令和五年東京都議会会議録第十三号

○副議長(本橋ひろたか君) 六十番加藤雅之君。
   〔六十番加藤雅之君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○六十番(加藤雅之君) 初めに、災害時の火葬体制について質問します。
 東日本大震災当時、被災県からの火葬要請に応じて、都立と民間の火葬場で合わせて八百六十体の火葬に協力しました。そのうち民間が八割を担い、被災地支援に貢献した経緯があります。
 一方、近年の新型コロナ感染症による死亡者急増の対応では、都立の火葬場では、コロナ関係の優先枠を設けて積極的に受け入れしましたが、一部民間火葬場では、経営環境の変化のためか、東日本大震災当時のような状況ではありませんでした。そもそも民間火葬場との災害協定には感染症の対応が定められておらず、パンデミック時の火葬体制についても、あらかじめ考えておかなければならないと考えます。
 そこで、都は、都内の民間火葬場との災害協定について、感染症など新たな課題に対しても、BCPも踏まえ、実効性ある火葬体制を整える必要があると考えますが、知事の所見を求めます。
 次に、水害対策について質問します。
 ここ数年、異常ともいうべき気候変動によって、全国各地で水害が頻発しています。今後、大規模水害の発生リスクは一層高まっていきます。
 また、東京の東部低地帯には、いわゆるゼロメートル地帯が広範囲に広がっており、特に地元墨田区の鐘ケ淵駅周辺地区では、水害時の浸水深が十メートル程度となり、二週間以上水がはけない状況が続くことが想定されています。
 これまで都は、国と共に取りまとめた災害に強い首都「東京」形成ビジョンのもと、現在、国や地元区と共にモデル地区等を定め、江戸川区船堀地区などで高台まちづくりの具体的な検討が進んでいると聞いています。
 また、鐘ケ淵駅周辺地区においては、補助一二○号線の整備が進むとともに、長年地元の皆様と取り組んできた東武伊勢崎線が鉄道立体化の事業候補区間に位置づけられました。今後、これらを契機に、水害対策も含めた周辺まちづくりを進めていくことが大切であり、国や都の支援が一層必要となってまいります。
 そこで、鐘ケ淵駅周辺地区において、都は、国や地元区と連携し、高台まちづくりを進めていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、墨田区北部エリアにおける緊急医療救護所設置について質問します。
 同エリアは、木造住宅密集地域が広がり、都の地域危険度調査でも、危険度五のまちが多く、高齢化率も区内一位という状況です。
 そして、今から六年前までは、災害拠点病院が立地していたため、緊急医療救護所も位置づけられており、地域の安心も確保されていました。しかし、その後、病院側の諸事情により移転となり、緊急医療救護所が遠のき、空白エリアとなりました。
 現在、このエリアから最も近い救護所に向かうには、直線距離で最大約二・五キロ離れており、通常でも徒歩で三十分以上かかります。しかも、都市防災が専門の廣井東大大学院教授が行った大都市避難の研究によると、帰宅困難者と市街地火災からの避難者が錯綜して移動が困難となる研究を、この救護所周辺をモデルとして行っており、アクセスに大きな支障が出ることが想定されています。
 一方、区北部には、都立の防災公園や防災団地、東京都リハビリテーション病院、自衛隊などの防災機関が集結、展開する大規模救出救助の活動拠点など、防災機能の有する公共施設があります。
 特に、このリハビリテーション病院は、震度六強でも倒壊しない耐震構造、七日間稼働な非常用発電機、一千トンの飲料水や医薬品等が備蓄され、ゆとりのある院内構造空間となっています。このため、人的資源さえあれば、医療救護活動も可能です。
 先日、墨田区医師会の関係者と懇談した際、トリアージした患者の搬送体制が整うならば、区医師会としての応援も検討できるとのお話をいただきました。
 救急搬送については、首都高のインターチェンジや防災船着場、ヘリが発着可能な広場も眼前にあり、複数の搬送ルートが考えられます。
 例えば、船での搬送が可能となれば、区内にある防災船着場が隣接する都立墨東病院や民間救急病院のほか、区外の災害拠点病院にも搬送が考えられます。都知事の要請によって、自衛隊の医療チームが同活動拠点に駆けつけてくだされば、強力な医療活動が期待できます。
 そこで、東京強靱化プロジェクトを推進する都として、地域の医療資源の状況を踏まえ、災害医療支援病院であっても緊急医療救護所を設置し、地域ごとの実情に応じた体制の整備を行うべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、隅田川に架かる橋梁ライトアップに関して質問します。
 都では、東京二○二○大会を目指して、大会の機運醸成や魅力ある東京の夜間景観を創出して国内外に発信するため、主要施設のライトアップ活動に取り組んできました。その一つが、隅田川に架かる橋梁のライトアップであり、都が所管する十の橋梁は、橋の構造に合わせて照明デザインが工夫され、また、季節やイベントに応じて光の演出ができるようになっており、水辺のにぎわい創出に大きく貢献しています。
 このため、夜間における屋形船や水上バスでの舟運観光は、橋それぞれの特徴的な美しいデザインと照明効果によって幻想的ともいうべき美観を醸し出し、人気の高いコースとなっています。
 ところが、隅田川北部の白鬚橋から南部の築地大橋までを航行すると、言問橋と両国橋という国所管の橋梁があり、どちらもライトアップがなされておりません。観光客だけでなく地元住民からも、ここだけ暗くて残念とのお声や苦情が地元区や観光協会にも寄せられています。
 こうした声を届けるべく、先日私は、墨田区長、墨田区観光協会理事長と共に橋を所管する斉藤国土交通大臣に面会して、ライトアップの申入れを行いました。大臣からは、今後、都とも連携して、照明灯を工夫する方向で検討したいとの回答がありました。
 そこで、隅田川に連続して架かる一帯の橋梁群として、より魅力的な景観が創出され、流域の一貫性ある取組となるよう、国と都がよく連携、調整しながら進めていくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、芸術活動の場の支援について質問します。
 東京文化戦略二○三○に掲げる、アーティストや芸術文化団体等が継続的に活動できる仕組みづくりは非常に重要であり、これまでも都議会公明党は、都に重ねて求めてきました。
 例えば舞台芸術では、中央区水天宮に東京舞台芸術活動支援センター、通称水天宮ピットがあり、先日私は、中央区の公明党区議と共に視察しました。一般的にはあまり知られていないこの施設は、主に舞台芸術の活動を行っている芸術家らに、稽古場として比較的低廉な料金で提供している施設であり、若手芸術家にとっては欠かせない施設です。
 都内では、劇場だけでなくこうした練習会場も不足しており、関係者の会場探しも大変な苦労をされています。
 この水天宮ピットは都立日本橋高校の旧校舎を活用したもので、その前身は小学校の廃校を利用していることから築九十五年が経過しています。建て替え時期もいずれ来ると思いますが、当面は、修繕で建物を維持しながら活動が続けられるようにすることが重要です。
 そこで、芸術家や芸術文化団体等の活動を活性化させていくためには、こうした施設を大切に存続させる等しながら、若手芸術家が創作活動を行いやすい環境づくりへの支援を一層充実させるべきと考えます。見解を求めます。
 次に、公社住宅のコミュニティ活性化の取組について質問します。
 九月十八日に敬老の日を迎え、都内の高齢化率は二三・五%で過去最高となり、今後も増加していきます。高齢世帯の増加や世帯の単身化が進むと、外出機会の減少や自治会活動への参加減少などで他者や地域とのつながりが希薄になり、コミュニティ活動が一層停滞してしまうことから、私は昨年の第一回定例会一般質問で、都営住宅への学生入居による自治会活動支援を訴え、進めてきました。
 都営住宅だけでなく、都内に約七万戸ある公社住宅でも高齢化は進んでおり、公社は今後、入居者同士のつながりや周辺地域とのコミュニティ機能を一層高める取組を進める必要があります。
 公社はこれまで、コミュニティ活動のきっかけづくりなどに取り組む専門スタッフ、JKK住まいるアシスタントを配置するなどの取組を進めておりますが、今後は、このアシスタントのさらなる活用など、取組を充実させるべきと考えます。
 そこで、公社住宅におけるコミュニティ活性化のこれまでの取組と今後の展開について答弁を求めます。
 最後に、介護人材対策です。
 私はこれまで、外国人介護従事者の活用を議会で訴えてきました。それは、介護現場における人手不足が深刻化する中、外国人材の活躍が期待されているからです。
 今般、国では、外国人が従事できる業務範囲の拡大などの規制緩和や、技能実習制度に人材確保を目的として、新たな制度へ見直すための議論が進められており、事業者からも期待の声を聞いています。
 一方、最近の円安で、外国人が就労先として日本を選ばなくなりつつあるという声も聞いており、だからこそ、国の動きも注視しながら、都としても取組を強化することが必要と考えます。
 そこで、介護現場での外国人材の受入れが円滑に進むよう、都として、介護事業者への支援に一層取り組んでいくべきと考えますが、見解を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
 災害時の火葬体制についてのご質問でございました。
 大規模な災害発生に備えた火葬体制を確保することは重要であり、都は、都内及び近隣県等の火葬場を活用いたしまして、災害時に広域的な火葬を円滑に行えるよう、広域火葬実施計画を策定いたしております。
 また、災害時における遺体搬送や火葬等に関する協定を関係団体等と締結をいたしまして、実際の災害を想定した広域的な訓練を毎年実施いたしております。
 大規模災害発生時にこうした枠組みが有効に機能するよう、今後も、近隣自治体や関係団体及び民間事業者と連携しまして、広域火葬体制を確保してまいります。
 その他の質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 隅田川橋梁群のライトアップについてでございますが、隅田川には、構造や色彩が多種多様で歴史的価値のある橋梁が架けられておりまして、これらをライトアップすることで、水辺のにぎわい向上や観光資源としての活用を図っていくことが重要でございます。
 都は、隅田川に架かる十橋で、その形状や色彩の美しさを生かした照明デザインによりましてライトアップを実施しております。
 国管理の言問橋と両国橋では、今後、道路照明のLED化を行う際に、周辺の環境などに配慮したライトアップの検討を進めると聞いておりまして、隅田川の橋梁群として一体的な夜間景観が創出されるよう連携を図ってまいります。
   〔都市整備局長谷崎馨一君登壇〕

○都市整備局長(谷崎馨一君) 高台まちづくりについてでございます。
 東部低地帯等では深刻な水害被害が想定されており、安全性の高い高台まちづくりを加速させることが重要でございます。
 都は、国と策定したビジョンを踏まえ、国や関係区も含めたワーキンググループを設置し、モデル地区等において、高台まちづくりの具体化や推進方策の検討を進めております。
 また、国や都においては、地元区の高台まちづくりに対する支援事業を創設しております。
 鐘ケ淵駅周辺地区においても、ご指摘の関連事業との整合を図りながら、国と共に地元区の検討を支援するなど、水害に対して安全なまちづくりを推進してまいります。
   〔保健医療局長雲田孝司君登壇〕

○保健医療局長(雲田孝司君) 緊急医療救護所に関するご質問にお答えいたします。
 緊急医療救護所は、区市町村が地域防災計画に基づき、災害発生時に病院の近接地等に開設し、傷病者のトリアージや応急処置等を行う場所でございます。
 区市町村が、有事に備えて緊急医療救護所の新設を準備する際には、地域の実情に応じて、設置場所の確保、資器材や医薬品の整備などを行い、都は、救護所の設置準備や訓練などの費用を補助するとともに、病院との調整にも協力するなど、区市町村の取組を支援しております。
 今後、災害時の医療救護体制の充実に向けて、二次保健医療圏ごとの地域災害医療連携会議を活用し、各区市町村と協働して取組を推進してまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 若手アーティストへの創作環境の支援についてでございますが、東京の芸術文化の振興のためには、担い手となるアーティストの持続的な活動へのサポートが重要でございます。
 都は、平成二十二年に舞台芸術の創造活動を支援するため水天宮ピットを開設し、多くのアーティストに稽古や交流の場を提供しており、スタジオの稼働率は九割を超えております。利用者からは、安心して創作活動に打ち込めるとの声が寄せられるなど、高い評価をいただいております。
 今後も、利用者が安全に使用できるよう適切な維持補修を行うとともに、様々な分野で活躍する若手アーティストが継続的に創作活動できるよう、他の遊休施設等の活用も検討してまいります。
   〔住宅政策本部長山口真君登壇〕

○住宅政策本部長(山口真君) 東京都住宅供給公社の住宅におけるコミュニティ活性化の取組についてでございますが、居住者の少子高齢化が進む中、団地のコミュニティ活動や地域の活性化を図ることは重要でございます。
 これまで公社は、居住者や近隣住民が交流できる拠点の整備を進めており、本年五月、町田木曽住宅で、交流イベント等が実施できる生活サービス拠点を開設いたしました。
 さらに今年度、JKK住まいるアシスタントを十名に増員しまして、地元自治体と連携し、イベント等を展開しております。
 今後、こうした取組を通じまして、公社住宅における居住者等の交流の促進を図るとともに、自治会等の自立したコミュニティ活動を支援してまいります。
   〔福祉局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉局長(佐藤智秀君) 外国人介護従事者の受入れ支援に関するご質問にお答えいたします。
 都は、介護施設等で外国人介護従事者の受入れが円滑に進むよう、施設経営者や指導担当者向けの研修等を実施するほか、受入れ施設等に対し、多言語翻訳機の導入や、在留資格に応じた日本語や介護技能の学習等に必要な経費を補助しております。
 今年度は、介護施設等と外国人介護従事者等とのマッチングを支援するため、施設等が複数の受入れ調整機関と相談できる合同相談会を十月に開催いたします。
 今後、次期高齢者保健福祉計画の策定に向けた議論の中で、外国人を含めた介護人材対策の強化について検討してまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時三十五分休憩

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