令和五年東京都議会会議録第四号

○議長(三宅しげき君) 八番岩永やす代さん。
   〔八番岩永やす代君登壇〕

○八番(岩永やす代君) 都議会生活者ネットワークの岩永やす代です。
 多額の税金をつぎ込んで開催したオリンピック東京大会は、談合や贈収賄など汚職まみれのイベントとなってしまいました。犯罪捜査が進み、組織委員会や電通から逮捕者が出る事態で、札幌をはじめ、今後のオリンピックや国際イベント招致にも大きな影響を与えています。この問題を都が解明できないならば、日本では国際大会など開催できなくなることは明らかです。都は、開催都市の責任として、第三者機関による徹底した調査をすべきです。
 組織委員会から清算法人に引き継がれた文書の保存期間は、清算結了から十年間であり、文書の所有権はIOCにあります。しかし、東京都は、組織委員会に人も金も提供しており、契約文書も含めて、都が保存すべきと考えます。
 そのために、IOCと交渉する必要があると考えますが、知事の見解を伺います。
 電気代やガス代が高騰し、暖房を我慢して低体温で死に至る高齢者も出ていると報じられているところです。住まいの断熱化は、省エネにより冷暖房費を節減できるだけでなく、ヒートショック予防や結露によるカビ発生防止など、住人の健康にも寄与します。
 建物の断熱改修は、現在、環境局が補助金を出して推進していますが、光熱費が高騰している今こそ、環境と福祉をセットで推進する視点に着目すべきです。CO2削減とともに、光熱費削減と医療費削減にもつながり、貧困対策や健康づくりに役立ちます。まずは、都営住宅での断熱改修導入が必要と考えます。
 新たに建設する建て替え住棟の断熱性を高めるよう二年前に提案したときは、公営住宅の整備基準以上はできないということでした。
 都営住宅では、これまで消極的だった太陽光発電も導入し始めており、既存の住棟の断熱化を大規模改修に合わせて実施するなど、都営住宅の断熱改修を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 都は、断熱改修について、窓やドア一つでも補助しています。二重窓にするなど工事を伴う手法のほか、簡易で断熱効果が比較的高い方法を伝授している建築の専門家もいます。そのような人材やNPOが地域で具体的な相談に対応できる仕組みが必要です。
 最近、マスコミでも断熱の有効性が取り上げられており、自分の家の断熱改修を検討する人が増えています。
 都では、断熱改修を含め、住宅の環境性能向上に関する多くの補助制度を設けていますが、それらに関する相談に対してどのように対応しているのか伺います。
 東京にはマンションが大変多くあります。古いマンション一棟丸ごと外断熱の工事をすることで、建物の長寿命化が図られるとともに、健康や快適な生活にも資するといわれており、資産価値が上がる場合もあるとのことです。
 外断熱改修を進めるために、見積りの相談や補助などを実施することが重要と考えますが、見解を伺います。
 子供の権利を守る仕組みの一つとして、都が実施している子供の権利擁護専門相談事業は、子供の権利侵害事案に対応し、子供に寄り添って解決していく取組です。いじめや虐待が増加し、子供をめぐる状況が改善されない今、さらなる拡充が求められています。
 これまで、子供の意見を聞くよう求めてきましたが、ようやく二〇二三年度に児童相談所が関わる子供のアドボケイトについて検討する委員会を開催するとしています。一時保護や児童養護施設への措置決定などを本人抜きで大人だけが決めることは問題であり、子供自身が意見を述べることは重要です。
 しかし、子供が本心を言葉で伝えることが難しいため、アドボケイトはそれを引き出し、意見表明を支援するための制度であり、担い手のスキルがとても重要になります。子供自身が声を出せるようなエンパワーメントにつながり、さらなる広がりも期待しています。
 アドボケイトを担う意見表明等支援員については、今後の検討の中で具体化されますが、検討項目及びスケジュールについて伺います。
 生活者ネットワークは、ジェンダー主流化を掲げ、男女平等やSOGI、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツなどの課題に取り組んでいます。人権に基づく性教育の必要性はもちろん、若者が性の相談を安心して気軽にできるユースクリニックや年齢の近い大学生などと語り合える場をまち中につくるよう、二十年以上前から提案してきました。
 しかし、二〇〇三年ごろから吹き荒れたバックラッシュの影響で進展せず、性教育も相談機能も、若者の性に関する取組は置き去りにされてきたのです。
 今年度、ユースヘルスケア推進事業の取組として、ようやく相談窓口を設置しました。どのような事業を実施しているのか、今後の取組と併せて伺います。
 日本語を母語としない、外国にルーツのある子供が増えています。孤立しがちな子供たちが地域で共に育つように、親子で安心して過ごせる居場所として子供食堂などが各地で活動しています。
 文科省では二〇一九年度から、市区町村と連携し、全ての外国人の子供に教育機会が確保されるよう外国人の子供の就学状況調査を行っており、二〇二一年の調査では、就学実態が不明または不就学の子供が都内で約三千九百人いることが確認されています。多文化共生社会を掲げ、外国人が多く暮らす東京都こそ、こうした事態を解決していかなければなりません。
 こども未来アクションでは、日本語を母語としない子供への支援が重点項目の一つとして位置づけられました。一人一人がアイデンティティーを持ち、自分らしく育ち学ぶことができるような環境づくりに期待を寄せています。
 地域や学校での多文化、多民族共生の取組を進めるために、新たにスタートする多文化キッズコーディネーターの配置や多文化キッズサロンについて、きめ細やかに支援していく必要がありますが、どのように取り組んでいくのか伺います。
 外国人は、高校卒業資格があれば就労制限なく働くことができますが、家族滞在の在留資格では、原則、週に二十八時間以内という就労制限があり、高卒の資格は子供の将来に大きく影響します。
 文科省の調査では、日本語の支援が必要な外国にルーツのある子供の高校中退率は、二〇二一年度に六・七%、全体の中退率一%の六倍以上となっており、高校への進学と高校までの支援が大変重要です。
 個々に合わせた受入れ体制や学びの支援をどのように充実させていくのか伺います。
 朝鮮学校への私立外国人学校教育運営費補助金支給が、二〇一〇年から知事の判断で停止になっています。この補助金は、外国人学校、インターナショナルスクールも対象となっているにもかかわらず、朝鮮学校だけ外すことは、特定の学校への差別、民族差別にほかなりません。
 先日、再開を求めて市民団体が都に要請し、当事者である子供たちの声も届けられました。都議会全会派の賛成で制定された東京都こども基本条例の趣旨も踏まえ、一日も早く復活することを求めます。見解を求めます。
 介護離職ゼロを実現するためには、介護サービスの充実が必要です。ところが、介護施設に入所している場合でも、通院同行を家族に求められることがあります。
 また、介護保険制度では、在宅高齢者が通院するときの院内介助にヘルパーの待ち時間が算定されないなどの制約があるため、病院内でヘルパーが使えず、通院の付添いのために家族が同行しなければならない状況があるとの声を聞きます。家族からは、負担が大きく仕事との両立ができないと悲鳴が上がっています。訪問介護事業所からも、ヘルパーの仕事が細切れになるため、何とかしてほしいという訴えがこちらにも届いています。
 都として、こうした実態を是正するべきと考えますが、見解を伺います。
 多摩地域の水道水PFAS汚染が大きく報じられ、住民に不安が広がっています。地下水は、多摩地域の大切な財産であり、地下水を飲み続けたいと活動してきた多摩地域の市民は、水質保全のために、化学物質に頼らない生活の実践や、水量確保のために雨水浸透ますの設置を進めるなどしてきました。
 PFASの汚染源を究明し、対策を図るとともに、汚染浄化に取り組むことが必要です。汚染によって地下水が水道水源として使えなくなっている今こそ、地下水の水質と水量を守るための地下水保全条例が必要です。
 東京のPFAS汚染が話題になったのは、横田基地周辺の井戸から検出したという新聞記事に端を発しており、汚染データ収集のためには、横田基地への調査が欠かせません。
 横田基地内の井戸の状況や泡消火剤などに関して、都に提供されている情報はどれくらいあるのか伺います。また、東京都として基地への立入調査を求めるべきと考えますが、見解を伺います。
 多摩地域では、多くの畑で農産物が作られており、地産地消の取組は地域でも喜ばれています。農業用井戸も使われており、農業者も住民もPFAS汚染を心配しています。
 水から農産物へのPFASの移転について、東京都農林総合研究センターなどで研究していただきたいと考えますが、見解を伺います。
 血液検査で高い値が検出された住民は、健康被害を心配しています。国のエコチル調査の対象には、東京都の住人はいないと聞いています。データ収集を国に働きかけるとともに、都としても調査や研究を進めていただきたいと考えますが、見解を伺います。
 地下水は、一旦汚染されると水質を回復するのが難しいです。現在、濃度の高い地下水については、水道水源井戸の取水が止められており、個人宅の井戸でも飲用を控えることが求められています。
 しかし、汚染源が分からないままでは、いつまでも市民が望む地下水利用が再開できません。そのため、汚染源特定のための調査を実施し、汚染物質を取り除くなどの対策を講じていくことが必要と考えますが、見解を伺います。
 汚染源特定のためにはデータの集積が重要で、環境局、水道局や福祉保健局、保健所設置自治体からも測定データを集め、また、湧水も測定するなどして、都内全域で地下水のPFAS汚染実態を把握し、公表することが必要です。
 この問題を解決するために、縦割りを排し、各局が協力して東京都全体で取り組むことを要望し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 岩永やす代議員の一般質問にお答えいたします。
 組織委員会の文書の保存についてのご質問がございました。
 それらにつきましては、法令に基づき、清算人が清算結了後十年間保存することとなっております。
 清算人保存文書のうち、守秘義務が課されているものや個人情報を含む文書などを除きまして、IOC等との協議によって、都が管理するアーカイブ文書については、既に公開をいたしております。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 外国にルーツのある子供への支援についてでございますが、都立高校に在籍する日本語指導が必要な生徒の指導の充実を図るため、教員にとって必要な情報を掲載したハンドブックを作成し、今年度中に都立高校に配布いたします。
 また、対象の生徒が在籍する全ての都立高校に対して、来年度、外部人材を派遣する事業を実施いたします。
   〔住宅政策本部長山口真君登壇〕

○住宅政策本部長(山口真君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅の断熱改修についてでございますが、省エネルギー化に加え、居住者の健康確保の観点からも、都営住宅の断熱性能を高めていくことは重要でございます。
 既存住棟におきまして、住戸の内側から断熱性能を向上させるには、壁や天井等に断熱材を貼る必要がございまして、居住しながらの改修が困難であることから、現在、建物の外壁に断熱材を貼る工法と窓を複層ガラス等に改修した場合の効果やコストを検証しております。
 今後とも、都営住宅における省エネルギー化に向けた取組を進めてまいります。
 次に、マンションの外断熱改修についてでございますが、外断熱改修工事は、マンションの省エネ化を進める手法の一つでございまして、都は今年度から、既存住宅の外断熱を含む断熱改修工事等に対する補助事業を実施しております。
 また、住宅関係団体等と連携した東京都省エネ・再エネ住宅推進プラットフォームのホームページ等を通じまして、補助事業や関係団体の相談窓口等を紹介しております。
 今後とも、こうした取組を進めてまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、断熱改修を含めた補助制度の相談についてでございますが、都は先月、住宅等を対象とする新制度や、断熱、省エネ等に係る各種補助制度に関する問合せをワンストップで受け付ける電話相談窓口を開設いたしました。
 相談窓口では、都の補助の申請手続等に加えまして、国や区市町村の関連する補助制度も含め情報提供を行うなど、きめ細かく対応してございます。
 今後とも、都民からの問合せに丁寧に対応することにより、環境性能の高い住宅の普及を促進してまいります。
 次に、地下水中の有機フッ素化合物の調査についてでございますが、都は、平成二十二年度から、島しょ部を除く都内全域でPFAS調査及びそのフォローアップ調査を行ってまいりました。
 令和三年度からは、国がPFOS等を要監視項目に規定したことから、水質汚濁防止法の測定計画に位置づけまして、都内二百六十ブロックで測定するとともに、暫定指針値を超過した地点は継続測定し、結果を公表してございます。
 国は本年一月、PFASの専門家会議を設置し、最新の科学的知見や国内の検出状況を踏まえまして、総合的な戦略の検討と分かりやすい情報発信を行うとしてございます。
 都は、こうした国の動向を注視しながら、引き続き、地下水の調査を着実に実施してまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、子供の意見表明についてでございますが、東京都児童福祉審議会は本年一月、児童相談所が関わる子供の意見表明等の理解促進や支援の仕組みの充実等について、提言を取りまとめました。
 都は、この提言を受け、来年度検討会を設置し、意見表明等支援員の職務や研修等について検討することとしております。
 次に、ユースヘルスケアについてでございますが、都は、思春期特有の健康上の悩みなどに対応する相談窓口である、とうきょう若者ヘルスサポート、わかさぽを開設し、昨年十月から週二回の電話相談を実施しています。十一月からは対面相談を地域や会場を変えながら月に二回程度、十二月からはメール相談も行っており、来年度は、固定の相談場所を区部に設置する予定でございます。
 最後に、高齢者の通院時の院内介助についてでございますが、国の通知では、要介護高齢者の院内での介助は医療機関の職員による対応が基本であるが、保険者である区市町村の判断で訪問介護の利用が可能とされています。
 この判断を行う際の参考として各自治体の具体的な対応事例が示されており、都は、こうした内容を区市町村に引き続き周知してまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、日本語を母語としない子供への支援についてでございます。
 区市町村が地域の実情を踏まえて施策を実施していくことが重要と考えております。
 そのため、都は来年度、日本語を母語としない子供の居場所となる多文化キッズサロンの設置や、困り事等を聞き取り適切な支援につなげる多文化キッズコーディネーターの配置を行う区市町村を支援いたします。
 これらを通じて、多文化共生社会の実現のために取り組んでまいります。
 次に、朝鮮学校に対する外国人学校教育運営費補助金の交付についてでございますが、施策の実施に当たりましては、東京都こども基本条例の理念と施策の性質を踏まえて判断するものと考えております。
 朝鮮学校の運営等の実態を確認するため、過去に実施した調査結果やその後の状況などを総合的に勘案して、朝鮮学校に外国人学校教育運営費補助金を交付することは、都民の理解が得られないと判断しております。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 横田基地内の井戸や泡消火剤等についてでございます。
 国からは、在日米軍が保有するPFOS等を含む泡消火剤については、二〇一六年以降は訓練を目的として使用しておらず厳格に管理している、泡消火剤の交換作業は、昨年十二月までに海軍や海兵隊等の施設において順次完了しており、二〇二四年九月までに、横田基地を含む全施設において完了する計画であると聞いております。
 基地への立入調査については、環境補足協定で、漏出など環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合に立入りを行えるとされており、立入調査を求める状況にはございません。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) PFASの農産物への影響についてのご質問にお答えいたします。
 国は、農産物に係るPFASの分析方法等について研究をしており、都は、引き続きその動向を注視してまいります。
   〔福祉保健局健康危機管理担当局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(佐藤智秀君) 有機フッ素化合物の健康影響に関するご質問にお答えいたします。
 国は、子供の発育に影響を与える化学物質等の環境要因を明らかにするため、平成二十三年から十万組の親子を対象に、子どもの健康と環境に関する全国調査を実施しており、調査項目には有機フッ素化合物が含まれております。
 この調査とは別に、国は本年一月、専門家会議を設置し、最新の科学的知見や検出状況の収集、評価を行い、科学的根拠に基づく総合的な対応を検討しておりまして、都は、その結果を踏まえ、分かりやすい情報発信や専用電話による健康相談を実施してまいります。

○議長(三宅しげき君) 以上をもって質問は終わりました。

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