○議長(増子博樹君) 十四番細貝悠君。
〔十四番細貝悠君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○十四番(細貝悠君) 今、社会に求められているのは、人々の目線と同じ目線に立ち、人々の暮らしに真正面から向き合い、立場に関係なく困っている人に手を差し伸べられるような政治です。選挙戦では多くの声を聞いてまいりました。私、細貝悠に託していただいたその思いに責任を持ち、質問をしてまいります。
交通施策に関して伺います。
都内では、人口減少や人材不足を鑑み、バスの自動運転の導入が検討されています。いまだ自動運転の環境は整っておらず、社会実装は難しい状況です。
八月二十九日には、八王子市で自動運転バスの実証実験中に事故が発生しました。有事の際に運転手が対応する手はずになっていましたが、ハンドルが誤った方向へ曲がった直後に街路樹に衝突したため、乗務員も反応できなかったそうです。こうした中で、運転手一人の責任になることはあってはなりません。
都には、二度と事故が起きないように、事故の原因徹底究明と責任の所在について明らかにして、自動運転バス事業の施行を求めます。
実証実験の事故を受けて、今後、自動運転事業をどのように進めていくか、見解を伺います。
都内の鉄道駅では、いまだバリアフリー整備が遅れている駅が存在します。これにより、車椅子利用者や高齢者など、移動に困難を抱える都民の社会参加が妨げられています。
中央線高尾駅では、昇降式リフトはあってもエレベーターが未設置で、ベビーカーを畳み、子供を抱えて移動する光景が見受けられ、日常生活における移動が円滑ではない現状があります。
さらに、バリアフリー化と同時に、南北通路の整備など、住民の利便性向上につながる大規模な整備事業を実施する場合、事業者との調整が難航し、自治体が多額の費用を負担するケースがあります。
都は、エレベーター設置など駅のバリアフリー整備に対し、基礎自治体へより一層の財政支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。
次に、学校現場に関してお聞きします。
都内の不登校児童生徒の数は、深刻な増加傾向にあります。不登校は個々の家庭や学校だけの問題ではなく、社会全体の課題です。
家にこもり、社会との接点を閉ざしてしまった子供やその保護者は、いつかは進学や就職をして社会で活躍したい、してほしいという思いを持っています。不登校支援は、学校に通うことを唯一のゴールとすべきではありません。
まずは、全ての関係を断ってしまっている子供がいかに社会とつながっていくかが重要です。現在、校長判断により、ICT機器を使った自宅学習の出席認定などの支援がありますが、当事者である子供たちや保護者に十分に認知されていません。
また、座学や別室登校などの既存の出席認定だけではなく、フィールドワーク、地域活動への参加、ボランティア、あるいは個人の興味に基づく課題解決学習といった、より実社会と連携した活動を評価対象に含めるよう、認定基準の拡充が必要です。
学校以外での出席認定に係る周知を図るとともに、そうした拡充が必要だと考えますが、見解を伺います。
特別支援学校においては、専門的な知識と経験を持つ教員の長期的な定着が大きな課題となっています。学校によっては、生徒が先生に手話を教えている現場もあるそうです。
しかしながら、都立学校の教員には異動サイクルが設定されており、高度な専門性が求められる特別支援学校においても、教員の異動が繰り返される傾向があります。
生徒に対して安定した教育環境の整備が求められています。
特別支援学校において、生徒や保護者と十分な話合いを行い、専門性を持つ教員が長期的に勤務できるよう、柔軟な異動制度にすべきだと考えますが、見解を伺います。
次に、障害施策についてお聞きします。
障害者と健常者の間のバリアフリー化は日々進展していますが、現状では障害の種類ごとに支援や配慮が分断されており、異なる障害を持つ方々を包括的に受け入れるための理解促進が十分に進んでいません。
現代の多様な技術や支援ツールを活用すれば、障害の垣根を越えたインクルーシブな環境の構築は可能です。
さらに、障害を持つ人は、たとえ高い能力やスキルを持っていたとしても、障害があるという理由だけで、正当な評価や適切なポジションへの登用機会を失っている現状があります。
障害者がその能力を正しく評価される社会を実現するため、障害者を個別のカテゴリーで分断して考えるのではなく、全ての障害を持つ方々を包摂できるよう、企業への意識改革の周知や、サポート体制構築のための支援を実施していくべきだと考えますが、見解を伺います。
現在、視覚障害者などを支援する同行援護の現場で、援助者が本来の業務範囲を超え、実質的な身体介護を行わざるを得ない問題が起きています。これは、同行援護の利用者が高齢者である場合に、障害福祉サービスと介護保険サービスという二つの制度のはざまに置かれることで、援助者に過度な業務外の負担がかかっているためです。この制度の二重構造こそが、質の高い支援を妨げる弊害となっています。
その対策として、同行援護に加え、介護資格を持つ援助者に対し、そのスキルと業務負担を評価し、資金体系を優遇する措置を講じることや、障害者かつ高齢者の複合的なニーズに対応するため、障害福祉と介護保険制度の垣根を越え、新たな枠組みをつくるなどの対策が挙げられます。
障害福祉サービスと介護保険サービスの制度のはざまで起きている弊害について、都独自に対策を講じるべきだと考えますが、見解を伺います。
我々は、令和五年の旧滝山病院で発生したような痛ましい虐待事件を起こしてはなりません。
入院病棟のある精神科病院は、人里から離れ、外部の目が入りにくい病院もあるため、第三者による視点が不可欠です。
しかし、現状では基礎自治体による立入検査も限定的であるため、公的な監視が十分に行き届かない構造となっています。
令和四年の精神保健福祉法改正により、精神科病院における虐待通報窓口の設置や虐待防止研修の実施など、一定の対策が講じられました。
しかし、これらの措置だけでは、第三者による実効性のある監視が十分に行き届くシステムにはなっていないと考えます。
都として、精神科病棟における虐待の防止と人権擁護にどのように向き合い、実効性のある監視システムを構築していくか、具体的な施策と方向性について見解を伺います。
最後に、平和施策についてお聞きします。
今年は、戦後八十年の節目の年です。八十年前に多くの尊い命が失われた歴史を鑑みれば、平和につながる道筋は異なっても、戦争は起こしてはならないという願いは、ここにいる全ての人が共有しているはずです。
都内には、八王子市の高尾浅川地下壕のように、戦争の記憶と悲惨さを伝える貴重な建造物や遺構が残されています。これらは平和のメッセージを後世に伝える重要な役割を担っています。
しかし、再開発や老朽化、そして所有者の判断によって、その多くが失われる危機に瀕しています。
現在、都内の子供たちが戦争の記憶を実感を持って学ぶには、広島や沖縄といった遠方へ行かなくてはなりません。
都が主体的に戦争遺跡を認定し、その保存、活用に取り組むことは、次世代の平和意識を醸成する上で不可欠です。
知事は、東京都平和の日記念式典で、戦争の悲惨な記憶をしっかりと語り継ぎ、平和の大切さを伝えていかなくてはならないと述べられていましたが、どのように平和の大切さを語り継いでいくつもりか、知事の見解を伺います。
現在、戦争にまつわる都指定文化財の遺跡が幾つあるのか、さらには近代の戦争遺跡を文化財として積極的に認定し、公的に保存、活用していくべきだと考えますが、見解を伺います。
以上、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 細貝悠議員の一般質問にお答えいたします。
平和についてのお尋ねでございました。
さきの大戦で戦争の惨禍を被った歴史を持つ都民にとりまして、恒久平和の実現は最大の願いでございます。
そのため、都は、東京都平和の日条例を制定いたしまして、三月十日の記念式典をはじめ、東京空襲資料展の開催など、平和関連事業を実施いたしております。
引き続き、平和の大切さ、次の世代へと伝えてまいります。
なお、その他の質問につきましては、教育長、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長坂本雅彦君登壇〕
○教育長(坂本雅彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、不登校の子供の出席の扱いについてでございますが、国では、不登校の子供について、区市町村の設置する教育支援センターで指導を受けるなどの一定の要件を満たす場合、出席扱いにできることとしております。この内容は、既に区市町村教育委員会等に周知をしております。
次に、特別支援学校における人事異動についてでございますが、都教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律等によりまして、校長からの意見などを踏まえ、各学校の実情などに配慮し、教員の人事異動を行っております。
最後に、都指定の文化財についてでございますが、都教育委員会では、学術的に価値の高い遺跡について、一定の基準を満たす場合、文化財として指定をしております。これに当たりましては、所有者や関係自治体の意向を踏まえ、条例等に基づき、審議会の答申を受ける仕組みとなっております。
これまで、戦争当時の様子を伝える遺構を都の文化財に指定した事例はございません。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、自動運転の取組についてでございます。
自動運転は、運転手不足への対応など、多くの社会的課題を解決する可能性を有しており、公共交通への活用は重要でございます。
都は、実証走行で得られた知見や、走行環境に応じた安全対策などを示したガイドラインを本年三月に改定いたしました。本ガイドラインを活用いたしまして、市区町村等を支援するとともに、自動運転の体験や学びの機会を増やすことで、社会受容性の向上に努め、自動運転の実装を進めてまいります。
次に、駅のエレベーター整備促進についてでございます。
駅のバリアフリー化を促進するには、鉄道事業者の積極的な取組が不可欠でございます。
令和六年度末現在、都内の約九八%の駅で、出入口からホームまで段差なく移動できる経路が少なくともワンルート確保されております。
都は、国や区市町と連携いたしまして、鉄道事業者によるエレベーター設置への補助を実施するなど、駅のバリアフリー化を促進しております。
〔産業労働局長田中慎一君登壇〕
○産業労働局長(田中慎一君) 障害者雇用のご質問をいただいてございます。
企業が障害に対する理解を深め、障害者雇用を推進することは重要でございます。
このため都は、障害を有する方の適性や能力に応じた雇用につきまして、企業の理解を促すとともに、各職場の実情を踏まえたきめ細かな支援を行ってございます。
〔福祉局長高崎秀之君登壇〕
○福祉局長(高崎秀之君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、障害福祉サービスと介護保険サービスとの関係についてでございますが、六十五歳以上などの障害者のサービス利用に当たりましては、障害者総合支援法などに基づきまして、原則として介護保険サービスの利用が優先されます。
なお、国の通知では、障害者本人が必要とするサービスの支給量や内容が介護保険サービスで十分に確保されない場合などは、障害福祉サービスの利用が可能であるとされております。
次に、精神科病院での虐待防止等についてでございますが、都は、患者や家族などからの虐待通報、届出に対応する専用窓口を設置しまして、虐待が疑われる場合は立入検査を実施しております。虐待が認められた場合には、改善計画の提出を求めまして、再発防止の取組状況を確認しております。
また、患者の生活に関する相談や傾聴などを行う支援員を病院へ派遣するほか、病院の管理監督層や現場のリーダー層を対象にした虐待防止研修を実施しております。
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