令和五年東京都議会会議録第四号

○議長(三宅しげき君) 十四番関口健太郎君。
   〔十四番関口健太郎君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十四番(関口健太郎君) 私ごとではありますが、昨年の九月に第二子が誕生しました。予定日の二か月前に生まれ、生まれたときの体重は約千グラム、NICUやGCUで二か月過ごし、我が家に帰ってきました。現在、生後五か月、今では成長のスピードも追いつきつつあり、元気に過ごしております。
 このように、医療の高度化に伴い、低出生体重児は迅速に治療が行われることで、無事に退院するケースも増えてきております。
 そうしたNICU等入院児が増えていく中で、その母親への支援の必要性もより高まっているといえます。出産後は、子供と一緒に過ごすことによって愛着を深め、親としての役割を獲得していく時期です。しかし、子供がNICU等に入院していることによって、母親は不安やストレスを抱えることが多くなります。
 また、低出生体重児にとっては、母乳は欠かせない栄養です。そのため、母親は自宅で搾乳をして、入院している子供ために母乳を病院に届けます。しかし、母親自身は産科を退院している状況のため、母乳に関するケアを受けることが難しいといった声や産後ケアを適切に受けることができなかったという声があります。
 地域において、こうした母親への心理的支援や母乳等の身体的な支援を行うため、産後ケアの取組を一層推進していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 私自身、第二子の誕生を通じて、改めて、出産、産後はお金がかかると痛感をしました。経済的支援を充実させることは重要です。また、先述したような伴走型の相談支援で、子供と保護者を支えることはさらに重要です。
 都は、妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援を充実させる独自のスキームを構築していますが、このスキームでどのような社会を目指していくのか、知事の見解を伺います。
 続いて、新生児マススクリーニングについて伺います。
 新生児マススクリーニングは、原則として全ての新生児に実施をしています。この検査は、国が指定する二十種類の病気を調べることになっていますが、重症複合免疫不全症、脊髄性筋萎縮症の二つの難病の検査は自治体によって対応が異なります。この二つの難病の検査を両方とも実施している自治体は十八府県、重症複合免疫不全症の検査を実施しているのが三道府県、東京都を含む二十六都府県では、どちらの難病も検査対象となっていません。
 しかし、現在、都が新生児マススクリーニングを委託する東京都予防医学協会では、これら二つの難病を含む先行研究を都内医療機関と進めています。
 私の第二子も、偶然にも先行研究を実施している医療機関で生まれたため、この新生児マススクリーニングの先行研究に協力をしたところでありました。既に東京都予防医学協会における重症複合免疫不全症、脊髄性筋萎縮症を含めたマススクリーニングにおける土台はできているものと考えます。
 都においても、早急にこれらの難病を新生児マススクリーニングの検査対象とすべきです。
 これらの疾患は、早期の発見により、早期治療につながる可能性があるといわれています。今後の新生児マススクリーニングの実施について伺います。
 また、これらの疾患を追加するに当たって、保護者の負担を軽減することが重要です。例えば、千葉県では、脊髄性筋萎縮症の検査事業を全国に先駆け、二〇二〇年度から無料で実施をしました。しかし、二〇二一年度では有料となり、検査を受ける新生児の割合は八〇%台から四〇%台まで落ち込みました。
 これらの疾患については、早期に発見をし、治療につなぐことができます。障害の発生予防となることから、新生児マススクリーニングの公費負担の対象とすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 地域公共交通について伺います。
 月額五千円で乗り放題の商業目的の乗合タクシーが二十三区の中でも試験導入がされています。渋谷区では試験導入が終了しましたが、豊島区においては現在も試験導入中です。渋谷区、豊島区では、試験導入の際に、基礎自治体の地域公共交通会議において議論がされませんでした。こうした会議で議論なく試験導入されたことに私は強い懸念を抱いております。
 私は、過疎地域や交通空白地域における乗合タクシーは重要だと考えますが、公共交通の充実する都心地域での乗合タクシーの導入には危機感を抱きます。
 このサービスは、採算性や持続性のない激安の価格設定をしています。試験導入における事業収支では、どちらの自治体でも赤字です。しかし、激安価格のサービスを継続することで、既存の公共交通のパイを奪い、既存交通の撤退を招くことを私は恐れています。結果として困るのは地域住民です。
 そこで、試験導入された月額制で乗り放題の乗合タクシーについてどう捉えるのか、都の見解を伺います。
 また、こうした商業目的の乗合タクシーの導入は、基礎自治体の地域公共交通会議で審議をされるものですが、広域自治体としての都の役割は大きいと考えます。なぜならば、地域公共交通は基礎自治体で完結するものではなく、広域的な広がりがあるからです。
 そこで、俯瞰的な目で地域公共交通を見るべきと考えますが、都の見解を伺います。
 精神科医療について伺います。
 東京八王子市にある精神科の病院、滝山病院は、入院患者を殴ったとして看護師が暴行の疑いで逮捕され、この看護師を含む四人が、それぞれ別の患者の頭を殴るなどの暴行を加えた疑いがあるとして警視庁の捜査を受けています。
 都は昨年五月、滝山病院で虐待が行われているとの情報を受けて、病院側に聞き取り調査をしました。その後、六月に年一回の定期立入検査を実施、さらには九月、十月にも聞き取り調査をしました。これら四回全てで虐待の事実は確認されなかったのでしょうか。これまでの都の対応経緯について伺いたいと思います。
 滝山病院の死亡退院率がほかの病院に比べて高いことが指摘をされています。報道によりますと、二〇二一年六月の一か月に退院した患者十四人のうち、死亡による退院は九人と六四%、その前年の二〇二〇年六月は退院患者十五人中死亡が十二人で八〇%、さらにその前年の二〇一九年六月は退院患者七人全員が死亡による退院です。また、民間団体による少し古いデータでありますが、二〇一三年の調査ではこの病院の死亡退院率は六五%でしたが、都内七十の精神科の病院の平均は三%です。
 都は、この死亡退院率を把握していたのでしょうか。また、他の病院に比べて極めて高い死亡退院率である滝山病院に対して疑義を持たなかったのでしょうか、伺います。
 年一回の定期立入検査などでは、事前に病院側と日程を調整して検査に入っています。それでは病院側が都合の悪いことは隠したいと考えるのは容易に想像がつきます。事前連絡なしの検査を含めることで、精神科病院に対して一定程度の緊張感や精神障害者への暴行の抑止などにつなげることができると考えます。
 虐待などの情報提供が寄せられる病院などについて、定期立入検査に加え、今まで以上の臨時の立入検査も実施すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 そして、まさに本日の朝五時半頃、滝山病院へ、都が抜き打ちで二度目の検査に入りました。今後の対応について注視をしてまいりたいと思います。
 そして、最後に、旧統一教会の渡韓女性についてであります。
 旧統一教会の本部がある韓国には、合同結婚式で韓国に渡った日本人女性信者が約七千人住んでいるといわれています。主に、彼女たちは農村部に住んでいます。韓国の農村では、入信すれば日本人女性と結婚できるということが勧誘の入り口となっていました。結婚難に悩む韓国の農村部では、日本人女性との結婚目的で入信する男性も多かったそうです。
 教団では、朝鮮半島を植民地支配した歴史を持つ日本は、韓国に贖罪しなければならないと教えているそうです。日本人女性が韓国人男性と結婚し、夫や夫の家族に尽くすことが日本の過去への贖罪になると教えており、家庭での苦労に耐えることが信仰の実践だと信じる女性が多いそうです。そのため、経済的に厳しい生活を送る人も多く、夫の暴力に耐えている日本人女性も多くいます。
 その一方、既に信仰心がなくなった女性においても、パスポートを家族が取り上げたり、帰国費用がなかったり、生まれた子供がいるという観点から、帰国が困難な女性が多くいます。
 実は、外務省では、パスポートがなくとも、お金がなくとも、日本への帰国が可能なスキームが既にございます。しかし、彼女たちにとってネックになるのは、その後の日本における生活と国内における居場所です。そして、既存の福祉施策で十分に彼女たちを救うことは可能です。
 仕事がなく、金銭的な困窮をしている渡韓女性や、子供のいる渡韓女性が都に帰還した際、既存の都の福祉施策につなげることが重要だと考えますが、都の見解を伺います。
 そして知事、ぜひ、合同結婚式で韓国に渡った、帰りたくても帰れない、困っている日本人女性に対して、困っているなら東京に来てほしい、東京にはあなたたちの居場所がある、そうした呼びかけをぜひしてほしいのです。
 そうした呼びかけが、彼女たちにとって大きな励みになります。そのことを最後に要望し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 関口健太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 妊娠、出産、子育ての切れ目ない支援についてでございます。
 都は、妊婦や子育て家庭に対する相談支援や産後ケア、育児パッケージの提供等を行う区市町村を支援いたしております。
 来年度は、国の出産・子育て応援交付金も活用しまして、妊娠時、出産後などの各段階で相談支援と経済的支援を行う独自のスキームを構築し、誰もが安心して子供を産み育てられる社会の実現を目指してまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 七点のご質問にお答えをいたします。
 まず、産後ケアについてでございますが、都は、とうきょうママパパ応援事業により、産後ケア事業を行う区市町村を支援しており、令和二年度からは区市町村負担分を全額補助しています。
 より多くの区市町村が産後ケア事業に取り組めるよう、研修や説明会等の機会を通じて、医療機関と連携した取組事例を紹介するなど、引き続き働きかけてまいります。
 次に、新生児マススクリーニング検査についてでございますが、新生児マススクリーニング検査は、先天性の代謝異常等の早期発見、早期治療により、障害の発生を予防することを目的に、国通知に基づき実施しています。
 重症複合免疫不全症や脊髄性筋委縮症等は、国通知の検査対象疾患ではなく検査は任意となっており、都内では、本年四月から東京都予防医学協会が医療機関と連携して試験的に検査を実施する予定です。
 次に、新生児マススクリーニング検査の対象疾患でございますが、現在、国通知に基づき、都道府県は二十疾患について新生児マススクリーニング検査を公費で実施しています。
 関東知事会では、重症複合免疫不全症や脊髄性筋委縮症等についても対象疾患とするよう、国に要望しています。
 次に、精神科病院に対する立入検査等についてでございますが、都は、関係法令等に基づき、当該病院に対し、昨年六月に実施した定例の実地指導、立入検査に加えて、複数回調査を実施しました。
 虐待の事実は認められなかったが、今回、虐待が強く疑われる情報提供があったため、速やかに立入検査を実施いたしました。
 次に、精神科病院における退院患者についてでございますが、都は、国の依頼に基づき毎年実施する、精神保健福祉資料調査などにより、都内の精神保健福祉に関する状況を把握しております。
 当該病院については、関係法令等に基づき、実地指導、立入検査等を実施しています。
 次に、精神科病院に対する立入検査についてでございますが、都は、関係法令等に基づき、定期の立入検査に加え、必要と判断した場合は速やかに立入検査を実施しています。
 最後に、生活困窮者への支援についてでございますが、生活に困窮する方に対しては、生活困窮者自立支援制度や生活保護制度など、状況に応じた様々な支援制度があり、都は、都内に定住される方には、必要に応じて区市と連携して対応しています。
 なお、国は、在外公館で相談に応じるほか、法テラスに相談窓口を設け、国内外からの相談に対応しております。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、定額乗り放題の乗合タクシーについてでございます。
 ご指摘の事業は、タクシー車両を活用し、限られたエリア内を定額で乗り放題とする、民間事業者が行う乗合型のオンデマンド移動サービスでございます。
 この実証運行は、道路運送法に基づき国から乗合運送の許可を得て運行されるものであり、都といたしましては、その実施に当たり、地元自治体や既存の交通事業者など、地域の関係者で協議することが望ましいと考えております。
 次に、地域公共交通会議における都の役割についてでございます。
 地域公共交通会議は、区市町村等が主宰し、関係する公共交通事業者等が地域の移動サービスの在り方について協議する場として位置づけられております。
 新たな移動サービスを本格的に導入する場合には、国の通達により、地域公共交通会議等の場で協議を調えることとなっております。
 都は、区市町村からの要請に応じて、地域公共交通会議等に参加し、広域的、専門的な立場から必要な助言や情報提供を行っております。

○副議長(本橋ひろたか君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時二十一分休憩

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