令和五年東京都議会会議録第十七号

○議長(宇田川聡史君) 八十二番米倉春奈さん。
   〔八十二番米倉春奈君登壇〕

○八十二番(米倉春奈君) 人間らしい働き方、気候危機対策について質問します。どちらも目先の利益を優先した資本主義の矛盾が現れた問題です。
 まず、人間らしい働き方についてです。
 日本共産党は、百一年前に政党をつくったときから、八時間労働を掲げ、労働時間の短縮を求めてきました。
 世界の流れは労働時間の短縮です。世界で最もジェンダー平等が進むアイスランドの大使から、私も直接話を聞きました。アイスランドでは、政府と首都レイキャビク市議会が、労働組合などの要請を受け、週四十時間の労働時間を三十五、六時間に短縮する実証実験を行いました。
 結果は、ストレスや燃え尽き症候群のリスクが減り、健康やワーク・ライフ・バランスが改善し、趣味や家族との時間が増え、生産性は上がりました。この成功を受けて、アイスランドの労働者の九割が、同じ給与のまま労働時間を短縮、もしくは予定しているそうです。
 長時間労働が最も深刻なのは、東京をはじめ首都圏です。正規労働者の都民は、仕事に約十時間、通勤などに一時間四十分、つまり十二時間近く時間を取られています。これでは、子育てや介護も自分の時間も持てません。
 東京の問題として、長時間労働と通勤が暮らしに与える影響を知事はどう認識していますか。
 都庁職員の勤務時間の状況も伺います。
 連合の調査では、社会人Z世代の最も関心がある社会課題は、長時間労働、ワーク・ライフ・バランスです。その一番の理由は、自分の暮らしを守ることになるからです。こうした時代の変化に応えていくべきではありませんか。
 賃金を下げずに一日の労働時間を減らすことが必要です。
 労働時間の短縮は、男女共に生活時間を取り戻し、ジェンダー平等、ウエルビーイングも実現します。都はどういう認識ですか。
 アイスランドのような労働時間短縮の実証実験と効果の検証を行うことを提案します。いかがですか。
 フランスは、一九三六年、反ファシズムを掲げる社会党と共産党などの人民戦線政府がバカンスを導入しました。政府の閣僚は、余暇を通して生きる喜びと人としての尊厳の意味を見いだしてほしいと話したそうです。
 余暇とは、自分の好きに使える自由な時間です。疲れを取ることにとどまらない、生き方の根本に関わる理念があります。結果的に視野を広げ、仕事の幅も広がります。
 都は、休暇、余暇、とりわけ長期休暇、連続して長く休むことの重要性、健康への影響をどう認識していますか。
 次に、気候危機対策です。
 人類の未来が脅かされているのに、もうけのためなら地球環境はお構いなしだと、化石燃料の延命を容認するなど、日本は非常に遅れています。
 根本的には、目先の利益を優先する資本主義のシステムが問われています。同時に、今、最大の努力が求められています。エネルギーの最大消費地東京で進めるべき対策の柱の一つは、住宅の省エネ、断熱化です。
 東京のCO2排出は、三割が住宅からです。これから毎年四万六千棟が新築され、二〇五〇年にも使われます。
 気候危機の対策の中で、住宅対策を進めることの大切さをどう認識していますか。
 新築住宅で高い断熱、省エネ水準を確保すること、既存住宅の断熱、省エネ改修が必要です。知事、いかがですか。
 住宅の断熱、省エネ化に最も高いレベルで取り組む鳥取県に行き、お話を聞いてきました。
 県独自に断熱と気密性能などの、とっとり健康省エネ住宅性能基準、NE―STをつくっています。国の基準は低過ぎて家全体を暖められない、住民や工務店が、高断熱、高気密の家をつくれるよう、県が基準をつくったそうです。最高水準はヨーロッパの先進レベル、下位の水準でも日本が二〇三〇年に義務化する基準より高いレベルです。県と地元工務店の連携により、既に県内の新築住宅の三割がNE―ST基準です。
 県が取り組む一番の理由は、住む人の健康への影響です。印象的だったのは、地元の工務店の方の、今までと暖かさが全く違うとお客さんに本当に感謝されるようになったというお話です。私もモデル住宅に行きましたが、エアコン一台で家中が暖かくなり、床も窓際も温度が変わらない快適さに驚きました。
 日本の住宅は冬が寒く、ヒートショックで亡くなる方は、交通事故の四倍を超えます。家全体が暖かいと、ヒートショックもぜんそくもアトピーも予防、改善でき、幼児の活動量が増え、高齢者の健康寿命も延びます。
 住宅の断熱性能などを上げることで、健康が確保されることの大切さをどう認識していますか。分かりやすく都民に知らせることを求めます。いかがですか。
 健康にいい住まいは、環境にもいい住まいです。断熱、省エネ住宅は、冷暖房に係るエネルギーが少なくなり、CO2削減効果も大きくなります。
 先進的な断熱、省エネ住宅を普及するため、都が推進している東京ゼロエミ住宅の水準を少なくとも欧米と同レベルに引き上げることを提案します。それに合わせた補助の拡充も求めます。いかがですか。
 ゼロエミ住宅の基準は、断熱性能はありますが、気密性能はありません。気密が低い家は、隙間が多く、断熱化しても冬は足元が冷え、家全体の暖かさを確保しづらくなり、その分冷暖房にエネルギーを多く使います。
 都は、住宅の断熱、省エネ化を進める上で、気密性能の大切さをどう認識していますか。ゼロエミ住宅の基準に気密性能を位置づけることを求めます。
 また、都が、二〇二五年度から、大手ハウスメーカーがつくる住宅に導入する断熱、省エネの義務基準は、非常に低い国基準とほぼ同じです。基準の引上げを求めます。
 先進国は、二〇五〇年までに、新築だけでなく既存住宅も断熱化するとしています。既存住宅も、窓を三重サッシにすることなどによって、高い断熱性能を確保できます。
 住宅耐震化のように、住宅の断熱、省エネ化計画を目標も定めて取り組むべきではありませんか。
 集合住宅の取組が遅れています。ヨーロッパでは、公営住宅を最高レベルの断熱、省エネ化することで、高い住宅性能をスタンダードにしていこうとしています。
 鳥取県は、県独自のNE-ST水準で県営住宅を整備していくとしています。都営住宅も、少なくともゼロエミ住宅の水準で整備すべきです。いかがですか。
 また、既存の都営住宅も、断熱、省エネ改修を計画的に行うこと、断熱効果の高い木製の内窓を、多摩産材を活用し設置することも提案します。いかがですか。
 気候危機対策は、全ての関係者の取組が必要ですが、現状はこれからです。
 知事は、自治体や住民、事業者など、脱炭素対策を進める必要がある全ての関係者をサポートする重要性をどう認識していますか。
 ヨーロッパでは、気候危機対策をあらゆる分野で進めるため、全ての関係者を支援する中間支援組織、エネルギーエージェンシーが大事な役割を果たしています。
 オーストリアではほとんどの州にあり、人口四十一万人、品川区と同じ規模のフォアアールベルク州にある中間支援組織には、専門家が五十六人います。
 自治体支援では、専門性のある職員が、担当する自治体を定期的に訪問し、施策の具体化を伴走支援します。自治体に取り組めるメニューを示し、新しい要望には、調査もしてニーズに応えます。住民や事業者には、建物や車の断熱、省エネ化の相談に乗り、情報を提供しています。
 気候危機に関わる全ての関係者を支援するセンター的な役割を都が担い、ヨーロッパのような中間支援組織を環境公社など都庁外にもつくることを求めます。いかがですか。
 とりわけ自治体支援が大切です。
 日本共産党は、二回にわたり、都内六十二区市町村の気候危機への対応の状況を調べました。その結果、多摩・島しょ地域は、区部と比べ、圧倒的に体制が薄いことが分かりました。担当部署がない十町村では、ほぼ地球温暖化対策の計画がなく、人員不足を答える町や村もありました。
 都は、こうした状況をどう認識していますか。各分野の専門家の紹介や職員の派遣を提案します。いかがですか。
 杉並区は、全庁的な気候危機対策本部を設置しました。
 岸本区長は、基礎自治体には、データはあるけれど、専門知識も人材も限られ、分析などは難しい、補助も人的支援も必要だと話されます。この提起をどう受け止めますか。
 都と区市町村が共同して目標を達成するために、困っていることを出し合える、より密な連携が必要ではありませんか。対策を進めるための共同の場を設置すべきではありませんか。
 最後に、五輪談合についてです。
 吉村元財務局長が談合に関与していた可能性について、我が党は追及してきました。
 この疑惑について、十二月五日の電通が被告の公判の中で、吉村氏が談合に直接関与し、主体的な役割を果たしていたのではないかという新たな疑惑が浮かび上がっています。
 吉村元財務局長が、受注調整のための割り振り表を基に、談合の中心的な人物である森元次長に対して、事業者のバランスを図ることや、会場が近いエリアは代表者に一括して委託し、競技を再委託することなどと指示したことが、公判の中で被告人である電通側から主張されました。
 吉村氏は、都の談合調査に、一覧表を見たが、受注調整をしているとは思わなかったと証言していますが、実際には、受注調整に関与していたという重大な疑惑です。
 都は、この事実を把握していますか。また、吉村氏に確認はしたのですか。
 また、吉村氏は、再委託先として具体的な事業者名について言及するなど、主体的、主導的な役割を果たしており、談合の徹底を指示するものであったとも主張されています。
 吉村氏が、談合の徹底を指示したとすれば、官製談合に当たるのではありませんか。
 副知事がトップとなって行った談合調査報告書では、こうした事実については一切明らかにされていません。都の幹部職員が談合を指示した疑惑について、新たな調査が必要ではありませんか。
 都は、吉村氏が森元次長の上司だったことすら認めないできました。これ以上調査を避け続ければ、不正疑惑をただすより身内をかばうことを優先していると、都民は判断せざるを得ません。
 こうした新たな疑惑が発生する中でオリ・パラ特別委員会を閉じることは、疑惑に蓋をするものです。特別委員会の継続、吉村氏の参考人招致を提案し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 米倉春奈議員の一般質問にお答えいたします。
 住宅の断熱、省エネについてのお尋ねがございました。
 気候変動対策におきまして、都内エネルギー消費量の約三割を占める家庭部門への対策は重要でございます。
 住宅の断熱、省エネ性能の向上は、エネルギーの消費を減らし、CO2削減につながるとともに、快適性や経済性などのメリットも有しております。
 このため、都は、これまでも高い環境性能を有する新築住宅の普及拡大を図るとともに、既存住宅の断熱改修補助など、幅広い取組を行っております。
 なお、その他の質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、職場や通勤の時間についてでございますが、生活と仕事の両立に向け、職場の業務の進め方を見直し、残業を減らすほか、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が可能となることは必要でございます。
 次に、長時間労働についてでございますが、会社の従業員が、生活と仕事の両立に向け、業務の効率化や柔軟な働き方により、勤務時間を抑えることは必要でございます。
 最後に、長時間労働の短縮に向けた取組についてでございますが、都は、長時間労働などの働き方の見直しに係るセミナー等を実施するほか、業務効率の向上に役立つ取組への支援を引き続き行います。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都庁職員の勤務時間の状況についてでございますが、条例で定める勤務時間は、一日につき七時間四十五分でございまして、知事部局等及び公営企業局における職員一人当たりの超過勤務時間の実績は、令和四年度では一か月平均十六・八時間となってございます。
 次に、都職員の休暇、余暇等についてでございますが、都はこれまでも、生活と仕事の両立支援や健康保持増進等を図る観点から、全ての職員が生き生きと働ける環境づくりを進めてございます。
 また、定期的に年休取得促進月間を設定し、休日等と組み合わせた長期の休養を推奨しているほか、夏季休暇については、五日間連続利用を原則としてございます。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 労働時間の短縮についてでございますが、これまでの長時間労働を前提としてきた働き方を見直すことは、生活を充実させるための時間を創出し、男女が共に自分らしい生き方を選択できる社会の実現にもつながると認識しております。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 九点のご質問にお答えいたします。
 まず、住宅における断熱効果の都民周知についてでございます。
 住宅の断熱化は、省エネ性能に加え、健康面にも効果がございます。都は、こうしたメリットを都民に分かりやすく伝えるため、動画や専用のホームページなどにより、幅広く都民に周知してございます。
 次に、東京ゼロエミ住宅導入促進事業についてでございます。
 昨年策定した環境基本計画におきまして、東京ゼロエミ住宅基準の継続的な見直しを掲げており、現在、専門家等の意見を踏まえ、断熱、省エネ性能に関する基準の引上げ等を検討してございます。
 次に、住宅の気密性能についてでございますが、気密性の確保は、断熱材の効果を補完するとともに、暖冷房負荷の削減につながります。
 次に、既存住宅の断熱、省エネ化についてでございます。
 都は、省エネ効果が高い窓等の断熱化への支援を段階的に拡充してございます。こうした取組を地域工務店等とも連携し、広く都民に活用を働きかけており、引き続き、既存住宅の断熱、省エネ化を進めてまいります。
 次に、気候変動対策に係る関係者への支援についてでございます。
 都は、都民、事業者等の脱炭素行動をサポートするため、HTTの普及や補助制度などの支援に加えまして、地域の実情に応じて区市町村が行う施策の後押しを行ってございます。
 次に、気候変動対策を進めるための支援体制についてでございます。
 都は、東京都環境公社を法に基づく地球温暖化防止活動推進センターに指定し、相談窓口の設置やアドバイザーの派遣、補助制度の拡充などによりまして、都民、事業者の脱炭素行動を後押しするきめ細かな支援策を一体となって展開してございます。
 また、区市町村との定期的な会合に加えまして、職員向けの研修の開催などを通じ、主体的な取組を後押ししてございます。
 次に、都内各自治体の気候危機への対応についてでございます。
 都は、区市町村との個別の情報共有、意見交換などを通じて情報を得ており、そのニーズ等を把握し、支援内容の検討、見直しを行いながら、各自治体の実情に応じた連携支援を行ってございます。
 また、区市町村担当者を対象とする各分野の専門家を講師としたセミナーを開催するなど、機会を捉えまして、専門知識の提供を行ってございます。
 次に、各自治体への支援についてでございますが、都はこれまでも、各自治体の実情に応じた連携支援を行うとともに、区市町村との情報共有、意見交換を通じてニーズ等を把握してございまして、支援内容の検討、見直しを図っており、引き続き、脱炭素化に向けた取組を支援してまいります。
 最後に、各自治体との連携についてでございますが、都は、区長会、市長会、町村長会等に対しまして、環境課題への取組等について説明を行うなど、認識の共有を図ってございます。
 また、各自治体の実情に応じた連携支援を行うとともに、区市町村との情報共有、意見交換を通じて、ニーズ等を把握し、支援内容の検討、見直しを行うなど、今後とも、都と区市町村が一体となった気候変動対策を展開してまいります。
   〔住宅政策本部長山口真君登壇〕

○住宅政策本部長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅の断熱、省エネ化についてでございますが、都営住宅の建て替えに当たりましては、国の公営住宅等整備基準に基づきまして、ZEH水準を満たす断熱及び省エネ性能の仕様で整備することとしており、順次、基本設計に反映してまいります。
 次に、既存の都営住宅の断熱、省エネ改修についてでございますが、現在、屋上防水工事に合わせて、屋根の断熱性を高める改修を行い、室内の熱環境の向上を図っております。
 このほか、断熱、省エネ改修に使用する建設材料などにつきましては、技術開発動向を注視しながら、建物の外壁に断熱材を貼る工法と窓を複層ガラス等に改修する場合の効果やコストを検証しております。
   〔政策企画局長古谷ひろみ君登壇〕

○政策企画局長(古谷ひろみ君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、談合事件の公判についてでございますが、受注者の公判において被告人の弁護士の見解が示されたことは承知しており、公判において詳細が明らかになっていくものと考えております。
 都の調査報告書において、有識者からは、全てのヒアリング記録を確認していただいた上で、一覧表を見た職員はいたが、談合の認識があったことは確認できなかったとの調査結果をいただきました。
 次に、談合事件についてでございますが、本件については、いわゆる独占禁止法違反で関係者が起訴されております。
 発注者でございます組織委員会の元次長の公判において、一覧表を見せられたという都からの派遣職員につきましては、さきに述べた関係者には含まれておりません。
 最後に、都の調査についてでございますが、組織委員会が発注したテストイベントの契約等について、外部有識者の専門的な見地から、組織委員会のコンプライアンス、ガバナンス等の課題や意見をいただき、結果を既に公表しております。

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