令和五年東京都議会会議録第四号

   午後二時五十分開議

○議長(三宅しげき君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 一番北口つよし君。
   〔一番北口つよし君登壇〕

○一番(北口つよし君) 初めに、環境政策について質問します。
 二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギーの活用は必須です。そして、数ある再エネの中でも唯一の地球外のエネルギーである太陽光発電を活用することは大変有効です。この分野の技術革新は日進月歩であり、今後も発電効率の向上や薄型、軽量化、信頼性の向上はさらに進むと見込まれます。
 一方、太陽光発電は天気によって発電量が変化するため、そのエネルギーの調整役として長期貯蔵にも優れた水素の活用が期待されています。また、この水素は、次世代のエネルギー源として一部バスや乗用車などで実用化されていますが、残念ながら化石燃料からつくられるグレー水素が主流です。
 このため、私は、製造時もCO2を出さない太陽光発電などの再エネ由来によるグリーン水素の活用を図ることが大変重要であると昨年の一般質問でも主張したところです。
 これに対し、都は、来年度予算案に新規に水素製造の実機実装支援事業などを計上しており、評価しています。
 こうした事業を通じてグリーン水素を普及させ、将来的にはモビリティー分野をはじめ、様々な分野に活用を広げていくことが重要と考えます。
 そこで、都は、民間によるグリーン水素の生成、活用を後押しするとともに、都も普及に向けてグリーン水素の活用を積極的に進めるべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、ゼロエミ推進策の一つであるEVの普及に重要な充電能力の強化について質問します。
 現在、日本で主流の急速充電器は五十キロワットであり、利用者が占有するのを避けるため、一回の充電時間は三十分に制限されることが多く、条件がよくても二十五キロワットアワーしか充電できません。このため、小型の軽自動車EVなどでは十分な充電容量を確保できるものの、大型のバッテリーを積む普通車EVには能力不足です。
 例えば、高速道路などで遠出を考えた場合、一度充電が減ってしまうと三十分の充電では百キロから百五十キロ程度しか走行できないことになります。
 一方、世界では、より高出力の充電器の設置が急速に進んでいます。日本でも高出力の充電器に対応する車種が出始めており、今後は少なくとも出力百キロワットを超える超急速充電器の整備が必要です。
 世界的なEVシフトも見据え、事業者による高出力の充電インフラの整備をしっかりと後押しすべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 次に、家庭の省エネ対策について質問します。
 家庭でのCO2削減を進めるには、住宅の断熱性能の向上とともに、家電の省エネ化が効果的です。このため、都議会公明党は、省エネ家電への買換えを促す東京ゼロエミポイント事業の拡充と継続を要望してまいりました。
 都は、要望を踏まえ、昨年七月にはLED照明機器を新たに対象とするなど、都民がより取り組みやすい制度への充実を図るとともに、来年度も事業が継続して実施されることになりました。
 そこで、これまでの成果と今後のさらなる省エネ家電への買換え促進策について、都の見解を求めます。
 次に、生物多様性の保全について質問します。
 東京には、山間部から島しょ部、区部も含めて多様な生態系があり、野生生物が暮らしています。しかし、市街地の進展や外来種による捕食など様々な要因により生物が減少し、絶滅危惧種が増えているのが現状です。
 私の地元葛飾区の都立水元公園も、緑豊かで水郷の景観に優れる公園です。公園の前面に広がる小合溜は、生物多様性の観点から環境省の重要湿地にも選定され、都内でも有数の自然環境を誇ります。また、隣の池には、都の天然記念物で絶滅が危惧されるオニバスなど希少な水生植物も自生しています。
 しかし、環境保護団体の方の話によれば、近年はアカミミガメやアメリカザリガニなどの外来種により貴重な自然環境が脅かされているとのことです。
 そこで、都内の生物多様性の保全に向け、希少な野生生物を守るために区市町村や各種団体とも連携をして積極的に外来種対策を進めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、水害対策について質問します。
 ゼロメートル地帯が広がる東部低地帯において、水害対策は大変重要です。都では、河川の堤防整備をはじめ、様々なハード面での整備事業を進めていますが、併せて水害に対する自助、共助の備えを整えることも重要です。
 都は、江東五区と連携し、各家庭に水害リスク等を記載した診断書を直接通知する新しい事業、「我が家・我が事」プロジェクトの検討を開始しました。今年度は、そのモデル事業として、地元葛飾区の二町会をはじめ、東部低地帯の各区で説明会が実施されています。
 私も地元の説明会に参加しましたが、この診断書には、その地域の水害リスクの有無、推奨する避難行動、備蓄品リストなど各家庭のリスクに合わせた取組が記載されており、参加された町会の方々も被害のリスクを真剣に聞いておられました。
 水害時に避難行動を取らない多くの住民は、水害リスクを我が事として実感できていないという調査もあることから、都と関係区の連携によるこの取組は大変有効と考えます。
 そこで、今後は、浸水リスクの高いエリアなどに対象を拡大して実施するとともに、ネットを活用する若い世代などにも本事業を積極的に発信していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 いざ水害が発生した場合、垂直避難場所の確保も重要です。国と都は、令和二年十二月に災害に強い「首都」東京形成ビジョンを策定し、高台まちづくりの方策の一つとして、既存建物等を活用した緊急時の垂直避難先の確保についても示しています。
 葛飾区では、本ビジョンの下、区内全域をモデル地区とし、垂直避難場所の確保に向けて既存マンションなどに対する二十三区初の補助制度を構築いたしました。
 この制度は、大規模水害発生時に、水が引くまでの間、既存マンションや商業施設等で避難生活が送れるよう、浸水想定以上の階への電気設備の移設費用や災害備蓄倉庫、避難スペースなどの整備費用を区が補助するものです。
 そこで、都も、マンションや商業施設など既存の建物を活用した緊急時の垂直避難先の確保に向けて率先して取り組む必要があると考えますが、都の見解を求めます。
 次に、障害者スポーツの振興について質問します。
 障害者の社会進出のきっかけとして、スポーツの果たす役割は重要です。
 例えば、葛飾区においては、毎年フロアホッケーの大会が開催されています。フロアホッケーは主に知的障害がある方々が健常者と一緒に汗を流せるスポーツです。
 障害の有無に関係なく障害者と健常者が共にプレーをする中で、障害者は自信を深め、健常者はより障害を理解します。
 大会関係者の一人は、障害があるお子さんは内向的になる傾向がある、ご家族も自立を諦めてしまっているケースが多い、こうしたスポーツを通して体を動かしながら、ご本人とご家族の意識を前向きに改革していくことが重要だと語っておりました。こうした視点は、真の共生社会の実現に向けてとても大切だと考えます。
 そこで、障害者と健常者が一緒にスポーツの楽しさや魅力を味わい、交流できるスポーツ大会を開催すべきと考えますが、今後の都の取組について見解を求めます。
 次に、私立学校のデジタル化推進について質問します。
 国のGIGAスクール構想を契機に、近年、急速に学校のデジタル化が進み、一人一台端末の時代となりました。都内の私立学校にも、都は、タブレットやパソコン等、ハード整備に関する補助を実施しています。
 一方で、地域の学校関係者からは、端末を使用した効果的な授業方法や児童生徒の端末操作をサポートする支援員配置などのサポートを望む声を聞いております。
 そこで、私立学校のデジタル環境整備において、支援員配置など、ソフト面での支援も必要と考えますが、都の見解を求めます。
 次に、教員の確保に向けた中途退職者の復帰支援と教育実習生の受入れに対する支援について質問します。
 教員不足の解消に当たっては、多様な層から教員を目指せる仕組みが重要であり、都議会公明党は、昨年の代表質問において、即戦力となる中途退職者の復帰を後押しすべきと求めたところです。これを受け、都教育委員会は、来年度からカムバック採用を新設するとのことですが、中途退職者が再度教職を目指す場合、教壇を降りてから月日が経過していることもあり、不安を覚えるケースが少なくないと考えます。
 そこで、復帰を目指す人材に対して、復帰条件の緩和とともに、不安を取り除くための支援をすべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 また、新たに教員を目指す学生が初めて教育現場に触れる機会が教育実習です。実習では、学生が子供や現役教員と接し有意義な経験を得ることで、教員になりたいとの思いをより強く持てるようにすることが大切です。昨年の委員会質疑でも、教員確保につながる教育実習生への多様な支援を都に求めたところです。
 そこで、教育実習生の受入れに対しても、さらなる支援をすべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 最後に、児童生徒の心のケアについて質問します。
 コロナ禍で多くの児童生徒が問題を抱えている可能性が指摘されています。
 都議会公明党はこれまで、潜在的なリスクを抱える児童生徒を教員が見過ごすことのないように支援の必要性を訴えてきました。
 これに対し、都教育委員会は昨年度、都立高校をモデル校として、生徒が毎日自分のスマートフォン等から心身の状況を簡単に入力し、教員が確認するシステムの実証研究を行っています。こうしたシステムの活用で、児童生徒の状況の変化をより早く把握し、必要な支援につなげることが期待されます。
 そこで、実証研究の成果を踏まえ、こうしたシステムを早期に全都立高校に導入すべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 北口つよし議員の一般質問にお答えいたします。
 電気自動車への充電能力の強化についてのお尋ねでした。
 脱炭素化に向けまして、世界各国はEVの開発にしのぎを削り、一度の充電で走行できる距離は大幅に伸びております。これに合わせまして、充電のスピードを高める技術も日進月歩で進み、その設置箇所も増えています。
 世界に遅れることなく充電能力の高い機器を増やすことは、EVの普及に向けた重要テーマの一つでございます。身近な様々な場所に超急速で充電のできるスポットを広げるため、事業者の取組を強力に後押しをするのは不可欠でございます。
 そこで、都は、充電のスピードを飛躍的に高めた機器の設置に対する支援を大幅に充実をいたします。また、これを整備する事業者に対しまして、充電機器の維持管理や電力の使用に係るコストの軽減につながるサポートを拡充することで、東京にふさわしい利便性の高い充電のインフラを速やかにつくり上げてまいります。
 こうした取組を通じまして、EVの普及をさらに加速し、脱炭素社会の実現をしっかりと進めてまいります。
 なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、中途退職した教員の復帰支援についてでございますが、都教育委員会では、介護等で中途退職した都の公立学校教員が改めて教員を目指す場合、一定の要件に基づき、一次選考を全て免除するカムバック採用を新たに開始いたします。
 さらに、教員復帰者やいわゆるペーパーティーチャー向けに、大学等と連携し模擬授業等の実践的な講習を実施するなど、教育現場から離れていた人も安心して着任できる仕組みを整えます。
 これらの取組により、経験者を含む多様な層から着実に教員確保を図ってまいります。
 次に、教育実習生の受入れに対する支援についてでございますが、教育実習は、学生が実地体験を通して教員として必要な知識や心構えを学ぶとともに、教員志望を固める重要な機会でございます。
 このため、都教育委員会は、実習生への接し方のポイントを各学校に周知するほか、受入れを行う区市町村教育委員会に対し、実習生が授業準備に使う端末等や、担当教員が実習生の指導に専念するためのサポート人材に係る経費を補助するモデル事業を新たに実施いたします。
 これらにより、教育実習生がより意義のある経験ができるよう、各学校を支援してまいります。
 次に、都立高校における生徒の心のケアについてでございますが、都教育委員会は昨年度、都立高校の生徒の心身の変化を把握するためのシステムの実証研究を行いました。その結果、生徒からは教員に相談したいという意思を伝えやすくなったなどの感想が、教員からは必要な支援を迅速に行うことができるようになったなどの報告がございました。
 これらの成果を踏まえ、本年三月より、全ての都立高校でこのシステムを活用できるようにし、相談体制の一層の充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) グリーン水素の製造と活用についてのご質問にお答えいたします。
 東京でゼロエミッションを実現するため、再生可能エネルギーにより水素を生産し、活用する取組を進めることは重要でございます。
 このため、都は来年度、プラントメーカーの提案に基づき、工場などの敷地の中で水素の生産から活用まで一体的に行う民間の取組を後押しいたします。
 また、都有地において、都がグリーン水素を最先端の技術を用い生産する取組を開始いたします。
 さらに、都は、グリーン水素の製造等で実績のある山梨県と協定を結んでおり、来年度、同県で生産された水素の活用を開始いたします。
 これらによりまして、グリーン水素の普及拡大を適切に進めてまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、省エネ家電への買換え促進についてでございますが、都内の部門別エネルギー消費量は、家庭部門が唯一増加しており、その対策は喫緊の課題でございます。
 そのため、都は、省エネとなる家電への買換えを促す東京ゼロエミポイント事業を令和元年から実施し、拡充を図ってまいりました。
 昨年度同期比で四割増の申請を受け付けており、累計で約六十五万台と着実に買換えが進んでございます。
 家庭における省エネ対策をさらに推進するため、今後、対象機器に応じた付与ポイントをおおむね二割引き上げ、家電買換えを強力に後押ししてまいります。
 こうした取組をHTT普及啓発とも連動させ、広く都民に活用を促すことで、脱炭素で省エネな生活を実現してまいります。
 次に、生物多様性保全に向けた外来種対策についてでございますが、希少種の保全を図るためには、生態系被害を及ぼす外来種の対策を多様な主体と連携して進めることが重要でございます。
 都はこれまで、対策強化に向け、区市町村やNPOへの被害状況調査や専門家ヒアリングなどを実施してございます。
 来年度、優先的対策種を選定し、効果的な対策の在り方をまとめた方針策定に着手してまいります。これに先行し、特に対策が急務のアカミミガメとアメリカザリガニについて、普及啓発や実務者向け手引の作成に取り組んでまいります。
 区市町村や環境団体等と共に対策を進めて希少種保全につなげ、良好な生物多様性の保全と回復を図ってまいります。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 関係区と連携した水害に関する普及啓発についてでございますが、風水害時に住民の適切な避難行動を促すためには、あらかじめ水害リスク等を分かりやすく周知する必要がございます。
 都は今年度、居住地ごとの水害リスクや推奨される避難行動等を診断書としてまとめ、参加者に配布する事業を実施いたしました。アンケートでも多くの参加者が、自宅周辺にここまでリスクがあるとは思わなかったと回答しており、自身の水害リスクを認識する契機となってございます。
 来年度は、浸水リスクの高い地域を対象に、診断書を各戸配布する事業を新たに実施いたします。その際、若い世代にも関心を持っていただけるよう、発信方法を工夫いたします。
 こうした取組を通じまして、普及啓発の実効性を一層高めてまいります。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 垂直避難についてでございます。
 東部低地帯での水害への備えとして、都では都有施設の活用、地元自治体では既存建物等の活用による緊急時の垂直避難先の確保に取り組んでおります。
 各区では、商業施設などと避難者受入れに係る協定を締結しているほか、葛飾区では、建物の新設、改修時における退避空間整備への独自の補助を開始しております。
 一方、国が昨年度設けた退避空間整備に対する補助制度は、規模要件が厳しく活用が進んでおりませんが、都から国へ補助要件の緩和を求めた結果、来年度より要件緩和が実現することとなっております。
 今後とも、さらなる垂直避難先の確保に向け、取り組んでまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、スポーツを通じた交流機会の提供についてでございますが、障害のある人とない人が共にスポーツをする中で、お互いを理解し尊重し合うことは重要でございます。
 都は、東京二〇二〇大会のレガシーとして、誰もが参加できるボッチャ大会を開催してまいりました。全国大会の出場権が与えられるこの大会は、真剣勝負の場であり、貴重な交流の機会となっております。
 また、東京都障害者スポーツ大会におきましても、障害のある人とない人が共にスポーツに親しみ、競い合う競技を行っております。来年度も新たな競技を実施することで、参加者の裾野拡大につなげ、相互理解を図ってまいります。
 今後も、こうした取組により、交流機会の創出に努め、スポーツを通じた共生社会の実現を目指してまいります。
 次に、私立学校のデジタル環境整備についてでございます。
 これからの時代に求められる多様な学びを提供するためには、デジタル機器の導入に係るハード面での支援とともに、機器を活用した教育を推進するためのソフト面での支援が重要でございます。
 そのため、これまで行ってきた私立学校デジタル教育環境整備費補助事業におきまして、教育用端末や電子黒板、校内無線LAN等の整備に係る補助に加え、来年度からは、機器の活用に際し専門的な知見を持つアドバイザー等の助言支援や研修などを受けられるよう、補助対象を拡充いたします。
 こうした取組によりまして、私立学校のデジタル教育環境の充実を一層後押ししてまいります。

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