みをしっかり支援することが肝要でありまして、こうした取り組みを活発化させることによりまして、障害者や子育てなどを支える、地域の中での福祉基盤の整備が確実に進んでいくものと思うわけであります。
 こうした観点を含めまして、地域の中での福祉基盤の整備に向け、この包括補助制度を今後さらに積極的に活用していくことが必要と考えますけれども、所見をお伺いしたいと思います。

○村山企画担当部長 委員ご指摘いただきましたように、利用者本位を実現する福祉改革を推進していく上では、区市町村が地域の核になって、地域に必要な福祉基盤の整備に主体的に取り組んでいただくということが、とても大事なことだというふうに考えてございます。
 この十二年度に創設した福祉改革推進事業は、区市町村がその気になると、やる気になれば、そのアイデアが生かされる、創意工夫がそのまま生かせるというような、そういう新しい仕組みでございまして、福祉改革の「地域」というキーワードに非常にふさわしい制度だというふうに、私どもとしては自負をいたしております。
 今後とも、この事業を活用いたしまして、地域での福祉基盤の整備に向け、区市町村の主体的な取り組みあるいは特色のある事業を積極的に支援してまいりたいと考えております。

○木内委員 十六期の議会から、決算のあり方というものが、時期の点も含めて変わってまいりました。すなわち、次年度の予算編成に向けて、議会での議論を反映できるような、こういうタイミングの新たな決算のあり方に変わってまいりました。したがって、本委員会においても、十二年度決算を基軸として、施策の継続性、あるいはまた来年度に向けての予算編成に大きな示唆を与えるような、こうした政策形成に資するような議論というものを展開していく必要がある、これが実は今回からのシステムにおける私どもの決意でございまして、もとより、申し上げるまでもなく、議会と理事者側とのあり方というのは行政の両輪でありまして、議会の議論の中から一定の成果を紡ぎ出し、それを具体的に予算に反映していくということが、この決算審議における大きな意味であろう、こういうふうに思っているわけでございます。
 とりわけ、新しい時代展開の中で、人々の、都民の命と、そして生活と健康を守るという視点から、福祉の分野における施策の重要性はこれまで以上に大きくなってきているわけでありますから、本委員会における分科会での福祉局の決算に関する議論というものの意味は、またこれまで以上に大きなものがあるのであろう、こういうふうに思うわけであります。
 さて、十二年度の決算ということでございますけれども、私は、この十二年度の高次脳機能障害対策に対する福祉局の事業を中心にお尋ねをしていくつもりであります。
 新しい時代の展開とともに、新しい福祉面での措置を必要とするさまざまな社会問題が惹起されてきておりますけれども、この中でも特に高次脳機能障害対策というのは極めて重要な課題である、こう私は認識をしております。この上から、私どもは平成十年、都議会の本会議におきまして、高次脳機能障害対策に対する施策の構築を東京都は早急に行うべきであるという主張を行いました。
 申し上げるまでもなく、高次脳機能障害と申しますのは、かつての古い時代には存在しなかった、いわば時代が生んだ新しい病であるということがいえるわけでございます。すなわち、脳血管疾患あるいは交通事故などの不慮の災害によって脳外傷を受ける。これによって記憶障害、言語障害、知覚障害、空間障害等の多様な障害というものが、時間の経過の中でまだらに起こってくるために、外見ではなかなかその障害が認知されない。あるいはまた、そういう障害のために、いわば社会復帰が極めて困難であり、社会的認知が希薄である。また、収入の道を閉ざされた、そういう患者本人や、あるいは家族にとっては、これは大変重要な問題である。にもかかわらず、福祉や、あるいは医療の制度の対象になっていないために、まさに日々、患者やご家族の方々は塗炭の苦しみの時間の経過を持っているわけでございまして、まさに新しい時代の中で、行政は、この問題についても大きくその役割を果たすべきである、こういう訴えをしてきたわけであります。
 そうした私どもの訴えに対しまして、十一年度には、我が国では初めて、高次脳機能障害に対する実態調査が、全国に先駆けて東京都によって行われました。その結果、四千二百人という患者さんが都内だけでもおられるだろうという推計の結果が出たわけでございます。
 この問題については、さまざまな角度からの施策が必要でありますけれども、例えば衛生局あるいは福祉局の分野において懸命なご努力を願いたいという要請をしてまいりました。いろいろな問題が指摘されるわけでありますけれども、例えば患者さんやそのご家族が、この問題被害あるいは実態に対して、救済を求めに区市町村保健所の窓口を訪れた際、行政関係者、窓口に携わる関係の職員の方々にさえ、この問題に対する認識がないために、いわば門前払いに遭うというケースが、あちらこちらの区市町村で見受けられたわけであります。
 そこで、私どもは、こうした実態調査や、あるいは診断技法の確立や、リハビリのあり方を、今後精力的に施策として推進していくことは必要であるけれども、同時に、経過的に、そうした施策の確立が行われ得るまでの経過的な対応として、各区市町村等の窓口で、こうしたご相談に見えた方への対応がスムーズに、そしてまた血の通った形で行われ得るように、こうした行政の現場における職員の方々を対象にした、高次脳機能障害対策に関する講習会を開き、この問題への認識を深めるとともに、対応を有機的に行うべきである、こういう指摘をしてきたわけであります。
 そして、十二年度ぎりぎりでありましたけれども、二月十五日、都内におきまして、各区市町村保健関係者あるいは医療関係者を対象にした、高次脳機能障害に関する講習会が開かれたわけであります。
 まず第一にお尋ねをいたしますのは、この講習会が行われた結果、どのような変化が各区市町村の窓口で見られたのか、その成果についてお尋ねします。

○高橋障害福祉部長 東京都が本年二月十五日に実施いたしました、高次脳機能障害についての講習会の成果についてのご質問でございますが、この講習会には多数の参加者が集まりまして、高次脳機能障害の医学的な定義や生活実態などについての講習を受講いたしました。これによりまして、相談窓口職員がこの障害を理解し、当事者や家族の相談を受けとめられるようになるという、講習会の当初の目的を達成することができたと考えております。

○木内委員 講習会の内容というものは、高次脳機能障害における医学的定義、あるいはそうした患者さんやご家族の生活実態、あるいは旧来のリハビリテーションのあり方でありますとか、あるいは専門家からの日常生活に関する講義、これに加えて、最後は、家族の会の皆さん等も含めたパネルディスカッション等も行われた、こういうふうに聞いておりますけれども、間違いないですね。

○高橋障害福祉部長 先生おっしゃるとおりでございます。

○木内委員 先ほどの答弁で、当初の目的を達成することができた、こういうふうにいわれているわけでありますけれども、具体的に、区市町村での取り組みを俯瞰されて、都としてはどのように認識されていますか。

○高橋障害福祉部長 平成十三年度に開設された地域の福祉センターでの講習会などで、高次脳機能障害が取り上げられておりまして、区市町村における取り組みが進んできたと考えております。

○木内委員 今、確かに、区市町村での取り組みが行われてきたという答弁でありますけれども、実は、私のもとに寄せられております関係団体あるいは関係者からの要請、要望等を仄聞いたしますと、必ずしもそうでない実態があります。すなわち、自治体によって、極めて前向きに取り組み、そしてまた、血の通った、まさに相談者の意を酌んだ対応が行われているところと、今なお、残念ながら高次脳機能障害という文言すら知らないという窓口の職員がいる、そういう実態もあるわけであります。
 これにはいろいろな事情が考えられると思います。二月十五日に行われて、まだ半年余りしかたっていないのに、人事がその間行われたり、あるいは人事担当者の申し送り等がまめに行われていないなどのケースもあると思いますけれども、同時に、いろいろな理由や、あるいは相談窓口の体制によって、こうした所期の目的が必ずしも達成されていない、こういうことがいえるのであります。
 私はこういう場で、どこの区、どこの市がどちらの分類に属すかということについては、あえて言及しませんけれども、実態があることは、現場主義に徹する私どもの議員のもとに寄せられる情報から間違いのないところでございまして、こうした実態に即した新しい十二年度の事業の継続的な効果をもたらす意味からも、さらに周知徹底等行う必要があるのではないか、こういうふうに思うわけであります。
 すなわち、理解が進んでいない自治体等に対する、さらなる強力な周知徹底が必要であるということが一つ。それからもう一つ、高次脳機能障害者と接する機会の多い区市町村職員等の皆さん、こうした方々へのさらに理解を深める意味からも、今後、具体的なさらに拡大した形での施策の展開も必要である、こういうふうに思うんですね。
 これはやはり私どもの主張でありますけれども、衛生局では、医家用のマニュアル、あるいは関係者、さらに家族に対するマニュアルを掲載したパンフレットの作成を今急いでいるということでありますけれども、こうした資料も活用しながら、窓口における対応能力をこれから向上させていく必要がある、こう思いますけれども、その点いかがでしょうか。

○高橋障害福祉部長 先生ただいまおっしゃいますように、高次脳機能障害につきましての理解をさらに深めるために、衛生局で作成を今年度中に予定をしておりますマニュアルやパンフレットを関係機関に配布するなど、積極的に働きかけていく必要があると考えております。
 パンフレット等につきましては、福祉事務所や地域の障害者福祉センターなどに配布することを考えております。

○木内委員 今、配布先の例示がありましたけれども、私は医療関係者からの要請も大変に強いように聞いております。そうした機関、機能に対しても、これは周知徹底すべきだと思いますが、どうでしょうか。

○高橋障害福祉部長 先生おっしゃいますように、地区の講習会等におきましては、医療関係者も多数参加していると聞いておりますので、改めて医療関係者にも配布していきたいと思っております。

○木内委員 それで、この問題の対策のあるべき形といいますのは、社会的認知を行って、施策の中で明確にこれを位置づけして、具体的展開を図っていくことだと思うんです。さらに、その大前提として必要なのが、診断技法の確立でありますとか、あるいは医療面における判断基準の設定、こういったものがもとより必要なわけであります。しかし、こうした作業の結論を得るまでは、なかなか時間のかかることでございますから、すべての施策というものを、診断技法の確立等を待つのではならない。これを待っていたのでは、経過的に、こうした患者さんやご家族のご苦労というのは絶え間なく続いているわけでありますから、今の段階における施策の展開、もっといえば、ルールの柔軟な運用等によって、さまざまな施設での受け入れ体制というものを考えていく必要があるであろう、こういうふうに思うわけであります。
 東京都は、心身障害者あるいは児の通所訓練等事業において、高次脳機能障害者を受け入れるべきだ、こういうことを私どもは訴えてきました。これを反映して、東京都は、この事業も行っているわけでありますけれども、今回審議をしております平成十二年度において、その利用状況はどんな内容でありましたか。

○高橋障害福祉部長 東京都におきましては、心身障害者児通所訓練等事業におきまして、高次脳機能障害者の方で、身体障害者手帳の所持にかかわらず、補助対象者に含むことといたしまして、区市町村に周知を図ったところでございます。その結果、平成十二年度の調査によりますと、十九名の方が小規模作業所を利用しているという結果でございます。

○木内委員 これは関係者の方には大変朗報になっているところでありまして、例えば高次脳機能障害のご本人、たまたま身体障害があれば、障害者手帳を受けられますけれども、必ずしも高次脳機能障害というのは手帳を持てない。にもかかわらず、実態としてはそういう障害を持っているというわけでありますから、今いったような通所訓練等の事業に受け皿としてこれを利用できる環境ができているということは、大変に喜ばしい結果となっておりますけれども、しかし、今の十九名という数字は、全体のあり方からすると、極めてまだ少ないということがいえると思うのであります。
 どうでしょう、これ。全く受け入れが行われていない区市町村があるんじゃないですか。私は、区市町村における高次脳機能障害者の受け入れ体制の充実を図るために、都がこれまで以上にさらに強く働きかけていく必要があると思うわけであります。こうした相談窓口がまだ脆弱な実態であるとするならば、そうした施設への入所を希望する方々がその相談窓口に足を運んでも、それ以上に実は進ちょくを見ることができないという、そういう実態もあるわけでありますから、これについてはぜひ明快な答弁を願いたいと思うんです。

○高橋障害福祉部長 改めて、東京都といたしましても、区市町村職員や小規模作業所職員などの高次脳機能障害に対します理解を深めまして、そして受け入れが促進されますように、東京都として取り組んでいきたいと考えております。

○木内委員 十二年度の数字が出たところでありますけれども、この十二年度の取り組みを踏まえて、さらに十三年度以降についてのご決意を聞いたわけであります。十三年度まだ途中の段階ですが、ご報告できる、期間を区切っての数字が出せますか。何名ぐらいになっていますか。

○高橋障害福祉部長 引き続き、心身障害者児通所訓練等事業における高次脳機能障害者の方の積極的な受け入れにつきまして、区市町村に働きかけてきました結果、本年度に入りまして、十三年五月には二十八名の方が通所されているという報告がございます。
 今後とも、高次脳機能障害の障害特性に応じましたきめ細かな施策を講じるよう、国に要望するとともに、区市町村と連携して支援を図ってまいりたい、こう考えております。

○木内委員 区市町村への強い連絡調整による協力方の呼びかけとともに、国に対しても強い要請をすべきであると私は思うのでありますけれども、特にショートステイあるいはデイケアの利用につきましても、法律事項としての縛りがあることは十分私は承知しておりますけれども、国へこうした利用が可能となるような仕組みづくりの要請を行うとともに、いわば経過的に、今、可能なものは何でも精力的に施策を展開させていくということが大事だと思うんです。
 ご家族は二十四時間患者さん本人を介護するという形態がほとんどでありますために、本人はもとより、ご家族の方のご苦労というものは日々大変なものであります。そうした方々自身の介護の環境を整える意味からも、ショートステイやデイケアサービスが受けられるようにするような、そういう措置というものも必要になってくるのでありまして、このことも国に対して強く要請をすべきだ、このことを今お訴えをさせていただいて、私の質問といたします。

○大山委員 平成十二年度というのは、いうまでもなく、シルバーパスだとか老人医療費助成を初め、福祉の切り捨てが始まった年です。この年は福祉の予算額が前年に比べて下がりました。福祉費が前年に比べて下がったのは、ずうっと見てみましたら、民生費から福祉費にかわった昭和五十六年度以来のことなんです。我が党は、福祉切り捨てに厳しく反対してきましたけれども、その結果がどうだったのかということが、今回の決算審議の重要な課題だというふうに考えています。
 そこで、まず伺いますけれども、切り捨ての主な対象となりました福祉十事業と特別養護老人ホーム補助金を合わせた平成十一年度と十二年度の支出額の総額はどうなっていますか。

○村山企画担当部長 まず、お話しの施策見直しを実施させていただいた十事業の平成十一年度決算は、一千四十二億円余りでございまして、平成十二年度は九百七十五億円ということで、六十七億円ほどの減となっております。
 しかしながら、十二年度このような施策見直しで生み出された財源につきましては、これを活用して、福祉改革に向けまして、福祉局だけで百億円を超える充実策を実現をいたしているところでございます。
 さらに、平成十二年十二月には福祉改革推進プランを策定をいたしまして、十三年度は戦略プロジェクトなどを含めまして、福祉改革を本格的に進めるためのさらなる事業展開を図ったところでございます。
 また、お話しの特別養護老人ホーム運営費補助につきましては、介護保険制度が導入されまして、そこでその制度にのっとった事業が行われることに伴いまして、当然の措置として都加算、公私格差是正事業などについて廃止をいたしたわけでございまして、十一年度における当該分の約二百二十億円でございますが、事業費は当然ゼロとなってございます。
 これとあわせまして、介護保険制度への円滑な移行のために、経過措置として特別養護老人ホーム経営支援事業を行っているわけでございまして、そういう意味では全く違った制度の比較ということでございますので、平成十一年度と十二年度を先生お話しのような形で比較することは、必ずしも適切ではないというふうに考えてございます。
 単純に、お話しの十事業と特別養護老人ホームへの補助金トータルとを合わせました支出額は、平成十一年度千二百六十三億円余、平成十二年度一千五十四億円余でございますが、しかし、これは福祉局の事業の全体としての十一年度から十二年度に向けた変化、発展というふうなものを議論をしていただく上では、意味のある比較ではないというふうに考えてございます。

○大山委員 支出額の総額がどうなっていますかという質問に対して、随分と、弁解も含めて、述べていただいたわけですけれども、結局、十一年度は千二百六十三億二千七百万円、十二年度一千五十四億円ということですから、差し引きして二百九億二千七百万円のマイナスなわけです。特別養護老人ホームに対して、制度が違ったからといって、特別養護老人ホームが受ける補助金というのは、実質的には減っているわけですから、それは特別養護老人ホームへの補助金の額なわけですね。差し引きして二百九億二千七百万円です。福祉切り捨てはいろんな経過措置がとられていますから、十二年度の途中から切り捨てが始まったというものもありますけれども、初年度だけでも二百九億円もの切り捨てとなったわけです。
 老人福祉手当や老人医療費の助成、それからシルバーパス、重度障害者、心身障害者手当などを初めとして、これからまだまだ影響が拡大していくという深刻な問題なわけです。
 そこで、都民への影響という点ですけれども、きょうは老人福祉手当についてちょっとお聞きしたいと思っています。
 老人福祉手当は、十二年度から新規受け付けが停止されました。それまで受けていた方は、給付額が毎年四分の一ずつ削減されて、平成十五年の三月で廃止されるということになっているわけです。
 私いろいろな方からお話を伺っていますけれども、例えば、七十歳を超えている夫が最近倒れて寝たきりになってしまったわけです。特別養護老人ホームにもすぐに入れるというわけではありませんから、入院したら月に二十万から二十五万というふうにいわれて、二人とも年金の生活ですからとても払い切れない。こうした場合、従来だったら老人福祉手当で何とかやっていかれたわけです。ところが、新規の受け付けが停止されて、この方、本当に途方に暮れているわけです。しかも介護保険の保険料だけは容赦なく天引きされているということなんですね。
 老人福祉手当は、介護保険が始まるから大丈夫なんだ、そういうふうにいって切ったわけですけれども、こういう方の場合は全く救われないですね。特別養護老人ホームの希望者はますますふえていて、入りにくくなっています。介護療養型の病床は進んでいません。従来どおりやはり入院せざるを得ない高齢者の方々がたくさんいらっしゃるわけです。こういう方にとって、老人福祉手当の見直しは、切り捨て以外の何物でもないというふうに思いますけれども、どうですか。

○若林高齢者部長 老人福祉手当につきましては、在宅の寝たきり等の介護を要する方々のために支給される手当でございます。この手当につきましては、新たにできた介護保険制度のもとでは、介護保険による在宅サービスの給付を受けられるということになりますので、そういう意味では、制度的に内容が重複するということから、見直しを実施したものでございます。

○大山委員 今、入院せざるを得ない方々が大勢いらしゃる、一定数いらっしゃるということを私述べたわけです。
 資料の21、22、23というふうに、要介護認定者数、それから居宅介護(支援)サービス受給者数、施設介護サービス受給者数、これを見ますと、合わせますと、認定者数に比べて介護度が高い人ほどサービスを受けていない人がいるわけですね。全体を見ると約二割介護を受けていないわけですけれども、この二割は、どういうふうに分析していらっしゃるのですか。

○吉川保険部長 今、先生、委員会資料の21や22をもとにおっしゃいまして、要介護度が高い方が必ずしもサービス利用が低いかどうか、全体的な分析をしなければいけませんけれども、一般的にいわれているのは、例えば家族の方々が介護をしっかりやられるという世帯であったり、それから介護保険との関係でいうと、医療保険でいいますと、病院に入院されているということで認定は受けたけれども、介護保険を使っていない、ということを承知しております。

○大山委員 今ご答弁にあったように、家族で見ているか、もしくは入院していらっしゃるんですよ。私もケアマネジャーさんに何人か聞きましたけれども、この数というのは、大体入院されている方か、家族で見ていらっしゃるのだろうというわけです。
 例えば、七十代で半身不随の奥さんを在宅で介護している男性ですけれども、介護保険料も年金の身にかなりつらいし、介護保険を利用しようと思えば、利用料を払わなければ利用できないし、医療費もどんどんふえるばかりだと。取られるものはふえるけれども、唯一の老人福祉手当はどんどん切られてしまっている。特別養護老人ホームを申し込んだけど、到底いつのことだかわからないというふうにいわれているわけですね。今答弁でも、入院されている方が一定数あるということを答弁されているわけですから、当然、せめて老人福祉手当を、入院せざるを得ない人には出すべきなのじゃないかというふうに思っています。当然、老人福祉手当の削減、廃止を中止して、制度の充実をするように求めておきます。
 もう一つは、特別養護老人ホームの補助金です。
 この年から特養の運営費都加算と公私格差是正制度が廃止されて、経営支援事業になったわけです。十一年度の特別養護老人ホームの補助額と、十二年度の予算と決算の額は幾らですか。

○若林高齢者部長 特養ホームに対する都加算の十二年度の予算につきましては、経営支援事業の予算につきましては百億でございます。それに対しまして、支出は約七十八億でございます。

○大山委員 一〇ページの9の資料にありますように、平成十一年度は二百二十一億二千二百万円だった補助が、この年の予算で、先ほどお答えしていただいたように百億円になったということで、この時点で大きな問題になったわけですね。それを、さらにこの決算を見ますと、約二十二億円も使い残している。私、本当にこれはびっくりしました。
 二十二億円使い残した理由というのは何ですか。

○若林高齢者部長 特養ホームに対する経営支援事業の内訳を見ますと、特養ホームのサービスの向上と介護保険への円滑な移行の支援が七十五億でございます。そして、特養ホームを取り巻く周辺環境の整備として二十五億円、合わせて百億円を予算計上したものでございます。
 そのうち二十二億円の不用額につきましては、特別養護老人ホームの周辺環境整備の中で、十二年度開設施設のうち、運営つなぎ資金の支援という項目があったわけでございますが、これに申し込まなかった施設があったこと。それから経営継続困難に陥った施設に対する支援ということを予定しておりましたけれども、幸い経営継続が困難に陥った施設がなかった、こういったことが主な要因でございます。

○大山委員 いろいろいいましたけれども、道理はないと思うんですね。それで、百億円に下げた段階でも、もう今までの二百二十一億の半分以下ですから、それでも大変なわけです。十三年度の予算でも特別養護老人ホームの経営支援事業は六十億に下げる予定だったということですけれども、施設や法人の皆さんの強い要望と、私たちもやりましたけれども、政党要望で七十億に戻したという経過もあるわけです。その一方で、十二年度に、せっかく百億つけた予算を二十二億も使い残すなんていうのは、とても納得できないといわざるを得ません。
 私たち、これは介護保険がスタートしてからですけれども、十二年の九月に都内の特別養護老人ホームの実態調査を行って、第三回定例会でその調査報告も調査内容も示しながら実態を明らかにしたわけです。そのとき、都内三百カ所の施設のうち、過半数の百五十九施設から回答をいただいているんです。
 その結果は、介護保険で施設運営が大変厳しくなったとの回答が六〇%です。どちらかといえば厳しくなったを合わせると、実に八八%が厳しくなったと回答しているわけです。都加算事業廃止の影響について回答を寄せた百三十一施設のうち七九%が、影響は大きいというふうに回答をしています。
 ここの時点で、重大な問題は、として指摘したのは何かといいますと、こうした施設運営の厳しさが職員配置の削減や利用者サービスの低下につながっていることだということを指摘しました。全体の六五%が常勤職員を減らし、非常勤に切りかえていたのですね。レクリエーションの削減やバス旅行の中止、それから、施設での生活を豊かなものにするということで行われていたサークル活動や誕生会など行事の見直しをした施設は、五六%に上る。それから、食事の質が落ちたという声もあり、実に六〇%以上の施設が、介護保険で利用者サービスは厳しくなった、そのような調査結果があるわけです。そうやって、重大な問題なんだというふうに指摘していたわけです。
 東京都が介護保険を育む会というのをやっていらっしゃるわけですけれども、その中で公募委員の方がこんなことを発言しています。公募委員の一人ですが、八十六歳になる母親がおりまして、目黒区の特養ホームにお世話になっていますということでお話を始めて、同じ特養ホームの中で家族の方と話してみますと、介護保険になってから非常に悪くなった、もとの方がずっとよかったということをいっておられます。
 具体的にどういうところかというと、まず、単に預かっているというだけでなくて、いろいろ楽しみとか老人の生きがいとか、そんなものをつくり出そうとする姿勢がよく見えて、いろいろな行事があったのですけれども、介護保険になったら、月一回の誕生会もなくなった、それから、今まで調理師がいて季節のお料理を出してくれていたのですけれども、これが仕出しになった、それから、手が足りなくなってきて、介護する職員の方を呼び出すベルがポンポン鳴りっぱなしですと。ここは、この方もいっているのですけれども、区内で一番いいといわれている施設なわけですね。
 この東京都が主催した介護保険を育む会でも、このような発言なんです。この声をどのように受けとめていらっしゃるんですか。

○吉川保険部長 東京の介護保険を育む会での公募委員からの発言について大山副委員長の方で触れられましたので、私の方で答弁させてもらいますが、あの発言は、ご本人様に後で伺ったところ、あのお母さんは、介護保険が始まる、時期はちょっと忘れておりますが、そう時間があいていない時期に入っているんですね。で、ご家族としては、周辺、いわゆる入所者の仲間内から、従前に比べて落ちたという話は聞いたという発言であります。
 先ほど先生がおっしゃった全国の特別養護老人ホームの経営者のアンケートではなくて、先生方の会派で都内の施設長にアンケートをかけたものを昨年公表されているわけですが、私どもがよく聞いているのは、介護保険制度が始まって全国の特別養護老人ホームの経営者は、経営も極めて安定的に運営されているというふうな声の方が多いということを紹介されていると思います。

○大山委員 私は全国の話をしているのじゃないんです。介護保険が始まる前から、東京都はきちんと高齢者への処遇を充実させよう、それから人間的な生活を保障しようということで、都加算があり、公私格差是正制度があったわけですよね。それをずうっと積み重ねてきたことを、百億円にまで削ってしまった。それで、全国は、国基準は、都基準よりも低かったですよ。だから、介護保険が三対一の人員配置にしたわけですから、当然国基準より高く、今までよりも高くなっているわけですから、今までよりは安定したというところが多くなるというのは、これはもう当たり前の話です。これは全国の話をしているのじゃなくて、東京都の都内の特別養護老人ホームの話をしているわけです。
 しかも、この公募委員の方は、みずからの経験とそれから周囲の方々の経験、だから自分だけの主観ではない発言をしているわけですよね。
 こうやって自分たちがつくった介護保険を育む会、何をはぐくめるわけですか、これで。きちんと公募委員の方がいろんな方の意見を聞いて発言したことを、これは全く無意味だということなんですか。もう一回答えてください。

○吉川保険部長 私どもは、公募委員を募った趣旨からいっても、ご意見はきちっと受けとめて、議論をして、必要なものについては国に提言していくという姿勢は変わりません。
 先ほど先生おっしゃいましたけれども、私どもは、介護保険制度というのは日本国家として法律に基づいてつくられた制度ですから、他県が安定的に経営できて、東京都ができないはずはないというふうに思っております。

○大山委員 内容を充実させよう、それから、さっきいっていたみたいに、より人間的に--一カ月に一回の誕生会だってやめたというわけですよ。それがどのレベルで安定したのかというところがやはり重要だというふうに思うんです。きちんと高齢者が人間として尊重されて、それで最後まで生きがい持って生きられる、そういうところをきちんと保障するところで安定しているのか、それとも、今だって非常勤の方が多くなって、都内の特別養護老人ホームのお話を聞けば、打ち合わせ時間だって十分にとれない。だから、おむつを交換するときだって、きちんと声かけをしたいけれども、それさえもできなくなって、もう何十年前に逆戻りなんだということなんですよね。都民の声とか、それから都内の特別養護老人ホームの今までの到達点からの状況がどうなっているかということを、きちんと福祉局は見るべきだというふうに思っています。
 こうやって幾つか切り捨てた分のところを見ましたけれども、福祉局は、切り捨てじゃなくて充実なんだということをしきりにいっていたわけですね。その充実するといっていた事業はどうなのかということです。この十二年の予算特別委員会で神藤前福祉局長は何といっていたか。障害者のホームヘルプサービス、特に新規の二十四時間巡回型ホームヘルプサービス、そして重度心身障害者グループホームモデル事業、あるいは重度生活寮の本格実施、こういうものに充てさせていただくと答弁しています。
 これらの事業は、もちろんもう都民にとってなくてはならないことですから、何を削るとかかにを削るとかじゃなくて、独自に充実させていかなきゃいけない事業だというふうに思っていますけれども、実際、この事業はどうなったのかということを、この決算で見なければならないというふうに思っています。これらの事業の決算状況を示してください。

○高橋障害福祉部長 平成十二年度の決算から、心身障害者児ホームヘルプサービス事業につきましては--決算数字だけでよろしゅうございますか。

○大山委員 はい。

○高橋障害福祉部長 執行率だけでよろしいですか。

○大山委員 執行率ですね。

○高橋障害福祉部長 はい、わかりました。
 心身障害者児ホームヘルプサービス事業につきましては執行率五三・〇%、巡回型ホームヘルプサービス事業につきましては二一・七%、重度身体障害者グループホームにつきましては四一・七%、重度生活寮につきましては二〇・二%、そして--よろしゅうございますか。

○大山委員 はい。今その決算の執行率をいっていただいたわけですけれども、ホームヘルプサービスも半分。これ、特にというふうに前局長が強調された二十四時間のは、わずか二一・七%。それから重度の生活寮は、十カ所の予定だというふうにこの決算書には書いてありますけれども、わずか四カ所だけということで、二〇・二%の執行率でしかないわけです。これも充実させるといっていた仕事だってこんな状況なわけです。
 重度身体障害者グループホーム、これは四一・七%の執行率だということですが、同じ区で二カ所目を申請したら、二カ所目は補助できないというふうにいわれたというんですけれども、本当でしょうか。

○高橋障害福祉部長 ただいまのご質問にお答えする前に一言お答え申し上げます。
 先ほどの決算でございますけれども、いずれも新規事業等でございますために、年度の途中から実施しているところがたくさんございます。その結果で執行率が下がっているということをご理解いただきたいと思います。
 ただいまのご質問でございますけれども、重度身体障害者グループホームの設置箇所数でございますが、福祉改革推進プランにおきまして、十六年度までに十二カ所と予定をしております。したがいまして、当面は入所待機者などの状況を踏まえまして、都内全域にバランスよく配置をしていきたい、こういう考えでございます。

○大山委員 バランスよくといったって、十二カ所じゃ、もう本当に多くの方が待っていらっしゃる中で、十六年になったって十二カ所しかできないということなんですよね。圧倒的に少ないわけですから、やる気があってやり始めたところ、これは本当に大事にしていかなきゃいけないというふうに思うんです。だから、やる気になってやり始めたところにぐらいは補助すればいいじゃないですか。
 そのほかにも、福祉改革推進プランに数値目標を載せておいて、執行率が大変低いものがあります。知的障害者ガイドヘルパーはわずか一・五%の執行率です。十二年度は、福祉改革推進プランでは、利用者数の目標は六百四十三人というふうに、知的障害者ガイドヘルパーはなっていますけれども、実績はどうなっていますか。

○高橋障害福祉部長 知的ガイドヘルパーの執行率の低い理由、またその実績ということでございますけれども、この事業も十二年度の新規事業でございまして、区市町村の実施体制が整わなかったことが原因でございます。
 十二年度におきましては、三区三市しかなかったために執行率が上がらなかった。しかし、十三年度は、今現在二十九の区市町で実施の見込みでございまして、この事業は着実に伸びていくものと考えております。

○大山委員 さっきから年度途中の実施だからとかというふうに弁解をしていらっしゃるわけですけれども、予算特別委員会で神藤前局長は胸を張って、この事業を拡充します、充実しますというふうにいったわけですよね。そのものに充てさせていただきますといったわけですよ。それが、執行率が一・五%だとか二〇・二%だとか、そういう非常に低いレベルであるわけです。切る方はしっかりと切っておいて、充実するといっていたものが予定どおりいっていないというものが少なくないわけです。そのことを指摘しておかなければいけないと。これは事業の面での充実がどうだったのかという話でした。
 次に、福祉は切り捨てでなく充実だといっていたもう一つの理由は、福祉費の一般会計に占める比率が上がっているということでした。これはどうなのかということですけれども、資料の1で用意していただきましたが、福祉費を三百十六億円も使い残したために、一般会計に占める割合というのは、前年の八・四%から八・二%と、〇・二ポイント下がってしまいました。
 予算で見ましても、予算案の段階では、一般会計に占める比率は、十一年度が八・九%、十二年度は九%で、〇・一%の伸びだというふうにいわれて審議したわけです。しかし、補正後、最終補正したものは、ここの表に出ている十一年度、十二年度、いずれも八・四%ということで、伸びていないわけです。
 一般会計に占める比率で見ても、福祉は切り捨てでなく充実だというふうにしてきた福祉局の論拠というのは、この決算を通していよいよ崩れ去ってしまったということじゃないかと思っています。
 最後にといいますか、三百十六億円に上る不用額について伺いたいのですけれども、これほどの予算の使い残しをして、一体どういうふうに考えていらっしゃるんでしょう。

○村山企画担当部長 まずその前提として、今回、私どもの十二年度決算のご審議をいただいているわけですけれども、この年というのは、戦後のずうっとやってきた東京都の福祉施策、それは四十年代に大きく今の形でできたわけですが、それを根本的に変えていこう、新しい時代にふさわしく変えていこうということで、国の制度もいろいろ変わってきた、そういう中で、制度もいろいろ充実をしてきたという中で、これまでやってきた都の施策が十分ではなかった、もっと新しい形に変えていかなければならないということで、負担の公平性の問題であるとか、あるいはバランスの問題であるというふうなことを総合的に勘案して、新しい福祉をつくるためのいわば前提条件づくりとして実施したものでございまして、その点まず、その歴史的意義についてご理解を賜りたいというふうに思います。
 その上で、我々といたしましては、そこで見直しの結果出てきた財源というものを活用して、新たな施策を今実施しているところでございまして、十二年度も実施いたしました。さらに、福祉改革推進プランを策定して、十三年度以降、今頑張ってやっているところでございます。
 そういう中で、福祉の事業というのはどうしても、先ほど来、所管部長からお話し申し上げましたように、区市町村が実施主体でございますので、実施をしていくに当たっては、新規事業の場合ですとなかなかすっとは軌道に乗らないという面はあるわけでございますが、そのことをもちまして私どもの努力があたかも無意味であるかのようなご指摘は、いささか不本意でございます。
 その上で、今の三百十六億円についてのお答えでございますが、私どもの所管している福祉費の不用額が、他の款に比べまして大きいことは事実でございます。しかし、これは実は理由がございまして、福祉費は、この間の福祉費の充実の結果として、知事部局の関係の款、十一ございますけれども、その中で最も大きい五千五百五十七億円という、建設局をしのぐ額になってございます。その結果、その中で執行残という、不用額という形になってございますが、その額も大きくなっているということでございます。
 実際に執行率で見てみますと九三・七%でございまして、これは先ほど申し上げた十一の款のうち、上から四番目の高い執行率になってございます。したがいまして、執行残の残額の絶対額だけで、あたかも福祉局がしかるべき仕事をしていないかのようなご指摘は、必ずしも当たらないのではないかというふうに考えてございます。
 また、経費構造の面から見ても、手当、医療費助成、施設の保護委託などといったいわば社会経済状況を反映して、制度的に義務費として支払うものが多くございまして、そういう中では年度途中で足りなくなれば、議会に補正をお願いしているようなこともあるわけでございますが、結果として不用額として残る場合もあるというようなことでございますので、この不用額の多寡をもって事業執行の中身を論じることは適当ではないと、かように考えてございます。

○大山委員 事実は、三百十六億円も残っているんですよ。二百九億円も削っておいて、三百十六億円残したわけですよ。この款別の決算で、福祉費以外にこれほど使い残したところってあるんですか。

○村山企画担当部長 今のお答えにつきましては、先ほど述べましたとおり、絶対額については、お話しのようなことではありますけれども、執行率については、十一の知事部局の款の中で上から四番目に高い執行率をやっているわけでございまして、予算の執行としては適正に行われているものと考えております。
 また、中身につきましても、執行残、執行残というふうにおっしゃいますけれども、例えば旧高齢者施策推進室分でいきますと、全体で百九十億円ほどの執行残、不用額がございますが、そのうち、特養関係の不用額で六十二億ほどございます。しかしながら、新規施設につきますと、予算上では十三件の新規を予定しておりましたが、決算上では十八件。継続は二十七件予定してございましたけれども、決算では二十八件。それから、特養の用地につきましても、予算では十一件を予定しておりましたが、決算では十四件というふうに、実施ベースの件数では、当初の予定を上回る事業の執行を見ておりまして、結果的に、例えば用地の場合ですと、公有地の減額というようなこともございますし、またご存じのような地価動向もございます。また、整備費については、進ちょくによるそれぞれの施設の特性というのもございますので、執行額の残額をもって見ても、必ずしも中身は見えない。
 したがいまして、今申し上げましたとおり、実施の件数では当初予定を上回って達成しているわけでございまして、このような形で私どもとしては、最少の経費で最大の効果を発揮すべく努力したと思っております。

○大山委員 目標よりも多く執行したものもある、それは結構ですよ。しかし、先ほど明らかにしたように、事業の面からいったって、前福祉局長が胸を張って、充実しますといった事業はどうだったのですか。だからこそ事業の面でも、それから予算に占める福祉費の割合でも、いってきたことは違うじゃないかというふうにいったわけです。
 こんなに使い残した額がどうこうといっていましたけれども、こんなに使い残したところはほかにはありません。不用額が二番目に多い住宅費で百六十五億円です。教育費の不用額は百九億円です。半分以下ですよね、三分の一。ないそでは振れないんだといって、福祉局は福祉を切り捨てた上に、いろいろなところで十万、二十万という補助金で削られて、多くの福祉団体の人が泣いていますよ。それが決算になると、三百十六億円も使い残す。都民としたら、補助金がなくなって、年にお花見と海水浴だけしかやっていなかったところさえ、何にもできなくなっちゃったという都身連なんかだってあるじゃないですか。
 そういうところを削って泣かせておいて、それで三百十六億円も使い残した。これはもうだれが納得するんですか。予算に対する信頼を揺るがすことになりかねないというふうに思っています。三百十六億円あれば、切り捨てた福祉十事業と特別養護老人ホーム補助金をもとに戻しても、百七億円おつりが来て、充実ができること、それ申し上げておきます。
 このように、平成十二年度というのは、少子高齢化対策がいよいよ重要となってきて、介護を社会的に支えるための介護保険制度も始まった、そういう年なんですね。そういう年に、民生費から福祉費にかわった昭和五十六年度以来初めて、福祉費の予算額が前年に比べて下がり、その緊縮予算をさらに三百十六億円も使い残して、決算においても一般会計に占める福祉の比重を引き下げた。東京の福祉にとって重大な年だといわざるを得ません。
 我が党は、引き続き、切り捨てられた福祉の復活と、福祉全体の総合的な拡充を求めていくことを表明いたしまして、次の質問に移ります。
 次は、虐待と児童養護の関係で少し質疑したいと思っています。
 資料で用意していただいたのが、児童虐待受理件数と児童相談所別の児童福祉司定数というのをつくっていただいています。この虐待の問題については、マスコミなどでも取り上げられて、児童虐待の防止に関する法律が十二年の十一月二十日に施行されていて、関心や認識がだんだん高まってきているという状況にあると思います。この表を見せていただきましたら、虐待の受理件数が、十年間で十五倍にふえているということがわかるわけです。
 十二年度に、この児童虐待の実態、東京の児童相談所の事例に見るという白書が十月に出されたわけですけれども、これとても参考になりました。この中で、虐待に対する社会的な関心が高まる中で、相談受理件数は今後も増加していくことが予想されますというふうに、この白書の中でも分析しているわけですね。
 虐待者の就労状況が、実父で定職のある者が六割弱にとどまり、不安定な就労状況が経済的な困難と結びつき、虐待へとつながる要因の一つとなっていますといっているわけですけれども、不況がますます深刻な状況になっている中で、不法なリストラだとか倒産など、今後さらにふえるということが予測されるわけですけれども、そんな中でも、子どもの受難を避けるためには、不況対策も必要だというふうに考えています。
 同時に、実母では、家庭にいる者の率が高いということでは、子育て支援も欠かせないというふうに思っています。
 虐待を未然に防ぐということが重要だと思っていますし、今述べましたように、総合的な対策というのが欠かせないことなんですけれども、きょうのところは、時間の関係もありますので、いただいた資料に基づきまして、虐待と児童養護施設、児童相談所などに絞って質問をしたいというふうに思っています。
 資料の18では、児童養護施設定員数と措置児童数の推移というのを出していただきました。これ、率も出してもらえばよかったのですけれども、平成三年度は措置児童数は八三・七%、それから、七年になると九一・二%になって、十年は九二・六%、十一年が九三・二%、そして十二年は九五・三%ということで、ここのところ急になんですけれども、児童養護施設の措置率が高くなってきているわけです。
 それで、措置率で見ると、十月の時点で九五%。これでもなかなか大変な率なんですけれども、ことしの十月一日の民間施設と都立の施設、五十一施設を見てみますと、十月一日時点で一〇〇%入所しているというところが十六カ所あって、あいている定員が一人から二人というところが二十三カ所なんです。ですから、十月一日の段階で、本年度七六%が満員か、もしくは一人か二人しかあきがないという状況になっているわけです。
 昨年は、とうとう定員を超えて措置されたというふうに聞いているんですけれども、これは本当でしょうか。

○笠原子ども家庭部長 昨年度でございますけれども、昨年度末は大変入所率が高くなりまして、十三年三月一日時点では、定員二千八百九十三人に対しまして、入所児童は二千八百五十四人、入所率九八・七%。大変高い率だったわけでございます。
 ただ、そうした中で、例えば兄弟ケース、こういった場合は養護施設に兄弟をばらばらに入れる、措置するというわけにまいりませんものですから、そうした場合には、同一施設への措置を行う必要がある。こういった理由から、一部の都立施設におきましては一時的に定員を超えた措置を図った、こういったところもありました。

○大山委員 今おっしゃったように、児童養護施設は、やはり必要な子どもが必要なときにきちんと受け入れられる定数があるというのが必要不可欠なことだというふうに思うんですね。それで、去年の状況でも、全体の措置児童数は九八・七%だけれども、実際は定員を超えて措置せざるを得ないという状況。当然、兄弟関係は今おっしゃったようなことでは、分かれて措置するわけにはいきませんから、そうなってしまうんですよね。現場の職員だとか、それから児童福祉司さんに聞けば、八割入れば、いつでも受けるというところから見れば、もういっぱいなんだということさえも聞くわけなんです。
 現場でどうなっているか。今、定員を超えたのは一時的なことなんだといっているわけですけれども、例えば民間でも、昨年は、三月一日付で、どうしても二人入れてほしいというふうにいわれたところがあって、三月に高校を卒業する子どもが二人いたので、その二人を二月末日で措置解除をして、受け入れたというところもあるわけですね。これは定員をオーバーしたというわけじゃないですけれども、当然卒業するまで措置解除はしたくないというふうに思っても、待っている子を受け入れるためにはそうせざるを得なかったんだというわけですね。
 また、定員内なんだというふうにいっても、高校生は、六畳の部屋に、私伺ったところでは、六畳に二人、それから小学生は三人なんですね。十二月から三月というのはとにかく定員いっぱいですから、六畳の部屋に、小学生の部屋だったら三つ机が置いてあって、寝るときはそこに三つお布団を並べなきゃいけない。高校生は大きな体になって、六畳に二人、机が二つということですから、本当に満杯状態なんですね。十二月から三月はそういう状況なんだと。
 今、虐待がふえて措置児童数がふえるということですけれども、虐待を受けている子どもというのは心にも傷がありますし、いろいろなケースがありますから、安心できる人間関係をつくるという点でも、やはり隣との距離というのは、一定、間を置かないと、人間関係は円滑にいかないというのは--普通だって、詰め込まれたら大変な状況なわけですけれども、とにかく定員内なんだからびっしり入れればいいというものじゃないというふうに思っているわけです。
 それで、もう一つ伺いたいのは、平成三年から十二年度で見ますと、児童養護施設の定員が年々減って、この十年間で五百四人の定員が減になっているんですけれども、これはどうしてなんでしょう。

○笠原子ども家庭部長 施設の定員減の主な理由でございますけれども、都立の都外施設を減らしたことによるものでございます。少子化によりまして、児童の数というのは減少傾向をたどっておるわけでございます。児童養護施設におきましては、定員と入所数との間に乖離が生じているということも事実でございます。ただいま先生お話がございました、要求資料の18、二〇ページのところでは、最近五年ぐらい見ましても、大体二百名から三百名程度、定員と措置児童数の差がございます。こうしたことから、施設の効率化、適正化等の観点から見直しを図るということで定員が減ってきたものでございます。
 こうした中で、都立の都外施設につきましては、児童相談所との連携が図りにくく、それから施設措置後の子どもに対する十分な援助が実施できない。例えば措置した児童に対しますアフターケア、これは児童相談所の児童福祉司等がやるわけでございますけれども、都外施設についてはなかなかそういった十分な児童福祉司さんのケアがやりづらい、場所的なものもございますので。そういったことから、計画的に定員減を図ってきたということでございます。

○大山委員 結局、五百四人減しているというのは、那古だとか宇佐美など都立の児童養護施設を廃止してきたことが大きな原因なんだということは明らかなわけですけれども、今のご答弁の中でも、少子化だけれども、少子化と児童養護施設を必要とする要保護の児童は、少子化には比例しないというのもこの表で明らかだというふうに思うんですね。少子化だから要保護児童は減るかといったら、そうでもなくて、平成八年度が二千八百人台ですけれども、ずっと二千七百人台で、コンスタントにといっては変ですけれども、そういうところで推移しているわけですから、少子化と要保護児童の必要性がなくなるというのが決して比例しないというのは明らかだというふうに思っています。
 しかも、効率化だといっても、子どもたちの状況というのは、先ほども述べているように、虐待の子どもたちもふえている。それから都立の児童養護施設では、これは六十四人ぐらいの定員ですけれども、そのうち心臓病の子が二人とか、小児糖尿病の子がいたり、愛情遮断症の低身長児がいたり、それから緘黙症の子がいたり、拒食児、それから過食児がいたり、病的な肥満が二人いたり、昼夜逆転している自閉の子どもがいたり、それからぜんそくの子、それから注意欠陥性行動障害という子が三人いて、一人は梅ヶ丘に一年入院して、一人は三カ月入院していたという子ども、それから被虐待児が十四、五人いるんだということなんですね。ですから、ますます子どもたち一人一人の状況も、より対応が専門的になり、それから子ども同士の間というのも必要な状況になってきているんだというふうに思っているんです。
 そんな中で、やはりこの定員の在籍措置児童数を見ると、九五%、九七%、ほとんど入れるという面で見ますと、児童養護施設--ことしの一月の厚生委員会で我が党の小松議員が、児童養護施設で子どもに対して、処罰だといって、その子たちの名前をみんなの見えるところに掲示したり、辱めを受けるような状況にするとか、それから施設から出しちゃうぞというふうにおどかしたりするというふうに、虐待ともいえるようなことが行われている児童養護施設もあるということを局は認めて、改善を指導することを答弁していますけれども、その施設はその後改善されたのでしょうか。

○笠原子ども家庭部長 先生お話しの施設については、今井城学園だろうというふうに思います。今井城学園、社会福祉法人天使園でございますが、四月二十五日、改善計画書を東京都としては受理いたしました。この改善計画書の中では、これまでの処遇に対する反省点、あるいはそのための児童の処遇マニュアルの作成、それから職員の研修の充実、さらには理事長職と園長職の兼務の解消等、今後施設運営の適正化を図り、入所児童の処遇を適切に確保していくための方針、こういったものが示されてございます。
 東京都では、この改善計画に示されましたそれぞれの事項が本当にそのとおり着実に実行されるのかどうか、こういったことを確認するために、一つといたしまして、改善経過報告、これを提出させております。それから、子どもからの聞き取りを含む立入調査等による運営指導の実施、こういったものも実施してございまして、こういったものを継続的に行いながら指導を行ってまいる所存でございます。

○大山委員 今改善指導をしているところだというご答弁ですよね。今の状況だと、十月の時点でも九五%入所している、措置されているということでは、改善を指導していて、しかも、きちんと成果が上がっているのかということが確認されないままに、引き続きこういう施設にも措置せざるを得ないという状況なんですか。

○笠原子ども家庭部長 今井城学園の十月一日現在でございますが、施設定員四十四名に対しまして、三十四名の児童が入所してございます。入所率が低調な理由でございますけれども、児童処遇に関しまして改善が図られるまでの当分の期間におきましては、各児童相談所の自主的な判断によりまして当該施設への措置を見合わせてきた、そういったためでございます。

○大山委員 児童福祉司さんも積極的には措置したくないわけですよね。しかし、去年の十月の時点よりもことしの十月の時点の方がより措置率は高いわけですから、今の調子でいけば、当然、そこにも措置せざるを得ないという事態にならざるを得ないんじゃないかというふうに思うんですけれども、どうですか。

○笠原子ども家庭部長 今井城学園のその後につきましては、私ども東京都といたしましても、逐一立入調査等によりまして改善指導を行ってきているわけでございます。そういった面からも、今後とも適正に運営が図られ、その中で児童が適正な処遇を受けているだろう、こういうふうに思っております。

○大山委員 さっきのご答弁とちょっと矛盾があると思うんですけれども、まだ改善の指導中なんだ、それで成果が出たかどうかわからない、しかし、今実際に三十四人の子どもたちが措置せざるを得ない状況にいるわけですよね。
 それで、家庭でも、例えば虐待の子が多くなって、虐待を受け、それから施設に入ったら、また安心できる状態じゃないというのは、本当にこれは子どもにとっては悲惨な状況ですよね。ほかにもやはり措置したくないところが幾つかあるというのも聞いていますけれども、やはり圧倒的に不足しているし、それから小手先で解決できるようなことじゃないというふうに思っています。
 それで、これは読売新聞の記事ですけれども、虐待を受けた子どもが今とにかく満員に入っているというか、ほぼ満員の状況で入っているんだということなんですね。いつも現場では人手不足で職員が悲鳴を上げている。それで、もっと一人一人の話をゆっくり聞いてあげたいと思っても、とても時間がない、褒めるより、ああしろ、こうしろと小言をいっている方が多いというふうに勤続十二年のベテラン職員も嘆いているわけですね。失った月日を取り戻すために、より多くの水やりが必要なのに、今の施設はそれだけの人的、物的な余裕がないというふうに施設長さんも語っているわけですね。ですから、やはりこの実質的な定員の縮小というのは、縮小してきた結果によって不足しているということだというふうに思うんです。どこでもいいから措置すればいいというわけでもないわけですし、さっきの白書の中にも、都みずから、被虐待児は増加するんだというふうにいっているわけですね。こんな状況の中でこの不足の状況をどのように解決しようというふうに考えていらっしゃるのでしょう。

○笠原子ども家庭部長 私ども、基本的に現在の施設の定員の枠内で、創意工夫をしながら、入所需要に適切に対応しているというふうに考えてございます。したがいまして、児童が入りたいというようなニーズがあれば、必要なときに必要な子どもを措置できる状況にあるというふうに考えております。今後とも、児童養護需要に対しまして柔軟適切に対応して、その役割を果たしていきたいというふうに考えております。

○大山委員 実際、柔軟適切にとおっしゃるけれども、施設の定員の枠内でないところはもう既に出てきちゃったわけですよね。一時的だとおっしゃるかもしれないけれども、その枠内でも処理し切れない。それから必要なものを必要な子どもにきちんと提供できているかといったら、そうじゃないというふうにいわざるを得ないわけですよね。だから、不足している状況をどうするのかということを、足りないならきちんと、それこそ必要なものが必要なときに利用できるように、つくることも含めて、養育家庭だとかも含めてきちんと考えていっていただきたいというふうに思っています。
 児童養護施設と同様にいっぱいになっているのが、児童相談所についている一時保護所ですね。この間の予算特別委員会の資料でこの入所状況が出ていたんですけれども、これを見る限りは定員を超えることはないんですけれども、実際にはここでも定員を超えて入所するんだということなんですけれども、どうですか。

○笠原子ども家庭部長 一時保護所の入所状況でございますが、本年九月における都内五カ所の一時保護所の入所率、これは九三・五%でございます。全体としては、定員の枠内におさまっているというふうに考えてございます。ただ、夜間であるとか、あるいは休日、こういった場合、例えば警察からの身柄通告などの緊急ケースの場合は、警察との約束事で、受け付けた一時保護所が対応することとなっておるわけでございます。したがいまして、そういった場合、保護所によっては一時的に定員を超えて入所することはございます。

○大山委員 ここでも定員オーバーで措置される、それから児童養護施設もぎっしり入っているということなんですけれども、一時保護所、休止しているところがありますよね。小平児相の一時保護所は休止したままだし、児童相談センターの一時保護所は一部屋分あるということなんですけれども、一時保護した子を、調整してほかにやるというのじゃなくて、きちんと人を配置すれば再開できるわけですから、今あるところぐらい再開したらどうなんでしょう。

○笠原子ども家庭部長 結論から先に申し上げさせていただきますと、再開することは考えてございません。
 一時保護所の運営につきましては、入所児童の状況、例えば男の子と女の子の振り分けであるとか、あるいは幼児と学齢児との振り分け、こういったものをそれぞれ状況をいろいろ見ながら柔軟に対応しておるわけでございます。そうした中で、一時保護を必要とする児童に対しては、児童相談所としては適切な対応を図ってきたわけでございます。例えばその一時保護所間の緊密な連携による入所需給の調整、こういったものをやっておりますし、それから入所児童の処遇決定の迅速化による一時保護期間の短縮、あるいは出産だとか入院等の保護者の一時的な事情による場合は、区市町村のショートステイ等で代替できる場合は代替していただく、こういうことを活用しながら適切な対応を図ってきたわけでございます。したがいまして、現在の状況のもとではでございますけれども、十分対応が可能であるというふうに私ども踏んでございます。

○大山委員 さっきの白書でも、虐待の通告件数は、受理件数はもっとふえるだろうというふうに予測しているわけですよね。その中で三分の一は一時保護所にも措置されているというわけですよね。私は別に新しくつくりなさいといっているわけじゃなくて、あるところを、人を配置すれば生き返るわけですから、そうやったらどうですかというふうにいっているだけなんですよね。しかも、その一時保護所間の調整というのは、結局、子どもをあっちへやったりこっちへやったりするということですよね。本当に子どもの立場に立ったのだったら、やはりきちんと部屋があるんだったら生き返らせる、それが東京都としての役割だというふうに思っています。
 それで、先ほどからの虐待の受理件数がふえているけれども、ふえていないのが児童福祉司です。虐待などは特に速やかに対応することが求められているわけですけれども、青森県では県独自で児童相談所を、国の基準だと三カ所なんだけれども、支所としてもう三カ所やって、そうやってふやして、それから児童福祉司も、国基準だったら十七人なんだけれども、五十五人を配置しているというんですね。東京都もこういう先進例があるわけですから、そういうところからも学んで、虐待の未然防止もできるように、それからきちんと速やかに対応できるように、その中心になる児童福祉司をふやすことが重要なんじゃないでしょうか。

○笠原子ども家庭部長 虐待等の増大に対応するために、児童相談所の児童福祉司の数をふやすべきではないか、こういうお話でございます。児童相談所の組織、職員の配置面におきましては、例えば平成十二年度から虐待対策課を設置いたしまして、職員を七名増員いたしました。それから虐待対応協力員などを二十二名配置いたしまして、相談の対応を行っております。また、平成十三年度からは、虐待を行った親の指導のために、各児童相談所に精神科医、これは非常勤でございますけれども、配置しておりまして、また、そのほかに一時保護所に心理職員を配置するなど、対応を図ってきたわけでございます。児童虐待問題などへの対応につきましては、こうしたこれまでの組織、職員配置の両面から対応を図ってきた体制の強化、こういったものを引き続き図りながら、今後とも迅速、的確な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

○馬場委員長 かなりオーバーしています。

○大山委員 もう少しですので。今精神科医の配置だとか、それから七人、課をつくったんだというふうにおっしゃいましたけれども、この17の資料を見る限りは、平成三年度から平成十二年度の総定数というのは百六人で、全然変わってないんですよね。虐待の相談受理件数はさっきいったように一・五倍になっているというわけですから--一・五倍どころじゃありませんでした、百二十六件から千九百四十件になっているわけです。ほかの相談ももちろんあるといえばあるわけですけれども、虐待の受理件数だけでもこれだけの増加になっている。結局、もちろん精神科医を配置するとかというのはいいわけですよ。いいんですけれども、その中心となる児童福祉司の対応というのが必要ではないかというふうに思っています。
 最後ですけれども、虐待の問題では、やはり東京都だけでは対応できないというのはもう当然のことだと思いますけれども、区市町村との連携が不可欠なわけですね。法律でも通告先は福祉事務所と児童相談所というふうになっています。豊島区では担当の係をつくって、十二年度から連絡会議を行って、区でも具体的にどれが虐待といえるのかとか、どう対応したらいいのかとか、どれは児相に持っていかなければならないのかというようなことを、児童相談センターの児童福祉司がスーパーバイザーになって仕組みもつくってきているということなんです。本当にこうやって各区市町村での仕組みづくり、それからきちんとそうやって学習をする専門家になるということでは、区市町村が手をつけられるように支援することが都の大きな役割だと考えられますが、どうですか。(「時間守りなさい」と呼ぶ者あり)ちょっと答弁が違ったりしているものですから。

○笠原子ども家庭部長 地域住民にとりまして最も身近な存在でございます区市町村は、虐待の予防あるいは早期発見等で重要な役割を果たしております。区市町村が取り組み体制の充実を図りまして、対応力を高めていくよう支援していくことはお話のとおりでございます。このため、都はすべての区市町村に子ども家庭支援センターを設置し、虐待問題等の解決のために第一義的な受け皿としての役割を担えるように支援しておるところでございます。
 また、今年度、モデル事業といたしまして、具体的な実践を通しての連携のあり方を探る児童虐待防止ネットワーク事業、これを二つの区市で実施することを予定しております。
 東京都といたしましては、こうした取り組みを通しまして、区市町村が虐待問題への対応力を高めていくよう支援してまいりたいというふうに考えております。

○大山委員 では、それは充実していっていただきたいということを述べて終わりますけれども、申告の時間よりはちょっと長くなってしまいましたけれども、ちょっと多目に今度からいうようにいたします。

○中屋委員 私は、高齢者いきいき事業につきまして何点かご質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 昨年四月に介護保険制度がスタートしたわけでございますけれども、高齢者施策は大きな転換期を迎えたと思うんです。介護保険制度は従来の措置制度から契約へとその仕組みを大きく変えまして、さまざまなサービスを広く都民の方々に提供していこうということであります。寝たきりや痴呆になっても、だれもが必要なサービスを受けられる、そういう制度でありまして、まさに今後大きな期待をされているところであります。
 一方、高齢者の八割は元気な方々でありまして、このような元気な高齢者の方々が健康を維持していただいて、夢や希望を持って生き生きと暮らせるようにしていくことも、二十一世紀の東京の高齢者には非常に重要なことだというふうに思うわけであります。こうした意味で、平成十二年度、今後の高齢者福祉の方向を決定づける重要な年といってよいのではないかと思いますが、そのような視点で何点かご質問をさせていただきます。
 まず初めに、平成十二年度の高齢者施策推進室事業の特徴につきまして再確認をさせていただきます。
 東京都の財政全体が非常に厳しい状況に置かれる中で、限られた財源を最大限に活用して、新たに時代に的確に対応する高齢者施策を展開できるよう取り組まれたわけでありますけれども、その主なポイントにつきましてご説明をいただきたいと思います。

○若林高齢者部長 平成十二年度の主な取り組みといたしましては、社会経済状況の変化を踏まえまして、負担の公平、制度間の整合性などの観点から、経済給付的な事業の見直しを行うとともに、介護保険制度を円滑に実施するため、施設、在宅サービスの介護基盤の整備を重点的に進めたところでございます。さらに、高齢者いきいき事業、介護予防、生活支援事業という新たな包括補助事業を実施し、介護保険の対象とならない高齢者の生活の支援や社会参加の促進に取り組みました。
 介護保険制度の開始と相まって、平成十二年度は、福祉改革推進プランに基づきまして、行政がコントロールする福祉から、都民みずからがサービスを選択し利用する、利用者本位の福祉の実現に向けて福祉改革のスタートを切った年というふうに認識しているところでございます。

○中屋委員 我が党は、一昨年の高齢者施策の見直しにつきましても、東京都の大変厳しい状況にあって、財源確保の視点ではなくて、都民本位の新しい福祉を築くための前向きの施策であるべきと強く主張してまいったわけでありますが、東京都はこれにこたえまして、各施策の抜本的な見直しを、成果を生かしまして、新たな、新しいステージに立つための重要な一歩を踏み出して、利用者本位の新しい福祉の実現を目指して福祉改革の取り組みを確実に進めてきたことを私は大いに評価する次第であります。
 さて、介護保険制度では、住民に一番身近な団体であります区市町村を実施主体といたしましたが、多様化、高度化していく住民ニーズに対応していくためにも、今後ますます区市町村の役割が大きくなることが見込まれております。
 そこでお伺いいたします。大きな転換期の中にありまして、区市町村がこうした重要な役割を担っていけるようにするためには、従来の発想を超えた柔軟な補助の仕組みが必要となると思います。区市町村が地域の実情に柔軟に対応できる包括補助事業としてどのような事業があるのか、お伺いをいたします。

○若林高齢者部長 包括補助事業についてのお尋ねでございますが、二つございまして、一つは、虚弱高齢者やひとり暮らし高齢者に対する健康維持、生活支援のための介護予防生活支援事業でございます。これは国庫補助事業でございます。もう一つは、高齢者の社会参加の促進、住まいの確保などの幅広い事業が展開でき、地域の実態や特性に応じた創意工夫にあふれる区市町村の取り組みを支援する、都独自の高齢者いきいき事業でございます。介護保険制度に加えまして、両事業は区市町村が実施主体でありますので、地域の実情に応じて柔軟に活用でき、地方分権の時代にふさわしい補助制度であるというふうに考えているところでございます。

○中屋委員 高齢者いきいき事業は、我が党が、見直しによりまして生み出した財源のもとに、地域福祉推進の主体である区市町村が、高齢者の社会参加やきめ細かい福祉サービスの展開を推進できるように提案したわけであります。すべての高齢者が安心して暮らせる社会の実現を目指すものでありまして、まさに今都が進めている福祉改革の先駆けとしても大いに評価できるものと考えております。
 そこでお伺いいたします。こうして創設された高齢者いきいき事業でありますけれども、一年が経過しまして、その取り組みはどうだったのか、お伺いいたします。

○若林高齢者部長 高齢者いきいき事業につきましては、平成十二年度に創設した事業でございます。すべての区市町村が取り組み、地域特性を生かした六百八十八事業を実施し、予算額三十億でございましたが、全額を執行したところでございます。

○中屋委員 なるほど。それでは、特に地域特性を生かした特色のある事業について、幾つかご紹介願いたいんですが。

○若林高齢者部長 地域特性を生かした事業といたしましては、文京区でひとり暮らし高齢者緊急連絡カードの設置という事業を実施しております。これは六十五歳以上のひとり暮らしの高齢者宅に、住所とか氏名とか連絡先、かかりつけ医、そういったものを記入した緊急連絡カードでございますが、それを設置しまして、地域の民生委員との緊急時における迅速適切な対応を推進してきたところでございます。実績としては、約三千五百世帯がこの連絡カードを設置したというふうに報告を受けております。
 また、品川区ではいきいき広場事業というのを実施しておりまして、内容は、小学校の空き教室を活用しまして、そば打ち教室であるとか絵手紙講座だとか、メニュー十五事業を開催しまして、中高年の活動と交流の場を提供したものでございます。一カ月二十講座、月二百人以上の参加ということで、大変盛況に実施されているというふうに報告を受けております。
 このほか、武蔵野市の高齢者パソコン教室事業とか、日の出町の温泉宅配便の事業等、たくさんの事業が実施されているところでございます。

○中屋委員 私の住む文京区を例に挙げていただきまして、ありがとうございます。
 それぞれの地域特性を生かしまして、独自の事業を展開していくことがよくわかりました。また、高齢者の社会参加の促進という意味でも大変大事な役割を高齢者いきいき事業は果たしていると思うんです。こうした高齢者いきいき事業をさらに充実させていくことが、都民の多様化、高度化していくニーズにこたえていくために大変重要なことだというふうに考えます。
 最後に、局長のご決意をお伺いして、この取り組みが促進されるように、強く強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○前川福祉局長 今ご指摘ございましたが、私どもは福祉改革を今推進しております。これは本当の意味での利用者本位の福祉をこの東京からつくっていきたい、そのために、これまでの福祉の流れを見直して、抜本的な改革をしていきたい、こう考えているわけでございます。
 この高齢者いきいき事業もその一環でございまして、こういう福祉改革を進めると、その主役である区市町村、事業の主役である区市町村が、一つは、一方では主体的に事業を選択してやっていける、そういう柔軟な補助制度である。それからもう一点は、やはり創意工夫をして、努力をした区市町村が評価をされる、そういう仕組みにしてございます。こういう二点を踏まえながら、私どもこれからこの事業の充実にさらに努力をしていきたいと考えております。
 また、一言付言させていただきますが、そういう意味で、さきに行った福祉施策の見直しはこの福祉改革の一環でありまして、今ご指摘もありましたが、そこでつくったいわば財源の余裕を、新しい事業を積極的な事業にシフトさせる、そういう視点から実施をしているわけでございます。したがいまして、平成十三年度は、この都財政が厳しい中で、四・三%の増という、ソフトの局では二局しかないわけですけれども、そういった予算の増も実現をしております。
 それからまた、私ども、都内の施設を、民間施設等を見学させていただいて、特養等もそうですが、非常に感銘を受けますのは、利用者のためのサービスの充実にさまざまな創意工夫をする、経営努力をする、そういった経営者の方々がたくさんいらっしゃるということであります。こういった方々は、介護保険制度を全体的に評価をしながら、しかし、問題のあるところは改めよう、そういう姿勢をとっておられます。私ども全く同じ考えでございまして、今後とも積極的、前向きに改革に取り組んでいきたい、こう考えております。

○清水委員 私からは、この平成十二年度は介護保険が始まった年であります。初めての介護保険に関する決算ということで、資料もたくさん用意いただきまして、ありがとうございました。一年たってどうだったかということについて、決算の福祉費、介護保険費について、まず伺いたいと思います。
 決算書の三四ページの介護保険費の執行概要説明の中で、まず三番目に介護保険審査会の運営の執行率が五%ということになっているんですけれども、この執行率が低かった理由は何でしょうか。
 また、この状況で、都民の利益、権利が保障されていたのかどうかということについてお伺いしたいと思います。

○吉川保険部長 十二年の四月にスタートをいたしました介護保険、先輩国というんでしょうか、介護保険の先輩国であるドイツの場合は、平成九年の申し立てというのが十六万件であったというようなことを聞いておりますが、そういう状況下で東京のこの審査請求の体制を検討したわけでございます。十二年度の予算に当たりましては、国の審査請求についての試算基準に基づきまして、約三千七百件というふうに私ども東京都としては想定して予算計上をいたしました。
 結果的に、受け付け開始以来、十二年度での実績は五十八件でございました。
 なお、日本全国でいいますと、九百二十四件でございました。
 この点につきましては、保険者でございます区市町村におきまして、関係資料の情報開示を含めまして、被保険者の皆様からの相談や苦情に対しまして適切に対応なされた結果であるというふうに考えておりまして、都民の権利は十分に保障されているというふうに思います。

○清水委員 それでは、実際に都がこの審査請求を受け付けて終結するまでの審理の状況について簡単にお伺いいたします。

○吉川保険部長 先ほどの五十八件の処理の状況でございます。三月末で申し上げますと、裁決に至りましたのは二十七件でございまして、その時点で継続していたのは五件でございます。残りの二十六件につきましては、その時点までにご本人様の方から取り下げということになってございます。
 なお、継続の五件につきましては、十三年度に入りまして、すべて裁決が済んでおります。

○清水委員 いずれにしても十二年度というのは始まったばかりで、この申し立てるという都民の側の権利というのも十分にまだ知られていなかったかもしれません。国の試算で当初、かなり多くの予想がされていたということでは、たとえ執行率が五%であっても次の年の予算が低くなるというふうには予想されませんが、いずれにしても大事な都民の権利の保障の窓口でありますので、今回の執行率だけを次年度の参考にせずに、先ほどドイツの例もいわれましたけれども、都民の権利が保障されるように、今後とも次の年度への参考としてはそういう立場でしっかりと受け付けもできるように、また審査もできるようにしていただきたいというふうに思います。
 次に、五番目の介護給付費負担金について伺いたいと思います。
 これは、事業計画に基づく額は四百二十一億だったというふうに思います。そして、予算額が三百六十一億、そして支出済額が三百三十億というふうになっております。当初予算額が予算現額三百六十一億に変動した理由、それから執行率九一・五%で、三十億円の不用額が出た理由を伺いたいと思います。

○吉川保険部長 給付費負担金のことでございますが、若干、数字をもう一回確認いたしますが、当初予算では四百九億円でございます。東京都の場合は支援計画というものをつくりまして、区市町村は事業計画をつくっておりまして、その支援計画というか、計画上は四百二十一億円でございました。この四百九億円であるとか四百二十一億円につきましては、介護保険の初年度ということもございまして、例えば十二年四月から始まったわけですが、その前年の九月に介護報酬、これは支援計画をつくる上ではもとになる数字でございますが、それが全国的に仮単価というのが出ました。年を越しまして十二年二月に正式単価というのが、我々は大変困ったわけですけれども、直前に提示されました。その辺の経緯もございまして、予算編成の手続等もございまして、当初予算は四百九億円、最終的に区市町村とともに調整した支援計画、事業計画の数字は四百二十一億円というようなことでございました。
 その次に、予算現額、先生がご指摘の決算説明書の三四ページの予算現額は三百六十億円ということになっておるわけですけれども、ここにつきましては、そのちょうど下段に、支出内訳の下にございますけれども、流用説明というのがございまして、老人医療費の助成等に不足を生じたため、約四十八億円、これは流用させていただいております。
 念のため付言しますと、これは先ほど副委員長の大山先生のお話の中にもありましたように、全国的に都市部の自治体で介護療養型医療施設の整備が、指定がおくれたというようなところが関係しているというふうに認識しております。
 最終的に三百六十一億円の予算現額から支出済額の三百三十億円ですが、三十億円の不用額が生じた大きな理由としては、要介護認定をお受けになった都民の方々が、計画上は約二十四万人おったところが、二十一万人という状態で推移したことが最も大きな影響だというふうに認識しております。

○清水委員 途中で流用を決めた時期というのはいつですか。

○吉川保険部長 ちょっと今手元には、私も確認していないんですが、通例、これだけの大きな予算流用でございますので、後ほど確認いたしますが、十二年度の一番最後の定例会の中でご審議いただいたものだというふうに認識しております。

○清水委員 介護保険の当初の事業計画が四百二十一億円ということで、区市町村からの事業計画を集めて東京都の事業計画をつくるわけですけれども、その途中で流用がされたわけなんです。介護保険の推移というのが不確定なこの一年だと思うんですけれども、それが途中でかなり大きな額を流用するというのは、介護保険全体の動向というのをどういうふうに見て、そこで大きな額を流用されたのか、そこについてちょっと疑問に思ったものですから、伺いたいんです。つまり、まだもっと需要というものが見込まれることはなかった時点だったのか、介護保険の費用がきちんと確保できたのかということで、流用したのかということですけど。

○吉川保険部長 流用する以上は、当然、今先生おっしゃったような意味の十二年度の執行見通し、十分精査したつもりでございます。先ほど申し上げたように、介護療養型医療施設につきましては、仮単価と正式単価の差もございまして、私どもが期待していた指定数が、十二年四月に発足して半年たってもなかなか伸びないという状況もございまして、私どもは政府に対しても、そこの一番根っこの部分、要は診療報酬と介護報酬の差等についても、政府に提案要求をした上で、このような判断をしたつもりでございます。

○清水委員 流用について、委員会の中での審議で、そのこと自身に対しては、特にその問題を指摘したとかという経過はなかったとは思うんですけれども、後から質問いたします保険料との問題でちょっと伺いたいんですけれども、それでは十二年度の介護保険料というのは、どのようにして、何を基準に決められるのか、お伺いいたします。

○吉川保険部長 保険料というのは、先ほども申し上げましたように、各区市町村で作成をしております介護保険事業計画に基づきまして、当該区市町村の三年間の給付費の見込み額、それをまず算出いたします。その見込み額全体の一七%分、ですから約六分の一ですが、これがいわゆる第一号被保険者といわれている六十五歳以上の方々が納めていただく保険料の分母になります。この一七%を乗じた額を出しまして、それを被保険者数で割りまして、さらに、それは三年分になっておりますので、三分の一という形に修正をいたしまして、当該区市町村の条例で定めているものでございます。

○清水委員 そうすると、先ほどのお話だと、区市町村の事業計画の負担というか、総計というのは四百二十一億、当初の事業費四百二十一億ということなんで、保険料というのは四百二十一億円で計算をされているというふうに思うんですよね、そういうことになると思うんです。ところが、ここに決算を出された決算額は三百三十億ということでなっているわけです。四百二十一億で保険料をつくって、執行されたのが三百三十億ということで、そうすると、住民が支払った保険料というのは、十二年度で見ると高過ぎたということになりませんか。

○吉川保険部長 先ほど来先生がご指摘の決算数字というのは、東京都の負担分だけでございます。ですから、保険料のもとになっておるものは、区市町村の負担だとか、全体の一〇〇%の前提でご理解いただきたいと思います。
 介護保険制度の保険料というのは、あくまで三年間、先ほど三年で見込み額というふうに申し上げましたけれども、中期的に安定した財源確保を可能とする観点から、事業運営期間である三年間を通じて、先ほど来申し上げたような方程式で算出して設定されているものでございまして、現段階で直ちに、今先生がおっしゃったような指摘が当たるというふうには認識しておりません。

○清水委員 私は、三年間の話をしたんではなくて、十二年度の話をしたんです。十二年度で見ると、今の四百二十一億の計算で保険料は計算されているんだったら、三百三十億の執行だったら、それだけ見れば取り過ぎというふうに、それは数字ではなりませんか。

○吉川保険部長 財政のことなんで大変複雑なんですが、東京都の負担であるとか、国の負担であるとかいう分は、十二年度の執行に応じまして精算しますから、そこの部分についてはないわけですね。
 先生おっしゃっている意味の、区市町村が最終的に取る一七%の部分については、先ほど来申し上げたように、三年間のならしで基準額というのは最初に設定して取っておりますから、十二年度だけで見ればそういう指摘は一面当たっているようですが、仮に十四年度かなり介護給付費が伸びたとすれば、その伸びに応じて保険料を取るわけじゃございませんから、この十二年度で剰余というか、若干浮いた分についてそこで使うという仕掛けになっているわけでございます。

○清水委員 でも、それは十二年度は多かったということの裏返しではないんですか、今の答えは。
 私がいいたいことは、繰り返し繰り返し私たちは低所得者への保険料減額対策、減免対策というのを要望してきました。十二年度にもそれを要望してきました。既に保険料の低所得者の対策を行っているところは区市町村ではどの程度になっているでしょうか、お伺いいたします。

○吉川保険部長 先生おっしゃっているのは現段階ででございましょうか、十二年度ではなくて。

○清水委員 十二年度で結構です。

○吉川保険部長 十二年度で低所得者の方々に対します保険料の減免を独自に行っている区市は、千代田区と小金井、国分寺、狛江の三市、以上四つでございます。
 ご案内のとおり、介護保険料については、国の方でも、保険料の独自減免をするについては、免除を行えないこと、それから一律に行わないこと、一般財源を繰り入れないというふうな三原則を示しておりまして、その三原則でいいますと、千代田区はすべてルールを守っております。全く守っていないのは狛江市という状態でございます。

○清水委員 今お話のありましたように、厚生省は二〇〇〇年度以降、保険料の減免は介護保険の根幹にかかわる問題だとして、批判的な見解や指導などが行われてきたというふうに文書も見させていただきました。
 今、十二年度はお話がありましたように、一区三市ということでありましたけれども、その後も減免を実施する区市は大きく広がっているのが現状だと思います。自治体は、今いわれたように厚生省からの指導とかそういうものはあるけれども、独自の覚悟を持って減免制度の実施に踏み切っているんだと思います。今は十二年度のお話がありましたけれども、一番直近の資料をいただきますと、国の原則の範囲内で行っているのが、今いわれたように千代田区、国の原則の範囲内で検討している区市町村が八区三市あるというふうに伺っています。また、国の原則の範囲外でも五市が十三年度までに行われ、検討している区市は国の原則の範囲外でも二市行われるということで、十九の区市が国の範囲内、国の範囲外を超えて行われてきているというふうに伺っています。
 これは、十月からの介護保険の満額徴収を前に、全国介護保険の担当課長会議でもそんなような指導があったというふうに伺っていますけれども、資料も見させていただきましたけれども、やはり市町村がそういう中で独自の自治事務に対して、私は市町村に対して国がこういうことをいうのもおかしいとは思うんですけれども、地方分権の趣旨に反すると思うんですけれども、それでも自治体が身近な高齢者を見ていれば、市長さんが高齢者大会にあいさつに行く、敬老大会にあいさつに行く、議員が呼ばれる、そういう中で区市町村の中にやはり困難な実情というものを間近に把握する場所が本当に多いということでは、減免が広がってきたし、保険料の対策がこれからも広がることが予想されるわけです。しかも、全国では、これを一般財源から補てんをする、こういう自治体も出てきているというふうに伺っています。
 私たちは、そういう意味で東京都として保険料の対策、利用料の対策ということについてずっと要望してまいりました。利用料の点では前進をしていただきましたが、保険料の低所得者対策に対して、やはり東京都がこういう実情の中で本当にこたえることが十二年度の中でも大事だったと思うんですけれども、なぜ東京都はこれにこたえてこられなかったのか、お伺いしたいと思います。

○吉川保険部長 二つの点でまず最初申し上げたいと思うんですが、介護保険制度の保険料につきまして、去年の十月まではご案内のとおり半年無料で、それからこの九月まで半額ということで推移してきたわけです。そうやってみますと、十二年度の決算をやっておりますので、十二年度で見ますと、高齢者の方々というのは、一〇〇%の介護給付費のうち、本来一七%ということで六分の一だけ負担する設定になっていて、かつ十二年度というのは今いったような状態ですから、四分の一しか負担していないのです。ということは、六分の一の負担割合の四分の一しか負担していないんですから、二十四分の一しか十二年度というのは負担をされていない。なぜこの段階でそんなに低所得者のお話が出てくるのかという点と、もう一点、本来、介護保険制度というのは、これまでのご質問等でもございますが、保険者が区市町村でございますから、区市町村に対して強くおっしゃるならわかりますけれども、指導、支援していく立場の都道府県に対して、東京都に対してそのようなお話をいただくのもちょっと早過ぎるんではないかというか、もしいただくにしても、そんな気がしております。
 あくまで介護保険制度は相互扶助の考え方に基づいて運営される、負担と給付の関係が明確な社会保険制度でございまして、そういう意味から被保険者の方々が公平に保険料を負担をしていただくことが極めて重要でありまして、仕組みの中にも、災害や失業を理由として個別に減免できるような仕組みや、それから所得に応じた五段階の賦課方式等々が既に用意されております。したがって、都として支援することは考えておりません。

○清水委員 既に保険料の徴収が始まる前からこれは私たちがいってきたことですけれども、十一年度、その一年間を通してみても、やはりこれから徴収される保険料への不安とか、それから生活実態というのが本当に困難な実態をずっと私たちは把握してきたわけです。ですから、始まったところで通知が来て、例えば八王子市では通知が来て一週間に問い合わせや苦情が一千件、今度も満額徴収で通知が来たら、八王子なんかでも一千件以上、大田区では一千五百件と聞いていますけれども、問い合わせや苦情ということで--私たちは公平の原則を崩そうということをいっているんじゃないんです。本当にそれでも払えない人というのを私たち間近に見ているんですよ。うどん屋さんでつくり終わったうどんの粉をもらってって、それを一週間分の、昔食べたようにそれをこねて、そういうお年寄りが実際にいるということをいろんなところで私たち聞いている。だから、全部の方の保険料の減免を今いっているんじゃなくて、せめてこれから行われる利用料の負担軽減、約二万二千人ですか、生計に特に困難な者、困難な方、そういう方にしたとしても一億から二億程度というふうにもいわれています。
 そういうところから、東京都の仕事ではないとかいわれますけど、もちろん区市町村に私たちいっているから、こうやって十九市町も広まってきているわけです。ですから、これをすべての都民の中で本当にわずかの人間、そしてわずかの予算、例えば三十億の不用額が出て、本当に生計に困難な方の保険料の対策をしても一億か二億ということでは、無理なことをいっているというふうには私は思っていないんですね。やはり東京都として本当に高齢者が、特に生計困難な高齢者が、介護保険料を徴収するということでしょう、利用するということではない。保険料の徴収の減免ということについて、やはりこれは今後とも検討していただきたいというふうに考えています。
 十二年度はそういう意味では、繰り返し要望してまいりました保険料の減免、低所得者対策に東京都がこたえてこなかった決算となっているという点で、到底認めることはできません。
 次に、介護保険財政に大きな影響を与えるのは、施設サービス量の多い自治体だと予想されますが、市町村で要介護者一人当たりの給付費はどのような実態になっているでしょうか、お伺いいたします。

○吉川保険部長 十二年度の自治体別のお一人当たりの給付実績でいいますと、東京都全体では十四万二千円程度になっておりまして、町村平均では十五万六千円、市の平均は十四万六千円、区の平均は十三万九千円というふうな状態でございます。

○清水委員 サービス利用者一人当たりの平均費用額の多い自治体はどこでしょうか。

○吉川保険部長 最も多かったのは御蔵島でございまして、続いて青ヶ島村、奥多摩町、三宅村、檜原村というような順になっております。

○清水委員 なぜ、その村、町などでは多いというふうにお考えになっているでしょうか、認識されているでしょうか。

○吉川保険部長 例えば、御蔵島の例で申し上げますと、受給者というのは三名おいでになりまして、そのうち施設サービスがお一人というふうな状態ですが、いずれにしても、御蔵島から始まって檜原をいいましたけれども、これらの調査においては、サービス利用者一人当たりの平均費用額が高い理由というのは、居宅サービスに対して施設サービスの方が占める割合が高いというようなことが原因しているというふうに思います。

○清水委員 いろいろな資料になると、区部と多摩と島しょということがあるんですね、区部と多摩と島しょとあるんですけど、この多摩の中に町村があるんですよね、今いわれたように。この町村というのは余り別にならない、区部と多摩と島しょということで。私たち今まで、私も八王子で、大きな市ですから、その例をいろいろなところで利用しながら、介護保険の要望とか福祉の要望とかを伺ってきたんですけれども、私は、当然のことながら事業者が出ていかないだろうな、また山坂が多いだろうなという町や村というのは、また島と違って、困難な実情があるだろうなというふうに予測して、先日奥多摩町の実情を伺ってきました。
 今いわれたように、在宅サービスと施設サービスを比べると、施設が六〇%ほどになっているというわけですね。既にそうした地域が予想される高知県とか徳島県とか長野県などの一部市町村では、二〇〇〇年度の介護保険財政がもう逼迫してしまって、十二月に補正予算で一般会計から繰り入れたというところもあるというふうに伺っています。
 在宅サービスの基盤整備が実際に立ちおくれて、結果として不十分なケアプラン、また、今いわれたように施設サービスに頼らざるを得ないというようなことになっているわけですね。それで、奥多摩町で心を痛めていることの一つが、訪問入浴介護サービスを提供できていないことだというふうにも伺っています。機械浴で施設にはあるので、そちらに来てもらっているというふうにいっていますけれども、やはりほかの区市町村と同じサービスを提供できないことに対して心を痛めていたんですけれども、現在、訪問入浴サービスの都内、区部、市、町、村の十二年度実績はどのようになっているでしょうか。

○吉川保険部長 十二年度の訪問入浴介護の延べ利用件数、都内全体でいいますと、十二万八千余でございまして、町村部はそのうち三百七十九件でございます。利用実績が十二年度なかった町村というのは、先生今ご指摘の奥多摩町を含めまして、島ないしは多摩の町村部ということでの七町村でございます。
 それから一点だけ付言しますと、先生の方で、施設と在宅の割合のお話がございましたけれども、先生、奥多摩町の方へご訪問されて、そういう数字だったということでございました。私どもが理解しているというか、承知している奥多摩町の計画上、十二年度は施設と在宅の割合は七六対二四ということで、当初から奥多摩町では施設サービスが高いというふうに見ているところでございます。

○清水委員 訪問入浴介護サービスの都内全体の傾向というか、ニーズというか、動向というのは全体としてどうなんでしょうか、一般的な話として。

○吉川保険部長 都内の総件数十二万八千というのは先ほど申し上げました。私どもはこれから十二年度の決算というか、実績、データをよくよく分析したいとは思っておりますが、一つのデータとして全国集計値でいいますと、在宅サービスの中で訪問入浴サービスがいわゆる費用面で占める割合が、全国で一・〇四%でございます。そういう意味では東京都は、同じような数字でいいますと、二・一七%でございますから、利用件数が多いかどうかということもありますけれども、費用というか、使い方で見ますと、全国よりも高い状態で推移したかなというふうに見ております。

○清水委員 全体的な傾向としては、施設サービスによる入浴よりも訪問入浴サービスの方に、ずっと区内とか、多摩でも町田までなんていわれる人がいるんですけど、八王子を入れないでいわれる人もいるんですけれども、ずっとそちらにシフトされて、事業者も出てきているというふうに聞くんですね。
 そういう中で、今後ともこのままだと提供できていないのが訪問入浴介護サービスと訪問リハビリと二つあったわけなんです。訪問リハビリはやっていないところもあるということを聞いたんですけど、この訪問入浴サービスだけはできていないと--去年、十一年度に一件だけ、国立からか国分寺から来られて、余りにも動けなくて、暑かったんではないかと思うんですけれどもね。地形を見ていただければ、坂を上っていって、機材を持っていくのは本当に大変だなというふうにも思うんですけれども、このままだと、ずっとこの訪問入浴サービスというのは提供できないままに推移していくと思うし、地域の方がこれはもうないものだと思っているから、そんなふうには要望されないのかもしれないですけど、当たり前に介護保険ができていくためには在宅・居宅サービスが充実ということを求めていたわけですから、これができていくということが私は好ましい状況だと思う。
 介護サービスが十分に提供できないことによって、また過疎になったり、若い人がもうこういうところには介護は頼れないということで出てきてしまったり、いろんな問題が--先ほども触れられた方がいましたけれども、やっていただいていることはよくわかっていますし、たくさん支援をしていただいていることもわかるんです。しかし、そういう実情をもって、やはり町村からも市長会からも十二年度に対しても、また十三年度に対しても、十四年度に対しても、介護保険への要望というのはすごくたくさんあるんです。本当にこれ全部、要望に答えを書いてきてくださいといわれたら、書けないぐらいたくさん要望があるんですよ。こちらの町とこちらの市では違う要望、こちらの町とこちらの村では違う要望ということがあるんです。しかし、やはり市長会を通し、町村会を通し、そういう要望が毎年数多く出てきているということは、やはり東京都に求める市町村への支援の強い要望があるというふうに思うんですけれども、十二年度はその要望にどのようにこたえられてきたのか、お伺いいたします。

○吉川保険部長 市長会さんなり町村会からの要望というのは、確かに多項目にわたっております。これだけ大きな保険制度を導入したこともございます。代表例で申し上げますと、例えば国へぜひ働きかけてくれというようなことで伺ったのは、要介護認定ソフトの改善、また、訪問調査項目の面から、認定の信頼性をぜひ向上するような取り組みをというようなことでございました。それにつきましては、ご案内のとおり、昨年の八月に国の方でも一次判定ソフトの見直しのための調査検討会を既に立ち上げております。私ども東京都としても、認定調査員の研修を実施してまいりましたし、十三年度に向けて認定の適正化事業の予算化を検討したところでございます。
 もう一点、区市町村からあった代表例でいいますと、市町村の苦情処理業務への支援ということでございますが、この点につきましては、国からも応援がございまして、現在は国保連合会を中心としまして、区市町村、それから東京都ということで苦情ネットワークを既に構築をしまして、全国ではないと思いますけれども、半年、一年という形で苦情白書を出したところでございます。

○清水委員 幾つか支援をしてきていただいておりますが、しかし、特に財政基盤の弱い町、村、島、そして地形的に事業者が出れないような、そういう対策というのは、今のお話の中ではやはり不十分だったし、市としても、例えば八王子なんかでは在宅サービスセンターが、ご承知のように、よく把握されていると思うんですけれども、都内で一件だけ事業を休止してしまったということで、都からの支援がなくなったんで、一番の市街地の在宅サービスセンターが休止してしまったというふうなことで、介護保険によって介護が充実をしていくはずなのに、国の補助や東京都の補助などのそうした変動によって不十分になっているところなども生まれてしまっている。
 それからまた、これからもなかなか対策が不十分なことが予想されるという中では、東京都としての市への支援、それから町村への支援、それを十二年度としては、私としては結果的には十分ではなかったというふうに考えます。次の年度に向かってさらに充実をしていただきたいというふうに思います。
 時間もないので、最後に一言だけ、児童扶養手当についての要望だけいたします。
 これについては、もうご承知のように、地方分権一括法の制定によって、十四年八月から児童扶養手当の給付に関する事務が、区市や福祉事務所設置町村などへ権限が移譲されることになります。これに対しても市長会が要望を出しております。つまり、東京都がこれまで負担していた分、都内では七十億八千九百万、多摩地域は約二十一億くらいだと思いますけれども、この部分が入らないということで、また、その他の部分の財源については地方交付税が算入される予定だというふうに伺っています。
 しかし、現在、三多摩には地方交付税の不交付団体が七市あるというふうに思います。その合計が七億六千万円余りに、もしこのまま地方交付税不交付団体には措置されないということになると、負担がかかるわけです。国の事業を市が受けて、事務を委託しただけじゃなくて、市が負担をしなければならないところが出てくるのはおかしいじゃないかというのが市長会の考えで、それに対して、国に対して要望してほしい、東京都として、国がやらないんだったら、そこをやってほしい、東京都は浮く分があるでしょうということで市が要望しております。
 事務費も約一億円ぐらいになるでしょうか、それぞれ事務費も負担がかかっています。地方交付税によって措置をするといっても、不交付団体もあります。ですから、そういうところは十二年度どうだったのか、十二年度は市長会から余り要望が出てこなかったよといわれますけれども、やはり市長会としては、また該当の市としては、そういう七億を支出するのかどうかということでは大きな影響になると思います。住民にも大きな影響があると思います。そういう点では、児童扶養手当制度の改正に当たっては、国に対してもっと強く要望してほしい。不交付団体に対しても措置をしてほしい。その間には東京都が措置をしてほしいということを要望して、私の質問を終わります。

○馬場委員長 ほかにありませんか。--発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○馬場委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了いたしました。
 以上で福祉局関係を終わります。
 これをもちまして本日の分科会を閉会いたします。
   午後三時四十七分散会

ページ先頭に戻る

ページ先頭に戻る