令和六年東京都議会会議録第四号〔速報版〕

○副議長(増子ひろき君) 九十四番内山真吾君。
   〔九十四番内山真吾君登壇〕

○九十四番(内山真吾君) 不登校児童生徒の支援の充実についてお伺いをいたします。
 不登校児童生徒数は、平成二十四年から令和四年までの間、十年連続増加となり、小学校で出現率は〇・三四%から一・七八%で約五・二倍、中学校では二・七六%から六・八五%で約二・五倍となっており、小中学校合わせて二万六千九百十二人となっています。
 私は約七年前に、都議会において、このままでは中学校だけで不登校が一万人を超えてしまうのではないか、こう警鐘を鳴らしましたが、今では一万人を優に超え、令和四年度では一万六千二百十七人となっておりますので、今の伸び率でいえば、令和六年度には中学校だけで二万人、小中合わせて三万人を超えてくるものと推察をいたします。
 不登校は何が何でもゼロにしなくてはならない、また、不登校になっても絶対に学校に復帰をさせなくてはならないというのは暴論だと思いますが、一方、児童生徒の個々の状況や思いを抜きにして、不登校でもいいというのも無責任であると思います。
 不登校は、心理的、身体的、社会的など様々な要因や背景が複雑に絡み合っていることはいうまでもありませんが、だからといって、難しいですねで片づけていい問題でもありません。
 学校が魅力あるものとなり不登校の出現率が下がる、また、児童生徒の状況、思いに寄り添いながら復帰率を上げていく、併せて多様な学びの受皿を確保していくというのが不登校対応において重要なポイントだと思います。そして、その多様な受皿については、フリースクールが大きな役割を担っています。
 これまで公的な支援の入ってこなかったフリースクールに子供が通う保護者への支援ですが、二年前より、調査協力金という形で実質月二万円の補助という歴史的な一歩を踏み出し、先日の我が会派の代表質問に対し、小池知事より、来年度からフリースクール等の利用料に対する助成制度を創設するとの答弁がありました。
 不登校の児童生徒が増加し続ける中、一人一人にしっかりと寄り添っていくことが重要であり、より多くの子供たちがこの新たな助成制度を利用できるようにすべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、新たな利用助成制度は、不登校状態にある義務教育段階の児童生徒を助成対象にしていくとのことですが、不登校状態の捉え方については、これまでの調査協力金の経験、実績も踏まえながら、困難に直面する児童生徒の実情を勘案し、制度設計の検討を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、スクールカウンセラーについてお伺いをいたします。
 不登校の児童生徒が年々増加をしている中で、様々な人材を活用して、一人一人の状況に応じた支援を行うとともに、多様な交流や学びの場を確保することが重要です。
 都教育委員会は、全ての小中高等学校等にスクールカウンセラーを配置しておりますが、学校においてスクールカウンセラーをより一層効果的に活用するには、配置日数を増やすことと併せて、児童生徒の不登校未然防止、すなわち出現率を下げる取組や、不登校になった場合には、ただ傾聴し、認めるだけではなく、適切なアプローチをすることで、学校復帰も含め、社会とつながりを持ち続けながら、どこかのタイミングで社会に復帰していく支援ができるスキルが求められています。
 スクールカウンセラーを質、量ともに伸ばしていく都教育委員会の取組についてお伺いをいたします。
 次に、スクールソーシャルワーカーについて伺います。
 不登校の背景の中には、学校だけでは解決が難しく、医療や福祉的な支援が必要なケースも増えており、教員だけでなく、教育と医療、福祉をつなぐ人材が求められています。
 その一つにスクールソーシャルワーカーがあります。市区町村教育委員会においては、都の補助事業によるスクールソーシャルワーカーを学校現場に配置し、増加をしてきております。
 一方、スクールカウンセラーと同様、専門的かつ多様な対応が求められることから、質の向上に向けた支援が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、バーチャルラーニングプラットフォームについて伺います。
 様々なアプローチを試みる中で、一人一人の子供に合った支援を行うことは重要であり、仮想空間を活用した取組も有効であると考えます。
 都教育委員会が現在都内の自治体に提供しているバーチャルラーニングプラットフォームについて、今後一層充実していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 続きまして、小学校における教員不足についてお伺いをいたします。
 これまでも産休、育休等により欠員が出ると、副校長が中心となり、ありとあらゆるつてを使って教員の確保に奔走するという話を現場からは聞いてまいりましたが、いよいよ直近のこの二年では、四月の年度当初にも教員不足が発生するという事態になってきました。そして、そこからさらに年度途中に向けて悪化をしていくという傾向にあります。
 今年度は四月に八十人程度、九月に百四十人程度まで欠員が増加しているとのことですが、三学期当初に当たる一月の不足状況はいかがでしたでしょうか。
 また、教員確保を進める上では、ただいま質問したとおり、年度当初のみならず、年間の欠員数を考慮した採用、対策をしていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。ご答弁をお願いします。
 一方、教員確保が困難な中では、外部人材を活用し、教員の負担軽減を図りながら、学校運営を補完することも重要です。
 これまで都は、スクールサポートスタッフなど外部人材を積極的に活用し、教員のサポート体制を整えてきました。
 導入当初は、教員以外を増やしても意味がないと懐疑的な意見も少なくなかったと記憶しておりますが、現在では活用の仕方が学校現場でも浸透してきており、各学年に一人欲しいという声も聞こえてきています。
 スクールサポートスタッフについては、今年度、教員の平均時間外勤務が月八十時間超の学校に複数配置をし、来年度は、教員の平均時間外勤務が月六十時間超の学校に複数配置を行うと聞いています。
 年々配置数が増えていることについては評価ができると思いますが、時間外勤務の平均が唯一の指標というのは少し違和感もあるように思います。例えば、平均的には六十時間に及んでいなくても、時間外勤務の有無が教員間で大きな隔たりのある学校では、平均六十時間超の学校よりも特定の教員には大きな負担がかかってしまいます。
 また、全体で頑張って時間外勤務を減らすとスクールサポートスタッフの追加配置が行われないという構造だと、時間外勤務を減らすインセンティブが働きづらいという問題もあります。
 また、先述のとおり、欠員を埋められていない学校に優先的に配置すべきとの考えもあると思います。
 すなわち学校の実態に応じた対応も必要であり、その上で、今後、外部人材の活用をより一層進めていくべきと考えます。都教育委員会の見解を伺います。
 続きまして、公立中学校等における部活動の地域連携、地域移行についてお伺いをいたします。
 都では、国の指針のとおり、令和八年度、すなわち、あと二年で、週末の部活動を地域移行していくことを目標としており、その上で、都教育委員会は、全ての市区町村から実態や課題について聞き取りを行ったと伺っています。
 そこで、この聞き取りで明らかになった課題と都教育委員会の今後の取組についてお伺いをいたします。
 一方、教員の負担軽減と専門的な指導の充実を図るため、外部人材の活用が必要とされてきましたが、地域移行を視野に入れると、ますます地域の指導人材を確保、育成していくことは極めて重要になってまいります。
 現在、都教育委員会は、外部人材として、部活動指導員と外部指導者の配置について、市区町村への経費の補助を行っておりますが、一部の学校からは、会計年度任用職員である部活動指導員に比べ、有償ボランティアである外部指導者の方が実態に合わせて柔軟に活用しやすいとの声も伺っております。
 そこで、部活動を指導する外部人材の配置に関わる市区町村への支援をさらに拡充すべきと考えますが、今後の方向性についてお伺いをいたします。
 昨年三月に台東区で女児が死亡し、今月、両親が殺人容疑で逮捕されるという事件がありました。
 事件の経緯を追ってみると、この家庭には東京都の児童相談センターや台東区の子供家庭支援センターが連携をしながら関わっておりましたが、母親が精神疾患による特定妊婦、保護歴がある、保育所から傷、あざの情報提供、保育所の転園など、リスクのサインは何度もあったように感じるだけに、何とか救えなかったのかと、じくじたる思いであります。
 都は今後、児童福祉審議会において、この間の対応について検証を行うとのことでありますので、形式的なものではなく、再発防止に向け、徹底的な検証を求めたいと思います。
 一方、こうした事例を繰り返さないようにするためには、検証結果を待つだけでなく、本件を全ての児童相談所で早急に共有するなど、都としてやれることは速やかに取り組むべきだと考えますが、いかがでしょうか。見解を伺います。
 また、虐待事例における様々な調査研究では、親のメンタルヘルスの問題との関係が指摘をされています。
 保護者が精神疾患を抱えたり、メンタルに不安がある場合には、家庭内の養育状況について把握しづらく、また支援や介入も難しいと聞いております。
 精神的課題を抱えている親への支援に当たって、こちらも早急にさらなる対策を講じるべきと考えますが、都は今後どのように取り組むのか、見解を伺います。
 最後に、代表質問でも取り上げましたデジタル地域通貨プラットフォームについて、少し踏み込んでお伺いをしたいと思います。
 我が会派では、政策勉強会においてデジタル地域通貨について検討を深めるとともに、地域のDXと経済活性化を支援する基盤の整備を重点要望と位置づけ、昨年十二月に小池知事に提案を行いました。
 その後、私たちは、先行導入している自治体や導入を検討している自治体へのヒアリング、地域の商店、キャッシュレス事業者等の関係者への聞き取りを重ね、その結果、一、小規模事業者には決済手数料の負担が大きい、二、市区町村で付与したポイントは、その市区町村内で還流をさせたい、三、利用者等のデータを取れるようにして今後の地域活性化策につなげていきたいという三つの大きなポイントが見えてまいりました。
 デジタル地域通貨プラットフォームの具体化に当たりましては、こうしたポイントを踏まえた上で、地域や市区町村に寄り添った事業として活用できるようにすべきと考えますが、都の見解を伺い、私の一般質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 内山真吾議員の一般質問にお答えいたします。
 フリースクール等の利用者支援についてのお尋ねがございました。
 いわゆる不登校が増加の一途をたどる中、子供たちがフリースクール等に安心して通える環境を創出していくことは喫緊の課題であります。
 このため、不登校状態にある義務教育段階の子供がフリースクール等に通う場合の利用料助成の制度設計に当たりましては、より多くの利用者が助成対象となるようにしてまいります。
 ユーザー目線に立ちました助成制度とすることで、学校生活になじめず生きづらさを抱える子供の成長をきめ細かくサポートしてまいります。
 なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、スクールカウンセラーの充実についてでございますが、子供の支援ニーズに応じスクールカウンセラーの勤務日数を増やしている小中高等学校においては、不登校の子供がスクールカウンセラーと面談を重ね、コミュニケーション力を高めたことで、登校できるようになったなどの成果が見られています。
 今後、こうした取組の充実とともに、教室に入れない子供等への支援を必要とする高校にスクールカウンセラーを追加配置し、子供への対応に加え、心理的アセスメントに基づき、教員や別室支援員に助言をするなど、学校全体の支援体制を強化してまいります。
 また、スクールカウンセラーを育成する役割を担うシニアスクールカウンセラー等から、具体的な不登校対応事例を踏まえた助言を得る機会を設けるなど、都全体のスクールカウンセラーの資質向上を図ってまいります。
 スクールソーシャルワーカーの質の向上への支援についてでございますが、区市町村教育委員会が配置するスクールソーシャルワーカーには、不登校等、児童生徒が抱える困難に対し、医療や福祉等の様々な関係者と連携して課題に対応する調整力が必要となります。
 都教育委員会では、平成二十八年度から、都立高校等において、困難を抱える生徒に対し一人一人の状況やニーズに対応した支援を行うユースソーシャルワーカーを派遣し、ノウハウを蓄積してまいりました。
 今後は、このユースソーシャルワーカーをスーパーバイザーとして、連携する区市町村へ派遣することにより、スクールソーシャルワーカーの質の維持向上が図れるよう、支援に取り組んでまいります。
 次に、仮想空間を活用した子供への支援についてでございますが、都教育委員会は、仮想空間における居場所、学びの場であるバーチャルラーニングプラットフォームを現在八つの自治体に提供し、小中学生が利用しています。
 参加自治体からは、オンライン上の交流をきっかけに子供同士が直接会話できるようになった事例や、教育支援センターに実際に通えるようになった事例が報告されております。また、仮想空間の中で高校入試に向けた面接練習を行ったなど、それぞれの自治体が様々な工夫を凝らして活用の幅を広げています。
 今後、新たに参加を希望する二十自治体にも提供し、仮想空間における取組を充実してまいります。
 次に、小学校の教員についてでございますが、都内公立小学校において、休職等の理由による欠員は、三学期当初の時点で百六十人程度でございます。
 各学校では、講師等を活用するとともに、算数などの加配教員や家庭科などの専科教員が学級担任を担うなど、校内体制を工夫し対応に当たっております。
 次に、年間を通じた教員確保についてでございますが、教員確保は喫緊の課題であり、都教育委員会では、近年の中途退職の増加傾向等を精緻に捉え、合格者数を確保するとともに、新たな交流会の実施などにより、合格者の不安を解消し、任用につなげる取組を進めています。
 その上で、年度途中の欠員に備え、臨時的任用教員等の選考を通年で実施するとともに、転職フェア等での相談会や地方を含む電車広告などを行っております。
 加えて、公立学校や地域の掲示板でのPRやオンライン説明会等を新たに行い、教員だけでなく、外部人材を含めた地域の有用な人材の掘り起こしを行ってまいります。
 必要な教員数の確保に向けて、取組をさらに推進してまいります。
 次に、外部人材の一層の活用についてでございますが、教材準備等を行うスクールサポートスタッフを希望する全ての小中学校に一名配置するほか、時間外勤務が多い学校への追加配置を約二百人増やし、来年度は全体で約二千二百人を活用いたします。
 また、学級担任の業務を補佐するエデュケーションアシスタントを今年度の百校から来年度は全小学校に配置するとともに、専門性が高い外部人材を外国語活動や体育等の授業で講師として任用する社会の力活用事業を拡大し、千二百の学級で実施をいたします。
 外部人材の効果的な活用についても検討を深め、学校における教育の質の向上を図ってまいります。
 次に、中学校の部活動の地域連携、地域移行についてでございますが、今年度、全ての区市町村と個別に情報交換を行った結果、外部の指導者が専門的な技術指導に加えて、これまで教員が担ってきた生徒の多様なニーズへの対応を行うことに不安を抱えている地区が多く、指導者の資質向上が課題となっていることが分かりました。
 この課題を踏まえ、今後、外部の指導者向けに、生徒の主体性を促す指導や事故の未然防止、部活動の適切な運営などを扱った研修動画を作成し、区市町村や地域のスポーツ、文化芸術団体に対して活用を促してまいります。
 次に、中学校の部活動における外部人材についてでございますが、都教育委員会は、各区市町村が実態に応じて外部人材を活用できるよう支援を行っており、今年度、部活動指導員については四十一地区、外部指導者については四十二地区に経費の補助を行っております。
 また、昨年の七、八月に実施したアンケートでは、約八割の教員が部活動の指導や運営を負担と感じていることや、約七割の生徒が専門的な指導者から指導を受けたいと思っていることが明らかになりました。
 こうした結果を踏まえ、今後、教員の働き方改革と部活動の質の向上を一層推進するため、外部人材の配置について区市町村への支援を拡充してまいります。
   〔子供政策連携室長田中慎一君登壇〕

○子供政策連携室長(田中慎一君) フリースクール等の利用者支援の制度設計についてでございますが、都は来年度から、不登校状態にある義務教育段階の子供がフリースクール等に通う場合の利用料に対する助成制度を創設いたします。
 利用料助成の制度設計に当たりましては、国の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査におけます不登校児童生徒はもとより、不登校状態について幅広く捉え、より多くの利用者が助成対象となるよう検討してまいります。
 具体的には、欠席日数に係る基準を設定せず、不登校となった要因につきましても、子供一人一人の実情を踏まえるとともに、所得制限を設けることなく対応してまいります。
   〔福祉局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉局長(佐藤智秀君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、児童虐待への対応についてでございます。
 昨年三月に台東区で発生した事案につきまして、都は、児童福祉審議会の下に設置した児童虐待死亡事例等検証部会におきまして、今後検証を行ってまいります。
 あわせて、都内全ての児童相談所長や子供家庭支援センター長などを速やかに招集し、本事案を共有するとともに、児童虐待のリスクアセスメントや、児童の安全確認の指針、児童相談所と子供家庭支援センターとの連携などについて、改めて確認を行ってまいります。
 続きまして、児童相談所による保護者への支援についてでございます。
 虐待を行った保護者に精神疾患などがある場合には、適切な治療や相談が受けられるよう支援する必要がございます。
 このため、児童相談所は、保健所などと連携して保護者を支援するとともに、医療機関につなげ、主治医とも連携して病状を把握し、養育力のアセスメントを行っております。
 また、家族機能の回復を図ることを目的として、精神科医によるカウンセリングなどを実施するほか、児童心理司などによるペアレントトレーニングを行っております。
 今後、精神科医などを講師とする研修を実施し、困難事例の検討を通じて児童相談所職員の専門的知識を高めることにより、保護者への支援力を一層強化してまいります。
   〔デジタルサービス局長山田忠輝君登壇〕

○デジタルサービス局長(山田忠輝君) デジタル地域通貨プラットフォームについてのご質問にお答えいたします。
 都の各種施策での活用に加え、区市町村施策とも広く連携できる共通基盤を構築し、デジタルによる地域活性化につなげることが重要でございます。
 施策の効果が都内に還元される仕組みとするとともに、店舗の規模、業種を特定する機能や、ポイント等が使用できる区域を指定できる機能などを取り入れ、区市町村が利用しやすいプラットフォームといたします。
 また、自治体独自のアプリなどとの連携や、導入を希望する区市町村の負担軽減、地域活性化に資するデータ活用なども視野に開発に取り組んでまいります。
 今後、関係者から広く意見を伺いながら、デジタルの力で都民に利便性の高いサービスを提供できるように取り組んでまいります。

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