令和五年東京都議会会議録第三号

○議長(三宅しげき君) 五十八番原田あきら君。
   〔五十八番原田あきら君登壇〕

○五十八番(原田あきら君) 私の地元杉並区の成田東三、四丁目は、起伏に富んだ地形に区画整理されていない複雑な道路が延びる、住民にとって親しみと味のある住宅街です。庭に堂々たるメタセコイアがそびえ立つ家、一方で最近建てたばかりのきれいな住宅地、これら全てを破壊するのが全長一キロに満たない都市計画道路補助一三三号線です。この道路計画の先には善福寺川緑地公園があり、樹木を大量に伐採する計画です。都は事業化するな、これが住民の声であり、この声こそが杉並に新しい区長を誕生させる力になりました。
 起伏の激しい地域では都市計画変更が必要となることがあります。その点で昨年四月の都市計画運用指針の改定が重要です。都市計画の決定や変更に当たって、関係市町村からの意見聴取に当たっては、関係市町村の意見を十分に尊重するとの文言が追加されました。この指針が適用されれば、一三三号線の事業化前に杉並区との丁寧な折衝が必要になるはずです。
 お聞きしますが、都市計画道路を事業化するに当たり、都市計画変更が行われる際、都市計画運用指針に照らして、地元自治体との丁寧な協議が行われるのか伺います。
 西荻窪の都市計画道路補助一三二号線は、既に路線バスも通る二車線ですが、当初、東京ガスの緊急車両を通すためとの理由で事業化されました。西荻のクラシカルな雰囲気を感じさせる商店街が片側五メートルだけ削られ、財産も文化も破壊されます。たった一キロの道路拡幅で、総事業費二百五十億円かかるともいわれ、都内でも有数の高額道路計画です。
 ところが、その後、東京ガスが移転してしまい、緊急車両の交通の心配がなくなりましたが、なぜかそのまま事業が進んでいます。不可解なことに、この計画が事業認可される五か月前、英国領バージン諸島、いわゆるタックスヘイブンに籍を置く法人が、駅南側の再開発地域の土地を取得しています。一三二号線は、実は再開発の接道としての拡幅だったのではと怒りの声が上がっています。
 一三二号線は前区長が決めた計画ですが、現在、新区長は積極的な用地買収を止めています。このままいけば前区長が決めた施行期間の期限が迫ってきます。
 そこで伺います。補助第一三二号線は区施行の道路ですが、東京都が事業認可した施行期間は二〇二〇年度から二〇二九年度となっています。事業施行期間を過ぎたとき、地元自治体抜きに都だけで期間の延長を行うことは可能か、お答えください。
 たとえ事業認可が無効になったとしても、都市計画自体は残ることとなります。やはり根本的に都市計画道路全体を見直すときが来ています。
 知事は、都市計画道路について、見直すべきものは見直すと語ってきましたが、第四次事業化計画では、杉並区など各地で問題となっている不合理で理不尽な道路が見直されていません。
 東京都以外の都市では、財政状況、住民の声、環境破壊を理由に、大きな見直しが進んでいますが、東京の都市計画道路も時代の変化に合わせて抜本的に見直すべきと考えますが、見解を伺い、次の質問に移ります。
 突然ですが、私は小学生のときから四十年間続けていることがあります。それは遊びです。といっても、少年団という子供会活動のことです。集団遊びを皆さんはどれぐらい知っているでしょうか。Sケン、ドロケイ、王様陣屋、水雷艦長、今でもこんな遊びを、子供が主人公となり、高校生以上が指導員となって本気で遊んでいます。
 しかし、今、東京で実感するのは、空間、時間、仲間、この三つの間が失われていることです。
 子どもの権利条約第三十一条は、休息、余暇、遊び、レクリエーションの活動、文化的な生活、芸術に自由に参加する権利を保障しています。知事は、子供の遊ぶ権利についてどう認識されていますか。
 東京の子供はとにかく忙しい。ついさっきまで幼児だった小学一年生から五時間目があり、二年生から六時間目もある。学校が終わった放課後も、土日も、宿題、塾や習い事と続き、もうへとへとです。
 子供会の活動を支援するNPO法人東京少年少女センターの理事長から話を聞きましたが、子供に学校外の時間を返してほしい、仕事の拘束時間は八時間だが子供の拘束時間は一体今何時間なんだと話していました。
 子供の休息や余暇の権利についてどう認識していますか。子供の成長にとって休息や余暇は重要な時間だと考えますが、いかがですか。
 少年団に小学生から参加している大学生が語ってくれました。
 学校の人間関係で悩んでいて、家でも両親と関係がこじれてしまい、どこにも居場所がないように感じていたときに、少年団は温かく等身大の私を受け入れてくれた、異年齢集団なので、学校や習い事では出会えないような年上の人に出会うことで視野を広げることができた、少年団で人間関係がうまくいくことで学校でも積極的になることができ、居場所があると感じることで病むことが少なくなった、今、子供から指導員になって、いつもの生活にはない時間を子供たちと共有することでいい刺激をもらえる、また明日から頑張ろう、そう思える、そう話してくれました。
 もう一人の声を紹介させてください。小学生のとき、少年団に来てもひたすら走り回っていた子は、二十代になってこう語ります。
 自分は小学生のとき、周りを知ることや自分自身の努力ということに興味がなかった、でも少年団で友達の幅が増え、コミュニケーションも増えていったことで、周りを知りたい、自分を高めたいと思うようになった、そのおかげで今では人と話すことがとても好きで、セールスコンサルタントの仕事を選んだ、少年団があったからこそ、自分自身の努力や周りを知る力を成長させることができたのかなと思っている、こう話してくれました。
 学校も違う異年齢集団の中で互いに成長し、安心できる人間関係の中で、ありのままの自分でいていいと思えるようになる、そんな成長の場面に私は何度も立ち会ってきました。
 少年団、ボーイスカウト、ジュニアリーダーなど、東京には子供や青年が育ち合い、学び合う団体が幾つもあります。こうした子供に携わる団体の価値をどのように受け止めていますか。
 どの団体も、小中学生の塾や習い事、大学生のアルバイトなど、環境の変化により、最盛期と比べると激減しています。子供会の主役は子供ですが、同時に、高校生や大学生、青年リーダーが育ってこそ持続可能となります。こうした活動に関わる方々を励ます答弁を求めます。
 東京都はかつて、子供に関わる各団体と共に、東京子どもフェスティバルを開催していました。各団体の横のつながりをつくるとともに、そうした団体から都が意見を聞く機会として役割を果たしていたと考えます。
 都内で活動する子供に関わる団体から意見を聞く機会を設けるべきと考えますが、いかがですか。
 子供たちが自由に遊ぶことができる場所の確保も、空き地などの空間が失われた東京にとっては、極めて大事な課題となっています。
 我が党は、二〇〇〇年に都議会の質問で初めて、冒険遊び場、プレーパークを増やすための東京都の支援を求めました。
 こども基本条例第七条は、都は、子供が伸び伸びと健やかに育つことができるよう、特別区及び市町村と連携して、子供が過ごしやすい遊び場や居場所づくりなど、環境の整備を図ると定めています。
 子供たちが遊ぶことができる空間、場所を積極的につくることを求めますが、いかがですか。
 また、冒険遊び場などの運営を支えるために、都として財政支援を進める必要があると考えますが、いかがですか。
 子供の体験に格差が生じていることを解消していくことも必要です。
 子供会で一番の体験といえば、何といってもキャンプです。しかし、今、子供の体験や経験に経済的格差があると指摘されています。チャンス・フォー・チルドレンの子どもの「体験格差」実態調査では、世帯年収が三百万円未満の家庭の子供は、約三人に一人が学校外で行う体験活動が何もなく、約六割が、経済的理由で子供がやってみたい体験をさせてあげられなかった経験があるという結果が示され、話題を呼びました。
 子供会に話を聞くと、豊かな自然を体験するには遠くに行かねばならず、バス代が高くつく、兄弟が三人いるから、一年に一人、順繰りにキャンプに行く家庭があったり、キャンプやスキーとなると、家庭の事情を見て、声をかける子と声をかけない子がいるというつらい実態を聞かせてくれました。
 都は、こうした体験格差についてどのように認識していますか。
 様々な団体から話を聞いてきましたが、何といっても、料金が高騰しているバス代への補助、あるいはキャンプなど自然体験に参加する個人への支援、キャンプを行う場合のテントの貸出し、公共施設など場所を借りる際の利用料負担の軽減など、多くの要望が寄せられています。
 都として、区市町村とも連携して取組を行うことを求めておきます。
 知事は、記者会見で都立公園百五十周年に触れて、これまでは駄目だろうなと思っていたような、諦めていたけれども、実はやってみたいという思いを寄せていただきたいと述べました。そんなに大がかりでなくても、都立公園には、ちょっとした工夫で子供の体験を保障する方法が幾つもあります。
 子育てしている世代からの強い要望の中に、都立公園で簡易に日差しを遮ることができるポップアップテントを利用できるようにしてほしいという声を聞いてきました。夏場の熱中症対策、冬場の風よけ、幼児のお昼寝の場になりつつ、手軽にテント気分を味わうのに最適です。
 都立公園では、これまで禁止されていたものを、今年度から一部で利用できるように改善しています。今後、実施する公園をさらに拡大すべきと考えますが、いかがですか。
 都立公園では、火事を防ぎ、環境を保全するため、バーベキューなどは専用広場に限られていますが、バーナーでコーヒーを沸かすなど、大きな火を伴わない火気の使用も同時に禁止されています。
 今、アウトドアを楽しむツールとして、バーナーは必須アイテムで、公園利用者のニーズがあります。筑波山では、バーナーエリアをつくったことが話題となり、人気です。都立公園内にバーナー使用可能なエリアを設置するなど検討を求めますが、いかがでしょうか。
 皆さん、こども基本条例に基づく取組は始まったばかりですが、問われているのは私たち大人です。遊びも、休息や余暇も、体験の格差解消も、まちづくりも、子供たちの意見を大人が真剣に受け止めて進めることが強く求められています。
 子どもの権利条約とこども基本条例を、より豊かに全面的に実践することを重ねて求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 原田あきら議員の一般質問にお答えいたします。
 子供の遊びについてでございます。
 子供は、遊びを通じて、友達同士で関わり合い、実社会に必要な力を身につけてまいります。
 子供が思い切り遊ぶことができる環境をつくっていくことは重要、このように認識をいたしております。
 その他の質問につきましては、東京都技監、関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立公園における簡易テントの利用についてでございますが、都立公園では、利用者の安全、快適な利用に支障となるような固定式のテントなどの使用を認めておりません。
 一方、小型のポップアップテントなど移動が容易な簡易テントは、熱中症の予防や子供の休憩等の用途として有用であることから、今年度より、多数の簡易テントを置いても支障のない大きな広場がある四十四公園で使用を認めております。
 次に、都立公園におけるバーナーの使用についてでございますが、都立公園では、多くの利用者が安全に利用できるよう、原則として火気の使用を認めておりませんが、延焼のおそれがないバーベキュー広場では、バーナーなど火気の使用を認めております。
 今後とも、利用者が安全に楽しめる公園となるよう努めてまいります。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都市計画道路の地元自治体との協議についてでございます。
 都が都市計画変更を行う際は、都市計画法に基づき、地元自治体の意見を聞き、都市計画審議会の議を経て決定しており、意見聴取に当たっては、都市計画運用指針を踏まえ、その意見を尊重することとしております。
 次に、都市計画事業の施行期間の延長についてでございます。
 都市計画法によりますと、施行者からの申請に基づき、基準に適合する場合には認可することができるとされております。
 最後に、都市計画道路の見直しについてでございます。
 都はこれまでも、社会経済情勢の変化や道路に対するニーズを踏まえて策定した事業化計画などに基づき、都市計画道路の整備を計画的、効率的に進める一方で、見直しについても適宜行ってきております。
 今後とも、地元自治体と連携、協働しながら、整備すべきものは整備し、見直すべきものは見直すとの考えに基づき、必要な都市計画道路を着実に整備してまいります。
   〔子供政策連携室長山下聡君登壇〕

○子供政策連携室長(山下聡君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、子供の成長についてでございますが、子供は、日々の遊びの中で、無意識に探求を積み重ねて成長していきます。子供が伸び伸びと健やかに成長していけるよう、自分らしく過ごしやすい環境を整備していくことは重要でございます。
 次に、子供に関わる団体についてでございますが、都は、こども未来アクションの策定に当たり、文化やスポーツの関連団体、さらには子供食堂の運営者などから意見を聞いており、引き続き対話を継続していくこととしております。
 次に、子供の遊び場づくりについてでございますが、子供たちが自由な発想で外遊びを楽しむことができるよう、子供の意見を取り入れながら、地域資源を生かした遊び場づくりに取り組む区市町村を支援していくこととしております。
 最後に、子供の体験についてでございますが、子供を客体ではなく主体として捉えていくことは、子供政策の基本スタンスでございます。子供が他者との交流や様々な機会を通じて多様な体験を深めていくことは重要であると認識しております。
   〔生活文化スポーツ局生活安全担当局長小西康弘君登壇〕

○生活文化スポーツ局生活安全担当局長(小西康弘君) 少年団、ボーイスカウト、ジュニアリーダー等の子供に携わる団体の価値についてのお尋ねでありますが、社会の宝である子供たちが健やかに成長する上で、幅広い年齢層の方と交流できる地域団体及びその活動に携わる方々の存在は重要でございます。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 冒険遊び場についてでございますが、都は、主に屋外で子供たちの主体性を尊重した自由な遊び場を提供する冒険遊び場事業を包括補助事業の対象として例示し、区市町村の取組を支援しています。

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