令和五年東京都議会会議録第四号

○議長(三宅しげき君) 五十四番須山たかし君。
   〔五十四番須山たかし君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十四番(須山たかし君) ウクライナ侵攻から一年ということでございます。一日も早い平和の回復を願うとともに、平和や人権というものはやはり政治がつくっていくこと、そのことを強く決意を改めまして、質問に入らせていただきます。
 「未来の東京」戦略二〇二三などを見ると、東京都として多摩振興に力を入れようとしているように見受けられました。
 多摩地域に育ち、暮らしている一都民としても、また、多摩地域選出の議員としても期待をすることですし、例えばラジオでも、今年になって多摩を盛り上げる、そういった番組ができたりと、多摩地域の活性化がだんだんと進んできているのかなと感じております。
 知事の施政方針でも多摩振興に触れていただいていましたし、各会派の代表質問、一般質問でも多くの方が取り上げられておりました。
 そこでまず、改めて多摩地域の振興に向けた知事の基本姿勢を伺います。
 昨年十月に東京たま未来メッセが八王子にできました。地元の皆様にも様々ご活用いただいておりますし、産業交流拠点として、MICEの開催拠点として、とてもいい施設ができました。
 先日も東京都MICEシンポジウム二〇二三が開催され、早稲田大学リサーチイノベーションセンターの稲田修一教授や慶應義塾大学メディアデザイン研究科、南澤孝太教授などが講演をされて、コロナ禍やDXを踏まえ、デジタル技術やメタバースを活用することにより、MICEの誘致活動を進めていくことの重要性をお話しされておりました。
 中核となる拠点としてのたま未来メッセと、それをより一層活用するための技術の活用はとても重要だと考えますが、MICE誘致活動において、デジタル技術やメタバースを活用し、どのように進めていくのかをお聞きします。
 現在、八王子市と立川市が多摩ビジネスイベンツ重点支援エリアとして指定されております。その中で、観光財団や東京都から様々なご支援をいただいております。この指定が二〇二五年度までとなっておりますが、地元からはその後どうなるのかといった声が聞かれました。
 多摩振興において、大切な拠点として動き出しているエリアですので、今後とも力を入れていただきたいと考えておりますが、所見を伺います。
 婚活について、施政方針でも挙げられたように、婚活が目玉政策の一つと見受けられました。
 結婚したい人が結婚できる環境をつくることはとても大切なことだと考えますが、一方で行政が個人の結婚や出産等にどこまで口を出すのかとも思ってしまいます。そもそも結婚をしたい人にとっては、マッチングが必要なのではなく、収入や将来への不安が課題として挙げられるのではないでしょうか。
 例えば、内閣府の調査でも、結婚しない理由の一位は適当な相手に巡り会わないからとなっておりますが、その具体的な対策に関しては男女ともに、雇用対策をもって安定した雇用機会を提供するが最も大きく挙げられており、次いで男性では、賃金を上げて安定した家計を営めるよう支援する、女性では、夫婦が共に働き続けられるような職場環境の充実が挙げられております。
 今回、マッチング事業に約九千万円という額が予算では計上されておりますが、これで課題が解決できるのかという声も聞こえております。
 そこで、結婚支援マッチング事業の考え方と狙いについて伺います。
 とはいえ、少子化対策で婚活事業を行うということは、現行の法制度の中では一定の理解はできます。また、東京都の少子化対策は様々行っていただいていることは、我が会派の代表質問での答弁でもあったとおりですし、そこに関しては評価をいたします。
 少子化の課題として結婚が挙げられるのであれば、私は婚外子等の問題の解決も必要になってくると考えます。
 よくフランスでは、婚外子を認めて少子化対策につながったといわれておりますが、家族というものをより広く捉えていくことが東京都として取る施策として求められるのではないでしょうか。
 そこでまず、例えば昨年制定されたパートナーシップ宣誓制度について、子供の視点を踏まえ、ファミリーシップも明確に入れ込む必要があると考えますが、所見を伺います。
 チルドレンファースト、人権について伺います。
 二〇二〇東京大会にはたくさんのレガシーがあるといわれております。その中で、私は、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例、いわゆる人権尊重条例こそが東京大会のレガシーであると考えます。
 オリ・パラに関しては、私はコロナ禍での開催をするべきではないという立場でありました。しかし、いかなる種類の差別も許されないというオリンピック憲章における人権意識の下、性的マイノリティーや外国人にも触れたこの条例を東京都が制定をしたということは非常に意味のあることだと考えますし、我々が求めてきたパートナーシップ制度の実現にもつながりました。
 そこでまず、この条例の重みに関して、改めて知事の所見を伺います。
 未来への投資、チルドレンファーストとして様々な施策を展開していることは評価いたします。
 未来を担う大切な子供たちを社会で育てるという考え方は、旧民主党時代に子供手当に言及したとおり、私たちはあのときから訴えてまいりました。それから十年余りたって、格差や貧困が広がる中で、当時はばらまきと批判してこられた方々までが必要に迫られるようになってしまったこの国の状況を考えると、複雑な心境にならざるを得ません。
 さて、チルドレンファーストを掲げる上でやはり重要なのは東京都こども基本条例だと考えます。
 子供を権利の主体として位置づけ、子どもの権利条約の子供に対するあらゆる差別の禁止、子供の最善の利益の確保、生命、生存、発達への権利及び子供の意見の尊重を理念としている条例を議員提出条例として都議会が全会一致で可決したことは、前期の皆様には本当に敬意を表します。
 このこども基本条例を基に朝鮮学校の補助金の復活を求めた動きがあります。
 この間、一年近く学習会などを行ってきて、何とか補助金の復活が認められないかと様々な方々が活動を続けてきました。私の地元八王子だけでなく、いろいろな地域でも学習会が開かれ、昨年末に都議会で行われた会では、ほぼ全会派の皆さんが集まりました。
 私立外国人学校教育運営費補助金は九五年から始まり、対象は当時で二十七校、うち十校が朝鮮学校で、補助金は交付をされておりました。しかし、二〇一〇年に、政治的、外交的な理由で朝鮮学校だけが突然不交付とされました。
 この間、様々な方が補助金の復活を求めてきましたし、何も朝鮮学校を優遇しろといっているのではなく、ほかの外国人学校と同等に扱ってほしいという願いはよく理解ができます。私は、この朝鮮学校だけが不交付である状況は差別だと考えます。
 二月十日には、補助金復活を求めて市民団体の方たちが東京都に要望書を出しに参りました。そこでは丁寧に対応していただいたと伺っております。
 要望書の提出の後には集会が開かれ、そこに当事者である朝鮮学校の生徒たちも来ており、本人たちの生の声を聞かせてもらいました。その声は知事に届いているんでしょうか。
 日本で生まれ、日本で育ち、暮らしてきた、その上で自分のルーツを知るために民族教育を受けたいという思いは当然のことだと考えます。しかし、様々な理由でそれがかなわず、だんだんと生徒が減ってきてしまっている状況を何とかしたいという活動をすることは、人として当然のことであります。
 二〇一九年の決算特別委員会で、私たちの会派の中村議員が知事に外国人学校の補助金がないことを質問したところ、知事は、都民の理解が得られないと判断し、不交付としていると答弁をしました。
 私は、人権の問題では多数派が正しいとか、そういったものではないと考えております。当事者がどうであるのか、不利益を被っていないか、都民の理解を得るために動くことこそが行政の役割だと考えます。
 もう一つ、これは政治家として訴えたいのですが、十年、二十年がたち、子供たちが成長し大人になったとき、あのとき東京都はちゃんと私たちのことを考えてくれた、人権を守ってくれた、そんな思いを持つ未来の大人が増えれば、紛争などは起きないのではないでしょうか。これこそが私は未来への投資であり、政治の役割にほかならないと考えます。
 そうしたことを踏まえて、冒頭にお聞きをしました人権尊重条例、そして、こども基本条例では、あらゆる差別をしないという理念の下に条例が成り立っておりますが、ここに照らしたときに、また、未来への投資、チルドレンファーストを打ち出す東京都として、朝鮮学校への補助金の不交付を続けることにそごはないのでしょうか。見解を伺います。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 須山たかし議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩地域の振興についてのお尋ねがございました。
 多摩地域は、緑豊かな自然、企業や大学の集積など、多様な魅力とポテンシャルにあふれたエリアでございます。
 都は、こうした多摩地域のさらなる発展に向けまして、今年度、体験型英語学習施設や産業交流の拠点を開設したほか、多摩南北方向の道路等の交通インフラを整備するなど、新しい多摩の振興プランに掲げた取組を進めております。
 今後とも、多摩地域が輝く取組を展開いたしまして、その魅力に磨きをかけ、多摩地域の持続的な発展を目指してまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、デジタル技術等によるMICE誘致についてでございますが、東京にMICEを誘致する上で、デジタル技術の活用を図ることは効果的でございます。
 このため、都は、MICE誘致のため、リモートと対面を併用した国際会議等の開催への助成を行っております。
 来年度は、メタバース空間を立ち上げ、都内の会議場の紹介を行います。
 これらによりまして、東京の観光振興を進めてまいります。
 次に、多摩地域へのMICE誘致についてでございますが、東京の観光振興に向け、多摩地域でのMICE開催を増やすことは重要でございます。
 このため、都は、会議場等が確保できるエリアを重点的に支援し、イベントを開催し、MICEの受入れ体制づくりに結びつけております。
 今後とも、こうした取組によりまして、MICE誘致を進めてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、結婚支援事業についてでございますが、結婚を希望していながら婚活に一歩を踏み出せない人たちに対しましては、様々な取組により後押しが必要でございます。
 都は来年度、AIによるマッチングや都有施設等を活用した出会いの機会の創出、ウェブによる個別相談を実施いたします。
 こうした事業を総合的に実施し、社会全体の結婚機運を醸成してまいります。
 次に、朝鮮学校に対する外国人学校教育運営費補助金の交付についてでございますが、施策の実施に当たりましては、東京都こども基本条例等の理念と施策の性質を踏まえて判断するものと考えております。
 朝鮮学校の運営等の実態を確認するため、平成二十三年十二月から平成二十五年十月にかけて実施をした調査結果や、その後の状況などを総合的に勘案いたしまして、朝鮮学校に外国人学校教育運営費補助金を交付することは、都民の理解が得られないと判断しております。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、パートナーシップ宣誓制度についてでございますが、本制度では、届出者に子供がいる場合、受理証明書の特記事項欄に子供の名前を記載できることとしてございます。
 これによりまして、病院の付添時などに、子供とその親のパートナーとの関係を説明しやすくなるなど、子供に関する困り事の軽減を図れるものと考えております。
 引き続き、制度の周知や啓発に取り組んでまいります。
 次に、人権尊重条例についてでございますが、いかなる種類の差別も許されないというオリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を広く浸透させていく上で、全ての都民が個人として尊重されることが重要でございます。
 こうしたことから、都は、平成三十年に人権尊重条例を制定し、人権施策の充実を図ってまいりました。
 今後とも、条例に基づく取組を着実に進めてまいります。

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