○議長(宇田川聡史君) 四番吉住はるお君。
〔四番吉住はるお君登壇〕
○四番(吉住はるお君) 人は、誰しも年を取ります。誰もが年を重ねても自分らしく安心して暮らし続けられる社会こそが、真に誰もが希望の持てる社会です。
本年四月、令和六年日本の世帯数の将来推計が公表されました。これによると、今後三十年間で、日本の総世帯数は減少する一方、六十五歳以上の高齢世帯が増加し、高齢世帯に占める単独世帯の割合は三五・二%から四五・一%と大きく上昇するとともに、未婚率の上昇を反映し、近親者がいない高齢未婚単独世帯が急増すると想定されています。
令和二年の国勢調査では、東京都の高齢世帯総数に占める単独世帯の割合は三八・一%で、全国より高くなっています。近くに頼れる親族がいない一人暮らしの高齢者の方には、病気やけがをしたときの対応や、日々の健康管理から災害時の対応、さらには孤独死など、多くの課題があります。
高齢になっても安心して暮らせる東京の姿を都民の皆様にお示しすることは、少子化対策を進めていくための基礎づくりにもなります。これまで親族などの支援者がいることを前提としてきた行政の支援の仕組みを見直し、一人暮らし高齢者になっても安心して暮らし続けることができる東京を実現させていくべきと考えますが、知事のご所見を伺います。
一人暮らし高齢者を取り巻く課題の一つに、亡くなった後の対応などがあります。先日、新宿区の高齢者福祉の窓口担当者と意見交換した際の職員の発言を以下引用します。
身寄りのない一人暮らしの高齢者は自身が死亡した際の遺体や家財の処分などに不安を感じる方も多くよく相談される、居住支援法人などで対応してもらえるケースもあるが、近年、世の中では高齢者が巻き込まれる詐欺事件などが頻発しており、区が民間事業者を紹介するには不安がある、都が福祉という観点から安心して利用できる法人を指定してもらえると助かるのだけどとのことでした。
居住支援法人とは、高齢者などの住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るために、住宅セーフティーネット法に基づいて都道府県が指定する法人のことを主にいいます。都でも令和六年三月末時点で五十三の法人が指定されています。
法人は、住宅確保要配慮者に対し、家賃債務保証の提供などの入居までの支援とともに、入居後の見守りや死後事務委任といった生活継続支援も実施します。しかし、この居住支援法人の制度はあくまでも国交省所管の住宅政策であり、福祉という位置づけにはなっていません。
一人暮らし高齢者は、認知症などの発覚も遅れがちであり、詐欺や犯罪に巻き込まれやすい傾向があります。都は、区市町村と連携し、居住支援法人が行っているような生活継続支援サービスを福祉の観点から、一人暮らし高齢者をはじめ多くの都民が安心して利用できる仕組みづくりを検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
先日、居住支援法人の方からも直接お話を伺いました。もともと行っている訪問看護などの得意分野を活用しながら、住宅確保要配慮者への入居や入居後の支援を行っているが、とても多忙である、また、ご本人が大家に直接交渉するより、法人が間に入った方が物件が出てくるため、行政から声をかけてもらってつないでもらいたいとのお話もありました。居住支援法人の活動にとっても、行政との連携が重要です。
一方、居住支援法人の活動を支援する国の制度は、十割補助となっているものの、制約もあり、満額が補助されないケースもあると聞きます。また、今回の法改正では、居住支援法人の活動の幅を広げるものも含まれており、居住支援法人の役割はさらに重要になってきています。
一人暮らし高齢者が亡くなった後の家財の整理や、家賃債務保証の審査が通らないことなどが、大家が高齢者に部屋を貸さない大きな理由となっています。こうした課題の解決に向け、都は居住支援法人の取組をサポートし、高齢者をはじめとした住宅確保要配慮者の居住の安定を図るべきと考えますが、都の見解を伺います。
民生児童委員は、高齢者の見守り、児童虐待の防止など、地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談援助活動を行っており、社会福祉の増進のために欠かせない存在です。
しかしながら、地域コミュニティ活動の衰退、就業率の上昇などにより活動の担い手が不足し、都市部を中心に欠員が増加し、東京都においても、一昨年行われた三年に一度の改選では、充足率が九一・八%から八八・三%と減少しています。
民生児童委員には、民生委員法に基づき活動費が支給され、各自の活動に係る交通費などの経費に充てられていますが、令和元年十月の消費増税に伴い二百円増額し、月額八千八百円となってから約五年間増額されていません。
ここ数年は燃料費などの高騰が続き、また、本年秋からは郵便料金も三十年ぶりに約三〇%値上げされる見通しとなっています。急激に進む物価上昇に対応し、民生児童委員活動費の大幅な増額を検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
健康長寿社会の実現は、超高齢社会を迎える東京にとって非常に重要な課題です。
私は、以前の一般質問において、知事に対し、食やウオーキングなどを通じた健康づくりは、都が前面に出て主体的に取り組むべきと訴えました。このたび、都が区市町村と連携し、都民の主体的な健康づくりを推進するとして、今年度新たに、とうきょう健康応援事業が予算化されたことは一歩前進と評価していますが、今後の具体的な取組が重要です。
今回の事業によって、健康づくりが職場などで多くの都民の共通の話題になるような工夫や、事業がいかに健康に寄与したのかの効果検証なども大切であり、また、せっかく協賛店を募るのであれば、食を通じた健康づくりにおいても協賛店の協力を得て取り組むべきです。都が健康づくりを広域で行うことのメリットを最大限生かした取組が重要だと考えますが、都の見解を伺います。
ここ数年、準暴力団員も含まれる匿名・流動型犯罪グループによる特殊詐欺や、強盗、殺人などの犯罪事件が頻発し、多くの都民が大きな不安を感じています。これまでの暴対法や暴排条例では十分に対処できていない状況であり、一層の対策が望まれています。
都民を犯罪から守るため、匿名・流動型犯罪グループに対しどのように立ち向かっていくのか、警視庁の見解を伺います。
切迫性が指摘される首都直下地震への備えとして、延焼遮断帯となる道路の整備や老朽建築物の更新などにより、不燃化、耐震化などを進めることは急務です。
私の地元新宿区では、地域危険度が最も高いランク五である若葉、須賀町地区において、平成二年にまちづくりの会を立ち上げ、道路拡幅や共同建て替えなどの取組を長年粘り強く取り組んできましたが、高齢化に伴う建て替え意欲の低下などにより、不燃領域率はいまだ五〇%程度と、老朽建築物の更新が進んでいないのが現状です。
都は、防災都市づくり推進計画における整備地域内において、不燃化特区を指定し、地区内の老朽建築物の建て替えに際し、手厚い支援を行っていますが、若葉、須賀町地区は整備地域にも指定されていないため、こうした支援が受けられていません。
今般、都は、防災都市づくり推進計画の基本方針の改定に取り組んでいると承知していますが、改定に当たっては、震災時の危険性が高い整備地域の外側の木密地域についても、しっかりと施策の検討を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
都庁のお膝元である新宿グランドターミナルの再編は、今後の東京を牽引する象徴的な事業であり、多くの都民に夢や希望を感じてもらい、応援してもらえるよう、関係者の総力を挙げた取組をしっかりと前に進めていくことが必要です。
新宿駅西口では、駅前広場の工事が進むとともに、旧小田急百貨店が解体されるなど、工事が本格化しています。こうした中、西口広場の将来形については、交通管理者である警視庁や将来道路管理者である建設局、バス事業者である交通局など、関係者間での調整を要するため、いまだ明確に示されていません。
一方、地元では、これからの将来形が見えないことから、なぜ駅前広場の歩行空間をこんなに広くする必要があるのかなど、整備に対する疑問の声が増えています。また、今後見込まれる周辺開発とも密接に関わることから、関係者の調整が着実に進められるよう、新宿西口広場の将来形を早期に示していくことが重要です。
そこで、新宿駅西口駅前広場の将来形を早く示していくべきと考えますが、都の見解を伺います。あわせて、駅前広場に係る整備について、現在の状況と今後の取組について伺います。
最後に、西新宿地区のまちづくりについて伺います。
都は、昨年の三月に西新宿地区再整備方針を策定し、西新宿地区を人が憩い、楽しく歩くことができる都市空間への再編を目指していくとのことです。
先ほど質問した西口駅前広場の整備と併せて、この再編整備が実現すると、世界一の乗降客数を誇る新宿駅を降りると、再編された明るく開放的な駅前広場が広がり、その先には、都庁を中心に多様な交流により新しいビジネスや体験が生まれる先進的な超高層ビル地区、さらに、その先には緑あふれる憩いの公園が開けるというような、世界的にも魅力的なまちに生まれ変わると期待しています。
こうしたまちづくりを早期に実現させていくためには、西新宿地区においても、官民が連携し、また地元の思いや意見を聞きながら、道路空間や公開空地、建築物低層部を一体的に再編し、訪れる人々がにぎわいや憩いを感じられるまちにしていくことが重要です。
そこで、新しい西新宿地区の実現に向けてどのようにまちづくりを進めていくのか、都の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 吉住はるお議員の一般質問にお答えいたします。
一人暮らしの高齢者への支援についてのお尋ねでございました。
今後、高齢者の単独世帯の増加が見込まれる中、希薄化する人と人とのつながりを結び直して、孤独、孤立を生まない社会を実現することは重要でございます。
一人暮らしになっても高齢者が安心して暮らし続けるためには、医療、介護、住まい、生活支援などが地域の中で一体的に提供されることが必要でございます。
都は、地域包括ケアシステムの深化、推進を含めまして、高齢者が住みやすい住宅の整備、また区市町村が行う見守りへの支援などを進めまして、高齢者が生き生きと心豊かに、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる東京を実現してまいります。
その他の質問につきましては、警視総監、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔警視総監緒方禎己君登壇〕
○警視総監(緒方禎己君) 匿名・流動型犯罪グループ対策についてでありますが、同グループは、匿名性の高い通信手段を使いながら離合集散を繰り返し、特殊詐欺や強盗、違法風俗、賭博、悪質リフォーム等の多様な資金獲得犯罪に関与するなど、治安対策上の脅威となっております。
警視庁では、情報収集、分析による実態解明のほか、実行犯の早期検挙に加え、スマートフォンの解析など、様々な手法を駆使した首謀者の突き上げ捜査を徹底しております。
また、SNSのリプライ警告や犯行手口に応じた広報啓発など、新たな実行犯や被害者を生まないための対策を講じております。
引き続き、匿名・流動型犯罪グループの壊滅に向け、その活動実態に応じてあらゆる法令を駆使した取締りを強化するなど、組織の総合力を発揮した対策を推進してまいります。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、防災都市づくりの推進についてでございます。
都は、防災都市づくり推進計画におきまして、震災時に大きな被害が想定される地域を整備地域として指定し、区による不燃化等の取組を支援しております。都内の防災性は着実に向上する一方、整備地域や整備地域外の一部において、不燃化等に遅れが生じております。
このため、計画改定の検討に当たっては、都内全域において、地域危険度や被害想定等の様々な観点から地域の防災性の分析などを行っております。
今後、区市や有識者の意見なども踏まえながら、こうした分析結果を今年度改定する計画の基本方針に反映させ、東京の強靱化を進めてまいります。
次に、新宿駅西口駅前広場の整備についてでございます。
新宿駅直近地区では、都施行の土地区画整理事業により、西口駅前広場について、車中心から人中心の広場に再編し、歩行者の回遊性の向上を図ることとしております。本事業への都民の協力と理解促進を図るためには、こうした広場の将来の姿を示していくことが重要でございます。
現在、学識経験者、行政、鉄道事業者から成る新宿の拠点再整備検討委員会において、駅前広場の空間構成や景観などの検討を進めております。本委員会の検討状況を踏まえて、まずは広場内の道路と歩行者空間の平面配置を夏頃に明らかにし、将来の姿について段階的に示してまいります。
次に、西口駅前広場に係る整備の状況についてでございます。
現在、都施行の土地区画整理事業においては、駅東西のまちをつなぐ線路上空デッキの整備に向けた準備工事を実施しております。
また、周辺では開発事業者による複合ビルの新築工事や、鉄道事業者による駅改良工事などが進められております。
今後、二〇三五年度の西口広場の概成に向けて、地下駐車場の再整備を進めるなど、人中心のまちづくりを目指し、関係機関等との連携の下、着実に事業を進めてまいります。
最後に、西新宿地区のまちづくりについてでございます。
西新宿地区は、新宿副都心建設から半世紀が経過し、社会状況や周辺環境の変化に対応した、人中心でウオーカブルな都市空間への再編が必要でございます。
昨年三月に策定いたしました再整備方針では、新しいライフスタイルを創造、実現するまちを将来像としており、道路沿いの公開空地や建物低層部等に多様な人々の滞在を誘発する空間の創出などについて、都と区が主導して、関係者間で検討を進めております。
今後も地権者等と密に意見交換しながら、民間の創意工夫を引き出し、次の時代の東京を体験できるまちへの再生に取り組んでまいります。
〔福祉局長山口真君登壇〕
○福祉局長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、一人暮らし高齢者への支援についてでございますが、都内の単身高齢者が増加しており、高齢者が元気なうちに、自分の意思を反映しながら、生活上の様々な手続や死後の対応などの準備ができるようにすることは重要でございます。
そのため、都は今年度から、高齢者の個々の状況に応じて支援や助言などを行う総合相談窓口を設置する区市町村を包括補助により支援いたします。
今後、単身高齢者が安心して生活し続けられるよう、区市町村に対し相談窓口の設置を働きかけるとともに、居住支援法人が行う見守りや家財処分などのサービスについて関係局と連携し、福祉主管課長会等を通じて情報提供を行ってまいります。
次に、民生児童委員活動の推進についてでございますが、都は地域社会を支える重要な役割を担う民生児童委員に対して、実費相当の活動費を支給するほか、民生委員協議会が行う研修の運営経費を支援しております。
また、コロナ禍において、相談支援体制の強化や業務の効率化を図るため、全ての委員にタブレット端末等のデジタル機器を配布いたしました。
さらに、委員の活動環境の整備や協力員の配置等、地域の実情に応じた取組を行う区市町村を包括補助で支援しており、今後とも関係者の意見も聞きながら、民生児童委員の地域活動を支援してまいります。
〔住宅政策本部長小笠原雄一君登壇〕
○住宅政策本部長(小笠原雄一君) 居住支援法人の取組へのサポートについてでございます。
貸主が高齢者等の住宅確保要配慮者を受け入れる際の不安の軽減に当たり、居住支援法人の役割は重要でございます。
都は昨年度、法人と区市町村との意見交換を行い、見守りや家財処分など、各法人の取組を関係者間で共有いたしました。法人からは、他の法人と連携しやすくなった、また、区市町村からは、相談内容に応じ法人を紹介することができるようになったとの声がございました。
今年度の意見交換では、増加する単身高齢者の入居の妨げの一つである家賃債務保証につきまして、関係団体にも参加を求め、円滑な利用を促してまいります。また、法人が様々な活動を行えるよう、国に十分な財源の確保を要望してまいります。
これらによりまして、要配慮者の居住の安定を図ってまいります。
〔保健医療局長雲田孝司君登壇〕
○保健医療局長(雲田孝司君) 都民の健康づくりに関するご質問にお答えいたします。
都は、事業者と連携して、都民の主体的な健康づくりを支援する区市町村を後押しするため、とうきょう健康応援事業を今年度から開始いたします。
都として、区市町村の参画を積極的に働きかけるほか、都民の健康づくりの取組に応じて優待サービスを提供する協賛店を確保し、特設サイトやSNSを通じて広く発信し、都民の参加を促進いたします。
また、協賛店の協力も得て、野菜メニュー店など、健康に配慮した食事を提供する飲食店を拡充し、都民の食生活の改善につながる取組も進めてまいります。
こうした広域的な施策を効果的に展開することにより、都民の健康づくりのさらなる推進を図ってまいります。
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