令和六年東京都議会会議録第十三号

○議長(宇田川聡史君) 九十四番菅原直志君。
   〔九十四番菅原直志君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○九十四番(菅原直志君) 教員の働き方改革について伺います。
 教員の業務負担を減らすため、都は、スクールサポートスタッフの配置や低学年へのエデュケーションアシスタントの配置、副校長の業務を手伝う学校マネジメント事業などに取り組んできました。今年度からは、学校に外部コンサルティングを派遣し、意識改革を進めております。
 現時点での取組状況や学校現場の気づきについて伺うとともに、現状、残業時間の削減に向けた取組につなげていくべきと考えますが、見解を伺います。
 都立高校の修学旅行の上限額は、教育委員会が決定をしています。今年三月には、国内旅行の上限額を一万円上げて、九万六千円としました。一方で、海外旅行は十一万五千円のまま改正されておりません。
 海外修学旅行は、物価高騰や円安の影響を受けており、実際には、全員で食べていたランチをフリーの個人負担にしたり、貸切バスをやめて個別に移動するなどの工夫をしています。安全面、衛生面から保護者からの心配の声が上がっております。
 保護者の負担に配慮をする上限額の制度は理解をしますが、一律に上限額を決めているのは国内で十三都県だけです。為替変動などに対応できない硬直化した上限額の制度を撤廃すべきです。
 教育プログラムとして、意図的で計画的であるべき修学旅行は、安全と衛生への配慮がされ、社会変動にも柔軟なものにすべきと考えますが、海外修学旅行について教育長の見解を伺います。
 子どもの貧困対策センターあすのばは、コロナ禍や物価高騰で一層深刻化する調査結果を公表いたしました。例えば、コロナにより世帯収入が減った家庭が半数、ダブルワークが必要になった家庭が三五%、食事を三回取れなくなった家庭が二割いることが分かってきました。
 国は、六月にこども貧困解消法を制定いたしました。子供の貧困の解消を明文化した画期的な法律です。
 都は今年度、子供・子育て支援総合計画の改定を進めております。
 都の計画改定にも子供の貧困の解消を明記するとともに、子供の貧困対策を行う支援団体と連携をし、具体的な取組を進めるべきと考えますが、見解を求めます。
 ギャンブル依存症は、WHOにより病的賭博とされ、適切な医療と回復施設での療養などが必要です。
 脳の働きによって、ギャンブルを続けたいと思わせてしまうことや、負けていても勝っているかのような錯覚を起こさせ、本人だけの意思ではやめられない病です。
 私も、当事者の会、家族会または回復施設などを訪問し、実態の把握に努めてまいりました。
 ギャンブル依存症は、本人が認めない否認の病であること、家族も大きな衝撃を受けること、成人の五%、二十人に一人にギャンブル依存症の疑いがあること、オンラインギャンブルなどにより若年の依存症が増えていることなど、多くの課題があります。
 都が進めているギャンブル等依存症対策推進計画の改定に当たっては、依存症の医療や回復に関わる実態の把握が重要です。関係者との十分な意見交換を踏まえた実効性のある計画とすべきと考えますが、見解を伺います。
 災害対策基本法の改正により、区市町村の努力義務となった個別避難計画は、障害者や高齢者など、大規模災害時に避難が困難な方々に対し、事前に避難方法や支援者を決めておく取組です。
 しかし、その策定状況は決して順調とはいえません。原因は、行政職員だけではなくて、地域住民や福祉関係者との連携が必要であり、定期的な見直しも必要なことが挙げられます。
 加えて、避難訓練の実施も求められており、重要性の認識はあれど、実際の計画策定が進んでおりません。
 そこで、区市町村が行う個別避難計画策定を加速するための取組が必要と考えますが、都の見解を求めます。
 東日本大震災以降、防災分野の市民団体などが成長し、このたびの能登半島地震では、多くの団体が独自の活動を展開しています。災害現場に強い市民団体と行政の連携が進めば、もっと有機的な復旧活動が展開できるという指摘があります。
 大規模災害に備えて、平常時から災害ボランティアや市民団体同士をつなぎ、行政を含めた関係の構築が重要です。都の見解を求めます。
 私は、百回以上の災害ボランティアの経験がありますが、活動拠点と宿泊場所の確保は基本です。
 これまで、あらかじめ都内の大学などを活用したボランティアの宿泊を受け入れるボランティアテント村を提案してきていますが、都としても様々な団体が安心してボランティアの受入れができるように取り組むべきです。
 能登半島地震では、ボランティアの宿泊場所の不足が顕在化しましたが、首都直下地震でも同じことがいえます。
 都として、今回の能登半島地震で実施したボランティア支援の成果を踏まえ、ボランティアの受入れの検討を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 二〇〇七年、埼玉県川口市で起きた保育園児二十一人が死傷した交通事犯をきっかけに広まったゾーン三十を踏まえ、国は、センターラインのない道、生活道路について、二年後の九月から原則三十キロにする、こういう方針を発表いたしました。
 私は、事件の被害者遺族と交流をしながら、ゾーン三十の政策を進めてきた立場として、大きな期待を寄せております。
 並行して、歩車分離信号の推進も効果的です。一九九二年に八王子市で起きた交通死亡事件のご遺族によって、歩車分離信号が提唱されました。私も何度も現場を訪問し、ご遺族と交流をしてきました。
 人間の注意力に頼った交差点ではなく、歩行者と自動車を物理的に切り離すのが歩車分離信号です。
 この歩車分離信号は、都としても取組を進めておりますが、数値目標を立てるなど、さらなる加速をすべきと考えます。警視総監の決意を伺います。
 児童虐待相談が年々増加して深刻化しており、こうした状況に対して迅速かつ的確に対応するためには、児童虐待情報を児童相談所と警察が即時共有するためのリアルタイムでの情報システムの構築が重要です。その必要については、予算特別委員会にて前向きな答弁をいただいています。都として導入を急ぐべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 ACP、アドバンス・ケア・プランニングとは、自らが望む人生の最終段階における医療、ケアについて前もって考えて、医療、ケアチームと一緒に繰り返し話し合い、共有する取組やプロセスをいいます。
 近年、在宅のみとりが増え始めました。在宅のみとりは、住み慣れた自宅で、本人の生活スタイルで過ごせるメリットがあります。面会時間などの制限もないのが特徴です。しかし、東京の住宅事情や在宅医療提供体制の整備などの課題も顕在化しています。
 国の調査によると、六九%が自宅で死にたいと考えているにもかかわらず、実際は七二%が病院で亡くなっています。このミスマッチの解消に取り組むべきと考えます。
 知事は、東京大改革三・〇で、最後まで自宅でかなえる在宅医療介護支援強化を訴えました。
 ACPの考え方を踏まえ、都民の全人的な医療としての在宅のみとりを推進すべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 日野橋の架け替えについて伺います。
 日野橋は、一九二六年に完成し、多摩川に架かる現存する橋としては二番目に古い橋でございます。大正時代から地域の暮らしを支えてきました。
 この日野橋は、五年前の台風十九号によって橋脚が沈下しました。沈下直後に小池都知事には現地視察をしていただき、早急に架け替えるよう方針が示されました。地元の日野市からも大きな期待の声があります。日野橋の架け替え事業の取組状況について伺います。
 都立日野高校に隣接する土地の活用について伺います。
 日野高校の隣に、下水道局水再生センターの土地があります。日野高校からは、この土地の活用についての要望もあり、調整が進んできました。
 日野高校六十周年を迎えるタイミングで、この土地を有効活用できるよう、都としての取組を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 菅原直志議員の一般質問にお答えいたします。
 児童相談所と警察との情報連携についてのお尋ねがございました。
 児童相談所におけます虐待相談件数は、増加の一途をたどっております。
 都は、深刻化する児童虐待に迅速かつ的確に対応するため、リスクが高いと考えられるケースの全てを警察と毎月共有しておりまして、緊急性が高いケースについては、その都度提供いたしております。
 今後、児童相談所と警察がより迅速かつ緊密に連携して対応できますよう、児童虐待に関する情報をリアルタイムで共有できる仕組みを構築し、来年度から運用を開始いたします。
 こうした取組によりまして、警察との連携を一層深めながら、児童虐待防止に全力で取り組んでまいります。
 次に、在宅でのみとりについてであります。
 人生の最期を住み慣れた自宅で迎えたいと望む方々の願いをかなえるためには、都民や医療、介護関係者等のみとりへの理解を深めるとともに、地域の在宅療養体制の整備を進めることが重要であります。
 このため、都は、自らが望む医療やケアについて、家族や医療、介護関係者等とあらかじめ話し合い、共有する取組を推進するとともに、地区医師会と連携しまして、二十四時間の診療体制を構築する地域のさらなる拡大に取り組んでおります。
 今後、こうした取組を一層進めまして、都民一人一人が人生の最期を望みどおりに迎えられる環境を整えてまいります。
 なお、その他の質問につきましては、警視総監、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔警視総監緒方禎己君登壇〕

○警視総監(緒方禎己君) 歩車分離式信号の整備についてでありますが、歩車分離式信号は、人と車の事故を抑止する効果的な信号制御であることから、公共施設や通学路の付近等を重点に、令和五年度末現在で、都内一千五百六十六か所に整備を行っております。
 今後も、過去の交通事故発生状況に加え、通学路等の安全確保や地域住民の要望のほか、交差点の形状や交通量などを踏まえ、歩車分離化の効果と影響を総合的に勘案し、交通の安全と円滑を考慮した整備を推進してまいります。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、学校の働き方改革についてでございますが、学校や教員の業務が増加する中、業務の適正化を進め、働き方改革の実効性を高めることが重要でございます。
 このため、都教育委員会は、小中学校等四校において、コンサルタントを学校に派遣し、教員の日常業務の実態を詳細に把握することで、学校が担う必要のない業務や効率化が可能な業務等の精査を行っております。
 実施校では、コンサルタントを交えたワークショップを実施する中で、参加した教員から積極的な業務改善の提案が行われるなど、改革意欲が高まっています。
 今後、改善のプロセスや成果、在校等時間の縮減効果などをまとめて発信することで、働き方改革を加速してまいります。
 次に、海外修学旅行についてでございますが、都立高校生等が海外を訪問し、外国の文化や生活等に直接触れたり、海外の高校生と交流したりすることは、多様な物の考え方を知る上で重要でございます。
 各校は、生徒がこれまで身につけた外国語の能力を活用して現地校との交流活動を行うほか、企業を訪問するなど、海外修学旅行が生徒にとって世界を知る有効な教育プログラムとなるよう工夫しています。
 都教育委員会は、保護者の経済的負担を考慮した上で、一層、社会情勢や生徒の実態に即した海外修学旅行となるよう、学校からの相談に対して助言をしてまいります。
 次に、都立日野高校に隣接する土地の活用についてでございますが、都教育委員会では、同校の校舎の改築工事を完了し、現在、グラウンド改修工事を行っております。
 今後、こうした工事を行うことと併せ、隣接する水再生センターの土地の利用について、学校の要望や利用計画を確認した上で、具体的に必要な調整を行ってまいります。
   〔福祉局長山口真君登壇〕

○福祉局長(山口真君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、子供の貧困についてでございますが、子供の貧困の解消には、福祉、教育、就労など、様々な分野の関係機関が連携し、総合的に対策を進めることが重要でありまして、都は、生活に困窮する子育て家庭の支援や、子供の居場所の提供に取り組む区市町村を支援してまいりました。
 次期子供・子育て支援総合計画の策定に向け、現在、子供・子育て会議において検討を行っておりまして、委員から、子供の貧困対策を計画の目標の一つに位置づけるべき、相談しやすい環境が必要などの意見があったほか、子供の貧困の実態等をより詳細に把握するため、関係団体のヒアリングも実施いたしました。
 こうした議論なども踏まえまして、子供の貧困解消に向け、取組の充実を検討してまいります。
 次に、ギャンブル等依存症対策推進計画についてでございますが、ギャンブル等依存症は、病気という認識が薄い否認の病であることや、家族などにも深刻な影響を与えることから、早期に適切な支援につなげる必要がございます。
 都は、現行計画に基づき、予防、発症、再発防止の段階に応じた切れ目のない支援や医療提供体制の整備など、地域における包括的な支援の取組を推進してまいりました。
 現在、支援団体や依存症治療拠点医療機関等で構成する推進委員会において、相談支援体制の充実や行政と支援団体との連携推進に向けた方策などを議論しておりまして、今後、こうした議論や精神保健福祉センターでの相談事例、国の実態調査の分析なども踏まえ、計画改定を進めてまいります。
 最後に、個別避難計画の作成についてでございますが、障害者や高齢者など、避難行動要支援者の災害時における円滑な避難を実効性のあるものとするためには、区市町村が行う個別避難計画作成の取組を促進することが重要でございます。
 計画作成には、自治体内の防災、福祉等関係部局間の連携や福祉専門職の参画等が必要なことから、都は、区市町村における体制整備や関係機関との連携など、具体的な方策や手順を盛り込んだ手引を新たに作成するとともに、福祉専門職への研修経費等、必要な費用の一部を補助しております。
 今後、これらの活用を促進しまして、区市町村における個別避難計画の作成が一層進むよう取り組んでまいります。
   〔生活文化スポーツ局長古屋留美君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) 二点のご質問にお答えいたします。
 災害ボランティアや市民団体との連携についてでございますが、能登半島地震において、多くの災害ボランティア団体が発災直後から被災地で復旧、復興活動を行うなど、災害の支援に当たり、市民団体の活動は重要となっております。
 都は、地域の社会福祉協議会やNPOなどの支援団体と、日頃から災害時に設置するボランティアセンターの在り方について情報交換を行っているほか、都の総合防災訓練では合同で活動を行いまして、関係の構築を図っているところでございます。
 あわせて、今年度からは、都内のボランティアセンターの間でデジタルツールを活用した情報共有の実証実験を行っているところであります。
 大規模災害の発災時において効果的に連携、協働できるよう、平時からネットワークの強化に取り組んでまいります。
 次に、災害ボランティアの受入れの拠点についてでございますが、災害発生時において、支援団体やボランティアが復旧、復興活動を円滑に進めるためには、活動拠点を確保することが重要でございます。
 都は、能登半島地震における被災地の宿泊施設の不足の状況から、活動拠点を設けまして、都内から参加するボランティアの支援を行っております。参加者からは、宿泊場所が確保されていたので参加しやすかった、支援場所へのアクセスがよく、移動の負担が少なかったとの声をいただいております。
 こうした支援を通じて得られた経験や知見を生かしまして、東京都社会福祉協議会や支援団体と、受入れの拠点に関して検討を進めてまいります。
   〔建設局長花井徹夫君登壇〕

○建設局長(花井徹夫君) 日野橋の架け替え事業の取組状況についてでございますが、日野橋は、古くから甲州街道の要衝となっており、地域の連携強化に資するとともに、災害時には、緊急輸送道路として、防災上重要な役割を担う都市基盤施設でございます。
 本橋梁は、架橋から約百年が経過し、老朽化が進んでいることから、架け替えることといたしました。令和二年度から、工事中における交通機能の確保に必要な仮橋工事に着手し、令和五年度までに橋桁の架設が完了いたしました。現在、仮橋に接続する取付道路の工事を進めており、令和七年の春頃に交通を切り替える予定でございます。
 引き続き、橋梁本体工事の早期着手に向けて、着実に事業を推進してまいります。