令和五年東京都議会会議録第九号

○副議長(本橋ひろたか君) 十六番玉川ひでとし君。
   〔十六番玉川ひでとし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○十六番(玉川ひでとし君) まず初めに、エネルギーについて質問いたします。
 空港臨海エリアにおける水素の利活用拡大とパイプラインを含めた水素供給ネットワークの構築に向けた検討を進めるため、六月一日に、東京都、川崎市、そして、私の地元大田区との三者で連携協定が締結されました。
 先日の知事所信表明においても、持続可能なエネルギー基盤を有する安全・安心な東京をつくり上げる、脱炭素とエネルギー安定確保に果敢に挑むと述べられ、将来の需要を支える水素の供給体制の構築を目指して、三者の連携を強化する協定を締結したとのことですが、水素エネルギーの利活用拡大の意義と今後の展望について、小池知事の見解を求めます。
 また、先月の五月二十四日には、同じく大田区の森ヶ崎水再生センターにて、次世代の太陽電池、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けての実証実験もキックオフとなりました。
 このペロブスカイト太陽電池は、薄い、軽い、曲がるといった特徴を有するため、建物の壁などに設置できる可能性があり、東京の特性である狭隘な住宅などが多い中でも幅広く活用できるのではないでしょうか。
 また、現在普及している太陽電池の九五%以上がシリコン系であるのに対して、主な原料は、昆布やノリなど海藻類に多く含まれる栄養素の一つであるヨウ素、ヨードであります。
 現在、ヨウ素は、天然ガス生産のためにくみ上げられた地下かん水から製造されていますが、世界の年間産出量約三万四千トンのうち、約三割が日本で産出されているものであります。この技術の確立を支援する都の取組が、地元ものづくりのまち大田区で、森ヶ崎でスタートしたことを、とてもうれしく思っております。
 次世代太陽電池は、再エネの利用拡大に希望をもたらす新たな技術であると考えますが、こうした新技術の確立を後押しする今回の取組に対する意義や期待について、都の見解を求めます。
 次に、健康づくりにおける適切な睡眠について質問をいたします。
 睡眠時間には個人差や年代差がありますが、メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手が、日中のパフォーマンスを上げるために何よりも大事にしているのが睡眠であり、最低八時間、休日には十二時間眠ることもあると話題になっております。
 二〇二〇年、OECD、経済協力開発機構の調査によりますと、十五歳以上の平均睡眠時間の国際比較では、中国は九時間以上、アメリカでは八時間四十五分以上という時間でありますが、それに比べて、日本では七時間半以下であり、調査された三十三か国において最も短い睡眠時間であります。
 さらに、総務省統計局による令和三年の社会生活基本調査によりますと、十歳以上の平均睡眠時間は、四十七都道府県中、東京都は四十六位という調査結果であり、都民の睡眠時間は世界的にも短いものであるということが分かります。
 また、睡眠不足が続くと、ホルモンの分泌や自律神経の働きに影響を及ぼし、生活習慣病へのリスクが高まります。肥満、糖尿病、高血圧、そして心筋梗塞、脳梗塞へとつながります。
 睡眠は、心と体の大切な充電時間でありますが、都民は世界的に寝不足であり、生活習慣病のリスクが高い人たちが多くいる都市ということになります。
 心身の健康を保つためには、適切な休養を取ることが必要であり、十分な睡眠は欠かせません。都民の健康増進のため、睡眠の重要性について普及啓発を進めるべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 夜、眠っているのに日中の眠気で困る、激しいいびきや歯ぎしりが続くといった症状への対処は、睡眠時間を長くするだけではなく、治療が必要な睡眠障害の可能性があります。不眠症状が見られる病気には、鬱病などのほか、睡眠時に呼吸が止まり酸欠になることで深い睡眠が取れない、睡眠時無呼吸症候群があります。
 今から二十年前、平成十五年の山陽新幹線での運転事故で、この睡眠時無呼吸症候群は大きく認識されるようになりましたが、安全対策の課題だけではなく、様々な合併症を高い率で引き起こすものであります。
 睡眠時無呼吸症候群の検査は、病院に宿泊して機器を装着して行うものから、今では自宅でも可能な簡易的なものまであります。睡眠時無呼吸症候群をはじめとする睡眠障害について、都民が検査を気軽に受けられるような取組が必要と考えますが、都の見解を求めます。
 また、中小企業で働く従業員の健康増進のためにも、質の高い睡眠の確保は企業における生産性向上の観点から重要です。
 そこで、今後の取組について、都の見解を求めます。
 国民健康保険加入者の健康増進について質問をいたします。
 国民健康保険の加入者は、高齢の方の割合が高く、できるだけ健康でいられる期間を長くするとともに、医療が必要な方は受診につなげていくことが重要であります。各区市町村では、特定健診をはじめとして様々な保健事業を実施しています。
 私の地元の大田区でも、大田区内の医師会と連携し健診結果も活用しながら、糖尿病の重症化リスクの高い方への受診勧奨や保健指導を行う取組などを実施しています。
 こうした取組は健康増進につながるとともに、医療費を抑える効果も期待できるものであります。
 そこで、都は、広域的な自治体の役割として、個々の区市町村では把握できない情報の提供やデータ分析など、区市町村の健康増進に向けた取組を支援すべきと考えます。都の見解を求めます。
 続いて、国民健康保険における子育て支援について質問いたします。
 国民健康保険の均等割保険料は世帯の人数に応じて賦課されるために、子供の数が多いと負担も増える仕組みとなっています。しかし、企業の健康保険や公務員の共済組合には、このような仕組みはありません。
 国は昨年度から、未就学児童の均等割保険料を五割軽減する措置を開始したところでありますが、今後の対象者や軽減割合の拡大については、引き続き地方自治体と協議していくとしています。
 子育て支援の視点に立ち、十八歳まで拡充するなど、一層の負担軽減を図ることが求められます。子供の均等割保険料に係る軽減措置の拡充について、都の見解を求めます。
 次に、象牙の取引規制について質問いたします。
 日本には、象牙を用いた伝統的な工芸品や芸術品が長い歴史と文化的な価値とともに存在しています。一方で、ワシントン条約により、象の保護を促進し、密猟や違法な取引を防止する措置として、国際的な象牙の取引は原則禁止となりました。
 そのような背景がある中、東京二〇二〇大会時の訪日外国人による象牙の違法な海外持ち出しへの懸念など、国際的な関心の高まりを受け、都では、象牙取引規制に関する有識者会議を設置いたしました。
 有識者会議では、象牙取引に関する国際情勢や国内情勢、課題や新たな対策の必要性などが議論され、一つ目に、取引管理の一層の厳格化に向けた、法に基づく全国的な取組についての国への働きかけ、二つ目に、国外持ち出し防止の取組のインバウンド復活に備えた継続、そして三つ目に、象牙に関する文化芸術を守りつつ、密猟や違法取引への寄与を防ぐための条例またはその他の効果的方法の検討との三つの提言がされました。
 これまで都は、国と連携した広報活動など、様々な対応策を展開してきたと認識しておりますが、一方で、コロナが五類に移行し、今後はインバウンドの回復に伴い、国際的な往来の活発化が見込まれる中、象牙の違法持ち出しのリスクが高まります。
 このような中、有識者会議の提言も踏まえた条例制定や効果的方法の検討など、今後、都は象牙取引の適正化を強化すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、河川の整備について質問いたします。
 都は、東日本大震災を受け、平成二十四年十二月に東部低地帯の河川施設整備計画を策定し、河川施設の耐震、耐水化を推進してきております。また、令和三年十二月には、地震後に発生する高潮にも備えるため、地盤高が伊勢湾台風級の高潮の高さより低い地域に耐震対策の範囲を拡大した第二期整備計画を策定し、今後も切れ目ない整備を推進していくこととしております。
 私の地元大田区の大森西地域を流れる二級河川である内川につきましても、河川施設整備計画に基づき、耐震対策が実施されてきております。また、併せて大田区により、桜のプロムナードとして内川の一部で植栽が整備され、休日には釣りに興じる人の姿も見られ、のどかで良好な河川空間となっております。
 今後も、内川の耐震対策とともに、現場の意見を反映し、地域に愛される、よりよい空間となるよう河川整備を行うべきと考えますが、都の見解を求めます。
 最後に、島しょ地域でのオンラインを活用した進学支援について質問いたします。
 島しょ地域の高校生にとっては、大学進学に当たって入試に関する情報の入手が難しく、合格後も島外で一人暮らしをしなければならないなど、内地の高校生以上に不安や困難を伴うものであります。
 このような不安を解消していくには、島しょ地域特有の事情を理解しつつ、受験や内地での生活を実際に経験している同世代の人たちから、その体験や生活面での注意点などを聞くことが効果的であると思います。
 これまでであれば、内地に住んでいる人とのやり取りは、地理的な制約から気軽にできるものではなかったと思いますが、現在ではオンラインの活用などにより、交流が身近なものとなっているのではないでしょうか。
 島しょ地域における高校生の大学進学に関する不安を解消できるよう、ICT技術などを活用した取組が大変重要であると考えますが、都の見解を求めます。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 玉川ひでとし議員の一般質問にお答えいたします。
 水素エネルギーの利活用の拡大についてのお尋ねです。
 東京でのゼロエミッションの実現に向けまして、再生可能エネルギーの利用を増やすとともに、水素をはじめとする新エネルギーの活用を進めていくことは不可欠であります。
 特に、水素は様々な資源から生み出すことができ、太陽光発電などで作ったエネルギーを長期間にわたり大量に蓄え、電力需要に応じ速やかに活用できるなどのメリットを持ち、この普及に力を入れることは重要です。
 これからの水素の利活用の道筋をつくるため、空港とものづくり産業の集積を持ち、水素活用のポテンシャルの高い大田区と、供給の拠点づくりを進める川崎市と協定を結びました。
 水素に関して新たな技術を生み出す競争は、国際的に厳しさを増しておりまして、東京での様々な技術開発を後押しして、その成果の社会実装の早期実現を図ります。
 これらによりまして、水素エネルギーの利活用を進め、ゼロエミッション東京の実現につなげてまいります。
 次に、睡眠に係る普及啓発についてであります。
 心身の健康を保つためには、睡眠は欠かせない大切な生活習慣であります。都は、東京都健康推進プラン21におきまして、睡眠の充足感に関する目標を掲げまして、適切な睡眠に向けた工夫や、睡眠不足が心身に及ぼす影響などを啓発してまいりました。
 また、働く世代では、残業など働き方が関連するため、働く人の睡眠を守る環境整備が重要であって、企業経営者等に対する啓発も行っております。
 今後、都民一人一人がライフステージに応じた適切な睡眠への理解を一層深めるための取組を進め、都民の健やかで心豊かな生活の実現につなげてまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 島しょ地域における大学への進学支援についてでございますが、都教育委員会では、昨年度、都立八丈高校及び大島高校において、オンラインチューター事業を開始いたしました。現在、内地の大学等に通う卒業生が、オンラインで在校生の大学入試や進学後の生活に関する相談に応じています。
 受験生からは、勉強方法や島外での暮らしについての不安の解消に役立てることができたとの声がありました。また、学校からも生徒のモチベーションの向上や学習習慣の改善などを実感したとの声が寄せられております。
 今後とも、島しょ地域の高校との協力を密にし、大学進学を目指す高校生を支援してまいります。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 内川における河川整備についてでございますが、東部低地帯において水害から都民の命と暮らしを守るためには、堤防などの損傷を防ぐ耐震対策を進めていくことが重要でございます。
 都は、東部低地帯の河川施設整備計画に基づき、これまでに堤防約〇・二キロメートル及び内川排水機場など二施設の耐震、耐水対策を実施してまいりました。
 令和五年三月には、対策の範囲を拡大した第二期整備計画に基づき、内川水門上流からJR東海道本線下流までの延長二・五キロメートルにつきまして、耐震護岸の基本設計に着手いたしました。
 引き続き、設計を進めますとともに、護岸上部における植栽等の整備について、地元大田区と連携、調整を図りながら取り組んでまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 次世代太陽電池の実用化についてでございますが、脱炭素化を強力に推進するため、再生可能エネルギーの導入を拡大していくことは重要でございます。
 そのため、都は、日本で生まれた次世代技術であり、設置場所の大幅な拡大が期待できるペロブスカイト太陽電池の早期社会実装化を促進してまいります。
 先般、開発企業との共同研究として、この太陽電池の特徴を生かし、国内の下水道施設で初めて、森ヶ崎水再生センターの水処理施設の覆蓋に設置いたしました。今後、二年半をかけて、発電効率の測定や耐腐食性能等を検証してまいります。
 また、実用化後、都有施設への率先導入を図るなど、次世代太陽電池の技術開発と普及を後押ししてまいります。
   〔福祉保健局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局長(佐藤智秀君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、睡眠障害に関する理解促進についてでございますが、睡眠の充足感が感じられない場合は、睡眠時無呼吸症候群等の睡眠障害の可能性があり、睡眠障害は生活習慣病のリスクを高めるといわれております。
 このため、都はこれまでも、睡眠の重要性を啓発するパンフレットなどにおいて、不眠症状が見られる疾患を紹介するほか、かかりつけ医や専門医への相談を促してまいりました。
 今後も睡眠の意義や適切な睡眠の取り方とともに、睡眠時無呼吸症候群等の睡眠障害につきまして、正しい知識や早期受診の重要性をホームページに掲載するなど、都民の理解促進に努めてまいります。
 続きまして、国民健康保険加入者の健康増進についてでございますが、都は、区市町村が地域の健康課題に応じた取組を実施できるよう、広域的な立場から医療費等に関するデータ分析結果の提供や専門家等と連携した助言を行ってまいりました。
 今年度は、区市町村が保健事業の実施計画を改定する年度のため、都は、都内共通の評価指標を設定するとともに、計画策定の手順や記載事項を示すなど、事業の評価、見直しを円滑に実施できるよう支援いたします。
 また、特定健診の受診率向上対策や、地区医師会等と連携した重症化予防に向けた取組等の好事例を共有し、国の交付金等を活用した事業実施を働きかけるなど、引き続き区市町村を支援してまいります。
 最後に、国民健康保険の均等割保険料についてでございますが、国民健康保険制度では、全ての被保険者がひとしく保険給付を受ける権利があり、子供を含めた被保険者の人数に応じて一定の負担が生じる仕組みとされております。
 国は昨年度から、未就学児の均等割保険料を半額に軽減し、軽減相当分を国と地方公共団体の公費で支援する制度を開始いたしましたが、対象は未就学児にとどまっております。
 都は、国に対し、子育て世帯の経済的負担の軽減という趣旨を鑑み、子供の均等割保険料軽減の対象につきまして、十八歳未満までの拡大と、それに伴う必要な財政措置を行うよう要望するとともに、全国知事会等とも連携してまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 中小企業で働く方の睡眠の確保についてのご質問にお答えをいたします。
 中小企業が、社員の健康を守り、その仕事の能率を高めるため、質のよい睡眠を十分に確保できるよう、働き方改革と職場環境の改善を図ることは重要でございます。
 このため、都は、長時間労働を減らすほか、従業員が勤務を終わり、次に出勤するまでの間に、睡眠時間等を確保するルールを導入するよう働きかけを行っております。
 また、ライフ・ワーク・バランスを推進するイベントにおいて、仕事の合間に体を休め、快適に睡眠を取ることのできる時間帯やスペースを設けた会社を紹介しております。
 働き方の見直しに役立つ情報を学ぶセミナー等で、今後、社員の良質な睡眠が仕事の集中力を高め、健康の維持につながることを伝える機会を増やす工夫を行ってまいります。
   〔政策企画局長古谷ひろみ君登壇〕

○政策企画局長(古谷ひろみ君) 象牙取引規制についてでございますが、都は、有識者会議の提言を踏まえ、水際対策の強化等を国に要請するとともに、事業者と連携いたしました違法持ち出し防止の取組を二〇二〇大会時から継続して実施しております。
 また、昨年のCOP19の際は、都の取組やスタンスをPRペーパーやウェブ広告により国際社会に発信しております。
 今後は、インバウンドが増加する機を捉え、これまでの取組に加え、新たに訪日旅行者向けに国外持ち出し防止を呼びかける訴求力の高い動画などを作成し、空港や観光地等において配信してまいります。
 さらに、SNS広告を戦略的に活用するなど、国際情勢等も踏まえながら、象牙の違法取引の根絶に向けた取組を強化してまいります。

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