令和七年東京都議会会議録第九号〔速報版〕

○議長(増子ひろき君) 十二番斉藤りえさん。
   〔十二番斉藤りえ君登壇〕

○十二番(斉藤りえ君) 東京を元気にする会の斉藤りえです。
 このたび、長嶋茂雄さんのご逝去の報に接し、心より哀悼の意を表します。日本中に夢と勇気を与えてくださった偉大な方のご冥福をお祈り申し上げます。
 それでは、一般質問に入ります。
 先日、東京都が掲げる未来の都市ビジョンを体現する場として開催されたSusHi Tech Tokyo二〇二五に参加させていただきました。私は、このようなイベントこそ、これまで情報コミュニケーションに壁があるとされた人々に対しての情報保障を徹底することが必要だと考えています。今後、手話通訳やリアルタイム字幕などを含め、誰もがアクセスできる仕組みを充実させていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 関連して、民間で展開されているキッズラインのようなマッチングアプリに倣い、手話通訳者や文字支援者とのリアルタイムマッチング、AIによる自動文字化など、技術を活用した情報保障支援が期待されています。
 こうした民間との連携を通じて、聴覚障害者向けの手話、文字化アプリの開発を支援する考えはありますでしょうか。未来の都市を標榜する東京都にこそ、こうした技術革新を促す役割が求められると考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、デフリンピックについてお伺いします。
 開会式や閉会式、競技中継や関連イベントにおける情報保障は不可欠であり、配慮ではなく、保障としてしっかりと環境を整えるべきです。誰もがひとしく情報にアクセスできるよう、デフリンピックの会場や配信中継等でどのように情報保障を行うのか、伺います。
 また、デフリンピックを契機に、社会の中で聴覚障害や多様性の捉え方を変容させることを目指さなければいけません。そこで、大会を契機に聴覚障害の理解促進を図るため、子供たちを含め、広く都民に知ってもらうための広報などにも取り組んでいくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 東京での開催を契機に、学校に対するデフリンピックについての理解を深め、啓発につなげるほか、学校によるデフアスリートの招聘を一層進めて機運を高めていくべきと考えますが、都教育委員会の取組について伺います。
 デフリンピックとも関連することとして、東京都職員における手話対応の普及と国際手話についてもお伺いします。
 私の経験として、都庁で職員の方から手話で話しかけていただくことが度々あります。聴覚障害を有す当事者として、深い感動と感謝、この場に許容をされている、まさにインクルーシブな気持ちを抱いたりもしました。
 デフリンピックでは、海外から多くの選手も来日するため、大会の成功には国際手話の普及も重要です。大会準備を担う職員の手話研修の実施状況と、都内における国際手話人材の育成に向けた取組について伺います。
 次に、聴覚障害者や盲ろう者の参政権保障についてお伺いします。
 参政権は、全ての国民が保障されるべき権利であります。東京都において、点字や音声による選挙情報の提供や投票所でのバリアフリーなど、参政権保障に向けた取組の現状と今後の対応について伺います。
 続いて、情報保障機器への補助制度についてお伺いします。
 東京都として、情報保障機器の補助制度を、実際の生活実態に即して柔軟に運用すること、例えば、日中家族が不在の場合なども対象とすることについての見解を伺います。
 続いて、多文化共生についてです。
 外国にルーツを持つ多様な文化背景を持つ人々が共に支え合う社会となることは、多文化共生社会を推進する世界都市東京には重要な視点であると私は考えています。
 改めて、多文化共生社会を進めるための都の取組についてお伺いします。
 最後に、電話リレーサービスについてお伺いします。
 日本財団電話リレーサービスでは、従来、サービスを利用するには事前の利用者登録が必要でしたが、鳥取県や東大阪市では今年四月より、登録不要で、ウェブ上から直接かけられる新しい形の電話リレーサービスの提供を開始しました。
 鳥取県のホームページでは電話リレーサービスへのリンクを設け、登録していない方でも簡単にサービスを利用できるようになりました。東京都としても、鳥取県や東大阪市での柔軟な電話リレーサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
 また、制度の周知に向けた取組も重要です。インクルーシブな社会の実現に向け、東京都がこうした新たな挑戦に繰り出すことは、多くの自治体にとっても注目すべきことであり、見解を伺います。
 任期最後の一般質問に当たり、一言御礼を申し上げます。
 小池都知事をはじめ、東京都職員の皆様、そして同僚議員の皆様におかれましては、聴覚に障害のある当事者議員としての私の情報保障に真摯に取り組んでくださり、また、日々、多大なるご理解と温かいご支援を賜りましたこと、心よりお礼申し上げます。
 また、超党派で取り組んだ手話言語条例や情報コミュニケーションワーキングチームでの活動は大変意義深く、かけがえのない大切な経験となりました。改めて感謝申し上げます。
 今年は、いよいよデフリンピックが東京で開催されます。大会の成功に向けて取り組んでこられた関係各位の皆様には感謝しかありませんが、私も一助となることを申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 斉藤りえ議員の一般質問にお答えいたします。
 障害のある方への情報保障につきましてご質問がございました。
 障害の有無にかかわらず、誰もが自分らしく輝くことができる共生社会、これが私の目指す東京の姿でございます。
 都は、声を文字化する機器などを障害のある方に都の窓口で利用していただき、その意見などをメーカーに伝えることで、情報保障機器の開発や改善を支援しております。
 こうした取組を推進しまして、最新の技術も活用しながら、障害のある方への情報保障を進めてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁いたします。
   〔教育長坂本雅彦君登壇〕

○教育長(坂本雅彦君) デフリンピックの開催に係る学校の取組についてのご質問にお答えをいたします。
 デフリンピックの開催に向け、教育の現場でその意義を伝え、機運を盛り上げることは重要でございます。
 このため、都教育委員会は、子供たちのデフリンピックに関する理解が進むよう、聴覚障害者の団体と協力し、映像教材をつくり、学校現場での活用を図っております。
 また、都立のろう学校や高校にデフアスリートを招き、生徒等と交流する機会を設けるほか、小中学校での同様の取組に対して支援をしているところでございます。
 今後、ろう学校等の子供たちがデフリンピックを会場で見て、その運営の一部を担う取組の準備も進め、大会の重要性への理解と機運醸成に結びつけてまいります。
   〔スタートアップ戦略推進本部長吉村恵一君登壇〕

○スタートアップ戦略推進本部長(吉村恵一君) SusHi Tech Tokyoでの情報保障についてのご質問にお答えいたします。
 多様性はイノベーションの源泉であり、障害の有無にかかわらず、幅広く参加できる環境を整えることが重要でございます。
 SusHi Techでは、AI翻訳のスタートアップの協賛を得まして、音声の文字起こしが自動でできる携帯端末を希望者に無料で貸し出し、会場内の様々な会話やセッションを文字で確認できるようにしております。加えまして、小規模ステージでは、登壇者の発言内容をステージ上のモニターなどで表示する取組を行っております。
 今後とも最新技術を効果的に活用するとともに、周知をさらに進め、誰もが参加しやすいイベントにしてまいります。
   〔スポーツ推進本部長渡邉知秀君登壇〕

○スポーツ推進本部長(渡邉知秀君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、デフリンピックにおける情報保障についてでございますが、デフアスリートをはじめとした聴覚障害者が、円滑に情報を取得できるよう環境を整えることが重要でございます。
 このため、会場において、競技の情報など大型ビジョン等で提供することに加え、観客がスマートフォンでも同様の情報が取得できるよう、音声情報を文字化する技術も活用いたします。
 また、インターネットによる映像配信では、手話言語通訳や字幕なども活用し、競技の状況を分かりやすく伝えるなど、誰もが大会を楽しめるよう準備を進めてまいります。
 次に、大会を契機とした聴覚障害の理解促進についてでございます。
 都はこれまで、イベントでの手話体験の実施に加え、ウェブサイトでも社会で活躍するろう者を紹介するなど、様々な取組を進めてまいりました。
 とりわけ次代を担う子供たちに、手話や大会について学べるハンドブックを配布するとともに、アンバサダーやデフアスリートと一緒に楽しみながら、ろう者とのコミュニケーションを体験する特別授業も実施いたしました。
 今後、交通広告やSNSなど多様な媒体を活用して広報プロモーションを展開することで、大会に対する関心を高めるとともに、聴覚障害への理解促進につなげてまいります。
 最後に、職員の手話研修と国際手話人材の育成についてでございますが、デフリンピックを契機とし、手話言語への理解を深めていくことが重要でございます。
 このため、大会に携わる職員を中心に、ろう者とのコミュニケーションの一助となるよう、当事者を講師として、日本手話を学ぶ研修を実施しております。
 また、大会に向けて、広く都民を対象に、国際手話講座の受講費用を支援してきており、今後、大会のボランティアにも研修を行い、国際手話人材の裾野拡大を図ってまいります。
 こうした取組により、ろう者の文化への理解を促進するとともに、大会の成功につなげてまいります。
   〔選挙管理委員会事務局長川上秀一君登壇〕

○選挙管理委員会事務局長(川上秀一君) 聴覚障害者、視覚障害者の参政権の保障についてでございますが、参政権は全ての国民に平等に認められており、障害による制約を受けることなく行使できることは重要でございます。
 都選挙管理委員会では、選挙公報の点字版や音声版などを作成し、希望する方へ配布するとともに、選挙時に開設する特設サイトには音声版も掲載しております。
 また、投票所においてコミュニケーションボードや点字器等を配備するとともに、区市町村向けに障害に応じた接遇の研修や、各選挙管理委員会の取組事例の紹介を行っております。
 引き続き、区市町村選挙管理委員会と連携し、障害者に寄り添った対応を進めてまいります。
   〔福祉局長高崎秀之君登壇〕

○福祉局長(高崎秀之君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、聴覚障害者用の火災報知器などへの補助についてでございますが、障害者総合支援法に基づく日常生活用具給付等事業では、障害者の自立した暮らしを支える用具を給付対象としておりまして、火災報知器なども含まれております。
 本事業は、区市町村が地域の実情に応じて給付の対象となる品目、要件などを定めて実施しておりまして、都は、区市町村が利用者のニーズに応じて必要な給付を行えるよう、地域での導入事例を情報提供しております。
 次に、聴覚障害者への支援についてでございますが、都は、電話リレーサービスをホームページで紹介するほか、手話通訳者を介して、都庁や都の事業所に電話で問合せができる電話代理支援を提供しております。
 また、都の窓口においては、遠隔手話通訳サービスのほか、筆談やタブレット端末等による文字情報の提供など、様々な手段で聴覚障害者の意思疎通を支援しております。
   〔生活文化局長古屋留美君登壇〕

○生活文化局長(古屋留美君) 多文化共生社会に向けた都の取組についてお答えいたします。
 都はこれまでも、外国人が地域社会で安心して暮らせるよう、多言語での生活相談や、ごみ出しなど暮らしのルールを掲載した多文化共生ポータルサイトでの情報発信などを実施してまいりました。
 また、地域での住民同士のコミュニケーションの強化を図るため、区市町村と連携しまして、やさしい日本語の普及啓発や地域日本語教室への補助も行っております。
 これらを通じまして、外国人が地域の一員として暮らしていける多文化共生社会を形成してまいります。