令和六年東京都議会会議録第十三号

○副議長(増子ひろき君) 十三番桐山ひとみさん。
   〔十三番桐山ひとみ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○十三番(桐山ひとみ君) 質問の前に、石川良一議員のご逝去に際し、謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福を申し上げます。
 東京への人口集中は続いています。東京都の人口は、二〇〇〇年に一千二百万人を超えましたが、それからさらに二百万人増えて、現在は一千四百万人を超えています。
 東京だけが発展すればよいというのではなく、他の自治体と共に繁栄する取組が必要です。東京都、そして他の自治体も含めた国全体のパイを大きくするための大きな国家観に基づく戦略を東京都自らが示し、国や他の自治体、民間団体と協力をして実行していくことが求められていると考えます。
 初めに、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例についてです。
 職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントについては、事業主の雇用者に対する安全配慮義務の一環として法整備が進んできました。カスタマーハラスメントについても、その理念として広がることを期待しています。カスタマーハラスメントの基本理念は、都、事業者、就業者及び顧客等の責務規定において最も重要な規定です。
 都の条例案は、官民へのカスハラを対象としているようですが、第五条では、顧客等の権利を不当に侵害しないように留意するにとどまり、その基本理念に消費者の権利や住民の権利を掲げない理由を伺います。
 知事は所信表明で、実効性を確保するガイドラインと述べていますが、厚生労働省は行政指導通知やガイドライン、自民党のプロジェクトチーム報告書や国民民主党の法案は、カスハラ防止の責任は、事業主の雇用者に対する安全配慮義務の一環として事業者にあると明記することによって、実効性を担保しようとしています。
 しかし、都の条例案は、カスハラ防止は社会全体で解決するとされ、事業者の責務規定が就業者の後、一番最後に置かれています。
 接客をするのが非正規労働者であるという職場も多く、また、現在、政府で検討中の法律との整合性を考慮しても、カスタマーハラスメントの防止義務は、第一義的には事業者が負うべきだと考えますが、見解を伺います。
 事業者の責務として、条例案第九条第二項に、就業者がカスタマーハラスメントを受けた場合とありますが、このカスハラを受けたことを、何に基づき、誰が判断、認定するのか伺います。
 都の条例案は、何人も、いかなる場合においてもカスハラをしてはいけないと定めますが、地方自治法第十四条に規定する条例の適用範囲との関係が、カスハラ条例案では明確ではありません。
 都条例は、国の機関や区市町村の機関に対するカスタマーハラスメントにも効力が及び、都条例によりガイドラインを策定することとなるのか伺います。
 また、独立行政機関である都教育委員会にも都条例の適用があるのか伺います。
 就業者がハラスメントから守られ、安全配慮義務が進むことは大切であり、一方で消費者の正当な権利を守る施策となることを要望しておきます。
 明治神宮外苑再開発についてです。
 昨年九月十二日に都市整備局長と環境局長名で、三井不動産の事業者に樹木の具体的な保全策を求めてきました。そこから一年、事業者は本年九月九日に樹木のさらなる保全と新たな緑をつくる取組について、説明動画も併せて公開し、九月十一日には説明会開催のお知らせを公表しました。
 東京都への報告は九月九日以前だと考えますが、都への報告は、いつ、事業者の誰が、都の誰に、どの書類で、どのように報告をしたのか。また、その際、都からどのような話をしたのか伺います。
 次に、移植する樹木は全部で二百四十二本と聞いていますが、再開発の地域の中に移植場所があるのか、それとも都が移植場所を別に用意するのか伺います。
 また、移植による樹木保全には専門的知識が必要ですが、都では、誰が、どのようにして確認しているのか伺います。
 次に、英語スピーキングテストについてです。
 今年度から、YEAR3も含めて、中学校英語スピーキングテストの実施事業者がベネッセからブリティッシュ・カウンシルに変わりました。
 しかし、さきの文教委員会の質疑を通して、採点や音声データの検証に関する質問に対して、テストの公平、公正な運営上の観点から公表していないと答弁し、採点が公正に行われているかどうかの情報が全くありません。
 都立高校入試の採点は、各高校の教員が行い、その採点の責任は校長にあり、一定の信頼性を確保していますが、民間事業者を活用すれば、都民に情報公開しなくてよいというのは本末転倒で、納税者への説明責任の在り方として間違っているのではないでしょうか。
 都民に対する公金使用の情報公開の責任について、教育長の見解を伺います。
 次に、デフリンピックについてです。
 東京二〇二〇大会では、多様性を尊重し、共生社会の実現のために、パラリンピックの機運を高め、障害者への理解を促進してきました。しかし、パリのパラリンピックの放映も少なく、見る機会をつくれないことに、社会の現実を見ているようで残念でなりません。
 二〇二五年十一月には東京でデフリンピックが開催されます。デフリンピックの東京開催と手話言語条例はセットで進められてきたことも忘れてはいけません。
 聴覚障害者にとっての手話言語の理解と普及は、デフリンピックを契機に推進し、いつでもどこでも手話が使える環境の整備に弾みがつくことだと思いますが、大会に向けてどのような取組を行っているのか伺います。
 デフリンピックに向けて、特に若い世代の手話通訳者を育成し、かつ聴覚障害者が手話を習得できるような支援が必要ですが、手話通訳者の有資格者になるには四年から五年間かかり、学生が資格取得を諦めてしまう現実があります。
 私たち都議会は、二〇二二年六月、議員提案により手話言語条例を成立させました。条例に定めた大学との連携によって新しいカリキュラムを開発し、二年半から三年で資格を得ることが可能になります。
 大学等高等教育機関との連携や、手話奉仕員養成講座への支援など、若年層の手話通訳者や手話サポーターなどの育成を積極的に進めるための都の支援策について伺います。
 また、聴覚障害者にとって、地震等の災害時、その他の緊急時のアクセシビリティー対応は急務で、QRコードを読み取ることで利用できる遠隔手話サービスなどの遠隔支援体制の整備が必要です。
 都における遠隔手話サービスの整備と利便性の状況について見解を伺います。
 今後、都内医療機関や避難所も含め、遠隔手話サービスが利用できるよう拡充を求めておきます。
 最後に、障害者政策のさらなる推進について伺ってまいります。
 視覚障害者にとって、点字ブロックは命綱です。二〇二二年四月、奈良県で全盲の女性が踏切内で列車と接触し亡くなる事故が発生したことを受けて、国土交通省は二〇二四年一月、道路の移動等円滑化に関するガイドラインを改定し、踏切道内の誘導表示を標準的な整備内容として義務づけ、さらに構造を明確化しました。
 踏切道のバリアフリー化については、道路管理者と鉄道事業者が連携して取り組むことが重要であるとされており、今後は、国、都道府県、区市町村、それぞれ鉄道会社へ働きを行っていくこととなります。
 既に神奈川県では、法指定の踏切を今年度中に設置すると表明をしているようですが、都においても、改良すべき踏切道の指定について都道指定十二か所の踏切の改善を早急に行い、かつ区市町村道の踏切についても都が支援を行って、早急に改善を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 視覚と聴覚両方の障害がある盲ろう者にとっては、外出時の移動に困難を抱えています。盲ろう者にとっては車道の横断は、信号の色が見えない、音響用信号でも音が聞こえない、車の走行状況も見えません。
 パネルをご覧ください。その対策として、大阪府など複数の自治体では、上の部分を触ると、振動によって青信号だと知らせる信号機補助装置を導入しています。大阪で実際説明を受け、体験もしてきました。
 東京都でも、盲ろう者の利用頻度が高い東京都盲ろう者支援センター周辺の横断歩道に盲ろう者用の信号機を設置し、検証していくことが効果的と考えます。
 視覚と聴覚両方の障害がある盲ろう者が安全に車道を横断できることは重要ですが、警視庁の見解と取組について伺います。
 障害のあるお子さんの保護者にとって、親亡き後の住まいの確保は大変不安です。特に、東京では土地代が高いため、大規模な施設は家賃が高くなる傾向があり、障害者・障害児地域生活支援三か年プランでは、重度障害者に対するグループホームを整備する場合、補助基準額を一・五倍とするほか、民間事業者への特別助成の補助率を社会福祉法人並みに引き上げているとしています。
 重度障害者のグループホームの整備を促進するため、小規模な都有地の活用を事業者や区市町村に推奨することが効果的と考えますが、都の見解を伺います。
 リフト付福祉車両に対応した駐車スペースの確保についてです。
 車椅子使用者の駐車スペースが確保されるようになっていますが、後ろからスロープを使って乗り降りする場合、車両の長さプラス後方二・五メートルのスペースが必要で、それに対応できていない駐車場が多く、困難であるという声を聞きます。
 車椅子使用者の駐車スペース設置に当たって、後方スペースの確保も含めた義務づけをするべきだと思いますが、見解を伺います。
 以上で一般質問を終わります。(拍手)
   〔警視総監緒方禎己君登壇〕

○警視総監(緒方禎己君) 桐山ひとみ議員の一般質問にお答えいたします。
 盲ろう者の方に対する安全対策についてでありますが、警視庁では、視覚に障害のある方に対しては、バリアフリー新法に基づく手順により設定した重点整備地区を中心に、音響式信号機を整備しております。
 聴覚にも障害のある方に対しては、スマートフォンを通じて信号情報を振動でお知らせすることが可能な歩行者支援装置を音響式信号機に併設することを検討いたします。
 警視庁としましては、障害のある方が安全に道路を横断できるよう、これらの取組を推進してまいります。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) スピーキングテストに関する情報についてでございますが、採点など試験の公平、公正な実施、運営に関わる情報や、未確定の情報などを除き、法令等に基づき全て公開しております。
   〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕

○東京都技監(谷崎馨一君) 神宮外苑地区の樹木保全についてでございます。
 今回の見直し案は、都の樹木保全の要請に対して事業者として検討がなされ、都に報告されたものと認識しております。
 都からは、都民の理解と共感を得られるようしっかりと対応してほしいと伝えております。
   〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) カスタマーハラスメントについての四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、カスタマー・ハラスメント防止条例についてでございます。
 今般提出した条例案では、働く人から商品またはサービスの提供を受けるあらゆる人を顧客等と定義し、条例の適用に当たり、顧客等の権利を不当に侵害しないよう留意することを求めております。
 次に、事業者の責務についてでございます。
 今般提出した条例案は、労働法の枠組みで防止することが困難なカスタマーハラスメントについて、都独自の条例で対応を図るものであり、事業者のみならず、顧客等の責務についても規定しております。
 次に、条例案第九条第二項におけるカスタマーハラスメントの判断についてでございます。
 就業者がカスタマーハラスメントを受けた場合、顧客等や就業者からの情報を基に、事業者が事実を確認し、必要な対応を講ずることになります。
 最後に、条例の適用範囲についてでございます。
 条例案では、防止手引の作成などの措置を求める事業者につきまして、都内で事業を行う法人、国の機関を含むその他の団体または個人と定義しております。
   〔環境局長松本明子君登壇〕

○環境局長(松本明子君) 樹木の移植についてでございますが、事業者は、本事業の計画地内などに移植を検討し、その予定図をホームページに掲載してございます。
 移植の状況につきましては、今後、環境影響評価審議会に報告がなされることとなります。
   〔生活文化スポーツ局長古屋留美君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) デフリンピックを契機とした取組についてのご質問でございますが、開催基本計画では、デフアスリートとの交流や手話言語の理解促進などにより、互いの違いを認め、尊重し合う共生社会づくりに貢献していくこととしております。
   〔福祉局長山口真君登壇〕

○福祉局長(山口真君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、手話通訳者の養成についてでございますが、手話奉仕員や専門性の高い手話通訳者の養成は、障害者総合支援法により自治体の必須事業とされております。
 なお、都は、大学などと連携し、手話講習会やワークショップなどを行う普及啓発イベントを実施しております。
 次に、遠隔手話通訳サービスについてでございますが、都の窓口におきましては、遠隔手話通訳サービスのほか、筆談やタブレット端末などによる文字情報など、様々な手段で聴覚障害者の意思疎通に配慮を行っており、こうした取組を区市町村に情報提供しております。
 次に、障害者グループホームの整備についてでございますが、都は、障害者グループホームの整備を促進するため、施設整備の設置者負担を軽減する特別助成や都有地の減額貸付等を行っており、区市町村や事業者に周知しております。
 最後に、リフト付福祉車両の駐車区画についてでございますが、都は、福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルに、利用者に配慮した望ましい整備項目を掲載しており、車体後部からスロープやリフトが出る福祉車両に配慮した駐車区画の仕様を定め、事業者等に周知しております。
   〔建設局長花井徹夫君登壇〕

○建設局長(花井徹夫君) 踏切道のバリアフリー化についてでございますが、都は、道路の移動等円滑化に関するガイドラインに基づき取組を進めております。
 区市町に対しては、技術的な助言や国の補助制度の活用を促しております。