令和五年東京都議会会議録第四号

○議長(三宅しげき君) 九十四番内山真吾君。
   〔九十四番内山真吾君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○九十四番(内山真吾君) コロナ禍において、子供たちを取り巻く環境が厳しくなってきています。
 昨年十月に公表された小中学校における不登校児童生徒は平成二十四年から九年連続増加し、小学校では七千九百三十九名で出現率は一・三三%、中学校では一万三千五百九十七名で出現率は五・七六%となり、過去最多を更新しました。また、令和二年度、前年度からの伸び率も、小中学校ともに過去最高となっています。
 一方、コロナ感染回避を理由に長期欠席している児童生徒も急増しています。こちらは不登校にはカウントされておらず、小学校では不登校とほぼ同数の七千四百四十四名、中学校でも二千六百四十三名とかなりの数に上っています。
 学校現場に伺うと、このコロナ感染回避の中には、不登校とする方が妥当なケースが一定数入っているとの声もあり、不登校の実態は、コロナ禍で数字以上に深刻になっているという懸念もあります。
 そのような中で、今年度実施されている子供を笑顔にするプロジェクトでは、コロナ禍で失われた子供たちの体験活動の機会を取り戻すべく、約百七十種類の多種多様なプログラムを学校の選択により提供しております。
 そもそもコロナ禍以前から、子供たちは体験活動の機会が失われつつあると指摘をされており、私も事あるごとに、都教委が目指す不登校を生まない魅力ある学校づくりには体験活動の充実が重要な要素の一つであることを訴え、質疑をしてまいりました。
 体験活動の中には、不登校や理数離れ、多様性への理解等、既に政策課題として挙げられているものへの有効なアプローチが期待できるものもありますが、現状では、このプロジェクトは、ほぼここ限りで完結をしてしまっています。
 例えば、子供政策連携室が百四十四ページにわたりまとめた、こども未来アクションについて、このプロジェクトとの親和性のありそうな内容はかなり記載されているにもかかわらず、ごく一部の連携内容にとどまってしまっています。このプロジェクトの重要性、有用性を考えれば、こども未来アクションの中でも打ち出し、連携を高めていくべきだと思います。
 来年度は、名称も変え、体験活動としての側面をクローズアップし、より教育的意義や効果が高い体験活動を展開していくと伺っています。仲間との課題解決型の体験や、コミュニケーションの促進を図るようなプログラムについては、体験時期を年度当初まで早めれば、新学年のクラスの仲間づくりが進み、中一ギャップや高一クライシスの対策にもつながり、不登校対策としても効果が期待できると思います。
 そこで、様々な政策課題にアプローチできそうなプログラムに対し、教育庁内はもちろん、局を超えて連携をすることで、より深いプロジェクトとすべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、ただ一日の体験とするだけではなく、前後の学校等での指導、取組と合わせることで、より高い効果を引き出すことができると考えます。
 体験をその場限りとするのではなく、より高い効果を引き出すため、どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 続きまして、教員採用試験における学生や社会人等の応募者増の取組についてお伺いをいたします。
 教員採用選考においては、毎年応募者が減少しており、大変厳しい状況が続いています。都教委では、積極的な広報などの取組を進めていることは承知しておりますが、団塊の世代の定年退職や、三十五人学級の導入などにより、大量採用が続いてきたこともあり、教員志望の既卒者はほぼ採用になってしまっているのも苦しい原因の一つかと思います。
 もちろん、教員の働き方改革を不断に進めることが大前提となりますが、採用選考の時期等がネックになっているケースもあることから、それらを見直すことで、学生や社会人の応募を増やしていくことができると思います。
 そこで、採用選考の応募者増加に向けた都教育委員会の取組についてお伺いをいたします。
 続きまして、予期せぬ妊娠についてお伺いいたします。
 私たちは、先月、熊本県慈恵病院のこうのとりのゆりかご事業、通称赤ちゃんポストを視察してまいりました。その中で改めて感じたことの一つは、予期せぬ妊娠をした方が、悩みや不安について相談できるようにすることの重要性です。そのためには、対象となる方々にどのようにリーチするかが課題となってきます。私は、二つの経路があると思います。
 一つ目は、妊娠検査薬購入のタイミングです。
 既に都は、幾つかの薬局などにポップを置き、カード配布をしておりますが、まだまだ限定的です。より効果が出るよう、多くの店舗を持つチェーン薬局や、妊娠検査薬を取り扱っている繁華街で深夜まで営業しているディスカウントストア等にも広げるべきであると考えます。
 二つ目は、インターネット検索をするタイミングです。
 都は、インターネット広告にも既に取り組んでいますが、広告により誘導しているホームページが文字のみで硬く、いかにも行政的なページになってしまっていて、様々な事情を抱えている方が相談しようと思えるようなものになっておりません。より親しみやすいデザインにするなど、相談しやすい雰囲気づくりが必要と考えます。
 そこで、この二つのタイミングで、支援、相談が必要な方にしっかりとリーチできるようにするのが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 続きまして、産後間もない時期における母子への支援についてお伺いをします。
 産後間もない時期は、健康状態や育児等、家庭の状況変化などにより、母子共に不安定な時期があり、切れ目のない手厚い支援が必要です。
 現在、ほぼ全ての新生児と産婦は、医療機関での一か月健診を受診しております。しかし、妊婦健診や三、四か月健診以降は公費で受けることが可能であるにもかかわらず、一か月健診のみ全額自己負担となっており、ここで切れ目が生じてしまっています。
 一方、新生児訪問と産婦健診は、産後二週間から二か月ほどで行われており、こちらは公費で受けることができますが、現在この産婦健診の制度を都内で活用しているのは葛飾区と町村部のみで、多くの自治体では行われておりません。こちらの制度は、一か月健診への転用も可能とのことですので、活用すれば切れ目のない支援をすることができます。
 そこで、産後間もない時期の母子に対する支援の充実に向け、産婦健診の制度活用を市区町村へ働きかけ等を強化するべきと考えますが、都の見解を伺います。
 続きまして、児童相談所一時保護所についてお伺いをいたします。
 区の児童相談所の設置が進み、都内全体の一時保護の受入れ枠は、都児相二百五十名定員に合わせて、区児相百三十七名が新設をされています。
 しかし、それにもかかわらず、都の一時保護所では定員を超えて児童を受け入れる状況が依然として続いております。区児相ができたことにより、今まで支援が届かなかった子供たちへのリーチができているということであれば、それはいい方向だと思います。
 一方、都児相の受入れの変化としては、特にトー横キッズといわれる女子児童の一時保護が増えていると聞いています。
 私は、以前より、一般質問や予算特別委員会の質疑において、一時保護所における児童の支援について言及し、都に改善を求めてまいりました。この間、子供の意向を踏まえた支援改善が着実に進められているとは認識しておりますが、一方、定員を超えた保護所での生活は、個別の支援が難しくなるほか、落ち着かず、児童相互のトラブルも多くなります。
 一時保護所が児童一人一人のニーズに寄り添い、通学にも対応するなど、きめ細やかな支援を行いながら、安心を実感できる環境となるよう、早急に保護需要に対応する受皿を確保すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 続きまして、被措置児童等の虐待についてお伺いをいたします。
 被措置児童とは、児童養護施設に入所している児童や里親の下で生活をしている児童など、社会的養護下にある児童のことで、残念ながらその中での虐待が毎年報告をされております。
 子供が自らの権利について知り、嫌だなと思うことを周りの大人に相談できることが重要ですが、幼児や知的に障害のある子供たちには、それを理解することに一定の困難性があります。また、学齢児以上だとしても、自分の唯一の居場所の中で頼れるはずの大人にされること、特に性的なことについては、なかなかほかの大人に話せないという状況もあり、それがまさしく虐待リスクとなってしまっています。
 虐待等で保護され、施設等で育ちながら、そこでまた虐待を受けるというのは絶対にあってはなりません。
 現在、都は、子供の権利ノートを活用し、学齢児以上の子供たちには啓発を行っておりますが、幼児や障害児に対しては行われていません。ここにしっかりと光を当てるとともに、学齢児以上の子供たちに対しても、虐待のリスクにさらされないよう、日頃から施設での生活に関する不満や疑問、相談の声をしっかりと上げやすい環境を整えることも重要だと思います。
 そこで、都は、被措置児童の権利擁護を進めるためどのように取り組んでいくのか、見解を求めます。
 続きまして、ヤングケアラーに対する支援の強化についてお伺いします。
 我が会派では、早くからヤングケアラーの問題を取り上げ、昨年の予算特別委員会においても、都としての実態把握や相談の場や家事支援など、具体的な支援策の強化を求めてまいりました。
 都は、我が会派の要望を受け、今年度からピアサポートや家事支援に取り組む団体への補助を開始しました。
 しかしながら、ヤングケアラーの支援はまだまだ始まったばかりです。
 今後、関係機関が緊密に連携しながら、ヤングケアラーを早期に把握し、支援につなげられるよう、取組をさらに進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 受動喫煙対策についてお伺いします。
 受動喫煙防止条例が施行され二年弱が経過しましたが、家族経営ではない一部の居酒屋などにおいて、喫煙目的施設を独自にうたい、全面的に喫煙を認めている店舗が見受けられます。こうした店舗について、都民が自治体に問題を指摘したところ、厚生労働省の喫煙目的施設の定義や解釈が曖昧なために指導ができないとの回答がありました。
 厚生労働省が健康増進法で定める喫煙目的施設は、喫煙をする場所を提供することを主たる目的とすること、通常主食と認められる食事を主として提供するものを除くことと記載されておりますが、主たる目的や主として提供すると曖昧な表記とされていることで解釈が曖昧となっています。
 都は、既にこの問題に対し、一般的な居酒屋は喫煙目的施設に当たらないとの見解を示しておりますが、厚生労働省が明確な解釈を示していないため、保健所や自治体が対応に苦慮する事態となっています。
 そこで、国が解釈を示すよう要請することを求めるとともに、制度が適切に運用されるよう、効果的な啓発を行っていくことが重要と考えますが、見解を伺います。
 最後に、昭島市内における道路整備についてお伺いをいたします。
 現在、都は、JR青梅線の東中神駅周辺において、立川基地跡地昭島地区土地区画整理事業に合わせて、昭島三・二・三号線及び昭島三・二・一一号線の整備を進めております。
 昭島三・二・三号線は、昭島市北部地域から立川駅北口方面のアクセスを強化する東西方向の重要な路線であり、このうち、区画整理事業地の西側の約四百三十メートルの区間で事業中であります。
 一方、昭島三・二・一一号線は、南北方向の交通の円滑化や立川基地跡地昭島地区へのアクセスをするために重要な路線であり、このうち、JR青梅線との立体交差を含む約三百九十メートルの区間で事業中であります。
 近年、青梅線東中神駅から昭島駅までの線路北側では慢性的な交通渋滞が発生をしており、また、大規模物流施設の建設が計画をされていることから、さらなる渋滞の悪化も懸念されます。昭島市内における道路網の整備は急務であり、地元住民からの早期整備を望む声は極めて大きくなっています。
 そこで、昭島三・二・三号線及び昭島三・二・一一号線の今後の取組について伺い、私の一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 内山真吾議員の一般質問にお答えいたします。
 子供の体験活動についてでございます。
 可能性にあふれる子供たちの学びや経験を豊かにしていくことは、私たちの果たすべき最大の未来への投資でございます。
 全ての子供が、長い人生を歩む上で欠かせない大切な力を育めるよう、多彩な体験、経験ができる機会を創出していくことが必要です。
 都教育委員会が実施する体験活動は、多様な経験を通じまして、子供たちの豊かな心を育むことを目的とするものであって、こうした育ちを支える取組の一環です。
 庁内の連携をさらに強化し、子供に関わる政策課題への取組とこの事業を有機的につなげ、次代を担う子供たちの可能性を広げてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長、東京都技監及び福祉保健局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、子供の体験活動における取組についてでございますが、今年度の子供を笑顔にするプロジェクトの実施事例の中には、コロナ下における運動不足や体力低下を課題として、運動の楽しさを体感させた学校や、障害者理解に関する年間カリキュラムを作成し、事前学習の上、パラスポーツを体験し、振り返りを行う取組がございました。
 体験活動を行うに当たり、課題や狙い、期待する効果を明確にすることや、体験後の振り返り学習など、事前事後の取組を充実させることにより、体験の効果が高まったと考えております。
 来年度は、こうした取組事例の周知を図り、子供たちの豊かな心の育成に向けて、より事業効果が高まるよう取り組んでまいります。
 次に、採用選考の応募者増加に向けた取組についてでございますが、都教育委員会では、大学三年生での採用選考の一部前倒し受験を導入するとともに、合格発表を民間企業の内定式より早い九月下旬に前倒しすることで、学生の受験意欲を喚起してまいります。
 また、今年度、合格後二年以内に免許取得した場合に採用する社会人選考を新たに導入いたしましたが、来年度からは、選考の対象を四十歳以上から、第二新卒といわれる二十五歳まで引き下げ、受験者層の拡大を図ります。
 これらの取組により、学生や社会人等が教員を目指しやすい仕組みを整え、応募者の一層の増加を図ってまいります。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 昭島三・二・三号線外一路線についてでございますが、両路線とも、立川広域防災基地等へのアクセス性を高める重要な路線でございます。
 昭島三・二・三号線の用地取得率は一一%であり、今後は、国有地や都営住宅敷地など、残る用地の早期取得に努めますとともに、来年度、道路詳細設計に着手いたします。
 また、昭島三・二・一一号線の用地取得率は九九%であり、現在、JR青梅線との交差部の道路構造や施工方法について、関係機関と協議中でございます。
 今後とも、工事着手に向けた検討を着実に進めてまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、予期しない妊娠についてでございますが、都は、妊娠相談ほっとラインやチャットボットにより、妊娠や出産、避妊などの相談に対応してございます。
 これらの取組を周知するため、PR用のカードを作成し、保健所や福祉事務所のほか、高校、大学、ネットカフェなどで配布をしています。今後、ドラッグストア等での配布がさらに進むよう、薬局などの関係団体に一層の協力を求めてまいります。
 また、インターネット広告から誘導している相談先等を掲載したホームページについて、今後、デザインを親しみやすく工夫するなど、妊娠や出産等に関する情報をより分かりやすく得られるように取り組んでまいります。
 次に、産後間もない時期の母子への支援についてでございますが、産後間もない時期は、母子の心身が不安定なこともあり、その状況をきめ細かに把握する必要がございます。
 都は、とうきょうママパパ応援事業において、産後二週間及び一か月の二回、産婦に対する健康診査を行う区市町村を支援しています。
 自治体の中には、医療機関が実施する新生児の健康診査の際に、この事業を活用した産婦健診を併せて実施している例がございます。
 今後、こうした事例を区市町村に紹介するなど、より多くの自治体で、産後間もない時期の母子への支援が進むよう、働きかけを強化してまいります。
 次に、一時保護需要への対応についてでございますが、都は、児童虐待の増加に伴う一時保護需要に対応するため、新たな一時保護所の整備や婦人保護施設への保護委託の拡大などを進めてございます。
 来年度は、一時保護ケースの増加に緊急的に対応するため、児童福祉分野の知識や経験を有する事業者が、足立児童相談所の仮設一時保護所や民間の物件等を活用し、保護児童を受け入れます。
 児童の受入れに当たっては、個室対応を基本とするほか、通学を可能とするなど、個々の状況に応じたきめ細かな支援を実施いたします。
 こうした取組により、高まる一時保護需要に対応し、児童相談体制を一層強化してまいります。
 次に、児童養護施設等における子供の権利擁護についてでございます。
 都は、児童養護施設の学齢期の入所児童に対し、入所時等に子供の権利ノートを配布し、意見や希望をいえることを説明するほか、困ったときの主な相談窓口を紹介しています。また、権利ノートには、子供の権利擁護専門員への相談はがきを差し込んでございます。
 来年度は、児童の年齢や発達の状況に合わせて、よりきめ細かな周知を行うため、幼児や障害児に対する効果的な啓発方法を検討してまいります。
 また、施設に対しては、子供が意見を伝えるための仕組みである第三者委員や意見箱を一層有効に活用するよう働きかけるなど、年齢などを問わず、全ての子供が意見をいいやすい環境を整備してまいります。
 次に、ヤングケアラーへの支援についてでございます。
 都は今年度、ヤングケアラーを早期に把握するポイントや各関係機関の役割などを盛り込んだマニュアルを取りまとめます。
 来年度は、このマニュアルを活用して、児童福祉や教育など関係職員向けの合同研修や、新たに配置するコーディネーターへの専門研修を行うほか、各関係機関や区市町村等による協議会を設置し、支援策を検討するなど、多機関連携を強化いたします。
 また、ピアサポートや家事支援等を行う民間団体への補助も拡充するなど、地域におけるヤングケアラーへの支援を一層進めてまいります。
 最後に、健康増進法における喫煙目的施設についてでございますが、喫煙目的施設は、シガーバー等の喫煙場所の提供を主目的とする施設であり、都は、ホームページやリーフレット等で、国が定める要件を事業者や関係団体に周知していますが、要件が分かりづらいとの意見が寄せられてございます。
 このため、国に対し、喫煙目的施設の明確な定義や基準、証明書類等を示すよう、繰り返し提案要求してございますほか、九都県市と連携した要望等も行っており、保健所設置区市の意見も踏まえ、改めて国に見解を求めてまいります。
 また、今月末にはリーフレットを改定し、一般的な居酒屋等は喫煙目的施設に該当しないことを飲食店等に啓発するなど、受動喫煙対策を一層推進してまいります。

ページ先頭に戻る