○議長(増子博樹君) 十三番おけやまさと君。
〔十三番おけやまさと君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○十三番(おけやまさと君) 東京都議会立憲民主党・ミライ会議・生活者ネットワーク・無所属の会のおけやまさとです。
知事の虐待対策の展望についてお伺いいたします。
私は、幼少期に両親が離婚し、その後、母親の下に引き取られましたが、そこでは育児放棄、いわゆるネグレクトでした。おねしょをしてもそのまま、ひどいときには一日にお菓子一食だけ、そんな生活を送っておりました。それを見かねた祖父母が私を引き取り、大学入学まで育ててくれました。
私は運がよく多くの人に支えられ、ここまで育てていただき、志望の大学に進学し、大学院では、小さい頃の夢だった宇宙の研究に携わることもできました。
一方で、多くの子供たちが必要な支援を受けられず、自分の夢を実現するどころか、自分の才能や適性に気づけず、夢を持つことすらできない状況にあります。
救われた命だからこそ、今度は自分自身が救う側になりたい、当事者だからこそ、人の痛みに寄り添える東京都政に変えていくと訴えて、当選させていただきました。
本定例会の知事所信表明でも述べられたように、今、東京都では、児童虐待が急増しており、対応力の向上が課題です。
さきの知事所信表明では、江東区と墨田区の取組についての言及がありました。今後、区市町村と連携して、都内全域で対応力向上をしていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
続きまして、社会的養護に関してお伺いします。
先ほども述べましたように、私自身が社会的養護の経験を持つ一人であります。当選してからは、多くの施設関係者の方々から悲痛な訴えを聞いてきました。原体験と現場の声を基に、社会的養護における課題について質問いたします。
東京都は、令和七年三月、東京都社会的養育推進計画を策定しましたが、代替養育を必要とする子供の数は依然として増加傾向にあります。
昨今の物価高の影響により、児童養護施設の運営は厳しさを増しており、人件費や光熱費、食費など、基本的な運営費用が大きな負担となっています。また、職員の人数が慢性的に不足し、子供一人一人の個性に合った支援が十分に行き届いておりません。
児童養護施設の安定的な運営を確保するため、さらなる体制強化の支援が必要と考えますが、見解を伺います。
次に、施設に住む子供たちの自立支援について質問します。
施設で暮らす子供たちは、虐待やトラウマを抱えている場合が多く、学習支援や生活支援に加えて、子供一人一人に適した心のケアが不可欠です。周りの同級生たちと比較し、将来に対する不安や、現状に対する行き場のない不満と怒りを抱える子供たちが多くいます。
二〇一九年には、東京都渋谷区の児童養護施設若草寮の施設長が、元入所者に殺害されるという事件が発生しました。殺害した元入居者は、精神的な疾患が疑われています。現場からは、心理士やソーシャルワーカーの配置拡充、外部機関との連携強化が求められています。
令和四年、改正児童福祉法に基づく児童自立生活援助事業の対象が拡大されました。しかし、都内にある児童養護施設五十五か所に対し、児童養護施設に併設されている児童自立生活援助事業のⅡ型は十三か所しかありません。また、心理的な専門家の配備も義務化されておりません。
専門家を配置するなどの子供たちの心理的な支援の拡充を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
十八歳を迎え、施設を退所する子供たちは、十分な家族的支援が受けられなくなり、また、保証人不在で十八歳を迎えると、不動産賃貸契約もままならなくなるなど、いわゆる十八歳の壁が存在します。
二〇二四年四月の児童福祉法改正により、大学進学など自立生活援助の実施が必要と認められる場合について、対象者の要件が緩和されました。しかし、現状は、十八歳で施設の退去を強いられるのが大半です。入居者と施設の判断で継続的な支援が可能にできるよう、二十歳を超えた支援継続の標準化を行うべきだと考えます。
十八歳以降の自立を支えるために、住居確保の支援や継続的な伴走支援体制の拡充を行うべきと考えますが、見解を伺います。
現在、祖父母や親族による養育が一定数ありますが、一般の里親による受入れは依然として少数にとどまっています。国も里親委託を推進しており、都においても啓発や支援強化が急務です。
そこで伺います。里親委託をさらに進めるために、社会的認知度を高める啓発活動をどのように拡充していくのか、伺います。
また、里親が子育ての悩みを抱え込まずに、児童養護のノウハウが蓄積されている児童養護施設を頼ることができるよう、フォスタリング機能を児童養護施設に移管するなど、環境整備を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
児童福祉法が令和四年に改正、令和六年四月一日施行され、都道府県の事務として意見表明支援等事業が新設されました。
東京都こども基本条例の理念に基づき、子供が自らの意見を尊重されることは不可欠であり、自分の思いを代弁してくれる支援員、いわゆるアドボケートの存在は重要です。また、意見を表明する土台として、子供たちによる将来を見据えた意見形成が行われることも重要です。
進路選択に対する理解の不足や社会的な孤立、高額な給与水準に安易に引かれるなど、様々な理由により、性風俗や反社会的な進路に進む子供たちも少なくありません。子供一人一人が夢や志を持ち、進路を描けるよう、進路の提示や社会と接する機会の創出が必要です。
今後、意見表明等支援員事業拡充と意見形成の機会創出に向けた環境整備を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
最後に、新空港線について伺います。
新空港線の全予算の地方負担割合は三分の一であり、そのうち都三割、大田区七割となっています。理由について、区は、空港アクセスを除く大田区発着に関する利用者分を、都は、空港アクセスに関するその他の利用者分をそれぞれ負担するとしています。
つまり、新空港線の利用者割合で決まっているのですが、羽田空港までの時間短縮の恩恵は、東横線や目黒線経由で多摩川駅から乗り換える人たちが主であり、私の最寄り駅である鵜の木駅も含め、多摩川線沿線のほとんどの駅が素通りされるため、大田区民にとって恩恵は少なく、負担割合が不釣合いな政策になっていないでしょうか。
ましてや、三両編成と八両編成との電車が走ることによる安全性の問題やダイヤ変更の可能性、ピーク時の便数倍増による開かずの踏切化、騒音の問題などは、大田区民が被ることになるのです。
都からも多額の資金が投入されることから、都全体の公共性が問われることとなります。
東京都民全体と大田区民にどれだけの利点があるのか、その利点と大田区にかかる様々な負荷とのバランスをどのようにお考えなのか、見解を伺います。
また、新空港線の予算は、現在千二百五十億円と目算されています。たった八百メートルの延伸に千二百五十億円、最近の大型公共事業費では、昨今の物価高騰の影響などにより当初予算から大きく膨れ上がっており、新空港線も同じく増加することが見込まれます。一体、自治体の負担は幾らまで増えるのでしょうか。
また、大田区の蒲田付近は軟弱地盤であり、多摩川線を地下化するに当たり、予算の明確化と安全性の確保のためにも、地質調査が計画段階から行われるべきと考えますが、現状、調査の有無も含め何の公開もありません。
都は、新空港線に関するデータや情報をどれだけ把握し、勘案することで、予算を妥当としているのか不明です。
そこで伺います。新空港線の計画について、どこまで把握しているのか伺います。
以上で私の質問を終わりにします。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) おけやまさと議員の一般質問にお答えいたします。
児童虐待への対応についてのお尋ねです。
児童虐待に迅速かつ的確に対応するためには、専門的対応能力を持つ都と、地域で寄り添う支援を強みとする区市町村が、緊密に連携することが重要でございます。
このため、都は、児童相談所の新設や、区市町村との連携拠点となりますサテライトオフィスの設置などを進めております。
引き続き、区市町村の実情に即しましたきめ細かな児童相談体制を構築しまして、児童虐待防止に取り組んでまいります。
なお、その他の質問につきまして、都技監及び福祉局長が答弁をいたします。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、新空港線の効果についてでございます。
国の答申におきまして、国際競争力強化の拠点である渋谷等と羽田空港とのアクセス利便性が向上すると示されており、都といたしましても同様の認識でございます。
また、地元の大田区におきましても、区内外の移動が便利になるなど、地域の活性化にも大きく寄与する重要な施策と位置づけられております。
次に、新空港線の計画についてでございます。
本年八月に、大田区等が設立いたしました羽田エアポートライン株式会社と東急電鉄株式会社が、都市鉄道等利便増進法に基づく速達性向上計画を国に申請したところでございます。
都は、同法に基づきまして、両社から同計画の内容について協議を受けております。
〔福祉局長高崎秀之君登壇〕
○福祉局長(高崎秀之君) 五点のご質問にお答えいたします。
まず、児童養護施設への支援についてでございますが、児童養護施設は、国が定める措置費により運営されております。
これに加えまして、都は、虐待を受けた児童や発達障害などの個別的な援助が必要な児童のケアを行う職員を配置する施設を支援しております。
また、人材確保のため職員宿舎を借り上げる施設に対しまして、独自の支援を実施しております。
次に、児童養護施設における専門的な支援についてでございますが、児童養護施設では、措置が解除された後も継続して支援が必要な者などに対し、引き続き施設などにおいて生活しながら、自立に向けた援助を行う児童自立生活援助事業を実施しておりまして、都は、事業の経費を負担しております。
また、都は、精神科医と心理職員を配置しまして、専門機能を強化した児童養護施設に対する支援も行っております。
次に、児童養護施設の退所後の自立支援についてでございますが、都は、児童養護施設の退所者が自立して安定した生活を送れるよう、退所後も継続して相談支援などを行う職員を配置する施設を支援しております。
また、退所後、最長四年間のアパートなどの住居の借上げや、定期的に住居を訪問するための経費を補助するなど、施設における継続的な支援体制の確保に取り組んでおります。
次に、里親委託の推進についてでございますが、都は、特設サイトを設けて里親制度の周知や理解促進に取り組むほか、毎年、里親月間の二か月間、集中的に都内各地で里親による体験発表会を実施しております。
また、里親のリクルートや研修、委託後のフォローなどを包括的に行うフォスタリング機関事業を実施しておりまして、児童養護施設等の関係機関とも連携して、きめ細かな里親支援を行っております。
最後に、子供の意見形成、意見表明の支援についてでございますが、都は、子供が自らの意見を形成し、その意見を周囲に伝えられるよう、意見表明等支援事業を昨年度から段階的に実施しております。
また、児童養護施設におきまして、子供が希望する進路を選択できるよう、退所前から継続的な相談支援などを行う職員を配置する施設を支援しております。
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