各会計決算特別委員会速記録第十七号

平成十二年四月十九日(水曜日)
   午後一時二十六分開議
 出席委員 三十名
委員長山本賢太郎君
副委員長服部ゆくお君
副委員長前島信次郎君
副委員長大山とも子君
理事木内 良明君
理事土屋たかゆき君
理事遠藤  衛君
理事小松 恭子君
理事立石 晴康君
中嶋 義雄君
吉住  弘君
中西 一善君
竹下 友康君
くぼた 光君
東野 秀平君
川井しげお君
藤田十四三君
大河原雅子君
田中 智子君
清水ひで子君
倉林 辰雄君
野田 和男君
林  知二君
大木田 守君
羽曽部 力君
藤川 隆則君
萩谷 勝彦君
田村 市郎君
佐藤 裕彦君
植木こうじ君

欠席委員 なし

 出席説明員
福祉局高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤 信之君
次長田原 和道君
総務部長押切 重洋君
地域福祉推進部長小山 園子君
生活福祉部長渡辺 泰弘君
山谷対策室長上野 純宏君
子ども家庭部長稲熊 明孝君
障害福祉部長長野  宏君
国民健康保険部長堀内 武照君
連絡調整担当部長小阪  守君
参事村山 寛司君
労働経済局局長大関東支夫君
理事川崎 裕康君
総務部長鎌形 満征君
同和対策担当部長木内 勝三君
産業政策担当部長木谷 正道君
中小企業金融市場担当部長武政  潔君
労政部長坂本 満穂君
家内労働対策担当部長生井 規友君
職業能力開発部長梅津 久昭君
商工計画部長中澤 正明君
参事山口 一久君
商工振興部長山本 俊一君
農林水産部長江口 直司君
参事和田 敏明君

本日の会議に付した事件
 平成十年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について
  福祉局関係
  ・一般会計決算(質疑)
  ・母子福祉貸付資金会計決算(質疑)
  ・心身障害者扶養年金会計決算(質疑)
  労働経済局関係
  ・一般会計決算(質疑)
  ・中小企業近代化資金助成会計決算(質疑)
  ・農業改良資金助成会計決算(質疑)
  ・林業改善資金助成会計決算(質疑)
  ・沿岸漁業改善資金助成会計決算(質疑)

○山本委員長 ただいまから平成十年度各会計決算特別委員会を開会いたします。
 本日は、局別審査のうち、福祉局及び労働経済局の順で質疑を行います。
 なお、本日は質疑終了まで行い、意見の開陳等は後日行いますので、ご了承願います。
 これより決算の審査を行います。
 平成十年度東京都各会計歳入歳出決算の認定についてを議題といたします。
 これより局別審査を行います。
 福祉局関係に入ります。
 初めに、先般の人事異動に伴い幹部職員に交代がありましたので、神藤局長から紹介があります。

○神藤福祉局長 初めに、この四月一日に当局の組織が改正されたことにつきましてご報告申し上げます。
 国におきまして、いわゆる地方分権の一括法により地方自治法が改正され、社会保険関係事務が国の直接執行事務となったことに伴いまして、これまで福祉局にございました社会保険管理部及び社会保険指導部が廃止されました。
 なお、これらの事務につきましては、国の機関でございます東京社会保険事務局が行うこととなりました。
 次に、先般の人事異動によりまして当局幹部職員の交代がございましたので、ご紹介させていただきます。
 地域福祉推進部長の小山園子でございます。
 以上です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
   〔理事者あいさつ〕

○山本委員長 紹介は終わりました。

○山本委員長 福祉局関係の決算については、既に説明を聴取いたしております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○押切総務部長 去る一月二十四日の当委員会におきましてご要求のございました資料につきまして、お手元配布の平成十年度各会計決算特別委員会要求資料にまとめてございますので、説明させていただきます。
 表紙の次のページ、目次をお開き願います。今回ご要求のございました資料は、ごらんいただきますように八項目となっております。それでは、順を追ってご説明申し上げます。
 まず、一ページをお開き願います。このページから次のページにかけまして、ノンステップバスの整備状況及び鉄道駅エレベーター等に対する都費補助実績を記載してございます。
 一ページの(1)、ノンステップバスの走行路線及び台数は、下段の(注1)のとおり、平成十年度に、だれにも乗りおりしやすいバス整備事業によりまして整備したノンステップバスの主な走行路線と台数及び補助金額をお示ししてございます。
 二ページの(2)、鉄道駅エレベーター等に対する補助実績は、同じく平成十年度に、鉄道駅エレベーター等整備事業及び福祉のまちづくり区市町村モデル地区整備事業により整備したエレベーター等の実績をお示ししてございます。
 次に、三ページをごらんください。生活保護被保護世帯数及び保護率の推移につきまして、平成元年度から平成十年度までをお示ししてございます。
 次に、四ページをお開き願います。右の五ページにかけまして、保育所入所待機児童数の推移を、区部と市町村部別、年齢別に、平成元年度から平成十年度までをお示ししてございます。
 次に、六ページをお開き願います。無認可保育室の区市町村別実施状況及び在籍児童数の推移でございます。区市町村ごとの保育室運営事業の都費補助対象となった施設の数及び各年度六月一日現在の在籍児童数の推移を、平成六年度から十年度までお示ししてございます。
 次に、七ページをごらんください。乳幼児健康支援一時預かり事業の実施状況でございます。平成十一年三月末日現在、世田谷区、狛江市及び調布市におきまして、それぞれ一カ所ずつ、合計三カ所で実施してございます。
 次に、九ページから一〇ページの見開きのページをごらんください。乳幼児医療費助成事業対象者数、受給者数及び人口割合でございます。制度発足の平成六年から平成十年までを区市町村別にお示ししてございます。
 次に、一一ページをお開き願います。児童相談所の専門職員の配置状況でございます。都内十一カ所の児童相談所における平成十一年三月一日現在の専門職員の定数を記載してございます。
 次に、一二ページから一五ページをごらんください。障害者の生活実態につきましてお示ししてございます。一二ページの(1)に住まいの状況を、一三ページの(2)に日常生活動作能力の状況を、一四ページの(3)に就労の状況を、一五ページの(4)に収入の状況をそれぞれお示ししてございます。
 これらは、いずれも、一五ページの(注1)にありますように、平成十年度東京都社会福祉基礎調査報告書をもとに、十八歳以上の身体障害者及び知的障害者の状況を取りまとめたものでございます。
 以上で、ご要求のございました資料につきましてご説明申し上げました。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山本委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○田中委員 私は、まず決算書六九ページにあります児童相談所費などにかかわりまして、深刻化しております児童虐待についてお伺いしたいと思います。
 まず、平成十年度の児童相談所への虐待の相談状況、これがどうだったのか、またその特徴はどうだったかをお示しください。

○稲熊子ども家庭部長 平成十年度の虐待の相談状況と特徴でございますが、平成六年度が二百十七件、平成十年度は合計で七百十四件となってございます。五年間で約三・三倍となっております。
 それから、その相談の特徴といたしましては、身体的虐待と保護の怠慢、これが八割を占めております。さらに、虐待者の五八%が実母、二七%が実父、実父母が合わせまして八五%を占めている、こういう状況でございます。

○田中委員 平成六年度と比べますと、約三・三倍ということでいわれました。この傾向がどんどん加速化しているということがいえるんだと思うんです。
 私、新宿にあります児童相談センターで伺ったところによりますと、まだ最終的な数字ではないんですけれども、平成十二年の二月末現在で既に千二百一件相談があるというふうに伺いました。十年度の同時点、いわゆる十一年の二月の時点での件数が六百六十三件であるのに比べると、実に一・八倍にもなっているということがいえます。社会的にも、児童虐待という言葉が一般的になって、通告義務が認知されてきたという側面もあるとは思うわけですけれども、やはり社会状況の変化に伴う家族のあり方の変化、また、母親などの育児不安が増加しているのではないかというふうに考えられます。
 これに対しまして、児童相談所は今までどういうふうな対応をしてきたんでしょうか。また、十年度としてはどういう取り組みを行ってきたのか、ご紹介をお願いします。

○稲熊子ども家庭部長 児童相談所のこれまでの対応でございます。
 虐待につきましては、大変慎重な対応が求められるということで、まず、複数の職員で対応することを原則としております。通告等があった場合には、直ちに調査を開始し、保育所、保健所等関係機関からの情報収集を行っております。それから、場合によりましては、児童委員に地域での見守りをお願いする、そういった協力依頼などもしております。
 これまで、特に十年度、どんなことをやってきたかということでございますが、これにつきましては、まず児童虐待の早期発見と通報の促進を図るために、医療機関用の子どもの虐待防止マニュアルを作成いたしまして、都内のすべての医療機関、保健所に配布いたしました。また、児童虐待を発見した場合における都民の通報の促進を図るために、区市町村や郵便局の窓口に、啓発用ポスター「なくそう虐待」こういうポスターを掲示しております。三点目には、児童福祉法の改正に伴いまして、児童福祉審議会の中に権利擁護部会を設置いたしまして、保護者と児童相談所の対応方針が異なるような場合にでも、審議会の意見を聞いて公正な対応を図る、こういうような事業を行ったところでございます。

○田中委員 医療機関用の子どもの虐待防止マニュアルとか「なくそう虐待」のポスターだとか、権利擁護部会というようなお話がありました。
 昨年の十月なんですけれども、これも新聞報道されたわけですけれども、多摩地区で、小学校二年生の男の子に対して、母親と同居の男の方がけがをさせたということで、傷害罪で逮捕されるという事件がありました。殴る、けるなどの暴行に加えて、熱湯でのせっかんなどを行ったとして逮捕されたわけです。
 この事件は、たまたま同じアパートの五階の隣の男性が、物音に気づいてベランダを見ますと、Tシャツにおむつ姿の男の子が茫然と立っていた、隣のベランダから伝って助けを求めてきたという状態なんですね。五階ですから、転落したときのことを考えると、ぞっとするわけなんですけれども、そこから中に入れまして、見たら、両手足の皮膚がやけどで赤くただれていた、腹や背中にも殴られたようなあざが広がっていて、このことから、警察ではすぐにこの子を保護して、母親らを逮捕したというものなんですね。
 このケースをいろいろ見てみますと、まだ三歳ぐらいの幼児期から、杉並の児童相談所とか多摩の児童相談所がかかわってきていたケースなんです。逮捕されるまでに、一時保護、四回もしておりました。母親による暴力というのが幼稚園のころから始まっておりまして、だんだんエスカレートしていったということなんですね。事件の起こる一カ月前にも、けがを心配した学校の担任の先生が、母親を直接尋ねております。しかし、横から口を出さないでと、母親に拒否をされております。
 児童相談所の担当者は、いろいろと助言をし、対策を練っていたのに、こんなことになり、本当に残念だというふうにいっているわけです。それぞれが、それぞれなりに連携をして、対応してきたわけですけれども、結果的には、母親の逮捕という事態になってしまったわけなんですね。この場合は、小学校二年生の子どもが自力で逃げられたからいいですけれども、最悪のケースもあります。
 これは、東京のケースではないんですけれども、平成十年の八月に埼玉県で、三人の兄弟と父親が、たばこの火の不始末から焼死した事件では、これも新聞で報道されたわけですけれども、父親が、児童養護施設に入っていた三人の兄弟を強引に引き取って、その後は、学校にも通わせず、あげくの果てに一家四人が焼死してしまったという事件です。この事件では、児童相談所が児童養護施設への保護の措置を解除していたということもあったということです。
 親は、客観的に見れば虐待としかいえない状況であっても、しつけだというふうに主張したり、また、親権をかざして引き取りを求める状況もあるわけですね。それに対し、それぞれがどこまでどういうふうにかかわっていくのか、かかわる必要があるのかという問題は、法整備の問題とも絡みまして、なかなか難しい問題であるとは思います。
 しかし、関係者や研究者の方から一様に指摘される問題は、児童相談所の所長を初めとして、児童福祉司の専門性の問題なんですね。最終的には、一時保護を含めて、施設入所の判断は所長が行うというふうにされているわけですから、どういう判断をどの時点で下すのが一番いいのかということは、大変高い専門性が必要であるというふうに考えられるわけですけれども、このことについてはいかがでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 お尋ねの虐待のケースなどにおきましては、迅速な対応とさらには慎重な配慮と、両方の対応が必要だと考えております。そういった意味でも、ますます困難な事例がふえてきておりますので、その専門性は大変重要である、そのように考えております。

○田中委員 きょうの資料の一一ページにもありますけれども、東京都の児童相談所の児童福祉司は、答えていただこうと思いましたが、ここにありますので、百六人ということですけれども、児童福祉司の任用についてはどういうふうになっているでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 東京都におきましては、児童福祉司の任用に当たりましては、法令で定められた要件を満たすことはもとより、ケースワーカーとしての専門知識、技術のほかに、行政経験豊かな人格、識見が必要である、そういった観点から、主任級の職員の中から任用している、こういうのが現状でございます。

○田中委員 昨年二月の朝日新聞に、全国百七十四カ所の児童相談所の所長のうち、専門職いわゆる児童福祉司として採用されている人が四割に満たないということが掲載されました。児童福祉司も、専門職で採用された人は半分以下だったというふうに指摘をしております。この朝日新聞によりますと、東京では、所長も児童福祉司も、専門職での採用はゼロとなっているというふうに記載されておりますけれども、これは事実でしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 児童福祉法には、専門職という観念がございませんので、何をもって専門職というかというところのとらえ方もあると思います。
 私どもの所長の任用に当たりましては、それぞれ児童福祉法に定められた要件を満たして、この任用をしておりますので、ご指摘の点は少し異なった点があるのではないか、そのように考えております。

○田中委員 新聞に、きちんと調査した結果として載っているんですね、全国の調査が。所長の専門職、四割弱というふうに書いてあるわけです。
 この児童福祉司の資格、児童福祉法第十一条の二を見てみますと、五項目の任用ができるとされる要件が書いてあるわけですけれども、この一項目目に「厚生大臣の指定する児童福祉司又は児童福祉施設の職員を養成する学校その他の施設を卒業し、又は厚生大臣の指定する講習会の過程を修了した者」というふうな規定があるわけです。先ほど、この五項目の中に、すべて、任用されている児童福祉司の方は入っているというお答えだったんですけれども、いわゆる児童福祉司ということでいえば、先ほどいった新聞報道は事実ですか。

○稲熊子ども家庭部長 所長の任用に当たりまして、児童福祉司のそういった経験等をもとにして任用した例はございません。

○田中委員 ちょっとうまく聞き取れなかったんですけれども、もう一度おっしゃっていただけますか。

○稲熊子ども家庭部長 児童相談所長の任用につきまして、今お尋ねの件で、十六条の二の二項三号ですね、二年以上児童福祉司として勤務した者とか児童福祉司たる資格を云々、こういう規定でございますが、この規定に基づいて任用した者はございません。

○田中委員 厚生大臣の指定する児童福祉司ということであれば、先ほどおっしゃった二号か四号ということですので、これには当たらないということだと思うんですね。児童福祉司としての任用、採用ということでは、朝日新聞も報道しているように、ゼロということが事実だと思うんです。
 この報道の中で、社会事業大学の高橋重宏先生がコメントを寄せているわけです。「子どもへの虐待、ネグレクトが増えている現状では、児童相談所の第一線の児童福祉司と責任者である所長がどれだけ専門性をもっているかが重要になる。一時保護や家裁への申し立ては所長がいかに腹をくくるかだ。いまは適切な対処をしないと子どもは死んでしまうケースもある。短期間の研修で一線に立ったのでは、危機にかかわる力量はないといわざるを得ない。」というような厳しいコメントも寄せているわけです。
 また、昨年の秋に、日本子ども家庭総合研究所が全国の児童福祉司に対しましてアンケート調査をしたところ、その九割以上が、人数不足で現状では対応し切れないと答えているとしております。また、その理由として、通告、相談に対して即応体制がとれない、一つ一つのケースに丁寧に対応できないのいずれかを挙げているというふうな状況です。
 私は、先日、この社会事業大学の高橋先生にお会いいたしまして、お話を伺ったわけなんですけれども、専門性の問題と体制の問題は一番大きな問題で、これを変えるだけでも対応が相当違ってくるんだというふうにいわれておりました。大変、印象深く伺いました。
 児童福祉司や所長の任用資格を改正することも含めて検討する必要があるというふうに私は思うわけであります。これは指摘にとどめておきたいと思います。
 また、体制を強化するために、児童福祉司の人員を補充する、拡充するということも必要ではないかというふうに思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 いろいろと児童相談所に寄せられます相談が、複雑、困難度を増してきております。そういった中で東京都といたしましては、これまでもそれなりの充実を図ってまいりました。なお一層の専門性の拡充に努めていく、そういった状況でございます。

○田中委員 児童福祉司の人員の拡充についてはいかがですか。

○稲熊子ども家庭部長 これまでも、必要な人員の配置について努めてまいりました。これは十二年度のことになりますが、少し十年度から外れますけれども、ことしの四月からは、児童相談センターの中に虐待対策課を設けまして、そういったような具体的な形でもって充実を図ってきているところでございます。

○田中委員 今の国の基準ですと、人口十万人から十三万人に一人という児童福祉司の配置基準だというふうに伺っております。それは五十年以上前の、いわゆる戦後間もなく決められた基準だというふうにも聞いているんですね。
 この虐待問題では、かなり先進を行っているといわれているカナダのトロント市では、人口四百三十万人に対して三百人弱という児童福祉司の方がいらっしゃるということなんですね。ですから、一万五千人に一人ぐらいの人口割合でいるというような状況ですので、この十万人から十三万人に一人で、百六人という数が果たしていいのかどうか、足りるのかということについては、かなり疑問があると思いますし、戦後すぐの状況と今の状況というと、虐待をめぐる状況というのはすごく変わってきているわけですし、複雑化しているという状況の中では、体制の強化というのが非常に求められてきているというふうに思うんです。
 そこで、平成十年の五月に総務庁の行政監察局が行政監察の結果、児童相談所の機能が十分果たされるよう、児童福祉法の趣旨に沿った児童福祉司の任用を図るよう、都道府県を指導するとともに、児童福祉司の専門的技術の向上方策について検討することというような勧告をしているわけなんですけれども、これを受けて、厚生省から都に対しまして、指導はあったんでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 厚生省からは特段の指導等はいただいておりません。

○田中委員 それでは、この国の総務庁の行政監察による勧告というのはご存じですか。

○稲熊子ども家庭部長 承知をしております。

○田中委員 それでは、その勧告についてどういうふうに認識しているでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 私どもも、これまで、児童相談所をめぐる状況が、特に相談内容の複雑、困難さを増している中で、それぞれ充実が必要である、そういったふうに考えておりますので、基本的には是認する部分もある、そのように考えております。

○田中委員 それでは、児童福祉司の一人当たりのケースの数、これについてはいかがでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 児童福祉司一人当たりのケースの数でございますけれども、八十ケース程度であると考えております。

○田中委員 先ほど紹介しました日本子ども家庭総合研究所の調査によりますと、六割近くの人が五十ケース以上担当しているという調査結果が出ております。今、八十ケースというお話がありましたけれども、それに比べましても三十ケースも多いわ、というような数ですね。困難事例がだんだんふえてきているということも伺っておりますので、そういうことを考えると、継続的にかかわっていくケースがやはりふえてくるんじゃないかなというふうに思うんです。実際、十年度と比べても十一年度は相談件数が倍増する勢いでふえているという現状を考えれば、体制の整備は不可欠というふうに考えます。
 昨年十二月に、衆議院の青少年問題特別委員会において、児童虐待の防止に関して決議がなされました。児童虐待を防止するには、現代日本における家族のあり方、教育のあり方、子育て不安等、根本的な問題の解決が必要とされるが、現行制度の中ででき得る限りの対策を講じ、今後、早急に、法制面、予算面の措置において万全を期す必要があるというふうにうたっているわけですけれども、緊急の対策として七点を挙げております。その中には、児童相談所の体制と専門職員の充実及び児童養護施設の改善、二十四時間対応窓口の整備、当該児童、保護者等に対するカウンセリング及び個別フォロー体制の充実ということが挙げられております。
 そこで伺うわけなんですが、都として、この特別委員会の決議、どういうふうに受けとめているんでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 基本的にはそういった方向で進むべきであると考えております。

○田中委員 その方向で、今、法整備も進められているというふうに伺っておりますので、その段階で、それに見合うだけのものをぜひつくっていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 次に、相談体制の連携ということですけれども、民間の児童虐待にかかわるセンターとして、社会福祉法人の子どもの虐待防止センターというものがあります。子どもの虐待一一〇番という電話相談の活動だとか、これは、一日二十本程度の電話がかかってくるということです。関係機関との援助や調整活動、弁護士による権利擁護の活動、母親同士が自分の体験と痛みを語り合う治療的グループの活動、広報、啓発活動も含めて、非常に多彩な活動を行っております。
 子どもの虐待という事態に対応するためには、ひとり児童相談所だけで対応できる問題ではないというふうに思います。保健所や学校、児童養護施設、児童委員など、多くの地域のネットワークが必要と思うわけです。
 実際に、さまざまな活動をしているこのような民間との連携を含めて、各関係機関との連携が大変重要になってくるというふうに思いますけれども、具体的にはどのような連携をしているのでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 先ほどご指摘のありました虐待防止センター等につきましては、これまでも、種々の場面で連携を深めてきております。民間では対応できない一時保護が必要なケースを、虐待防止センターから紹介されて、児童相談センターにおいて対応する、そういったようなケースがございます。
 その他、保健所でありますとか福祉事務所、教育相談所、保育所等、そういった関連機関、あるいは民生委員、児童委員との関係につきましては、各児童相談所におきまして、定期的な会合等を持ちまして、児童虐待問題についての啓発を図るとともに、速やかな連絡がとれるような体制をこれまで進めてきているところでございます。

○田中委員 この虐待防止センターの専任相談員の方からお話を伺ったんですけれども、一人で、また一つの機関で支えられることは限られているんだと、だから、難しいケースこそ、個別のケースごとに、それぞれの機関が集まって、どうしたら救えるかという、支える体制をつくること、地域のネットワークづくりが一番必要なんじゃないかということをいっておられました。実際に、実質的に機能できるネットワークをつくっていくことが重要なのではないかということを強調されておりました。
 ということで、今は、いろいろとお話がありましたけれども、連携をとって会議などを行っているということと、また平成八年度からは、児童虐待のケースマネジメント事業も行っているということだと思うんですけれども、ただ、会議を何回開いたとか、電話連絡をしょっちゅうやっているんだということも、もちろん大事なんですけれども、個別のそれぞれのケースごとに、そのケースを担当していた人たちが、保健所や児童委員とかいろんな方が、関係する人がすぐ集まって、即応体制で、一つのケースでいろんな意見を闘わせるという、そういう実質的な連携というか、そういうことがぜひ必要になってくるんじゃないかなというふうに思います。その機関だけの判断ではないというような、みんなの意見で、一つのケースについての最善の方法を考えるということも必要だと思いますので、ぜひ、そういう実質的な連携のあり方ということも検討していただきたいと思っております。
 今の時代、本当に子育てが、なかなか普通のことじゃない時代といいますか、大変な状況になってきている時代だと思うんです。若い母親などは、本当に身近に子育てというか、自分の思いどおりにならない初めてのケースが赤ちゃんというケース、子どもを育てるというケースだというふうな状況から、さまざまな子育ての不安を抱えているというのが実態だというふうに思います。そういう意味では、子育て家庭が地域の中で孤立しないということがとても大事になってくるのかなというふうに思います。
 そういう意味では、総合相談窓口を初めとして、関係機関との調整、実際のサービスの供給も含めた子ども家庭支援センター、これは、東京都では平成七年度から始めているわけですけれども、大変重要な役割を担っているかなというふうに思うわけですが、平成十年度の実績は何カ所でしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 平成十年度における実績でございますが、八カ所の実績でございます。

○田中委員 計画では、各区市町村に一カ所ずつつくるというふうに伺っておりますけれども、平成九年度で六カ所、今、十年度でいわれましたけれども、八カ所ということで、設置数がなかなか伸びていないというのが現状だと思うんですね。
 それで、実施しているところも、見てみますと、機能的にも、それぞれ結構まちまちの状況なんですね。例えば職員配置にしても、常勤を置いて手厚い体制をとっているところもあれば、非常勤が主なところもあるわけです。
 十年度に設置の手引を出したと聞いておりますけれども、役割を明確化させる必要があると考えますが、いかがでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 子ども家庭支援センターの事業につきましては、身近な自治体である区市町村が、全面的な相談からサービスのコーディネートまで行うという、新しいシステムでございます。
 これらにつきましては、児童福祉審議会の提言等をいただきまして事業化したものでございますけれども、これを具体化するに当たりましては、先ほどご指摘にもありましたような、事例集をつくったりとか、あるいは、それぞれの役割分担等を明らかにする必要があると思っています。
 具体的に申し上げますと、一般的な子育てに関する相談は、身近な区市町村が行いまして、専門性の高い相談や困難なケースへの対応は、都の児童相談所が対応する、そういったような形で、都と区市町村の役割分担と連携を図っていく必要があると思います。
 区や市町村におきましても、さまざまな形での相談を行っております。そういう中で、その中心になるのが子ども家庭支援センターでございますので、この子ども家庭支援センターの充実につきましては、一層努めてまいりたい、このように考えております。

○田中委員 最後に、意見だけをちょっと述べさせていただきたいと思うんですが、国では、主に虐待を受けた子どもの深刻な情緒障害の医療的なケアを行う施設として、情緒障害児短期治療施設というのがあります。全国では、平成十年度で十六カ所、五百九十三人が入所しているという状況です。
 小さいときに親から虐待を受け続けるという状況の中で、施設入所するということでは、親から引き離されているわけですから、虐待そのものは解放されるわけですけれども、そのときに受けた心の傷というのは、一生いやされることはないというふうにいわれております。また、虐待を受けた子どもが親になったときには、また虐待を繰り返すというようなこともいわれているわけです。
 他者との関係がうまくつくれないこととか、自分への正当な評価ができないというようなこととか、攻撃性の高さだとか、深刻な障害を受けざるを得ない状況があるわけで、専門家は、心の傷そのものの手当てを受けない限りは、なかなか情緒障害的な傾向は消えていかないというふうにいっているわけです。そういう意味からいえば、児童養護施設に入所することによっても、第一義的には生活の場という側面がありますから、現状の体制のままでは、それらの心の治療というのが十分行えるとは限らないというふうに思うんですね。
 そういう意味で、現在東京都では、情緒障害児の短期施設をつくる計画はないというふうに伺っておりますので、あえて質問はいたしませんけれども、医療的、専門的治療は絶対に必要だというふうに考えますので、ぜひ検討を始めていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。

○大河原委員 私も、子ども関係で質問させていただきます。
 平成十年度に、東京都は子どもの権利擁護のシステムを立ち上げております。まず、それまでの設置の経緯をお答えください。

○稲熊子ども家庭部長 経緯でございますが、平成十年七月三十日に、東京都児童福祉審議会は、意見具申といたしまして、「新たな子どもの権利保障の仕組みづくりについて」と題する提言を行いました。ここでは、新たな権利擁護システムの確立と、第三者機関の設置が提言されております。
 これを受けまして、平成十年十一月に、児童相談センターの中に、システムを試行するためとして、権利擁護委員会というものを試行的に設置をしたという経緯でございます。

○大河原委員 これは昨年の「東京の社会福祉」ですが、この中にも、子どもの権利擁護委員会というものがきちんと入っておりまして、うれしく思っております。
 当初、フリーダイヤルで〇一二〇-八七四-三七四「話してみなよ」ということで、子どもたちに配られたカードがとても好評で、ポケットに入れている子たちを知っております。
 子どもが直接アクセスするというのは、さまざまな相談機関がある中でも、子どもから信頼されるということにも重点があって、大変いいことだというふうに思うんですが、この子どもの権利擁護委員会及びシステムについて、構成とその機能についてお尋ねいたします。

○稲熊子ども家庭部長 権利擁護委員会の構成と機能でございます。
 まず、委員会の構成でございますが、子どもの権利擁護電話相談員が二名、子どもの権利擁護専門員が三名、子どもの権利擁護委員会委員が四名、それから事務局から成っております。
 その機能でございますが、まず電話相談でございます。電話相談員は、相談に対しまして、カウンセリングなどによりまして問題の解決を図るほか、必要があれば専門員に相談者を紹介する、そういう仕組みになってございます。
 さらに、専門員は、相談者に直接面接をし、場合によっては、関係者からの事情聴取などの調査や当事者間の調整を行う、こういったような内容でございまして、また権利擁護委員会の委員は、権利擁護専門員とともに、子どもの権利擁護委員会に出席をし、重要事項の決定、権利擁護システムの検討、そういったことを行う、こういう内容にしてございます。

○大河原委員 この「東京の社会福祉」を見ても、子どもに関する総合的な相談窓口としては、児童相談センター、児童相談所が設置されている。また、その他のところでは、警視庁がやっている少年相談室や少年センター、ヤング・テレホン・コーナー、それから教育庁は、総合窓口化しまして、相談機能を強化しましたという形で、既に別なところにも、たくさん相談をする場はあるわけなんですね。ただ、今ご紹介いただいたような構成と機能を持ったものは、なかなか見当たらないんじゃないかというふうに思います。
 これまでの救済のシステムでは不十分ということから、新たにこのシステムを組んだというふうに理解しているわけなんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 先ほどの児童福祉審議会の意見具申等もございましたが、子どもの権利擁護のためには、既存の機関の充実を図るほか、一定の権限が付与され、公平性と独立性が確保された第三者機関の設置が必要である、そういったような提言を受けたところでございます。

○大河原委員 ここでいう第三者機関ということが非常に重要で、例えば学校の中の問題も、教育庁がつくっている相談窓口に、子どもがみずから相談をかけるというのは、心理的な壁もあって、なかなかできないというふうに思います。
 それで、福祉局の児童相談センターの中にこの相談機能ができているわけなんですけれども、行く行くは、本来の意味での第三者という立場が確立されるべきだというふうに考えております。
 この試行は、平成十年十一月から行われ、現在も続いているわけですけれども、十一年三月までに、この権利擁護委員会で一応の報告が出ております。
 十年度、そして十一年度の実際の活動実績、こういったものはどういうふうになっているでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 まず、平成十年十一月から平成十一年三月までの権利擁護委員会の相談でございますが、これは三百三十一件でございます。そのうち、子ども本人からの相談が二百二十一件、約六七%を占めております。相談内容といたしましては、いじめに関する相談が一番多く、その二三%を占めております。
 関連いたしまして、十一年度は千三百六十七件で、そのうち子ども本人からの相談が千八十六件、七九%を占めております。相談内容は、十年度と同様、いじめに関する相談が一番多く、一五・六%、そういう状況でございます。

○大河原委員 この実績というか、数を伺いますと、やはり最初の十年度は、四カ月の間に三百件を超える。そして、昨年度は千三百六十七件。やはり、子どもたち自身がかけてくるというのは、すごく大きなことだと思うんです。
 私が住んでおります世田谷区は、チャイルドラインの試行というのをやっておりますけれども、これは、子どもたちがいいたいことをいえる電話ということで、特別相談体制をということではありませんけれども、権利擁護委員会がつくっているこの仕組みは、専門員にまでつなげて、そして、行く行くは、第三者機関として、そういうトラブルのある機関に対しての勧告を行えるような、そういう仕組みが目指されているというふうに考えております。
 子どもの権利擁護システム検討委員会で、十年十一月から十一年三月までの報告書が出ていると思うんですけれども、この報告書の中に、いろいろな課題が示されていると思います。その課題とその後の改善策についてはどうなっているでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 児童相談センターに設置いたしました、子どもの権利擁護システム検討委員会の報告書でございます。この報告書の中では、第三者機関の条例化や独立制などの法的課題、他の機関との関係など制度的課題、人的問題などの活動上の課題などが取り上げられております。
 これらの課題につきましては、その後の改善策ということでございますが、今、昨年十一年七月から、関係四局から成る庁内の研究会、子ども権利条例(仮称)の研究会の中で、今後の権利擁護システム試行上の課題として、現在も検討を行っております。
 そのほか、その後の改善策といたしましては、十二年度には、この子どもの権利擁護専門員を補助する、子どもの権利擁護調査員を新たに設置することとしたところでございます。

○大河原委員 私も、この子どもの権利擁護システム検討委員会の報告書を、第二回ということで読ませていただきましたけれども、実に具体的に、委員の先生方が事例を挙げながら、うまく解決した部分、それから、この解決ができなかったときに、もしかしたら、関係間の、行政間の調整がうまくいかない場合もあるかもしれない、その後の課題として指摘しているところもありました。
 そしてまた、先ほど田中さんの質問の中でも出てきましたけれども、例えば児童相談所に対してクレームがあった場合、同じ局の中にこのシステムがあることで、何か調査、また勧告といったときに障害が出てくるんじゃないかというところまで考えて、第三者制を保とう、そういったものを目指そうという方向性がかなり強く示されているものだというふうに、私は読み取ったわけです。
 今年度も続いていまして、この報告書で指摘されていた人的な配置ということ、調査員の専門員の方たちの数は限られていますので、実際に子どものところまで出向いていって調査をする、そうした人たちが足りないということでは、今回、登録制ではありますけれども、その調査員がついたというふうに伺っております。
 心強いことだと思いますけれども、こうした試行の中で、本来は条例に向けて行っていることだというふうに思っているわけですが、四局で検討するということで、報告書が、実は去年の年末に出るはずだというふうに思っておりました。少しおくれているようなんですけれども、この研究会の検討状況というのはどうなっているのでしょうか。

○稲熊子ども家庭部長 子どもの権利条例(仮称)の研究会でございますが、学識経験者との意見交換を交えながら、スタディーをしながら、条例制定に取り組む場合の課題や問題点をただいま論議しております。
 関係四局でやっておりますけれども、いろいろと議論もしております。現在、報告書案の作成作業を行っている、そういう状況でございます。

○大河原委員 相談内容にいじめが多かったということでは、学校という場に、この委員会の調査権が届くのかどうかということが議論になっている、そういうふうに聞いてもいますし、想像もいたします。
 この報告書の中にも事例が挙げられていて、そういったところで、学校に直接連絡をとったようなことも書いてございましたけれども、こういう担当部署ごとの壁というのがかなり大きいのではないかということ、それから、東京都で設置をしたときに、市町村がどういうふうに役割分担というか、壁を壊すことができるのかということ、そういったところが、報告書が触れている中身かなというふうにも思います。
 第三者機関の設置に向けて、局を超えて、本当に横断的に検討を進めていただきたいというふうに思うんですが、この点、もう一度伺わせてください。

○稲熊子ども家庭部長 この研究会では、今、さまざまな内容につきまして議論を行っております。
 この研究会の検討結果を見ながら、対応の方向を検討してまいりたい、そのように考えております。

○大河原委員 一応、生活都市東京、重点項目の中に、来年度に子ども条例をつくっていくようなことが計画化されているというふうに理解してきました。ぜひ、この検討結果は見ていきたいと思うわけなんですけれども、子どもたちの現状というのは、本当に待ったなしです。その点をぜひ他局の方にもお伝えいただきまして、来年条例化が進む、その幅広い議論ができるように、ご検討いただきたいと思います。
 終わります。

○小松委員 まず、生活保護について何点か伺いたいと思います。
 生活保護は、社会保障の中で、最も包括的かつ最終の扶助であり、社会保障の最低線を支えるものであるわけです。生活保護法は、同法が、憲法第二十五条の理念に基づいて、その実現を目的とするものであることを第一条で宣言して、二条では、すべての国民に無差別平等の受給権を認めることによって、その権利性を明確にしております。この法律によって保障される最低限の生活は、健康で文化的な生活水準であることを第三条で明記しておるわけです。
 このように、すぐれた理念に基づいた生活保護制度でありますが、運用面においては多くの問題もあります。そこで、きょうは、この生活保護について、決算年度を通じての、そのほんの何点かに絞ってお伺いしたいと思います。
 まず第一は、保護申請についてでございます。
 生活保護の相談件数、保護申請件数、取り下げ、却下件数についてお伺いいたします。

○渡辺生活福祉部長 福祉事務所における相談件数、保護申請件数、開始件数等についてのお尋ねでございますが、まず、このうち相談件数につきましては、区市によって、そのとらえ方がさまざまでありますために、厳密な統計数字はございませんけれども、都に連絡のあった数字を単純に集計いたしますと、平成十年度の都全域における相談件数は十二万八千五百八十九件となっております。
 また、保護申請、それから今お尋ねの取り下げ、却下等、また開始件数等についてでございますけれども、都が発行しております社会福祉統計年報によりますと、平成十年度における申請件数は二万五千十件、取り下げ件数は六百七十三件、却下件数は二百七十八件であります。
 ちなみに、職権によりますものも含めまして、開始件数は三万九十一世帯でございます。

○小松委員 相談件数が十二万八千五百八十九件。十三万件近くあるにもかかわらず、保護の申請件数、これが受理件数と見てよいのでしょうか、二万五千十件。そして、その中の取り下げ件数や却下件数九百五十一件を合わせても、この数字の乖離というのは何を示すのでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 ただいまお尋ねの相談件数についてでございますけれども、この相談件数のとらえ方は、先ほど冒頭申し上げましたように、区市によりまして、そのとらえ方が違っております。
 その違いが生じます要因でございますけれども、区市によりまして、対住民の相談窓口の組織そのものの成り立ちが異なるケースがございます。いわば窓口の所掌事務が違うということが一つ挙げられます。
 それから、区市によりまして、法定サービス以外について、区市特有のサービスがある場合に、そのことも含めて窓口で対応しているケースがございます。
 さらに、路上生活者等に対する応急援護品の支給などの申し入れにつきましても、この相談件数にカウントしております区市があるというふうに、私どもは承知しております。
 以上でございます。

○小松委員 確かに、今おっしゃったような種々の要因があるかと思います。しかし、この福祉事務所に相談に伺うということは、いろいろなところに行ったけれども、最後、本当にどうしたら生活できるだろう、わらをもつかむような思いで相談に行かれた方が多かろう、このように考えていいのではないでしょうか。
 しかし、余りにも、十万件以上も乖離が起きるということでありますので、それでは、生活保護の相談から、いわゆる受理、決定に至るまでの手続、手順というものをお伺いしたいと思います。

○渡辺生活福祉部長 生活保護の相談窓口に来られました方が、保護申請の意思を明確にお持ちでありまして、その申請自体を受け付けないということは、普通は考えられません。
 常に、相談の場合は――相談を受けましてから決定までの一般的な手続ということで流れを申し上げますと、面接相談、申請書記入、申請書提出、申請書受理、保護の要否判定のための資力や扶養等の調査、保護の決定あるいは却下という順に流れていくものと承知しております。
 それで、今、先生のお尋ねの、相談件数が大変多いということと、その申請との間に乖離があるというお話でございますけれども、普通ですと、生活保護そのものについて十分ご理解いただいておりますれば、申請書につきましても、すぐにご相談の核心に触れて、それを受理できるとは思いますが、一般的には、生活困窮という一般的な状況でお越しになりますので、それ自体がいきなり保護申請に結びつくということではなくて、前の段階の面接相談が重要になるかと思います。

○小松委員 確かに、前の相談、インテークの段階が大変大切かと思いますけれども、しかし、このインテークの段階で来られた方が、生活保護を受けたいという、そうした気持ちがあるときには、申請書をすぐに書いていただいているのでしょうか。そしてまた、申請書が各窓口に置かれている、そのような状況を指導されているでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 先ほども申し上げましたとおり、申請のご意思を明確にお持ちの場合、その申請書を受け付けないということは、普通は考えられないわけでございますが、その前段として行われます面接相談の最も重要な意味合いといたしましては、まず、ご本人のお話を十分承りまして、その方の意向と、現行のさまざまな福祉サービスにかかわる制度の橋渡しをするという点が最も大きな意味合いかと思います。
 したがいまして、面接相談の段階では、生活の支援に係る諸制度の仕組みや条件といったものを丁寧にご説明しながら、相談に来られた方の状況もつぶさに伺うことが大切なのではないかと私どもは承知しております。このことは、来談者からの相談事に誠実に対応する中で、自然に生ずる状況であると承知しております。
 それから、申請書の配置状況でございますけれども、通常、生活保護の相談を承ります窓口におきましては、当然のことながら、申請書は具備してございますけれども、今申し上げたような面接相談の段階で十分お話を承りまして、やはりいろいろな他施策のサービスを考えた上でも、なお該当せず、生活保護によるべきものであるというようなことがお互いに確認できた段階で、申請書を書いていただき、申請書を書いた暁には、そのことについてのもろもろの関連調査に入ることを十分承知していただいているということが必要かと存じます。

○小松委員 私がなぜこういうことを何回も申し上げるかと申しますと、生活保護における基準日と申しますのは、いうまでもなく申請日であるわけです。ところが、今のやり方ですと、この申請に来たんだけれど、実は自分も生活保護を十分にわからなかった、その説明をされたり、いろいろ調査をする、その調査に時間がかかる、そして実際に申請書を書くのは、すべて資産調査などが終わった二週間近くとか、一週間過ぎてから、さあいいですよと、そこで書かれる。その時点では、申請日が基準ですから、その相談日には保護は遡及されないわけですね。
 そういったこともありますので、先ほどから申し上げておりますように、各福祉事務所の中に、まず申請書をきちっと置く。本人がまず申請書を書く段階、そのことが生保の申請を受理する段階であり、そしてインテークで、きちんと受理をした段階で、それから調査に入る。それが、この生活保護法のいう手順ではないかと思うわけです。これについては、きょうは時間がありませんので、この権利制限にならないよう、この指導をぜひきちっとしていただきたいということで、お願いをしておきたいと思います。
 ところで、今、リストラなどで失業した方々、生活手段を失い、保護申請したけれど、稼働能力があるということで受理してもらえなかった、こういう例を、私、時々耳にいたします。今、景気の低迷が長引き、完全失業率も過去最高値を続ける中で、稼働能力を有し、職安に通い、稼働能力活用の努力をしながらも、職にありつけない、こういう人々が多くなっておりますが、こうした方々への生活保護適用については、どのようにされているでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 ただいまご指摘のように、マスコミなどでは、いわば大失業時代の到来であるというような見出しをお使いになる向きもございます。そういう意味で、担当者の一員としても大変胸の痛む状況でもありますし、あわせて危機感を非常に強めているところでもございます。
 このところの景気の停滞が継続していましたために、リストラ等で失業する方がふえており、生活困窮する方が増加しつつあることについては十分認識いたしております。リストラ等で失業した方への生活保護の適用についてでございますけれども、その方の、あるいはその世帯のあらゆる資産、能力等を十分活用していただきまして、さらに就労に努力されているにもかかわらず、不幸にして就職ができず、生活にさらに困窮されているというような状況が生じている場合におきましては、年齢を問わず、あるいはお立場を問わず、他の生活者あるいは生活困窮者と同様に、生活保護の要否判定の対象とすべきであるというふうにされているところでございまして、私どももそのように、これまでの段階では、各実施機関を指導してまいったところでございます。
 いずれにいたしましても、生活保護の適用については、個別ケースごとに具体的に判断することが必要でありますので、それぞれの福祉事務所にお出かけいただきまして、つぶさにご相談いただきたいと存じます。

○小松委員 国からも、この実施要領関係では示達が来ており、要保護状態にあるか否か、及び稼働能力を活用するための努力をしているか否かは、その個々の事例に即しまして、個別具体的に実施機関が判断していくということはいうまでもないわけです。
 しかし、窮迫の状態にあるにもかかわらず、稼働能力活用の努力等一切考慮せず、申請を受理しないなどのことのないようにお願いしたいということは、既に今確認されたことと思いますので、改めてここで強くお願いしておきたいと思います。
 次に、ケースワーカーについてでございます。
 近年、生活保護の受給者が増加の方向にあることは、先ほどいただきました資料の数字を見ても明らかですが、不況が長引く中、また、この四月からは介護保険が始まったということもありまして、この生保の受給、さらにこれからふえることが推測されるのではないでしょうか。最近、ワーカーの持ちケースがふえて、生保受給者への訪問活動を初めとした自立支援、援助が十分にできないという悩みを、このケースワーカーから打ち明けられたこともあります。
 そこで伺います。ケースワーカー一人当たりの持ちケースの推移についてです。ここでいうケースワーカーと申しますのは、ケースを受け持っている地区担当のことですが、それで資料が出ますでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 一般にケースワーカーという呼称で、福祉事務所の職員の中の一定の方を呼んでいただいているわけでございますけれども、厚生省あるいは機関委任事務時代の東京都では、このケースワーカーの方々を、現場で業をやる方ということで現業員と呼称しておりますが、このケースワーカーのカウントに当たりましては、現業員ということで、地区をいろいろと把握されている方のほかに、福祉事務所の中で面接相談を専ら取り扱っている職員がございます。それらを合わせまして、我々としましてはケースワーカーの数というふうに把握するよう、厚生省からの指導を受けてまいったところでございます。
 そこで、十年度の生活保護受給世帯は、十月一日現在の統計によりまして、八万八千百三十一世帯でございまして、前年度と比べ六千百九十世帯、七・六%の増加になってございました。十年度におきますケースワーカー数は、同じく十月一日現在で千二百八十四人でございまして、一人当たりの持ちケースは六十八・六世帯でございました。

○小松委員 残念ながら、今お答えいただいた数字は、今お話しのとおり、インテークワーカーなどを含めた数字ということで、本当に地区担当員が担当するケースより大分少なくなっているように思われます。
 しかし、私も、この年度別被保護世帯と現業員数という数字を見せていただきましたが、私の手元にありますこの資料でも、例えば、元年といわないまでも、平成四年あたりから、この七、八年とりましても、被保護世帯は順次ふえている。先ほどの三ページの数字がそうですね。それに対して現業員数は、平成四年度で、市部、区部全部合計いたしまして千百九十四人とかいう形でありますが、最後の十年度に来ては千二百八十四人。一定のふえ方はあるものの、保護世帯がふえるのに追いついていかないふえ方しかしていない。具体的な数字が出ないで残念ですが、インテークの方々を除けば、これは相当な数になる。私、幾つかの区市を伺いましたけれども、百近いところが多くある。厚生省が出しておりますこの二百四十で三人、八十ケースという自体も、インテークを入れることになりますと、これ自体すら難しい、多いというふうに思われるわけです。問題な法定数、インテークワーカーを入れている数字でも、さらに法定数以下のところというのがどのくらいあるんでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 ただいまのご質問でございますけれども、ケースワーカー一人当たりの持ちケース数が法定数を上回った団体のことについてのお尋ねだと思います。
 ご案内のとおり、東京には二十三区、二十七市、それから郡部と島しょがございまして、そこにそれぞれ一つの、あるいは複数の福祉事務所がございます。これらについて一応団体別にくくりまして申し上げます。十年度の十月一日現在で法定数を上回った団体数でございますけれども、三区十四市、それから西多摩というところでございます。

○小松委員 このように、本来持っているケースよりも大変低目のケースにもかかわらず、三区十四市、西多摩というような形で法定数を下回っている。今後は、地方分権の施行で、今月以降、ワーカー数については標準の数が示されますが、都としてはこの辺をどのように指導されていくのでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 私どもといたしましては、十年度現在におきましては、先ほど来申し上げていますように、機関委任事務で、上級庁あるいは上級行政庁対下級行政庁の関係にございましたので、区市に対しましては、法定されている基準数を遵守するように求めてきたところでございます。それに外れる場合につきましては、文書をもって指摘をし、是正を求めてきたところでございます。
 ただいまお尋ねの本年四月以降につきましては、この機関委任事務が法定受託事務の形態に変わりまして、東京都の立場は、旧来のような上級、下級の関係ではございませんので、是正について技術的な助言あるいは勧告という形態をとりまして、各区市に、この生活保護の運用が最も適正になるように、人員配置等お願いしていくという立場になろうかと思います。

○小松委員 ワーカーや現場がやる気を起こすような支援、助言をお願いするわけですが、今おっしゃったように、地方分権の規制緩和もあるわけで、このワーカーについて大変危惧しているところですが、東京都が実態に見合って自治体をどう支援、指導してきたかということと同時に、国に対してどう物申しているのかが問われるのではないかと思うんですね。
 先ほども申しましたように、地区担当をしないワーカーの数も入れて一人八十ケースの持ち分を法定化している、この国にこそ問題があると思います。現場からの声を国の方へぜひ届けてもらいたいという立場から、現時点で、なお都として国に対して求めているものがありましたら、お聞かせください。

○渡辺生活福祉部長 これまで、東京都を初めとして各地方公共団体は、国に対しまして、地方分権を促進するよう強く働きかけたところでございまして、特に、地方公共団体に権限と財源を移譲するよう求めてきたところでございます。
 今回、地方分権一括法によりまして、過去から積み上げてきたそれぞれの運動が一定の成果となって実現したものとして、一応積極的な評価をしたいと考えているところでございます。地方分権一括法によって改正されました生活保護関係などの諸法令につきましても、この四月から施行されたばかりでございますので、しばらくは、適正な制度運営が図れるよう、実際の運用などを注意深く見守ってまいりたいと考えております。
 今後、こうした運用状況を見た上で、問題点が顕在化いたしますれば、その時点で国に対し改善を要望していきたいと考えているところでございます。

○小松委員 ぜひよろしくお願いします。
 私がなぜここであえてケースワーカーの数を問題にしているか申しますと、そもそも生活保護でいうケースワークというのは、一般的生活水準の維持が不可能または困難で苦しんでいる個人や家族を、その状態から正常な社会生活に復帰させて、自立的生活を維持し得るよう援助することを目的としているわけです。したがって、単なる経済給付にとどまるのではなくて、人的サービスを介して、生活困難の回復、保全、すなわち自立を行うところにこそ、社会福祉としての特質があるのではないでしょうか。
 この人的サービスすなわちケースワークを行う専門家こそがケースワーカーであるわけですから、当然、専門的知識、技術、素養が求められると思われますが、ケースワーク及びケースワーカーのその専門性についての基本的な理念について伺いたいと思います。

○渡辺生活福祉部長 ケースワーカーの専門性について直接定めたものはございませんけれども、社会福祉事業法第十八条の規定を参考にいたしますと、生活保護のケースワーカーには、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意のある人物が求められていると受けとめられます。すなわち、ケースワーカーの資質、素養といたしましては、関係の法令や制度に関する専門的かつ幅広い知識、社会経済状況に関する鋭敏な感覚、すぐれた接遇の技術、物事に対する深い洞察力と社会的な公平、公正感、そして何よりも生活困窮の方々に対する理解と思いやりが必要であると考えております。

○小松委員 確かにそれはそういうことだと思うんですが、しかし、今日の生活保護の実態、複雑に入り組んだ、しかも深刻化したものが多く、そのニーズにこたえていくためには、高度な専門的知識と、それらを自在に駆使することができる技能が必要ではないでしょうか。その前提には人間性が求められるのはもちろんです。
 かつて、竹内愛二氏が、専門社会事業者の成果について論じた講演でこうおっしゃっておりました。社会福祉の専門的な援助とは、どうしようもない事態を何とかしようとするところから出発し、そのためにワーカーが専門的な知識と技能を自在に駆使するところに、専門家の専門家としてのゆえんがあると、いみじくもその本質的な部分を鋭く指摘したことがあります。
 こうした立場から現在の福祉事務所やワーカーを見たときに、ケースワーカーを専門職として採用しているという区市町村がほとんどないといった実情からしまして、現実は極めて不十分といわざるを得ないわけです。
 都はどのような対策を講じてきたのか、または考えているのでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 大変難しいお尋ねだと思いますが、区市におきましては、それぞれの団体ごとに、適正な人事管理、職員配置が行われているものと考えております。また、そこにおきます人事異動も、その積極面を考慮しながら、職員の適正な配置がえを行っているものと受けとめているところでございます。
 その中で、たまたま職員の育成の考え方を踏まえまして、いわゆる学校時代に福祉に関する学科を修めた方々ばかりではなく、一般的な学部、あるいはそれぞれの学校などをお出になった新卒者をケースワーカーに配置したり、あるいは、これまで大変力を発揮しておりましたベテランケースワーカーの能力を他の部署で活用するために転出させることなどにより、実施機関におきまして一時的にケースワーカー集団の専門性がやや薄れることも、一面事実であろうかと存じます。
 福祉局といたしましては、それぞれの区市の福祉事務所長等に対しまして、これまでも、ケースワーカーの専門性に配慮した職員配置や育成を行うよう、機会をとらえて要望してきたところであり、今後も引き続き働きかけてまいります。
 また、福祉局におきましては、福祉事務所関係職員に対しまして広く研修を実施するなど、ケースワーカーの専門性の向上に向け取り組んでいるところでありまして、今後とも効果的な研修の実施に向けて努力してまいりたいと思います。

○小松委員 ぜひよろしくお願いしたいんですが、この種の問題というのは、当然、養成教育、任用、研修という連環でとらえなければなりませんが、当面の課題としまして大切なのは、任用時から一貫して、研修のあり方ではないでしょうか。区市のワーカーに対する都の研修、区市町村の研修についての指導助言、どのようにされているのでしょうか。

○渡辺生活福祉部長 職員研修につきましては、各団体ごとにそれぞれ熱意を持って取り組んでおられるところでございますけれども、福祉局といたしましては、区市の福祉事務所の職員の方々に対して、それぞれの職層に向けて、あるいは、新任、現任の別をよく考慮しながら、それぞれ福祉に関する研修を充実してきたところでございます。福祉事務所長に対して、あるいは係長級が主でございますが、査察指導員の新任、現任のそれぞれの研修、あるいは地区担当員としての、今申し上げたケースワーカーの方々の新任と現任に関する研修、それから窓口対応される面接相談員の方々のそれぞれにつきまして、年間にその計画を立てまして実施しているところでございます。
 さらに、東京都が直接実施しているものだけではなく、区市においても、その職員の方々が専門性を向上できるような配慮を求めてきたところでございます。

○小松委員 区市町村を支援しながらも、都が先頭に立って、職員の養成、教育、研修を行って、憲法を擁護する職員を育てることに力を尽くすことを求めて、次に進みます。
 生活保護問題の最後に、医療券について伺います。
 生活保護の医療扶助は、現物支給のために、病気になったとき福祉事務所に申請して、医療券の交付を受けて、指定医療機関にそれを提示して、治療を受けているわけです。このため、夜間ですとか、土日、祝日など、急病に対応できない。いつでも必要なときに治療が受けられるよう、健康保険証のような医療証の発行という強い要求にもかかわらず、厚生省は背を向けているわけです。
 全国の自治体の中には、数は少ないですが、緊急時や夜間に使える医療証を発行したり、生活保護の受給証で治療できるようにしているところもあるということですが、東京の中におきましては、例えば、キャンプや修学旅行などの学校行事の際、生活保護受給世帯以外のお子さんは保険証を持っていくが、生活保護受給者世帯のお子さんの場合どのようにしているかなども含めて、お答えいただきたいと思います。

○渡辺生活福祉部長 お尋ねの件でございますけれども、福祉事務所によりまして、お子様たちのキャンプや修学旅行の際に、期間を限定した、健康保険証と類似様式の医療扶助受給証明書を発行している点につきましては、ただいまご指摘のとおりでございます。そうすることによりまして、緊急時に対応できるようにするとともに、生活保護受給世帯のお子様たちに精神的な負担をかけないような工夫をしているところでございます
 なお、そのほか、それとは異なりますが、それぞれの地域の状況に応じまして、実質的に効力を有する保護証明書を発行し、受診に配慮しているところでございます。

○小松委員 最近、夜間や休日医療の体制が大変進んできたにもかかわらず、生保世帯のみ、夜間や休日などの緊急医療が受けられないという矛盾は、生活保護法の精神からいっても許しがたいことであるわけです。
 そこで、国に対して要望すべきであると思いますが、どうかということと、都としても何らかの医療証を発行する考えはないか、まとめてお願いいたします。

○渡辺生活福祉部長 夜間、休日等、福祉事務所閉庁時における受診の確保について、厚生省の見解では、あらかじめ地域の医師会等と協議し、保護決定通知書等により被保護者であることの証明をすれば、医療費の支払いをすることなく受診できるような措置を講じておくことが適当であるとされておりまして、実際、各福祉事務所では、このような方法により閉庁時の対応を図っております。
 夜間、休日等に限定した医療証の発行につきまして、厚生省の了承を得られるならば、保護廃止時に速やかにその医療証を回収できるような方法等を模索しつつ、今後の検討課題としてまいりたいと考えております。
 なお、医療証方式につきましては、被保護者はもとより区市からの要望が強いことから、これまでも厚生省に対し制度の改善を要望しております。しかし、厚生省は、医療扶助は、事前に医療の要否について判断をして支給するのが原則であるという観点から、医療証方式の導入は困難であると現時点ではいたしております。これはまた、保護の要否が歴月を単位として決定されるため、医療証では、保護廃止時の回収が徹底できないことなどを懸念しているものと推定されます。
 都といたしましては、この件に関して、厚生省に対し、引き続き区市と連携しつつ、粘り強く働きかけていきたいと考えております。

○小松委員 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に一つだけ。
 福祉のまちづくり条例ができて、都内の公共施設におけるバリアフリー化が進む中で、障害者、特にハード施策を求める身体障害者の行動範囲が広がりつつあります。折しも国会ではバリアフリー法案が審議中であり、我が党も修正案を提出しているところですが、時間もありませんので、この中で、駅エレベーターについてのみ一点伺いたいと思います。
 福祉のまちづくりにかかわる鉄道駅エレベーター事業について、これまでの実績を伺うと同時に――まとめて一点にさせていただきます。このエレベーターの設置を肢体障害者の方々がどんなに待ち望んでいるか。具体的にいえば、私の地元東村山市内には、西武線の九駅があるわけですが、現時点でエレベーター設置は一駅も今のところなく、大変おくれております。市内には障害者施設や高齢者施設など福祉施設も多く、このことから、かつて久米川駅では、障害者と市民の運動で、福祉駅化、バリアフリーの駅がつくられたわけです。
 ところが、隣の東村山駅では、乗りかえ駅であるにもかかわらず、いまだエスカレーターもエレベーターもない。早急な整備が望まれます。しかし、東村山駅は、形状によって五基のエレベーターが必要であり、西武も市もなかなか腰が上がらなかったわけですが、今ようやく市が年次計画を立て、関係機関との調整に入っております。大変高価といわれるエレベーター、西武と国で三分の一で、都が三千五百万円を限度ということで、市の負担は大変なものになります。
 そこで、こうした東村山のように四、五台ものエレベーターが必要な駅、行政区内に未設置駅が数多くある市町村に対して、西武など鉄道事業者に要請するのはもちろんですが、また、不交付団体は別としまして、都として特別な厚い財政措置ができないものかどうか。もちろん、国や事業者に対して要望すべきということも申し上げておきます。
 今、交通バリアフリー化法案が国会に上程されているときだけに、国に対しては、大至急要望すると同時に、都みずからも、区市町村の年次計画にこたえて、複数のエレベーター整備に見合うよう助成を強く求めて、お答えしていただくだけで結構です。私の質問を終わります。

○小山地域福祉推進部長 まず、福祉のまちづくりにかかわる鉄道駅エレベーター事業の実績についてお答え申し上げます。
 この鉄道駅エレベーター等整備事業は、高齢者や障害者を含むすべての都民が円滑に社会参加できる環境を創出するため、東京都、区市町村、鉄道事業者が共同して、都内の主要な鉄道駅に重点的にエレベーターを整備することにより、鉄道事業者によるエレベーター等の整備を誘導し、普及させることを目的にするとともに、地域における福祉のまちづくりの推進を図ることを目的といたしまして、平成八年度に事業開始いたしました。
 これまでの実績を、毎年度の整備した駅の数並びに東京都の補助額で申し上げますと、平成八年度は二駅、補助額四千七百七十四万四千円、九年度九駅、一億六千六十八万七千円、十年度六駅、一億一千五百九十万円、十一年度七駅、これは決算見込み額でございますが、一億七百七十三万円となっております。
 次に、二点目の、特別な事情があるところに特別措置はとれないかというご質問についてでございますが、本事業は、広く鉄道駅のバリアフリー化を進めるべきとの考え方で実施しておりまして、一事業一鉄道駅について、東京都の補助額の上限を、理事ご指摘のとおり三千五百万円としておりますが、これまでの実績を見ますと、現行の基準において複数のエレベーター整備に対応できております。
 また、先ほども申し上げましたが、この事業は、鉄道事業者がエレベーター等の移動の設備に主体的に取り組んでいただけるような機運を盛り上げることも目的としておりますので、今後とも、区市町村並びに鉄道事業者の積極的な取り組みを大切にしてまいりたいと思います。
 また、国への要望でございますが、これまでも、福祉のまちづくりにかかわる財政措置等につきましては、国に要望してまいりました。引き続き今後も要望してまいりたいと存じます。

○大山委員 私は、知的障害者の更生施設について伺いたいと思います。
 まず最初に教えていただきたいのは、決算年度であります九八年度の知的障害者更生施設の施設数、利用者数を、都内と都外別でお願いします。

○長野障害福祉部長 平成十年度末現在の知的障害者更生施設のまず施設数でございますが、七十一カ所でございます。利用者数の定員は五千三百五十二人となってございます。そのうち都外施設につきましては、施設数が四十一カ所、利用者定員が三千二百四十五人ということで、利用者定員で申しますと、おおむね六割程度が都外施設の利用者ということになろうかと存じます。

○大山委員 六割以上の利用者が都外でお世話になっているということなわけですね。都外の施設に入所して、もちろん生き生きと生活していらっしゃるという方も多く知っております。しかし、東京から遠く離れた施設に入所するということは、親御さんにとっても、お子さんにとってもせつないことだというのは明らかなんですね。東京都は、都外施設の新設は九七年を最後に停止されたというふうに聞いておりますけれども、どうして停止したのでしょうか。

○長野障害福祉部長 都外施設建設につきましての方針に対するお尋ねでございますが、平成八年五月に、東京都障害者施策推進協議会というところから提言をいただきまして、この中では、都外施設には、恵まれた自然環境を生かした生活が可能であるという利点もあるが、対象の進路などの問題解決に努める必要があるといたしまして、今後は、住みなれた地域で生活し続けたいとする本人や家族の希望選択を最大限尊重するという観点から、第一義的には都内での設置を促進していかなければならない、こうした提言がなされているわけでございます。
 東京都といたしましては、この提言の趣旨を踏まえまして、入所施設の整備に当たりましては、都内設置を原則とすることとしておりまして、平成十年度以降は、都外における入所施設の整備は行っておりません。

○大山委員 ところで、知的障害者の更生施設の待機者数なんですけれども、九八年度末とその後の傾向を教えてください。

○長野障害福祉部長 平成十年度末現在の知的障害者更生施設への入所待機者数でございますが、千三十六人となっておりまして、その後も増加の傾向を示しております。

○大山委員 親御さんの高齢化などで、ますます入所施設への希望というのは多くなっているわけで、入所施設が足りないという事態なわけですね。ですから、現在ある都外施設には頼らざるを得ない状況なわけです。
 先ほど申しましたように、都外施設は、法人の指導監督権は地元の県にあって、入所の措置をしているのは都内の区市町村の福祉事務所、東京都は、補助金を出していることから、調査権があるというわけですから、悪くいえば責任のたらい回しになりやすいという状況にあるわけです。それだけに、都外施設の利用者サービスの水準については、とりわけ注意深い対応が必要だというふうに思っています。
 ところで、都外施設で、利用者への体罰を初めとして、権利侵害などの疑いがある場合、東京都はどう対応するんでしょうか。

○長野障害福祉部長 ただいま先生の方からもお話がございましたが、都外に所在している知的障害者の入所施設につきましては、東京都はこれまでも、指導監督の権限のある所在県との連携を図りつつ、必要に応じて調査を行っておりまして、そうしたことで施設の適正な運営に努めておるところでございます。

○大山委員 地元の県と連携をとりつつということですけれども、そこで具体的に、東京都が委託している施設であります、青森県にある、平成五年四月開所ということで、定員が八十人、そのうち七十二人が東京都からの委託というか、措置されている利用者であります、知的障害者更生施設を題材にして質問していきたいというふうに思っています。
 この施設は、何度か地元の町議会でも問題になっています。九七年三月の町議会では、どういう問題が議論になりましたか。

○長野障害福祉部長 三月の町議会でどういう問題がというお尋ねですが、私ども現時点で、地元町議会の議事録を入手しておりませんので、内容の詳細につきましては知り得る状況にございません。しかし、東京都といたしましては、平成九年の十月に、お話のある施設に対しましての特別調査というものを実施しております。

○大山委員 議事録は入手していない、しかし特別監査はしているんだということですけれども、このときは、町議会で問題になっただけじゃないんですね。この都議会の予算特別委員会の中で、公明党の藤井議員ですけれども、こういう質問をしているんですね。「この更生施設の問題については、過日、地元の議会でも表面化いたしまして、会計処理上、数々の不適切かつ不明朗な処理が行われていることが指摘されております。例えば、無断で保護者の名前や印鑑を使って寄附申込書を偽造して会計処理のつじつまを合わせたり、あるいは入院介護共済会の積立金を、その管理者には無断で土地購入の担保に入れた事実も判明しております。」さらに、パン工場での売上収入の操作だとか、強制的に働かされているということも挙げつつ、「以上のほかにも、問題はいろいろ指摘されております」というふうに、この都議会の中で、予算特別委員会の中でも議論になり、そして、この問題の責任を認めて、この施設長も理事も総退陣しているんですね。そういう問題になったところの議事録も取り寄せない。そして現地の調査もしていない。監査はしたということですけれども、本当に無責任だというふうに思います。
 しかも、問題は終わっていません。昨年三月の町議会でも取り上げられているんですけれども、このときはどういうことが問題になりましたか。

○長野障害福祉部長 昨年三月の町議会での議論でございますが、この点につきましても、平成九年のケースと同様に、私ども手元に議事録がございませんので、内容の詳細を知り得る状況にはございませんが、地元の新聞記事等によりますと、平成七年に知的障害者入所施設の関連施設で起きた事故のことで質問があったとされております。

○大山委員 この議会の中で、東京都にもその報告書が行っているということになっているんですけれども、どういう内容の報告になっていますか。

○長野障害福祉部長 調査報告でございますが、これは昨年の三月十五日付で、この施設から結果の報告がなされたものでございます。この中身は、平成七年と平成六年の事故につきまして調査をした結果、暴力行為が見受けられませんでしたという内容の報告となっております。

○大山委員 ここにその三月の議事録があるんですけれども、議員さんがこういっているんですね。夜にいたしましても眠れない、寝つけない。そこで、この施設で働く職員は、眠れない人に対してはこうするんだと、暴力行為が行われていたと。そして、ベーカリーのパンをつくる作業においてちょっとストレスがたまったと。そのとき、私は――というのは利用者ですね――帰ると、こういう発言をされたそうです。そのとき、ある職員がとっさにそれを制止しようとした段階で投げ飛ばした。そこでその利用者が当然机にここを、というのは肩です、鎖骨ですけれども、当然けがをしたわけです。そのとき、本来であれば救急車、あるいは病院に行くべきものを、あえて寮に帰した。そしてその時点で、あなたが一人で転んだことにしろよ、あなたが一人で転んだことにしろと。そして、寮に帰ってから改めて、骨が折れているみたいだから病院に行かなくてはならないということで入院したということが議事録に書いてあるわけです。
 園から出された報告書では、暴力行為はなかったということですけれども、報告書の中身と議会での論議というものが食い違っているわけですね。この園から出された報告書の調査の仕方ですけれども、どのように調査をしたのかというのは把握していらっしゃいますか。

○長野障害福祉部長 調査の方法でございますが、私ども、青森県の話を聞いておりまして、この話によりますと、事故に直接かかわったとされます職員からの聞き取り、それから、過去の記録等に基づいてこの調査を実施したというふうに聞いております。

○大山委員 直接かかわった職員と、そして記録を見たということですけれども、私たち、現地に行って調査をしてきました。それで、副園長先生がいらしたわけですけれども、その副園長先生は、その園にずっといた方です。聞きますと、どういうふうに調査をしたのか、前の園長がやったことだからわからないというんですね。これだけの重大事故が起きていて、前の園長のことだから、個人的に調査をしたんだから、わからない。それから、園として聞き取りの記録はあるんですかといったら、それも園としてはありませんというんですね。事故というか、けがをした本人から調査をしたのか、聞いたのかといったら、それはないということなんですね。本人というのは、愛の手帳四度ですから、知的には軽度ですし、しゃべれるわけですね。事態も認識できるわけです。そういう非常にあいまいな調査での報告だということを把握してきました。
 さらに、ことし四月に解雇された元職員から知事あてに手紙が来ているはずですけれども、概略どういう内容で、福祉局としてはどういう対応をされたんですか。

○長野障害福祉部長 この投書はかなりの長文でございまして、その内容は、不適切な施設運営がなされているということなどを主たる内容としたものでございます。この投書につきまして、私どもとしましては、施設からの調査報告や、措置をしております区市町村に確認をするというようなことによりまして、東京都として改めてこの問題について調査をする必要はないという考えを、所管課から投書者本人に回答をしたところでございます。

○大山委員 これだけ町議会でも問題になっている、それから都議会でも問題になっている、それで総辞職をしたようなところで、元職員からそういう事実を具体的に書いた手紙が来たにもかかわらず、調査する必要がないという感覚自体、非常に問題だと思っています。どなたが対応したかわかりませんけれども、手紙を書いたご本人にお話を伺ったら、人手不足だから対応できませんというような、非常に冷たいといいますか、そこできちんと対応していれば、私たち議員のところまで来るというようなことはないと思うんです。それで、どうして東京都に来るのかということだと思うんですよね。
 私たち、町に行きましたら、施設の道案内の看板が出ているわけですよ。そこには必ず、東京都委託施設何とか園というふうに書いてあるんですね。それが一つのお墨つきといいますか、そういうものになっているわけですよ。副園長先生の名刺にもわざわざ、東京都委託施設何とか園副園長という肩書になっているんですね。しかも、議会で町長さんがどういうふうな答弁をしているかということですけれども、「東京都の委託施設であります。東京都がほぼ運営費の大半を出している」ですから、「国、県、それから東京都ですか、ここが監督管理している」んですと、町長さんが議会で答えているわけですね。しかも、東京都の監査のことについても、町長さんの答弁の中では、昨年、東京都の監査があったそうですけれども、東京都では特に問題なしという監査結果を出したということでありますというふうに、まさに、東京都のお墨つきがついているんですよということが、町の議会の中でも話される。だからこそ、この職場の人、解雇された方が、東京都にこれを訴えれば何とか解決してくれるだろう、一緒に考えてくれるだろうという思いを込めて、長い長い手紙を書いたというふうに思います。
 だからこそ、東京都への期待があるわけですし、役割があるわけですから、この施設の利用者サービス、権利擁護については、東京都の責任を持った対応が必要だというふうに思っています。
 この施設が、いろいろ問題があったわけですけれども、その後どうするのか。事故だとか、けがだとかというのはもちろんありますよ。しかし、それを教訓にしてどうするのかということ。再発防止策というのがやはり重要だというふうに思っています。暴力行為があったかどうかというのも、もちろん重大なことですけれども、職員全体で再発防止策がとられているのかということも非常に疑問なんですね。事があれば総辞職したり、園長さんも、七年間で三人目ですから、ころころかわっているという状況になっているんです。
 このSさん、さっきの、ベーカリーで鎖骨を折ったという方がその後どうなったのかということなんですけれども、その鎖骨を折った次の年に、また大変なことになっているんですね。というのは、腹痛を訴えていたSさんが、町の診療所を受診して、大したことないというふうに帰され、しかし、その後も食欲もなくて、腹痛を訴えていました。そんなことが重なって、ある日、部屋の中を、痛くて痛くて転げ回っていた。それで、これは大変だといって病院に連れていったら、腸捻転と診断されて、もう手おくれで治らない、助からないというふうにまでお医者さんにいわれたんですけれども、幸い命は取りとめました。しかし、人工肛門になってしまったんですね。私、この腸捻転と人工肛門の関係がよくわからなかったんですけれども、知り合いのお医者さんに聞いたら、人工肛門というのは、がんとかで肛門まで取っちゃった場合につけるものだから、かなり病状が進行していたという状況なんじゃないですかとびっくりしておられたんですね。
 しかも、重大なことは、仮病じゃないかといって、職員になぐられた、おなかをけられたというふうに本人が話しているんですね。そういう状況が起こっているということが大変重大だというふうに思っています。
 もう一つ確認しておきたいんですけれども、開設以来七年しかたっていないんですけれども、この施設の中で何人利用者が亡くなっているでしょう。その年月日等も含めて教えてください。

○長野障害福祉部長 開設以来の亡くなった方の数でございます。年月日ということでございましたが、ちょっと月日の方まではわかりません。平成八年度に二名、平成十一年度に一名で、計三名の方が亡くなられておりますが、いずれも病気により病院で亡くなられていると聞いております。

○大山委員 今、八年度に二名、十一年度に一名というお答えでしたけれども、それは、一緒の施設であります生活寮の亡くなられた方を入れていないと思うんですね。八年に七月に五十七歳の女性、九月に三十五歳の女性、十二月に五十三歳の女性、十一年の十二月に三十二歳の男性、そして十二年の二月十七日に男性ということで、わずか七年間の間に五人亡くなっているわけですよ。
 例えば、特別養護老人ホームでインフルエンザなんかがはやったら亡くなる方が多いとか、重度の心身障害者、障害児の施設なんかだったら、亡くなる方も多いのかなと思うんですけれども、知的障害者の更生施設ですからね。しかも、どういうときに病院にかつぎ込まれているかというのを見てみますと、例えば、具合が悪くて自室で休んでいて、当然見なきゃいけないんだけれども、だれも見に行かなくて、遅番の人が出勤してきたら、病状が変わっていたとか、それから、生活寮で玄関で倒れていた。寮母さんが朝夕しかいらっしゃいませんから、寮母さんのいない時間帯に倒れていたというケースなんですね。こういう施設の利用者サービスについて、万全のものが必要だというふうに思いますけれども、どうですか。

○長野障害福祉部長 ただいまのお尋ねは、こうした入所施設の運営に当たりまして万全の対策を講ずるべきだというお尋ねと受け取らせていただきますが、東京都はこれまでも、入所者の権利擁護等、施設運営の適正化に努めてきたところでございます。さらに、本年度は、都外都民施設を含めた障害者の全入所施設に、いわゆる施設オンブズマンという第三者の評価組織を設置いたしまして、サービス評価事業の本格実施をいたします。また、処遇困難な利用者に対する援助技術の研修の充実、あるいは各施設にサービス改善向上委員会の設置、それから施設役員行動規範の策定、さらに、自己評価と施設オンブズマンによる第三者評価結果の各施設ごとの公表といったことなどを実施いたします。
 これらとともに、今後とも、措置権者でございます区市町村とも十分連携を図りつつ、入所者の権利擁護に万全を期してまいりたいと考えております。

○大山委員 オンブズマンの制度を新しくつくったということは、もちろん一歩前進だというふうに思っていますし、研修も、それから行動規範なども重要だというふうに思っています。しかし、これをやったから解決するという問題じゃなくて、これもこれもこれもと、何重にもいろいろな手だてがとれて、ようやく安心した施設になれるというふうに思うんですね。
 例えば、オンブズマンなんかのケースですと、モデル実施の中で、自分の電話番号を教えて、いつでも連絡してください、相談してくださいというふうに教えていらっしゃるオンブズマンの方がいらっしゃるというお話を聞いたりしておりますので、いい経験などをぜひ広げていただきたいということと、例えば、東京都からオンブズマンの方に、ちょっとここが気になるので、意識して見てくださいとかというお願いなども含めてやっていっていただきたいというふうに思っています。二重、三重の対応ということでは、東京都みずからの指導、調査も含めてやっていただきたいというふうに思っています。
 最後になりますけれども、私、この人工肛門になった方のお母さんのお話も伺ったんです。Sさんという息子さんは、軽度だし、何でも話すというんですよね。もちろんパニックになるときもあるけれども、ぐっと抱え込んで、何って、話を聞けば、ちゃんと話してくれるんだというふうにいっているんですね。それで、お母さんとしては、本当に痛い痛いといっているのに、病院にも連れていってもらえないで、人工肛門になっちゃった、本当に悔しいですって、今でも涙ぐんでしまう状況なんですね。とにかく、ただ謝ってほしいんです、本当はもとの体に戻してほしいんだけど、と話してくれるんですけれども、そういいながらも、でもねっていいながら、福祉事務所にも、その施設にもお世話になっているし、引き取ってくれというふうにいわれたら、高齢だし、引き取るわけにもいかないから、本当にもういえないんですというふうにおっしゃるんですね。そういう気持ちというのは、都民の皆さんの中には素朴な気持ちであるんですよ。
 例えば、保護者から訴えがあった場合、入所している方が不利益にならないような細心の注意が必要だというふうに思っているんです。親御さんの中には、自分が苦情だとかをいったら、ストレートに園に行っちゃうというふうに思っていらっしゃる方もいるわけですけれども、その辺の細心の注意というのは、どういうふうにしていらっしゃるんでしょう。

○長野障害福祉部長 東京都は従来から、施設に対しまして、利用者の権利擁護に配慮した運営指導をしてきたところでございます。
 お話のように、訴えを起こすことによっていづらくなるというようなご趣旨かと思いますが、そういうことは起こらないように、今後とも施設の指導に当たってまいりたいと考えております。

○大山委員 ぜひ、安心して相談ができるようなところなんだということを示していっていただきたいと思っています。
 きょうは、青森にあるこの委託施設を題材にして質問したわけですけれども、ここだけの問題ではないというのが、いろいろなところで聞くものなんです。入所している方というのは、やはり施設がベースですから、そこでより人生を充実して、豊かに生きられるというのをきちんと保障するのが、やはり施設の責任でもあるし、東京都の責任でもあるというふうに思っています。
 ですから、東京都はいろんな手だてをとりながら、積極的に処遇について、権利擁護について責任を果たしていっていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

○山本委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 福祉局関係の決算に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山本委員長 異議なしと認め、福祉局関係の決算に対する質疑は終了いたしました。 以上で福祉局関係を終わります。
 この際、議事の都合により、おおむね十分程度休憩をいたします。
   午後三時二十六分休憩

   午後三時四十分開議

○山本委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより労働経済局関係に入ります。
 初めに、先般の人事異動に伴い幹部職員に交代がありましたので、大関局長から紹介があります。

○大関労働経済局長 さきの委員会におきまして所用のため欠席いたしました幹部職員を、改めて紹介させていただきます。
 同和対策担当部長の木内勝三君でございます。
 どうぞよろしくお願いします。
 それから、四月一日付の人事異動で当局幹部職員に交代がありましたので、ご紹介させていただきます。
 参事で農林漁業技術改善担当となりました和田敏明君でございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、本年四月から、ご案内のとおり、職業安定行政の国一元化によりまして、職業安定部、雇用保険部の二部が廃止となりまして、この席にはおらないことを報告させていただきます。
 かわりにと申しますか、都におきましては、就業対策を担当します就業推進課を労政部の中に新しく設置いたしました。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
   〔理事者あいさつ〕

○山本委員長 紹介は終わりました。

○山本委員長 労働経済局関係の決算については既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、皆さんのお手元に配布してございます。
 資料について理事者の説明を求めます。

○鎌形総務部長 去る二月十四日の当委員会でご要求がございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の資料の表紙をめくっていただきまして、目次をお開きいただきたいと存じます。要求のございました資料は、ここに掲げてございますように、全部で十二項目でございます。順次ご説明させていただきます。
 それでは、一ページをお開きいただきたいと存じます。一ページから二ページまでは、商工指導所及び商工会議所等における相談、指導の実績でございまして、これを平成六年度から平成十年度までの五カ年について、三つの表にお示ししてございます。
 1の表は、商工指導所による相談、指導で、この事業は、日々発生する販売、取引などの経営管理の相談や、法律、税務、開業などの中小企業が抱える経営課題につきまして、職員及び外部の相談員によりまして指導助言を行っているものでございます。平成十年度の実績は一万八百三十六件でございます。
 2の表は、商工指導所による診断指導で、この事業は、産業構造の変化への対応や、経営の合理化を図ろうとする中小企業や商店街等に対しまして、診断班を構成し、現場に赴いて、経営改善の方策や経営目標を提案するものでございます。平成十年度の実績は六百二十六件であります。
 二ページをお開きいただきたいと存じます。3の表は、商工会、商工会議所の経営指導員による相談、指導でございまして、この事業は、小規模企業の実情に詳しく、国や都及び市町村の施策を熟知した経営指導員が、窓口あるいは巡回訪問によりまして、経営、金融、税務、労務等の相談、指導を行っているものでございます。平成十年度の実績は十六万一千九百七十二件でございます。
 次に、三ページをごらんいただきたいと存じます。2の平成十年度における中小企業金融安定化特別保証制度の利用実績でございます。
 本制度は、平成十年十月から実施されたもので、平成十年十月から十一年三月までの六カ月間の実績を月ごとに記載してございます。表中の認定件数は、区市町村において発行した認定書の件数でございます。表の一番下に記載したとおり、平成十年度の累計は、保証申込件数十七万五百二件、申込金額は三兆九千四百八十三億八千三百万円でございまして、このうち保証承諾を行いましたものは、件数で十五万七千三百八十七件、金額では三兆四千五百三十一億三千万円でございます。
 次に、四ページをごらんいただきたいと存じます。四ページから五ページにかけましては、各種経済指標から見る都内の経済動向でございます。
 まず1の表は、一九八九年、平成元年ですが、それから一九九八年、平成十年までの十カ年の実質経済成長率の推移を記載したものでございます。表中の東京の欄をごらんいただきますと、九八年は二年連続のマイナスで一・九%となっております。
 2から4の表は、いずれも、一九九〇年、平成二年から一九九九年、平成十一年までの十カ年の推移を記載してございます。
 まず、2の表は、東京における設備投資額対前年増加率の推移でございまして、表中の全産業の欄をごらんいただきますと、一九九九年は、二年連続のマイナスで四・四%となっております。
 3の表は、有効求人倍率、完全失業率、完全失業者の推移でございます。表中の完全失業率及び完全失業者の南関東の欄をごらんいただきますと、一九九〇年には、完全失業率が二・二%、失業者が三十六万人でございましたが、九九年には、五・一%、九十四万人と大幅に増加いたしております。
 4の表は、負債額一千万円以上の都内企業倒産の推移でございます。一九九〇年には、倒産件数一千四百一件、負債額一兆五十八億円でございましたが、九九年には、二千七百四十七件、八兆三千八十六億円となっております。
 次の五ページは、(1)で、都内企業倒産の推移を業種別に、(2)では、平成十年、十一年の二カ年分を月別に示したものでございます。
 次に、六ページをごらんいただきたいと存じます。4の労働経済局所管分の主な監理団体等の経営状況でございます。
 当局所管の主な監理団体は、1の財団法人東京都農林水産振興財団から、8の株式会社タイム二十四までの八団体でございます。この表は、これらの団体の平成六年度から平成十年度までの五カ年の経営状況をお示ししたもので、十年度に当期利益が黒字となっているのは、農林水産振興財団外二団体でございます。
 次に、七ページをごらんいただきたいと存じます。5の多摩地域における勤労福祉会館の利用率でございます。平成八年度から十年度までの三カ年の、国分寺、五日市、羽村、立川、府中、昭島の勤労福祉会館の利用実績をお示ししてございます。
 この三カ年の平均利用率は、表中の一番右側の欄に記載してございますように、各年度とも、六館平均で四一%でございます。
 次に、八ページをごらんいただきたいと存じます。6の東京都地方労働委員会労働者委員の選任状況でございます。
 委員の任期は、一期二年でございまして、平成三年の第三十期から平成十一年の第三十四期までの十カ年を記載してございます。労働者委員十三名のうち、第三十期から三十二期までの六年間は、連合東京系からご推薦をいただきました委員十一名、東京地評系からご推薦をいただいた委員二名でございましたが、第三十三期から、連合東京系からご推薦をいただいた委員が十名、東京地評系からご推薦をいただいた委員三名となっております。
 次に、九ページをおあけいただきたいと思います。7の都内農林水産業の総生産の推移でございます。平成元年から十年までの十カ年の都内農林水産業の生産量、生産額を分野別に取りまとめたものでございます。
 平成元年と平成十年の生産額の増減比を見てみますと、表の一番下に記載してございますように、農業は何とか持ちこたえているものの、畜産業、林業、水産業は大きく減少いたしております。
 次に、一〇ページをごらんいただきたいと思います。8の野菜供給確保対策事業における価格差補てんの実績でございます。平成元年から十年までの十カ年分をお示ししてございます。
 この制度は、野菜生産出荷安定法に基づきまして、都民の消費生活や野菜生産者の経営の安定を図るため、生産や消費の面で重要な野菜を対象といたしまして、市場における価格が保証基準額を下回った場合に価格差の補てんを行うものでございます。このための資金は、国、都、生産者が、それぞれの負担割合に応じて造成をいたしておるものでございます。
 次に、一一ページをごらんいただきたいと思います。9の獣害対策事業の実績でございます。平成八年度から十年度までの三カ年分を、項目別、事業別にお示ししてございます。
 上から三項目目の防止施設の整備といたしましては、電気さく、防止ネットや接近警戒システムなどの整備を行うとともに、シカの被害跡地につきましては、造林等を実施しております。また、一番下の項目になりますが、市町村が行う有害鳥獣駆除への補助も実施しているところでございます。
 次に、一二ページをごらんいただきたいと存じます。一二ページから一三ページにかけましては、10の間伐対策、間伐作業道の実績でございます。平成元年度から十年度までの十カ年について三つの表でお示ししてございます。
 1の表は、公共事業としての間伐補助事業を、国庫補助分と都単独補助分に区分して示してございます。
 2の表は、間伐材の搬出補助の実績を示したものでございます。この事業は、都の単独事業でございまして、補助先は森林組合となっております。
 次に、一三ページに入りまして、一三ページの表は、多摩の六市町村別に、間伐の用に供される林道、作業道の実績を示したものでございます。平成十年度は合計で三千六百四十六メートル、事業費は四億四千八百十六万円となっております。
 次に、一四ページをごらんいただきたいと存じます。11の苗木の生産供給対策事業の実績でございますが、平成元年度から十年度までの十カ年分をお示ししてございます。
 この事業は、市街化区域内の優良な農地の保全を図るとともに、都の公共施設などの緑化を推進するため、苗木の安定的な生産、供給を行うものでございます。
 平成十年度の購入本数は四十三万一千七百三十八本、育成本数は百七十一万九千九百十五本、配布本数は五十三万七千二百六十本となっております。事業費は、一番下の欄にございますように、平成十年度で七億一千六百四十万円でございます。
 次に、一五ページをお開きいただきたいと存じます。12は、労働経済局の主な事業廃止の一覧でございます。表に記載してございますように、平成九年度を事業の最終年度とし、平成十年度から事業廃止したものは、高齢者就業促進協議会から、野菜の端境期対策までの七事業でございます。
 大変雑駁な説明でございますが、以上で資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山本委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めて、これより質疑を行います。
 発言を願います。

○くぼた委員 私は、労働行政について何点か伺いたいと存じます。
 深刻な不況の中で、東京の有効求人倍率も、昨年度〇・四八と、前年に比べ年々下がってくる。就職が厳しい状況、さらに、リストラや企業倒産も相次ぐ中で、完全失業率も、四・九%と依然として高い状況で推移しているわけです。その間の推移は、今ご説明のあった資料の中でも、四ページ、五ページにわたって、いろいろな指標からわかるわけです。
 そういう中で、とりわけ東京は資本金の大きい企業が多く存在をしている。大企業のリストラが、そういった意味では大きく影響して、全国に比べて、大量離職にかかわる届け出件数も、一件当たり人数が多いというのが特徴になっていると思うんですね。それから、倒産に占める東京の割合というのは、全国の中でも二割を占める。こういう状況からして、東京都独自のそういった労働行政が求められているというふうに思うんです。
 私たちは、都として、労働時間の短縮とか、大企業のリストラ規制などを含めた雇用の確保を国に求めるとともに、都独自の対策の充実も、これまで繰り返し求めてきました。
 そんな中で、この間、東京都が、都民の雇用を守り、促進を図るために、どういうふうなことを施策の展開として行ってきたか、どれだけ都民の要望にこたえたかということが問われてきたと思うんです。
 この九八年度、平成十年度では、前年に出された財政健全化計画に基づいて、その中の例示として、技術専門校の統廃合ということが出されたわけです。統合することになる新お茶の水校の改築予算が計上された、その一方で、統廃合計画の前倒しで、中野、牛込、新宿、お茶の水の四校を統廃合して、臨海部に移すという計画が検討された年でもあるわけです。
 この間の、そういった意味でまず職業訓練の問題について伺うんですが、技術専門校の求職者を対象にした職業能力開発訓練の定数規模と応募倍率を、九五年度、九七年度、九八年度について教えていただきたいと思います。

○梅津職業能力開発部長 都立技術専門校の公共訓練全体の年間の定員と応募倍率について、ご質問のございました年度についてお答えさせていただきます。
 初めに、平成七年度は、年間総定員二万五千七十名でございましたが、そのうち、ご質問の求職者向けの能力開発訓練は九千四百九十五名、応募倍率が二・〇一倍。九年度につきましては、年間総定員二万五千四百六十八名のうち求職者向けの訓練が八千五百五十八名、応募倍率が二・〇九倍。十年度は、年間総定員二万六千四百四十三名のうち求職者向けの訓練は七千八百八十三名、応募倍率が二・五三倍でございます。

○くぼた委員 今お答えがありましたように、技術専門校全体の定数規模は変わらないんだということですけれども、能力開発訓練、求職者の訓練はこの間減ってきた。とりわけ、九七年度、九八年度は大幅に減らして、この二年間だけでも千五百名もの定員減になっているわけですね。その一方で応募倍率はどうかというと、全体としては二倍から二・五倍へということで、競争が激しくなっているという状況がわかるわけです。応募倍率も高まっている、都民の、求職に向けて能力をつけたいという需要が高まっているということがこの数字からもわかるわけですけれども、そういう中で、どうして能力開発訓練の定数規模を減らしてきたのか、その考え方を教えてください。

○梅津職業能力開発部長 ただいまご質問がございましたように、都立技術専門校の定員につきましては、求職者に向けた訓練と在職者の能力向上訓練、全体としては規模のアップを図ってきたところですが、予算上の求職者の訓練については減少をしてきております。
 その理由ですが、主な理由、二つございまして、夜の訓練、定時制訓練について見直しを行ってきたこと、それから、事務系の科目について見直しを行ってきたことが、主な大きな二つの理由でございます。
 そのうち定時制訓練につきましては、受講者の実態に合わせて、すなわち求職者と在職者が混在するということで、いろいろ事業効果等もございますので、求職者を対象とした訓練にふさわしい科目を除き、在職者向けの能力向上訓練の方に統合し、能力向上訓練の充実を図ったことでございます。
 二番目に、事務系科目につきましては、将来的な人材需要の過不足の状況を検討した上で、事務系科目について見直しを行い、一部の科目については、ニーズの見込める科目に振りかえたものでございます。
 なお、蛇足ではございますが、平成十年度以降は、求職者向け訓練の規模については、予算上、同規模を維持するとともに、いろいろ予算上の工夫、増枠等を行いまして、実質的に増加をさせてまいりました。

○くぼた委員 全体としての規模は守ってきたということですけれども、求職者が受ける能力開発訓練は減っているということですね。能力開発訓練と、在職者が受ける向上訓練、これは内容が違うわけですから、求職者が受ける枠が減っている、応募が高まっている中で減らしたというのはやっぱり問題だというふうに思います。
 それから、科目を一部減らした分、振りかえてきたということですけれども、需要が増している中で、科目がニーズに合わないということになれば、なくすのじゃなくて、新しいものに変えるというような工夫をしながら、規模自体を縮小するんじゃなくて、都民の需要にこたえていくというのが本来の役割だと私は思うんです。
 最後に、十年度以降は減っていないというご答弁でしたけれども、能力開発訓練そのものは減っていないんだということだと思うんですが、実際によく見ると、三カ月の短期コースを編入して人数に組み入れているという部分もあるわけで、訓練規模からすれば縮小しているということだと思うんですね。このように、都民の深刻な雇用情勢を反映して、能力開発の需要が高まっている中で、それにこたえてこなかった、減らしてきたというのは非常に大きな問題だというふうに私は思います。
 しかも、その翌年には、都民や新宿区議会などから反対の意見があったにもかかわらず、新宿、牛込、お茶の水、三校を統合して、利便性のよくない有明の東京ファッションタウンに統合を強行してしまったわけです。これによって、訓練規模では縮小した上に、今までの家賃のかからない自前の施設をなくして、ファッションタウンのテナントとなって、賃料だけでも年間約一億九千万円、これまでより余計に負担するということをやったわけですね。一方では、こういった都民からすれば理解できないような、ある意味ではむだ遣いをやっているというわけです。
 こういった姿勢を改めて、働く人たちがみずから技能を習得し、能力を開発し向上させる、職業安定や地位の向上に結びつけていくという公共職業訓練そのものの目的からして、現時点でいえば、少なくとも中野校の廃止を撤回する、定時制校についても、これ以上の削減をすべきではない、むしろ、都民の需要や雇用をめぐる状況にかんがみて、さらに充実すべきだろうというふうに意見を述べておきます。
 とりわけ、職業能力開発計画の改定に向かっての時期ですから、そういう中で、ぜひ職業訓練校を充実させる方向で検討するべきだということを申し添えておきたいと思います。
 その次に、労政事務所の問題について伺いたいと思います。
 この年度は、労政事務所の統廃合が出されて、渋谷の労政事務所が、労政協議会や労働組合などから反対があったにもかかわらず、翌年から廃止をされたわけです。労政事務所の業務の中でも重要な柱である労働相談は、この間の情勢を考えれば、当然ふえていくだろうというふうに思えるんですが、この間の労働相談の件数、その主な内容、あっせん件数を教えていただきたいと思います。

○坂本労政部長 労政事務所で受理しております労働相談件数は年々増加傾向にございまして、平成五年度の約四万二千件が、平成十年度には約五万五千件となっております。
 また、あっせんにつきましても増加傾向にございまして、平成十年度は約一千五百件でございます。
 平成十年度の労働相談の特徴といたしましては、厳しい雇用環境を反映いたしまして、解雇、賃金不払いの相談が多く、全体の四分の一を占めております。
 また、男女機会均等法や労働基準法の改正に伴いまして、使用者から、就業規則あるいは労働契約についての問い合わせが目立っております。

○くぼた委員 今お答えがありましたように、この表を見ますと、労働相談件数というのは微増だったわけですけれども、九七年度は前年度に比べて約四千件、九八年度には前年度に比べて六千五百件と、急激にふえているわけです。で、九八年度には五万五千件と、五万件の大台に乗ったわけです。そういう中で、労政事務所を統廃合する、しかも職員も実質削減したということで、やはり体制の後退だといわれても仕方がないというふうに私思うんですね。
 いろいろ関係者のお話を伺ったんですが、労働相談、労使が感情的にこじれている場合でも、ベテランの相談員だと、労使双方の間に入って、説得をしてあっせんするということが多いということでありました。だから、そういった意味では、規模を縮小したということは非常に問題があるのじゃないかというふうに思いますし、今後に向けては、やはり労働者の立場に立って、丁重に相談に応じられるよう、相談体制を充実させていくべきだというふうにいっておきたいと思います。
 同時に、相談内容では、今お話がありましたように、解雇の問題など多いということです。しかし、いろいろお話を伺っていると、例えば解雇予告手当を出さないとか、経営が大変だから残業代は未払いでも構わないといわれたなど、いってみれば雇用関係の初歩ともいえる内容が多くあるという話も伺いました。複雑な問題はともかくとして、そういった初歩の争いや不安を事前に防ぐために、雇用や賃金問題の基本や裁判の判例など、わかりやすく、使用者、労働者に普及啓発を徹底するということは有効であると思います。
 そこで、そういった労働問題、相談の多い内容を、「ポケット労働法」のような冊子やマニュアル、インターネットなどを通じて一層の普及啓発を図るべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○坂本労政部長 労使間のトラブルを防止するためには、労働法などの基本的な知識を労使が理解することが必要であるというふうに認識をしております。このため、「ポケット労働法」や「使用者のためのわかりやすい労働法」などの啓発資料を毎年度発行しているほか、随時必要な資料を発行し、基礎的な知識の普及を図っております。
 また、平成十年度に開設いたしました労働経済局のホームページの中に「インターネットで学ぶ労働法」のコーナーを設けたほか、今年度は労政部においてもホームページを立ち上げることとしておりまして、さまざまな機会を活用して普及啓発に努めてまいります。

○くぼた委員 一層充実する方向で取り組んでほしいというふうに思います。
 それだけじゃなくて、さらに進めて、職場におけるいじめ防止といったような、指針となるような内容のものもぜひつくっていただいて、それを普及啓発に使ってほしいというふうに思います。
 労働法制が改悪されるとともに、今、日本の雇用形態が変化している中で、欧米に比べても、最低賃金の保障とか、時間外労働の規制とか、リストラ規制など、働く人たちを守る最低限のルールさえ確立していないのが、日本の労働環境だというふうに思うんですね。そういう中で、働く労働者を守る上でも、労政事務所の果たすべき役割というのは非常に高い、ますます大きくなっているというふうに思います。そういった点からも、これ以上の事務所の統廃合は行うべきじゃないし、むしろ一層充実を図るのが当然だというふうに思います。
 最後に、職安行政について伺いたいと思います。
 今年度から、先ほどお話がありましたように、国に一元化されてしまったわけですけれども、東京の雇用状況を見ても、ナショナルレベルだけではない対策が必要だと思います。そのことは、都自身がこれまでも、国の施策に上乗せ、横出しをして、十分か不十分かという問題はありますけれども、都事業として、中高年、障害者、女性、若年あるいは日雇い労働者の雇用対策としてやってきたことも明らかだと思うんです。また、都の補助によって積み上げられてきた対策も、この間幾つかあるわけです。
 そこで伺いますが、職業安定行政が国に一元化された状況の中で、都として今後どのように雇用対策を進めていくつもりなのか、お伺いしたいと思います。

○坂本労政部長 雇用対策法の改正に伴いまして、地方公共団体は、国と連携して、地域の実情に応じた雇用対策を実施することとされております。
 都といたしましては、雇用対策法に規定いたします自治体としての役割を踏まえ、国との連携を図りながら、これまでも実施してきました都独自の対策を中心に、雇用就業情報の提供など、都の実情に即した雇用対策を進め、都民サービスが後退することのないよう努めてまいります。

○くぼた委員 そもそも東京都は従来から、職業安定行政は地方自治体が実施すべきだという立場だったわけで、法改正があったとしても、その立場からすれば、これまでのレベルを後退させることがないように、国にも働きかける、それから、都みずからも、独自対策、実施施策を早く確立するように要望しておきたいと思います。
 以上、改めて、現時点に立って、この間の経過を振り返るとき、私は、この年度、九八年度というのは、都民にとって都の労働行政が、一つは職業訓練校の統廃合、もう一つは労政事務所の統廃合、再配置といった検討がされて、一層の後退に向かい始めた年、財政健全化計画による財源対策という形で後退し始めた年といってもいいんじゃないかというふうに思うんですね。現実にこの二年間を見ると、職業訓練校、労政事務所が統廃合される、職安行政が国一元化で、都施策は、役割分担ということで減ったわけです。
 その一方で、一番初めにいいましたけれども、TFTに職業訓練校を移して、わざわざ家賃を払うというようなむだ遣いもやっているわけですね。やっぱりこういうやり方をやめて、改めて本来の労働行政を充実させる立場に戻るべきだというふうに思うんです。それをしないと、これからますます後退することになってしまうと思うんですね。
 今日の経済情勢や雇用情勢からしても、労働行政を後退させてはならないと思うんです。一層の充実を図るべきだと考えます。それだけじゃなくて、労働法制が改悪をされる、雇用が一層不安定になって、実質的な賃金が切り下げられる中で、未組織労働者がまたふえる、そういう中で、今後のことを考えても、都民の雇用と暮らしを守り安定させることがさらに重要になっているというふうに思います。
 都政改革ビジョン策定が動き出している中で、労働行政をそういった観点からぜひ検討していただきたいということを加えて述べて、質問を終わります。

○山本委員長 質問しなさいよ。最後に答えなさいよ。それだけじゃ、意見をいっただけになっちゃうから。坂本さん、それについてどう思うかとかしないと、この間からいっているように、ちょっとおかしいですよ、意見の開陳だけじゃだめだということになっているんだから。

○坂本労政部長 ただいまのご意見を踏まえて、今後とも労働行政の一層の充実に努めてまいりたいと思います。

○木内委員 委員長のお許しをいただいて、私、木内が質問いたします。審議に協力をするという意味から、進捗を念頭に置いて、はしょるところははしょりながら、ポイントに絞ってお尋ねいたします。
 東京の農産物の総生産額は、平成八年で三百八十六億円余、平成九年は三百七十九億円余、そして決算年度の平成十年は四百億円を上回る、こういう生産額ということになっているのであります。都内に農家は一万六千六百軒ございまして、農家の皆さんと有機的な、また大きな心のきずなを持って結びつきながら活動しておられる農業改良普及員の方々、この方々が東京都には五十一名おられるのであります。こうした背景を踏まえながら、ご質問をまず申し上げたいと思うのであります。
 東京の農業は、都民に新鮮で安心できる農産物を供給するとともに、農地は、都市の貴重な緑のスペースとして、都民に安らぎや潤いを提供するなど、都市農業ならではの多くの役割を担っています。一方、島しょ部では、温暖な気候風土を生かして、現在も、主要な産業として、地域の活力を生み出す原動力になっているのであります。
 今後、東京の農業は、こうした都民の期待を受けて、都市に立地するメリットを生かしながら、しぶとく、力強く発展していくことが求められているのであります。
 東京の農業が維持、発展していくためには、当然都の行政としての支援が必要である、こう考えるわけでありますけれども、申し上げておりますこの農業改良普及員の方々は、農家とマン・ツー・マンで指導していく普及事業、これに挺身されているわけであります。
 先日、私は、港湾局に対しまして、決算年度の十年度で五百万の予算措置によって行われる外貿ポートセールスが約十億円の仕事をなし遂げたという例を引きました。東京都の執行事業の中には、本当に限られた予算の中で大きな結果を招来している事例がよくあるのでありますけれども、私は、農業改良普及員の方々の活躍というのも、これにやはり匹敵するのではないか、こう思うわけでありまして、農家の創意工夫を盛り立てていくソフト事業としての農業改良普及員の役割というのは、今後一層重要になってくると思うのであります。
 そこでまず、この普及員、普及事業の目的が準拠する法律、あわせて、決算年度の平成十年度の予算額、予算執行率及び事業内容はどういうものであったか、お尋ねします。

○江口農林水産部長 農業改良普及員制度の目的でございますが、農業改良助長法に基づきまして、農家に対しての栽培技術や経営の指導、生産者組織の育成などを行っております。また、農家と行政試験研究機関との橋渡し役としての役割も求められております。
 具体的には、普及、指導計画に基づき、農家を巡回して指導したり、農業試験場が開発した新しい技術の実証展示圃場の設置、あるいは農業者講習会の開催などを行っております。また、各種の行政施策の実施に当たりましては、行政部門と連携いたしまして、地域の掘り起こしや事業導入の農家への指導、事業実施後の農家へのフォロー等、施策全般の推進役ともなっております。
 平成十年度におきます農業改良普及事業費の予算額でございますが、人件費を除きまして一億六百七十二万八千円、執行率は九二・六%でございます。予算の主な内容は、農家の巡回指導経費、研修会や講習会の開催経費などでございます。また、普及センターの維持管理費もこの中に含まれております。

○木内委員 私は、きょうの質疑に当たりまして、現地を複数箇所拝見させていただき、普及員の方々と現場に足を運んで、農家の若い経営者の方々と懇談をする機会をちょうだいしました。実は、大変に刮目したのでございます。一つは、江戸川区にございます都の東部分室を訪れまして、藤本さんという主任改良普及員の方――たまたま中央センターの半田所長もお見えになりまして、半田さんからお聞きしました担当の練馬区の方でありますけれども、例えば、ことしは、二月まで雨が非常に少なかった。高温の季節を経たために、苗の春キャベツを植えるタイミングに農家はみんな悩んでいた。実は、こういったときに頼りになるのは、農協を通じてアプローチして相談をする相手のこの普及員の方なんです。この方以外には相談するところがないんですね。この作付計画を、普及員の方が相談を受けて、土質調査をしたり、苗の大きさを見たりして決めて、いつごろ植えれば一番効果的ないい作物ができますよ、こういう指導をするんですね。練馬の方ではこういう話でございました。
 それから、江戸川の方へ行きましたら、私は初めて知ったんですが、コマツナという野菜がありますけれども、あれは江戸川区の小松川という地名が由来なんですね。もともと小松川のあたりでつくっていたからコマツナなんですよ。これは天下一品の品物でございましてね、江戸川区で聞いたら、三十億ぐらい、年間の農業生産額があるそうですが、このうちの七割を江戸川区のコマツナが占めている。築地では一束百円から百五十円の間で取引されるそうですけれども、江戸川区産のコマツナというのは百五十円ぎりぎりの高値で取引されることが多い、こういう話も聞いたんです。
 あわせて、これは年に何回も連作をするものですから、土が枯れてきたり、あるいは土壌が非常に悪くなったりする。あるいは、周りは住宅街でありますから、今、においの強い堆肥は避けなければならないということで、土質調査であるとか、あるいは、区内からいろんな、お豆腐のおからだとか、コーヒーのかすを集めてきまして、においのしない堆肥を研究する農家の方もおられる。こういう方々にアドバイスをする。こういう大変な作業もしておられる実態を聞きました。
 江戸川区で三百年続いた農家の三十二歳の男性、十一代目だそうです。非常にさわやかで誠実な感じの農業の青年経営者ですけれども、この人に、改良普及員の方々の印象は一言でいって何ですかといったら、一言、いい兄貴だと思っているんですと。どんな問題を質問しても的確に答えてくれる、答えを持ってくれている、そんな話も仄聞したのであります。
 ですから、私は、誤解を恐れずに申し上げれば、かつて中国が国づくりをやったときに、インテリのお医者さんたちがはだしになって地方の地域に行きまして活躍した、はだしの医者という話がありますけれども、まさに東京都の農業改良普及員の方々というのは、行動する農業学の学者である、こういう印象を強く受けたんです。お一人の半田さんは京都大学の農学部出身の方でした。東京農大出身の方が藤本さん。こういう方々が、人知れず毎日毎日、農家の庭先で、畑の現場で活躍をしている、その成果というものが、四百億という東京の農業生産の骨組みをなしているわけです。これは非常に大事なことだ、こういうふうに思うんです。
 それで、平成十年に至る三年間で、こうした方々の努力と、それから農家の方々のご苦労が相まって、東京の農業は、天皇杯を初めいろいろな栄誉ある受賞をされている形跡がありますね。これについてご報告いただけませんか。

○江口農林水産部長 これまでの普及員の成果を申し上げますれば、ただいま木内先生からご紹介もいただきましたが、農業試験場が開発しましたブドウ「高尾」、あるいは東京ウドの「大江戸美人」、こうしたものの普及、拡大、島しょ地区でのレザーファンの産地化、それから、東京の伝統野菜コマツナのハウス栽培による周年栽培の推進などが挙げられるかと思います。
 このような成果のあらわれとしまして、農業生産額が五千万を超えるような農家もふえてきておりますし、また、ご紹介いただきましたように、農家の最高の栄誉であります日本農業賞の上位を、平成九年度以降三年連続して東京の農家が受賞しております。
 また、最近は、農家だけでなく、広く一般都民も視野に入れました普及活動をして、都民ニーズの多様化に対応する直売向けの作物、あわせて環境保全型農業に向けた取り組みなどにつきましても評価をいただいているところでございます。

○木内委員 都民を代表する議会でありますから、こうした成果をしっかり認識していくことが大事だと私は思うんです。特に、江戸川区のこの三十二歳の青年経営者にお会いしたときに、本当に胸を熱くしましたのは、東京の農業を支え、これを継承していく誇りに燃えているわけでありますから、行政もこれにこたえて、しっかりとまた支援体制をつくっていかなければいけない、こう思うんです。
 こうした大きな成果を上げている農業改良普及事業でありますけれども、今どういう体制で行われていて――現実には、私もいろいろご苦労を聞いたんです。交通費がなかなかなかったり、あるいは、農家の庭先を訪問する予定を立てても、地方と違って東京というのは、交通渋滞や都市化の波が進んでいるために、なかなかスケジュールどおりこなせないとか、いろんなご苦労がありましたけれども、そんな具体的な内容についてご報告を願います。

○江口農林水産部長 農業改良普及事業につきましては、現在、三つのセンターを核といたしまして、三支所、三分室という組織体制で行っております。多摩地域には中央、西多摩、南多摩の各センターを設置いたしまして、また島しょ地域には、大島、三宅、八丈に支所を、また区内には二カ所、島には一カ所の分室を設置しております。
 普及員の苦労についてのお尋ねでございますが、普及員につきましては、労をいとわず農家回りをしておりますが、あえて申し上げるとすれば、何点か挙げられるかと思います。
 その第一は、農業は自然相手の仕事でございますので、台風や雪の被害、あるいは高温、雨量の不足などによる被害など、いろいろな自然災害が時を選ばず発生してまいります。そうした被害の内容に応じた対策、技術指導、経営支援に、迅速、適切に対応していかなければならないことが挙げられます。
 第二に、稲作中心の他県と異なりまして、東京の場合は野菜や花き類が生産の中心でございますので、非常に多くの品目の栽培技術を習熟しなければならないことになろうかと思います。また、都市地域の特有の問題といたしまして、農地や農家が散在している中、農家の横のつながりをとりながら産地として維持していくことも、普及員にとっての苦労の一つかと思います。
 以上でございます。

○木内委員 これは農業普及事業に関する最後のお尋ねでありますけれども、今後の課題としていろいろあると思います。例えば、申し上げたような担い手の確保、継承に対するさまざまな措置、こういった課題に対して取り組む内容、方針についてまずお尋ねしたいと思います。
 今もお話があったように、他県とは異なって、東京の農業というのは、申し上げたように、いわゆる面的な広がりというものが確保しにくい状況にありますので、今後、情報の孤立化を招かないような措置であるとか、具体的な産業振興のかなめというものを構築していく必要がある、こう思うのであります。特に普及員の方々のお立場は非常に重要だということを私は認識しておりますので、その点も含めてお答えを願って、この問題に関する質問を終わりたい。

○江口農林水産部長 現在、東京の農業にとりまして、あるいはそれを支援いたします普及事業にとりまして、ただいま先生ご指摘のとおり、担い手の確保が最大の課題かと思います。東京都では、これまでも、後継者セミナーの開催や組織づくり、技術研修などを通しまして、担い手の育成に取り組んでまいりました。こうした取り組みを今後一層充実していく必要があろうかと考えております。
 また、農家、農地の点在化や普及員数の減少により、従来のように広く網羅的に農家を指導することが必ずしも効果的ではないということで、指導のあり方も課題の一つかと思います。そのため、地域全体のまとめ役としての農家の育成、支援など、普及事業の対象となる農家の重点化が必要となっており、農業協同組合の営農指導部門との連携も強化しながら、今後、効率的、効果的な普及事業の展開を検討してまいりたいと考えております。

○木内委員 ハード事業で立派な施設をつくるよりも、普及員を一人ふやすことの方がずっと効果的な場合がありますよと、そういうご意見をくださった専門分野の方もおられることを申し添えておきます。
 最後にお尋ねするんですが、あえて委員長にお許しをいただいて、旬の話題でありますので……。
 この前、石原知事が、ベンチャー育成のために、都が所有する施設の空きスペースを、ベンチャーの起業家の人たちに無料で提供して、利潤が出たら一割バックしてもらうと、そんな提案をした。関係者から、物すごい朗報だということで反響があった。それを受けて、四月四日から、正味三日間ですか、知事の指示のもとで、大関局長がバージニア州へ行ってこられたということを仄聞しておりました。それが、この前のNHKのBS1で放送された番組で、視察の一端を拝聴したわけであります。
 私もかねて、ベンチャー企業の育成というのは、東京あるいは日本の経済の活性化に不可欠である、このことを訴えてまいりました。今後、いろんな機会にお伺いしてまいりたいと思うんですけれども、きょうは短時間でありますので、局長に、視察されての感想というか、現地で特に興味を引かれた、強い印象を受けたことなどありましたら、ご答弁を願いたいと思うんです。

○大関労働経済局長 いろんな感想の切り口はあろうかと思いますけれども、私なりに三つほど感じたものがございます。
 一つは、よくいわれることですけれども、アメリカの経済は大変元気だなというものが第一印象でございました。いろいろ聞いてみますと、その元気の原因といいますか、新しい産業がどんどん進出している、新旧の産業が入れかわっているということ、これが目の前でわかるわけでございます。そういう点で、競争力の強い産業が生き残っているということでございますから、これは大変強い感じを受けました。
 確かに、インターネットバブルというのが起きておるんですけれども、日本と典型的に違いますのは、日本では、金を貸すときに、土地や建物、有価証券というものを担保にしておりますけれども、アメリカでそういうものを担保にして貸す例はほとんどないということでございました。そういう点で、そういうものが仮にこけたといたしましても、金融面での第一次不安というのは日本ほどは起きないだろう、このように感じまして、そういう点では、相変わらず新たな投資意欲というものが国民の中に強く出ているということ、これがアメリカ経済を強くしている部分かなというのが一つ感じたことでございます。
 二つ目は、とりわけグレーターワシントン、ここが元気だということを感じてまいりました。今まではシリコンバレーが大変元気だということでございましたけれども、ハイテク産業、既にシリコンバレーを上回っているという実態も確認してまいりました。これもいろいろ原因をお聞きしますと、やはりペンタゴンのあるまちでございます。冷戦が終えんしまして、いわば軍事産業がすべて、金も人も情報も、独占していたものを、インターネットを開放して、民間に、情報、テクニックも人も提供してきた。そのことが新たなビジネスの展開になりまして、政治のまちからハイテクのまちに変貌してきているということが挙げられようかと思います。そのことによって、自治体が非常に財政面で潤ってきているということで、バージニアでは大変黒字の財政で潤っている最中でございます。
 三つ目でございます。こうした元気を支えている背景を考えますと、やはり州や自治体、大学、こういったところが競い合って産業誘致、産業の育成、こういうものを図っているということが感じられるわけでございます。自治体の税収というものが非常に独立しておりまして、誘致してそこで活況を呈しますと、いわば所得税や何かも自治体のものになるということでございますから、こういう点では非常にやりがいがあるといいますか、そういうことで、最大の財政再建は産業育成にありという基本にあろうかと思っております。そういう点では、受け入れる側も、入ってくる側も大きな夢を持って取り組んでいるということを感じて帰ってまいりました。

○木内委員 これは会議録に残る話ですから、どうかと思いますが、私は四十分まで時間があるんですね。できるだけ短縮してお聞きしますけれども、もう一点、今の件で、仄聞するところ、いわゆる貸しスペースについての経済面でのメリット。バージニアの方は、聞くところ、どうも日本と発想が違うようでありまして、例えば、スペース貸しましょう、ただですよ、そのかわり何人の雇用をしなさいと。この申告した雇用の人数を満たさない場合は、人数分のペナルティーを課す。いわゆるスペースの貸与ということは、雇用の確保、雇用の拡大を常に念頭に置いて施策が講じられているというようなことも仄聞したんですが、どうでしたか。

○大関労働経済局長 全くそのとおりでございまして、すべての産業政策の基本が雇用対策にございます。いわばお金を貸す場合でありましても、一万ドル貸しますから一人を雇ってください、こういう条件でございまして、例えば不動産で投資をするというときに、その五〇%を貸しましょう、そのかわり、五年間で、例えば目標の人数に一割満たない場合は二割の賠償金を払いなさい、返済をしなさい、こんなようなペナルティーを課しまして、徹底した雇用対策と連携を図っているということを実感してまいりました。

○木内委員 これは私は新しい発見だと思うんですよ。常に雇用の拡大、確保ということを念頭に置いて全部収れんする。アメリカ的ですね。一切の施策というものは、結果として数字にどうあらわれるか。私は、これは行政の評価法の一つの側面ではないか、こんなふうに思うんです。
 最後にお聞きします。
 そうした視察を踏まえて、この前、知事が会見で打ち上げられたスペースの無料貸与、これは東京版に反映するとすると、いろんな課題があると思うのですけれども、どんなふうにお考えでしょうか。これをお聞きして、終わりにします。

○大関労働経済局長 これもいろいろな課題があろうかと思いますけれども、私なりに三つあろうかと思っております。
 一つは、ハード面からの課題でございます。どれだけ提供できる施設があるだろうかということ、これを早急に選定する必要があろうかと思っております。当初、例えば建物のあるフロアを貸せばいいだろうというふうな発想があったんですけれども、向こうへ行ってみますと、やはり一つの建物そのものを貸すというシステムをとりませんと、片や六時で帰ってしまう、片や二十四時間営業するということになりますので、これはやはりそういう選定があろうかと思っております。
 それから、もう一つは、経費の問題がございます。そういう点で、ハード面。
 それから、できるだけ早くやれという知事のご指命がありますので、これはぜひ早くやりたいと思っております。
 二つ目は、ソフト面の課題でございます。これは支援体制、入った方にどういう支援体制を組むかという課題があろうかと思っております。マネジメント機能が中心になろうかと思いますけれども、技術支援あるいは金融面での相談、法律の相談、こういう面が入ってこようかと思っています。
 それから、入居の基準ですね。どういう審査で入れるかというようなこと。そういうソフト面の考え方。
 それから三つ目が、いうまでもないことですけれども、庁内あるいは関係機関、いわゆる産・学・公の協力体制がどう組めるかということ。これが今後の課題になってこようかと思っています。

○土屋委員 私は、審議の促進を図る意味で、質問を大幅に減らしまして、四問でいきます。木内先生のすばらしいご質問の後で、遜色があって、恥ずかしい限りですけれども、やらせていただきます。
 中小企業の金融安定化特別保証制度というのがあるのですけれども、最近の保証状況と、代位弁済の発生状況についてお伺いいたします。

○山本商工振興部長 中小企業金融安定化特別保証制度の最近までの実績ということでございますが、この制度は平成十年十月からでございます。最新実績は十二年三月末まで、一年半の実績が出ておりまして、東京都におきましては、二十六万八千件、五兆五千百七十億円の申し込みに対しまして、二十四万五千件、四兆七千二百七十三億の保証承諾を行っております。
 なお、全国ベースでは、百二十二万九千件、二十兆九千億円の保証承諾ということになっております。
 それから、都内におけるこの保証制度に係る代位弁済の発生状況でございますけれども、これも三月末までの状況でございますが、二千六百八十八件、五百五十億円となっておりまして、代位弁済の発生率といたしましては、件数ベースで一・〇%、金額ベースで一・一六%でございます。

○土屋委員 中小企業の資金繰りの厳しさというのは変わっていないと思うんですね。今、お話によりますと、代位弁済の発生率は、金額ベースで一・一六%ということですけれども、今後、代位弁済の発生率がどこまで高まるのか、私は極めて懸念される問題だと思うんですね。
 聞くところによると、安定化保証制度の創設に当たって、国は、代位弁済発生率を通常よりもかなり高目の一〇%と見込んで制度設計をしたと聞いているんです。今後の見通しは極めて不透明だと思うのですが、東京都はこの問題についてどのような認識を持っているでしょうか。

○山本商工振興部長 安定化特別保証制度の今後の代位弁済の見込みということでございますが、この特別保証制度は、臨時で緊急措置としてできたものでございまして、一般の融資制度に比べれば、この代弁率というのは高くなるのではないかと考えております。
 先ほど申しましたように、十二年三月末までの代位弁済の発生率は一・一六%でございます。都の制度融資の代位弁済の発生率を三カ年平均でとりますと、おおむね一%半ばということでございますので、現在ではまだ低い水準というふうにいえるのではないかと思います。
 しかしながら、この制度自身まだ発足して一年半ということでございまして、通常、融資実行後二ないし三年後あたりに代弁発生率のピークが来るということを考えますと、都といたしましても、この安定化保証制度に係る債権管理の観点から、この代位弁済の発生状況につきましても、今後、その推移についてきちんとフォローしていく必要があるというふうに思っております。

○土屋委員 国の政策のいわゆる安定化資金は、これは一部ですけど、一部に税金のばらまきという批判もあるわけなんですね。つまり、安易に資金調達ができた結果、返済期日に弁済ができない、そういう業者が増大されることは当然明らかだと思うのですが、安定化保証制度の実施期間を一年間延長するに当たっては、安易な貸し付けが行われないように十分留意すべきと考えますが、東京都の考え方はどうでしょうか。

○山本商工振興部長 安定化保証制度の今の融資貸付の実態を申しますと、大体八割の方々が、翌月から据え置き期間なしで返済をされております。したがいまして、多くの中小企業の方は、きちんとした形で着実な返済が行われているのではないかと思っております。
 ただ、今、土屋委員のおっしゃったような批判ももろもろございます。したがいまして、今回国が――そもそもの制度は一年半ということでございましたが、この四月から一年間延長されることになっておりまして、制度の大枠というのは、これまでどおり、区市町村のいわゆる貸し渋り認定を得て、なおかつ、この制度の前提でありますネガティブリストに該当しない限りにおいては保証するという枠組みがあるわけでございますが、この四月一日以降につきましては、建設的努力要件というのも入っています。要するに、、建設的努力を行う計画というのをあわせて提出していただくということになっております。
 内容といたしましては、事業者がこの融資を受けることによってやる事業につきまして、雇用の維持または増加を図る、もしくは収益性の向上を図るということを計画の中に織り込むという形になっておりまして、この融資を受けた形でどのような事業をやっていくかというのを、きちんと計画書として提出をしていただくというふうになっております。
 いずれにしましても、返済の問題につきましても、可能な限りきめ細かな対応を図りながら、制度として適正な運用が図れるようやってまいりたいというふうに思っております。

○土屋委員 私、あくまでも安易なということをいっているんで、きめ細かな対応をした上での中小企業支援というのは当然必要だと思うんですね。
 それで、中小企業向け融資が大幅に増と、大手資本注入銀行十五行の資料が、実は全銀協から報道され――平成十一年三月には、二兆九千九百二十一億円の目標の二三%にとどまって、今後の達成が懸念されていたわけなんですが、それが本年三月には、四兆八千億円から五兆三千億円と大幅に増加しているわけなんですね。
 全銀協の杉田会長は、衆議院の大蔵委員会で、資金需要が回復しつつあると述べていますけれども、この達成発言には、実は、借入希望者の資本金を当初一億円としたが、三億円に拡大された裏がありまして、大手企業寄りに融資された結果ではないだろうか、中小零細企業にはむしろ大手金融機関のさらなる貸し渋りが行われているというのが実態ではないかと思うんです。
 そこで、最後の質問ですけれども、中小企業の資金繰りは、景気回復がいまだ思わしくない中で、依然として厳しい状態にあるのは事実なのでありまして、東京の元気回復ということでいえば、その原動力である東京の中小企業が元気を取り戻さなければならないと思うんですね。
 そこで、安定化保証制度に当たっては、景気の本格回復が実現し、健全な利用者がみずからの力で安心して活動できるまで、その存続について国へ要望するとともに、都の融資制度について、都財政の厳しい中でもなお一層の充実を図る必要があると私は思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

○山本商工振興部長 中小企業金融安定化特別保証制度の扱いでございますが、先生からお話がありましたように、当初、一年半ということでやっておった制度でございますが、景気の先行きが不透明であり、なおかつ中小企業をめぐる金融情勢は依然として厳しいということで、一年延長と、十兆円の保証規模の拡大というのが行われたわけでございます。
 制度の利用の方からしますと、極めて安定的に推移しておりますので、そういった利用状況を見ながら、今後、この制度について、国に対して必要に応じて対応していきたいというふうに思っております。
 都の制度融資の方でございますが、都の制度融資については、これまでも不断の見直しということをやってまいりました。中小企業者のニーズ、それから中小企業施策の方向性を踏まえながら、中小企業者にとってより利用しやすい形で不断の見直しを行っていきたいというふうに思っております。

○藤川委員 私も、土屋理事と同じように、東京都の制度融資について質問させていただきます。
 今、土屋さんの質問は、私の後を行くもので、私のはその前座というような形になると思いますので、ちょっとオーバーラップするかもしれませんが、お許しいただければと思います。
 東京都の制度融資は、信用力、担保力両面から資金等調達力の弱い中小企業に対して、金融機関からの融資を受けやすくするために、中小企業の事業を支援する仕組みであるというふうに私は解釈しています。
 この制度が円滑に作動するためには、東京都だとか金融機関及び信用保証協会、三者がそれぞれの立場をお互いに十分に理解し合いながら、協調的に連携していくことが重要であると思います。
 そこで、制度融資における代位弁済の発生状況はどのように推移してきたのか、その状況についてまず質問させていただきます。

○山本商工振興部長 都の制度融資における代位弁済の発生状況ということでございますが、十年程度の長さでトレンドをとってみますと、バブル経済のころは、やはり景気がいいということで皆さん返済できたということで、元年、二年ごろは六十ないし七十億でございました。平成三年度に二百三十億というところから、少しずつふえてまいりまして、平成六年度から九年度は、大体六百億の後半から七百億円ぐらいになっておりました。ただ、ここ一、二年大変景気が悪くなっておるということでございまして、十年度は九百七十五億にまで至っておりまして、平成三年度に比べると四倍ということでございます。代位弁済の発生というのは、借りた債務者の方が返せるかどうかということなので、やはり景気の関数といいますか、その時々の景気の状況、これが極めて大きいのではないかというふうに思っております。

○藤川委員 東京信用保証協会が代位弁済をした後、七〇%から八〇%は保険金で補てんされる。なお、補てんされない部分については、都が東京信用保証協会に対して補助を行っているということですが、最近のその状況についてご説明いただきたいと思います。

○山本商工振興部長 東京信用保証協会に対します代位弁済の補てんの補助金の推移ということでございますが、代位弁済の発生に伴って、信用保証協会に対しまして代位弁済補助というのを行っておるわけでございますけれども、この数年間、やはり代位弁済総額自身の増加ということに連動いたしまして、この補助金額も増加しております。
 実際問題、補助金を補てんする場合には、償却時以降五年間回収をした上で、その補てんをするというのが原則になっていますので、時間のずれがございます。この十年間で最も少なかったのは、平成四年の八億円でございますが、平成十年度はその十倍、八十三億円というふうになっております。
 いずれにしましても、バブルの崩壊ということを踏まえまして、時間的ずれを持った形で、この補助額に反映されてくるということでございます。

○藤川委員 ただいまお答えいただいたことに関しては、代弁率の上昇と、それに伴う代弁補助の増加が認められるというような、担当部長さんのお答えだったんですが、先ほど土屋さんの方からは、安易な貸し付けということが言及されたわけですけれども、私自身もその点を非常に懸念しているわけです。要するに、懸命に努力している者とそうでない者とを厳正に判断し、適正に対応していく必要があるのではないか、そういうふうに思うわけです。そうすることが、都財政の再建を一刻も早くなし遂げる一助になると私は考えているわけです。
 いただきましたいろいろな資料を見ているうちに、はっと気がついたわけです。それは、平成元年から十年における債務履行補助金の累計を見ますと、約二百五十六億円のお金を補助として捻出しているわけですね。これは、正直なことをいって、あなた方のお金でもないし我々のお金でもないというような安易な考え方になるわけですよ。二百五十六億円のお金が補助金として用意されるためには、どのくらいの経済行為がなくちゃいけないかというと、三兆円ですよ。三兆円の経済行為がないと、このお金は出てこないわけですよ。十年間で二百五十六億円のお金を出しているわけです。
 そのときに、要するに、先ほど僕は残念だなと思ったんですが、局長さんは、いろいろな質問に関して、余裕たっぷりの笑みを浮かべておられるようなんですが、僕はそうじゃないと思うんですね。これは大変なお金なわけですよ。我々の家計におきましてはね、一万円、二万円のお金でも、要するに自分たちの家計から捻出できるかできないかということでもって四苦八苦しているわけです。そのときに、何と十年間で二百五十六億円のお金を都が出しているということは、これは本当にまじめに考えていただきたいと思うわけです。
 だから、そういう面では、本当に一生懸命やろうとしている中小企業と、安易な気持ち、姿勢を示している中小企業の厳選というのは、やっぱりあなた方は絶対にすべきなんですよ。(「中小企業はみんな一生懸命だよ、安易な経営なんてやっていないよ」と呼ぶ者あり)だからね、そのことについてはやはり十分に考慮していただきたいと私は思うわけです。
 今、不規則発言の中で、そういう言葉がありましたけれども、事実一生懸命やっている人たちというのを私は十分知っているわけです。だけど、少なくとも二百五十六億円を十年間の間で補助をしっ放しの状況があったということについては、これはやはり大きな問題だろうと思う。
 制度融資の運用については、信用保証及び、これから派生する代位弁済や補助等について、都は今後も適正な制度運用を図るべきと考えますが、この点についてどうお考えですか。

○山本商工振興部長 都は、都の制度融資の運用につきまして、資金繰りに苦しむ中小企業の資金の円滑化という観点から、これまで保証協会に対しまして、積極的な保証を行うとともに、その制度運営については適切にするように指導してきたところでございます。
 お話しのような、協会の積極的な保証姿勢というのが、結果として、安易に、あるいは必要以上に融資を受けるといった、中小企業のモラルハザードの発生につながることはあってはならないというふうに我々も考えております。
 今後とも、制度の趣旨を踏まえ、積極的にかつ厳正な保証審査を行うよう、協会を指導するとともに、金融相談などを通じまして、中小企業に対して、適切な利用を心がけるよう周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

○大河原委員 私からは、都市農業について伺っていきたいと思います。
 東京の発展の中では、農地をまちに変えるといいますか、いわば農業を追い出す形でまちづくりをしてきた歴史があるわけです。消費者の立場からすれば、安全な食べ物が食べたい、特に野菜などは本当に新鮮さを要求されるわけですから、身近なところからというふうに思うのが当然だと思います。
 私が都議会に初めて来たときにも、卸売市場の視察をさせていただきました。そこで、有機栽培についてはどのような状況になっているのかというふうにお尋ねしましたけれども、あの築地の中央市場のある柱の周りに、先ほど木内さんがおっしゃったコマツナが並んでいるという、たったそれだけでした。
 そこで、有機栽培ということを結構しつこくいっていましたら、それは、大河原さん、産直という形で市場外流通ですから、ここには来ません。有機栽培とか無農薬とか、消費者はいろんなことをいうけれども、結局、スーパーに行って形のいいものを選んでいるじゃないかと。そういうような声を市場の方からは聞いていたんですが、私は、地域の生産者の方たちとかとお話をする中では、いや、絶対消費者はこういう有機栽培のものとか無農薬のものを求めていると、私自身もそうですけれども、周りからの実感もありましたので、都議会に来ても、この有機農業のことについて、また都市農業の振興について、これまでも何度か質問をさせていただきました。
 東京の農業の方針の中でですね、基本方針における有機農業の位置づけについて、まずお答えいただきたいと思います。

○江口農林水産部長 有機農業につきましては、平成六年一月に策定いたしました東京農業振興プランの中で、東京の特性を生かした有機農業を推進するとしております。また、同年十二月に策定いたしました東京都環境保全型農業推進基本方針では、化学肥料、化学合成農薬の使用量をおおむね五〇%削減した、減農薬、減化学肥料栽培農産物を当面の目標としております。
 今後とも、より安全で新鮮な農産物を都民に供給していくために、これらの方針に基づき、有機農業の普及拡大を図ってまいります。

○大河原委員 東京の農業というふうにいいますと、東京なんてところで高い野菜つくることないよという声が必ずあるんです。それは、日本という国を見ても、日本でつくるよりは、安い外国からのものを輸入すればいいじゃないか、そういう声に代表されてしまうんですが、日本の農業というのは、やはり限られた狭い国土の中で集約的に生産性を上げようということで、大量の農薬を使う、大量の化学肥料を使うということで、環境にかけてきた負荷というのは大変に大きいわけです。それを見直そうという動きの中で、今この農業に対する考え方もさまざま変わってきています。
 特に、今お答えいただいたように、東京の中では、方針の中でも有機農業の位置づけが大変はっきりと示されているわけなんですけれども、東京都の進めてきている有機農業モデル生産団地、これは六年から始まっておりますが、決算ですから、平成十年の成果を踏まえて、六年から十一年の実績についてお尋ねいたします。

○江口農林水産部長 有機農業のモデル生産団地につきましては、二種類あります。一つは、減農薬、減化学肥料を目指す減減型団地でございまして、平成六年度から指定を開始いたしまして、十一年度までの間に十二団地の指定を終了したところでございます。もう一つは、有機農産物栽培を目指す有機型団地でございまして、平成九年度から指定を開始いたしまして、十一年度までに三団地の指定をしたところでございます。
 今後は、有機型団地を三年間でさらに三団地指定する計画でございます。

○大河原委員 つくる方の努力と、食べる消費ということがきちんとくっついていかなくちゃならないわけなので、有機農産物の地場流通、このところを伺いたいと思います。いわゆる産直型が多かったかとは思うのですけれども、現状、地場流通の対策についてはどのように進めているんでしょうか。

○江口農林水産部長 有機農産物等につきましては、地域の直売所やスーパーを通じまして販売されておりまして、地場産の農産物を都民が購入できる体制が進んできております。また、学校給食への提供や、消費者グループへの直接販売も行われており、安全でおいしい農産物の供給が進められております。
 今後、地域の直売所をふやしていくこと、有機農業を目指す農業者団体を育成していくことなど、さらに地場流通が盛んになるように、事業の展開に取り組んでまいりたいと考えております。

○大河原委員 その地場流通が本当に進んでいるといいなと思います。モデル生産団地のご報告の中にも、学校給食に入れているところの数が多くなってきているかと思いますけれども、そういった教育効果があるといいますか、そういう流通先というのも開発していただけたらと思います。
 それで、有機農業について、ここの東京で、日本でやるということでは、先ほどありましたように、無農薬、無化学肥料というふうに大変厳しい条件をつけることは、生産者にとっても非常に苦労の多いことだというふうに思います。
 これまでの有機農業についての課題、特に生産量をふやすための課題ですとか、生産者が抱えている問題については、どのように把握していらっしゃるでしょうか。

○江口農林水産部長 有機農業を実践する上での問題としまして、質のよい堆肥を手に入れにくいということ、それから、突発的な病害虫の発生があること、手間のかかる割には価格に反映されないことなどが、農業者から聞かされております。
 このため、今年度から、都の有機農業堆肥センターの堆肥を、モデル団地以外にも頒布をしてまいります。また、畜産堆肥製造施設の設置を支援するとともに、生ごみや剪定枝のコンポスト化の推進により、不足している堆肥の供給を促進してまいりたいと考えております。
 病害虫の対策としましては、栽培指針の活用によりまして、被害を最小限にとどめるよう指導するとともに、農薬に頼らない防除法の開発を推進してまいりたいと考えております。
 さらに、有機農業の難しさにつきまして、消費者との交流会なども通じまして理解を深めてまいりたいと考えております。

○大河原委員 生ごみや剪定したもののコンポスト化で堆肥を生産するシステムに関しては、やはり区――私、世田谷なんですが、生ごみのコンポスト化というのが、清掃計画の中にも入ってきているものなんですね。ちょっと大きくいえば、ゼロ・エミッションのまちづくりという中に、やっぱりこれは組み込まれていくのじゃないかなというふうに思います。
 次に、ちょっと視点を変えまして、やはり有機というものが大変厳しい基準になっています。JAS法の改正で、有機農産物の規定が厳格になったわけなんですけれども、東京都が進めている減農薬、減化学肥料栽培農産物というのは、今後どのように指導、支援をしていくのでしょうか。

○江口農林水産部長 都民の皆さんにより安全で新鮮な農産物を供給し、環境に負荷を与えない農業を推進していくためには、減農薬、減化学肥料等による栽培に取り組むことも必要と考えております。このため、農業改良普及センターを中心として、土壌診断や土づくり講習会など、栽培に関する指導、支援も、これまでと同様行ってまいりたいと考えております。
 また、JAS法改正後も、都民が安心して農産物を購入できるよう、減農薬、減化学肥料栽培等の、都独自の認証制度を継続して実施し、生産方式が消費者にわかるような表示に心がけながら、有機農業の推進に力を入れてまいりたいと考えております。

○大河原委員 東京の農業というのは、農地自体が、一万ヘクタールとか、それで、水田が少ないわけなので、畑だけ見れば、山口県とか島根県の畑地面積に匹敵するという、えっと驚くことが多いのじゃないかと思うんですね。野菜に換算して一割、東京都民が食べる野菜の一割分は生産している。たかだか一割って思う人と、こんな場所で一割分、百万人のまちだったら一年間という、そういう換算をすると、やはり東京の農業の大きさはすごく重要だというふうに思います。
 それで、東京の農業って、これがどこでということ、どういう農地かということを考えるんですね。いわゆる農業基本法で対象にしている農地からつくられていないわけです。島しょですとかそういったところは別ですけれども、市街化区域内の農地でつくられている。そこがすごく東京が主張しなきゃならないところで、昨年の七月にできました新農業基本法、食料・農業・農村基本法ですか、それには、都市及び周辺における農業の振興を明確に位置づけた。いわゆる都市農業が国の法律に位置づけられましたが、そのためには、この都市農業を進めてきた東京都の役割というのは大変大きいと思います。今まで対象にしていないところの農政をしていくわけですから、これは、東京都がいろいろな経験をもとに、国に対しても意見を出していける。むしろ東京都のこの主張を取り入れて国の法律が変わったといっても過言じゃないというふうに思います。
 都市農業が大きなウエートを占める東京農業の振興策、それにも大きなかかわりがあるというふうに思うのですけれども、この基本法を受けて、今後、東京都の振興施策、その方向性について伺います。

○江口農林水産部長 東京都はこれまでも、都市農業の振興を農政施策の重点として、主体的に振興策を進めてまいりました。ご指摘のとおり、新たな基本法で、都市農業の振興について国の責任が明記されましたことは、都のこれまでの考え方と軌を一にするものであり、大変重要なことと認識をしております。
 現在、より都民、消費者の視点に立った振興策を検討すべく、国や関係団体との協議を進めるとともに、新基本法を踏まえた振興策につきまして、東京都農林漁業振興対策審議会に諮問をしているところでございます。
 今後は、審議会の答申をもとに、より一層都市農業振興施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

○大河原委員 私は、労経局でお出しになっているこのアグリデータブックというのが大好きでして、これをぜひ学校の副読本にしたらいいなというふうにいつも思ってきたんですね。
 それで、日本の農業の中で、後継者不足というのは確かにあるわけで、東京でもありますけれども、東京の農業は、都市の中に農地があって、現代的な若者でも、やりたいなというふうに思うような農業が進んでいます。都市農業の担い手対策というのは、また本格的な農業県とは違うものがあるのじゃないかなというふうに思うのですが、その点では、援農ボランティアの養成というのを東京都がもう既に先行して進めてきました。
 援農ボランティアのこれまでの実績、人数ですとか評価、それから今後の方向性についてお尋ねします。

○江口農林水産部長 お尋ねの援農ボランティアについてですが、高齢化等により担い手が不足しています農家を対象に、農作業の一部について支援するため、希望する一般都民を援農ボランティアとして養成し、組織化して農家へ派遣する援農システムを確立、推進しているところでございます。
 平成十一年度までの実績としまして、一区六市で六百十六名の援農ボランティアの認定を行い、このうち四百九十一人が現在活躍をしており、地域の農業、農地を良好な状況で維持保存するとともに、農地を核とした地域ふれあい農業の確立に寄与されております。また、高齢化している農家に対する労働力確保策として有効な施策となっております。
 新しい農業基本法の成立を受けまして、国も同様な施策を実施することとなりましたが、国の施策も含めまして、事業のあり方を検討してまいりたいと考えております。

○大河原委員 都市農業の振興には、新鮮で安全な農産物を供給するというだけでなくて、防災スペースですとかオープンスペース、それから地下水の涵養、アメニティーの保全というようなところで、本当に多面的な機能があると思います。
 このデータブックの中でおもしろいなと思うのをちょっとご紹介しますけど、その公益的な機能の中で、水田の役割のところで、三菱総研が機能の評価事例を出していますね。今、都市型水害の対策で、遊水機能を持つ地下調整池を整備して、東京都も千六百億円なんていうお金を使っているわけなんですけれども、七十五万立米の水を貯留するのに、例えばこれを水田にすると三百十一ヘクタールで済むと。実際に今、これは三百ヘクタールあれば足りると。東京都は七年度に三百十一ヘクタール持っていたんですけど、実際には三百ヘクタールあれば、換算上ね、数字上はカバーできるというようなこと。もっと農業の持っている多面性をいろんな面から評価をしていくということが、非常に大事ではないかと思います。
 もう一つは、自給率を高めるということは、国もやっと方針を出してきているわけですけれども、四六%なんていう低い食糧自給率の割合というのは、先進国の中でも本当にありません。東京が自給率を高めるといったときには、非常に難しい問題があると思いますけれども、やはり地場のものを食べていく、そこに対するセンスを持つ子どもを育てる、そういうことは非常に大きなことだというふうに思っています。
 都市農業を、本当に東京に欠かせない環境保全型の産業として位置づけるように、今後、農業振興プランの改定もありますが、ぜひ積極的に検討いただきたいと思います。

○遠藤委員 ちょっと簡単に関連、一、二分。
 有機農業、それから安全性の低農薬、低化学肥料、これは、私は農家の出身ですが、いうことは簡単なんですけれども、つくったものが商品価値がなきゃだめなんですよね。今非常にその辺に矛盾がありますので、確認したいんです。
 答弁の中で、消費者の理解を求めるという答弁がありましたけれども、どういう点を、どんな方法で、皆さんに、消費者に求めていくのか、ちょっとその辺を。

○江口農林水産部長 無農薬、無化学でつくりますと、どうしても葉っぱを虫が食った穴があいたり、あるいはキュウリが曲がったり、そういうふうな現象が出ます。だからといって、それは食料としての安全性、そうしたものにさして問題があるものではないと思いますので、そうしたものがなお安全だということも、都民の方にも理解していただき、また、農家の方は非常に手を、また時間をかけながら栽培していますので、そうしたものが正しく価格に反映できるようにしていただけるような、そうしたことにつきまして、消費者と一緒に研究、あるいは考えていきたいなと、そんなふうに考えております。

○遠藤委員 まさしく、私が思っていたとおりの答弁なんですね。その辺をやはりしっかりと指導していただきませんと、生産しても、例えば形が悪い、色が悪い、多少虫が食っているということになると、今ほとんどだめなんですね。せっかくつくったものも、それじゃ意味がありません。農家だってやはり生活をかけてやっていますので、有機農業から生産されたものは、そういうものなんだということを十分理解するようにしていただきたいと思います。
 もう一つ、給食に使うということも、これは非常に結構なんですけれども、給食に使う場合には、給食の調理員さんがいますが、その方たちが、形のふぞろいとかそういうことで、非常に嫌がるんですね。それで、それを拒否するケースが非常に多いということを聞いていますので、あわせて、その辺もよく話していただきたい、指導していただきたいというふうに思います。
 終わります、

○山本委員長 ちょっと速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○山本委員長 速記を始めてください。

○小松委員 障害者雇用について伺います。
 長引く不況による完全失業率や中小零細企業の倒産、これは戦後最悪の記録を更新し続けています。職安における有効求人倍率も戦後最低になっており、仕事をしたくとも働くところがない。大・高卒業生の就職浪人という言葉も珍しくなくなりました。
 こうした雇用環境の悪化は、障害者の雇用にも大きく影響しております。ここに今、東京都障害児学校教職員組合の方々が行った障害者雇用の実態調査の報告がありますが、この中にも、就職のオーケーが出ていたのに取り消されたとか、正社員採用はほとんどなく、パートが多数になっているとか、福祉作業所にUターンしてきた等々、たくさんの声が載せられております。
 不況になると、障害者の雇用が調整弁の役割を持たされ、真っ先に解雇の対象になるという現実があるわけですけど、このような障害者の厳しい雇用状況について、都としてどのように実態を把握しておられるのか、伺いたいと思います。

○坂本労政部長 平成十一年六月一日現在、都内民間企業におきます障害者雇用者数は、八万三千六百四十三名でございまして、前年に比べ百八十人減少しております。雇用率につきましては、〇・〇二ポイント増の一・三〇%となっております。
 また、平成十年度の都内各ハローワークにおきます障害者の職業紹介等の状況でございますが、新規求職者数あるいは紹介件数とも前年度に比べ増加しておりますが、就職件数は九・一%減少となっております。
 このように、現下の厳しい雇用情勢の中にあって、障害者を取り巻く雇用環境も大変厳しい状況にあると認識をしております。

○小松委員 確かに、例えば毎年開かれております障害者就職相談会でも、求人数は一定数あり、そして相談面接数もそこそこある。にもかかわらず、採用内定者数、就職率は至って低い。九年、十年、十一年とだんだん落ち込んでいる状況を、私も目にしております。
 なぜかと調べてみますと、私は、この、それぞれの会場での障害者求人一覧表というのをくまなく見せていただきましたが、これによりましても、ほとんどが車いす不可というようなことが書かれており、車いす対応というところは本当に少ない。例えば車いすですね。それとまた、厚生年金はない。厚生年金だけじゃなく、退職金の共済、これもないとか、そういったところ。そしてまた、正式な社員ではなく、嘱託、パート、さらに、一年更新、こういうところばかりといっては失礼なんですが、そういう企業の状況ですね。
 こういったところで、障害者の雇用率、先ほどおっしゃいましたけれど、今ここでは、〇・〇二ポイントですか、上がったにもかかわらず、実際には達成していないところが多いのじゃないかというのは、こういう実態からもあるのではないでしょうか。どのくらいあるのか。
 また、法定雇用率に達しない企業に対して、都としても指導していくべきと考えますが、いかがでしょうか。

○坂本労政部長 このように法定雇用率を達成していない企業数は、平成十一年六月一日現在で、対象企業一万二千八百二社中九千二百四十八社でございまして、全体の七二・二%となっております。
 東京都といたしましては、こうした実態にかんがみまして、東京労働局と連携を図り、障害者雇用促進月間等さまざまな機会をとらえ、法定雇用率の達成に向け、普及啓発活動を行ってまいります。

○小松委員 七二%以上が法定雇用率に達していない。まずは達成のための普及啓発を行っていただきたいわけですが、この一・八%にアップされた法定雇用率とはいうものの、他の西欧諸国なんかでは、例えばイギリスは三・〇、ドイツ、フランス六・〇。従業員十六人以上の民間企業及び公的機関などということも含め、このように日本とは比べものにならない、こういった法定雇用率があるわけです。
 さらにこの法定雇用率をアップするよう国に要望すべきと思いますが、いかがでしょうか。

○坂本労政部長 民間企業の雇用率は、依然として法定雇用率に達していないという状況がございます。こうした実態を踏まえまして、都といたしましては、まず現行の法定雇用率を達成することが重要であると考えております。
 今後とも、東京労働局と連携いたしまして普及啓発等を行うなど、障害者の雇用促進に努めてまいります。

○小松委員 もちろん、七〇%の未達成企業への普及啓発、緊急課題であります。だから低くてもいいということではありません。これを具体的に進めていただきたいと同時に、ぜひ国にアップを求めてほしい、こう思うわけです。
 と同時に、東京都自身でも、法定雇用率は達成しておりますが、達成すればそれでよしとするのではなく、それ以上に障害者を雇用すべきと、これは労経局ではなくて人事の方ですけれど、そのことを強く要望しておきます。
 そして、こうした障害者の雇用対策につきまして、都も国と一体となっていろいろと進めてこられました。これらの事業の幾つかについて伺うわけですけれど、まず、障害者のトライアル雇用という試みが、この九八年度からことしの三月まで行われてきたわけですが、その結果、どうだったのか。そしてまた、その後も続いているものもあるのか。どうでしょうか、実績もあわせて伺います。

○坂本労政部長 緊急雇用対策として労働省が日経連に委託しております障害者緊急雇用安定プロジェクト事業、いわゆるトライアル雇用についてのご質問でございますが、東京都内におきます平成十一年一月から十二年三月までの本プロジェクトの実施状況でございます。第一段階でございます一カ月間の職場実習におきましては、延べ二百七十三人が実習を体験いたし、第二段階でございますその後の三カ月間のトライアル雇用へは、そのうち百八十八人が移行し、最終的に本雇用へ移行した人数は九十九人でございます。

○小松委員 厳しい障害者雇用の中で、最終的に本雇用へ移行した人が九十九人、すばらしい実績だと思います。
 それでは、九七年十月からは、障害者雇用の特例子会社の要件、これが緩和されたわけですが、その結果はどうだったでしょうか。

○坂本労政部長 東京都におきまして最初に特例子会社が設立されました昭和五十四年から、法改正前の平成九年九月までの十三年間に設立された企業は、三十八企業でございまして、その後、常用の障害者の数が、十人から、五人以上となるなど、特例子会社の要件緩和が行われた後の二年間に設立された企業は、十二企業を数えております。

○小松委員 もう一つ、障害者雇用支援センターの育成指導が、この九八年度から事業開始されておりますね。この制度は、障害者の職業生活における自立を図るための継続的な支援を行うセンターの設立を支援するもので、大変積極的な意義があると思われますが、その実績と今後の見通しについて伺いたいと思います。

○坂本労政部長 平成十年十月に、障害者雇用支援センターとして、杉並区障害者雇用支援事業団を指定いたしました。このセンターの本年三月末日現在の雇用支援対象者は、知的障害三度の方が三名、知的障害四度の方が五名、合計八名となっております。また、現在までの就職者数は延べ十名、職場実習者数は延べ十二名となっております。
 今後の支援センターの指定に当たりましては、労働省や区市町村との連携を図り進めていきたいと考えております。

○小松委員 そして、これらの事業というのは、安定行政の国一元化後、どのように実施されていくのでしょうか。

○坂本労政部長 障害者の方のトライアル雇用を含めた障害者緊急雇用安定プロジェクト事業は、引き続き本年も国で実施してまいります。
 また、特例子会社の設立につきましては、ハローワーク等が中心となり、国が主体となって設立促進を図ってまいります。
 障害者雇用支援センターの育成指導につきましては、従来どおり東京都で事業を実施してまいります。

○小松委員 立て続けに三事業を伺ったわけですが、これだけ伺っても、それぞれ障害者雇用に一定の効果を上げていることが今明らかになりました。特に障害者雇用支援センターは、福祉的就労と一般就労を結びつけていこうとする点、雇用された後も積極的、継続的にフォローしていこうとする点など、これまでの、就労をさせることに重点を置いてきた施策とは明らかに異なり、今後の制度強化が求められるものです。ぜひよろしくお願いします。
 ところで、これら障害者に対しての職業訓練が行われておりますのが、この職業訓練校でございますが、一般校における障害者訓練、これも、私、今ここに、「障害者の雇用促進のために」という、平成十一年度版というのを持っております。ここにも、より多くの障害者に対して適切な職業訓練が実施できるよう、一般の公共職業能力開発施設において障害者の受け入れを促進するというふうに書いてありますが、一般校における障害者の入校状況はどのようになっているでしょうか。

○梅津職業能力開発部長 国立・都営の障害校を除きます都の技術専門校におきます障害者の入校数ですが、統計がまとまっておりますのが、平成十年度が最新でございますけれども、二十人ということになってございます。

○小松委員 先ほどから訓練校の話もありますけれど、多くの訓練校生がいる中で、たったの二十人。先ほどの「障害者の雇用促進のために」というところでは、障害者が利用しやすいように、施設や設備の整備等を図り、障害者の受け入れを促進するということが書かれているわけですけれど、この入校者が少ないというのは、バリアフリーがおくれているからではないでしょうか。施設整備についてはどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○梅津職業能力開発部長 大変少ないというお話だったのですが、私どもとして、基本的には、ノーマライゼーションの考え方からいっても、一般校にできるだけたくさん入っていただきたいという考え方で進めております。
 全体的な考え方としては、専門の障害者校があり、さらに都が全体的に出資をした財団があって、そういうようなところと、障害の程度や何かについて役割分担しながら進めていくということですが、繰り返しになりますけれども、できるだけ一般校にも障害者を受け入れていこうという基本姿勢は、委員がお話しになったとおりでございます。
 ご質問の施設整備についてでございますが、一般的に施設設備等、訓練のやり方とかいろいろな面で、障害者を受け入れる以上、準備をしなければならないことがあります。ご質問の中の施設整備という点で申し上げますと、通常、例えばエレベーターであるとか、障害者用のトイレであるとか、自動ドアであるとか、玄関のスロープなどの段差解消など多々ございますが、こうした整備につきましては、可能な範囲内では整備を既に行っております。
 また、大変古い校舎がございますので、こうした校舎については、今後の再編整備の中で、校舎の改築期に合わせて計画的にやっていこうと考えております。

○小松委員 お伺いしておりますと、このバリアフリーが十分できていないということもやはり障害になっているやにうかがえます。古いものはこれ以上直せないということで、校舎の改築等に合わせということですが、ぜひこれらを早急に進めていただきたいということを申し上げておきます。
 一方、一般の公共職業能力開発施設において受講困難な重度障害者等に対しては、障害者職業能力開発校があるわけです。小平にあります東京障害者職業能力開発校の修了、就職状況、率、これが近年どのように推移しているか、伺いたいと思います。

○梅津職業能力開発部長 近年というご質問でしたので、決算の年度である十年度を軸にしまして、平成七年度からの数字をお答えさせていただきます。
 障害者校の修了、就職状況の率でございますけれども、まず修了率ですが、平成七年度が七八%、八年度が八〇%、九年度が八〇%、十年度が七七%、十一年度が六三%でございます。
 また、就職率につきましては、平成七年度が六四%、八年度が六四%、それから九年度が六四%、十年度が五四%でございます。

○小松委員 修了率も少々落ちておりますし、また就職率についても、この決算年度で落ちているということです。
 それでは、応募と入校の状況はどうなっているでしょうか。

○梅津職業能力開発部長 障害者校におきます応募と入校の状況でございます。募集定員二百三十人に対しまして、平成七年度が、応募者二百九十六人、それに対し入校者百七十四人。八年度は、応募者三百三十二人、入校者百八十三人。九年度は、応募者三百八十六人、入校者百九十八人。十年度は、応募者二百九十四人、入校者百七十四人。十一年度は、応募者三百五十五人、入校者百七十九人。十二年度は、応募者四百八人、入校者が百九十三人ということでございます。

○小松委員 伺っておりますと、応募者がどんどんとふえている。にもかかわらず入校者は余り変わらない。これは大変なことですね。先ほどの冊子には、障害者職業能力開発校において、障害者の特性や程度に配慮した訓練科目の設定などを推進している、このようにいっているわけですけれど、修了、就職率が低くて、応募者を定員いっぱいまで受け入れることができないというのは、障害者校の訓練のあり方、これが、障害者の受講ニーズや企業の求人ニーズにマッチしていないといっていいのかどうか。ミスマッチがあるのではないかと思われますが、いかがでしょうか。

○梅津職業能力開発部長 障害者校の修了の率や就職率が、ご指摘のとおり、近年下がってきているということはございます。私ども、大変深刻にこれを受けとめ、いろいろ検討しているところですが、まず、訓練のあり方という点では、現在の訓練科目のうち、いわゆる技能系の科目というのが、どちらかといいますと、これまで公共訓練の中心であったわけですけれども、これについては、希望者も少なく、欠員が生じてきているということがございます。
 一方、応募者が大変多いのが、事務、情報系の科目でございます。この需要に十分こたえるためには、訓練内容やその規模、両面で抜本的な改善をすべきだという認識は、私どもも非常に強く持ってきております。
 また、就職面からも同じような状況が近年あらわれてきておりまして、例えば、先ほどもご質問の中にございましたが、平成十年度の東京都の障害者就職相談会の求人ニーズを分析いたしますと、企業の求人ニーズも、事務系、情報系の業種が約八割ぐらいを占めてきている。しかも、何といいますか、企業側はしっかりした技能を求めてきている。十分な戦力としての人材を求めてきている。説明が難しゅうございますが、そういうふうに近年変わってきております。
 そういう意味で、私どもとしては、障害者校の科目の見直しについて、大変重要な課題であるというふうに認識し、現在、鋭意検討しているところでございます。

○小松委員 よくわかりました。ぜひ鋭意検討を進めていただきたいのですが、ところで、現在の障害者訓練につきましては、この施設整備面なんですけれど、例えば実習棟と宿泊棟を結ぶ渡り廊下、または駐車場に屋根がないんですね。特に、屋根のない駐車場というのは、私どもでも、雨の日は、傘を開いたり何なり、大変困難するわけですけれど、車いす障害者にとっては大変に酷ではないでしょうか。車をおりて、トランクの中の車いすを出して広げて、そして訓練棟または宿泊棟、どちらに行くにも、あれはどのぐらいあるでしょうかね、百メートルか二百メートルか、この間すべてずぶぬれになることもあるのじゃないでしょうか。
 このほか、実習棟自体が大分老朽化しております。受講者や職員から改善要望が寄せられているということですが、いかがでしょうか。

○梅津職業能力開発部長 障害者校につきましては、大変老朽化してきている棟などもございます。建てかえを進めることが課題となっておりまして、今、全面的な検討を進めているところでございます。
 ただいまのご質問にございました、屋根つきの渡り廊下や駐車場というのは、私も、自分の年老いた母を、車いすをおろして、それから置いて、乗せて、建物の入り口に行くまでにずぶぬれになった経験がございますので、ご指摘いただき大変恐縮に感じております。
 これらのことについて十分検討して、具体化していきたいと思いますが、ただ一言つけ加えておきますと、ご案内のとおり、この障害者校というのは国立・都営の施設であるため、施設や科目内容を変更するとなると、私どもの方から国に要望をして、国の方も、全国に幾つか持っているものの順番みたいのがあって、そういうような施設整備はなかなか難しい面もございます。ですが、ただいまご意見ございました点につきまして、国に強く要望して、実現できるよう努力をしてまいりたいと思います。

○小松委員 要するに、施設整備も科目についても、あり方そのものも含めて、現在の障害者訓練については、総じて抜本的改善が必要と思われるのですが、今後どのような方向で進めていくのでしょうか。

○梅津職業能力開発部長 障害者訓練のあり方につきましては、これまでも、常々検討を進め、科目などの改善を図ってきたところでございます。
 しかしながら、この数年、やはり社会環境や経済環境が非常に急激に変わって、そのスピードが物すごいものがあるというふうに認識をいたしております。したがいまして、私どもの検討が、そうした社会の変化のスピードに追いついていないのではないか、スピードに少し追い抜かれているのではないかという危機感を持って、今検討を進めているところでございます。
 できるだけ早く都としての考え方をまとめ、国の予算確保ができるよう、順次取り組みを進めていく考えでございます。

○小松委員 そうですね。いっときも早く具体的な要望を国に提案していただきたい。そして、そこでぜひ、現場職員とか障害者など利用者の意見を十分に取り入れる。というより、これらの方々も参加をして、重度障害者にとって喜ばれ、役に立つ能力開発校づくりを目指すことを求めて、質問を終わります。

○植木委員 十年度の決算の中で、特に中小企業について十年度が一体どうだったのかということを、大枠で質問したいというふうに思います。短時間、限られた時間ですので、十分に言葉を尽くせるかわかりませんが、三つお聞きしたいと思います。
 先ほど来、中小企業は、今の状況の中では本当にまだまだ厳しい、そういう意味では、労働経済局にもっと頑張ってほしい、これまでも頑張ってきたけれども、より一層頑張ってほしい、そういう声があったと思うのですけれども、この十年度の決算を前後して、東京都の中小企業政策そのものが変化しつつあるのではないかと、私はこの十年度の決算とその後を見て思うわけなんです。
 九年に財政健全化計画が発表されて、具体的な見直し事例が列挙されて、全体としては、福祉なんかが大きな論議になって、その問題も、全体としては、見直しにある程度歯どめがあったんですけれども、労働経済局関係では、二つの見直し項目が出されてきた。一つは中小企業振興基金、いわゆる果実活用型の事業の見直し、それからもう一つが中小企業の制度融資の見直し、こういうことだったと思うのです。
 その点で、融資制度からまずお聞きしたいんですが、当時、この融資制度の見直しと、同時に、先ほど来お話にあった安定化保証制度が同時に行われた、こういう時期だと思うんですね。それで、このときに出された中小企業融資制度の再編統合化と、同時に、政策的誘導型融資として環境リサイクルなどへの対応資金融資、それから、新しいベンチャー企業などを対象とした製品・事業開発等支援資金融資、この二つが打ち出されたと思うんですけれども、この事業実績についてまずお示し願いたいと思います。

○山本商工振興部長 平成十年度の制度融資の見直しの中で新たにできた環境・福祉・資源リサイクル等対応資金融資及び製品・事業開発等支援資金融資の融資実績についてのお尋ねでございますが、いわゆる資源につきましては十七億円、製品につきまして五十九億円ということでございます。

○植木委員 では、あわせて、それがその後ふえているのかどうか、お示し願いたいんですが。

○山本商工振興部長 その後ということでございますので、十一年度ということでございますが、十一年度については、資源につきましては約十三億円、製品については五十八億円と、ほぼ横ばいでございます。

○植木委員 減っているのと、ほぼ横ばい。いずれにしても、総体としては減っているわけですね。これは、もっと期待をしてということだったんだろうと思うんですが、まあ、もちろん初年度はなかなか難しいというのがあって、かといって、二年度は伸びていない。これはどうして伸びなかったのか、考えを教えてください。

○山本商工振興部長 この二つの融資制度でございますが、新技術、新製品開発などの積極的な取り組みや、環境負荷の軽減に役立つような事業活動を支援するということで、都の制度融資の中でも最も長期かつ低利な資金を供給するということでやったわけでございます。
 残念ながら、このような有利な条件にもかかわらず、この二つの融資実績は、当初設定した目標に達しなかったわけでございますが、基本的には、大変残念ですが、長引く景気の低迷によりまして、やはり技術開発に対する意欲の冷え込みというのが根っこにあったのではないかというふうに思っております。
 それから、この制度は、十年度からということでございますが、十年度の半ばから中小企業金融安定化特別保証制度、これができたわけでございます。設備投資の冷え込みの中で、貸し渋りということで、企業の皆さん、特に運転資金融資、これが大変資金需要が高かったわけでございますが、こういったものは恐らく金融安定化特別保証がカバーしてしまったということではないかと思います。
 ちなみに、金融安定化特別保証につきましては、十年度創設当時から半年間で三兆四千五百億円という、一年間の信用保証協会の保証規模の二兆というのの、大体一・五倍にも相当するようなものが半年間に出たということが、大きな事情ではないかと思います。

○植木委員 つまり、資金繰りなど、中小企業の実態が、そういう政策誘導型という実態になかなかなっていない。しかも、国の安定化保証ができて、全体としては資金運用型を望んでいる、ニーズがそちらにあった、そういう状況だと思うんですね。
 ところが、財政健全化では、新技術開発や創業支援など、中小企業の振興策と連携した制度に特化すると、つまり、軸足をそっちに移すんだよ、こういうふうにいっていたわけですけれども、現実はそうはいっていない。中小企業の実態はそういうことだというふうに思うんですよね。
 ですから、私は、特化するっていう――もちろん創業支援だとか新技術開発は、これは長い目で見て応援していかなければならないんだけれども、制度融資をそういう形で特化していいのかというのは、やはり中小企業の実態から見て必ずしもそぐわない。あるいは、そういう状況を判断しながらやっていかなければならない、そういう問題ではないかなというふうに思うんですね。
 それで、お聞きしますけれども、一つは、特化する、こういうふうにいってきたわけですけれども、十年度で、これは二つを統合したんですか。それが一つ。
 私は、そういう意味で、資金運用型の今の都民のニーズ、それから、先ほどもお話が出ましたけれども、国の安定化特別保証を引き続き来年度にも延ばしていく。これ、放っておけば、恐らく単年度で終わっちゃうと思うんですね。だから、放っておいたら、やはり今の実情に合わないと思うんです。そういう意味で、ちょっとあわせて質問してしまったんですけれども、そういう特化するというやり方だけでは、今の実情に合わないのじゃないかと。
 それから、じゃ、東京都はなぜ、特化するといっていながら、二つを一つにしてしまったのか。
 それから、やはり資金運用型の今のニーズに合った東京都の制度そのものを重視していかないと、安定化保証もいずれは――来年度にも延ばしてほしいという要望を国にしていただきたいわけですけれども、いずれは、都としての制度をきちっと確立しておかないと、やっぱり都民のニーズにこたえる都の施策から外れてしまうのじゃないかというふうに思うんですが、あわせてお答え願いたいと思います。

○山本商工振興部長 財政健全化計画に係る見直しにつきましては、今、先生おっしゃったように、政策誘導型に特化するということが挙げられておりますが、あわせて、自力で民間金融機関と取引のできない中小企業については必要な配慮を行うという形で、小規模企業者向けの長期融資については枠も広げてきているところでございます。
 それから、まず、安定化につきましてでございますが、これまで申し上げてまいりましたように、一年の延長ということは決まっております。そういった中で、中小企業の資金ニーズを見きわめながら対応していくということでございまして、当初の半年間と比べますと、その後の一年というのは、安定化に対する資金ニーズも極めて安定的に推移してきております。いずれにしましても、延長しまして、この四月から新たな一年間が始まったわけでございます。こういった実施状況を見ながら対応してまいりたいというふうに思っております。

○植木委員 特化するということもいっているけれども、そうでないのもいっているよということなんだけれども、特化するというのは、見直しの中心的な表題、課題だったんですよ。だから、僕はそのことをいっているのであって、そういう先を見越した制度も必要だけれども、都としての制度の充実というのがやはり軸にないとまずいのじゃないか、こういうふうにいっているんですけれども、改めてお聞きしたいと思います。

○山本商工振興部長 先ほど申し上げましたように、都の制度融資の組み立てにおきましては、小規模向けの金融融資というのは大変重要なものだと思っております。したがいまして、この点については配慮しながら、我々として政策誘導をどうしていくかということでございます。
 先ほどちょっと答え忘れたところがございます。二つを一つに統合したのかというお話がございました。
 今年度、平成十二年度につきましては、この環境・資源と、製品につきましては、技術力、事業革新等対応融資という形で、技術力を評価するような仕組みを設けた形で、一定の評価された中小企業者については、無担保の枠、上限の枠を拡大するというふうな方向で、より高い政策誘導という観点から見直しを行ったところでございます。

○植木委員 改善は非常にいいと思うんですよね。だから、それをやると同時に、やはりきちっと今のニーズに合わせた政策展開をといっているわけですよ。一方で極度融資の方は今年度廃止をしてしまっているというような例もありますから、やはりそのことは強調しておかなければいけないというふうに思います。
 それから、二点目は、中小企業振興基金を含む果実活用型の事業の見直しについてですが、十年度に一定の見直しがあったと思うのですけれども、前後して五年間ほど、七年度ぐらいから、この事業の実績、事業費がどういうふうに推移しているのか、お示しいただきたいと思います。

○中澤商工計画部長 中小企業振興基金事業の予算額についてでございますけれども、事業費ベースで、平成七年度が二十五億円、平成八年度が二十二億円、平成九年度が二十億円、平成十年度が十六億円、十一年度が十四億六千万円となってございます。

○植木委員 今の推移の中で、この十年度の変化というのはどういうものなんでしょうか。

○中澤商工計画部長 平成十年度におきましては、助成事業のメニューをわかりやすく集約いたしました。それとともに、一般会計からの充当がなくなったということがございました。

○植木委員 つまり、一般会計からの充当がこの年度でなくなったわけですよね。全体として、果実型ですから、金利がずうっと下がってきて、一時は八%とか五%とかね、四%という時代もあったんだけれども、もうとことん下がってきちゃって、金額もだんだん下がってきた。しかし、この事業は非常に重要な事業だと。四百億円の基金、その金利を活用するというこの仕組み、それから、中小企業に対して、経営環境の変化に伴う中小企業支援とか、商店街の未組織支援とか、そういうニーズにこたえるための施策として重要だということで、一般財源を入れてきたんだけれども、この年度に切ってしまったわけですね。
 ちょっとお聞きしますけれども、この事業が、では需要がなくなったのか。私は先ほど重要だといっているんですけれども、この事業について、申請が出されている件数と、実際の助成がどのくらいの件数になっているのか、お示しいただきたい。

○中澤商工計画部長 基金事業の申請及び助成件数でございますけれども、平成八年度、申請件数が三百四十九件、助成件数は二百十八件でございます。同じく九年度は、申請四百十五件、助成件数二百四十九件。平成十年度は、三百四十二件の申請、助成件数は二百三十九件でございました。

○植木委員 つまり、需要はたくさんある、しかし、いろんな理由でもって件数が実際には低くなっているということなんですけれども、私は、こういう需要があるならば、東京都として、この基金事業の中で行われるこうした事業について、もっともっと重視してもいいのじゃないかというふうに思うんですが、都としての考え方をお示しいただきたいと思うんです。

○中澤商工計画部長 中小企業振興基金は、産業構造の転換等、経済社会環境の変化に対する中小企業の円滑な対応を促進するために設置しているものでございまして、その事業については、その時々の社会情勢や中小企業のニーズに合わせて的確に実施をしてまいりました。今後とも中小企業振興のために重要な施策であるというふうに考えてございます。

○植木委員 だとすると、私は、もっともっとこの施策として、一般財源を十年度切ってしまったんだけれども、工夫や、重視した施策を加えていくとか、改善をしていく必要があると思うんですね。
 この事業は、商店街などで、法人化できない未組織商店街などへの助成として非常に活用されたり、それから、中小企業同士がグループ相互の新技術の開発をするための研究事業などに使ったり、情報のネットワークに使うとか、本当に中小の、特に零細のところが活用しやすい制度として行っているわけなんですよ。
 私たちは、こういうのは基金事業だと不安定だから、一般財源で行っていくのが本来の筋だよと前々からいってきたんだけれども、まあ、今それをいっても、すぐそういうふうになるというわけではありませんから……。
 しかし、今お話があったように、需要もある、施策も重要だというのだとすれば、やっぱり一層充実する方向性を追求していく。財務局が何というかわからないけども、やっぱり中小企業の立場に立っている皆さんが頑張らないとできないわけですから、ぜひ充実していくということや、それから、申請で、基準に合うものが本当に可能な限りパスできるように。基準に合わないのはちょっと別ですよ。やっぱり基準に合うものができる限りパスするように、少しでもこの実績をふやす。
 それから、年の最初だけで受け付けたら、あとはもう、それで年間計画だからだめだよということじゃなくて、そういうのも柔軟に対応していく。これは前から私たちもいっていましたから、もし改善されているとするなら、その改善がどうなっているかということも含めて、そういった改善をして、一つは、目いっぱい事業を使えるようにする。それから、さらに事業を拡張することも含めて、今後考えていってほしいと思うのですが、いかがでしょうか。

○中澤商工計画部長 中小企業振興基金につきましては、中小企業者の新たなニーズに合わせまして、平成八年度においては、省エネ・リサイクル助成事業及びISOシリーズの取得事業等を新設して、充実を図ってまいりました。
 また、平成十年度におきましては、先ほども申し上げましたが、助成事業のメニューをわかりやすく集約してまいりました。
 また、今ご指摘がございましたように、予算の残があるような場合、一定の点数以上の場合は追加合格をするなど、あるいはまた、受け付けにつきましては、年度が始まる前から、前年からPRいたしまして、実際のその受け付けは一月ぐらいからやるとか、そのようにいろいろな工夫をして、できるだけ中小企業の方々が利用しやすいもの、意義のあるものとして活用できるように進めてきたところでございます。
 今後とも、その時々の社会情勢、中小企業のニーズに的確に対応するように見直すとともに、利用しやすい制度として充実に努めてまいりたいと思っております。

○植木委員 改善されたということですから、ぜひ今後もしっかりとやっていただきたいというふうに思います。
 いずれにしても、財政健全化で出された融資を特化していくということや、基金事業への一般財源をやめてしまう、ここがやっぱり大もとだったわけですよね。ですから、そういうのに対して、やはり労働経済局として今後も粘り強く、そこのところを充実拡張できるように努力していただきたいというふうに思うんです。
 もう一つは、この十年度に新たにできたのが、元気を出せ商店街だと思うんですね。この年度にスタートしたわけですけれども、この実績についてはどのように推移しているでしょうか。

○山本商工振興部長 元気を出せ商店街事業の十年度の実績でございますが、五百十五件、六百九十二商店街に対し、四億五千六百万円の助成を行ったところでございます。

○植木委員 この制度は、もう既にいろいろ論議されておりますから、細かいことは私もういいませんけれども、いずれにしても、現実に商店街が持っている課題というのは、いろんな角度から本当に大変だと思うんですね。
 特に今、大型店などが時間延長をする、そういう中で、近隣の商店の中で、競合しないところはまだいいけれども、競合するところは大変な思いをするとか、いろんなことがあるわけですね。時間延長の問題が、今もう六月を前にしていろいろ出てきている。それで、商店の中では、それに対抗して自分たちの努力をするとかというのが始まっているわけですよね。そういう意味では、元気を出せ商店街というのは、まだまだ活用のニーズはあると思います。
 それから、私もう一つ思うのは、品川の中延商店街へ去年ちょっと視察に行ってきたんですけれども、ここでは、非常におもしろい角度から自分たちで努力しているんですね。個店の繁栄というものを、個人の問題という範囲にとどめないで、商店街としてどうにぎわいをつくっていくかという角度から支援しようじゃないかということが、これは自分たちの努力で始まってきて、行政も、その中で成果が上がるにつれて、一定の支援をするというような動きになってきたわけです。
 もちろん、個店ですから、いろいろ限界や、それから慎重な配慮というのは必要だと思うんですけれども、そういう大型店の影響を受ける商店とかいろんな商店を、商店街として考えた場合にどうしたらいいかという中で出てくるものとすれば、やはりそういう個店対策も一つの視野に入れるべきではないかと。
 ですから、元気を出せ商店街を一層充実するということと、そういう視野に入れるべきではないかと、この二点についてどうでしょうか。

○山本商工振興部長 東京都は従来より、いわゆる商店街対策に加えまして、個店対策としても、経営診断、各種相談、融資などを実施し、商店経営に対する支援を行ってきたところでございます。
 また、十一年度からは、これまで中小企業の法律では、個別企業対策というのは極めて少なかったわけですが、中小企業経営革新支援法というのができまして、まさに個別商店も含んだ個別企業に対して、経営革新計画を認定することによってさまざまな措置が受けられるような制度が入ったわけでございます。
 いずれにしましても、商店街の問題は、商店街そのもの、個店の問題、それから地域づくり、まちづくりというより大きな枠組みも含めて考えていく必要があると思っております。東京都といたしましては、ことしの一月に東京都の商店街のサミットというのを開いたわけでございますが、サミットでの議論を踏まえた形で、ことし一年間、二十一世紀に向けた商店街のビジョンづくり、商店街振興プランというのをつくっていくという中で、商店街の対策についていろいろ考えてまいりたいというふうに思っております。

○植木委員 ぜひその点を努力していただきたいというふうに思うんです。
 それから、十年度でもう一つ大きな問題として出てきているのが、財政健全化計画で、先ほどいったように二つの点が見直しになって、それ自体はいろいろ問題はあった。さらに加えて、十年度に「生活都市東京の展開 改訂重点計画」を出された。この中でも産業政策の転換が打ち出されたと思いますが、細かい部分を述べると時間が長くなるでしょうから、簡潔にお示し願いたいと思うのです。

○中澤商工計画部長 平成八年十一月に策定されました東京都財政健全化計画では、施策見直し対象事業として、中小企業制度融資が例示されております。
 その後、平成九年八月に示されました東京都財政健全化計画実施案では、新しい時代に対応した産業政策の展開といたしまして、ISO一四〇〇〇への対応など環境への配慮を進める企業への支援、また、情報通信、福祉関連産業等、次世代のリーディング産業の振興について述べてございます。
 代表的な見直し項目では、果実活用型基金事業として中小企業振興基金、中小企業制度融資等として制度融資の見直し、及び中小企業施設改善資金融資あっせん事業の制度融資の統合が示されてございます。
 さらに、十年度に策定いたしました「生活都市東京の展開 改訂重点計画」では、都内中小企業が、現下の厳しい状況を乗り越えて二十一世紀に向け安定的な発展を遂げるためには、社会環境の変化に対応した新しい産業分野の成長や地域産業の活性化を促す取り組みが必要としておりまして、重点課題として、起業家や創業間もない事業家が新たな事業を展開しやすい環境を整えるなどの、明日を切り拓く創業の支援、厳しい状況に置かれている東京の産業に活力を与え、将来、都の経済の牽引役となると期待されているリーディング産業群の振興、東京の産業が国内外で競争力を持ち発展していくよう、技術力向上や製品の高付加価値化に取り組む意欲ある企業を支援する、製品開発と市場開拓への支援などがございます。

○植木委員 二つの計画を丁寧にお話しいただいたわけですが、この中でやっぱり、先ほどもいったように、特化していくという傾向が出された後、起業家や創業支援だとかという形を強調してきた。それ自体は別にいいんですが、その後ずうっと施策の展開が変わってきているんですね。
 例えば、東京都が危機突破・戦略プランを去年出しましたけれども、これは決算とは違いますから、中身は質問しませんけど、この中で、中小企業を一様に保護育成する産業政策から、すぐれた発想力や技術力を生かした計画支援、創業など、中小企業や起業家の意欲ある取り組みを支援する産業政策へ転換していきます、こういうふうに明確に述べて、転換を図ってきたきっかけになっているわけですね。
 それに前後して、中小企業基本法でも、中小企業を弱者として画一的にとらえるのではなくてということで、機動性、柔軟性、創造性を発揮し得る中小企業の強みを、我が国の経済のダイナミズムの源泉ととらえて、積極的な役割を期待していくという形で、中小企業は弱者というふうなとらえ方だとか、中小企業を一様に支援していくというやり方が何かいけないかのように、そういうふうにこの、十年度を境にしてずうっと変わってきやしないかという思いが私はしているんですよね。その言葉としては、そういうふうになってきているわけです。
 だから、私は、そういうのではなくて、国の経済の大半を支えている中小企業がやはり大事だということでの都としての力を、より一層進めていただきたいと思っているわけですが、そういう中で、現実にはどうなっているかというと、それに前後して中小企業予算がどっと減ってきているわけですね。減ってきている。
 具体的な数字として、中小企業の財政フレームを示していただきたいわけですが、融資関係は先ほど質問しましたから、融資関係とか臨海関係、これはちょっと別扱いにしていただいて、除いてお示しいただきたいというふうに思います。

○鎌形総務部長 お話しのように計算いたしますと、平成七年度は三百八億三千三百万円、平成八年度は二百七十八億三千六百万円、平成九年度は二百五十億三千四百万円、十年度は二百五十四億二千万円でございます。

○植木委員 パーセンテージでといわなかったですか。

○鎌形総務部長 パーセンテージのご質問はなかったので、省かせていただきました。
 この計算した金額が一般会計全体に占める割合は、平成七年度は〇・四四%、八年度が〇・四一%、九年度は〇・三八%、十年度は〇・三八%となっております。

○植木委員 パーセンテージとはいわなかったですけど、全体の財政フレームの中に占める割合はどうかという形でいいましたのでね。
 いずれにしても、中小企業予算が減ってきているということは事実なんですよね。やはりこの年度を境にしてずうっと減ってきている。僕は、リーディング産業群の振興というのはもちろん大事だと思いますけれども、中小企業全体というのを先ほどいいました。
 それで、本来ベンチャー企業というのも、中小企業全体に蓄積された技術や情報、あるいは人脈に支えられて形成されてきたものの中から生まれてくる、そういうものとして、やはり東京都の施策を、既存の中小企業を大事にするということをベースにしながら、その上にそういう施策を展開するというような、基本をきちっと据えていただきたいというふうに思うんですよね。そうしないと、特化していくという考え方がもしずうっと続いてきて、中小企業一般は弱者みたいなことで、そこにはやらないんだということで転換しているということは、やっぱりおかしいと思うんです。
 私は、中小企業を本当に皆さんが熱心にやっていらっしゃる、その立場から、東京の産業政策をやる場合に、そうした立場で、産業実態に合った工業活性化事業だとか、地域産業あるいは小売業、地場産業、こういうものをきちっと、皆さんも重視しているとは思うんですけれども、一層重視していただきたいというふうに思うものですが、いかがでしょうか。

○中澤商工計画部長 都の産業の太宗を占めます中小企業は、東京の経済の活力の源泉でありますし、地域活性化の源泉であるというふうに認識をしております。
 都といたしましては、国が中小企業基本法の改正により示した政策転換と同様な考え方のもとで、小規模企業に配慮しながら、意欲的に技術革新や経営革新に取り組む中小企業を積極的に支援して、産業構造の転換と雇用の創出を図っていきたい、こういうふうに考えてございます。

○植木委員 一言だけ。
 そういう零細企業、中小企業を本当に守ってほしいということですね。
 それで、十年度はそういう状況でありましたから、いろんな施策の展開が始まった時期だと思うので、今後とも注視しながら、より一層充実のために全力を挙げていただきたいというふうに思います。

○清水委員 農林水産費の決算について伺います。
 東京の農業は厳しい中でも頑張っているという質問は、何人かの委員からされてまいりましたので、改めて述べることはやめますが、私も、地元の八王子で努力されている多くの方々、苦労されている多くの農家の方々の実情を見て、この間、実感してきたところです。出されている要望は多数あるわけですけれども、きょうはほんの何点かにわたって伺います。
 まず、平成十年度の農林水産費の予算は、前年度に比べて九・七%の減少になっていたわけですけれども、結果、どのような事業に影響があったでしょうか。

○江口農林水産部長 平成十年度の予算につきましては、財政健全化計画を進める中で、投資的経費の全庁的な削減方針に基づきまして編成されたものでございます。前年度予算に比べまして減少した主なものは、水産物流通活性化対策事業や治山事業、林道整備事業など、施設整備関連の事業となっております。

○清水委員 先ほどの資料の提示のときにも、農業分野は多少頑張っているけれども、畜産業、林業、水産業は厳しいというご説明が、資料説明でございました。
 そういう中で、今、減少されたのが、治山事業ですとか、林道整備ですとか、投資的経費といっても、やはり減らしてよいものと、減らしてはならないものがあると思うんですね。そういう意味では、労働経済局は努力されていると思いますけれども、全体の流れの中でそういう結果になったと思いますが、治山事業、林道整備というのは、今、林業は本当に持ちこたえなければならない施策なわけですから、こういう点で影響が及んでいくということ自身やはり問題であったと思いますし、労働経済局自身の予算を本当に大きく確保するために、今後とも努力をしていただきたいというふうに思います。
 具体的な問題で幾つか伺います。
 苗木の生産供給事業について、先ほど資料のご説明がありました。この問題については、農業委員会の方々とか、本当に大変――先ほど、市街化地域の農地の確保のために大変役立っているという説明がありましたけれども、これを確保してほしいという要望があったわけです。その点で、十年度までの水準は維持されているというふうに思うわけですね。これをやはり維持していただきたいというのが結果だったわけですけれども、その後減少してきてしまっているというふうに考えるわけで、これを水準を維持していただきたいというふうに思うわけです。
 また、新しい緑化対策として、屋上緑化とかビル緑化など、需要が注目されていると思うんですね。そういう意味では、苗木の供給の問題とか試験研究などの対応というのは、どのようにされてきているのでしょうか。

○江口農林水産部長 これまで、東京の緑を回復するために、屋上緑化を含めまして、公共施設等における緑化苗木を、事業部局のご要望に応じまして供給もしてまいりました。
 今後も、緑豊かな都市づくりを進めるために、公共施設等における屋上緑化やビル緑化などの新しい需要に対し、それにふさわしい苗木の供給をしてまいりたいと考えております。
 現在、農業試験場におきましても、人工地盤におけるコニファー等の適応試験なども実施しておりますので、これらの栽培技術の情報などにつきましても、積極的に提供してまいりたいと考えております。

○清水委員 今ご説明のありましたコニファーの試験などをいただきまして、ああ、先、先の研究をされているなというふうに実感いたしましたので、これがぜひ拡大につながるように努力をしていただきたいと思いますし、今後、水準を維持していただきたいというふうに思います。
 次に、鳥獣害対策についても、繰り返し多くの議員が質問をしてきたので、改めて細かくいいませんけれども、地元からいうと、私自身も、五年以上にわたって農家から相談を受けて取り組んできた者です。
 都議会でこの獣害対策の問題が取り上げられたときに、東京に猿が出るのかということで、最初は大きな話題になったということを新聞で見たわけですけれども、それが今日では、局長にも、猿がどんなえさをとるとかいう生態もよくご承知いただくようになったというふうに思うわけです。それだけ深刻にもなっているという証明だと思うんですね。
 私自身も、はぐれた猿に直面したこともあります。それから、数十匹の猿が畑を荒らしているところを、近くの方がビデオに撮って、それを持ってきてくれたということも、間近に見まして、一層深刻になっているというふうに考えるわけですけれども、きょうお示しいただきました資料では、獣害対策事業の実績ということで、平成十年度まで三年間の実績をいただきました。今後これがどういうふうになっていくのかだけお伺いいたします。

○江口農林水産部長 獣害対策の取り組みとしましては、平成十一年度に東京都獣害対策基本方針を策定いたしました。
 本年度、平成十二年度は、これまで実施してまいりましたモデル対策事業の成果と生息実態調査の結果を踏まえまして、獣害対策協議会において、猿並びにシカに関しての被害防止策を具体化するための検討を行い、獣害対策基本計画を策定してまいりたいと考えております。
 この基本計画に基づきまして、平成十三年度以降、地元市町村との緊密な連携のもとに、野生鳥獣との共存を図りつつ、効果的な対策を講じてまいりたいと考えております。

○清水委員 次に、平成十年に、内閣総理大臣の諮問機関であります食料・農業・農村基本問題調査会が答申を公表しました。そこでは、中山間地域などへの公的支援策として、中山間地域への直接支払いが有効な手法であるといい、取り組みが始まったと思います。
 この制度についての考え方、仕組みを簡単にご説明ください。

○江口農林水産部長 中山間地域等において農業生産の維持を図りつつ、多面的な機能を確保する観点から、同地域における生産条件の不利を補正するため、直接支払い制度が創設されたものであります。
 その仕組みとしましては、中山間地域において五年以上の営農と耕作放棄の防止を内容とする集落協定締結を条件に、例えば、農地の傾斜度が八度以上十五度未満の畑の場合は、十アール当たり年額三千五百円を支払うものでございます。
 なお、同制度の事業主体は市町村となっておりまして、経費の負担は、国が二分の一、都及び市町村がそれぞれ四分の一ずつとなっております。

○清水委員 対象地はどのようになっているのか、お伺いいたします。

○江口農林水産部長 現在、都内の市町村におきましてこの制度の導入を予定しておりますのは、八王子市、あきる野市、大島町、八丈町、三宅村及び青ヶ島村の六市町村となっております。

○清水委員 これから始まる制度のようですけれども、今ご説明ありましたように、十アール当たり年三千五百円ということで、実際これがどういうふうに役立っていくのかということは、これからの問題だと思います。
 また、傾斜地がそういう畑というのは、ほかにももっと町村にあると思いますが、町村がそれにまだ手を挙げないということには、いろいろな問題があると思います。やはりその単価の問題もあると思いますので、今後、効果を見ながら充実していただきたいというふうに思います。
 次の問題として、十年度に開始したものとして、木材利用推進連絡会というものがあると思います。十年五月十九日から施行されました。これには、労働経済局、財務局、建設局、教育庁、住宅局が入りまして、連絡会を設置して続けてきたと思いますが、開催実績と内容はどうだったのでしょうか。

○江口農林水産部長 まず開催実績でございますが、平成十年度に三回、平成十一年度に二回、計五回開催してございます。
 その開催内容についてでございますが、多摩産材の利用促進について関係各局に理解と協力を求めるとともに、利用推進上の問題点などの意見交換を行い、改善に努めたほか、多摩産材製品等の紹介をし、各局の公共事業における木材利用の推進を働きかけてきたところでございます。

○清水委員 先ほど、間伐の問題の十年間の資料をいただきました。
 年間の間伐量と、その利用量はどうだったのでしょうか。

○江口農林水産部長 平成十年度に間伐を実施した区域は五百九ヘクタールで、林内にある立ち木の約二割以上の樹木が伐採され、その量は、素材換算で一万一千二百立方メートルでございます。このうち、一六%に当たる千八百立方メートルが多摩木材センターに持ち込まれ、取引され、利用に供されております。

○清水委員 そうなりますと、あとの分は放置されているというふうに、全部でないかもしれませんけれども、そうなるという計算になると思います。
 林野庁が、この間伐材を有効に利用しようということで、いろいろな取り組みをされていて、林野庁の調査では、半分が使われて、残りは森に放置されているというふうに新聞記事にはあったんですね。
 そうすると、東京の場合はまだまだ、この一六%が利用されたということでは、十分ではないというふうに思うわけですけれども、利用法の試験研究や都庁内での利用の状況というのはどのようになっているでしょうか。

○江口農林水産部長 まず、間伐材の利用に関する試験研究でございますが、林業試験場におきまして、多摩地域の杉材の強度並びに耐久性に関する試験を行っております。強度につきましては、標準的な値を示しており、他県産に比べて遜色がないものとの試験結果を得ております。また、耐久性につきましても、間伐材としての活用に支障がないものと考えております。
 次に、都庁各局での利用状況でございますが、治山、林道事業において、木さくや防風垣及び土どめ等に間伐材を活用しているほか、公園事業でも、遊歩道の階段、簡易な橋などに間伐材を活用しているところでございます。

○清水委員 都庁内の利用について、林野庁の提唱の中でいくと、事務用品なども間伐材で製作できるということでは、都庁の中の何をということではありませんけれども、そういう公園の整備ということだけでなくて、あ、これが多摩産材でつくった鉛筆とか、そういうものが普及されていくことが大事なのではないかなというふうにも思います。
 主伐材の各局の利用の状況はどうでしょうか。

○江口農林水産部長 主伐材の前に、一言追加させていただきます。
 都庁内ではございませんが、私どもの関係団体であります農林水産振興財団におきまして、多摩産材の間伐材を活用しまして鉛筆もつくり、現在活用させていただいております。追加して答弁をさせていただきました。
 お尋ねの主伐材の各局の利用状況でございますが、主伐材の利用につきましては、現在のところ、住宅局が所管しておりますフォレストタウン整備事業による木造住宅団地の建設に利用されております。
 今後は、多摩産材の利用上のネックといわれております安定供給を図るために、関係団体及び関係者と協力して、供給体制の整備をし、あわせて品質の向上に努め、各局がより利用しやすい状況を整えてまいりたいと考えております。

○清水委員 具体的な多摩産材の今後の活用拡大についてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○江口農林水産部長 これまでも、良質な木材の安定的供給を図るため、間伐等の森林整備や林道等の基盤整備を、計画的、集中的に実施し、多摩地域の林業の核の育成に努めてまいりました。
 また、木材の大部分は住宅建設に使用されるため、今年度から、地域材利用推進協議会を設置いたしまして、木材業界と建設業界とのネットワーク化、並びに多摩産材の供給システムの確立に向けて具体的な検討を開始してまいります。
 今後とも、多摩産材の活用が軌道に乗るよう、政策の展開に努めてまいります。

○清水委員 具体的に進めていく場合には、例えば工務店とか設計士とか、そうした関係の方々なども含めながら進めていっていただきたいというふうに思います。
 まだ農協の合併の問題もありましたが、これは後日に回したいと思います。
 先ほど他の委員も質問されましたけれども、国では、新農業基本法を受けて、都市農業対策室を設置されたというふうに伺っています。また、関東農政局には都市農業振興室が設置されたと伺っています。
 私は先日、都市計画局において、都市計画に農地や農業を位置づけるべきだというふうに質問を行ってまいりました。今、国会では、都市計画法が改正されて、農業基本法の中に都市農業の位置づけがされたんですけれども、都市計画法の改正の中で農地の位置づけがあるのかという質問に対しては、なかったんですね。
 今、農業の振興のためには、根本的な問題として、税制の問題も一番大きなネックであると思います。そして、都市計画の問題も強くあるわけです。そういう意味では、労働経済局が、今後、東京の都市計画における農地の重要な役割を強く求めていっていただきたいというふうに要望をするわけです。
 そして、東京における市街化地区の農業振興と農地保全というためには、独自のさまざまな工夫とか取り組みをしなければいけないと思います。都市農業対策室、横の連携をとったそうした制度も設置しながら、固有の問題に対応するべきだということを主張して、質問を終わります。

○吉住委員 大分お疲れでございますので、簡単に質問いたしますけど、簡潔、明瞭にご答弁をお願いいたします。
 私は、技術専門校の再編整備についてお尋ねいたします。
 都立技術専門校は、雇用情勢の厳しい折、都民からの期待は大きなものがあるわけでございます。企業は、即戦力となる人材を求め、働く者は、資格や技能を身につけ、安定した職業生活を送ろうと努力いたしております。
 ところで、決算年度であります平成十年度には、都立技術専門校の統廃合をめぐって、議会でも活発な議論が展開されました。私も当時、経済・港湾委員会の委員であり、当委員会の山本委員長、また木内理事、そして小松理事も委員として、開催されるたびに、当時の統廃合の考え方に対して見直しを求めて審議を重ねたことは、記憶に新しいことであります。そこで、そうした経緯を振り返りながら、幾つかの点にわたって質問させていただきます。
 初めに、十年度の当初の段階で都が打ち出していた技術専門校の統廃合計画はどのような計画であったか、具体的な学校名を挙げながらご説明していただきたいと思います。

○梅津職業能力開発部長 都立技術専門校の再編整備についてでございますが、平成九年度から十年度当初の段階で、私どもが議会の皆様にご説明をいたしておりました内容は、当時、十八校一分校でございましたが、そのうち、中野校、新宿校、牛込校の三校を平成十年度末をもって廃止すること、また、青山に仮移転しておりましたお茶の水校を有明地区に仮移転することなどをご説明していたところでございます。

○吉住委員 それでは、そのような統廃合を進めようとした都の考え方はどのようなものであったか、お答えください。

○梅津職業能力開発部長 この再編整備計画につきましては、平成八年から平成十七年の十年間を計画期間といたしました東京都職業能力開発推進プランというのがございまして、この計画に基づき、改築期にあります校を軸といたしまして、校の統合による大規模化を図り、産業系の訓練を展開するんだと。それにより、企業の人材ニーズに対応した訓練を進めるということを目指したものでございます。
 また、東京都の財政が大変厳しい折、事業の効率的、効果的な展開をしていくという観点からも、推進していく必要があると考えております。

○吉住委員 大規模化のための再編整備も、財政改革の推進も理解できるところであります。都の財政再建という点からも、技術専門校の効率的運営は重要なことであります。
 しかし、もし当初の案どおりに実施されていたら、雇用情勢が厳しさを増しつつある中で、専門校の訓練の規模が縮小するということになりかねない状況であったわけです。というより、平成十一年の第一回定例会に、関連の予算と設置条例の改正案が提案されましたが、もし当初の案どおりであったら、そのまま議会で了解というわけにはいかなかったであろうと思われるわけです。
 そこで、当時の常任委員会では、単に都の案に反対するだけではなく、都民の期待にこたえるために、議会としても都民のさまざまな考え方やアイデアを出し合いながら、真剣な議論が展開されたわけでございます。そうした議論を踏まえてのことであると思いますが、最終的に提案された案はどのようなものであったか、お答えいただきたいと思います。

○梅津職業能力開発部長 平成十一年度の第一回定例会にご提案し、ご可決いただきました条例案並びに予算案の内容を簡潔に申し上げますと、第一に、廃止を予定していた中野校を、平成十二年度末まで二年間存置すること。第二に、厳しい都財政の状況下ではありましたが、お茶の水校の平成十三年四月開校に向けて建設費を計上したこと。また、存続させる中野校を中心に、中高年離職者を対象とした緊急雇用対策としての特別訓練を実施することなどでございました。
 この結果、平成十一年度の公共職業訓練については、十年度の規模を維持するとともに、さらに、定員の増枠措置や、緊急就職対策の取り組みなどを通じまして、実質的に充実を図ることができたものと考えております。

○吉住委員 そうした努力を評価して、私どもは予算案と条例案に賛成いたしたわけでございます。
 また、局では、委員会の中で各委員から出された意見や要望を踏まえて、実施段階で、当初の定員を超えたいわば増枠や、中高年の短期訓練等を、経費のやりくりをして実施し、結果として十一年度は、十年度を超える規模となったものと聞いておるわけです。局の努力とともに、委員会での審議が生かされたものと考えております。
 ところで、二年間存続させた中野校は、今年度末には廃止になるわけです。また、有明のお茶の水校は、新校舎の完成とともに移転し、廃止されるわけですが、雇用情勢はその後も改善されていないわけです。むしろこれからが正念場であります。この時期に訓練規模が縮小されるようなことがあれば、都民の期待を裏切ることとなるわけです。
 そこで、当時の議会での審議でも、中野校については廃止後も職業訓練関係で活用すべきである、また有明についても、技術専門校として存在できるよう検討すべきとの意見が出されていたわけですが、その後の検討はどのように進んでいるか、お答えいただきたいと思います。

○梅津職業能力開発部長 中野校につきましては、ただいまご意見にございましたとおり、さまざま常任委員会でご意見をいただきました。私どもも、中野校廃止後は、職業能力開発関係の事業に活用したいと考えて、ただいま具体的な方策を検討しているところでございます。
 また、有明の校舎につきましては、お茶の水校が、大江戸線の飯田橋のちょうど橋上にできる、駅の上にできますが、これができますと、それに合わせて、あそこから撤退するといいますか、廃止をするというのが現時点での考え方となっておりますが、私ども担当部といたしましては、訓練規模を縮小していくということは、今の雇用情勢の中では何とか避けたいという思いが強くございますので、この対応策についても鋭意検討しているところでございます。
 今後とも、委員の皆様方のお知恵とご指導をいただきたいと思います。

○吉住委員 当面、訓練規模の縮小は何としてでも避けていただきたいと思うわけでございます。十分ご検討いただきたいと思います。
 その際、多額の移転経費と設備整備費をかけて移転した有明を、たったの二年で引き払うというのは、いかにもむだだという感を免れないわけです。そこで、既存の施設を活用する意味から、有明の廃止を当面見合わせるべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 以上、明らかになったように、議会での審議経過を踏まえまして適切な対応がなされるよう、あえてご注意しながら、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○山本委員長 ほかに発言ございますか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○山本委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 労働経済局関係の決算に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山本委員長 異議なしと認め、労働経済局関係の決算に対する質疑は終了いたしました。
 以上で労働経済局関係を終わります。
 これをもって本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時四十五分散会

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