○副議長(菅野弘一君) 三十一番ひがしゆきさん。
〔三十一番ひがしゆき君登壇〕
○三十一番(ひがしゆき君) 東京都議会立憲民主党・ミライ会議・生活者ネットワーク・無所属の会、品川区選出のひがしゆきです。小さな声を届け、誰もが自分らしく輝ける社会を目指し、都議になりました。今回は初の一般質問となります。
私は、幼少期、家庭内暴力が原因で両親が離婚し、看護師として働く母に育てられました。母が私を守るために必死に働き、時間にも心にも余裕のない毎日をそばで見てきました。父から逃げるようにトイレに身を潜めた経験はトラウマとなり、今でも狭い場所が苦手な要因になっています。母の背を追うように奨学金で大学を卒業し、看護師になってからは十一年間、大学病院で命と向き合ってきました。
そして、本日、議会では初めて公に申し上げます。私は、パンセクシュアルという性的マイノリティーの当事者の一人です。パンセクシュアルは、LGBTQプラスといわれる性的マイノリティーの中でも、まだ広くは知られていませんが、人を好きになるに当たって、相手の性別や性自認に関係なく、その人自身を愛するというセクシュアリティーです。昨年には、同性のパートナーと都のパートナーシップの宣誓もしました。
制度が届かず苦しむことも、支えによって人生が変わることも、私は身をもって経験をしてきました。だからこそ、誰一人取り残さない社会にしたい、その思いで私は今ここに立っています。本日は、これまでの経験と現場の声を基に質問をいたします。
最初に、ひとり親家庭について伺います。
都内のひとり親家庭は十五万七千世帯と推計され、収入、家事、子育てを一手に担う負担は非常に大きな状態です。
都は、令和七年、東京都ひとり親家庭自立支援計画第五期を策定しましたが、現状では、公的制度があっても、忙しさや孤立の中で必要な支援にたどり着けないという課題が続いております。また、来年度からは離婚後の共同親権が導入され、家族の在り方が一層多様化することが見込まれます。
家族形態の多様化を踏まえて、ひとり親家庭を的確に支援するためには、医療機関や区市町村と連携し、さらなる取組強化が必要と考えますが、見解を伺います。
続いて、共同親権に関する都の取組について質問します。
民法改正により、親権、養育費、親子交流などのルールが見直され、両親は親権や婚姻の有無にかかわらず、子供を養育する責務が明確になりました。
一方で、共同親権下では進路選択や医療行為など重要な判断に双方の同意が求められる場面が増え、意見の対立により支援が遅れるなど、子供への影響が懸念されています。
また、DV、虐待が疑われる場合は単独親権とするとされていますが、立証は容易ではなく、家庭裁判所の人員体制にも課題があります。制度の目的は、子供の利益の確保であり、現場が混乱せず、子供の立場に立った運用が求められます。
都として、運用上の課題整理やガイドラインの整備が重要と考えますが、制度施行までに教育、医療、福祉の現場において、どのような対応を予定しているのか、それぞれ見解を伺います。
次に、DV加害者プログラムについてです。
配偶者暴力に関わる都内の相談件数は、ここ数年、約五万五千件から六万件で推移、高止まりが続いており、依然として対策が必要な状況です。
被害者支援については、徐々に行政や民間団体による取組が広がる一方で、加害者への対応については、まだ十分とはいえません。
内閣府の報告でも、加害者プログラムのニーズが示されています。
DVは繰り返される傾向が強く、被害者支援と併せて、加害者への介入を強化することが再被害防止につながると考えます。
DV加害者プログラムの拡充、民間団体、区市町村との連携強化について、都の認識と今後の方針を伺います。
次に、子供若者シェルターについてです。
虐待等により家庭に居場所がない子供、若者が必要な支援や安全な宿泊が確保できるよう、国が創設したこども若者シェルター・相談支援事業につき、都はこの秋、事業者公募を行いました。
未成年者への宿泊提供に親の同意を求める国のガイドラインは、保護の実態に合わないと考えますが、都の見解と都としての運用方針を伺います。
次に、医療従事者支援についてです。
新型コロナ対応では、多くの医療従事者が極限の中で働き、二〇二一年、二〇二二年には高い離職率が続きました。私は、チームリーダーとして勤務をしていましたが、家族への感染を恐れて帰宅できないスタッフや、保育園で医療従事者の子供は遠慮してほしいと受入れを断られたと涙ながらに話すスタッフなど、現場は深刻な状況に置かれました。
医療従事者を守ることは、都民の命を守ることに直結します。都の行動計画には、有事の際、医療従事者に生じる心身への影響を考慮し、必要な対策を講じるよう医療機関に要請するとの記載があります。ただ、これらの問題は、医療機関への要請だけでは解決しません。
都は、新型コロナ禍での対応を踏まえ、医療従事者の勤務条件向上の支援や、差別、偏見の解消に向けた都民への啓発について、どのように取り組むのか伺います。
さらに、新興感染症発生時や災害時には、より多くの看護師が求められます。有事の際に速やかに看護師を確保できるよう、平時から備えておくことが必要です。
都は、災害支援ナースや潜在看護師の確保を積極的に進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
次に、知事に性の多様性における都の基本姿勢についてお伺いいたします。
都の人権尊重条例の前文には、東京は、首都として日本を牽引するとともに、国の内外から多くの人々が集まる国際都市として発展を続けていると記されております。
知事は、これからも東京は首都として日本を牽引するという認識で、同じく前文にある、誰もが認め合う共生社会の実現、多様性の尊重、不当な差別を許さないという考えを堅持すべきと考えますが、性自認、性的指向をはじめとする諸課題に対し、今後どのように取り組むのか見解を伺います。
同性婚ができないことで、医療、相続、子育てなど、人生の重要な場面で大切な人を守れないのではないかという不安を多くの当事者が抱えています。ただ好きな人と家族として生きたいだけなのに、制度が追いついていないという切実な声も寄せられております。
私自身も同性婚の実現を願う一人ですが、都議としては、今、目の前で困っている方々の不利益を一つずつ減らしていく責務があります。
都は、令和四年に東京都パートナーシップ宣誓制度を開始しました。都のホームページには、受理証明書が面会などに活用できる医療機関が六十施設紹介されています。しかし、これは調査対象の六百三十三施設に対し一割にも満たないというのが現状です。制度が存在していても、必要な場面で当事者が使えなければ、実効性がある制度とはいえません。
さらに都内では、世田谷区、足立区、豊島区、江東区が、子供や当事者の親を含めて家族関係を証明できるファミリーシップ制度を導入するなど、制度を実態に合わせて拡充する流れが進んでいます。
そこでお伺いいたします。次期基本計画に向け、区市町村と連携をし、民間事業者や医療機関の取組状況を定量的に把握し、施策のさらなる充実に反映すべきと考えますが、見解を伺います。
最後に、浸水対策についてです。
九月十一日、私の地元品川区では、一時間当たり百二十ミリを超える集中豪雨により、立会川の氾濫や戸越銀座の浸水被害が発生しました。
下水道局では六十七の重点地区を定め、浸水対策に取り組んでいると把握をしておりますが、地域住民からは下水道工事の早期完了を求める声が寄せられています。
大規模化、頻発化する豪雨に備えるため、品川区大井地区、戸越地区における下水道の浸水対策について取組をお伺いいたします。
誰もが安心して暮らせる都政の実現のため、着実な取組をお願い申し上げ、以上で質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) ひがしゆき議員の一般質問にお答えいたします。
性自認、性的指向への取組についてのお尋ねでございました。
都は、いかなる種類の差別も許さないという、オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念が広く都民などに一層浸透した都市となることを目的といたしまして、人権尊重条例を定め、性自認、性的指向に関する不当な差別の解消や啓発等を推進いたしております。
今後とも、誰もが認め合う共生社会の実現に向けまして、条例に基づく取組を着実に進めてまいります。
なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁させていただきます。
〔教育長坂本雅彦君登壇〕
○教育長(坂本雅彦君) 共同親権の制度導入に係る対応についてのご質問にお答えいたします。
公立学校において、共同親権の導入に係る適切な対応を行うため、その仕組みに関し、事前に正確な理解を図ることは重要でございます。
このため、都教育委員会は、共同親権について分かりやすく説明をする国のパンフレット等を都立学校に配布するほか、区市町村にも提供いたしました。
今後、都立学校や区市町村教育委員会に対し、改めて内容を周知し、学校で適切な対応を行うよう促してまいります。
〔福祉局長高崎秀之君登壇〕
○福祉局長(高崎秀之君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、ひとり親家庭への支援についてでございますが、ひとり親家庭の親は、子育てと生計の担い手の二つの役割を一人で担っており、負担が大きいものがございます。また、各家庭が抱える課題は様々でありまして、それぞれの状況を踏まえた施策を展開する必要がございます。
ひとり親家庭が必要とする支援に確実につながるよう、都は、関係機関と連携して広報や相談を行っておりまして、今後とも、各家庭に寄り添い、ニーズに応じた取組を行ってまいります。
次に、ひとり親家庭支援に係る民法改正への対応についてでございますが、都は、離婚後の子の養育に関する法改正の内容を紹介する動画などを、ひとり親家庭向けのポータルサイトに掲載するとともに、今年度から離婚前後の法律相談の回数を拡大しております。
また、区市町村の相談支援員に対し、法改正の内容を盛り込んだ研修や、困難なケースへの専門的助言を開始したほか、弁護士等による養育費の専門相談などを行う区市への支援を拡充しております。
最後に、子供若者シェルターについてでございますが、国のガイドラインでは、シェルターへの入所は利用者と事業者の契約に基づくこととし、利用者が未成年の場合、民法の規定等を踏まえ、事業者が親権者の同意を得て支援することとしております。
一方、子供の身体等に危険が生じるおそれがある場合には、親権者の同意の有無にかかわらず、事業者が児童相談所を含めた行政機関と連携して対応することとしております。
都は、事業者に対しまして、ガイドラインを踏まえて適切に運営するよう求めております。
〔保健医療局長山田忠輝君登壇〕
○保健医療局長(山田忠輝君) 三点のご質問にお答えいたします。
初めに、共同親権に係る医療機関への対応についてでございますが、今回の民法等改正におきまして、父母双方が親権を持つ場合の親権行使のルールが明確化されております。
現在、国では、関係府省庁等による連絡会議において、改正法の円滑な施行に向けた環境整備や、医療現場も含めた関係機関への周知などについて議論が進められているものと承知しております。
都といたしましても、国の動向を踏まえ、医療機関等に対し適切に対応してまいります。
次に、感染症有事の医療従事者支援についてでございますが、都は、新型コロナ対応において医療従事者を支援するため、特殊勤務手当や宿泊施設の借り上げに係る費用への補助等を実施いたしました。
また、医療従事者への偏見や差別を防ぐため、ホームページなどを通じて普及啓発に取り組みました。
都は、日頃から都民や事業者に感染症への正しい理解を促すとともに、新たな感染症危機が発生した際にも、新型コロナ対応の経験を踏まえ、医療従事者を適切に支援してまいります。
最後に、災害時等の看護人材の確保についてでございますが、都は、有事の際に被災地などに派遣される災害支援ナースを確保するため、派遣元の医療機関に対し、看護師の研修や訓練、派遣の実績に応じた協力金を交付することとしております。
また、医療救護活動を行う看護職員の裾野を拡大するため、現在、看護業務に従事していない方が避難所での軽症者対応などに従事することを想定した、潜在看護師等の登録制度を今月開始いたしました。
今後とも、災害時などにおいて、より多くの人材が看護活動に従事できるよう取り組んでまいります。
〔生活文化局長古屋留美君登壇〕
○生活文化局長(古屋留美君) 配偶者暴力加害者プログラムについてお答えいたします。
被害者を保護する観点からも、加害者に自らの暴力の責任を自覚させ、再発を防止する加害者プログラムの推進は重要でございます。
プログラムの質の向上を図り、また、その担い手を増やすため、都は、民間団体や区市町村が実施する加害者向けワークショップなどへの補助を行っておりまして、今後も引き続き取組を進めてまいります。
〔総務局長佐藤智秀君登壇〕
○総務局長(佐藤智秀君) 性自認及び性的指向に関する事業者等の取組の把握についてのご質問にお答えをいたします。
都はこれまでも、性的マイノリティーの方々の職場や病院等における困り事の軽減のため、当事者や民間事業者、区市町村等に対して調査や意見交換を行い、現状や課題を把握して様々な施策に反映をさせております。
今後も、当事者が暮らしやすい環境づくりに努めてまいります。
〔下水道局長藤橋知一君登壇〕
○下水道局長(藤橋知一君) 品川区大井地域等の浸水対策についてでございますが、下水道局では、当該地域を含め、浸水リスクが高い地区を重点化し、幹線などの整備を進めております。
大井地域では、第二立会川幹線等の整備を進めており、早期に効果を発揮させるため、一部完成した区間を活用し、約三万五千立方メートルの暫定貯留を行っています。今後、事業の進捗に合わせ、貯留容量を倍増させることとしております。
また、戸越地域では、第二戸越幹線のトンネル掘削が完了しており、現在、雨水を取り込むための取水管の整備を進めております。
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