令和五年東京都議会会議録第三号

   午後四時五十五分開議

○議長(三宅しげき君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十三番林あきひろ君。
   〔四十三番林あきひろ君登壇〕

○四十三番(林あきひろ君) 最初に、区市町村と連携した安全・安心施策についてお尋ねします。
 先月、地元狛江市において発生しました強盗殺人事件ですが、本日、実行犯らが逮捕されたというニュースが飛び込んでまいりました。この事件は、市長自らが都内で一番犯罪の少ないまちを目指しますと述べていたこともあり、市民はもちろんですが、市には大きな衝撃が走りました。
 令和四年中の全国の刑法犯認知件数は、二十年ぶりに増加に転じ、前年比五・九%の増、都の件数も四・二%増とのこと。昨年十月、警察庁が実施した治安に関するアンケート調査において、体感治安の悪化を感じるとした回答が六七・一%に上ったことは、まさに社会の現状を表しているのではないでしょうか。
 都民は大きな不安を感じています。警視庁には、これまで以上に総力を挙げて、都民の安全・安心の確保に向けた取組をお願いしたいと思います。
 さて、先日、狛江市では、新年度から、住宅に防犯設備を導入する際に、その費用の一部を補助する方針を決めました。市としても、犯罪対策を強化することで住民の不安な気持ちに応えていくということですが、今後、ほかの区市町村においても、安全・安心に向けた様々な対策を検討していくことと思われます。都には、こうした動きをしっかりと受け止め、財政的な支援も含めた連携を図ることで、地域の防犯力向上に向けた取組を力強く推進していただきたいところです。
 そこで、都として、区市町村と連携した安全・安心施策をどのように進めていくのか、知事の見解を伺います。
 次に、昨年十二月、多くの課題、問題を抱えたまま見切り発車をいたしました新築住宅等への太陽光パネル設置等を義務づける制度についてであります。
 昨年八月、国連人権高等弁務官事務所から、新疆ウイグル自治区での深刻な人権侵害についての報告書が公表されました。国際犯罪である人道に対する犯罪に当たる可能性を指摘しています。
 これまで我が会派は、制度施行に関する懸念として、太陽光パネルの製造過程における人権問題を取り上げ、繰り返し都の姿勢をただしてまいりました。
 米国では輸入禁止を法制化、EUでも製品の輸入を禁止する法案が検討されている中、我が国においては、昨年、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインを策定するとともに、今後、日米両政府のタスクフォースにおいて、関連法令や政策等について情報共有を行う予定と伺っています。
 民間においても、我が国を代表するアパレルメーカーの人権問題に代表されるように、企業として人権侵害リスクに適正な対応を取ることが厳しく求められています。
 東京二〇二〇大会では、原材料の調達に際して、持続可能性に配慮した調達コードを策定し、四つの原則に基づいた基準を定めましたが、世界から選ばれる金融、経済、文化都市をテーマに掲げ、世界を引きつける魅力にあふれた都市、世界経済を牽引する都市の実現を目指す東京の人権に対する姿勢を国際社会は注視しています。
 サプライチェーン上での人権問題は、国際社会における重要なテーマであり、国に先駆けて太陽光パネルを進めようとしている東京は、人権侵害に加担していると見られることのないよう、都が率先してこの問題に向き合うべきではないでしょうか。
 今後どのように取り組んでいくのか、都の見解を伺います。
 続いて、再生可能エネルギー設備設置に伴う都民負担についてです。
 都は、太陽光パネルを設置すれば、購入電力量が削減できるとともに、余剰電力は固定価格買取り制度を使って売電でき、補助金を使えば六年で初期費用が回収可能、元が取れるとその経済的なメリットをPRしています。
 確かに、太陽光パネルを設置される都民にとっては、魅力あるメリットかもしれません。しかし一方で、こうした都民が受けるメリットの背景には、パネルを設置していない多くの都民の負担の上にあるということを理解しなければなりません。
 都は、二〇三〇年カーボンハーフに向けて、新築建物への再生可能エネルギー設備設置等を促進するため、一千五百億円の新基金の創設を最終補正予算の中で提案しています。都民一人当たりにしますと一万円を超える負担をお願いすることとなります。
 昨日の我が会派の代表質問において、CO2削減効果に加え、発電コストの低減、投資による経済的効果などのメリットがあるとの答弁がありましたが、パネルを設置していない都民への説明責任は果たして尽くされているのでしょうか。
 円安やウクライナ危機等により、光熱費から食品まで物価が高騰しています。普通の都民は、家計を防衛するために節約を心がけ、一円でも安い買物を心がけておられます。都にはそういった思いをしっかりと受け止めるべきではないでしょうか。
 また、固定価格買取り制度による売電価格も、市場価格との差額分は、電気代に含まれる再エネ賦課金として、太陽光パネルの設置の有無を問わず、全ての電気利用者が電気の使用量に比例する形で負担しており、今年度の賦課金単価は一キロワットアワー当たり三・四五円と、制度開始以来約十五倍以上となっています。
 太陽光パネルを設置した住宅の方は、再エネ利用分には再エネ賦課金はかからないので電気の使用料は下がりますが、設置していない住宅に暮らす方からは、電気代が上がり続ける中、太陽光パネルの設置が進むにつれて、今後さらに再エネ賦課金の負担が増えるのではないかといった不安の声が聞こえてきます。
 再生可能エネルギー促進に当たっては、太陽光パネルを設置していない都民の負担に関する疑問にもしっかりと答えるとともに、併せて、設置をしていない都民の負担感、不安を解消するような施策を展開していく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、中小河川の洪水対策について伺います。
 近年、全国各地において甚大な豪雨災害が発生しておりますが、東京においても、いつ水害が発生してもおかしくない状況といえるでしょう。こうした豪雨対策に有効なのは、やはり中小河川の着実な整備であります。
 これまで都が実施してきた護岸や調節池等の整備により、近年は河川からの溢水被害が減少してきているものと、その効果は実感しておりますが、近年の豪雨災害は、日本のみならず世界的にも増加傾向にあります。気候変動に関する政府間パネル、IPCCの報告書によると、地球温暖化の進行に伴い、台風など熱帯低気圧の強さが増す傾向が指摘されています。
 我が国においても、将来の降雨量が増加するなど、水害の激甚化、頻発化が懸念されており、水害対策は喫緊の課題といえるでしょう。
 都は昨年十二月、強靱で持続可能な都市の実現を目指して、TOKYO強靱化プロジェクトを策定しました。
 東京は、政治経済の機能が集中する国家の中枢であり、その機能が失われた場合の影響は計り知れないものがあります。年々激しさを増す豪雨に対しても、都民の命と暮らしが守られ、都市機能が確保されるべく強靱な都市を実現するためには、河川整備のさらなる推進は非常に重要であります。
 そこで、中小河川の洪水対策の推進について、その整備状況を伺います。
 また、私の地元を流れます野川では、令和元年東日本台風の際には工事中ではありましたが、野川大沢調節池において取水が行われ、その効果もあってか、幸いにも調布市、狛江市等下流域においての溢水被害は生じませんでした。
 しかし、令和三年集中豪雨の際には、その野川、そして調布市東部を流れる仙川において、氾濫危険水位を超え、昨年も調布市において洪水警報が発令されるなど、年々水害リスクが高まっていると危機感を覚えています。
 住民の方からも、早期の安全性向上への取組を求める声が多く届いており、護岸や調節池の整備等、河川の溢水対策については、より一層の推進を図っていくことが重要と考えますが、野川、仙川の調節池整備について伺います。
 次に、道路の整備について伺います。
 強靱な都市東京の実現には、都市計画道路の整備は重要です。体系的、機能的に連携された道路網を形成することにより、都民生活や都市活動を支えるという重要な役割を担っていますが、地元の調布三・四・一七号線は、世田谷通りから甲州街道を結ぶ地域の重要な路線です。現在、一部の区間を除き整備が進められていますが、地域からは、残る区間の早期整備を望む声が数多く寄せられています。
 この区間は、歩車道とも幅員が狭く、通学路にも指定されていますが、歩行者同士の擦れ違いが困難であり、自転車の車道通行にはかなりのリスクが伴います。また、右折車線のない路線バスの通行する交差点は、慢性的な交通渋滞の元凶ともなっており、早期の整備が求められています。
 そこで、調布市内の都市計画道路調布三・四・一七号線の取組状況について伺うものであります。
 分譲マンションの耐震化について伺います。
 トルコ、シリアにおける大規模な震災においては、多くの方々が亡くなり被災されました。衷心よりお悔やみとともにお見舞いを申し上げます。
 大きな被害の要因の一つといわれているのが、耐震基準に満たない、いわゆる既存不適格建物の損傷、倒壊、そしてパンケーキクラッシュといわれる建物の崩壊でありました。
 都においても、首都直下地震に対して万全の対策を施すことが求められていますが、東京には、いわゆる旧耐震といわれる昭和五十六年以前に建築された民間の事務所や店舗、住宅等のいわゆる既存不適格建築物がいまだ数多く存在しています。これらの建築物については、大地震発生時には損傷や崩壊の危険性があることから、その耐震化は大きな課題となっています。
 とりわけ、都民の生活の基盤である住宅、そして、特に権利者が多くなり、改修費の負担にも合意形成の難しい分譲マンションでは、いまだ耐震改修はもとより耐震診断にすら取りかかれないマンションも一定数あると伺っています。
 平成七年一月の阪神・淡路大震災においては、倒壊した建物の多くは昭和五十六年六月以前に建てられたものでした。防災の観点からだけではなく、まちづくり全体の中でこの問題に対応していかなくては、なかなか解決ができない問題だと私は感じております。
 ぜひとも、個人の財産というだけではなく、まちづくり全体、そして防災の観点から、全ての観点から、東京全体の観点から、こういった建物の解消に向けてのご努力をお願いしたいと思います。
 そこで、都内分譲マンションの耐震化の現状、そして都の今後の対応について伺い、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 林あきひろ議員の一般質問にお答えいたします。
 都民の安全・安心に向けた対策についてのお尋ねがございました。
 そして、お話の狛江市で発生した強盗殺人事件につきまして、本日、報道によりますと、実行役が逮捕されたとのことであります。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、心よりお悔やみを申し上げます。
 これまで都民と共に築き上げた世界一安全・安心な都市東京を守っていくことは、東京の責務でございます。
 長期的には、刑法犯認知件数は減少傾向でございますが、子供や女性、高齢者が被害に遭う事件は後を絶たない状況でありまして、様々な施策を一層強力に推進する必要がございます。
 都ではこれまで、区市町村と連携いたしまして、地域における見守り活動を通じた防犯環境の整備や、特殊詐欺被害の未然防止に向けました取組等を推進いたしております。
 生き生きと輝く人の力は、安全・安心の基盤の上に発揮されるものでございます。最近の治安情勢等を踏まえまして、区市町村や警視庁、関係団体の皆様とより一層密接に連携し、地域の防犯力向上を図ってまいります。
 その他のご質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、中小河川の洪水対策についてでございますが、都は、水害から都民の命と暮らしを守るため、現在、二十八河川で護岸整備を進めるとともに、令和七年度までの稼働に向け、七か所で調節池等の整備を実施しております。
 また、新たな調節池の事業化につきまして、「未来の東京」戦略で二〇三〇年度までに百五十万立米を目標としており、これまでに八五%まで達しております。
 今後は、気候変動の影響を見据え、新規事業化の目標年度を前倒しするとともに、将来、一・一倍の増加が見込まれる降雨量などに対応するため、引き続き地下河川を含めた新たな整備手法の検討を進めてまいります。
 次に、野川及び仙川の調節池整備についてでございますが、都は、野川大沢調節池において、貯留量をこれまでの約一・八倍となる約十六万立米に拡大する工事を進め、令和三年度に稼働を開始いたしました。これまで既に三回洪水を取水するなど、下流の水位低下に効果を発揮しております。
 また、仙川では、来年度、貯留量約四万立米の仮称仙川第一調節池を新たに事業化し、関係機関との協議を進めながら、基本設計を実施してまいります。
 今後とも、こうした取組を進めることにより、中小河川のさらなる安全性の向上を図り、強靱な都市東京を実現してまいります。
 最後に、調布三・四・一七号線についてでございますが、本路線は、狛江市元和泉から調布市緑ケ丘に至る都市計画道路であり、交通の円滑化や防災性向上等に資する重要な路線でございます。
 このうち、調布市西つつじケ丘四丁目から入間町一丁目までの約六百九十メートルの区間は、第四次事業化計画の優先整備路線に位置づけられておりまして、これまでに用地測量や地形状況を踏まえた道路構造等の検討を実施し、来月、事業に着手いたします。
 引き続き、地元の理解と協力を得ながら、本路線の整備に着実に取り組んでまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、サプライチェーンでの人権の尊重についてでございますが、持続可能な社会の実現に向けては、企業の責任ある人権尊重への継続的な取組が重要でございます。
 都は昨年十二月に、太陽光発電協会と締結した連携協定に基づき、人権尊重などSDGsに配慮した事業活動の促進に向けた取組に着手してございます。
 具体的には、同協会と連携し、本年四月末の公表に向け、業界独自の取組基準の策定を後押ししてございます。
 また、人権尊重に関する研修の継続的な実施に加え、パネルメーカー等との意見交換を重ねるなど、同協会と協働し、企業の適正な取組と情報公開を促してまいります。
 次に、再エネ促進に向けた施策展開についてでございますが、都は、二〇三〇年カーボンハーフの実現に向け、太陽光パネル等が標準化された住宅の普及促進が重要と認識してございます。これは、国が掲げる二〇三〇年までに新築住宅の六割に太陽光パネルの設置を目指す目標とも軌を一にするものでございます。
 新築での設置が難しい都民に対しましては、小売電気事業者による再エネ電源開発への支援等を通じまして、再エネをより安価に利用できるよう促進してまいります。また、再エネ賦課金は、メガソーラー等の買取りが終了する二〇三〇年代半ば頃に大幅に減少すると見込まれ、こうした情報を専用サイト等により発信してございます。
 今後とも、都民の疑問に丁寧に答え、再エネ設備導入だけではなく、再エネを利用する都民が広くメリットを享受できるよう取り組んでまいります。
   〔住宅政策本部長山口真君登壇〕

○住宅政策本部長(山口真君) マンションの耐震化についてでございますが、都内で五万棟を超える分譲マンションの耐震化は、都民の生命を守り、地域の安全性向上のために重要でございます。
 都は、市区と連携しまして、耐震診断や耐震改修等への助成を実施するとともに、管理組合に対して建築士等の専門家を派遣しまして、区分所有者間の合意形成を促し、令和元年度末での耐震化率は約九四%となっております。
 来年度、専門家派遣の回数やメニューを拡充するほか、切迫性が指摘される首都直下地震から命を守るため、倒壊の危険性が高いピロティー階の改修等に対しまして、都が緊急的に直接補助を実施するなど、分譲マンションの震災対策を一層充実しまして、都内全域で安全な都市づくりを実現いたします。

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