令和五年東京都議会会議録第四号

○副議長(本橋ひろたか君) 七番漢人あきこさん。
   〔七番漢人あきこ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○七番(漢人あきこ君) 環境破壊の都市計画道路小金井二路線について、まず質問します。
 昨年十一月二十七日、小金井市長選が行われ、二名が立候補、いずれも重要公約として、はけと野川の自然環境を壊す都市計画道路二路線、小金井三・四・一号線、三・四・一一号線について、事業化の中止と都市計画決定の見直しを東京都に求めることを掲げて市長選に臨みました。二路線の推進を求める候補者はいませんでした。
 投票率が低かったことは残念ではありますが、結果は、白井亨さんが得票率七五%で当選しました。二路線の中止を明確にした新市長の誕生によって、小金井市の民意が再び示されたといえます。
 白井新市長は、当選直後の十二月の市議会で、二路線中止を都に申し入れることを明言し、現在開会中の第一回定例会の施政方針では次のように述べています。
 国分寺崖線はけと野川の自然や、その豊かな自然環境から生み出される文化は、本市にとってかけがえのない財産であり、宝です。都市の近郊であり宅地開発が進む利便性の高い地域であるからこそ、豊かな自然の保全が一層重要となります。こうした観点から、優先整備路線である小金井都市計画道路三・四・一号線及び三・四・一一号線については、施行者である東京都に対し事業化の中止を求める要望書を提出するなど、今後も、はけと野川を守り、豊かな暮らしや文化を後世に継承していくため、適切に対応していきたいと考えております。以上です。
 知事、地元小金井市長の二路線中止を求める意向が明確になりました。これは大いに尊重されるべきと思いますが、知事はどのように受け止めていますか。今後の東京都の対応について伺います。
 次に、PFASによる地下水汚染について質問します。
 有機フッ素化合物、PFAS汚染は、全都的に広がりを見せています。特に深刻なのが多摩東部で、全国的にもかなり高濃度の汚染が確認されています。地下水汚染は水道事業に大きな影響を与えているだけでなく、井戸水を直接水源とする膨大な数の飲用井戸の汚染を通して、市民の日常生活や健康に対しても深刻な脅威となっています。
 まず、PFASによる地下水汚染の状況をどのように受け止めているのか、都としての基本的な認識を伺います。
 多摩地域を管轄する都の保健所が行っている調査によれば、全体で千を超える飲用井戸があり、そのうち福祉施設や学校などに給水しているものも含め、二割程度の井戸で毎年、目標値を超過するPFASが検出されています。また、災害時の飲用水源として期待されている井戸も少なくありません。これら飲用に供されている地下水の汚染状況をどのように認識していますか。また、飲用井戸利用者の健康と安全を確保するためにどのような対策を講じていくのですか。
 多摩地域は、良質で豊富な地下水を飲用に用いてきた歴史があります。湧水として河川等の公共水域とつながり、土壌環境とも深く関連しています。地下水環境の保全は多摩地域ではとても大切な課題です。その中での汚染の広がりは衝撃的で、大きな不安を感じる声が広がっています。
 そこで伺います。
 環境省のPFASの手引にある汚染井戸周辺地区調査や排出源特定のための調査は行われていますか。
 多摩東部の汚染は、国分寺、府中、国立、立川、小金井、狛江と、横田基地から東、南側で、地下水位が下がっていく方向へと広がっていて、横田基地が大きな汚染源の一つではないかと思われますが、いかがですか。
 都として、米軍に情報提供や調査協力を求めるべきではないですか。
 PFASに関する調査は、局や自治体ごとにばらばらで、情報の相互の活用や検証がなされている気配がありません。
 関係局の連携を密にし、井戸水の独自調査を行っている武蔵野市や国分寺市など、各自治体との協力体制をつくり上げるべきではありませんか。
 自治体の独自検査などへの財政支援や、井戸所有者等の検査経費の助成を検討しませんか。
 蓄積されつつある汚染状況データを効果的に活用して、オープンに比較検証できるように、汚染地点の公開、調査地点の増加、計画的、継続的な検証体制を確立することを求めます。いかがですか。
 次に、新宿御苑における放射能汚染土再生利用の実証事業について質問します。
 環境省は、福島県内の放射能汚染土の再生利用のため、新宿御苑の花壇で実証事業を行うと発表し、十二月二十一日に新宿区内で住民説明会を開催しました。
 多くの都民が暮らし、日本有数の昼間人口を誇る新宿で行われる実証事業に、多くの都民は疑問や不安を感じています。都は、都民の思いに寄り添って対応するべきだと考えます。まず知事の見解を伺います。
 次に、事業計画について環境省から都への事前の連絡の時期と内容、都の対応を伺います。
 十二月の説明会は、新宿一、二丁目の住民僅か五十名に限定されたものでした。環境省に対して、誰もが参加できる説明会を再び開くよう求めませんか。
 最後に、周辺住民、来園者など関係者全ての安全が保障されない限り、事業中止を国に求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 次に、玉川上水の生物多様性地域戦略に基づく管理について質問します。
 玉川上水は、都心部と多摩地域をつなぐ緑の回廊としての役割を果たしています。地域住民にとっては散歩や癒やしの場であり、復活と保全の市民活動も活発です。
 この間、小金井エリアでは、生物多様性への配慮が大変不十分な樹木の皆伐が行われました。近く「山階鳥類学雑誌」で発表予定の論文で、桜以外が伐採された小金井エリアは、交通量が多く道路に挟まれ緑地も少ない杉並エリアよりも、鳥類相は最も貧弱であることが示されます。また、桜だけの小金井エリアは、二〇一八年の台風のときに、他地域の七倍もの倒木があったとの論文も発表されています。
 来年は小金井桜名勝指定百周年です。私も大好きな桜並木の伝統を重視しつつ、生物多様性にも配慮した新しい時代を迎える契機としたいと思います。
 都としての玉川上水の生物多様性地域戦略に基づく対応について伺います。
 次に、こども基本条例に基づく朝鮮学校に通う子供たちの学びの環境整備について質問します。
 二月十日、都内十校ある朝鮮学校を支援する地域市民の会が、都知事宛ての東京都こども基本条例に基づき、朝鮮学校に通う子供たちの学びの環境整備を求める要請書を提出し、三十六人の朝鮮学校に通う子供たちから、条例に基づく意見表明も提出されました。
 朝鮮学校への私立外国人学校教育運営費補助金は、十三年前、石原知事が、補助金の扱いに関してはまず議会の方で議論していただきたいなどと答弁し、支給停止になっています。
 しかし、二〇二一年四月、子どもの権利条約を色濃く反映したこども基本条例が、議員提出、全会派一致で制定され、施行となりました。昨年末には、自民党、公明党、立憲民主党、共産党、無所属の党派を超えた都議有志主催で、こども基本条例都議会学習会を開催し、私も含む参加者は、補助金再交付に向けて取り組むことを確認しました。趣旨に賛同する都議は、現在三十名を超えるとのことです。
 提出された要請書の一部を紹介します。この間、都の返答は同じ、都民の理解が得られないでした。しかし、差別や偏見があるのであれば、都民の理解を得るために努力するのが行政の役割です。都民の理解が得られないは、朝鮮学校に関する補助金の停止への正当化根拠とはなりません。すなわち都の現状は、なすべき是正措置をなさない、行政の不作為状態といえます。都民の理解が得られないとの回答を直ちに撤回し、条例に基づき、一刻も早く私立外国人学校教育運営費補助金を朝鮮学校に関して復活させることを求めます。以上です。
 都は、こども基本条例を踏まえて、朝鮮学校に対する私立外国人学校教育運営費補助金の交付を再開すべきです。見解を伺います。
 最後に、関東大震災百年に当たっての歴史的事実を踏まえた人権尊重の取組について質問します。
 今年は、関東大震災百年として様々な取組が行われようとしていますが、忘れてはならない歴史的事実である朝鮮人や中国人などの虐殺の悲劇を繰り返さないという視点がありません。
 二〇一六年熊本地震では、朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだといったデマがネット上で出回り、二〇一八年大阪北部地震では、ツイッター上で外国人に対する差別的な投稿が相次ぐなど、決して過去の出来事ではありません。二〇一八年には法務省人権擁護局はツイッターで、災害発生時には、ネット上に差別や偏見をあおる意図で虚偽の情報が投稿されている可能性もあり得ますなどと冷静な行動を呼びかけました。
 都は、人権尊重条例でヘイトスピーチ解消を掲げています。関東大震災百年を契機に、二度と悲劇を繰り返さないためにも、災害発生時の差別や偏見による人権侵害を起こさないよう人権啓発事業を行いませんか。
 再質問を留保して、質問を終わります。(拍手)
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 漢人あきこ議員の一般質問にお答えいたします。
 小金井三・四・一号線及び三・四・一一号線ほかの今後の対応についてでございますが、この二路線は、第四次事業化計画の優先整備路線に位置づけられておりまして、武蔵野公園などの広域避難場所へのアクセス向上や、生活道路への通過交通抑制による地域の安全性向上に資する重要な路線でございます。
 この二路線について、様々な意見があることは承知しております。引き続き、事業化に向けて市民の皆様と意見交換を行うなど、丁寧に対応してまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、地下水中の有機フッ素化合物の状況についてでございますが、PFOS等の有機フッ素化合物は、撥水性や化学的安定性等の特性から、様々な用途で使用されてまいりました。
 都は、平成二十二年度からの四年間、島しょを除く都内全域で地下水中のPFOS等の調査を行ってきました。この間に、いずれの区市町村からもPFOS等の有機フッ素化合物が検出されてございます。
 その後、こうした状況も踏まえまして、比較的濃度が高かった地点については、継続して測定し、その結果を公表するとともに、関係各局で共有を図り、飲用井戸所有者に対して飲用を控えるよう助言を行っているほか、一部の水道水の取水井戸で取水を停止してございます。
 次に、地下水中の有機フッ素化合物の調査についてでございますが、都は令和三年度からは、地下水中のPFOS等について、水質汚濁防止法に基づき調査を実施してございますが、測定結果が暫定指針値を超過した場合には、調査に協力いただいた井戸所有者等に対して飲用を控えるよう助言を行うほか、経年変化を把握するため、継続監視調査を行ってございます。
 次に、地下水中の有機フッ素化合物についてでございますが、PFOS等の有機フッ素化合物は、半導体の製造、撥水加工、泡消火剤など様々な用途で使用され、都のこれまでの調査では、全区市町村で検出されてございます。また、暫定指針値を超過した地点は、多摩や区部のそれぞれの地域で確認されてございます。
 都は、引き続き都内全域で調査を進めてまいります。
 次に、有機フッ素化合物の地下水調査に係る協力体制についてでございますが、都は、都内全域の調査の状況等について、関係各局と共有するほか、暫定指針値を超過した飲用井戸の所有者に対して、連携して飲用を控えるよう助言を行ってございます。
 また、区市と定例的な会議等を通じて情報共有や意見交換を行っているほか、調査を行う際には、各自治体の要望や地域特性等を踏まえ、測定地点を選定してございまして、調査に協力いただく井戸所有者との調整等についても、各自治体と連携して取り組んでございます。
 次に、自治体や井戸所有者に対する調査経費の助成についてでございますが、都は現在、都内全域を対象として、計画的にPFOS等の汚染状況の把握と未把握の汚染の発見を進めてございます。また、暫定指針値を超過した地点に対する継続測定も実施してございます。
 引き続き、都内の実態把握を着実に進めてまいります。
 次に、有機フッ素化合物の汚染状況データの効果的な活用についてでございますが、国が本年一月に設置した専門家会議では、PFASに対する総合的な戦略を検討するほか、国民に対して分かりやすい情報発信を行っていくとしてございます。
 都は、こうした国の動向を注視しながら、引き続き地下水の調査を着実に実施し、その結果をホームページ等で公表してまいります。
 最後に、国が進める放射能除去土の再生利用についてでございますが、当件は、環境省が国の事業として自らの施設内で行うものでございます。
 環境省には、放射線の安全性等について、地元自治体や住民への説明、適切な情報開示などをしっかり行うよう伝えてございます。
 なお、環境省は、全国自治体を対象に除去土利用の普及啓発活動を行っており、都に対しても、昨年の八月以降、数度にわたって取組概要等に係る説明がございました。
   〔福祉保健局健康危機管理担当局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(佐藤智秀君) 飲用井戸等における有機フッ素化合物に関するご質問にお答えいたします。
 都は、多摩地域の飲用井戸等の設置者に対し、国が定める暫定目標値を情報提供するとともに、水質等の状況を把握するための検査で目標値を超えた場合は、飲用を控えるなどの助言を行っております。
 国は本年一月、専門家会議を設置し、最新の科学的知見や検出状況の収集、評価を行い、科学的根拠に基づく総合的な対応を検討しており、都はその結果を踏まえ、分かりやすい情報発信や専用電話による健康相談を実施してまいります。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 米軍への情報提供、調査協力依頼についてでございます。
 国からは、在日米軍が保有するPFOS等を含む泡消火剤について、二〇一六年以降は訓練を目的として使用しておらず、厳格に管理している旨の説明を米側から受けていると聞いております。
 また、環境補足協定では、漏出など環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合に基地への立入りを行えると規定されており、そうした調査協力を求める状況にはございません。
   〔水道局長古谷ひろみ君登壇〕

○水道局長(古谷ひろみ君) 玉川上水の生物多様性に係る対応についてでございますが、水道局では、史跡玉川上水を適切に保存管理し、後世に継承していくことを目的とし、史跡玉川上水整備活用計画に基づき、水路、のり面の保全や名勝小金井桜の保存、倒木による被害防止を図るとともに、生物多様性にも配慮し、樹木の伐採や剪定を実施しております。
 引き続き、地域住民との意見交換を行い、緑の保全に配慮いたしました植生管理を進めるとともに、生物多様性が保たれた適切な生態系の維持に努めてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 朝鮮学校に対する外国人学校教育運営費補助金の交付についてでございますが、施策の実施に当たりましては、東京都こども基本条例の理念と施策の性質を踏まえて判断するものと考えております。
 朝鮮学校の運営等の実態を確認するため、過去に実施した調査結果やその後の状況などを総合的に勘案して、朝鮮学校に外国人学校教育運営費補助金を交付することは、都民の理解が得られないと判断しております。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) ヘイトスピーチ解消に向けた啓発についてでございますが、災害時における人権侵害を防止するためには、平時から都民の意識啓発を図ることが重要でございます。
 都は、人権尊重条例に基づき、啓発冊子や動画等を活用した広報、人権啓発イベントでの展示など都民への啓発に取り組むとともに、ヘイトスピーチと認められる表現活動の概要を公表してございます。
 引き続き、様々な機会を捉えた効果的な啓発を行い、ヘイトスピーチは決して許されないという都民の意識を醸成してまいります。
   〔七番漢人あきこ君登壇〕

○七番(漢人あきこ君) 新宿御苑の放射能汚染土再生利用実証事業について再質問します。
 先ほどの答弁で、東京都は、地元自治体や住民への説明、適切な情報開示などしっかり行うよう伝えているとのことでした。
 しかし、そのような、住民が納得するような説明、そして情報公開は行われておりません。知事、当然再度の住民説明会の開催を国に求めるべきではないでしょうか。知事の答弁を求めます。
 そもそもこの事業は、放射性廃棄物は集中管理すべきという原則から外れ、根本的解決からも逃げ、将来世代に対して全く無責任なものです。そして、このような国のやり方は、福島に真の復興をもたらすものではないということも申し上げておきます。
 以下、意見、要望を述べます。
 都市計画道路小金井二路線については、近く小金井市長から、事業化の中止を求める要望書が提出されます。小金井市民の民意をしっかりと受け止めた対応を強く求めます。
 PFASについては、各局、自治体との一層の連携による取組を求めます。
 玉川上水については、十三年前策定の当初の計画期間を既に終了した整備活用計画に基づく答弁でした。生物多様性地域戦略に基づく計画の見直しを市民参加で至急行う必要があることを指摘しておきます。
 朝鮮学校運営費補助金不支給は、こども基本条例にも人権尊重条例にも反するものであり、都民の理解が得られないとの答弁は、なすべき是正措置をなさない行政の不作為状態であることを重ねて指摘をします。
 また、二月十日の市民団体の要請にも、三十六人の子供たちの意見表明にも全く向き合おうとしない知事の姿勢に強く抗議します。
 最後に、関東大震災百年を契機とした人権啓発事業に大いに期待をしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 繰り返しになりますけれども、本件は、環境省が国の事業として自らの施設内で行うものでございます。
 環境省には、放射線の安全性等について、地元自治体や住民への説明、適切な情報開示などをしっかり行うよう伝えてございます。

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