令和五年東京都議会会議録第四号

○副議長(本橋ひろたか君) 十二番平けいしょう君。
   〔十二番平けいしょう君登壇〕

○十二番(平けいしょう君) 千代田区は、首都のど真ん中でビル群が存在する一方、風情あふれたまち並みが広がっています。
 皇居を中心として、古書店街や伝統文化とアニメなどの現代文化が融合する神田地区、大学や高校が多く、外堀や城壁跡など江戸の歴史も感じながら大規模な再開発が進む飯田橋地区、歴史あるお屋敷が立ち並んでいた閑静な住宅街の番町地区、同じ千代田区内でも多様な特色がありながら、粋な人々によって、町会や祭礼など、歴史と伝統が守られています。
 その千代田に存在する都立日比谷公園も、多くの人々に愛され、守られてきた歴史ある場所です。
 日比谷公園の大音楽堂について、再整備に着手するとの知事の施政方針表明がありました。大音楽堂は、開設から百年を迎え、様々なポップカルチャーの舞台として全国的に知名度が高く、観光や経済の活性化につながる可能性のある施設です。
 日比谷公園大音楽堂について、歴史や伝統を守りつつ、時代のニーズに応えながら、この先も多くの人々から愛される施設とすべく、再整備を進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 日比谷公園内には、かつて飼い主のいない猫が約八十匹存在していましたが、ちよだニャンとなる会によって、昨年一月に、最後の猫三頭が保護され、現在はゼロとなりました。
 この三頭のうち、一頭は三か月後に譲渡、もう一頭はがんが見つかり闘病の末に同年十一月にみとられ、もう一頭は会で保有する秋葉原のシェルターで余生を過ごしています。
 知事が殺処分ゼロを公約に掲げ、平成二十八年に犬、平成三十年度に猫の殺処分ゼロを実現し、今なおゼロを継続していることに称賛の声が広がっています。殺処分ゼロの継続には、地域に根差して動物の引取り、譲渡を行っている方々の献身的な動きとその方々を支える都の施策が重要です。
 都が令和二年度から実施する地域における動物の相談支援体制の整備事業は、各区市のボランティア団体の後押しとなり、飼育継続困難、多頭飼育崩壊、負傷猫の保護、譲渡につながったと聞いています。
 しかし、昨年度、この事業が三区にとどまっていると知り、私は予算特別委員会において、多くの区市町村が事業を活用できるよう取り組むことを都へ要望いたしました。
 その結果、今年度実施している自治体は十三区市と大幅に増えましたが、本事業が多くの区市町村で活用されるよう、さらに取組を進めるべきと考えますが、知事の見解、都の見解を伺います。
 コロナ禍、ロシアのウクライナへの侵攻、円安による消費者物価の高騰は、ボランティアの方々も直撃しました。
 ペットフードが一〇から二〇%値上げするほか、飼育ケージ、ペットシーツ等の消耗品も価格が上がっています。また、シェルターの家賃や光熱費、輸送費、医療費など、引き取った動物を譲渡するまでにボランティアが負担する経費は多岐にわたります。
 そこで、動物の引取り譲渡に貢献しているボランティア団体の負担を軽減すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 都は来年度、前年を上回る十三億円の予算案を計上、結婚支援の施策を充実させ、出会いのきっかけをつくる交流イベント等を予定しています。
 交流イベントでは、美術館やスポーツ施設、水上バスなど、都の資産を活用することで、よりイベントの魅力が高まり、結婚に踏み出せない人が一歩を踏み出すことにつながると考えます。知事の見解を伺います。
 昨年、都民、国民が歓喜に沸いたスポーツの祭典がありました。それは、ブラボーの言葉とともに喜びを分かち合い、日本が一つになったサッカーワールドカップ。選手の活躍は、多くの子供たちに勇気と感動を与え、子供たちが未来に希望を持ちながら、豊かで健康な人生を送るためのメッセージとなりました。
 都の調査によると、スポーツへの関心が高まるのに比例し、スポーツを週に一回以上行う十八歳以上の大人は、平成十九年の三九・二%から令和四年の六五・九%へと上昇傾向にあります。
 その一方で、これからの社会を担う子供たちの状況に目を向けると、スポーツ庁の調査によれば、小中学生は男女とも体力の数値低下が見受けられます。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、運動時間の減少やスクリーンタイムの増加が原因として挙げられます。
 こうした中、子供たちがスポーツを身近に感じられる環境を整えていくことは重要と考えます。
 次世代を担う子供たちがスポーツに親しみ、健やかに成長できるよう、子供たちのためのスポーツ施策を展開していくことが重要と考えますが、知事の見解を伺います。
 都教育委員会は、科学的トレーニングを取り入れながら競技力を高めるため、都立高校の五十六部の部活動をスポーツサイエンスプロモーションクラブに指定して強化を図り、関東大会や全国大会等への出場機会を得ています。
 現在、指定している五十六部のうち、二十四部にアスレチックトレーナーなどスペシャリストを派遣して指導していると伺いました。
 さらに生徒の競技力を高めていくためには、指定する部活動の支援を充実させていくべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
 兵庫県生まれの小池知事、私も同じ兵庫県で生まれ育ちましたが、東京の魅力に引かれ、十四歳のときに夢を抱き、情熱を持って一人で東京へ上京いたしました。その経験から、頑張る子供たちを応援したいと強く思っています。
 情熱をかけてスポーツに取り組み、日の丸を背負い、世界大会へと出場を果たす部活動も存在します。
 関東第一高校のチアリーディング部は、本年二月三日から五日にアメリカのフロリダ州にて行われた世界大会へ日本代表として出場、見事優勝しました。こうした機会は、生徒の将来にとって大変貴重な経験ができる場であり、グローバル化が進む現代で、世界に羽ばたき活躍する人材の育成に重要であると考えます。
 しかし、努力の末、世界大会への切符を手にしても、家庭の経済状況によっては世界の舞台に立てない可能性もあります。所得階層によらず、あらゆる家庭の子供が夢や希望を持って活動を行えるよう、都には後押しをしていただきたいと思います。
 そこで、生徒に貴重な海外経験を提供する取組を行っている私立学校に対しては相応の支援が必要と考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、子供からシニアまで、あらゆる世代と文化が融合するまち、秋葉原と神田の客引き行為等防止パトロールについてです。
 安全で安心なまちをつくるために、秋葉原駅周辺及び神田駅周辺では、毎月、地域の皆さん、事業者、樋口千代田区長や万世橋警察署長をはじめ、多くの署員の皆さんが熱心にパトロールに取り組まれています。その結果、客引き行為は一時期より減少傾向にあります。
 私も参加させていただいておりますが、寒さが厳しい夜も、雨の降る夜もパトロールを続け、尽力される皆さんの姿に感動し、ここで手を緩めてはならぬと強く感じています。
 安心・安全で快適なまちの実現を目指し、客引きや迷惑行為の問題解決に向けて、組織が幅広く連帯、連携をしながら、社会を挙げた取組を粘り強く継続していくべきと考えますが、警視総監の見解を伺います。
 多くの中小企業が集まる千代田、次に、中小企業の事業承継について伺います。
 ガソリン車から電気自動車への転換をはじめとして、技術革新の大きな流れの中で、中小企業が持続的な成長を続けていくには、新たな事業展開に挑戦していくことが必要です。
 しかし、経営資源に限りのある中小企業が、今ある技術がどのような分野で活用できるのか、また、情報が不足していることや、それを支える人材の確保が難しいことなどの理由によって、なかなか進まないのが現状です。
 その結果、後継者の不在や取引先の減少などから、自分の代で会社を閉じてしまう企業もあります。
 私も父が事業を展開しており、兄二人も私も事業を継承せず、私の弟が引き継いだ経験があるため、中小企業の存続の大変さはよく理解をしています。
 中小企業が長い年月をかけて培ってきた高い技術力は、一度失われたら戻すことが難しく、事業を着実に承継し、技術という武器を生かして、さらなる発展を目指すためには、行政がしっかりとサポートしていく必要があります。
 そこで、優れた技術を途切れさせることなく、より一層磨きをかけて、新たな事業分野への展開を図り、円滑な承継を目指す中小企業の取組を後押しすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、グリーントランスフォーメーションについて伺います。
 今月閣議決定された国のGX実現に向けた基本方針では、今後十年間で百五十兆円の官民投資が必要とされています。
 脱炭素目標の実現に向けた膨大な投資を財政資金だけで賄うことは困難であり、民間資金をうまく引き出しながら取組を進めていくことが重要です。
 都はこれまでも、再生可能エネルギーの導入拡大などの政策課題の解決に官民連携ファンドの手法を活用してきた実績があります。
 さらに、来年度予算案に新たに盛り込まれた創エネ・蓄エネ推進ファンドは、都が全体の四〇%を占める二十億円を出資し、GXをこれまで以上に後押しする上で重要な施策となり得ます。
 蓄電池という新しい分野への民間投資を促進し、脱炭素社会の実現をさらに加速させていくためにも、ファンドの設置目的に照らした実効性の担保に留意して事業を進めていくことが重要と考えますが、最後に宮坂副知事の見解を伺いまして、私の一般質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 平けいしょう議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、日比谷公園大音楽堂の再整備についてであります。
 日比谷公園大音楽堂、いわゆる野音でございますが、大正十二年に開設、今年で百年を迎えます。都内で唯一の屋外にある大規模な音楽堂となっております。
 日比谷公園の豊かな緑に囲まれた自由で開放的な空間が野音の大きな魅力で、これまで幅広いジャンルの音楽において、数々の伝説的なコンサートが行われてまいりました。
 こうした魅力と歴史を継承しながら、これからの百年にふさわしい野音へと、民間の知恵も取り入れながらリニューアルしてまいります。
 音楽の殿堂として歴史を刻んできた野音をこれからも都民やアーティストから愛される文化の発信拠点として再生、新たな歴史を生み出してまいります。
 結婚支援についてであります。
 都は、ポータルサイト、TOKYOふたりSTORYでの情報提供やオリジナル婚姻届の配布など、結婚を希望する方を支援してまいりました。
 現在、都の出生数は戦後最低となっておりまして、少子化問題は待ったなしです。その一因に婚姻数の減少があるため、これまでにない大胆な政策展開をすることといたしました。
 来年度、AIによるマッチングや交流イベントによる出会いの機会の創出など、トータルな支援を開始いたします。
 美術鑑賞ツアーやスポーツ体験、クルージングなど、参加者同士が趣味を通じて交流できるイベントを、都の施設の魅力を最大限活用しながら開催してまいります。
 これらを通じて、より一層の結婚機運の醸成を図り、結婚を希望する方がその一歩を踏み出せるよう全力で取り組んでまいります。
 次に、子供のためのスポーツ施策の展開につきまして、スポーツを通じて多くを学び、生涯にわたって健康で過ごすことができるよう、子供がスポーツに取り組む習慣を身につけることは重要です。
 東京で大規模な国際大会が開催される二〇二五年には、子供たちが世界から集うアスリートのパフォーマンスを目の当たりにし、夢と希望に触れ、学び、成長する機会が訪れます。
 先般公表しましたビジョン二〇二五では、子供たちが夢を見るを柱の一つにして、大会に合わせて競技観戦や競技体験など、スポーツのすばらしさを感じられる機会を提供します。
 また、子供たちになじみのある自転車のイベントGRAND CYCLE TOKYO等におきまして、スポーツの楽しさを体験できる場を創出してまいります。
 これらをはじめ、明日をつくる子供のための施策を積極的に推し進め、スポーツの力で子供が輝く、笑顔にあふれた社会を実現してまいります。
 最後に、私立学校が行う海外交流等の支援についてであります。
 将来を担う国際感覚豊かな人材の育成のためには、建学の精神に基づく特色ある教育を行っている私立学校の役割は重要です。
 都ではこれまでも、グローバル人材の育成という観点から、私立高校における生徒の海外留学や教員の海外派遣、外国語指導助手の活用など学校の取組に対して、様々な支援を行ってまいりました。
 グローバル化が進む中では、海外交流、海外留学、これを一層促進しまして、異文化体験の機会を創出することが重要です。
 そのため、世界で活躍できる人材を東京から輩出できますよう、各私立学校のニーズや取組を幅広く調査し、支援策をしっかり検討をいたします。
 なお、その他の質問につきましては、副知事、警視総監、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔副知事宮坂学君登壇〕

○副知事(宮坂学君) 創エネ・蓄エネ推進ファンドについてでございますが、世界では、グリーントランスフォーメーション、GXに向けた投資競争が激化しており、その成否は企業のみならず都市の競争力にも直結します。
 また、ウクライナ情勢などを契機に、エネルギー安全保障の問題が再認識されています。脱炭素化とエネルギーの安定確保の両立には、再エネの導入拡大が重要であり、そのためには、電力系統の安定化に資する蓄電池設備等への投資を加速させていくことが不可欠です。
 そこで、来年度、都が二十億円を出資して官民連携ファンドを創設し、蓄電池ビジネスのファイナンスモデルの確立を目指してまいります。ファンドの組成に当たっては、投資や会計等の専門家による審査を行い、政策目的に合致する運営事業者を選定します。
 こうした取組により、脱炭素社会へのシフトを金融の力で一層加速させてまいります。
   〔警視総監小島裕史君登壇〕

○警視総監(小島裕史君) 安心・安全で快適なまちの実現に向けた取組についてでありますが、警視庁では健全な盛り場環境の維持に向け、各地域の状況に応じ、盛り場環境を害する犯罪の取締りや関係機関等と連携した諸対策を推進しているところであります。
 こうした中、ご指摘の秋葉原地区においては、メイド姿の女性による執拗な客引きやメイドカフェを仮装した違法風俗店等の取締りに加え、千代田区や地域住民、地元飲食店等事業者と連携した合同パトロール、広報啓発活動等を実施した結果、違法な客引きが大幅に減少するなど、一定の成果が見られたところであります。
 当庁では、盛り場の環境浄化に向けた取組をより一層推進してまいります。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 都立高校におけるスポーツサイエンスプロモーションクラブについてでございますが、都教育委員会は、スポーツサイエンスプロモーションクラブに指定した部活動に対し、専門家の配置や練習環境の整備など、科学的なトレーニングが充実するよう支援するとともに、大会等への遠征費の補助を行っております。
 生徒からは、管理栄養士の指導で体調管理の在り方を学んだ、ボールの回転数を分析するマシンを使うことで、より速く投球できるようになったなどの声が寄せられています。
 今後は、フィジカルトレーナーやスポーツ心理士などの配置を今年度の二十四部から五十六部の部活動に拡充して、生徒のさらなる競技力向上を図ってまいります。
   〔福祉保健局健康危機管理担当局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(佐藤智秀君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地域における動物の相談支援体制整備事業についてでございます。
 都は令和二年度から、ボランティア団体等と連携して、地域で動物に係る問題を解決する仕組みを構築する区市町村を支援しております。
 今年度は、この事業に取り組んでいる自治体の具体的な事例を紹介するリーフレットを作成し、区市町村に改めて周知するとともに、個別にきめ細かく助言するなど働きかけた結果、事業を実施する自治体数は、昨年度の三から十三に拡大をしております。
 今後、未実施の区市町村にヒアリングを行い、事業の活用を積極的に促すなど、より多くの区市町村が動物の相談支援体制を構築できるよう取り組んでまいります。
 続いて、動物愛護ボランティア団体への支援についてでございます。
 人と動物との調和の取れた共生社会を実現するには、区市町村やボランティアなど多くの関係者が互いに連携協力して取り組んでいく必要がございます。
 このため、都は、動物の飼養が困難となった飼い主への助言や、地域住民を主体とした飼い主のいない猫対策などの取組をボランティアと協力して行う区市町村を包括補助で支援をしております。
 今後、区市町村を通じ、ボランティア団体の活動内容や課題のほか、譲渡会の経費や保護した動物の医療費などの状況を把握し、ボランティア団体の負担軽減に向けた支援策を検討してまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 事業承継に向けた効果的な支援についてのご質問にお答えいたします。
 中小企業が新たな事業展開を進めることで、これを円滑な事業承継に結びつけることは重要でございます。
 都は、地域の経済団体と連携し、都内に拠点を設け、経営相談や現場への専門家派遣により助言を行い、事業承継を後押ししてまいりました。
 来年度は、事業承継をスムーズに進めるため、新たな事業分野への進出に取り組む会社に対し、必要な技術の転用や設備の導入に向けた支援を開始いたします。
 具体的には、経済団体の協力の下、区部と多摩に拠点を増やし、これらを通じ技術開発や設備投資への助成を行います。
 また、経営や技術の面で高度な知識と経験を持つ人材の確保もサポートいたします。
 これらによりまして、事業承継を支援してまいります。

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