令和五年東京都議会会議録第四号

○議長(三宅しげき君) 四十七番田の上いくこさん。
   〔四十七番田の上いくこ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○四十七番(田の上いくこ君) ミライ会議の田の上いくこです。
 国では、岸田総理の少子化と防衛とその財源が議論されています。少子化と防衛の二つの政策が、産めよ増やせよ、軍事増強のいわゆる新しい戦前にならないよう、情報公開を進めて隠し事のない政治を実現し、未来への希望を示す大胆な改革を進めていかなければなりません。
 まず、子供政策と公教育について伺います。
 小池百合子都知事は、十八歳までの子供に月五千円給付とおっしゃいました。
 子育て政策は、自民党の、子供は家庭で育てるもので、給付は貧困対策、所得制限なしの給付は愚か者のばらまき政策という考え方があります。一方、旧民主党の、社会全体で子育てを支えるという社会連帯の思想で、給付は所得制限なし、高額所得者には税で公平を期するという考え方もあります。
 自民党時代の所得制限ありの政策から所得制限なしの給付に踏み切ったのは、社会連帯の思想に変わったからなのか、それとも単なるばらまきなのか、小池知事に伺います。
 また、税制における所得再配分を行わなければ、高額所得者に給付することに対する不公平感は払拭できないと考えますが、小池知事の見解を伺います。
 月五千円の支給なら、毎月支給、四半期支給をすべきです。予算案の概要では、月額五千円、括弧書きで年六万円と書いてありますが、年一回支払いは、手当ではなく一時金です。
 都知事選挙の年の二〇二四年一月に支給という遅すぎる六万円の一時金になった理由について、小池知事に伺います。
 産み育てたい子供の数と現実は、経済的要因で左右されます。非正規雇用では、賃金格差があり、不安定な雇用により将来への確たる見通しを持てません。まずは隗より始めよで、お膝元の東京都庁から改革するべきです。
 都には、会計年度任用職員等非正規公務員は何人いるのでしょうか。都の非正規職員の待遇改善や正規職員化に取り組むことが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 知事は、少子化対策として結婚支援をうたっておられますが、子供を産み育てるのに結婚が全てではありません。戸主を筆頭とする戸単位の戸籍制度は、百五十年前に明治維新政府が徴税、徴兵のためにつくったもので、日本古来の伝統ではありません。
 また、子供の虐待死や中絶数も目をみはるものがあります。
 予期せぬ妊娠で葛藤し、産み落とされてゼロ日で亡くなる命を救うため、相談体制を充実して医療につなげ、その方法以外には医療にたどり着けない方の選択肢として内密出産、さらに、出産後の母子支援や特別養子縁組への支援が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 知事は、英語力の東京を強調されますが、東京都では和製英語のようなキャッチコピーが氾濫しており、都民からは訳が分からないという声が聞こえます。
 英語を話すことは、国際人としての一つの要素にすぎず、話すだけなら、自動翻訳アプリもあり、日常で困ることはありません。また、日本は国内市場が大きく、中継貿易で国家運営をしようとするシンガポールやドバイとは国情が異なります。フランス人全員が英語を話すわけではありませんし、その必要もありません。
 東京都総合教育会議の委員が指摘する、日本のことをきちんと理解して、それを外国語を使って伝えることができるグローバル人材育成のため、国語、歴史、文化の教育に力を注ぐべきだと考えますが、グローバル人材とは何か、小池知事に伺います。
 新たに、予備校講師を都立高校の大学受験対策に活用する施策が盛り込まれました。都立高校の教員は大学入試には対応できないと天下に公言するもので、教員の能力を軽視し過ぎています。
 生活指導や課外活動の担当スタッフの雇用など、まず、先生方が公教育に専念できる方向へと教員の働き方改革をすべきです。公教育をどう考えているのか伺います。
 情報公開について、教育庁は、公開できるものは全て公開しているといいますが、これは詭弁です。英語スピーキングテストのベネッセとの協定書など、ほとんどの文書は、事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるという教育庁の都合で、公開できないものにしているのが実態です。
 情報を隠さなければ事業の適正な執行ができない教育からは、自ら考え、行動するグローバル人材も生まれません。英語スピーキングテストに関する資料は全面公開するべきですが、浜佳葉子教育長の見解を伺います。
 次に、東京二〇二〇大会の不祥事と明治神宮外苑再開発について伺います。
 知事は、東京二〇二〇大会に談合や不祥事が発覚すると、泥縄式に調査チームを立ち上げますが、本格的に調査を行って都民の信頼を取り戻すべきです。東京都が招致委員会や組織委員会の資金の流れに知らぬ顔を決め込むなら、世界陸上も札幌オリンピックも開催するべきではありません。
 東京都は、招致委員会の不透明な資金の流れに対して、責任を持って資金の流れを明確にするべきです。小池知事の見解を伺います。
 都は、須藤栄会計管理局長を組織委員会の監事に送り込んでいました。
 そこで伺います。組織委員会の監事は東京都の職務でしょうか。職務でないとすれば、監事としての仕事を行っている間は、職務専念義務の解除手続を行ったのでしょうか。また、監事が充て職として選任された理由についても伺います。
 組織委員会の談合事件で、運営局元次長の森泰夫容疑者は、二〇一八年三月に現在は都の局長をしている上司に見せたとのことです。入札の制度設計をするための検討資料で、一覧表にあるのは実績から想定する事業者だと説明された、受注調整のための一覧表という認識はなかったと答えたと報道されています。
 報道は事実か伺います。また、受注調整の可能性を指摘できなかった監督責任について伺います。
 パネルです。東京二〇二〇大会組織委員会の収支の最終報告では、六千四百四億円の収支均衡です。清算後の処理が全く必要がない、幸せの決算になっています。自然体で収支均衡になるのか、素朴な疑問を持ちます。
 国内スポンサー企業収入三千七百六十一億円、マーケティング支出千二百九十九億円、ロイヤリティー等の収入連動経費一千七十七億円は、対スポンサー収益二八・六%です。
 仮に、収入連動経費一千七十七億円のうち、電通手数料、IOCへの支払い、JOCへの支払いを一対一対二として計算すると、JOCの収入が五百三十八億円になります。これは極めて多額で、この相当部分を組織委員会の黒字として計上すれば、定款上、清算後は公益法人、国、地方自治体に受け継がれるので、東京都に戻る可能性もあります。
 組織委員会の収入連動経費一千七十七億円は、誰に幾ら支払われたのか明確にするべきですが、都の見解を伺います。
 検証のため、公開されている組織委員会の正味財産増減計算書内訳表を確認してみましたが、国内スポンサー三千七百六十一億円、マーケティング支出千二百九十九億円の数値になりません。
 国内スポンサー三千七百六十一億円、マーケティング支出千二百九十九億円の数値は、公開されている正味財産増減計算書などの資料からどう導き出せるのか、ご教示願います。
 明治神宮外苑には、JAPAN SPORT OLYMPIC SQUAREビルがあり、ここに嘉納治五郎財団から日本レガシーコミッションへ、さらに衣替えした一般財団法人日本スポーツ政策推進機構があります。事務局長は小池知事と旧知の遠藤利明氏、理事に小池知事が立ち上げた希望の党の結党届にある一人、笠浩史氏、評議員に日本新党時代からの長年の盟友、樽床伸二氏がいます。
 収入連動経費の一千七十七億円は、日本スポーツ政策推進機構の活動資金となる懸念もありますが、それはあり得ないと断言できますか。小池知事の見解を伺います。
 知事は、外国人特派員協会で、明治神宮外苑再開発は、明治神宮などの地権者が進めてきたと述べています。これは事実に反します。
 平成二十四年五月の森喜朗氏との会談で、当時の佐藤広副知事は、神宮外苑全体の再整備は進めると決意を語り、明治神宮の協力が必要と述べています。明治神宮主導でないことは明らかです。都は開発の主導者であり、開発は事業者が行うといって逃げてはいけません。
 都市政策専門家、越澤明氏は「後藤新平―大震災と帝都復興」で、折下吉延氏が整備した四列のイチョウ並木や内外苑連絡道路がある明治神宮外苑は、日本の都市計画上、画期的な街路であり、公園であると評価しています。
 明治天皇と昭憲皇太后の遺徳をしのび、国民の奉仕によってつくられ、奉呈された明治神宮外苑の価値をどのように認識されているのか、小池知事に伺います。
 環境破壊に対して、イコモスなどが意見書を提出し、事業者との対話を求めていますが、事業者は事業実施で対話を封じようとしているのが現状です。
 都市計画変更で可能となった明治神宮外苑再開発によっても、イチョウ並木が保全されると考えておられるのか、その根拠とともに、小池知事に伺います。
 また、都は、明治神宮外苑を文化財保護法により仮指定して文化庁に報告し、明治天皇の遺徳をしのぶ外苑を保全する意思を示すべきと考えますが、浜教育長の見解を伺います。
 次に、建築物バリアフリーと私の地元葛西臨海公園についてです。
 東京都建築物バリアフリー条例の見直しでは、三年前の附則に盛り込んだように、宿泊施設の一般客室のユニットバスへの間口が七十五センチになり、車椅子ユーザーが利用しやすくなりました。
 今後のハードのバリアフリー整備における数値規定においては、ユーザーの声を聞いて実証実験を実施し、制度設計をするべきと考えますが、都の見解を伺います。
 千代田区の神田警察署前のイチョウの木も、打ち首状態で伐採されました。明治神宮外苑も、緑は守られるという知事の発言と現実は異なります。そして、今度は葛西臨海公園です。
 葛西臨海公園は、自然豊かな海辺の公園として、葛西海浜公園共々、葛西住民に愛されてきた公園です。葛西臨海水族園の新設に当たり、脱炭素化に向けて太陽光パネル設置や緑化基準面積を確保する一方で、樹木が伐採されるのは本末転倒です。
 葛西臨海水族園は、芝生広場を中心に設置し、樹木を守りながらサステーナブルな建築とするべきですが、都の見解を伺います。
 今回、私の質問に対して、関係局が全ての知事質問を局長質問へ変更しました。執行機関が議会の質問に介入することは、令和二年十一月二十五日の最高裁判決で示されている議員の質問権の侵害、憲法の住民自治の否定です。

○副議長(本橋ひろたか君) 時間が参りました。田の上議員、終了をお願いします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 田の上いくこ議員の一般質問にお答えいたします。
 初めに、グローバル人材の育成についてでございますが、都教育委員会は、令和四年三月に策定した東京グローバル人材育成指針において、小中高等学校を通して育成すべき資質、能力を四つ設定しております。
 具体的には、主体的に英語を学び続ける態度と英語力を基盤とし、国内外の諸課題の解決を追求する思考力、自分らしさ、郷土を理解し、世界の一員として社会参画する力、多様な文化を背景とする人々と協働する力を身につけることを目指し、多様な取組を展開しております。
 次に、都立高校における教育の在り方についてでございますが、都教育委員会は、教員が主体となり、効果的な教育が実現できるよう、専門知識や技能を有する外部人材の活用や民間企業との連携を進めています。
 今回、都教育委員会が予備校等と連携し、受験対策を実施する施策は、生徒が自らの経済的環境にかかわらず、希望する大学への進学に向けて、複雑化する傾向にある大学入試に的確に対応できるようにするための取組であり、教員の働き方改革にも資するものでございます。
 次に、スピーキングテストに関する資料についてでございますが、個人に関する情報や、公にすることにより、事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合などを除き、公開できるものは全て公開しております。
 次に、明治神宮外苑についてでございますが、明治神宮外苑は、文化庁が発行した近代の庭園・公園等に関する調査研究報告書において、文化財の指定の可能性がある事例として挙げられておらず、史跡名勝天然記念物に指定する文化財としての価値について、国は判断を示しておりません。
 仮指定は、国の史跡名勝天然記念物に指定されることが前提となるため、都教育委員会として明治神宮外苑を仮指定することは考えておりません。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 葛西臨海水族園の整備事業についてでございますが、新施設は、公園の緑など周辺環境と一体となり、自然との共存をコンセプトに整備することとしております。
 こうした観点から、樹木の少ない芝生広場を中心に建設することとし、支障となっている樹木についても移植を前提に設計を進めております。
 また、新施設の屋上に太陽光パネルを設置するとともに、外壁等の高断熱化を図るなど、建物全体において徹底した環境負荷低減を実現していきます。
 引き続き、持続可能な社会の実現に寄与する施設整備に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、〇一八サポートについてでございますが、〇一八サポートは、子供一人一人の成長をひとしく支えるため、所得制限を設けず、ゼロ歳から十八歳までの全ての子供に月額五千円を給付するものでございます。
 本事業は、子供を産み育てたいという願いを応援するものでございます。
 次に、〇一八サポートの給付の考え方についてでございますが、本事業は、子供一人一人の成長をひとしく支えるため、ゼロ歳から十八歳までの全ての子供に月額五千円を給付するものでございます。
 次に、〇一八サポートの給付の時期についてでございますが、来年度は、区市町村との調整や支給手続の準備等のため、令和六年一月をめどに、年額六万円を一括で給付する予定でございます。
 最後に、予期しない妊娠についてでございますが、都は、妊娠や出産に悩みを抱える方に、妊娠相談ほっとライン等で対応するとともに、産科受診等が困難な方には、医療機関等への同行支援を行っています。
 また、妊婦が身元情報を医療機関の一部の者にのみ明らかにして出産せざるを得ない場合には、出産までの手続や出生した子供の特別養子縁組などについて、国通知に基づき対応することとしています。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 都における非常勤職員についてでございますが、知事部局の非常勤職員数は、令和四年八月一日現在、八千二百五十四名でございます。
 非常勤職員の報酬の額は、法律等に基づき、職員の職務の複雑性、困難性等に応じ、常勤職員の給与との均衡を考慮し、適切に定めてございます。
 なお、令和二年度から、会計年度任用職員には、在職期間等に応じ、常勤職員と同じ月数分の期末手当を支給してございます。
 また、現在非常勤職員に任用されていることをもって常勤化することは、地方公務員法に定める成績主義や平等取扱いの観点から、原則としてできないこととなってございます。
   〔政策企画局長中村倫治君登壇〕

○政策企画局長(中村倫治君) 六点のご質問にお答えします。
 まず、招致委員会についてであります。
 招致活動は、都と招致委員会が役割分担の上、行っていたものであり、国際招致プロモーション活動は招致委員会が担当し、都から公費も支出しておりません。
 なお、海外コンサルタントとの契約については、JOCの調査チームにより、法令等への違反を見いだすことはできないとの結論が示されているところであります。
 また、招致委員会の決算につきましては、招致活動報告書に取りまとめられ、公表されております。
 次に、組織委員会の監事についてであります。
 組織委員会からの依頼を受け、会計管理局長が兼職手続を行い、監事に就任をしております。
 なお、組織委員会の監事として職務に従事する際には、職務専念義務免除の手続を行っております。
 次に、談合に関する報道についてでございますが、捜査に関わることであり、お答えは差し控えさせていただきます。
 次に、組織委員会のマーケティング支出の収入連動経費についてであります。
 清算法人によりますと、収入連動経費は、IOC、IPCへの権利使用料、JOC、JPCへの共同マーケティング活動に伴う支払い、専任代理店契約に伴う支払いでありまして、相手方との契約に基づき、金額は公表していないと聞いております。
 次に、国内スポンサー収入等についてでありますが、正味財産増減計算書は、法令等に基づき、組織委員会の全ての収益や費用を勘定科目ごとに整理し、事業年度ごとに作成された会計上の計算書類でございます。
 一方、お話の収入及び支出の項目は、大会経費の全体像を分かりやすく示すため、業務の区分ごとに整理したものの一部であります。
 このように、それぞれ目的に応じて整理しているものとなっております。
 最後に、収入連動経費についてでございます。
 清算法人によりますと、組織委員会とお話の団体とは、契約関係になかったと聞いております。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、神宮外苑の価値についてでございます。
 神宮外苑は、国民からの献金、献木などにより造営され、緑地や文化、スポーツ施設の提供を通じて、多くの人々に開かれた庭として機能してきたものと認識しております。
 今回の再開発は、こうした歴史や文化を適切に継承しながら、にぎわいあふれる緑豊かなスポーツの拠点として、さらに発展させていくものでございます。
 次に、建築物バリアフリー条例の見直しについてでございます。
 今回の規定の見直しでは、障害者団体やホテル業界などと定期的に意見交換を行い、検討を進めてまいりました。また、障害者団体やユニットバスメーカーの実証実験も参考に、電動車椅子でも円滑に利用できる出入口幅や通路幅の検証を行ってまいりました。
 今後も、関係者の声や利用実態の的確な把握に努め、あらゆる方が利用しやすい建築物の整備を誘導してまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 四列のイチョウ並木の保全についてでございますが、都は、その保全に万全を期すよう、昨年五月、事業者に要請するとともに、昨年八月の審議会の答申を踏まえ、審査意見書を事業者に送付してございます。
 これを受け、事業者は、根系調査の実施や、その結果を踏まえた保全措置等の実施、評価の結果を評価書に盛り込んでいると認識してございます。

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