令和七年東京都議会会議録第十四号〔速報版〕

   午後三時二十五分開議

○議長(増子博樹君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十五番せいの恵子さん。
   〔三十五番せいの恵子君登壇〕

○三十五番(せいの恵子君) 私は議員になる前、公務員、看護師、保健師として働いてきました。区役所、病院、高齢者施設、保育園などの現場で働く中で、多くの方の生活に触れ、その声を聞き、生きづらさや生活のしづらさを抱えている方たちや、声を上げたくても上げられない方がいることを知りました。その生活に寄り添い、問題解決に向け一緒に行動できる存在になりたいという思いで議員としての活動を続けてきました。
 都議会での初質問となる今回は、医療、介護、障害福祉の現場からお聞きした声を取り上げ、以下質問します。
 都立病院の行政的医療について伺います。
 私の看護師としてのスタートは、都立豊島病院の精神科からです。精神科急性期の病棟で身体合併症や手術前後のケア、がん末期の患者さんのみとり、夜間精神科救急の受入れなど、様々な看護を経験しました。そして、精神疾患のある身体合併症や手術が必要な患者を受け入れる病院が少ないことを痛感してきました。
 区議のとき、私のもとに、統合失調症で透析を行っていた女性の八十代の母親から相談がありました。娘の精神状態が急に悪化し、入院治療が必要だが、かかりつけの総合病院の精神科病棟が閉鎖されてしまい、受入先がなかなか見つからない。一度受け入れてくれた病院も二度目の受入れはないといわれ、今後が不安だということでした。
 私は、行政的医療を行う都立病院に相談をとアドバイスしましたが、娘さんが都民ではなかったため、受入れはかなわなかったそうです。
 身体合併症があり緊急性が高い患者や、受入先がなかなか見つからない、困難を抱えているケースに対応するのが、行政的医療を担う都立病院の役割ではないかと考えます。知事は、都立病院の役割と意義についてどのように考えていますか。
 また、さきに述べたような事例をはじめ、治療に結びつくことが困難なケースの受入れについて、都の考え方をお示しください。様々な困難を抱えた患者に寄り添った対応を求めます。
 今、都立病院の厳しい経営状況を背景に病院の縮小を求める意見もあります。しかし、災害や感染症、救急や周産期、精神科医療といった採算の確保が困難な行政的医療を担う都立病院だからこそ、病床を減らすことや人員を削減することで、その役割を後退させてはならないと考えますが、いかがですか。お答えください。
 訪問介護の支援について伺います。
 昨年四月の介護報酬改定により、訪問介護は、基本報酬が二から三%引き下げられました。北区内で三十年来地域の訪問介護を支えてきた事業所は、基本報酬が下げられたらもうどうにもやっていけない、やめるのは本当に残念だが、これ以上赤字がひどくなる前に決断したと、今年三月に閉鎖しました。
 引下げによる訪問介護事業所の減収により、サービスの縮小や事業の休廃止が相次ぎ、深刻な事態になっています。知事は、このような状況をどのようにお考えですか。
 品川区では、報酬引下げ分に対する財政支援を始めました。品川区に話を聞きに伺いましたが、事業所の減収によりサービスの縮小や事業の休廃止につながり、利用者の在宅生活に少なからず影響を与えてしまうことから、支援を実施したとのことです。
 都としても、地域で在宅生活を守るために奮闘してきた小規模事業所などの現場の声をしっかり聞き、訪問介護の基本報酬引下げを補う支援を行うことを求めますが、いかがですか。お答えください。
 障害児者支援について、まず、障害児支援の所得制限について伺います。
 本来、同じ子供への支援に対して、親の所得による制限を適用するべきではありません。しかし、障害児福祉の多くに所得制限があり、特別児童扶養手当、障害児福祉手当など、一定の所得を超えれば支援がなくなります。
 まずは、東京都の児童育成手当の所得制限をなくし、子供たちの育ちを応援する手当とすることを求めますが、いかがですか。
 放課後等デイサービスは、一定の所得を超えれば、上限額は三万七千二百円になります。そういう中で、宿泊行事に参加できない、利用回数を減らさざるを得ないという声も聞いています。子供の権利を尊重する上でも、利用料が理由で放課後等の活動が制限されることは問題です。既に、千代田、中央、品川区では無償化、新宿、荒川、墨田区は費用負担の軽減を行っています。
 都として、どこに住んでいても子供が同等の権利を保障されるよう、利用料は無償化すべきと考えますが、いかがですか。
 重症心身障害児や医療的ケアが必要な子供が通える放課後等デイサービスが少ないことは、早急に改善すべき課題です。重症心身障害児などを支援する放課後等デイサービス事業所の施設開設、人員配置拡充を後押しするための補助制度の拡充を求めますが、いかがですか。お答えください。
 障害があっても、年齢や発達段階に応じて人と関わり、様々な経験をすること、家庭や就労の場だけでなく、安心して余暇を過ごせる居場所を持つことは当たり前の権利です。しかし、障害者にとって、そうした居場所や余暇を楽しむ機会は少ないのが現状です。
 先日、障害者の余暇支援を行う団体の当事者お悩み相談会に参加しました。年齢が異なるメンバーがグループになり、恋愛や結婚、仕事、健康など、様々に出された悩みに向き合います。参加者全員で真剣かつ楽しく解決策を考えると、個性的なアドバイスや解決策が次々と提案されました。
 私は、誰かから与えられるのではなく、互いに日常の生活や困り事に気づきながら、自ら考え、解決していく過程こそ貴重な経験であると実感しました。
 現在、都の補助を活用した余暇支援を十七区市で行っており、都の障害者の居場所に関する調査でも、居場所確保に関わる要望があると四十三区市町が答えるなど、余暇支援に対するニーズは高まっています。
 二〇一六年に都議会は、障害のある青年・成人の余暇活動に関する請願を全会一致で採択しました。障害のある青年、成人が、日中の仕事などを終えた後や休日に余暇活動を行い、集団を通じて自己実現に向けた時間を過ごすことの重要性について、知事はどのようにお考えですか。
 余暇活動を行える居場所が増え、当事者が地域差なく必要な支援を受けられることが重要だと考えます。都の障害者の居場所に関する調査結果を踏まえた取組について見解を伺います。
 現在、余暇支援事業は、都の包括補助を活用して行われています。都として、余暇支援事業を個別補助として実施し、補助率も引き上げるなど拡充し、都内全区市町村が実施できるようにすべきです。答弁を求めます。
 市街地再開発について伺います。
 国土交通省は、三月、物価高騰により建設コストや人件費が上昇し、全国的に市街地再開発の事業費が大幅に拡大していることから、市街地再開発に対する補助金を見直し、国の立場から見て必要性、緊急性の高い事業に絞り込むことを発表しました。
 具体的には、社会資本整備総合交付金による支援の対象を、立地適正化計画による都市機能誘導区域、特定都市再生緊急整備地域、防災再開発促進地区で行われる事業に限定します。
 国土交通省が、市街地再開発事業において社会資本整備総合交付金による支援対象を絞り込んだ趣旨と、知事の受け止めをお聞かせください。
 この見直しを受けて、品川区は、日本共産党区議団の質問に対し、交付対象から外れた事業について改めて交付対象としたり、都や国へ働きかけたりすることは考えていないと答弁しました。
 一方、北区は、今回の措置によって交付対象から外れた赤羽駅前再開発を引き続き交付対象とすべく、急遽、立地適正化計画の策定を検討するといい始めました。
 しかし、今年五月には、赤羽駅前再開発について住民説明会が二回開かれ、百九十人が参加。赤羽小学校や赤羽公園は現在の位置で建て替えてほしい、再開発は何のために行うのかとの質問が相次いで出され、タワマン誘致でない修復型のまちづくりの署名も三千筆以上の数が提出されるなど、反対の声が上がっています。
 市街地再開発は今、本当に住民のためのものなのか、また、自治体にとっても本当に必要な計画なのか、再開発ありきの計画ではないのか、厳しく問われる時代に入っています。
 都もそうした見地で、自治体などからの相談に当たるよう求めるものです。
 七月、千代田区は、投機目的のマンション購入を規制する対策を不動産協会に要請しました。都も、都施行の事業に限らず、民間マンション開発について、転売や投機を抑制する販売条件の設定を要請すべきですが、いかがでしょうか。
 以上、住める、暮らせる東京に、住民の声を受け止め、共に歩んでいく決意を申し上げ、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) せいの恵子議員の一般質問にお答えいたします。
 都立病院の役割と意義についてのお尋ねであります。
 都立病院は、精神疾患医療をはじめとして、行政的医療の安定的かつ継続的な提供等を推進することによって、都民の健康を守り、その増進に寄与することを役割といたしております。
 その他の質問につきましては、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕

○東京都技監(谷崎馨一君) 市街地再開発事業の交付金対象についてでございます。
 近年の工事費高騰等の状況の中、支援対象を絞ることで事業の持続性、自律性の向上を図るよう、国において支援制度を改正したと聞いております。
 都といたしましては、必要な財源を安定的、継続的に確保することを国に求めております。
   〔保健医療局長山田忠輝君登壇〕

○保健医療局長(山田忠輝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 都立病院での患者の受入れについてでございますが、都立病院は、未受診妊婦や精神科身体合併症の患者など、一般の医療機関では対応が難しい患者を適切に受け入れております。
 次に、都立病院の運営についてでございますが、都立病院では、患者動向に応じて、病床等の医療資源を有効活用しながら、柔軟な人員配置等により機動的な運営を行い、質の高い医療を提供しております。
   〔福祉局長高崎秀之君登壇〕

○福祉局長(高崎秀之君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、訪問介護の介護報酬についてでございますが、訪問介護は、高齢者が地域で安心して暮らすためのサービスであり、その担い手の確保が重要でございます。
 都は、国に対しまして、事業者が人材の確保、育成、定着を図り、事業運営を安定的に行うことができる報酬とするよう、繰り返し提案要求しております。
 次に、訪問介護事業所への支援についてでございますが、訪問介護をはじめとした介護サービス事業は、介護報酬等により運営されることが基本でございます。
 都は、国に対しまして、事業者が事業運営を安定的に行うことができる報酬とするよう、提案要求しており、訪問介護については、基本報酬の減の影響などを分析した上で、必要な対応を行うよう求めております。
 次に、児童育成手当についてでございますが、児童育成手当は、制度が発足した当時は不十分であった国の所得保障を補完し、子供の健全育成を支援する役割を担ってきました。
 都は現在、障害児やその家族が身近な地域で安心して生活できるよう、子供の成長段階や障害特性などに応じた様々な支援の充実に取り組んでおります。
 なお、所得制限など、支援の対象範囲の設定に当たりましては、それぞれの施策の目的などを踏まえて適切に判断しております。
 次に、放課後等デイサービスの利用料についてでございますが、放課後等デイサービスの利用に当たりましては、児童福祉法などに基づき、児童の保護者がサービス提供に要した費用の一割を原則として負担することになっており、国は負担上限月額を保護者の収入に応じて設定しております。
 次に、放課後等デイサービス事業所についてでございますが、都は、主に重症心身障害児を支援する放課後等デイサービスの施設整備費を補助しております。また、開設前の人材募集などに係る経費を補助する区市町村を包括補助により支援しております。
 次に、障害者の余暇活動についてでございますが、障害の有無にかかわらず、レクリエーションなどの余暇活動を楽しむことは人生を豊かにするものでございます。
 都は、様々な障害を有する方が、就労後や休日に地域の人々と交流できる余暇活動の場を確保する区市町村の取組を包括補助により支援しております。
 次に、障害者の居場所についてでございますが、都が実施した区市町村への調査では、夕方の居場所のニーズがあるとの意見がございました。
 都は、区市町村の取組に対し、必要な財源を措置することを国に提案要求するとともに、地域の実情に応じた居場所の確保ができるよう、引き続き取り組んでまいります。
 最後に、余暇活動支援事業についてございますが、都は、地域の実情に応じて、青年、成人期の障害者の余暇活動支援に取り組む区市町村を、包括補助事業において補助率二分の一で支援しております。
   〔住宅政策本部長山崎弘人君登壇〕

○住宅政策本部長(山崎弘人君) 民間のマンションに関する要請についてでございますが、都内の住宅価格につきましては、市場における需要と供給との関係や建築費など、様々な要素が影響していると認識しております。
 都といたしましては、都民がニーズに応じた住宅を確保できる環境の整備に向け、様々な取組を推進しております。