令和七年東京都議会会議録第十四号〔速報版〕

○副議長(菅野弘一君) 十九番ゆもと良太郎君。
   〔十九番ゆもと良太郎君登壇〕

○十九番(ゆもと良太郎君) 初めに、豪雨対策について質問いたします。
 今年の夏も日本列島で豪雨災害が頻発しました。東京においても、九月十一日に記録的短時間大雨情報が発表され、私の地元大田区でも、四百以上もの床上、床下の浸水被害が生じ、降雨量が最も多いところでは、最大時間雨量は七十五ミリ、最大十分雨量は三十二ミリを記録したと、九月十二日の第三回大田区災害対策本部会議で説明をされております。
 これからの時期は、強い勢力の台風が日本列島に接近することも想定されるため、豪雨対策は予断を許さない状況にあります。
 都はこれまでも、豪雨対策基本方針に基づき、河川や下水道整備の早期完成を目指し、取り組んでおりますが、その環境を整えるには、まだ時間を要します。このため、河川整備などに合わせ、都内全域で比較的早期に整備可能な雨水浸透ますや止水板設置など、流域対策も進めていくべきと考えます。
 そこで、都内全域の取組を、私の地元大田区の取組も含め、都の流域対策の支援策についてお伺いをいたします。
 中央卸売市場について質問いたします。
 市場業者を取り巻く環境は、デジタル化の進展、加速化する気候変動の影響など、近年急速に変化をしており、この対応を進めていくことは喫緊の課題であります。
 デジタルの活用は、市場業者の作業時間の短縮につながり、物流効率化や労働力不足にも寄与することから、市場業者が進めている取組を都も後押しすることが必要であると考えます。
 この夏の猛暑により、市場内でも野菜や花が傷みやすくなっているとの声を市場業者から聞いており、生鮮品を産地から消費者まで低温管理し流通させる、コールドチェーンの確保をはじめとした一層の暑さ対策が不可欠となっております。
 市場の開設者として、現場の実情を踏まえて、デジタル等先端技術の活用や市場内の暑さ対策をさらに進めるべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 水素の利活用について質問いたします。
 脱炭素社会の実現に向けた動きが加速をする中、水素エネルギーの利活用は、持続可能な都市づくりにおいて極めて重要な役割を担うものと認識をしております。
 都においては、令和五年六月に川崎市及び大田区との三者による連携協定を締結し、令和六年四月には、官民でのパイプラインを含めた水素供給体制検討協議会を設置するなど、空港臨海部をはじめとした水素供給体制の構築に向けた取組を進めていると承知をしています。
 水素の利活用が普及することは、東京のみならず、日本全国、より広い視野で見れば、世界のエネルギー利活用の在り方に大きなインパクトを与える可能性がある事業として、私としても高い関心を持ち、注目をいたしております。
 需要の喚起を図るためには、供給体制の整備と、水素利用による付加価値をどのように創出するかという点が重要になってくると考えます。
 水素の利活用の推進と普及を図るに当たり、具体的なエリアとして、空港臨海部における水素の利用拡大に向けては、大規模な水素需要の喚起や供給体制の構築が必要だと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 続いて、次世代モビリティー、自動運転について質問いたします。
 二〇二四年問題などに起因した人手不足によって、バスやタクシーの運輸業界、物流業界は、運転手の確保が困難となっています。その影響もあり、都民の足である路線バスは減便や廃止となり、都民生活の移動に深刻な影響を及ぼしています。
 この課題を解決する手段の一つとして、バスなどの公共交通に運転手を必要としないレベル4の自動運転技術を導入していくことへ期待が集まっております。自動運転の普及拡大には、行政の役割が重要であり、東京都が目標を掲げ、区市町村等と連携し、都内全域における自動運転の社会実装へとつなげていくべきと考えます。
 そこで、バスなどの公共交通における自動運転は、どのようなステップを踏み、取組を進めていこうとしているのか、都の見解をお伺いいたします。
 道路陥没事故の未然防止について質問いたします。
 今年の一月に埼玉県八潮市で大規模な道路の陥没事故が発生し、多くの都民が衝撃を受けております。国などによって八潮の陥没事故に関する調査が進められておりますが、道路陥没の主な原因は、地下埋設物に起因していると聞いております。
 下水道などの地下埋設物は、設置されてから五十年を経過したものも多く、老朽化が進んでおります。陥没事故発生リスクは、時間の経過とともに上がっていくことを考えれば、道路の陥没事故を未然に防ぐためには、陥没リスクを下げる調査の回数や質の在り方にも工夫が求められると考えます。
 そこで、都民の安心・安全を高めるため、都道における陥没事故の未然防止について、都の取組をお伺いいたします。
 特殊詐欺対策について質問をいたします。
 都内で特殊詐欺の被害が増加しています。特に、携帯電話への架電など新たな手口が増加をしており、最近の傾向として、高齢者よりも若年層に被害が広がっている状況があります。
 被害対策に加え、特殊詐欺は高齢者がだまされるというイメージから、若い人もだまされているという現状を都民に周知をし、年齢層にかかわりなく特殊詐欺防止の意識を社会全体で共有することが、効果的な対応へとつながっていくものと考えます。
 また、詐欺かもしれないと不安に感じた際には、相談に乗ってくれる窓口があることを周知し、だまされている都民を相談窓口につなぐことが、特殊詐欺防止の対応策として効果的であると考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 認知症対策について質問いたします。
 急速な高齢化の進展に伴い、我が国の認知症患者は増加しています。東京都においても、令和四年の約四十九万人から、令和二十二年には約五十七万人に増加すると推計されています。
 認知症の方が地域で安心して生活できる環境を目指し、医療、介護の連携体制構築が重要であります。
 地域では、かかりつけ医や関係機関の連携をサポートする認知症サポート医が活動しております。今後、増加する単身高齢者への対応なども含め、なるべく早期の適切な支援のため、認知症サポート医の活用が求められてくると考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、回復期病床について質問いたします。
 報道等でも取り上げられておりますが、都内の病院は、厳しい経営環境にさらされています。
 二〇二四年に倒産、休業、廃業、解散した医療機関は、過去最多の七百八十六件となっており、都内の病院は物価高騰や建築費の高騰、人手不足などで建て替えができない状況で、解決策を見いだせない病院の事例なども関係者から聞こえてまいります。
 このような状況下ではありますが、病気にかかっても安心して社会復帰できる地域医療の実現のためには、医療と介護が連携した地域包括ケアシステムを構築する必要があり、回復期病院の役割が重要であります。病床数削減という流れの中ではありますが、都は回復期病床確保にどのように取り組むか、お考えをお伺いいたします。
 続いて、ものづくり産業活性化について質問をいたします。
 東京には、工業専用地域が八自治体あります。東京都の特徴ある製造業が集積をし、現在も操業を続けております。東京における工業専用地域の指定は、昭和四十八年十一月二十日に施行され、工専地域に当初より工場設置をし、操業している工場は、建設から五十二年が経過をしており、工場の建て替えが課題となっております。
 建て替えには、工業専用地域等に用地を確保しなければなりませんが、都内では工専用地は限られているので建て替え用地確保が困難となり、都内から都外へものづくり企業が流出する傾向にあります。
 製造業が減少傾向の中、今でも操業を続けている企業は技術力の高い企業が多く、その企業の都外流出は、都のものづくり産業発展の大きな課題と考えます。企業流出への対応について、都の見解をお伺いいたします。
 続いて、東京港の水辺の環境づくりに向けた取組について質問いたします。
 都民に魅力と潤いのある水の都東京を実現していくには、水辺環境づくりが重要であると考えます。特に、東京港など閉鎖性海域では、水質改善の取組に加え、底質や生物の生息環境に配慮をするなど、総合的な取組を進める必要があります。
 東京港の港湾機能充実は、東京の発展にとって極めて重要ですが、運河における水辺の環境づくりにも積極的に取り組むべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 続いて、都内公立小学校における教科担任制について質問いたします。
 教科担任制には、授業の質の向上、複数の教員でサポートができる体制、教員の負担軽減などが、期待される効果として挙げられます。
 都教育委員会では、高学年から教科担任制を順次導入しており、既に実施している小学校では、生徒、保護者、教員から好評の声が多く、学習効果においても高い効果が現れているとの声を聞いております。
 今後の導入する小学校を増やしていくことや、中学年においても推進していくことが求められると考えますが、そこで、現段階での成果、今後の取組の方向性について、都の見解をお伺いいたします。
 外国人旅行者の避難誘導について質問をいたします。
 東京を訪れる外国人旅行者が急増しており、インバウンド需要により経済効果を得ておりますが、一方で、大規模災害発生時に外国人旅行者が安心して避難行動等が取れるような体制整備にも意識を持つべきと考えます。外国人旅行者が避難情報を適切に受け取ることができないことも想定されます。
 そこで、避難所に避難した方も含め、適切に一時滞在施設に案内できるよう、情報を発信することが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) ゆもと良太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 水素需要の喚起や供給体制の構築についてのお尋ねがございました。
 東京の脱炭素化に向けましては、水素のエネルギーとしての利用拡大と、パイプライン等を活用した大規模な供給インフラの整備を進めることが不可欠でございます。
 都は、事業者や官公庁等によります協議会において、事業者と共同で大規模な水素の利用や供給に向けましたリサーチを行いまして、将来の空港臨海部周辺におけます水素利活用の大きなポテンシャルを確認いたしました。
 今後は、需要地に大量の水素を届けるため、地下インフラが高度に発達した都の特徴を生かしましたパイプラインの敷設方法、また、ルートの安全対策などを具体化してまいります。
 さらに、大規模な需要先として、羽田空港や地域熱供給での水素混焼等によります面的利用を目指してまいります。
 こうした取組を積み重ねまして、世界をリードする水素利活用の都市モデルを築き上げてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長坂本雅彦君登壇〕

○教育長(坂本雅彦君) 小学校における教科担任制についてのご質問にお答えいたします。
 小学校の児童に対し、優れた専門的な知識により、きめの細かい教育を行う上で、教科ごとに担当の教員を設ける仕組みの活用は効果的でございます。
 都教育委員会は、この教科担任制を導入し、小学校に教員を多めに配置し、高学年で教科ごとに異なる教員が指導を行う仕組みづくりを進めてまいりました。これによりまして、教員は難しい内容をより分かりやすく教える工夫を行うことができ、児童に関し、授業の理解が進み、興味も高まるなどの成果が出ております。
 今後、こうした仕組みを着実に広げるとともに、中学年での導入についても検討を進め、小学校の教育の充実に結びつけてまいります。
   〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕

○東京都技監(谷崎馨一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、流域対策の推進についてでございます。
 都はこれまで、雨水浸透ます設置などの流域対策に取り組み、昨年度から都内全域に補助対象を広げ、上限額の引上げなどを実施してまいりました。
 流域対策の補助制度がございます大田区では、今年度、個人宅の申請が八十三件あり、着実に整備が進んでおりますが、制度のない自治体もあり、都内全域では整備が進んでいない地域もございます。こうしたことから、雨水浸透ますなどの設置を促進するため、都は、今年度から、自治体による豪雨対策の計画策定や補助制度の構築に対して技術的支援を開始いたしました。
 今後とも、区市町村と連携を強化いたしまして、都内全域で流域対策を推進してまいります。
 次に、自動運転についてでございます。
 自動運転技術は、運転手不足への対応など、社会的課題を解決できる可能性を有しております。レベル4の自動運転の早期実装に向けましては、様々な地域で走行を重ね、データの蓄積などにより、技術水準の向上につなげていくことが重要でございます。
 都は、そのために、区市町村等と連携の下で都内の複数地域へ運行を拡大し、二〇三〇年までに都内八地区程度で導入を進めてまいります。
 引き続き、バスなど公共交通への自動運転の導入に向けた取組を展開いたしまして、二〇三五年度を目途に都内全域での普及促進を図ってまいります。
   〔中央卸売市場長猪口太一君登壇〕

○中央卸売市場長(猪口太一君) 先端技術の活用と暑さ対策についてでございますが、外部環境が変化する中におきましても安定した市場運営を行うためには、業界と連携して的確な措置を講じる必要がございます。
 このため、DXで物流を効率化する通信基盤強化や、荷役作業を省力化する無人搬送設備の導入等、業界と連携して先駆的取組を推進しております。
 また、品質衛生管理の向上に向けた施設の低温化に加えまして、各市場の実情に応じた遮熱フィルムの整備やスポットクーラーの設置により、気候変動下における品質管理と労働環境の改善に着手してございます。
 今後も、環境変化に的確に対応し、生鮮品等を安定的に供給する役割を果たしてまいります。
   〔建設局長花井徹夫君登壇〕

○建設局長(花井徹夫君) 都道における陥没事故の未然防止についてでございますが、道路を常に良好な状態に保つことは、都民生活の安全・安心を確保する上で極めて重要でございます。
 都は、日常的な巡回点検により都道の状態を的確に把握し、路面の異常を発見した場合には、損傷箇所の応急復旧を速やかに行っております。
 また、地下埋設物の状況やこれまでの空洞発生状況を踏まえ、地中レーダーによる調査を実施し、道路陥没の未然防止に努めております。
 今後とも、こうした対策を積み重ねてまいりますとともに、国の動向や技術開発の進捗なども踏まえ、誰もが安心して利用できる道路の保全に取り組んでまいります。
   〔都民安全総合対策本部長竹迫宜哉君登壇〕

○都民安全総合対策本部長(竹迫宜哉君) 特殊詐欺対策についてのお尋ねでございますが、都では高齢者以外の年齢層の被害増加を受けまして、中高年齢層から若年層にも対象を拡大して、注意喚起動画の配信など被害防止のためのターゲティング広告を開始いたします。
 閲覧者を誘導する都ホームページには、警察官がたりの手口や様々な防犯対策を掲載しておりますが、今後は、不審な電話等があった際に気軽に相談できるシャープ九一一〇などの周知も図ってまいります。
 これまでの高齢者層に対する被害防止対策に加え、あらゆる年齢層の都民が特殊詐欺の被害に巻き込まれることのないよう、普及啓発に取り組んでまいります。
   〔福祉局長高崎秀之君登壇〕

○福祉局長(高崎秀之君) 認知症のある人への支援に関するご質問にお答えいたします。
 認知症の早期診断、早期支援につなげるためには、専門性を有する認知症サポート医が、かかりつけ医への助言や関係機関との連携に取り組むことが重要でございます。
 都は、地域包括支援センターなどと連携して積極的に活動するサポート医をとうきょうオレンジドクターとして独自に認定しておりまして、今年度からこの医師を活用した医療相談や同行訪問などを行う区市町村への補助を開始いたしました。
 今後、オレンジドクターの認定をさらに進めるとともに、区市町村における取組を広く共有しまして、認知症のある人が地域で早期に必要な支援につながる体制が確保されるよう取り組んでまいります。
   〔保健医療局長山田忠輝君登壇〕

○保健医療局長(山田忠輝君) 回復期病床についてのご質問にお答えいたします。
 急性期を経過した患者を受け入れ、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する回復期病床の確保は重要でございます。
 このため、都は、回復期リハビリテーション病棟などを整備する医療機関への補助事業を実施しております。令和七年五月現在の回復期リハビリテーションの病床数は約九千三百床であり、事業を開始した平成二十九年から約千九百床増加しております。
 今後とも、都民が必要な医療やリハビリテーションを受け、安心して暮らし続けることができるよう、医療機関の取組を支援してまいります。
   〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) ものづくり産業の活性化についてのご質問にお答えいたします。
 東京のものづくり産業を支える企業が、事業用地の不足などにより都外へ転出することを防ぎ、製造業の集積の維持と発展を図ることは重要でございます。
 このため、都は、区市町村と連携し、製造業等を対象にした貸し工場の設置や用地の提供を行う事業者等を支援してございます。また、工場の建て替え等に向けて土地や倉庫などの確保を希望する企業に対して物件情報を紹介するなど、立地に関する相談にワンストップで対応しております。
 今後とも、地域経済を支えるものづくり産業の振興を図ってまいります。
   〔港湾局長田中彰君登壇〕

○港湾局長(田中彰君) 運河における水辺の環境づくりについてのご質問にお答えいたします。
 魅力的な水辺空間を創出するためには、多様な水生生物が生息する親しみやすい環境を整えていくことが重要でございます。
 このため、都は、護岸や海上公園などの施設整備に合わせて、都民が水辺と気軽に触れ合える緩傾斜護岸や浅場、干潟などの整備を進めております。
 また、運河に堆積している汚泥をしゅんせつし、良質な砂で広く覆う覆砂を計画的に行うことで、水質改善にも取り組んでおります。
 今後とも、これらの取組を通じて、運河における良好な水辺環境の創出に努めてまいります。
   〔総務局長佐藤智秀君登壇〕

○総務局長(佐藤智秀君) 外国人旅行者の避難誘導についてのご質問にお答えをいたします。
 発災時に、都は、SNSや防災アプリによる情報発信や、大使館との連携により、外国人旅行者を一時滞在施設へ避難誘導することとしております。
 今年度は、帰宅困難者を誘導するシステムであるキタコンDXの多言語化や、空港等における東京都防災Xのフォローの呼びかけなど、取組を強化いたします。
 さらに、避難所運営セミナーでは、避難所を訪れた外国人旅行者に対し、近くの一時滞在施設へ案内することを、町会、自治会の避難所運営を担う方に周知してまいります。
 こうしたことにより、外国人旅行者が一時滞在施設に円滑に避難できるよう取り組んでまいります。