令和七年東京都議会会議録第十八号〔速報版〕

   午後六時十分開議

○副議長(菅野弘一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十二番笹岡ゆうこさん。
〔三十二番笹岡ゆうこ君登壇〕

○三十二番(笹岡ゆうこ君) 立憲ミネ無、武蔵野市選出の笹岡ゆうこです。
 今から二十五年前、私が中学生のときから社会人になるまでの約九年間、武蔵野市の実家で祖父の在宅介護をしていました。大好きな祖父は、パーキンソン病で要介護五の寝たきりでした。当時は介護保険導入期で、まだまだ家族介護が基本でした。母はヘルパーの資格を取得し、付きっきりで介護をし、褥瘡防止のために、私も二時間ごとの体位交換などを手伝っていました。
 今、私は、子育てと認知症の父の介護をしています。ダブルケアをしています。この間、地域包括ケアが大きく進展し、地域資源が増えてまいりました。都をはじめ、自治体の皆様のご尽力のおかげであり、感謝を申し上げます。
 誰もがいつか、様々な形で体の自由が利かなくなることや誰かのケアや支えが必要になることがあります。けれども、生きていることは尊いことだと、かつての祖父と今の父の姿から感じます。
 高齢者は尊厳が大切にされて安心して住み続けられる、子供たちは自分らしさに自信を持って羽ばたくことができる、我々働く現役世代にはもっと余白がある東京を。そんな視点で質問をいたします。
 まず、介護のことです。
 介護に携わる仕事は、介護を受ける方の尊厳を守るだけではなく、そのご家族をも支える誇りある大切な仕事です。今後、都においては、要介護認定率の高い八十五歳以上の高齢者が増加すると予想されており、介護サービスを支える人材の確保、定着は喫緊の課題です。介護職員の処遇改善をさらに進め、介護人材を確保すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 加えて、報酬引下げ、人手不足、物価高などで休止や廃止が相次ぐ訪問介護について伺います。
 訪問介護事業所が事業を継続し、必要なサービスを提供できるように都としても支援をしていくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、サービス付高齢者向け住宅、いわゆるサ高住と住宅型有料老人ホームの課題について伺います。
 平成二十八年、国土交通省によるサービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会では、サ高住での併設事業者への誘導や過剰なサービス提供、いわゆる囲い込みや地域の医療、介護サービスとの連携などに課題が指摘されています。
 本年十一月、厚生労働省による有料老人ホームにおける望ましいサービスのあり方に関する検討会においても、一部の住宅型有料老人ホームにおいて、入居者に対する囲い込みが長年にわたり指摘されているとし、囲い込み対策はもとより、運営やサービスに関する透明性や質の確保、また、事前規制のない現行の届出制の下での指導監督の限界と自治体による実態把握の難しさも指摘をされています。
 これらサ高住、住宅型有料老人ホームの課題に対し、国の動向を踏まえ、都としてどう対応していくのか伺います。
 入退院、没後の支援について伺います。
 今後、独居高齢者や身寄りのない高齢者の増加が見込まれる中、入院や施設入所、亡くなった後の家財整理や事務処理などが課題となっています。入退院、没後の支援は、高齢者の安心や意思の反映に資するだけではなく、ケアマネジャーのシャドーワークの軽減にもつながります。
 武蔵野市の福祉公社では、権利擁護センターが月二万円で、入退院、没後の支援事業を実施し、独居高齢者の不安に寄り添っています。民間事業者と比べ低額とはいえ、年金生活者の方々には負担になり得ます。
 今後、資産の少ない方に対応できる入退院、没後における支援がより一層重要と考えますが、見解を伺います。
 就職氷河期の高齢化に伴う課題について伺います。
 就職氷河期世代は、非正規経験率の高さや生涯収入の格差により、低年金や老後の資金不足が懸念されています。今後、高齢化に伴い、生活困窮の深刻化や単身高齢者の増加により孤立リスクの拡大が指摘されています。これらの構造的課題に社会全体でどのように向き合い、包摂していくか、本格的な取組が求められます。
 三重県雇用経済部は、就職氷河期世代の実態調査を行っています。都としても実態や課題を調査し、必要な対策をすべきと考えますが、見解を伺います。
 子供の権利擁護について伺います。
 子供の権利を守ることは極めて重要であり、東京都こども基本条例の第十四条では、子供の権利及び利益を擁護するための体制の充実その他の必要な措置を講ずると明記してあります。
 武蔵野市で取り組む子供の権利擁護センター、まもルームのように、安心して相談ができ、子供が権利侵害から守られる仕組みを都全体に広げていくことが必要だと考えますが、見解を伺います。
 あわせて、どのような取組を行っているのか伺います。
 中高生の居場所について伺います。
 私自身、中学生の子供の子育てをしておりますが、乳幼児期、学童期を超え、中高生になると、地域での居場所が激減すると感じます。思春期の子供たちが安心して思い思いのことをしながら過ごせる多様な居場所を地域の中に創出することが重要です。
 しかし、自治体ごとの財政状況によって取組に差が出ないよう、今後、中高生の居場所づくりに取り組む市区町村に対し、都が財政的支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 避難所としての都立学校の課題について伺います。
 発災時、多くの都立学校が地域の避難所に指定されています。地域住民が利用する避難所では、必要な物資を校内に備蓄し、速やかに提供できる体制を整えていくことが不可欠です。
 武蔵野市の公立小中学校では、ライトなどは屋外の防災倉庫に、アルファ化米などの食料は屋内の備蓄倉庫に配置し、一校当たり千六百人の市民が避難するとして、三日分の備蓄を確保しています。学校改築のときには、こうした備蓄品を置く場所をあらかじめ設計に組み込んでいます。
 一方、都立学校では、空き教室などの余裕が乏しく、備蓄品を置くスペースを校内に確保できないことがあり、発災したときに不安だという声を聞いています。学校施設は都の所管である一方、避難所の設置、運営は市区町村が担うという構造も相まって、備蓄を含む防災体制に課題を感じます。
 避難所の運営を円滑に行う上で、都立学校と地元自治体が緊密に連携していくべきと考えますが、見解を伺います。
 地域医療の確保について伺います。
 武蔵野市吉祥寺では、令和六年十月に吉祥寺南病院が診療休止となり、この十年間の間に民間病院が四院も相次いで閉鎖、休止し、計三百三十九床が失われました。人口密度が高く、高齢化も進む吉祥寺エリアにおいて、二十四時間患者を受け入れる二次救急医療機関や災害拠点連携病院に空白が生じたままになっています。市民の不安は大きく、一日でも早く救急医療や災害対応可能な病院の再建を強く望んでいます。
 都内全体でも、民間病院は赤字経営が常態化しており、地域医療の基盤が揺らいでいます。地域医療を守り支えるため、都の支援を求めます。
 本来、診療報酬の見直しなど、国の対応が不可欠とは思っています。病院経営の厳しい現状を踏まえ、都はどのような取組を行っているのか伺います。
 次に、入院医療の確保について伺います。
 国は、新たな地域医療構想の策定に向けて、都道府県向けのガイドラインの検討を進めています。今後、国のガイドラインを踏まえて、都道府県は二〇四〇年に向けた必要病床数の推計を行うこととされていますが、現行の基準病床数や必要病床数は全国一律の算定式に基づくもので、都道府県が地域の医療ニーズを一層反映できる仕組みが必要です。医療資源の状況は地域によって大きく異なり、医療ニーズも多様化しています。高齢化により医療需要のさらなる増加が見込まれる中、都民の命、健康、安心を守るため、地域の実情や特性を踏まえた病床配置が必要であると考えますが、見解を伺います。
 それでは、最後に、武蔵野市の水道事業の統合について伺います。
 地元選出の都議として、都営水道事業との統合を目指す武蔵野市と連携しながら取り組んでおります。この間、ご尽力いただいている関係者の皆様、とりわけ地域を超えて、様々なお立場から積極的に後押しをしてくださっている皆様に心より感謝を申し上げます。
 都は、武蔵野市と水道事業統合について検討を進めているところですが、進捗状況と今後について伺います。
 以上で質問を終えます。よろしくご答弁のほどお願いいたします。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 笹岡ゆうこ議員の一般質問にお答えいたします。
 介護人材の確保についてであります。
 高齢者が住み慣れた地域で必要な介護サービスを利用しながら安心して暮らし続けるためには、担い手の確保が重要であります。
 都は、介護人材の確保のため、職場体験や資格取得支援のほか、居住支援特別手当を支給する事業者への支援など様々な取組を実施しております。
 引き続き、こうした取組を進めて、介護人材の確保を図ってまいります。
 なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長坂本雅彦君登壇〕

○教育長(坂本雅彦君) 都立学校における災害時の対応についてのご質問にお答えいたします。
 都立学校において、自然災害等が発生した際、区市町村と協力して避難所の役割を適切に果たすことは重要でございます。
 地元の自治体から避難所として指定を受けた都立学校には、近くの小中学校から備蓄品を運び入れる対応となる場合もございます。
 こうした都立学校について、発災時の備蓄品の取扱いを含めた様々な取組に関し、引き続き、自治体と緊密な連携を図ってまいります。
〔福祉局長高崎秀之君登壇〕

○福祉局長(高崎秀之君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、訪問介護事業所への支援についてでございますが、訪問介護をはじめとした介護サービス事業は、介護報酬等により運営されることが基本でございます。
 都は、国に対して、事業者が事業運営を安定的に行うことができる報酬とするよう、繰り返し提案要求しております。
 また、介護人材の確保に向けまして、居住支援特別手当を支給する事業者を支援するほか、今年度からは、訪問介護事業所に対し、求人サイトへの掲載費や電動アシスト自転車、電気自動車等の購入経費を補助しております。
 次に、有料老人ホーム等についてでございますが、ホーム等の設置者がケアプランに関与し、併設介護事業者などへの誘導や過剰なサービス提供を行われるおそれがあることが国の検討会で指摘されております。
 都は、入居者が希望するサービスの利用を妨げられることがないよう、運営指導指針等に基づき、事業者を指導しております。また、ケアプランの内容を保険者である区市町村が点検する取組を支援しております。さらに、不適切な運営が疑われる場合には、区市町村と連携して指導監督等を行っております。
 こうした取組によりまして、今後とも適切に対応してまいります。
 次に、一人暮らし高齢者への支援についてでございますが、都は、資産の保有状況にかかわらず、高齢者が元気なうちに死後の対応などについて準備することができるよう、単身高齢者などの総合相談支援事業を実施しております。
 本事業では、区市町村の相談窓口の設置を支援するほか、地域のニーズに応じて独自の取組を行う場合、補助を上乗せしております。
 区市町村が地域の実情に応じた取組を展開できるよう、引き続き支援してまいります。
 最後に、子供の権利擁護の取組についてでございますが、子供の権利を尊重し、擁護するための取組を進めることは重要でございまして、都は、子供の権利擁護専門相談事業において、いじめ、虐待、体罰など、様々な悩みや訴えを受け付けております。
 また、子供の権利救済の仕組みの構築など、権利擁護の充実に取り組む区市町村への補助を行っておりまして、今後とも、区市町村と連携して取り組んでまいります。
〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) 就職氷河期世代の就職支援についてのご質問にお答えいたします。
 希望する就職ができず、不安定な就労の続く就職氷河期世代の方々が中高年となる中、都は、東京しごとセンターの就職氷河期世代向けの相談窓口において、その状況を確認しているところでございます。
 また、安定した就労に向けまして、仕事以外の相談への対応も含め、就職支援を実施しております。
〔子供政策連携室長田中愛子君登壇〕

○子供政策連携室長(田中愛子君) 中高生の居場所づくりについてでございますが、自宅以外の居場所は、子供の幸福度や自己肯定感を高める上で重要な存在でございます。
 とりわけ中高生になると、地域に安心できる居場所が少なくなる傾向がございます。このため、チルドレンファーストの社会の実現に向けた子供政策強化の方針二〇二五では、多様な子供の居場所創出に係る政策強化の方向として、市区町村等と連携した地域における中高生の日常的な居場所づくりの強化などを掲げており、これを踏まえ、適切に対応してまいります。
〔保健医療局長山田忠輝君登壇〕

○保健医療局長(山田忠輝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、地域医療の確保に関するご質問についてでございますが、都は、今年度、民間病院を対象に、緊急的かつ臨時的に入院患者数に応じた支援金を交付しております。
 また、都が行っております調査におきまして、都内病院の約七割が赤字であり、急激な物価高騰などが病院運営を圧迫していることが明らかとなりました。
 これを踏まえ、先月、診療報酬の引上げなどを求める国への緊急提言を行っており、引き続き、国の動向を注視してまいります。
 次に、入院医療の確保についてでございますが、都民が安心して医療を受けられるよう、地域の実情を踏まえ、効率的で質の高い医療提供体制を確保していく必要がございます。
 都は、国に対して、適切な入院医療の確保を目的とした基準病床数制度等について、都道府県が地域の医療動向を反映できる仕組みとするよう提案要求をしております。
〔水道局長山口真君登壇〕

○水道局長(山口真君) 武蔵野市水道事業との統合に関するご質問にお答えいたします。
 水道局と市では、令和元年度に統合に関する課題整理のための検討会を設置しまして、施設の維持管理や料金徴収システム等における業務の相違点を抽出するなど、実務的な課題の整理を行ってきました。
 昨年度からは、市の施設を直接確認する機会を設けるとともに、今年度は、新たに都と市の技術職による調査チームを立ち上げ、管路や施設の実態把握を進めておりまして、引き続き、市と緊密に連携して取り組んでまいります。