令和六年東京都議会会議録第三号〔速報版〕

○副議長(増子ひろき君) 八十九番林あきひろ君。
   〔八十九番林あきひろ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○八十九番(林あきひろ君) 初めに、治安対策について伺います。
 先月、昭和四十九年から五十年にかけて発生した連続企業爆破事件容疑者の身柄が確保されました。昨日、容疑者死亡のまま書類送検されたと報道されておりましたが、およそ半世紀という長期にわたり国内に潜伏していたということに対する驚きとともに、凶悪な事件を起こし、全国へ指名手配された容疑者が私たちの周りの日常に潜むというリスクが顕在化しました。
 全国で指名手配されている容疑者は、重要指名手配犯をはじめとして五百四十人に上っているとのことですが、最近は、犯罪の組織化、広域、国際化などが進み、また、犯罪の抑止に向けて連携すべき地域社会においても、自治会の組織率の低下、そして、希薄な人間関係と、捜査を取り巻く環境は厳しさを増しているのではないでしょうか。
 そのような中、大きな効果を上げているのが防犯カメラですが、最近は、通学路から商店街、公共交通機関まで多くの場所に設置されています。抑止効果も期待できる防犯カメラの活用は、犯罪発生時、被疑者の特定や犯行の立証に有効であることから、今や捜査に欠かせないものといえるでしょう。
 海外においては、群衆の中の人々を識別する顔認識技術を組み合わせることで指名手配犯の検挙に大きな成果を上げている例もあり、我が国においても様々な議論があることはご承知のとおりです。
 現在の法令、判例等から、導入に向けての課題が多いことは存じておりますが、こういった最先端の技術については、捜査手法として積極的に調査研究、検討しておくべきではないでしょうか。
 私たちの周りの日常に潜むリスクに対して、何よりも都民、国民が安全・安心な日々を過ごすために、重要指名手配犯をはじめとする指名手配犯を検挙することは特に重要と考えるところですが、警視庁の取組について警視総監の見解を伺います。
 次に、戸建て住宅の耐震化について伺います。
 能登半島地震では、多くの戸建て住宅が倒壊し、死傷者が出ました。家屋の倒壊により亡くなられた方も多かったようですが、このような惨禍、被害を繰り返さないためにも、耐震化の重要性や耐震診断の必要性についての普及啓発や支援の取組が課題といえるでしょう。
 昨年度末、都の耐震改修促進計画は改定されましたが、令和元年度末時点での戸建て住宅の耐震化率は、新耐震基準で八六・九%、いわゆる二〇〇〇年基準で七九・四%と公表されています。令和十七年度末には、耐震性が不十分な住宅をおおむね解消するという目標を示されています。
 今回の震災を受けて、戸建て住宅の耐震化に向けた取組を強化するとともに、区市町村への支援や、建築士等の専門家との協力についても手厚くしていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、都市計画道路の整備について伺います。
 今回、能登半島では、道路網が寸断され、医療チームの派遣から生活物資の搬入まで困難を極めたとのことですが、東京においても、震災など直面する危機に備えるために道路網の整備を着実に推進することは重要です。
 私の地元では、南北方向の骨格幹線道路である調布保谷線が整備されましたが、現在事業中の地域幹線道路である狛江通りから吉祥寺方向へ続く調布三・四・一八号線が整備されることにより、甲州街道と青梅街道がつながります。南北方向の道路ネットワークが強化され、避難路、輸送路としての機能も確保されることで、地域の安全性、防災性の向上が期待されます。
 一方、主要な東西方向の道路は甲州街道のみであり、南側に並行する品川通りと呼ばれている都市計画道路調布三・四・一〇号線の整備が必要ですが、一部未整備区間があり、様々な事情から、いまだ時間を要する状況です。
 こういった中での東西方向のネットワークを強化するためには、昨年十二月に市が事業化した甲州街道から神代団地をつなげる調布三・四・九号線と併せて、都施行の優先整備路線となっている環八、世田谷区側から続く調布三・四・一〇号線や、狛江から仙川方向を走る、いわゆる松原通り、調布三・四・一七号線の整備が求められます。
 そこで、調布三・四・一〇号線及び三・四・一七号線の取組状況について伺います。
 次に、水道工事事業者の技術力維持向上について伺います。
 能登半島において断水が長期化している状況を見るにつけ、水道管路の整備の重要性をまざまざと感じました。水道事業は、住民生活にとっては、まさに生命線の最たるものといえるでしょう。
 我が会派の代表質問においては、水道システムの強靱化に向けた取組について質疑いたしましたが、多摩地区においても、送水管の二系統化などを整備中です。しかし、災害時に利用者に大切な水を届けるためには、こうした基幹管路に加えて、より利用者に近い口径の小さい水道管路の強靱化も重要です。
 現在、多摩地区でこうした工事を担っているのは、特に中小規模の事業者であり、技術力の維持向上、さらには若手技術者の定着も含めた社員教育など、様々な課題に苦労されていると聞いています。
 近い将来起こり得る大規模な震災に備えるためには、こういった水道工事事業者の持つ技術力の維持向上こそが水道施設の強靱化への近道であり、安定した経営基盤の強化にも資する、ひいては都民の安全・安心へとつながるものと考えます。
 そこで、多摩地区の中小規模の工事事業者の技術力を維持向上していくための都の取組について伺います。
 次に、多摩地域の下水道の震災対策について伺います。
 能登半島では、多くの下水道管も被災したとのことですが、被災時に排水機能が喪失すると、トイレ等衛生面の問題をはじめとして、生活環境への影響は計り知れません。
 下水道局の社会資本総合整備計画を見ますと、都の流域下水道は、震災時に必要な下水道機能を確保する耐震化の割合を令和七年度までに倍増する目標を掲げていますが、既に達成したと聞いています。今回の震災を受けて、より一層の整備、対策が求められています。
 また、市町村においても順次耐震化を進めてはいますが、財政面や技術面で課題を抱えているため、都による一層の支援が求められています。
 多摩地域の地震の備えをより確かなものとするため、今なすべきことは山積しています。流域下水道の取組と市町村下水道への都の支援について、より強く力を入れていくことが重要と考えますが、見解を伺います。
 次に、訪問介護事業者への支援について伺います。
 来年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が大きく切り下げられ、事業所からは、実態を反映していない、収支悪化で事業継続が難しいと悲痛な声が上がっています。
 国は、ヘルパーの賃上げを第一に、処遇改善を手厚く拡充し、要件、事務手続の見直し等、支援策を推し進めていくと説明していますが、人材確保の厳しさが大きく改善するとは思えません。若い世代がなかなか入らず、中高年のヘルパーさんが何とか現場を支えているのが実態で、離職率も高く、デジタル化や介護機器の活用も進んでいない現状があります。
 しかし、これからの超高齢化社会に向けて、ますますニーズが高まる在宅医療、介護において、地域包括ケアの一翼を担う重要な役割を担うのが訪問介護です。
 こうした厳しい状況を踏まえ、都は、国に先駆けて訪問介護事業所の支援を充実すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、高齢者だけではなく、障害者が住み慣れた地域で安心して暮らしていくためにも、居宅介護や重度訪問介護といった訪問系の障害福祉サービスの提供を確保することは重要です。
 都が来年度実施予定の障害福祉サービス等職員居住支援特別手当事業など、人材の確保に向けた取組は評価するところですが、先ほど述べた訪問介護の中でも、人材不足がより深刻な重度訪問介護事業所等の訪問系の事業所に対しては、働き手がやりがいを感じられるよう、さらなる支援が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、事業評価の取組について伺います。
 代表質問では、将来を見据えた財政運営について質疑を行いましたが、都が抱える様々な諸課題の解決に向けては、積極的な施策展開と持続可能な財政基盤の両立が重要です。
 そして、そのためには、これまで実施してきた、目標の達成度等を踏まえ、施策全体の方向性を評価する政策評価と、一つ一つの事業を検証し、効率性、実効性を向上させる事業評価など、施策の総合的なレベルを高めるための取組を不断に積み重ねていくことが必要であることはいうまでもありません。
 都は、この間、全ての事業に終期を設定し、ICT関係評価の導入、政策評価の導入とバージョンアップしてまいりましたが、その結果、財源確保額は大きく伸びてきました。
 そこで、昨日の知事の答弁でも触れられていましたが、令和六年度予算編成から新たに導入した都と政策連携団体の取組に着目したグループ連携事業評価について、具体的な評価のプロセスとその成果について伺います。
 最後に、デジタルを活用したサービス改革の展開について伺います。
 コロナ禍で顕在化した課題を克服し、都民サービスを向上させるべく都政の構造改革が始まり三年半が経過しましたが、これまでの取組により、今年度末には約七〇%の行政手続がオンラインで申請できるようになるとのことです。
 当初五%程度の数値から大幅に伸びていることは、デジタル技術を活用した都民サービスの提供が着実に進んできていることと評価をいたしますが、デジタル化の進展とともに、国や市区町村との連携を広げていくこと等を通じて都民、事業者が実感し、便利と感じられるよう、さらなる質の向上を進めていく必要があるのではないでしょうか。
 私の手元にも、キャッシュレスでの対応、そしてオンラインでの行政手続等、より改善を求める声が数多く寄せられている現状がございます。
 構造改革のそもそもの目的は、都民生活のためになること、質の向上につなげることであり、都民の視点に立ちながら取組を進めていくということが何よりも重要であるというふうに考えております。
 シン・トセイ4では、都民が実感できるクオリティ・オブ・サービス向上を目指すとしていますが、今後、どのようにデジタルを活用したサービス改革を展開していくのか、知事の見解を伺わせていただきます。
 以上で私の質問を終わります。
 ご清聴いただきまして誠にありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 林あきひろ議員の一般質問にお答えいたします。
 デジタルによる改革の推進についてのご質問でした。
 都政のミッションは、質の高いサービスを都民に提供することであり、シン・トセイ4では、DXのX、トランスフォーメーションに重点を置いた改革を実行してまいります。
 これまで着実に進めてまいりました行政手続のデジタル化を今後三年で一〇〇%実現してまいります。また、都民と都庁との身近な接点である窓口におきましては、デジタルツールを活用し、待たない、書かない、キャッシュレスを合い言葉にいたしまして、利用者目線での抜本的なサービス変革を進めてまいります。
 さらに、満足度などを利用者に評価してもらうユーザーレビューを全てのデジタルサービスに導入いたしまして、改善を積み重ねることで、利用者と共に便利で快適なサービスをつくり上げてまいります。
 都民の期待に応える都庁として改革を加速し、誰もが利便性が向上したと実感できる都政を実現してまいります。
 なお、その他の質問につきましては、警視総監、都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔警視総監緒方禎己君登壇〕。

○警視総監(緒方禎己君) 指名手配被疑者の検挙に向けた取組についてでありますが、警視庁では、顔写真を記憶して指名手配被疑者を発見、検挙する見当たり捜査班などを運用しているほか、令和四年十二月には、指名手配被疑者のクレジットカードが利用された場合の通報制度の運用を開始するなど、あらゆる捜査手法を活用した各種追跡捜査を尽くしております。
 また、当庁ホームページでは、捜査特別報奨金制度対象事件の内容や指名手配被疑者の加齢による変化をイメージした画像等を掲載するなど、広報活動にも取り組んでおります。
 引き続き、関係機関等と連携しながら、指名手配被疑者の検挙に向けた取組を推進してまいります。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 調布三・四・一〇号線及び三・四・一七号線についてでございますが、本二路線は、調布市施行の調布三・四・九号線と一体となって市内の東西方向の道路ネットワークを形成するとともに、防災性の向上に資する重要な幹線道路でございます。
 こうした認識の下、調布三・四・一七号線を昨年事業化し、用地取得や道路構造等の検討を進めております。
 また、先月には、調布三・四・一〇号線についても事業化し、年内に開催を予定している用地説明会に向けて準備を進めているところでございます。
 引き続き地元市と連携しながら、都民の生命と財産を守る道路整備に全力で取り組んでまいります。
   〔都市整備局長谷崎馨一君登壇〕

○都市整備局長(谷崎馨一君) 住宅の耐震化についてでございます。
 東京を強靱な都市とするためには、戸建て住宅の耐震化を進めることが喫緊の課題でございます。
 今年度から、旧耐震に加え、新耐震基準の木造住宅への耐震化助成を開始し、令和六年度から、耐震改修等の都費の補助限度額を五十万円から六十万円に、整備地域においては六十万円から七十万円にそれぞれ引き上げます。
 また、都内全域で、新耐震基準への取組や助成制度の拡充が進むよう、区市町村の取組を支援してまいります。加えて、専門家等と連携を強化し、個別訪問や相談会を積極的に行うとともに、さらなる普及啓発など促進策を検討してまいります。
 これらにより、戸建て住宅の耐震化を強力に推進いたします。
   〔水道局長西山智之君登壇〕

○水道局長(西山智之君) 水道工事事業者の技術力維持向上についてでございますが、多摩地区の水道を将来にわたり安定的に供給していくためには、工事の担い手となる中小事業者の技術力を維持向上していくことが重要でございます。
 そのため、水道局では、中小事業者を対象とした技術支援研修を実施し、水道工事の経験が浅い技術者に対して、配管技術や知識の習得等を支援してございます。
 また、事業者の団体と連携し、団体の事故防止講習会での講義や防災訓練への補助、都の防災訓練への参加などによりまして、事故災害時の技術力確保にも努めてございます。
 今後も多摩地区水道の強靱化に向け、水道局と事業者が密接に連携して技術力の維持向上を図ってまいります。
   〔下水道局長佐々木健君登壇〕

○下水道局長(佐々木健君) 多摩地域における下水道の震災対策についてでございますが、都の流域下水道と市町村の公共下水道が一体となって震災時の機能確保に取り組むことは重要でございます。
 都は、水再生センターの最低限の下水道機能を一系統で確保したことなどに加え、令和六年度は南多摩水再生センターにおいて導水渠の耐震化を推進してまいります。
 また、市町村による避難所等からの排水を受ける下水道管の耐震化に対し、今年度から強靱化補助を開始し支援を強化しており、今後は市町村の実情に応じて対象施設の拡大を促すなど、対策のレベルアップを後押ししてまいります。
 引き続き、市町村と連携した震災対策により、多摩地域の下水道強靱化を図り、都民の安全・安心の確保に努めてまいります。
   〔福祉局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉局長(佐藤智秀君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、訪問介護事業所への支援についてでございますが、都は、介護事業所の業務の効率化や職員の負担軽減を図るため、デジタル機器や次世代介護機器の導入を支援してまいりました。
 来年度からは、新たに、他のサービスに比べ職員の高齢化が進んでいる訪問介護事業所など、機器の導入や活用のノウハウがない事業所に対して、専門家による伴走型の支援を実施いたします。
 また、訪問介護の仕事の内容や魅力を紹介したリーフレットや動画を作成し、求職者に周知するほか、未経験者を雇用する事業者に対し、雇用経費や資格取得経費の補助も開始いたします。
 今後、訪問介護事業所の人材の確保、定着、育成に向け、一層取り組んでまいります。
 続きまして、訪問系サービスの人材確保についてでございます。
 障害が重くても障害者本人が希望する地域で安心して暮らしていくためには、重度訪問介護等、訪問系サービスが必要であり、それを支える人材の確保が重要でございます。
 都は、介護職員等によるたんの吸引などの研修を実施するほか、訪問系サービスを含む障害福祉人材確保に向けた取組を行う区市町村を包括補助で支援をしております。
 来年度は、重度訪問介護事業者等を対象に、家事援助を行うヘルパーをサポートする人材の雇用経費や、雇用した人材の資格取得経費を区市町村が補助する場合に、その四分の三を都が支援する事業を開始いたします。
 今後、訪問系サービスの人材確保に向け、一層取り組んでまいります。
   〔財務局長山下聡君登壇〕

○財務局長(山下聡君) グループ連携事業評価の取組についてのご質問にお答えいたします。
 令和六年度予算編成では、都庁グループ全体で事業の効果や効率性を高めていくため、都と政策連携団体の取組を対象に、より成果重視の新たな評価を実施いたしました。
 具体的には、まず、全三十三団体におきまして、都の施策目標につながる九十の協働目標と、その達成に向けた二百二十三の数値目標を設定いたしました。その上で、目標の進捗状況の分析や現場目線での課題の抽出、外部有識者からの意見等を踏まえ、事業の見直しや新規事業の構築につなげるなど、八十八件の評価結果を予算に反映したところでございます。
 今後もこうした取組を通じまして、効率性、実効性の高い施策の構築につなげてまいります。

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