午後一時開議
○議長(宇田川聡史君) これより本日の会議を開きます。
この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。
○議長(宇田川聡史君) この際、会議録署名議員の変更について申し上げます。
本日の会議に限り、松田康将君から七十番平けいしょう君に変更いたします。ご了承願います。
○議長(宇田川聡史君) 次に、日程の追加について申し上げます。
議員より、議員提出議案第四号、東京都立職業能力開発センター条例の一部を改正する条例、知事より、東京都監査委員の選任の同意についてがそれぞれ提出されました。
これらを本日の日程に追加いたします。
○議長(宇田川聡史君) 昨日に引き続き質問を行います。
九十番田村利光君。
〔九十番田村利光君登壇〕
○九十番(田村利光君) まず、生物多様性の保全と活用の推進について伺います。
都の生物多様性地域戦略では、二〇三〇年までに生物多様性を回復軌道に乗せるネイチャーポジティブの実現を目標に掲げています。この目標実現に向けては、都民や事業者の理解促進を図っていく必要があります。
そのような中、八月には、東京で「山の日」全国大会が開催されます。多くの都民に豊かな生物多様性を有する東京の山の魅力や機能を知ってもらえるこの機会を通じて、生物多様性の保全、回復に向けた主体的な行動につながる機運を高めていくことが重要だと考えます。都の見解を伺います。
先月、都は、サントリーホールディングス株式会社との間で、資源の循環、生物多様性の保全などの環境分野において、取組を包括的に推進するための協定を締結しました。
サントリーは、工場でくみ上げている量以上の地下水を森で育むことを目標に、天然水の森という活動を長年にわたり続けています。そこでは、間伐等の整備手法や鹿から苗木を守る取組など、専門家の知見を得ながら、科学的根拠に沿った整備を行っていると聞いています。
今後は、こうした先駆的な企業等と連携を深め、その知見を施策に生かすことにより、活動の裾野拡大に取り組んでいくことが重要と考えます。都の見解を伺います。
次に、企業の森について伺います。
多摩地域に広がる貴重な森林を次世代に引き継ぐためには、行政だけでなく、都民や企業も森林整備に参加することが大切です。
そのための仕組みが、企業が十年間にわたり森林整備を進める企業の森事業です。この取組は、企業からの評価も高い一方で、参加したいが十年間分の負担が大きい、育った木の手入れをしたいがメニューにないなどの理由から、参加を見送る企業もあると聞きます。
そこで、現在の企業の森の仕組みをより多くの企業が参加できるよう、柔軟に見直していくべきと考えますが、見解を伺います。
次に、秩父多摩甲斐国立公園内の五十人平野営場の整備について伺います。
奥多摩町の五十人平地区には、町営の奥多摩小屋があり、多くの登山者が利用していましたが、老朽化等の理由で平成三十一年に閉鎖し、施設が取り壊されました。
このため、私は、令和四年第二回定例会の質問で、この地区に宿泊などができる自然公園施設の設置を求め、その後、都が野営場の整備を進めることとなりました。
この場所は、雲取山の山頂付近にあるため、高山ゆえの登山者の安全への配慮とともに、豊かな自然環境を考慮した施設の整備を進めていくことが重要と考えますが、都の取組を伺います。
次に、農業における脱炭素化の推進について伺います。
国では、現在、食料・農業・農村基本法の改正について審議しています。この中では、食料安全保障の抜本的な強化とともに、環境と調和の取れた産業へ転換していくために、農業分野での温室効果ガスの削減が挙げられています。
東京の農業においても、この視点は重要です。例えば、農業用機械を環境負荷の低いものに変えていくことや製造過程において温室効果ガスが発生する化学肥料の使用を削減することは、有効な取組であり、すぐにでも始めることができます。
そこで、農業の振興を図る上で、脱炭素化への対応も促していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
次に、カーボンクレジットと都内農家、林業者との連携について伺います。
東京には、農地に加え、多摩地域の森林など豊富な自然資源があり、多くのCO2を吸収し、除去することができる可能性を秘めています。
東京都はスタートアップと協力し、農地や森林等において、CO2を大気から吸収し、除去することで、カーボンクレジットをつくり出す取組を開始するとのことですが、都内の農地や森林から創出されたカーボンクレジットが流通すれば、農業や林業の振興にも寄与します。
そこで、カーボンクレジットの創出に当たり、都内の農家や林業者等と連携して取組が進むよう工夫を図るべきと考えますが、都の見解を伺います。
次に、市民生活と観光の共栄について伺います。
観光振興は、地元経済を活性化するものの、地域住民の暮らしへの影響も懸念されます。西多摩の秋川では、観光客が河原でバーベキューやキャンプなどを楽しむ一方で、地元の人々が水辺に親しむ機会が奪われてしまったという話も聞きます。このように地元の住民生活と観光が分離してしまっては、将来にわたって持続可能な観光を実現することは困難です。
観光を通じて地域が将来にわたって発展していくためには、観光客と地域住民がお互いの立場を相互に理解し合い、住んだまちが観光地でよかったと思えるまちづくりを進めていくことが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
次に、盛土対策について伺います。
建設発生土の処分に当たっては、搬出元、搬出先双方の取組が重要です。搬出元の取組としては、本年六月より建設発生土の最終搬出先の確認等が受注者に義務づけられました。一方、搬出先においては、盛土規制法の許可が必要なケースが多いと思われます。そして、この盛土規制法の運用が本年七月から始まります。
そこで、不適正な盛土が発生しないよう、新たな盛土規制法に基づく制度の周知や執行体制の構築により、適切に許可、指導等を実施していく必要があると考えますが、見解を伺います。
次に、富士山噴火に伴う降灰対策についてお聞きします。
国が令和二年に公表した報告書によると、約三百年前の宝永噴火と同規模の大噴火が発生した場合、降灰は広域に及び、かつその総量も大量となることが想定されています。その場合、道路等の交通機能の麻痺や停電の発生などの被害により、社会経済活動に甚大な影響が生じるおそれがあります。
こうした事態においても、都民の生活を維持するためには、都市機能を早期に回復するための体制を整備し、具体策を講じることが重要です。
いつ起こるとも知れない噴火に備え、降灰を円滑に処理するための総合的な対策を早急に講じていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
次に、都道福生三・三・三〇号線整備について伺います。
西多摩産業道路と呼ばれているこの路線は、私の地元である福生市と羽村市を南北に貫き、青梅市に至る都市計画道路で、西多摩地域の重要な路線です。このうち約四・六キロメートルはおおむね完成しており、昨年は、多摩橋通りから都道一六五号線までの区間が開通しました。残る北側の区間も用地取得が進んでおり、この区間が完成すると、福生駅前の自動車交通の分散が図られることや圏央道へのアクセス性が強化されるなど、その事業効果は極めて高いと思われます。
一方で、道路の新設に伴い、地域の交通形態が変わることなどもあり、整備に当たっては、地元の方々の声にも耳を傾けながら、丁寧に進めることが重要です。
そこで、福生三・三・三〇号線の現在の取組状況について伺います。
次に、工事現場を活用したアートプロジェクトについて伺います。
アートは、人々の感性を刺激し、生活に潤いをもたらすものでありますが、それらに触れるためには、美術館や個展など特別な場所に足を運ぶ必要があり、なじみのない都民には、心理的なハードルが高いとも感じています。
こうした中、都は、工事現場を活用したアートプロジェクトとして、仮囲いなどをキャンパスに見立て、無機質なまちの一角をアートで彩る事業を開始しており、身近にアートを楽しめる取組として期待するところです。
そこで、今回の事業の狙いとこの取組が地域に親しまれるものとなるよう、今後どのように展開していくのか見解を伺います。
次に、特別支援学校の学校と保護者間の連絡手段のデジタル化についてお聞きします。
特別支援学校においては、保護者に対して、学校での子供の様子を臨場感のある形で伝えることが重要だと考えます。
そこで、保護者に対する連絡手段にデジタルを活用することにより、保護者との情報共有がより効果的に行えるようになり、さらに、教員の負担軽減も図れると考えますが、見解を伺います。
次に、児童相談所の設置について伺います。
令和三年七月に公布された児童福祉法施行令等では、児童相談所の所管区域の人口はおおむね五十万人以下とされ、併せて発出された国の通知で、管轄人口の目安は二十万人から百万人までの範囲とされています。
児童相談所の管轄区域は、法令に基づき、人口のほか地理的条件、交通事情等を総合的に考慮することが求められています。
都は、法令等を踏まえて、児童相談所の管轄区域の見直しを行うこととしており、昨年度、多摩地域に新たに設置する町田児童相談所、多摩中部児童相談所、西多摩児童相談所、いずれも仮称の三か所の設置場所を公表しました。
私の地元福生市には、西多摩児童相談所の開設が予定されています。児童相談所の運営では、地元との関係を良好に築くことが重要です。設置に当たっては、地元の意見にも十分に耳を傾け、計画策定を進めていくべきと考えます。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 田村利光議員の一般質問にお答えをいたします。
東京農業での脱炭素化の推進についてのお尋ねでございました。
東京の農業が、将来に向けて環境と調和をしながら持続的に発展していく。そのためには、農作物を育てる過程で発生するCO2を減らす取組を進める、このことが重要でございます。
都におきましては、栽培施設におきまして、軽油の使用を大幅に抑える暖房設備の導入を後押ししております。また、製造過程で化石燃料を多く使用する化学肥料を減らす取組もサポートいたしております。
そして、今年度からは、農作業で使う機械の動力に、太陽光発電で得られました電気を活用する取組の支援に力を入れてまいります。
こうした取組によって、環境負荷の低減を図りながら、東京の農業を振興してまいります。
残余の質問につきましては、教育長、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
〔教育長浜佳葉子君登壇〕
○教育長(浜佳葉子君) 学校と保護者間の連絡手段のデジタル化についてでございますが、都教育委員会では、都立学校に令和六年一月から、児童生徒の欠席連絡や保護者へのメッセージ送信機能を有する都立学校保護者コミュニケーションシステムを順次導入しており、欠席連絡に係る電話対応が不要になるなど、教員の負担軽減が図られております。
このシステムには、画像添付機能があることから、特別支援学校では、児童生徒の写真等を使って、保護者に学校生活の様子を具体的に伝えていくことができます。
今後、保護者との情報共有の円滑化や教員の負担軽減のため、このシステムの活用を推進してまいります。
〔東京都技監谷崎馨一君登壇〕
○東京都技監(谷崎馨一君) 盛土対策についてでございます。
都は、本年七月末に都内のほぼ全域を盛土規制法に基づく規制区域に指定し、新制度の運用を開始いたします。
これまで、業界団体に新制度を周知するとともに、法令や条例に実効性を持たせるため、審査基準を改定し、許可権者への説明会を開催いたしました。
今後、警視庁と連携して合同パトロールを行い、不適正盛土の監視指導を強化するとともに、都民に不適正盛土投稿ツールの活用を促すなど、盛土対策を戦略的に広報することにより、不適正盛土の抑止につなげてまいります。
こうした取組により、盛土による災害を防止し、都民の安全・安心を確保してまいります。
〔環境局長松本明子君登壇〕
○環境局長(松本明子君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、生物多様性への理解と行動についてでございます。
都民や事業者に生物多様性に配慮した主体的な行動を促すためには、あらゆる機会を捉え、その意義や重要性を啓発し、行動へ結びつけていくことが重要でございます。
このため、「山の日」全国大会では、生物多様性をテーマに多彩なプログラムを展開し、東京の豊かな自然の魅力やその価値を広く発信いたします。また、区市町村等と連携し、大会の前後で都内全域において自然を体験するイベントを展開するなど、都民等の共感を育んでまいります。
さらに、新たに設置いたしました生物多様性推進センターが提供するプログラムに、都民等が継続的に参加する工夫を重ねるなどにより、貴重な自然環境を保全してまいります。
次に、企業等と連携した生物多様性の保全についてでございます。
食料や水の供給、風水害の軽減など、様々な恩恵をもたらす生物多様性の保全には、意欲や知見を持つ企業等との協働により、具体の行動につなげる仕組みが重要でございます。
このため、都は、先月協定を締結いたしましたサントリーと共に、小学生を対象とした参加型のプログラムを展開いたします。具体的には、同社が管理する森でそのノウハウを活用し、植林体験や森と水に関するワークショップを実施いたします。
加えて、生物多様性に資する取組を表彰する新たな制度を開始し、優良事例を効果的に発信することで、より多くの企業等の意欲と行動を引き出してまいります。
これらにより、生物多様性の恵みを次世代に継承してまいります。
最後に、五十人平における施設整備についてでございます。
雲取山の登山ルートとして多くの利用が見込まれる五十人平の施設は、安全性はもとより、周囲の自然環境に配慮した形で整備していくことが重要でございます。
このため、都は、屋根つきの休憩施設に加え、自然を体感しながら宿泊できるテントサイトを新たに設置いたします。
また、トイレは、水を使用せず、微生物の力で分解処理する方式を採用し、その電力は、施設の屋根に設置いたしました太陽光パネルによる発電を活用いたします。加えて、鹿の食害から植生を守るため、防護柵を設置いたします。
来年三月の完成に向けて、これらの整備を着実に進め、登山者の安全と快適な利用環境を確保してまいります。
〔産業労働局長田中慎一君登壇〕
○産業労働局長(田中慎一君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、企業の森についてでございます。
東京の森林を守り育てる上で、森づくりに協力する企業を増やし、その取組を広げていくことは重要でございます。
このため、企業と協定を締結し、企業名を冠した森で、社員等が植林や下刈りなどを行う取組を実施しております。これまでに、三十一社、四十か所で約八十ヘクタールの森林が整備されてきました。都は、こうした取組をウェブサイト等で発信し、参加企業の拡大に取り組んでおります。
こうした企業をさらに増やすため、今後、協定期間の短縮や社員等が参加できる作業メニューの多様化など、参加しやすい仕組みにしてまいります。
これらによりまして、森林循環の促進につなげてまいります。
続きまして、カーボンクレジットの創出に向けた取組でございます。
都内の農地や森林を活用し、CO2を吸収し除去する取組を進めるに当たり、スタートアップと農家等を円滑に結びつける仕組みは重要でございます。
このため、都は、カーボンクレジットの創出を担うスタートアップに対し、都内の農地や森林等において取り組むことを条件とした上で、効果的なサポートを行います。具体的には、農林分野の関係団体と連携し、実施場所を提供していただく農家等を確保する際の支援や農作物の生育とCO2の吸収などを両立させる手法に関する助言等を行います。
これらによりまして、東京の農地や森林を活用したカーボンクレジットの創出を促進いたします。
最後に、地域における観光振興についてでございます。
観光による地域の活性化を図る上で、住民と旅行者が地域の観光資源を大切に思う意識の醸成と共有は重要でございます。
このため、都は、観光協会等に対し、地元の環境や産業を学ぶツアーづくりを支援し、旅行者が住民と直接交流できる機会を提供しております。また、自然や文化など東京の多様な観光の魅力を都民が体感できるキャンペーンを実施し、地元への理解や愛情を深める取組を進めております。今後は、地域の住民の生活にもメリットをもたらす観光振興の取組を都民に広く発信し、さらに進めてまいります。
これらにより、地域における生活と観光の調和を図り、持続的な観光振興につなげてまいります。
〔総務局長佐藤智秀君登壇〕
○総務局長(佐藤智秀君) 富士山噴火に伴う降灰対策についてのご質問にお答えをいたします。
噴火に備え、都市機能を早期に回復し、都民生活を維持するための対策を講じておくことは重要でございます。
国は現在、対応方針を検討中ですが、都は、国に先駆けて、昨年、降灰対策の指針を策定し、重要拠点を結ぶ道路の早期開通など、対策の方向性を示しました。
今後も、国へ迅速に対応方針を示すよう要望するとともに、関係機関と連携し、優先除灰道路の指定や資機材確保を進めるほか、灰の仮置場選定の考え方を整理し、その結果を地域防災計画火山編に反映させてまいります。
こうした総合的な対策によりまして、富士山噴火による降灰への備えを強化してまいります。
〔建設局長花井徹夫君登壇〕
○建設局長(花井徹夫君) 福生三・三・三〇号線の整備についてでございますが、本路線は、福生市熊川から青梅市新町に至る約六キロメートルの地域幹線道路であり、西多摩地域における南北方向の交通の円滑化等に資する重要な路線でございます。
現在、多摩橋通りから富士見通りまでの六百五十メートルの区間で事業中でございまして、このうち、南側の約三百メートルの区間を令和五年二月に交通開放いたしました。北側の区間では、用地取得や埋蔵文化財調査を進めますとともに、地域の利便性に配慮した仮設歩道を整備しております。
引き続き、地域の交通状況を見ながら、地元住民へ適切に対応してまいりますとともに、丁寧な説明を行い、理解と協力を得ながら、着実に事業を推進してまいります。
〔生活文化スポーツ局長古屋留美君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) 工事現場を活用したアートプロジェクトについてお答えいたします。
都は、まち中にアーティストの活躍の場を広げ、誰もがアートに親しめる環境を創出する事業、TOKYO CITY CANVASを今年度より開始いたしました。
第一弾として、都立駒沢オリンピック公園の仮囲いを活用した大規模な屋外アートを展開しておりまして、今後も複数の都有施設で制作を進めてまいります。また、民間企業や団体等への助成も新たに立ち上げまして、都内の各所に取組を広げてまいります。
アートが都民により身近なものとなり、まちのにぎわい創出にもつながるよう、地元自治体の意見も聞きながら、地域の特色に合わせて事業を展開してまいります。
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