令和七年東京都議会会議録第十四号〔速報版〕

○副議長(菅野弘一君) 七十一番山田ひろし君。
   〔七十一番山田ひろし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○七十一番(山田ひろし君) 中学校の学校の成績、内申点は、都立高校では推薦入試はもとより、一般入試においても約三割の割合で合否判断に用いられるなど、生徒の進路に大きな影響を及ぼします。
 内申制度の在り方について、私は非常に多くのお声をいただいていますが、中でも特に多いのが、不登校の生徒の取扱いと、都立高入試の内申点、調査書において、ほぼ全ての全日制都立高校の入試において学力検査との配点が三対七で固定されている点や、体育、音楽等のいわゆる実技四科目の配点が、英語、数学等の主要五教科に比べて二倍の配点とされていることへの疑問の声です。
 私は、学校における日々の努力を評価する意味で、内申点を考慮すること自体は反対ではありません。しかし、都教委の公表データからも明らかなとおり、内申点のつけ方、分布には、自治体間や、また、同じ自治体内においても学校間で偏りが生じざるを得ない性質のものです。
 さらに、実技四科目はその性質上、主要五科目に比べて客観的な評価が難しいと考えますが、二倍の配点を正当化するほど透明性、公平性の高い評価といえるのか、多くの疑問の声が届いているのも事実です。
 特に深刻なのが、不登校経験のある生徒に加え、発達に特性がある生徒です。都教委の入学者選抜検討委員会特別部会などにおいても、不登校生徒、発達障害等のある生徒の調査書について評価が低くなるのは否めない実態があると指摘されています。
 小学生の保護者の方からは、提出物も大きく考慮される内申点が三割で、しかも実技科目が二倍の配点では、発達障害と診断されたうちの子は絶対対応できない、無理して中学受験をさせた方がいいのだろうか、中学生の保護者の方からは、学校の内申点の基準が不明確でよく分からない、こんなことなら頑張って私立中学に入れておけばよかったなどという悲痛なお声を多くいただきます。
 今の入試の仕組みが、生徒、保護者を追い込んでしまっている面があることを真摯に受け止め、不断の見直しが必要です。
 今の入試制度は二〇一六年度入学者選抜から実施されていますが、この間、不登校の児童生徒や発達障害とされる児童生徒の増加、私立高校授業料の実質無償化など、都立高校を取り巻く状況は大きく変化しています。
 また、現在、都教委は、各都立高校に特色を持たせる取組を進めていますが、各学校に特色を持たせようというならば、入り口の入試制度も当然学校ごとに特色を持たせるべきです。
 さらに、国の方では、公立高校の併願制度に関する検討も進められており、都立高入試について抜本的な見直しが必要な時期に来ています。
 都立高校を取り巻く状況の大きな変化を踏まえ、調査書、内申点の在り方や併願制度など複数の都立高にチャンスがある仕組みの導入などを中心に、都立高入試の抜本的な改革を行うべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
 都の公表した少子化対策の論点整理では、都内の子育ての課題として、私立中学校などに費用がかかるとの回答が三〇%超ありました。私は、内申点や都立高入試への疑問が公教育への不安に結びつき、必要以上に中学受験熱や教育費の高騰を招いているのではないかと危惧しています。
 都立高入試改革に当たっては内申点が不安であるため、中学受験をすべきか悩んでいるような小学生とその親の意見も広く聞くべきことを併せて求めておきます。
 現在、都は、発達障害の検査体制の強化などに取り組んでいますが、子供が発達障害との診断を受けた後は保護者の対応力の向上が重要であり、そのためにはペアレントトレーニングが有効です。都内自治体でもペアトレの取組が拡大しており、都としても積極的に後押しすべきです。
 都内自治体への補助などを通じて、都内でのペアレントトレーニングを拡大し、発達障害の保護者の対応力を上げていくべきと考えますが、見解を伺います。
 現在、都は、小一の壁対策を強化していますが、小学校の低学年に限らず、高学年、さらに中学生でも不登校など、親が双方フルタイムで働き続けることが困難な事態が生じ得ます。子供の不登校を理由とした親の不登校離職も深刻化しており、共働き家庭や不登校の増加などを踏まえると、小学校の低学年に限らず、子供が成人するまでの期間、家庭の実情に応じた柔軟な働き方の拡大が必要不可欠であり、民間企業の中には、短時間勤務の対象となる子供の年齢を十八歳まで引き上げる企業も出てきています。
 都庁においても、子供が小学校三年生までの間、子育て部分休暇、つまり時短勤務が活用可能になるなどの取組が進んでいますが、柔軟な働き方を一層推進し、併せて質の高い行政サービスを継続的に提供していけるよう、業務の効率化も同時に進める必要があります。
 都は業務の効率化を進めながら、都庁において率先して子育てなどの事情に応じた柔軟な働き方を推進していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 都立高校におけるグローバル人材育成支援は都立高校の大きな魅力の一つとなっており、海外大学への進学を現実的な選択肢と考える生徒も増えてきています。海外大学への進学は日本の大学入試とは異なり、語学力に加え、エッセイなどの出願書類の準備、奨学金の獲得など特有の対策が必要です。
 都立高校でも、特定の高校に限らず、幅広い高校で海外大学への進学に興味を持つ生徒が出てきており、その進路指導を強化させていくべきです。
 特定の高校に限らず、幅広い都立高校の生徒に対し、海外大学への進学支援を強化していくべきと考えますが、見解を伺います。
 東京の異常ともいうべき暑さは農業に対しても大きな影響を及ぼしています。
 三鷹市は都市農業が盛んですが、農業関係者の方々からは、外で作業する農業従事者の方の熱中症の課題に加え、異例の猛暑は農作物にも大きな影響を与えており、高温障害などにより出荷ができない作物があったとも聞いています。
 農業従事者の方の暑さ対策に加え、農作物の高温障害対策や高温に強い農作物の開発など、農業の効果的な暑さ対策を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 都はこれまで、介護人材への支援を大きく強化してきました。特にこの夏は、地域の訪問介護に対する暑さ対策緊急支援が非常に助かったとのお声を多くいただいておりまして、来年度以降の継続的な実施を求めます。
 介護現場では、ケアマネジャー不足が深刻化しており、三鷹市内でも確保が難しい状況が続いていると伺っています。
 その背景には、待遇面や煩雑な業務内容などに加え、曖昧な業務範囲に起因する部屋の片づけ、ごみ出し、買物などの家事支援など、シャドーワークといわれる業務の存在もあります。シャドーワークと呼ばれる法定業務以外の負担軽減などを通じて、ケアマネジャー不足への対応をさらに進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 都内の住宅価格の高騰が止まらない中、千代田区は、投機目的でのマンション取引に関して、短期間の転売禁止等の対応を取るよう業界に対して要請を発しました。
 千代田区の独自調査によれば、あるマンションでは所有者の住所と当該物件の住所が一致しない住戸が七割にも及んでおり、昨年竣工したマンションで多数の住戸が転売されていることも分かったとのことであり、都内全域における住宅政策を検討する上で非常に重要な指摘です。
 住宅価格の高騰で特に大きな悪影響を受けるのは、これから住宅を購入する若い世代です。一生懸命仕事をしても都内で住宅を購入することが難しくなっている現状は大きな問題です。また、住宅価格の高騰以外にも、大地震への安全性の確保や省エネ、再エネによる快適性など、都民は様々な居住に関わる課題に直面しています。
 こうした状況に対し、都としてもしっかりとそうした実態を把握し、都民がそれぞれに合った住宅を確保できるよう取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 東京の住宅課題のうちシニアの方については、高齢化が進展する中、独居、夫婦とも賃貸物件を借りづらい点が大きな課題です。
 この十月から、法改正により、居住支援法人などが福祉サービスのつなぎなどの居住者の生活上のサポートを行う居住サポート住宅制度も開始となっています。
 大家、貸主側の負担軽減や居住支援法人の支援などを進め、高齢者が賃貸市場で安心して住まいを確保できる取組を強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 民泊は、観光客の多様な宿泊ニーズへの対応等が期待できる一方で、ごみの出し方、騒音、治安悪化など地域社会との関係性も大きな課題となっており、特に法令上のルールを守っていない違法民泊については対応が急務です。
 法令上、保健所が対応の中心であり、区部では基礎自治体が対応の責任を負うこととなりますが、都としても基礎自治体と連携しながら、広域行政として取り組むべき課題の把握や基礎自治体の後押しを積極的に行うべきです。
 都内基礎自治体と連携しながら、都としてルールを守らない違法民泊への対応を強化すべきと考えますが、見解を伺います。あわせて、ワンストップ相談窓口など都として違法民泊に関し都民の皆様のお声を広く受け止め、対応につなげていく仕組みの整備も要望します。
 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 山田ひろし議員の一般質問にお答えいたします。
 都庁におけます柔軟な働き方の推進についてのお尋ねがございました。
 将来にわたりまして都政全体のQOSを向上しながら様々な課題に取り組むためには、職員が持てる力を存分に発揮するとともに効率的で生産性の高い働き方を進めることは重要でございます。
 このため、都は、テレワークや時差勤務、フレックスタイム制を活用した週休三日など時間や場所にとらわれない働き方を推進し、職員が抱える様々な事情に応じましてワークスタイルを選べるようにいたしております。
 あわせまして、業務プロセスの最適化や生成AIをはじめとする先端技術の活用等によりまして、都庁全体のDXを推進し、効率的で生産性の高い持続可能な執行体制の構築を進めております。
 誰もが子育て等の事情にかかわらず、生き生きと働き活躍できる社会の実現を目指しまして、柔軟で生産性の高い働き方を都庁で一層浸透させるとともに、積極的に社会に発信をしてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長坂本雅彦君登壇〕

○教育長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立高校の入試制度についてでございますが、東京の社会や経済の変化に応じ多様な人材を育成し、子供たちの学習意欲等に応えるため、都立高校の入試制度を適切につくり上げることは重要でございます。
 都教育委員会は、様々な背景や事情により困難を抱える子供たちが増える中、そうした生徒へのきめ細かい教育を来年度から深沢高校で開始をいたします。この高校で教育を受けることを希望する生徒が入学できるよう、学力検査と調査書に関する新たな選抜の方法も導入いたします。
 今後、東京をめぐる様々な状況の変化や生徒のニーズをより一層的確に捉え、入試制度に反映する研究を着実に進めてまいります。
 次に、海外大学を目指す高校生への支援についてでございますが、都立高校の生徒の海外大学への進学を後押しする上で、入学に係る選抜や手続のほか、現地での生活の円滑なスタートに係るサポートは重要でございます。
 これまで都教育委員会は、海外大学を目指す生徒とその保護者に対し、入試や教育内容に加え、外国での生活等に関する情報提供を行ってまいりました。また、海外で大学を卒業した都立高校生から助言を受ける機会の確保も行っているところでございます。
 今後、海外大学を希望する全ての都立高校生が入試に向けた準備や合格後の書類の用意のほか、現地での住居の確保等についてきめ細かなサポートを受けることのできる支援に力を入れてまいります。
   〔福祉局長高崎秀之君登壇〕

○福祉局長(高崎秀之君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、発達障害のある子を持つ親への支援についてでございますが、発達障害のある子を育てる上では、親が子の発達障害の特性を理解することや、適切に対応するための知識を身につけることが有効でございます。
 このため、都は、発達障害者支援センターで家族からの相談に応じるとともに、子供への肯定的な働きかけ方などを実技を通じて学ぶペアレントトレーニングを実施する区市町村を包括補助で支援しております。今年度新たに作成する保護者向けのデジタルブックで、こうしたトレーニングを分かりやすく周知するほか、今後、区市町村向けの説明会で取組事例を紹介しまして、より多くの導入を働きかけてまいります。
 次に、介護支援専門員の確保についてでございますが、介護支援専門員を確保するためには、ケアマネジメント業務に集中できる環境を整備するための支援が必要でございます。
 このため、都は、事務職員を雇用し、業務効率化に取り組む居宅介護支援事業所を支援するほか、今年度から、事業所間でのケアプランデータのやり取りがオンラインで完結し、事務負担を軽減できるシステムの普及に向け、区市町村への補助を開始いたしました。
 国は、法定業務以外のいわゆるシャドーワークも含め介護支援専門員の負担軽減を図る方針であり、こうした国の動向も踏まえながら、介護支援専門員の一層の確保に向けまして取組を推進してまいります。
   〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、農業の暑さ対策についてでございます。
 農作業での熱中症への対策や暑さに対応した栽培方法を開発していくことは重要でございます。
 このため、都は、夏前の六月に熱中症対策等を紹介するセミナーを開催するとともに、猛暑日が続く七月には普及指導員が緊急巡回を実施し、栽培状況に応じた有効な対策を指導してまいりました。
 また近年、秋でも高温が続くことから、今年度より大根などの野菜につきまして、より暑さに耐性のある品種の選定や高温に対応する資材の効果検証を行ってございます。こうした取組を進めまして、持続可能な東京農業の実現を目指してまいります。
 次に、住宅宿泊事業の対応についてでございます。
 住宅宿泊事業者が法令や地域のルールを遵守した運営を行うよう関係機関が連携して対応することは重要でございます。住宅宿泊事業に係る事務は、所在地に応じ都または区市が対応しておりまして、適正な手続を行っていない施設には、関係部署が連携し是正指導を行っております。住宅宿泊事業を取り巻く状況を踏まえまして、今後、区市と都の関係部署による連絡会を通じて指導や検査等のノウハウや事例の共有を図ることとしてございます。また、届出や許可のない施設への対応に関する情報交換も行い、関係する自治体間の連携を深めてまいります。
 これにより、住宅宿泊事業の適正な運営を図ってまいります。
   〔住宅政策本部長山崎弘人君登壇〕

○住宅政策本部長(山崎弘人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都民の居住に関わる課題への対応についてでございますが、住宅価格や防災意識の高まりなど、住生活を取り巻く状況の変化に対応するためには、都民の主要な居住形態であるマンション等の実態を把握し、効果的な施策を行う必要がございます。
 都は現在、マンションの耐震性、防災等の現状を把握するため実態調査を実施しており、この中で空室や区分所有者の入れ替わり状況、修繕の実施状況等をアンケート等で把握してまいります。加えて、居住に関わる様々な課題につきまして区市町村とも意見交換を行いながら、今後、住宅政策審議会等で議論し、多様な選択肢から住まいを適切に選択できる環境整備に取り組んでまいります。
 次に、高齢者の住まいの確保についてでございますが、賃貸住宅における高齢者の入居を促進するには、居住支援法人の入居者への支援により高齢者の入居に伴う貸主負担を軽減することが重要でございます。
 今般、住宅セーフティーネット法改正により、法人と貸主が連携して入居者の見守りや生活支援等に取り組む居住サポート住宅制度が開始されました。
 今後、業界団体も参加する東京都居住支援協議会を活用して、先行区市の取組を共有するなど、住宅を認定する区市と法人が協力して貸主に制度の活用を働きかけていけるよう後押ししてまいります。
 これらの取組により、地域福祉とも連携しながら高齢者の居住のさらなる安定確保を図ってまいります。

○議長(増子博樹君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時四分休憩