令和六年東京都議会会議録第九号

○副議長(増子ひろき君) 二番かまた悦子さん。
   〔二番かまた悦子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二番(かまた悦子君) 初めに、育業について質問します。
 私は、かねてより、育業しやすい環境づくりには、育業を支える方々の存在が重要だと考え、育業したいと思っている方やその同僚、そして、経営者や現場の管理職など、あらゆる方々と意見交換を続けてきました。
 そして、見えてきた課題は、育業する方とそうでない方々の間に心の分断が生じてしまっているということであります。本来、新たな命の誕生とそれに伴う子育ては、皆でお祝いし、大事に見守り、支えることが理想ですが、現状は、企業に残された同僚の仕事が増えてしまったり、新たな人材を入れたいと思っても、経営者側にそこまでの余力がなかったりと、様々な課題が壁になっています。これでは、これから育業したいと考えている方々も安心することはできません。
 人は、自分に余裕があれば、周りの人のことを思いやったり、相手の立場になって行動したりするものです。だからこそ、育業を進める際は、育業をする方はもとより、育業をする方を支え、送り出す企業や現場の同僚の負担軽減も考え、誰もが心から新たな命をお祝いすることができる環境整備を進めることが重要であると考えます。
 そこで、これまで育休を育業とネーミングし、意識改革に挑み、成果を出している東京都が率先して、心の分断を改善し、誰もが気兼ねなく育業することができ、同僚も育業を心から応援したくなる環境づくりに力を入れるべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 都は、平成三十年度より、働くパパママ育業応援奨励金をスタートさせ、育業しやすい社会をつくり上げる企業等への支援を行っています。
 先日、この事業の手続を会社で担当している社員の方にお会いし、その方と話をさせていただきました。その方がおっしゃっていたことは、都の支援事業の恩恵は全て会社に渡っており、私たち社員の下には届いていないとのことでした。これでは、事業の目的が十分達成できているとはいえません。
 そこで、育業を支える同僚への支援も大きな取組の柱とするべきですが、知事の見解を求めます。
 都は、人々の働き方や生き方をテーマとする東京くらし方会議を立ち上げ、都民がよりよく働き、自分らしく暮らせるよう、様々な議論を積み重ねております。
 育業推進における心の分断の課題を解決するためには、業務の効率化やIT化の推進など、人が減っても持続可能な職場環境の構築を図り、育業する人もそうでない人も、お互いの立場を尊重しながら、自分らしく暮らせる社会の構築が必要不可欠であります。
 そこで、東京くらし方会議において、育業が進んでも、誰もが安心して働くことができる環境づくりについて議論し、会議での知見を広く都内の企業等に発信していくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、就労支援について質問します。
 誰もが個性を生かし、活躍できる社会を構築するためには、様々な立場の方々に光を当てた施策を進めることが重要です。
 特別支援教育に携わっている教員の方に、何を大切にしているかを伺ったところ、何よりも就職先の確保が重要であり、自立した生活ができるよう全力で教育をしていると話してくださいました。
 知的障害のある生徒が卒業後、就労継続支援B型事業所で働いた場合、月額平均工賃は、令和四年度の厚生労働省の調査で一万七千三十一円、時間額で僅か二百四十三円であり、工賃の低さが大きな課題となっています。
 卒業後の生徒たちが少しでも自立できるようにするためには、工賃アップは喫緊の課題であります。
 その課題解決の鍵を握るのはIT分野であるとの声もあることから、幾つかの企業が様々なソフト等を開発しており、特別支援学校でも、IT分野の職業訓練に新たに取り組み、生徒たちの卒業後の就労を見据えた教育を始めています。
 そこで、特別支援学校と各事業所との連携、そして職域拡大、工賃向上を見据え、各事業所のIT分野の環境整備をさらに支援していくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、チャレンジスクールに進んだ生徒への支援についてお伺いします。
 小学校、中学校で不登校になった児童生徒や保護者の方にチャレンジスクールの存在を伝えると、一様に安心され、喜ばれます。なぜ、安心し、喜ばれるのか。それは、不登校になっても、学ぶチャンスや社会に出ていくチャンスがあるということに、子供たちが希望を見いだすからであります。だからこそ、この希望を実現させるための取組や仕組みづくりは重要であります。
 現在、チャレンジスクールには、専門的知見から支援を進める自立支援チームが派遣され、学校の要請により、ユースソーシャルワーカーが専門機関につなげたり、相談に応じたりしています。
 しかしながら、中途退学等で学校から離れてしまうと、自らユースソーシャルワーカーに相談を求めた場合は支援が行われますが、そうでない場合は、その生徒の自立を応援し続ける大人が少なくなり、自立に向けた困難さを一人で乗り越えていくには、大きな壁が残ります。
 本来、チャレンジスクールに通う生徒の特徴を鑑みれば、生徒が学校から離れても、進学先や就労先で自分らしく輝けるよう、専門的な支援は継続されるべきであり、各局の垣根を越えた見守り体制の構築など、新たな仕組みづくりを進めるべきであります。
 そこで、チャレンジスクール等を中途退学した生徒たちへは、例えば、区市町村の福祉部門や都の関係機関と連携する見守り支援会議を開催したり、退学後も一定期間はアウトリーチ型で見守ったりするなど、中途退学した生徒へも切れ目ない支援をさらに進めていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、ミドルシニア世代女性の就労支援についてお伺いします。
 四十代後半から五十代、六十代の女性の方々からお聞きする悩みの中に、転職や副業を考えても、雇用先がなかなか見つからないという声が多くあります。女性が、自分の今後の人生を見据え、さらにキャリアアップしたいと考えたり、本当にやりたかったことに再チャレンジしてみたいと思うのが、五十歳前後のミドルシニア世代女性であります。
 この世代の女性たちが社会で十分に力を発揮できる環境をつくっていくことは、人材不足が大きな課題となっている現代社会に大きな価値を生むだけではなく、誰もが輝く社会につながる重要な取組です。
 都は今年度から、プラチナ・キャリアセンターを開設し、活躍し続けたいシニア世代の後押しを進めていくとのことですが、ミドルシニア世代、特に女性にも視点を当て、副業や転職など、就労の場の拡充を進めるべきと考えますが、見解を求めます。
 都は、今年の九月に労働相談情報センターの新たな相談窓口として、はたらく女性スクエアを開設するとのことです。
 そこで、あらゆる女性へのサポートを行う相談窓口とするため、ロールモデルが少ない女性管理職などの活躍を支える取組だけではなく、女性が多い非正規雇用の方への労働相談にも積極的に対応できる体制をつくるべきと考えます。
 また、転職希望がある場合には、相談から就労支援へとつなげるよう、東京しごとセンターとの連携も検討すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、防災対策について質問します。
 発災後、少しでも安心した生活を送るためにはトイレの確保は重要です。私は、令和五年の第一回定例会で、平常時は公園や川辺で使用ができ、発災時には避難所等に移動させることができる、いわゆるフェーズフリートイレの導入検討も含めた災害時のトイレ確保の重要性について訴えさせていただきました。
 また、我が党の今年の予算特別委員会での質問に対し、都は、トイレ環境の向上に向けた計画として取りまとめると答弁しました。
 実際、都内でも、自己完結型トイレを導入し、平常時から川辺やイベント等で活用する、いわゆるトイレトレーラーを運用していくことを検討している自治体も出てきており、財政面を含め、区市町村のトイレ確保に向けた幅広い支援が必要です。
 そこで、トイレ環境の向上計画の策定に当たっては、様々なトイレの活用やトイレ環境の向上について検討し、各種トイレの確保を行う区市町村を支援すべきと考えますが、見解を求めます。
 平成二十九年の予算特別委員会で、我が党は、災害時、災害拠点病院に車で向かおうとした場合、国道や都道は無電柱化が進んでいるけれども、病院の手前になると、ほとんどが区道であり、電柱がたくさん立っている、もしこの電柱が道路側に倒れた場合、病院は目の前なのに、車では病院にたどり着けない状況になってしまうと、災害拠点病院に通じる道路の無電柱化推進を訴えました。
 あれから七年がたちましたが、私の地元板橋区の区道の地中化率は〇・三三%であり、区が計画した十八の整備候補路線の中に災害拠点病院に通じる区道も掲げているものの、やっと四つの災害拠点病院のうち、一つの病院に通じる道路の無電柱化に着手するという状況です。
 区道の無電柱化を進めるためには、ライフライン事業者や沿線居住者との合意形成や事業費軽減に資する技術開発など課題も多いことから、都のチャレンジ支援事業制度や今年から立ち上げた都と区市町村との新たな協議体に期待するところです。
 しかし、災害はいつ起きてもおかしくありません。板橋区内の災害拠点病院に通じる区道の無電柱化については、都としても、これまで以上に財政面でも技術面でも、迅速かつ強力に支援するべきと考えます。見解を求めます。
 私の地元板橋区では、高島平地域のまちづくりが進んでいます。これまで区は、UR都市機構と高島平地域のまちづくりの推進に係る基本協定等を締結し、まちづくりを推進するための基本的事項や民間等との連携によるまちづくりの協働体制構築を推進しています。
 この地域には都営三田線が通っており、まちづくりは、高島平駅前地域でもあることから、区とUR、そして東京都が三位一体となって、まちづくりを進めていくことが重要です。
 そこで、高島平駅高架下の活用については、区と連携し、区の意見や要望を踏まえながら、交通局としても、まちづくりに貢献していくべきと考えますが、見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) かまた悦子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、育業の推進についてのお尋ねでございます。
 育児は休みではなく、未来を育む大切な仕事であります。そこで、育業という言葉に込めたこの思いを社会に広く浸透させ、安心して育業できる社会を実現する上で、企業や職場で働く同僚の共感と支えが欠かせません。
 都はこれまで、育業の理念の普及啓発や男性育業を推進する企業の取組の発信、また、育業を促す奨励金の支給などに取り組んでまいりました。現在、都におけます男性の育業取得率でございますが、過去最高の約四割となっております。そしてまた、取得する期間の方も延びております。
 こうした流れを加速するため、従来の取組に加えまして、育業を支える側への支援も政策の柱の一つとして位置づけまして、育業しやすい職場環境づくりをさらに促進してまいります。
 そして、育業する側への支援とそれを支える側への支援に複合的に取り組みまして、共に輝ける社会をつくり上げてまいります。
 次に、育業を支える同僚への支援についてでございます。
 日本の育業の制度は実は世界一です。そして、この制度を誰もが気兼ねなく使って、育業できる職場にしていかなければなりません。そのためには、育業を支える側の頑張りに報いることが大切でございます。
 今年度、育業する社員の同僚に手当を支給する中小企業に対しまして、奨励金により、後押しをする取組、新たに開始をいたしました。
 若手の社員や育業経験のない従業員を対象にして、育児体験を研修に取り入れまして、子育てへの理解を促す企業への支援も行ってまいります。
 これらの育業を支える側への支援を通じて、互いに助け合い応援し合える、そのような職場環境を築いてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) チャレンジスクール等の生徒への支援についてでございますが、都教育委員会は、ユースソーシャルワーカー等で構成する自立支援チームを都立学校に派遣し、様々な困難を抱える生徒に対して関係機関と連携し、個々の生徒の状況に応じた支援を実施しております。
 生徒が退学した場合にも、引き続き、ユースソーシャルワーカーに相談ができることを伝え、相談窓口を記したカードを配布しています。退学後、本人や保護者から相談があった場合には、高校への再入学に向けた支援や区市町村の福祉部門等につなげるなどの支援を行っております。
 今後とも、退学した生徒も必要な支援につながることができるよう、関係機関と連携してまいります。
   〔産業労働局長田中慎一君登壇〕

○産業労働局長(田中慎一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 東京くらし方会議における意見の発信についてでございます。
 多様な人たちの意思が尊重され、働き、暮らせる社会の実現に向け、都は昨年、東京くらし方会議を設置いたしました。
 この会議では、子育てや介護など、働き方と生き方に関わる社会の制度やDXによる業務改善など会社組織の状況等について議論を行い、新たな時代に即した働き方や女性活躍について委員の意見をまとめ、広く発信してまいりました。
 今年度は、さらに検討を深めるとともに、企業の経営層や人事担当者等を対象とする女性活躍関連イベントにおいて、会議での議論や意見等を紹介してまいります。
 こうした取組を通じ、ライフイベントと仕事の両立ができる環境づくりを推進してまいります。
 続きまして、プラチナ・キャリアセンターについてでございます。
 高齢期を迎える女性が、様々な選択肢から仕事を得て活躍し続けられるよう、サポートすることは重要でございます。
 都は今月、五十歳以上の年代の方が副業などを通じて、新しいキャリアを築けるよう後押しする拠点として、プラチナ・キャリアセンターを開設いたします。
 センターでは、高齢期を見据え、これまでとは異なるキャリアに踏み出したい方と中小企業とのマッチングを促す交流会などの支援を実施いたします。その中で、女性が希望する仕事に就けるよう、スキルの習得をサポートする講座の周知や副業に取り組む体験談の発信も進めてまいります。
 これによりまして、高齢期に向けた職業生活の充実を支援いたします。
 最後に、はたらく女性スクエアについてでございます。
 女性が仕事で活躍し、業務やマネジメントにおいて、十分力を発揮できるよう後押しすることは重要でございます。
 都は今年度、女性社員等に対し、相談対応を行う拠点、はたらく女性スクエアを青山に開設いたします。
 この拠点では、女性のキャリアアップへの支援のほか、働く上での課題や悩みの解決をサポートするための労働相談やセミナーを開催いたします。非正規雇用の方に対しては、雇い止めや待遇、ハラスメントなどの悩みに幅広く対応するとともに、正社員として活躍したいなどの希望に応じて、東京しごとセンターと連携した支援を行います。
 これにより、働く場における女性活躍を推進してまいります。
   〔福祉局長山口真君登壇〕

○福祉局長(山口真君) 就労継続支援B型事業所のIT環境整備に関するご質問にお答えいたします。
 特別支援学校の卒業生等が利用する事業所が工賃向上を図るためには、管理者の意識改革とともに、デジタル技術の導入など社会の変化を踏まえた生産活動を行うことが重要でございます。
 このため、都は、事業所向けの経営意識の醸成等を目的としたセミナーの開催、生産性向上につながる設備の整備への補助などによりまして、事業所の取組を支援しております。
 今年度は、特別支援学校における職業教育に係る取組等をセミナーで紹介するとともに、デジタル機器の導入を一層促し、事業所における受注機会の拡大と工賃向上を支援してまいります。
   〔総務局長佐藤智秀君登壇〕

○総務局長(佐藤智秀君) 災害時のトイレ対応についてのご質問にお答えをいたします。
 大規模災害発生時の不衛生な環境による被災者の健康被害を防ぐために、公衆衛生の確保は重要でございます。
 都は今年度、衛生面や快適性など多様な視点から、災害時にトイレ確保の主体となる区市町村の取組を支援するため、その指針となる計画を策定いたします。
 現在、都の被害想定や能登半島地震を踏まえまして、必要なトイレの数や種類のほか、女性や高齢者など避難者の特性に応じて配慮すべき点などを整理し、区市町村などの意見を聞きながら検討を進めております。
 今後、適切なトイレ環境の確保に向けた計画として取りまとめまして、区市町村を支援してまいります。
   〔建設局長花井徹夫君登壇〕

○建設局長(花井徹夫君) 板橋区道の無電柱化促進についてでございますが、東京全体の防災機能を強化するためには、都道のみならず区市町村道の無電柱化を促進することが重要でございます。
 このため、都は、事業費を全額補助するチャレンジ支援事業制度を令和九年度まで延伸いたしました。
 現在、板橋区は災害拠点病院に通じる二路線で事業を進めており、都はこうした取組に対して、今年度新たに設置した都と区市町村で構成する協議体の場を活用いたしまして、技術的支援などを強化してまいります。
 引き続き、安全・安心な東京の実現に向け、都内全域の無電柱化を積極的に推進してまいります。
   〔交通局長久我英男君登壇〕

○交通局長(久我英男君) 三田線高島平駅の高架下の活用についてでございますが、交通局では、高架下用地を店舗や駐輪場として貸し付けるなど、保有する資産を有効に活用することで、収益向上などを図っております。
 これまでも、板橋区が策定した高島平地域グランドデザインを踏まえ、西台駅周辺の高架下において、店舗の外観やサインについて統一感のある空間づくりを行ってきており、高島平駅周辺におきましても、今後、区から具体的な提案等がありましたら、可能な限り協力してまいります。
 引き続き、資産の有効活用を図りつつ、にぎわいの創出や地域の発展につながるまちづくりに貢献してまいります。