令和五年東京都議会会議録第九号

○議長(三宅しげき君) 四十一番渋谷のぶゆき君。
   〔四十一番渋谷のぶゆき君登壇〕

○四十一番(渋谷のぶゆき君) グローバル人材の育成について伺います。
 第一回定例会において、我が会派の質問に対して、国際社会において多様な人々と協働していくには、地球規模の課題について学び、自国の伝統や文化を理解し、自分の考えを英語で表現できることが必要であるとの答弁がありました。
 都教育委員会は、今年度、海外の高校生と直接交流する機会の創出や、都立高校生を海外に派遣する事業の開始など、国際感覚を培い、異文化に触れる機会を増やしていくとしています。
 外国語に触れ、外国の方々と交流していく上で、子供たち一人一人が様々な意見を主体的に受け止め、自分の意見をしっかりと伝える力を身につけておくことが大切です。そのためには、我が国の伝統、文化への理解と日本人としての自覚が欠かせません。
 そこで、都教育委員会の今後の取組について伺います。
 次に、小笠原諸島の教育の充実について伺います。
 豊かな自然環境と独自の文化が存在する島しょ地域が、将来に向けて持続的に発展するようにするためには、地域の未来を担う人材の育成が重要です。
 中でも、小笠原諸島は、昭和四十三年に我が国に復帰して、今年で五十五周年を迎えますが、その地理的条件から依然として様々な課題を抱えており、この間、島しょ地域の教育委員会からは、小笠原村への教育庁出張所設置に関する要望書などが出されているところです。
 これまでも小笠原村教育委員会との連携により、様々な取組を行ってきたと聞いていますが、小笠原諸島で学ぶ子供たちの教育を一層充実させるため、どのように取り組んでいくのか、教育委員会の見解を伺います。
 介護事業について伺います。
 介護職員の離職率は、他業種に比べると依然として高く、また求人倍率も高い水準で推移しており、介護現場の人手不足は解消されているとはいい難い状況です。その結果、派遣や紹介会社に頼らざるを得ず、仲介料などの経費が大きな負担となっているとの声も聞きます。
 この状況を打破するには、介護の現場を誰もが働きやすいと思えるような環境にしていくことが重要です。
 現在働いている介護従事者の定着はもちろんですが、新たな担い手を増やしていくためにも、介護現場における業務の効率化を図り、職員の負担を軽減するなどにより、働きやすい職場環境を実現することで、介護人材の確保や定着を図るべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 学童クラブの待機児童対策について伺います。
 区市町村がきめ細かく保護者のニーズに対応しながら、子供を孤立させないためにも、地域の実情に応じた安全・安心な子供の居場所を確保することは重要です。
 都は、現在、学童クラブ待機児童対策提案型事業により、待機児童の早期解消を目指し、区市町村の取組を支援していますが、この事業の実施期間は令和四年度から六年度までとなっています。
 この期間のうちに待機児童を解消できるよう、区市町村の取組を一層推進していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 農地の活用について伺います。
 東京の農地は、新鮮な農産物の供給だけでなく、環境保全や防災など様々な役割を担っており、都民の貴重な財産ですが、相続等の影響で年々減少しています。
 一方で、経営規模の拡大を図ろうとする農家や、都内で新たに農業を始めたい方にとっては、農地の確保が課題となっており、都市の限られた農地を有効に活用していくことが求められています。
 我が会派は、これからの東京農業の活性化に向けて、農地を借りたい方と貸したい方とのマッチングを進め、都市農地の貸借を促進することが重要であると主張してきました。
 これに対し、都は、農業者の相談にきめ細かく対応し、自治体の区域を超えたマッチング等を行うとのことでした。
 今後、こうした取組を一層推進していくことが必要と考えますが、見解を伺います。
 農業経験がない後継者等への支援について伺います。
 かつて農家の子供たちは、小さい頃から親の手伝いなどを通じ、栽培技術の基礎を身につけてきました。しかし、近年、家族形態の変化やライフスタイルの多様化などにより、農作業の経験のないまま成長し、別の職業に就職する方も多いと聞いています。
 そうした栽培技術や農業経営についての知識のない方が、突然の相続などにより農地を継承する事例が増えています。その中には、就農に関心はあるものの、勤め先をすぐには辞められない、栽培技術に不安があるなどの理由から、就農に踏み出せず、やむを得ず農地を売却した方もいると聞きます。こうした方々を就農に向けてサポートしていくことも都の責務ではないでしょうか。
 都は、農家の後継者がしっかりと技術を身につけて農業に取り組むことができるよう支援すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 アニメ業界の労働環境の改善について伺います。
 日本のアニメ産業は、動画配信などにより海外でも人気を集めており、日本における成長産業といわれています。東京都は、日本のアニメ等を活用した観光促進に向けて、池袋にアニメ、漫画の拠点づくりに取り組んでいます。
 一方で、アニメ業界の労働環境は厳しいまま変わらない状況であり、制作会社は多くが元請から仕事を受ける下請の中小零細企業が多く、労働者の賃金も低いまま、上がらないことが問題になっています。
 都としても、アニメによる観光を推進するだけでなく、業界に労働環境の改善を促していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、道路整備について伺います。
 都内の都市計画道路の整備状況は、区部に比べて多摩地域はやや低い状況であり、特に北多摩北部エリアでは、令和二年度末現在で完成率は三九・三%となっており、都内全体の完成率約六五%と比較しても低い水準にとどまっています。
 中でも、北多摩北部地域の骨格を形成する新東京所沢線は、清瀬市内の一部区間については、事業着手から既にかなりの歳月が経過しており、地元からはさらなる事業の長期化に対する不安の声もあります。
 所沢市側の工事が完了していることから、都県境で渋滞が発生しやすくなっており、早期の開通が望まれています。新東京所沢線のうち、清瀬市、東久留米市内の現在の取組状況と早期完成に向けた今後の取組について、都の見解を伺います。
 埼玉県と東京都を結ぶ所沢街道の東久留米部分について伺います。
 以前から、歩道がなく危険な箇所の改善について、地元の先輩議員より整備の必要性を訴えてきたところです。都から、所沢街道の歩道整備を重点的に進めていくとの答弁があってから、歳月が経過していますが、いまだ整備されていない箇所があります。
 市民の安全を確保するために、未着手部分の歩道整備を早期に進めるべきだと考えますが、東久留米市内における所沢街道の歩道整備の取組状況について、都の見解を伺います。
 次に、河川の整備について伺います。
 都は、河川の豪雨対策を加速化するため、柳瀬川をはじめ、十河川で調節池の事業化に向けた検討に入っています。調節池の整備と併せて、河川整備の推進も必要です。柳瀬川については都県境にあることから、埼玉県と歩調を合わせ、護岸整備の区間を分担しています。
 現在、都は、都施行区間五・六キロメートルのうち、関越自動車道から空堀川合流点付近までの下流部区間三・八キロメートルで護岸整備を進めており、この区間の下流の県施行区間にある清柳橋について、県が架け替えを開始したことも踏まえ、未整備となっていた金山貯水池下流区間の整備に着手しています。
 今後も、気候変動の関係で集中豪雨はますます激しくなるおそれがあり、河川整備の早期完成が期待されています。
 そこで、柳瀬川下流部区間における今後の河川整備の取組について伺います。
 雨天時浸入水対策について伺います。
 多摩地域の分流式下水道区域においては、これまでも豪雨時に市町村が管理する汚水管に大量の雨水が浸入し、排水能力を超えた水がマンホールから溢水し、浸水被害が発生している地域があります。
 被害軽減のためには、浸入水の発生箇所や原因の特定が必要であり、対策には時間を要しますが、市町村の技術職員が減少し、ノウハウや経験が不足している中で、都の支援が不可欠と考えます。
 都は今年度から、浸入水対策にも活用できる補助制度を創設しており、こうした補助も活用して対策をスピードアップしていくべきと考えます。雨天時浸入水対策のさらなる促進に向けた市町村への支援について、都の見解を伺います。
 保全地域について伺います。
 都は、一定程度まとまった市街地に残る樹林地や歴史的遺構と一体となった良好な自然地等を保全地域に指定しています。北多摩地域にある野火止用水歴史環境保全地域は、東久留米市など近隣六市に及んでいます。
 この保全地域の樹林地は、各市が維持管理を行っていますが、一部手入れをせずに樹木が大きくなり過ぎたり、密生するなどの箇所も見受けられます。
 都は先般、東京都生物多様性地域戦略を改定し、その中で、市街地における身近な緑の保全を図ることで、市街地全体の生物多様性の質の向上を図ることが必要であるとしています。
 野火止用水歴史環境保全地域について、生物多様性に配慮した管理を行うことで、自然豊かな保全地域としていくべきと考えます。都の見解を伺いまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 渋谷のぶゆき議員の一般質問にお答えいたします。
 介護人材対策についてであります。
 高齢者が住み慣れた地域で、必要な介護サービスを利用しながら安心して暮らし続けるためには、担い手の確保が重要でございます。
 都はこれまで、職場体験や資格取得支援のほか、業務負担軽減に資するデジタル機器の導入や、介護職員の宿舎借り上げを行う事業者への支援など、様々な施策に取り組んでおります。
 今年度は、新たに分身ロボットを活用する取組や、掃除、配膳ロボットの導入経費を支援いたしております。
 こうした施策を総合的に推進しまして、介護人材の確保、定着、育成を図るとともに、次期高齢者保健福祉計画の策定の中で、介護人材対策の強化について検討してまいります。
 その他の質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、グローバル人材の育成についてでございますが、次代を担う子供たちが国際社会において異なる文化や習慣、考え方を尊重し、多様な人々と協働していくためには、英語だけでなく、茶道、書道など、日本の伝統や文化を学ぶことが重要でございます。
 都教育委員会は、伝統や文化を交流に先立ち学ばせるだけでなく、それらを海外の生徒に紹介したり、共に体験することにより、グローバルな視点から自国の文化をより深く理解させることにつなげております。
 今年度は、海外の生徒と交流する機会を拡充することに加え、海外で活躍する日本人から話を聞く交流プログラムを多く設定することなどにより、日本人としての自覚をより一層高めてまいります。
 次に、小笠原村における教育の充実についてでございますが、都教育委員会は、島しょ地域の学校において、TOKYO GLOBAL GATEWAYの実践的な英語学習プログラムをVRによって体験できる機会の提供や、統合型校務支援システムの導入に向けた支援など、デジタルの力を活用した取組を行ってまいりました。
 小笠原村については、都教育委員会から専門性を有する職員が現地を訪問し、地域の特性を踏まえた学校経営の支援や教員向けの研修を実施するなどしております。
 今後、小笠原村における教育環境の充実に向けて、村教育委員会との連携をさらに進めるための方策について検討してまいります。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、新東京所沢線についてでございますが、本路線は広域的な道路ネットワークを形成し、交通物流機能の強化や防災性の向上に資する骨格幹線道路でございます。
 清瀬市内の新小金井街道から所沢市境までの約一・六キロメートルの区間では、昨年度までに全ての用地を取得いたしました。現在、街路築造工事や電線共同溝設置工事等を進めておりまして、今後、整備が完了した区間から順次交通開放してまいります。
 また、清瀬市内の残る区間と東久留米市内の区間を合わせました約一・九キロメートルの区間では、約六〇%の用地を取得しておりまして、令和三年度末から二一ポイント増加いたしました。今後とも、地元の理解と協力を得ながら着実に事業を推進してまいります。
 次に、所沢街道における歩道の整備についてでございますが、歩道は歩行者の安全確保や良好な都市景観の形成など多様な機能を有しており、その整備の推進は重要でございます。
 東久留米市内の所沢街道三・六キロメートルの区間は、これまで順次歩道の整備を進め、一・三キロメートルがおおむね完成しております。唯一未着手であった南町四丁目から八幡町二丁目の一・三キロメートルの区間についても、令和四年十二月から現況測量を実施しているところでございます。この区間につきましては、事業が円滑に進むよう、用地取得を市に委託することとしておりまして、速やかに調整を行ってまいります。
 今後、市と一層の連携を図り、地元の理解と協力を得ながら歩道整備を推進してまいります。
 最後に、柳瀬川下流部区間の河川整備についてでございますが、水害から都民の命と暮らしを守るためには、護岸や調節池等の整備を一層推進することが重要でございます。
 これまで都は、柳瀬川の下流部区間である関越自動車道から空堀川合流点付近までについて、その中間地点付近に金山調節池を整備し、調節池下流側の治水安全度を高めた上で上流側の護岸整備を実施し、令和三年度末に完了いたしました。調節池下流側におきましては、河床洗掘が進んでいる箇所で四年度から護岸整備を実施しているところでございます。
 今後は、関越道から下流の埼玉県施行区間でボトルネックとなっております清柳橋付近の整備状況を見ながら、関越道から上流に向けた護岸整備に順次取り組んでまいります。
 引き続き、柳瀬川の河川整備を着実に推進してまいります。
   〔福祉保健局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局長(佐藤智秀君) 学童クラブの待機児童に関するご質問にお答えいたします。
 都は、令和四年度から、区市町村が学童クラブの待機児童解消計画を策定した場合には、整備費の区市町村負担分等を補助するほか、地域の実情に応じた放課後の居場所の確保に係る経費を幅広く支援しております。昨年度は十九の自治体がこの補助制度を活用しており、都のホームページでその計画を公表しております。
 今後、既存の施設を活用した居場所づくりや夏休みの預かりなどの好事例を紹介するほか、待機児童が多い区市町村にヒアリングを行うなど積極的に働きかけまして、待機児童の解消に向けて取り組んでまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、生産緑地の貸借の後押しについてでございますが、東京の農業の維持と発展に向けて、市街地にある生産緑地の貸借を促進し、経営規模の拡大や新たな就農者の増加につなげることは重要でございます。
 このため、都は、農業者に対し、地元の農業委員会により生産緑地の貸借が可能となる仕組みを紹介してまいりました。また、農業委員会が生産緑地の貸借を円滑にまとめることができるよう、農業会議を通じてサポートを行ってきたところです。
 生産緑地の貸借を一層増やすため、自治体の区域を超え、貸手と借手をマッチングする窓口を今月開設したところです。これによりまして、今後、借手の希望に沿った農地を提案し、現地への同行や手続のサポートなどを行います。
 こうした取組によりまして、都市農地の貸借を促進いたします。
 次に、農家の後継者に対する支援についてでございますが、東京農業の担い手を増やす上で、農業以外の分野からの就農の後押しに加え、農家の子供の就農を支援することが効果的でございます。
 都はこれまで、新規の就農者が農業の基礎知識から実践的な作業までを一貫して学ぶ研修を行うほか、農業の技術や経営の力を高めるセミナー等を実施してまいりました。
 今年度は、農家を引き継いだ子供が、ほかの仕事を続けながら農業を学ぶ新たな研修を開始いたします。
 具体的には、週末等を活用し、農業の優れた専門家から栽培の技術や作業に加え、効果の高い販売方法などのノウハウを学ぶコースを設けます。
 これらによりまして、東京農業の新たな担い手を増やします。
 最後に、アニメの制作を担う中小企業についてでございますが、アニメを制作する中小零細企業が、職場の働き方の改善により、従業員の意欲の向上を図る取組を支援することは必要でございます。
 これまで都は、中小企業の働き方改革を円滑に進めるため、経営者や従業員の参加するセミナーを開き、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得の義務づけ等について情報提供を行っております。
 また、会社の働き方の見直しを効果的に進めるノウハウを学ぶ講座を実施するほか、これに参加した中小企業に専門家を派遣し、きめ細かい助言を行っているところです。
 今後は、こうした取組に関し、アニメ業界を通じ幅広く周知を行い、中小企業の働き方改革を後押しいたします。
   〔下水道局長佐々木健君登壇〕

○下水道局長(佐々木健君) 多摩地域における雨天時浸入水対策についてでございますが、浸入水対策は発生源対策が重要であり、公共下水道を管理する市町村への支援が必要でございます。
 都はこれまで、多機能型マンホール蓋などを用いて浸入水量の多い地域を絞り込み、市町村による調査につなげてまいりました。
 今年度からは、TOKYO強靱化プロジェクトに基づく新たな補助制度による財政支援を行うとともに、発生源の特定や対策工法の選定などについてきめ細かい技術支援を行うことにより、市町村による調査を加速させ、対策工事につなげてまいります。
 今後も、東京の下水道の強靱化に向けて、市町村と連携し、雨天時浸入水対策を推進してまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 野火止用水歴史環境保全地域についてでございますが、複数の市にまたがり、各市が保全活動を担う野火止用水歴史環境保全地域では、都が各市と連携し、その取組を後押しすることが重要でございます。
 そのため、都は、各市がボランティア団体と連携し、用水敷とその樹林地において行う草刈りや伐採等の取組に対しまして、財政支援を実施してございます。
 また、専門家派遣により、地域の希少種を保護する取組を支援するとともに、住民に対する自然体験活動や環境教育などの普及啓発等を積極的に行う自治体を引き続き後押ししてまいります。
 今後、貴重な自然地を保全するため、六市で構成する野火止用水の会議体と生物多様性に係る保全プランの一層の共有を図り、各市の活動を多面的に支援してまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後五時二十二分休憩

ページ先頭に戻る