○議長(宇田川聡史君) 七十九番曽根はじめ君。
〔七十九番曽根はじめ君登壇〕
○七十九番(曽根はじめ君) 東京の地域公共交通に、都の責任と役割を果たすよう求めて質問します。
全国でも都内でも、住民に欠かせない公共交通の衰退が深刻です。バス路線などの減便や廃止が増え、思い切った支援なしには維持できなくなっています。
三年前の国の第二次交通政策基本計画でも、交通事業が独立採算を前提として存続することはこれまでにも増して困難だと述べ、あらゆる地域で路線廃止撤退が雪崩を打つ交通崩壊が起きかねないと危機感をあらわにしています。
私の地元北区では、民間バス会社が、JR浮間船渡駅から赤羽までの路線を赤字を理由に突然減便、そして廃止してしまいました。住民からは、浮間はどの駅にも遠いので、バスがないと大変、タクシーなんて使えない、浮間からは総合病院北医療センターへの坂を上れないのでどうしたらよいかなど困惑と怒りの声が広がりました。
その後、地元住民の粘り強い署名や要請を受けて、ようやく北区がこの路線を十二年ぶりにコミュニティバスとして復活させました。
北区の経験からも、誰もが身近に利用できる公共交通を保障することは、もはや事業者任せにはできません。国の交通政策基本法ではまだ明記されていない国民の交通権の保障を明記させることを求め、都として地域公共交通を守り抜くという姿勢を明確にすることが必要です。
都は二年前に、東京における地域公共交通の基本方針を策定し、二〇四〇年代の地域公共交通を目指して、知事は、持続可能な輸送スキームの構築を踏まえた施策を推進すると述べています。
しかし、現実には、地域公共交通は、運転手不足やコミュニティ交通の財政負担問題が深刻化して、持続可能どころか減便や廃止が続出しているのです。
知事は、この事態をどう認識し、持続可能な公共交通についてどういう認識をお持ちなのか伺います。
本年四月から、足立区で二十年運行してきたコミュニティバスのうち、五路線が廃止、他の路線も大幅に減便しました。足立区はこれまで、コミュニティバス事業の運行経費について、初期費用の財政支援だけで、運行は民間バス会社に任せてきました。しかし、乗車率の低いコースから廃止、減便となり、一日一便のみのコースも現れました。
今、北区も含め、各地域のコミュニティバスの運行には、共通して大きな課題が残されており、その第一は採算問題です。
北区では、運行経費の四割を運賃で回収できれば、路線継続を判断するとのことです。しかし、新規開通の浮間─赤羽コースでは、集合住宅やスーパーの前を運行するなど、工夫して幅広い年齢の乗客が利用していますが、それでも赤字解消は難題です。
人口減少傾向が明確な多摩地域はさらに厳しいといえます。多摩の市長会や町村会からの予算要望でも、地域交通への支援拡充、とりわけ運行経費補助期間の延長は、最も切実な要望の一つです。
知事が約束したとおり、地域公共交通を持続可能なシステムにしていくためには、都の支援の拡充は不可欠であり、路線運行が安定するまでの立ち上がり支援と位置づけられた運行経費補助について、三年という期間を延長すべきです。いかがですか。
第二の課題は、コミュニティバスの既存バス路線との競合をどう調整するかという問題です。
北区の新規路線では、民間の国際興業バスとの競合部分では、原則としてコミュニティバスのバス停を置けず、さすがに患者利用の多い総合病院前は、停留所は設置したものの、浮間からの乗客は降ろすが、病院前からの乗車はさせない。逆に、赤羽からの乗客は病院前では降ろさせないなど、異常な変則ルールがあり、利用者本位のコミュニティバスとは、まだ程遠い現状です。
知事は、基本方針策定に当たり、高齢者や子育て世帯などの気軽な外出を支える移動手段や区市町村の境界を意識することのない移動の実現に向け、区市町村支援を強化していくと述べました。それには、東京都が、複数の区や市を運行している大手バス事業者と地域のコミュニティバスとの競合を避けるため、東京全域をカバーする共通ルールを確立し、各路線の調整や再編まで検討する部門を設置して、交通問題の解決に当たる必要があると考えます。知事の見解を伺います。
韓国のソウルはじめ大都市では、近年、市内の全バス路線を徹底検証の上で複数のエリアに再編し、民間と公共でバス路線を分担し、乗り継ぎも含め、乗車距離に応じた低廉な運賃を実現しています。ソウル市では、バス交通の公的一括管理により、市民には低料金と分かりやすい案内表示を、バス労働者には雇用の改善を、民間バス事業者には安定した経営を保障しています。都の公共交通が全ての都民に交通権を保障するには、こうした改革が避けて通れません。
運転手確保も喫緊の課題です。
葛飾区は、最近、区内に事業所を置くバス会社の運転手確保のために、住宅費などへの支援を行うと報道されています。都としても、民間や地域交通のバス運転手確保に財政支援を行うことを提案します。どうですか。
また、タクシーの位置づけも重要です。
都内全域の交通計画の検討の中で、他の政令市で実現しているように、都民の身近な交通手段であるタクシーを公共交通として位置づけ、タクシーの社会的な活用を検討、協議する担当部署を設置するとともに、地域公共交通の基本方針に位置づけることを求めるものですが、いかがですか。
最後に、コミュニティバスへのシルバーパスの適用について提案します。
交通手段の少ない地域の解消や公共施設などへの移動手段を確保するという役割を持つコミュニティバスなどにシルバーパスを適用することは、高齢者の社会参加の促進に大いに役立つのではありませんか。
一日も早く、バス路線ならどこでもシルバーパスが使えるよう検討を進めることを要望します。
次に、特定整備路線に関連して質問します。
まず、建設局の機動取得推進課について質問します。
我が党は、予算委員会の代表質疑で、この組織が、特定整備路線などについて、住民合意や理解、協力を得ながらでは到底進まない、だから反対を抑え込んで用地買収を強力に促進するとの危険性を指摘しました。
今に至っても、この組織の任務や配置が具体的に示されません。本庁と各建設事務所の用地課から集められた六十三名の機動取得推進課職員が、特定の路線の用地買収のために、重点的、集中的に特定地域に投入されることがあり得るのではありませんか。
建設局は、用地取得に関わって、今までの基準や運用は何も変えていないと説明してきましたが、昨日になって、土地収用制度適用基準の運用の改正を行った事実を認めました。
それは、第一に、土地収用以前の大前提とされていた任意折衝による円満解決を原則とするとの文言が削除されていること。第二に、基準となる八〇%を超える用地取得や事業開始五年の期限を過ぎて、測量や調査、折衝などの手続を経てもなお合意できないときは、都が事業の早期完成のため緊急を要する場合や事業効果の早期発現に支障があると判断さえすれば、土地収用法に定める手続を進めるとされており、権利者の住民が、どんなに正当な理由で反対していても、都の権限で強引に土地収用手続に入れる、そのための運用規定といわざるを得ないものです。
都が六十三名の機動取得推進課を組織したのは、まさに、この実動部隊にするのが目的なのですか。お答えください。
これは、土地収用制度の歴史的大改悪といわざるを得ません。運用規定の変更だけで、一方的に憲法二十九条の財産権まで侵害する、こんな改悪が許されてよいはずがありません。
知事は、以前、二〇一八年、二〇一九年、二〇二一年の予算議会で、特定整備路線の新年度予算を前年度の事業進捗を踏まえて減額したことを賢い支出の一環であると答弁しています。
しかし、その後、道路事業で賢い支出の答弁はしなくなり、昨年度も特定整備路線の予算が多額の執行残を残し、建設局が減額要求をしたにもかかわらず、今年度予算の知事査定で約四十億円も引き上げました。これは、大型道路を何が何でもごり押しする姿勢への先祖返りであり、これまでのルールを改悪して、新たに、金も人も投入する旧来の自民党型政治に小池知事が転落したということではありませんか。知事、お答えください。
特定整備路線の、とりわけ住民訴訟で提訴された五つの路線は、既に住民生活等、地域コミュニティの破壊、自然豊かな公園など緑の破壊、小池知事が解消を呼びかけている段差が生活道路を塞ぐ巨大道路擁壁として新たにまちに持ち込まれるなど、防災に役立つどころか地域の深刻な分断と破壊の影響が避けられないものです。
知事、都政を支えているのは都民です。都が住民の声をまともに聞かずに、土地収用の大改悪による道路ごり押しの道に進むなら、自治体として最悪の選択であり、都民から見放されるでしょう。今こそ特定整備路線を再検討し、抜本的に見直すよう求めます。
知事の答弁を求め、再質問を留保して質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 曽根はじめ議員の一般質問にお答えいたします。
私から、地域公共交通についてお答えをさせていただきます。
都は、地域公共交通を取り巻く社会状況の変化に対応するため、令和三年度に地域公共交通の基本方針を策定いたしております。
この基本方針を踏まえまして、区市町村の交通サービス維持に向けた取組を後押しし、地域公共交通の充実を図っているところでございます。
残余の質問は、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、地域公共交通の運行経費補助についてでございます。
コミュニティバスは、区市町村による主体的、自立的な運営を前提としており、区市町村自らが交通需要や事業の持続可能性、財政負担の将来的な見通し等について十分に検討することが必要でございます。
都は、事業運営の安定化を図るため、運行開始後三年間の運行経費の一部を区市町村に補助しております。
次に、地域公共交通に関する調査検討についてでございます。
地域公共交通は、地域に精通する区市町村が主体となり、交通事業者の創意工夫の下、多様な関係者が参画し、それぞれの役割を果たしていくことが必要でございます。
都は、広域自治体の立場から、地域公共交通の基本方針において、各主体の果たすべき役割を示し、区市町村の取組を後押ししております。
次に、バス運転手の確保についてでございます。
地域の移動サービスを確保するためには、区市町村が交通事業に係る地域の課題を把握し、交通事業者などと連携を図りながら主体的に取り組むことが重要でございます。
都は、広域自治体の立場から、区市町村に対して、地域公共交通計画の策定やコミュニティバス等の運行経費などについて、経費の一部を補助し、取組を後押ししております。
最後に、地域公共交通におけるタクシーについてでございます。
地域の公共交通ネットワークを持続させるには、区市町村がそれぞれの地域にとって望ましい姿を明らかにすることが重要であり、鉄道やバスのほかタクシーを含む地域公共交通計画を策定している自治体もございます。
都は、区市町村が主体的に地域の交通課題の解決に取り組めるよう、技術的、財政的に支援をしております。
〔福祉局長山口真君登壇〕
○福祉局長(山口真君) シルバーパスに関するご質問にお答えいたします。
シルバーパスは、高齢者の社会参加を助長し、福祉の向上に寄与しており、その利用対象交通機関は、条例等に基づき都営交通及び路線バスとなっております。
また、コミュニティバスのうち、一般の路線バスと同等の運賃を設定しているものについて、区市町村とバス事業者の協議が調った場合は、シルバーパスで乗車できるようになっております。
〔建設局長花井徹夫君登壇〕
○建設局長(花井徹夫君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、機動取得推進課における用地取得についてでございますが、機動取得推進課は、主に特定整備路線において事業効果の早期発現が見込まれる用地の取得を機動的かつ集中的に取り組むこととしております。
次に、機動取得推進課を組織した目的についてでございますが、避難路を兼ねた暫定的な歩行者空間や緊急車両用の仮設通行路の確保など、事業効果の早期発現が見込まれる用地を機動的かつ集中的に取得することでございます。
なお、本年三月の建設局土地収用制度適用基準の運用の改正は、組織改正に伴う規定整備等のほか、関係権利者の生活再建に十分な配慮をしつつ契約合意に向けた取組を尽くすことなどを具体的に明示したものでございます。
次に、特定整備路線の予算についてでございますが、特定整備路線は、市街地の延焼を遮断し、避難路や緊急車両の通行路となるなど防災上極めて重要な道路でございます。
令和六年度予算は、能登半島地震も踏まえ、整備に必要な予算額を計上しております。
最後に、特定整備路線の整備の見直しについてでございますが、これまで都は、生活再建支援の相談窓口を設置するなど、関係権利者に丁寧な対応を行い、令和五年度末時点で六七%の用地を取得するとともに、全区間で工事に着手し、一部の区間では交通開放を行うなど、整備は着実に進んでおります。
引き続き、地元の理解と協力を得ながら、事業を一層推進し、地域の防災性向上を図ってまいります。
〔七十九番曽根はじめ君登壇〕
○七十九番(曽根はじめ君) 再質問します。
特定の路線の用地買収のために、重点的、集中的に特定地域に職員が投入されるのではないかと聞きましたが、局長はこれを否定されました。
ごまかしは許されません。我が党は、機動取得推進課の事務分担の資料を入手しました。これによれば、担当する路線名が分かる四十八件の分担のうち、六六%の三十二件が、小池知事の地元豊島区池袋を通る補助第八二号線に集中しています。文字どおり、重点的、集中的に、特定の地域、特定の路線に人員を集中しているではありませんか。
改めて答弁を求め、再質問を終わります。(拍手)
〔建設局長花井徹夫君登壇〕
〔傍聴席にて発言する者あり〕
○議長(宇田川聡史君) 傍聴人は静かに願います。
○建設局長(花井徹夫君) 機動取得推進課における用地取得についてでございますが、機動取得推進課は、主に特定整備路線において事業効果の早期発現が見込まれる用地の取得を機動的かつ集中的に取り組むこととしております。
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