○副議長(増子ひろき君) 七番漢人あきこさん。
〔七番漢人あきこ君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○七番(漢人あきこ君) 小池知事への最後の一般質問となりました。グリーンな東京、漢人あきこです。
知事は、八年前の都知事選で東京大改革宣言を掲げて立候補、都政の転換を求める都民の期待を受けて当選しました。
ところが、都民の声に耳を傾けず、守るとした環境を破壊し、大型開発優先のまちづくりを加速してきました。二〇三〇年カーボンハーフの実現も相当に困難で、基本的な人権認識の欠如もあらわになっています。
まず、環境を破壊し、民意に反する都市計画道路小金井二路線について質問します。
二〇一六年の第四次事業化計画で、小金井三・四・一号線、三・四・一一号線ほかの二路線が優先整備路線に選定され、その直後の都知事選挙に立候補した小池百合子候補は、小金井二路線について、市民団体のアンケートで次のように回答しています。
優先整備路線の決定に当たっての意見書の提出件数も群を抜いており、知事に就任したら、実際に巡視し、地域住民とも対話し、優先整備路線に位置づけることが不適切だと判断される場合には、必要に応じ見直しを進めていきたい、道路の新設に関しては、将来需要、費用対効果、地域住民の合意、地元区市町村や区市町村議会の意向、自然環境への影響などを多角的に分析して、着手するかしないか判断すべきというものです。
道路予定地には、全国二十七か所、都内では唯一の自然再生推進法に基づく自然再生事業の対象地区や、関連地区の野川、はけの森、武蔵野公園が含まれます。都や市民等の多様な主体が参加し、生物多様性豊かな自然環境の保全と再生に取り組み、成果を上げてきた貴重な地域です。
二一年には環境概況調査委託報告書が公表され、植物の七〇%近くが在来種で、植物、昆虫、野鳥などに多くの重要種が存在し、猛禽類も生息する豊かな生態系が改めて明らかになり、道路構造によっては生育できなくなることのほか、環境変化により間接的影響を受ける可能性があるとの警鐘も鳴らされました。
周辺にはオオタカが舞い、蛍もよみがえりました。生物多様性地域戦略でも崖線の重要性がうたわれ、武蔵野公園の生物多様性保全利用計画も策定されています。
気候と生物多様性の危機は深刻化し、コロナ禍にも見舞われ、多様な生態系の重要性はますます高まっています。二路線周辺の自然環境、生物多様性についての知事の現在の認識をお伺いします。
優先整備路線の選定理由は自動車交通の円滑化で、渋滞の解消を重要課題としていますが、この間、交通量は減少し、渋滞も解消傾向にあり、道路の必要性の最大の根拠は失われつつあります。
一昨年の予定地地権者への市民団体のアンケートでは、約七五%が反対し、前市長は、市民合意のない事業化は認めない、現市長は、二路線の事業化中止を表明しています。道路の必要性の低下、住民合意の欠如について、認識を伺います。
第四次事業化計画は、十年の事業化期限まで二年を切りました。知事になられた初心に基づき、小金井二路線の事業化中止の決断を求めます。お答えください。
次に、まちの将来像を根底から覆す公園まちづくり制度や、都民の暮らしとかけ離れた都市整備について伺います。
神宮外苑の再開発計画は、知事が樹木伐採の見直しを重ねて要請するという異例の展開となっています。高まる都民の批判に対し、開発推進の立場を修正せざるを得なくなったということです。
しかし、再開発計画の抜本的な見直し抜きに、実効ある樹木の保全は極めて困難です。都民の批判は、事業者利益を優先し、巨大ビル構想やスポーツ施設の改造計画、そしてそれらの計画を可能とする道筋を用意した都の公園まちづくり制度自体にも向けられています。
公園まちづくり制度は、都心部における未整備、未供用の都市計画公園を大規模再開発の用に供するためのものです。都市計画の大原則をなし崩しにし、都心部におけるまちの将来像を根底から覆す制度を、一片の要綱で動かしてきた都の姿勢が厳しく問われています。
公園まちづくり制度を廃止し、神宮外苑の再開発事業については、事業計画の見直しも含め、事業者との協議に入ることを求めます。ご答弁ください。
神宮外苑の木々は、選挙が終われば次々と伐採されるのではないかと多くの都民が危惧しています。選挙が近づくと掲げられた聞こえのよい政策の数々が、いつの間にかほごにされてきましたから。小金井二路線しかり、築地跡地の開発問題もその象徴であります。
東京は、巨大な富の集積地となる一方で、深刻な格差が広がり、庶民が住み続けることができないようなまちに変えられつつあります。大々的に都の全面的な後押しを得て、そして都民の財産である都有地や都市計画公園予定地を切り刻み、一部ディベロッパーの開発利益を生み出す種地として切り売りしながら進む巨大再開発の波は、東京に暮らすたくさんの命、暮らしと向き合う目と心を、都政が持ち合わせていないことを教えています。
開発業者や巨大企業と一体となった東京改造計画を直ちに中止し、自治と参加を基調とした修復型のまちづくりへの転換を図ることを求めます。お答えください。
次に、絶望的な二〇三〇年カーボンハーフと気候政策について伺います。
IPCCは、最悪の場合、二一五〇年には五メートル、二三〇〇年には十五メートルの海面上昇の可能性があると指摘しています。五メートルの海面上昇によって、日本では二千三百万人が移住を強いられます。
また、IPCCやIEAの一・五度C目標への提言を踏まえれば、日本は、二〇三〇年に二〇一三年比で七〇%、二〇三五年には八五%以上の温室効果ガスの削減が求められています。
五月十五日には第七次エネルギー基本計画の議論が始まり、来年二月までにCOPに提出する削減目標の引上げが求められています。一・五度C目標の実現、先進国の責任からすれば、都の二〇三〇年カーボンハーフも不十分であることがますます明らかになっています。
二〇〇〇年比では、カーボンハーフではなく、少なくとも六〇%以上の削減目標が必要です。国をリードして、一・五度C目標達成の責任を果たせる削減目標を掲げることを求めます。ご答弁ください。
小池知事が就任した二〇一六年に策定された環境基本計画の目標は、二〇三〇年で二〇〇〇年比三〇%削減でした。
しかし、五年が経過した二〇二一年で僅か二・二八%の削減でしかありません。このままでは、七年後の二〇三〇年カーボンハーフでさえ実現できないことは明らかです。
その理由は、断熱や太陽光発電やEV化への規制や義務化の強化が弱いためです。一・五度C目標達成の責任を果たすため、政府の弱い規制策に追随するのではなく、大胆かつ迅速に、罰則を伴う規制強化を加速するべきです。いかがですか。
格差と貧困が常態化する中で、CO2削減のための規制強化やカーボンプライシングを進めれば、低所得者への打撃は極めて深刻です。エネルギー貧困層は一〇%と指摘されています。
都の熱中症死亡者の九割は、エアコンがないか使用していません。政府は、二〇三〇年熱中症死亡者半減を提言していますが、都はこれを無視しています。
エネルギー貧困層の命を守るため、環境と福祉の連携による現状把握と対策は必須です。いかがですか。
他方で、学校では授業に集中できないほどの教室の高温化が危惧され、エアコン設置だけでは不十分で、断熱改修が急務と指摘をされています。
しかし、今回、グリーンな東京が行った都内全区市町村立小中学校の調査によると、対策が必要な最上階の教室の室温検査を行っているのは、たったの三三%でした。そして都教委は、都立学校の現状把握のための調査さえ拒否しました。
学校の断熱改修の迅速な対応のための緊急調査と対策を求めます。お答えください。
最後は、知事の人権認識の誤りについて伺います。
人権尊重条例では、東京に集う多様な人々の人権が、誰一人取り残されることなく尊重されることがうたわれています。
ところが、文書質問で、こども基本条例の対象とする全ての子供とは国籍を問わないと考えてよいかと質問したところ、全ての子供であると国籍には触れず、人権に関する理念に例外はないと考えるがと見解を問う質問には、条例の理念と施策の性質を踏まえ判断との答弁がありました。
人権とは普遍的なものであり、施策ごとの恣意的判断を行うべきではありません。知事の認識を伺います。
朝鮮学校運営費補助金の停止から十四年がたちました。朝鮮学校は、歴史的な経緯、民族教育の重要性からも必要不可欠な存在です。
加えて、小池都知事は、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文送付を取りやめ、ヘイトスピーチをあおる結果をも招いてきました。国連からは、朝鮮学校差別に関する懸念と勧告が繰り返され、小池知事の任期中には、人権尊重条例とこども基本条例が制定され、あらゆる差別の禁止を掲げてきました。
朝鮮学校に対する私立外国人学校教育運営費補助金の交付を再開するとの答弁を求めます。
再質問を留保し質問を終わります。(拍手)
〔教育長浜佳葉子君登壇〕
○教育長(浜佳葉子君) 漢人あきこ議員の一般質問にお答えします。
学校の断熱改修等についてでございますが、都立学校においては、法令等に基づき教室の温度等を測定しており、その結果に応じて、空調設備の適切な利用など必要な対応を行っております。また、断熱性の向上については、改築等の際に、省エネ・再エネ東京仕様により計画的に進めております。
公立小中学校における教室等の環境衛生の維持や施設整備につきましては、法令等に基づき、原則として設置者である区市町村の責任において行われるものでございます。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、公園まちづくり制度等についてでございます。
この制度は、都心部にある長い間供用されていない区域を含む都市計画公園におきまして、公園機能の早期発現と良好なまちづくりの両立を実現するものであり、ご指摘には当たりません。
都は、神宮外苑のまちづくりについて、都市計画や環境アセスなど、法令等に基づき適切に対応しております。
次に、東京の都市開発についてでございます。
都民の誰もが安全で快適に暮らすことができる都市を実現するためには、都市の活力やにぎわいの創出、地域の防災性の向上、緑あふれる都市空間の形成などを進めていく必要がございます。
今後とも、質の高い民間プロジェクトを適切に誘導し、都市機能と自然環境が調和した持続可能な都市を実現してまいります。
〔建設局長花井徹夫君登壇〕
○建設局長(花井徹夫君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、小金井三・四・一号線及び小金井三・四・一一号線ほか周辺の自然環境等についてでございますが、この二路線は、武蔵野公園などの広域避難場所へのアクセス向上や、生活道路への通過交通抑制による地域の安全性向上等に資する重要な路線でございます。
これらの路線は、貴重な自然が残る国分寺崖線や野川と交差しているため、その整備に当たりましては、現地の地形状況や景観のほか、周辺の動植物の生息、生育状況等を踏まえた検討が必要でございます。
このため、小金井三・四・一一号線ほかでは、自然概況調査を実施いたしますとともに、その結果を基に、自然環境等に配慮した道路構造等の検討を進めてきております。
次に、二路線の必要性等についてでございますが、この二路線につきましては、第四次事業化計画の策定に当たり、将来都市計画道路ネットワークの検証を実施し、必要性が確認されており、重要性、緊急性を考慮した上で、優先整備路線に選定されております。
これらの線につきましては、様々な意見があることは承知しております。このうち、小金井三・四・一一号線ほかにつきましては、事業の目的や整備効果等を広く周知するため、広報紙を小金井市内全戸に配布いたしますとともに、地域の方々との意見交換会やオープンハウス等を開催してまいりました。
引き続き、事業に対する理解と協力が得られるよう、丁寧に対応してまいります。
最後に、二路線の事業化についてでございますが、この二路線につきましては、様々な意見があることは承知しております。
引き続き、自然環境等に配慮しながら検討を進めますとともに、地域の方々との意見交換を行うなど、事業に対する理解と協力が得られるよう、丁寧に対応してまいります。
〔環境局長松本明子君登壇〕
○環境局長(松本明子君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、気候変動対策についてでございますが、二〇三〇年までの行動が重要との認識の下、都は、二〇三〇年までに温室効果ガスを半減する目標を掲げ、施策の強化、拡充を図っております。
次に、気候変動対策における制度の強化についてでございますが、都は、二〇三〇年カーボンハーフの実現に向け、建築物に関する条例制度の改正に加え、省エネ対策や再エネ設備導入の支援など、幅広い施策を展開しているところでございます。
最後に、暑さ対策についてでございますが、都は、全庁的な推進体制の下、取組を進めております。高齢者など、特に暑さへの配慮が必要な方への対策につきましては、福祉局とも連携して、区市町村や関係機関にも周知をしております。
〔総務局長佐藤智秀君登壇〕
○総務局長(佐藤智秀君) 人権尊重条例についてのご質問にお答えをいたします。
第一条では、人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市になることを目的とすると規定されているものと認識をしております。
施策の実施に当たりましては、条例の理念と施策の性質を踏まえ、判断されるべきものと考えております。
〔生活文化スポーツ局長古屋留美君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) 朝鮮学校に対する補助金の交付についてでございますが、朝鮮学校の運営等の実態を確認するため過去に実施した調査結果や、その後の状況などを総合的に勘案し、朝鮮学校に外国人学校教育運営費補助金を交付することは、都民の理解が得られないと判断しております。
○議長(宇田川聡史君) 七番漢人あきこさん。
〔七番漢人あきこ君登壇〕
○七番(漢人あきこ君) 小池知事、最後の一般質問で、知事の認識を問う質問にも、知事自らの答弁はありませんでした。
小金井二路線の地域の自然環境は都民の財産です。自ら現場を訪れることもなく、必要性が低下し、地元民意にも反する道路計画を見直そうとしない知事の姿勢が再確認されました。
公園まちづくり制度は、議会の議決のない要綱です。そのようなものが大きくこの東京の姿に影響を与えていることを改めて指摘をいたします。そして、神宮外苑をはじめ日比谷公園、葛西臨海水族園などの樹木伐採をよしとしながら進めるグリーンビズは、グリーンウオッシュだと申し上げておきます。
気候危機、二〇三〇年カーボンハーフ実現の厳しさを認めようとしない姿勢、学校断熱に至っては、子供たちの学ぶ環境の現状把握さえ行わないという独善的な答弁もありました。
朝鮮学校への補助金交付は再開し、差別解消と都民の理解を得るために力を尽くすべきです。
再質問は一点です。知事の人権認識について伺います。
全ての子供、誰一人取り残さない、チルドレンファーストなどなど、この二日間にも繰り返されました。一方で、実は施策によっては恣意的に選別する、一部の都民を排除するという答弁でした。人権認識は知事としての資質の問題であり、知事選の重要な判断基準です。
改めて伺います。人権とは普遍的なものであり、施策ごとの恣意的判断、都民の排除を行うべきではありません。知事ご本人の認識、答弁を求めます。知事の政治的な見解や、知事の認識を問う質問に対して、今回も答弁がありませんでした。このような在り方は、議会の在り方や、都政の、そして都職員の心をもゆがめるものだと思います。
以上を申し上げ、小池知事への最後の一般質問を終わります。(拍手)
〔総務局長佐藤智秀君登壇〕
○総務局長(佐藤智秀君) 再質問にお答えいたします。
人権尊重条例第一条では、人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市になることを目的とすると規定されているものと認識をしております。
施策の実施に当たっては、条例の理念と施策の性質を踏まえ、判断されるべきものと考えております。
○議長(宇田川聡史君) 以上をもって質問は終わりました。
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