令和六年東京都議会会議録第十三号

○副議長(増子ひろき君) 五十一番五十嵐えりさん。
   〔五十一番五十嵐えり君登壇〕

○五十一番(五十嵐えり君) 大きく三つのテーマについて質問いたします。
 初めに、武蔵野東学園の友愛寮についてです。
 武蔵野東学園は、自閉症などの子供とそうでない子が共に学ぶ混合教育で人気の私立学校です。ところが今年の二月、突然、理事長が交代し、運営方針が大きく変更されて、子供や保護者の方に動揺が広がっています。
 特に、同学園が保有する友愛寮という障害を持つ方が暮らすグループホームでは、今年の四月に突然、学園から九月末に廃止と告げられ、利用者が退去を要請されています。
 都には、既に学園から廃止届が出されているとのことですが、入所者や保護者の方からは、転居先のグループホームが決まっていないにもかかわらず廃止になり、これまでの自分の生活の場が奪われかねないとの不安の声があります。今日の時点でも、まだ施設に残されている方がいるようです。
 私立学校とはいえ、障害者のグループホームという極めて福祉的側面の高い分野であり、都による適切な関与が極めて重要です。
 そこで、入居者のうち、行き先が決まらない方や転居に承諾されない方が一人でもいた場合には、障害者グループホーム友愛寮を閉鎖すべきでないと考えますが、都の見解を伺います。
 また、都として、障害者の生きる権利を守るために、利用者が行き場をなくしたり、これまでと異なる環境で困難に直面したりしないように、最大限の配慮をすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、大川原化工機事件について伺います。
 警視庁公安部は、事件の起訴取消し後に、事件に関して内部のアンケートを取ったという情報があります。新任の外事の課長が二〇二一年八月、外事課の捜査員全員を対象に実施したというものです。
 このアンケートにはこうあります。本意見聴取は未来志向型の検証です。今回の事案を受け、今後我々が事件を立件していく上で、地検や経産省のハードルが上がることは間違いありませんが、だからこそ、今回検証した結果が将来の我々の捜査に寄与できるよう、今後の捜査の在り方はどうあるべきかについて思いのたけを述べていただきたいのですとあります。
 組織として、内省と改善を目指すよいアンケートだと思いますが、なぜか現在も結果の公表はされていません。冤罪という重大な人権侵害を繰り返さないために検証が必要です。
 そこで、警視庁として、起訴取消し後に、こうした外事課でのアンケートを行った事実があったか、また、こうした意見聴取の結果、どのような意見があったのか伺います。
 また、今後、警視庁として、捜査に関与した職員に対して正式に意見聴取を行い、事件を真摯に検証すべきと考えますが、警視総監の見解を伺います。
 先ほど、静岡地裁は、袴田事件の再審で、捜査機関による三つの証拠の捏造を認定した上で、無罪の判決を出しました。冤罪は、関わる人たちの人生を破壊するものであり、警視庁にはこれを自覚した上での再発防止を強く求めます。
 最後に、武蔵野市で建設中の石神井川上流地下調節池整備事業についてです。
 豪雨による能登半島での深刻な被害など、この夏の状況を見ても、近年、日本各地、世界的にも、記録的な豪雨が発生しており、その意味で、都民の生命と財産を守るための氾濫、洪水対策は都政の最重要課題です。
 しかし、石神井川上流地下調節池の整備事業は、誤った根拠の上に、氾濫防止効果の乏しい事業なのではないかとの懸念があり、その観点から質問いたします。
 この事業は、私が三月十四日に予算特別委員会で質疑を行った後、都が国土交通省に補助金申請しましたが、費用便益分析に疑義があるとのことで保留になりました。その後、都は事業費を増額させる方向で見直し、費用便益分析、いわゆるBバイCを従前の一・三一から一・一一へと大幅に減少させ、修正案を作成し、今年の七月二十三日の専門家委員会に諮り直して、再度国へ提出し、九月二日に採択されたとのことです。
 しかし、都が、委員会や国に補助金を再申請に提出した資料には、資料そのものがこの事業の効果がないと示しているという重大な誤りがあります。
 関口健太郎都議が持ってくれているのがその問題の資料です。これは、都が今年の七月二十三日の専門家委員会に諮るために作成した石神井川上流地下調節池整備事業について、事業の投資効果と題する資料の一六ページの左の図を拡大したものです。現在も建設局のホームページに掲載をしておりますので、見えない方は、よければネットで検索をしてください。
 都の説明によれば、この費用便益分析は、河道は現状の時間四十ミリの降雨量に対応したままという前提で、三十万トンの貯水能力のある石神井川上流地下調節池のみの整備効果を示すものということですが、まずその前提でよいのか伺います。
 図に便宜的に、私がA、B、Cとつけました。ここではA点とC点に注目をいたします。
 A点には、ゼロ、無害流量規模、超過確率は二分の一とあります。これは現況の河道でもこのレベル、つまり時間最大雨量四十ミリであれば、川は氾濫せずに被害は発生しない、A点では被害は発生しないことを示しています。
 そして、そこから青線に沿った右のCに六百十六・五とあります。これは、河道整備は時間四十ミリ対応のままで、調節池が整備された後にも時間六十五ミリの降雨があった場合には川は氾濫して、六百十六・五億円の被害が生じるという意味です。
 そこで、この都が作成した図から疑問が生じます。この都が作成した図によると、調節池の超過確率と被害額の関係を示す直線AからCの青線には、調節池整備後とあるにもかかわらず、降雨量が時間四十ミリを超えると、すぐに川が氾濫して、近隣の住宅に被害が出始めることを示しています。
 都の作成図からは、こうとしか読めませんが、そういう理解でよろしいのか、見解を確認いたします。
 そうだとすれば、これは常識的にもあり得ないことです。少なくとも調節池整備後は、大雨時に地下に約三十万トン以上の水をためることができるのですから、その分、調節池整備後は、降雨量が時間四十ミリを超えても川は氾濫せず、被害は生じないという想定でなければ、都が一千三百十億円の税金を投じる意義がないからです。
 これでは、本事業の目的である時間六十五ミリの豪雨にも対応できません。なぜなら、繰り返しますが、調節池整備後も、時間四十ミリを超えると川が氾濫し、近隣に被害が出るという図になっているからです。
 加えて、国土交通省が定めた治水経済調査マニュアル(案)の五九ページの解説に従えば、都が作成したこの図では、A点を超すと、直ちにC点に向かって青線に沿って被害が発生していくために、便益ゼロを意味してしまいます。
 以上のとおり、都の説明資料には重大な誤りがあると思いますが、都の見解を伺います。
 私は、都が専門家委員会や国に提出した事業の必要性を示す基本的で重要な部分で、こんなでたらめな分析を行っている事業に、都の財源、国の補助金が使われるのは認められないと思います。
 ちなみに、ある専門家の試算によれば、この事業を整備した場合、河道整備を除いた時間五十五ミリの降雨量までは氾濫は起きないというように修正した場合、上流地下調節池の効果は明示されるものの、そのBバイCは一・〇を下回る、つまり事業の投資効果は認められないとのことです。
 これは、都は、激甚化、頻発化する豪雨に対応するため、効果のない石神井川上流地下調節池ではなく、もっと対策が必要なところに事業や工事を優先すべきということを意味しています。
 都は、こうした指摘を真摯に受け止め、当該事業の投資効果について再調査を行い、修正ないし補助金の辞退を国土交通省に申し出るべきではないですか。見解を伺います。
 知事、知事肝煎りのTOKYO強靱化プロジェクト、昨年末に二兆積み上げて総事業費十七兆円になっています、のうち、その事業の一つのエビデンスに疑義があるという指摘です。この初歩的な間違いを含んだ都の資料をさらしている状態は是正すべきという声があります。知事はこれを正面から受け止めて、建設局に対して費用便益分析の見直しを指示すべきと考えます。
 私は、この数か月間、地元の方々の熱心な取組に刺激を受け、石神井川はじめ、その他の調節池の問題に取り組んできました。そこで強く感じたのが、河川管理者である都の大型事業ありきの近視眼的な姿勢です。
 災害防止のために、河川整備は極めて重要です。しかし、その行政は、下水道に加える雨水管や近隣河川との連携、流域の滞水能力の向上、グリーンインフラなども含めた総合的な都市の雨水管理へと飛躍しなければなりません。
 私がこの質問で取り上げた石神井川上流地下調節池の整備計画に顕在した、都の作成資料そのものが何の効果もないという示す事業に猛進する唯我独尊の体質を早急に改めて、総合的に水を管理する行政へと転換することが必要です。それが納税者たる都民、国民への真摯な態度だと思います。
 このことを強くお願いをして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔警視総監緒方禎己君登壇〕

○警視総監(緒方禎己君) 五十嵐えり議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、ご指摘の事件に係る職員への意見聴取の事実及び内容についてでありますが、国家賠償請求訴訟が係属中でありますので、お答えは差し控えさせていただきます。
 次に、本件に対する今後の検証についてであります。
 本件事件の捜査に係る事実関係については、これまでも必要な確認を行ってきたところでありますが、控訴審での審理に対応していく過程で、さらに確認、整理を行ってまいります。
 なお、今回の件を契機として、公安部に捜査指導官を置き、証拠の吟味等を強化するとともに、幹部の研修を充実させ、指揮能力の向上を図るなど、部内教養をさらに強化している。引き続き、緻密かつ適正な捜査を推進してまいります。
   〔福祉局長山口真君登壇〕

○福祉局長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害者グループホームの廃止時の対応についてでございますが、障害者総合支援法では、事業者は、事業を廃止しようとするときは、届出を提出することとなっております。
 なお、その際には、利用者に必要な障害福祉サービスが継続的に提供されるよう、他の事業者との連絡調整等を行わなければならないと規定されております。
 次に、グループホーム利用者への配慮についてでございますが、都は、事業者から事業廃止の意向が示された場合、障害者総合支援法の趣旨にのっとり、利用者に必要な障害福祉サービスが継続的に提供されるよう、関係自治体と連携し、助言や指導を行っております。
   〔建設局長花井徹夫君登壇〕

○建設局長(花井徹夫君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、石神井川上流地下調節池の整備効果についてでございますが、都は、石神井川の目標降雨を年超過確率二十分の一の規模に設定し、平成二十八年に改定した河川整備計画において、豪雨の際に洪水を取水し、河川水位を低下させる効果を発揮する新たな調節池を複数位置づけました。
 このうち石神井川上流地下調節池の事業実施に当たり、国のマニュアルに沿って本調節池整備の有無による被害軽減効果を求め、費用便益比を適正に算出いたしました。
 次に、資料の図についてでございますが、国のマニュアルに沿って調節池の整備の有無による被害額の差などを算出した上で、河川整備計画策定専門家委員会において、年平均被害軽減期待額の計算の考え方を説明するために示したものでございます。
 次に、石神井川上流地下調節池の便益についてでございますが、都は、国のマニュアルに沿って調節池の整備の有無による被害軽減効果を求め、便益を適正に算出し、河川整備計画策定専門家委員会で学識経験者の意見を聴取した上で国に申請を行い、補助事業として採択されております。
 次に、石神井川上流地下調節池の費用便益分析についてでございますが、本調節池は、豪雨の際に洪水を取水し、河川水位を低下させる効果を発揮し、地域の治水安全度を早期に高める重要な施設でございます。
 都は、国のマニュアルに沿って費用便益比を適正に算出し、河川整備計画策定専門家委員会で学識経験者の意見を聴取した上で、国に申請を行い、補助事業として採択されております。
 最後に、石神井川上流地下調節池の整備についてでございますが、都は、国のマニュアルに沿って費用便益比を適正に算出しております。
 石神井川では、本年七月の豪雨や八月の台風において、南町調節池などで洪水を取水し、河川水位を低下させる効果を発揮しております。
 一方で、過去には浸水被害が発生しており、今後も気候変動による降雨量の増加が見込まれることから、地域の治水安全度を早期に高めるため、石神井川上流地下調節池の整備を着実に進めてまいります。