令和六年東京都議会会議録第四号〔速報版〕

   午後三時五分開議

○議長(宇田川聡史君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十六番斉藤まりこさん。
   〔五十六番斉藤まりこ君登壇〕

○五十六番(斉藤まりこ君) 初めに、能登半島地震でお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。
 家屋の倒壊などで家族や大切な人を失ってしまう被災地での現実を見ると、胸が張り裂けるような思いです。こうした事態を少しでもなくしていくことが、私たちの使命だと痛感しています。
 都が一昨年に発表した首都直下地震等による新たな被害想定の中で、私の地元足立区では、全壊棟数、死者数、負傷者数の被害が最多となりました。家屋の全壊棟数は、都心南部直下地震で最多の一万一千九百五十二件という想定です。能登半島での震災を受けて、地元の方々からは、首都直下型地震のときはどうなってしまうのか、不安の声が届いています。
 足立区を含めた東部地域では木造密集地域が多くありますが、家屋の倒壊は、命に直結するだけでなく、通路を塞いだり、火災の延焼につながる甚大な影響を及ぼします。
 住宅の耐震化対策は、住宅の所有者の命を守るだけでなく、地域全体の安全性を高める上でも重要だと考えますが、知事の見解を伺います。
 地震に強いまちづくりのためには、耐震対策を自己責任とせず、行政の責任で進めていく視点が重要です。足立区では、都の新しい被害想定を受けて、今年度から、戸建ての耐震改修や解体の工事費の補助割合を二分の一から十分の九まで引き上げ、上限額も引き上げて対策を強化しています。
 木造密集地域など、区が定める特定地域では、対策工事の上限額が二百万円ですが、それでも、補修箇所が多くて、総額三百万円かかるようなケースでは、百万円の負担が生じます。耐震診断を行って、耐震性が不足していると診断された場合でも、工事に至らないケースがありますが、その理由について、区の担当者からは、高齢者の世帯で、経済的理由によって諦めるケースが多いとのことです。
 個人の負担を軽減し、自治体の取組を後押しするためにも、都からの支援を拡充するべきですが、いかがですか。
 知事が施政方針で、建物の液状化対策を強化すると表明したことは重要です。都が示している液状化マップでは、足立区を含む東部地域や湾岸部、大田区などに液状化が起こるエリアが広がっています。液状化対策の重要性について、知事の認識を伺います。
 特に液状化の可能性が高い東部地域などに積極的に取組を促進していくことが重要と考えますが、見解を伺います。
 能登半島地震では、石川県、富山県、新潟県の三県で、液状化による建物の被害が一万件を超えています。富山県氷見市の市長は、市民との意見交換の場で、個人での液状化対策はできないと思うので、まち全体で対策するような大胆なことをやっていかなければならない、県や国に制度をつくってもらう要望をしていると述べています。
 葛飾区では、東日本大震災での液状化被害をきっかけに、戸建て住宅の液状化対策に補助を行っていますが、なかなか進まないとのことです。液状化対策は、個人任せや自己責任ではなく、まさに都の責任で面的に取り組む視点が重要です。区市町村と連携して、住民合意を得ながら、重点エリアを定めて、液状化対策を計画的に推進していくことが必要だと考えますが、いかがですか。
 上下水道の耐震化の強化も待ったなしです。都の被害想定では、都心南部直下地震の場合に、足立区を含む東部地域と大田区で、断水率が四〇%を超え、下水道管の被害率も、東部地域や城南地域で最も大きい想定になっています。発災後に水がなく、トイレも使えない状況が長期間にわたれば、人口の多い東京都では、能登半島よりも深刻な事態になることは明らかです。
 水道局では、現在は断水率が五〇%を超える地域の耐震化に取り組み、下水道局では、避難所や災害拠点病院などの重要施設へつながる下水道管の耐震化を進めているところですが、上下水道とも、都の新しい想定に基づいて、断水率が四〇%以上の地域や下水道管の被害率の高い地域への取組を強化し、二〇二六年度からの次期経営計画にも位置づけていくことを求めますが、いかがですか。
 都営住宅の間取りの見直しについて伺います。
 都営住宅の型別供給について、昨年の第一回定例議会で見直しを求めた我が党の代表質問に対して、都は、住戸内のバリアフリー化や介護スペースの確保など、社会状況の変化等に対応し、今後とも必要な見直しを行っていくと答弁しました。重要な一歩です。
 足立区で建て替えを予定している辰沼団地では、一期目と二期目の工事の対象の単身世帯に、都が間取りの希望についてのアンケート調査を行っています。住民に間取りについての希望を聞く取組は初めてのことです。
 まず、この調査を行った意義について伺います。このアンケート調査では、一DKか二Kのどちらを選ぶか聞いていますが、単身世帯の方が、従来の一DKではなく、二Kを選んだ割合とその主な理由は何か伺います。
 住民の方々から直接お話を伺いましたが、介護や看護が必要になったときに、家族が泊まれるスペースがあれば安心だという声が多くありました。また、もともと家族で三Kの部屋に住んでいて、今は一人暮らしになっている高齢の女性の方は、孫が近くで受験があるからと、おばあちゃんちに泊まりに行っていいと連絡が来て、泊まりに来てくれた、それが本当にうれしかったと笑顔で話してくれました。高齢の方々の生きがいや健康を守るためにも、また、子育て世帯なども多く入れるよう、ゆとりのある間取りの部屋を提供することが重要です。
 ほかの都営住宅にも、新たな間取りの導入を検討していくことを求めますが、いかがですか。
 間取りの希望を含めた入居者の要望をつかむためのアンケートをほかの都営住宅の建て替えでも実施することを求めます。
 しかし、今、都が、辰沼団地の方々に示している間取りの選択肢では、根本的なスペースの改善としては、極めて不十分です。二Kでは、ダイニングがなくなり、食事するスペースと寝室を分けて使うためには、居室の一つをダイニングとして使うことになり、結局は、一DKと変わらないのではないかという声が寄せられています。そもそも、提示されている部屋の広さは、一DKが三十五平米、二Kが三十八平米とほとんど変わらないため、二Kの二つ目の居室が狭いことが予想されます。この背景には、都営住宅の型別供給のルールがあります。
 そこで伺いますが、都営住宅の型別供給実施基準の根拠となる法令は何ですか。
 そもそも国は、公営住宅の型別供給の根拠となる省令は、現在は定めていません。私たちは、公営住宅の世帯人数ごとの供給基準について、全国の道府県と政令都市への調査を行いました。他県では、世帯人数ごとの基準を定めていないか、一人世帯でも二DKを認めているところがほとんどで、広さは四十五平米から五十五平米というところが多数です。大都市圏の大阪府も、一人世帯に二DKで、広さは四十九平米、千葉市でも、二DKまたは四十五平米の広さを認めています。
 適切な居住への権利は基本的人権であることを国際的に認めた宣言に日本政府が署名してから三十年がたとうとしています。住まいは人権の立場から、型別供給は廃止して、単身者でも十分な広さの二DK以上の供給を認めていくべきですが、見解を伺います。
 次に、保育について質問します。
 保育士の処遇は、保育の質の維持向上のために重要な要素です。都内の保育士の平均賃金は、全産業平均より月十二万円以上低い状況です。保育士の処遇改善は引き続き重要な課題ですが、知事の見解を伺います。
 保育士の賃金の低さや配置の少なさの大本にあるのは、国と自治体の保育のための予算があまりに少ないことです。同時に、その少ない金額が、人件費に十分に充てられていない場合があります。
 国は、認可保育園の基本的な運営費のうち、約八割が人件費だと想定しています。一方で、足立区の株式会社立の認可保育園の場合、一昨年度の事業活動収入に占める人件費の割合は平均五六%で、中には三〇%台の保育園もありました。社会福祉法人立では平均七一%です。施設ごとの事情等によって、ある程度増減することはありますが、あまりに低い場合は、引上げが必要です。
 都内にある、人件費の割合が四六%の株式会社立の保育園で働いている保育士さんからお話を伺いました。その保育園には、園庭がありませんが、ぎりぎりの人数で運営しているため、お散歩も週一回程度、クラス合同で行くのがやっとだそうです。また、人が足りないという理由で、ゼロ歳児クラスは、夏にも沐浴ができず、一歳児以上のクラスの子たちも水遊びができません。人手がぎりぎりのため、保育士が休憩を取るのも困難です。
 世田谷区では、区独自の上乗せ補助について、人件費割合が五〇%を切る施設には出さないというルールをつくっています。都としても、委託費や処遇改善のための補助が、適切に人件費に回るようにするための仕組みを強化する必要があると考えますが、いかがですか。
 東京都は、以前、人件費を含む保育施設の財務情報や都の補助による賃金の改善状況の分析を行い、結果を公表しましたが、その理由について伺います。また、二〇一七年度の分以降は行われていません。定期的に分析、公表を行うべきではありませんか。
 自治体から認可保育園に支払われる委託費は、人件費などその園での保育に必要な経費に充てるというのが本来の原則です。しかし、実際は、弾力運用という形で、非常に幅広く例外が設けられ、その保育園以外のところで使えるようになっています。このことが、人件費割合が低くなる背景にあると指摘されています。
 私たちが東京都に開示請求した文書によると、足立区内では、昨年度は、二十二か所の株式会社立の保育園が、合計で約一億八千万円を法人本部の経費に充てていることなどが分かりました。その中には、一つの保育園で二千万円近い金額を法人本部に回しているところもありましたが、その法人の持ち株会社の役員の報酬等は、三名分で約一億五千万円に上っています。
 委託費は、本来、その保育園の運営のための人件費等に充てられるべきものです。委託費の弾力運用について、規制の強化を行うべきですが、いかがですか。答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 斉藤まりこ議員の一般質問にお答えいたします。
 保育士の処遇改善についてのお尋ねがございました。
 都は、保育士が専門性を高めながら、やりがいを持って働くことができますよう、キャリアパスの仕組みを導入する事業者を対象といたしまして、保育士の処遇改善の取組を支援しているところでございます。
 その他の質問につきましては、関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長谷崎馨一君登壇〕

○都市整備局長(谷崎馨一君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、住宅の耐震化についてでございます。
 能登半島地震では、戸建て住宅が多数倒壊するなどの被害が発生いたしました。東京を安全・安心な都市とし、都民の生命と財産を守るためには、住宅の耐震化を進めることが重要でございます。
 次に、耐震化に関わる支援の拡充についてでございます。
 今年度からは、旧耐震に加え、新耐震基準の木造住宅への耐震化助成を開始しており、令和六年度からは、耐震改修等の都費の補助限度額を原則五十万円から六十万円に引き上げることとしております。
 次に、液状化対策の重要性についてでございます。
 能登半島地震では、液状化により戸建て住宅が大きく傾くなどの被害が多数発生いたしました。被害を軽減し、都民の生活再建が早期に図られるよう、戸建て住宅の液状化対策を進めていくことが重要でございます。
 次に、液状化対策の取組についてでございます。
 首都直下地震等における被害想定では、都内の広範囲において液状化による被害が示されており、都内全域で対策を推進してまいります。
 最後に、液状化対策の推進についてでございます。
 令和六年度から、所有者等が行う液状化対策のための地盤調査や対策工事に助成を開始することとしており、地域の状況を把握している区市町村と連携し、取り組んでまいります。
   〔水道局長西山智之君登壇〕

○水道局長(西山智之君) 水道管の耐震化についてでございますが、水道局ではこれまでも、施設整備計画及び経営計画において、取替え優先地域の解消を掲げており、今年度から、これまでの区市町村単位から、よりきめ細かく取替え優先地域を設定し、耐震継ぎ手化を進めています。引き続き、断水率を効果的に軽減させてまいります。
   〔下水道局長佐々木健君登壇〕

○下水道局長(佐々木健君) 下水道管の耐震化についてでございますが、下水道局では、区部全域において、震災時に人が集まる重要な施設である避難所や災害拠点病院などを優先して下水道管の耐震化に取り組んでおります。引き続き、地元区と連携を図りながら、対象施設を拡大し、被害率の減少に取り組んでまいります。
   〔住宅政策本部長山口真君登壇〕

○住宅政策本部長(山口真君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営辰沼町アパートでのアンケートについてでございますが、介護者の滞在やひとり親世帯等の入居ができる広さと二つの居室を備えた新たな間取りを検討中であり、試行する辰沼町アパートにおきまして、居住者の生活状況や入居希望を把握するため、第一期と第二期の単身世帯を対象に、令和五年七月にアンケートを実施したものでございます。
 次に、アンケートの結果についてでございますが、約七割の方が、介護者のため、居間と寝室を別にするため、親族を泊めるため、荷物が多いためなどの理由で、新たな間取りの二Kを選択しております。
 次に、他団地での新たな間取りの導入についてでございますが、現在、間取りの検討を進めている段階であり、今後の取組については未定でございます。
 次に、型別供給実施基準についてでございますが、この基準は、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法に基づき、国が定めた基本的な方針を踏まえたものとなっております。
 最後に、住戸の間取りについてでございますが、都営住宅は、都民全体のセーフティーネットであり、世帯構成に応じたより的確な居室構成、面積規模の住宅の供給を図っていくことが重要でございます。
 型別供給実施基準は、その目的を果たすために都が定めているものであり、今後とも適切に運用してまいります。
   〔福祉局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉局長(佐藤智秀君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、保育士の人件費についてでございます。
 都は、保育士等キャリアアップ補助におきまして、事業者に対し、職責や職務内容等に応じた賃金体系の届出や賃金改善の実績報告などの提出を求めております。
 続きまして、保育士等キャリアアップ補助についてでございます。
 都は、保育士等の処遇改善の状況等を把握し、さらなる支援策を検討するため、平成二十七年度及び二十九年度の保育士等キャリアアップ補助による賃金改善の状況などを分析し、結果を取りまとめて公表したものでございます。
 保育士等キャリアアップ補助では、事業者に対し、職責や職務内容等に応じた賃金体系などの届出や賃金改善の実績報告などの提出を求めておりまして、また、施設ごとの財務情報等を公表しております。
 最後に、保育士の委託費の弾力運用についてでございます。
 国は、通知によりまして、委託費の弾力運用が可能な使途の範囲や金額を示しております。

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