令和六年東京都議会会議録第十三号

○副議長(増子ひろき君) 三十九番うすい浩一君。
   〔三十九番うすい浩一君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○三十九番(うすい浩一君) 初めに、災害ケースマネジメントについて質問します。
 一たび首都直下地震が起きれば、その被害は甚大であり、多くの都民が被災することは想像に難くありません。
 被災者一人一人に寄り添い、きめ細やかな支援を行うことで早期の生活再建を実現していくためには、平時から被災者支援の体制を構築しておくことが極めて重要であります。
 国が掲げる災害ケースマネジメントでは、区市町村は、被災者支援の主体として、被災者の抱える課題を把握するアウトリーチや専門家等と連携した支援などを行うことが想定されています。
 都は、今年三月の予算特別委員会での区市町村を支援すべきとの私の質問に対し、弁護士会や行政書士会など専門家と連携して、区市町村の取組を支援すると答弁がありました。
 そこで、区市町村による被災者支援の一層の推進のために、具体的な支援に取り組むべきです。都の見解を求めます。
 次に、コンクリート舗装の採用について質問します。
 コンクリート舗装は、アスファルト舗装に比べ、耐久性に優れるほか、災害発生時における被害の軽減なども能登半島地震の際に見ることができました。
 都内の道路では、地下埋設物が多いため、補修性などの観点からアスファルト舗装が主流でありますが、強靱化の観点から、例えば、地下埋設物の少ないところでは、コンクリート舗装の採用を検討すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、認知症施策について質問します。
 二〇一五年に国が発表した予測によると、二〇二五年には、高齢者の約五人に一人が認知症になるといわれる中、私は、二〇一七年の第三回定例会以降、予算特別委員会を含め、認知症の早期発見と対応の重要性を繰り返し訴え、都も様々な施策を展開してまいりました。
 本年五月に厚生労働省の研究班が発表した推計結果によれば、二〇四〇年には、認知症になる人は全国で約五百八十四万人、また、軽度認知障害の人は約六百十二万人に上るとしています。
 朗報として、昨年十二月には、アルツハイマー病の新たな抗体医薬レカネマブの販売が開始されたところであります。しかし、投与の対象は早期の方に限定されており、対象になるか診断するためには、原因となるたんぱく質の脳内での蓄積状況を検査する必要があります。現在は、脳のPET検査や脳脊髄液を採取し分析する検査が主流であり、患者にとっては、経済的にも身体的にも負担があります。
 そこで、二〇二〇年に東京都健康長寿医療センターに設置された認知症未来社会創造センターにおいて、認知症の早期診断につながる血液バイオマーカーの研究を実施してきたところですが、進捗状況と今後の取組について見解を求めます。
 また、認知症の検診後の支援も重要であります。今年三月の予算特別委員会において、私は、検診で認知症の疑いがあると診断された方やその家族への相談支援等の充実を提案し、都は、区市町村を支援し、本人や家族等が孤立して悩むことのないよう、早期の相談支援につなげていくと答弁がありました。
 また、昨年第三回定例会の都議会公明党の代表質問、そして、今年三月の予算特別委員会の締めくくり総括質疑において、共生社会実現のための認知症基本法を踏まえて認知症施策推進計画の策定を進めるよう、一貫して求めてまいりました。
 都は、現在検討されている認知症施策推進計画の中に取り上げるなど、診断後支援をさらに充実していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、リカレント教育について質問します。
 人生百年時代において、生涯にわたり自己のスキルや知識をアップデートするリカレント教育は、キャリアの継続や生き生きと豊かな人生を送る上で重要な要素と考えます。
 私は、学び直しをしたいと考える都民を後押しするため、様々な情報を集約したポータルサイトの構築を提案し、都は、令和四年三月に東京リカレントナビを開設しました。このサイトは、各局や大学等が提供する講座を分野別に紹介し、学びの動機づけとなる動画も多数掲載され、都民のリカレント教育に寄与するものであります。
 開設以降、私の地元足立区の三つの大学も参加するなど、掲載する講座数は増加し、都民にとって学び直しの選択肢が充実してきたことを評価するものであります。
 そこで、リカレント教育をさらに推進していくために、学びたいと考える誰もが、数多くの講座から自分の興味や関心度に応じて希望する講座に行き着くよう、都民の学び直しのニーズに応えるポータルサイトとして一層の拡充を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 リカレント教育の充実に向けては、地域住民のニーズを踏まえ、地域の学びの拠点である大学等を活用することは有効であります。若者から高齢者まで幅広い世代が出会うことで、新たな交流が生まれるほか、継続的に通うことで、生きがいを育む居場所となることが期待できます。
 私の地元足立区には、六つの大学があり、区は大学と連携し、区民の生きがいづくり等も積極的に進めています。
 しかし、大学によっては、経費負担などの課題もあると聞いており、こうしたことで取組が一過性となることがあってはならないと考えます。
 継続的に実施することで、コミュニティの形成にも寄与することにつながり、シニア世代も健康に集い、健康に楽しみ、健康に学ぶという効果が期待できます。
 こうした積極的な取組に対し、都も必要な支援をしていくべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 次に、地域公共交通の区市町村の支援について質問します。
 都内のバス路線では、コロナ禍による需要減少や二〇二四年問題による運転士不足等により、減便、廃止が生じており、区市町村は、地域の足を確保するための早急な対応が求められています。
 また、私の地元の足立区においても、路線バスの一部が廃止となり、区は新たな交通手段の検討や住民等が主体となった交通手段の導入に対するサポート制度を開始しています。しかし、地域公共交通は専門性が高く、専門家からの助言も有効と考えているが、区単独では、専門家の把握や住民との連携方法の習得が困難であるという声も聞きます。
 区市町村における専門家の活用について、都が支援すべきと考えますが、見解を求めます。
 多くの区市町村は、交通空白地域へのコミュニティバスの導入に取り組んでいます。近年は、デマンド交通など新たな交通モードが登場してきており、導入の際には、実証実験により利用者ニーズの把握等を行うことが効果的であります。交通モードの検討に当たり、都の補助制度を活用することができれば、区市町村の取組の後押しになると考えます。
 都は、区市町村による実証実験の取組を支援していくべきです。見解を求めます。
 次に、都立中川公園の整備について質問します。
 私の地元足立区の中川公園は、震災時の避難場所に指定されていますが、建物の屋上部分に設置されているという特徴を生かし、水害時の活用についても期待されています。
 本公園のうち、中川水再生センターの屋上部分、いわゆるA地区と呼ばれているエリアでは、屋上に突起状のトップライトがあり、公園の使い勝手を妨げているため、我が党は、早期の撤去と公園整備を要請し、下水道局において、本年八月で撤去を完了していただいたところです。
 トップライトの撤去後の利用については、中川公園が運動公園に位置づけられていることも踏まえ、地元の意向を聞きながら、公園の整備を進めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、都立中川公園に隣接する下水道局の施設、土づくりの里について質問します。
 この施設は、下水道工事の際に発生する土を受け入れて、埋め戻し用の土として再利用することで、建設資源を有効活用している施設であります。昭和六十三年から暫定の施設として稼働してきましたが、土ぼこりもあることなどから、移転を望む声も多くありました。
 そのような中、下水道局は、老朽化した土づくりの里の再構築に当たり、恒久的な下水道施設として位置づけをし、その上部に覆蓋を併せて建設することを提案し、施設見学会や地元住民の方々の意見交換を幾度も重ねた後、その提案が地元に受け入れられることとなりました。土づくりの里の覆蓋化完成後は、覆蓋上部を隣接する中川公園と一体的に公園として活用することとなっています。
 公園の整備に当たっては、地元や関係機関で構成される中川公園整備検討協議会から、公園の整備方針として、大規模水害を想定した防災活動の中心拠点やサッカー場などのスポーツ施設の整備といった内容が要望されています。地域住民は、公園整備の土台となる覆蓋化の早期完成を期待しています。
 そこで、覆蓋化事業の完成に向けた都の取組状況について見解を求めます。
 最後に、綾瀬川における河川整備について質問します。
 現在、綾瀬川では、耐震対策を実施するとともに、足立区内の六町地区において、区画整理事業に合わせて、緩傾斜型堤防の整備が進んでおり、一刻も早い完成が望まれるところであります。整備に当たっては、人々が快適に利用できるために、芝生などの植栽のほか、ベンチや照明、防犯カメラの設置が望まれます。
 また、綾瀬川では、下流の小菅一丁目地区においてスーパー堤防が整備されており、例えば、六町地区から小菅一丁目地区までつなげるなど、川に親しめる空間をさらに広げていくことについて、足立区とも連携して進めていくべきです。
 そこで、綾瀬川における六町地区などの整備状況と今後の取組について、都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) うすい浩一議員の一般質問にお答えいたします。
 リカレント教育についてのお尋ねでした。
 東京の高齢化が急速に進む中、シニア世代が生涯を通じ学びを続ける機会を提供することは不可欠であります。特に優れた知識や経験を持つ高齢者に、大学を通じ高度な学習を可能とすることは重要な視点であります。
 東京の様々な大学の講座をデジタルのプラットフォームを通じ高齢者に紹介し、受講につなげる仕組みを立ち上げております。都立の大学では、シニア世代が本格的な学習や研究を行うコースの充実を進めるとともに、起業を後押しするプログラムも提供しております。
 今後は、高齢者が身近な地域にある大学で学び直しを進める機会を増やすため、区市町村と協力し、講座や実習の内容のきめ細かな紹介などに力を入れてまいります。
 こうしたリカレント教育の普及を通じ、高齢者が生き生きと暮らす社会の充実を図ってまいります。
 なお、その他の質問につきましては、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕

○東京都技監(谷崎馨一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地域公共交通における専門家の活用についてでございます。
 地域公共交通の導入に当たっては、区市町村が専門家の客観的視点、技術的観点からの助言を得て、住民等と議論することが効果的でございます。
 都は、都内自治体が設置する地域公共交通活性化協議会等に参画している専門家を他の自治体へ積極的に紹介、仲介してまいります。また、区市町村の職員が参加する行政連絡会におきまして、有識者等との意見交換の場を設定し、住民との連携方法等に関する知見が深まるよう促してまいります。
 引き続き、区市町村への支援を通じ、地域公共交通の確保に取り組んでまいります。
 次に、地域公共交通の導入に向けた支援についてでございます。
 区市町村が地域公共交通を導入する際は、実証実験を通じて、交通モードや運行ルートなどの運用方策につきまして検討することが効果的でございます。
 都は、区市町村に対して、実証実験も含め、地域公共交通の導入等に係る調査検討費を補助しております。
 一方で、この補助制度を活用した実証実験の事例が少ないことから、補助対象であることを要綱に明記するとともに、行政連絡会で周知し、活用を促してまいります。
 今後とも、地域公共交通を主体的に担う区市町村の取組を支援してまいります。
   〔総務局長佐藤智秀君登壇〕

○総務局長(佐藤智秀君) 二点の質問にお答えをいたします。
 まず、区市町村による被災者支援についてのご質問でございます。
 被災者が抱える様々な生活相談に応じ、一人一人に寄り添った支援が行えるよう、都は、区市町村の求めに応じて、協定を締結している弁護士会、行政書士会等を含む二十団体から専門家を派遣することとしております。
 今年度は、新たに、区市町村職員向けの講習会を開催し、他自治体の好事例や専門士業団体が実施している被災者支援の取組などを周知することで、区市町村における専門家等との連携体制の構築などを促進いたします。
 こうした取組を着実に進め、きめ細かい被災者支援の実現につなげてまいります。
 最後に、東京リカレントナビについてのご質問でございます。
 都では、都民の学び直しを後押しするため、各局や都内の大学等が提供する多様な教育コンテンツをポータルサイトで紹介しており、カテゴリーや目的等による検索機能などを通じて、利用者が幅広い講座の中から興味、関心に応じて選べるよう工夫してまいりました。
 今後は、個々の学習レベルや希望するテーマで講座をより細かく検索できるよう改善いたします。加えて、ニーズが高いDXや医療福祉の分野ごとの特集ページを設け、何をどの順番に学べばよいか、初学者向けの学びの道筋を示し、お勧め講座を紹介するなど、自分に合った講座を探しやすくなるよう、サイトのさらなる充実を図ってまいります。
   〔建設局長花井徹夫君登壇〕

○建設局長(花井徹夫君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、コンクリート舗装の採用についてでございますが、コンクリート舗装は、施工後、交通開放までに時間を要することなどの課題がある一方、耐久性が高いといった特徴を有しております。
 これまで、山間部の地下埋設物が少ない箇所やアスファルト舗装の施工が困難な箇所でコンクリート舗装を採用してまいりました。
 コンクリート舗装につきましては、山間部におけるトンネルの新設や急勾配の道路の打ち替え時などにおきまして、現場の状況を考慮しながら採用を検討してまいります。
 次に、中川公園の整備についてでございますが、本公園は、避難場所としての役割を担うとともに、スポーツやレクリエーションの場としても親しまれるなど、地域にとって重要な公園でございます。
 これまで、防災トイレや、子供の遊びや運動に利用される広場の整備、老朽化した施設の改修など、着実に整備を進めてまいりました。今年度は、水再生センターの上部エリアについて、インクルーシブ遊具や非常用照明の整備を進めるとともに、テニスコートの設計に着手いたします。
 今後も地元区が設置した協議会において、自治会との意見交換を行うとともに、区や下水道局と連携を図りながら、本公園の整備に取り組んでまいります。
 最後に、綾瀬川における河川整備についてでございますが、都はこれまで、耐震補強工事を計画的に実施してきており、今年度、対策延長約十一キロメートル全てが完了いたします。
 また、足立区の六町地区においては、区画整理事業に合わせた緩傾斜型堤防の整備を進めており、人々が快適に利用できるよう、植栽やベンチを設置する修景工事が今年度内に完成いたします。整備後は、堤防天端と川側の遊歩道を開放いたします。今後、遊歩道などの利用状況を踏まえ、川に親しめる空間整備の方向性について、地元の意見を伺うなど、区とも連携を図ってまいります。
 綾瀬川において、安全で魅力的な水辺空間を創出してまいります。
   〔福祉局長山口真君登壇〕

○福祉局長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、認知症検査に関する研究についてでございますが、東京都健康長寿医療センターでは、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドべータについて、脳内での蓄積状況を血液検査で判別できるバイオマーカーの研究開発に取り組んでおり、そのバイオマーカーを検査する試薬について薬事承認を取得しております。
 今後、広く臨床現場で活用されるよう、医療機器メーカーなどとも連携しながら、診断精度の向上を図るなど、引き続き研究開発を進めまして、患者の経済的、身体的負担が少ない認知症検査の実用化につなげてまいります。
 次に、認知症の診断後の支援についてでございますが、都は今年度、TOKYO認知症施策推進プロジェクトを開始し、検診の対象年齢を拡大するとともに、検診の結果、認知症の疑いと診断された方に対する定期的な連絡や訪問を行う区市町村への支援などに取り組んでおります。
 現在、認知症施策推進計画の策定に向け、専門家会議において議論を行っておりまして、委員からは、診断後の本人やその家族への心理的支援の必要性や取組の充実等について意見をいただいております。
 今後、こうした意見なども踏まえ、計画策定の議論の中で、診断後の支援の推進等について検討を進めてまいります。
   〔下水道局長佐々木健君登壇〕

○下水道局長(佐々木健君) 土づくりの里の覆蓋化についてでございますが、土づくりの里は、下水道工事における建設発生土を改良し、地震時の液状化に効果がある埋め戻し用の土として再利用する極めて重要な施設でございます。
 施設の再構築に当たりましては、早期に上部利用を図るため、施設上部の覆蓋工事を二期に分けて実施し、現在、本体工事に先立つ掘削工事を実施中であり、来年度より覆蓋の基礎工事に着手する予定でございます。
 第一期工事の令和十二年度完了に向け、新たに、民間企業の技術提案を活用し、安全かつ効率的な施工方法となるよう、工夫しながら事業を実施し、覆蓋化事業を着実に推進してまいります。