令和五年東京都議会会議録第三号

○副議長(本橋ひろたか君) 三十八番細田いさむ君。
   〔三十八番細田いさむ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○三十八番(細田いさむ君) 初めに、地下鉄八号線の延伸及び臨海地下鉄について質問いたします。
 東京メトロ有楽町線、地下鉄八号線の豊洲─住吉間の約五・二キロメートルの延伸は、東京区部東部の南北交通の利便性を高め、臨海部とのアクセスを向上させるとともに、東京メトロ東西線の混雑率を緩和させる重要な路線であり、二〇三〇年代半ばの開業を目指して動き始めました。地元江東区民の方々は、早期延伸を大いに期待しているところであります。
 地下鉄八号線延伸の計画ルートは、枝川、東陽町、千田、千石など、東京都交通局浸水対策施設整備計画において示されました浸水区域内に位置しており、新駅の設置及びトンネルなどにおいては、中扉を設けて、水密性の高い出入口シャッターを設置するなど確実な浸水対策を行っていくべきと考えます。
 本路線の浸水対策を含めて、延伸事業の早期実現に向けた今後の取組について、都の答弁を求めます。
 次に、都心部・臨海地域地下鉄についてです。
 昨年十一月に概略のルートとして、東京駅から豊洲市場を経て、有明、東京ビッグサイトへの駅位置を含む事業計画案が公表されました。羽田空港との接続や、つくばエクスプレスの延伸も将来の検討に据えられており、交通利便性を大きく前進させる路線となります。
 都心部・臨海地域地下鉄については、完全防水に向けた浸水対策を進めるべきであります。この対応も含めて、本路線の事業化に向けた今後の取組について、都の答弁を求めます。
 次いで、ブルーカーボンについてです。
 脱炭素化を進めるに当たって、現在注目を集めているのが、ワカメやアマモなど、海の水生生物が取り込むCO2、いわゆるブルーカーボンです。
 国連環境計画によれば、ブルーカーボン生態系が取り込む炭素量は、陸上の全ての植物が取り込む炭素量に匹敵するとされています。
 都が目指している二〇五〇年のゼロエミッション東京の実現のためには、CO2排出削減に加えて、CO2吸収源対策としてブルーカーボンの取組を進めていくことは極めて重要であります。
 都は、東京港におけるワカメやアマモなどを育む藻場などの創出を積極的に進めていくべきですが、現在の取組状況と今後の展開について質問します。
 次に、環境に配慮した船舶の導入についてです。
 都はこれまで、船舶の環境対策を評価する国際的な仕組みに日本で初めて参画し、東京港に入港する船舶から排出される窒素酸化物や硫黄酸化物などを大きく削減するなど、東京港での環境対策に着実な成果を上げてきました。
 そして、二〇二〇年時点の国内におけるCO2排出量のうち、国土交通省によれば、約一%が国内海運に従事する船舶からのものとされています。船舶の多くは、重油または軽油を燃料としており、脱炭素化の推進に向けては、これらの燃料をクリーンエネルギー化していくことが課題となっています。
 現在、CO2排出量をより抑えたLNG、液化天然ガス燃料の利用に動きが見られますが、ゼロエミッション船として特に注目されているのが水素を燃料とする船舶や電気を動力とする船舶などであり、脱炭素化に大いに貢献するものとして期待をされています。
 しかし、これらの船舶は、一部で実用化はされているものの、本格的な普及に向けては、いまだ開発段階にあります。
 都は、軽油を燃料とする小型船を多く所有していますが、こうした環境に配慮した船舶をほかに先駆けて導入し、東京港や河川などで活用していけば、民間事業者の研究開発を一層促進させ、普及拡大にもつながっていくと考えます。
 脱炭素社会の実現に向け、東京港や河川などにおいて環境に配慮した船舶を都が率先して導入すべきと考えますが、見解を求めます。
 次いで、防災船による災害対応力の強化についてです。
 都議会公明党はこれまで、本会議や予算特別委員会などの質疑において、災害対策や救急搬送について、海からの支援の重要性を指摘してきました。そして、米海軍の病院船「マーシー」が東京港に初めて寄港したときに、船内の視察調査も実施しました。
 これまで都は、病院船導入に向けた東京港での実証実験に協力してきたほか、東京二〇二〇大会時には、民間が取り組む救急艇による初めての救急搬送の実装実験も連携をして進めてきており、水上からの対策の重要性を認識していると思います。
 都が令和五年度から取組を進める防災船の導入に向けては、災害時を想定した岸壁や船着場の整備のほか、脱炭素に配慮した船からのエネルギーの供給など、新たな対応が求められます。特に傷病者の搬送には、救急医療の関係者との連携は不可欠です。また、平常時の船の活用も、防災教育に役立つ活用など検討が必要です。
 こうした課題を踏まえ、防災船を活用した災害時の対応力を高める取組について、都の見解を求めます。
 次に、防災船着場の利用料金についてです。
 防災船着場に関わる舟運事業者団体には、都や区などと防災協定を結んでいるところもあり、災害時に防災船着場を用いて、円滑な避難や物資の輸送を行うためには、舟運事業者の方々が常日頃利用しやすくなることが重要です。
 また、東京の観光を水辺から支える事業者は、三年を超えるコロナ禍で大きな打撃を受けて低迷しており、いまだ復活ができていない現状です。
 そこで、令和五年三月末までとなっている防災船着場の利用料半額の措置を延長し、舟運事業者の利用を促進していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次いで、防災ノートの活用についてです。
 教育庁は、紙媒体の防災ノートを本年度からデジタル教材、防災ノートに刷新しました。この防災ノートも活用した取組に、避難所運営ゲーム、頭文字を取り、HUG、ハグという講座があります。
 これは、避難者の年齢、性別やそれぞれの抱える事情が書かれたカードを、校舎に見立てた平面図に並べて、生徒たちがアイデアを出し合いながら避難所を運営し、避難所で起こり得る対応を模擬体験するものであります。
 先日、私は、都内の中学校で行ったHUGを視察し、生徒たちが様々な意見を出し合って、被災者を助けようと取り組んでいる生き生きとしたワークショップの姿を確認しました。
 このような防災教育も推進するため、防災ノートの活用を広く進めていくべきと考えますが、教育長の見解を求めます。
 次いで、災害時のドクターヘリの活用についてです。
 令和四年三月末に運航を開始し、間もなく一年となる東京都ドクターヘリは、出動回数も増加し、救急救命の搬送が着実に効果を発揮してきています。
 昨年の秋の総合防災訓練では、江東区有明にある東京臨海防災公園から多摩地域にある基地病院への広域間を、ドクターヘリが患者を乗せて病院に搬送する訓練も行い、私も視察をさせていただきましたが、迅速で安全、効果的な訓練が関係者が集い、実施されておりました。
 都の防災計画では、ヘリコプターなどの運用も明記されています。災害時のドクターヘリの活用について、知事に見解を求めます。
 次いで、ケアリーバーの自立支援強化についてです。
 国の事業では、十八歳を超えて二十歳までの措置延長をした方が、措置解除後も施設などの支援を受けながら安定した生活が送れるように、アパートなどを借り上げる施設などを支援しており、最大二十二歳まで使えるようになっています。しかし、措置延長は少数にとどまり、多くのケアリーバーの方々は十八歳で自立しています。
 虐待や貧困などで保護され、児童養護施設や里親の下で暮らしていた子供や若者たちが、いわゆるケアリーバーとして自立へのスタートをした後に、孤立や困窮に陥らないよう支援が必要です。
 都は今年度より、こうした国事業の対象にならないケアリーバーを支援するため、一年間の居住費の支援策を開始しました。
 昨年の予算特別委員会で都議会公明党は、都の行った実態調査に言及し、離職した人の九割が三年未満で退職をしていることから、居住支援期間を延長するよう求めました。
 来年度、期間のさらなる延長を行い、支援を強化していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次いで、労働者協同組合の普及促進についてです。
 労働者協同組合法が、議員立法により、令和二年十二月に成立をしました。この法律の成立に当たって、公明党は絶えず尽力し、超党派で議論を重ね、国においては全会一致での可決に至りました。
 労働者組合法は、持続可能で活力のある地域社会を実現するため、労働者らが自ら資金を出し、話し合いながら共に働く協同労働を行う団体に法人格を認めるものであり、昨年十月に施行されました。今後は、普及に向けた取組が重要になってまいります。
 都内では、既に数百の協同労働事務所が地域福祉などの活動を行っており、高齢化に伴い自治体の福祉サービス費が増大する中、自身で出資し、自らが地域の課題に取り組む協同労働の役割は、行政の負担軽減にも寄与し、都全体の福祉サービス向上につながることから、労働者協同組合として法人格を円滑に取得できるための支援が必要と考えます。
 そこで、法律が施行された意義や労働者協同組合への期待について都の認識を確認するとともに、区市町村との連携や、組合活動の支援や法人格の取得支援などについて、都の見解を求めます。
 最後に、都道既設橋バリアフリー化についてです。
 都は、昨春、優先的に整備を検討する橋梁を六橋選定しました。
 まず、江東区内にある丸八橋ですが、あたかもゼロメートル地帯に存在するスキーのジャンプ台のような太鼓橋です。歩道が狭いことや橋梁の勾配が八%と急なために、歩行者や自転車で橋を利用する方々から、長年の間、数多くの苦情が寄せられています。現在の橋の近くに親水性に富む人道橋を設置するなど、バリアフリー化を進めるべきと考えます。
 そして、中央区と江東区の間に流れる隅田川に架かる隅田川大橋は、上流側に清洲橋、下流側に永代橋を望む大変に眺望のよい橋ですが、移動の困難性が高く、バリアフリー化の効果を受ける利用者数が最も多い橋であり、また、その下流に架かる佃大橋も、恩恵を受ける利用者数がとても多い橋になります。
 これらを含めた特に整備の必要性が高い既設道路橋について、都は、エレベーターや人道橋などバリアフリー化を積極的に進めるべきと考えますが、見解を求め、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 細田いさむ議員の一般質問にお答えいたします。
 災害時におけますドクターヘリの活用についてのお尋ねでございました。
 都は、昨年の三月からドクターヘリの運航を開始いたしまして、これまで多くの重症、重篤な患者を治療しながら迅速に病院へと搬送してまいりました。
 ドクターヘリは、震災等により幹線道路が寸断され救急車が活動できない場合でも患者を搬送することが可能でございます。その特性を生かしまして、都は現在、災害時の活用に向け、離着陸の場所の安全確保や傷病者の受入れ調整、指揮命令系統の確認などの検討を進めております。
 今後、具体的な運用方法を定めまして、平時に加え、災害時においてもドクターヘリを有効に活用し、救急災害医療体制の強化を図ってまいります。
 その他の質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) デジタル教材、防災ノートの活用についてでございますが、都教育委員会は、これまで冊子形式で都内全ての児童生徒に配布してきた防災ノートを今年度からデジタル化し、各学校における防災教育の推進を図ってまいりました。
 また、この教材で学んだ知識をさらに深めるため、学校での避難所運営講座や、防災施設で保護者と共に行うVR体験などの体験活動の実施を支援しています。
 今後、防災ノートの活用を促すデジタルポスターを作成し、子供たちの一人一台端末を通じて、子供と保護者等に一層の周知を図ってまいります。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、防災船による災害対応力の強化についてでございますが、建設局が所有する船舶は、水上バスとして水辺環境に触れ合う機会を提供するほか、東京都地域防災計画において、物資及び人員搬送等の役割が位置づけられております。
 現在の船舶は発災時の活動に必要なスペースが限られ、老朽化も進んでおります。このため、令和七年度の就航に向けて新たに防災船を建造することとし、座席を可動式とするなど、物資や傷病者の搬送に適した構造といたします。
 今後、関係機関と連携し、発災時の運用に加えまして、防災意識の啓発など平常時の活用についても幅広く検討を進め、災害対応力を強化してまいります。
 次に、防災船着場の利用料金についてでございますが、防災船着場は災害時における物資の輸送等を目的として設置した施設でありますが、平常時においても一般船舶の利用を促進していくことは重要でございます。
 これまでに越中島など六か所の船着場を順次一般開放し、昨年は葛西臨海公園を夏の期間中開放するなど、利用促進を図ってまいりました。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた舟運事業者への支援として、令和二年八月から令和五年三月末まで利用料金の割引を実施しております。
 四月以降につきましては、船着場の利用状況や今後の社会経済状況等を踏まえまして、適切に対応してまいります。
 最後に、既設道路橋のバリアフリー化についてでございますが、高齢者や障害者など全ての人が安全で円滑に移動するためには、橋梁を含めた道路のバリアフリー化を進めていくことが重要でございます。
 都は、令和四年五月に整備方針を策定し、丸八橋や隅田川大橋など六橋について優先的に整備を検討する橋梁に選定いたしました。現在、実現に向けた課題を抽出し、エレベーターや人道橋など現場状況に適した整備手法の検討や、地元自治体など関係機関との調整などを行っているところでございます。
 引き続き、既設道路橋のバリアフリー化の取組を進め、誰もが利用しやすい質の高い道路空間を創出してまいります。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地下鉄八号線の延伸についてでございます。
 本路線は、東西線の混雑緩和はもとより、臨海地域のさらなる発展にも寄与する重要な路線でございます。
 都は昨年八月に、都市計画素案の説明会を実施するなど、都市計画と環境影響評価の手続に着手しております。
 また、本路線のルート及び新駅は最大五メートルの浸水が予想される区域に位置しており、東京メトロが駅出入口等における浸水対策を含めて設計を行っております。
 引き続き、関係者と連携し、二〇三〇年代半ばの開業を目指し、来年度、都市計画案等の説明会を開催するなど、事業化に向けた手続を着実に実施してまいります。
 次に、都心部・臨海地域地下鉄についてでございます。
 本路線は、都心部と臨海部とをつなぐ基幹的な交通基盤、いわば背骨としての役割が期待されております。
 昨年十一月、国の参画も得た事業計画検討会において、ルートや駅の位置を含めた事業計画案を取りまとめました。この事業計画案を基に、都は、計画のブラッシュアップと事業主体の検討を進めていくこととしており、こうした検討の中で、浸水対策についても配慮し、対応してまいります。
 引き続き、国を含めた関係者と連携して検討を進めるなど、この路線の早期事業化に向けた取組を加速してまいります。
   〔港湾局長矢岡俊樹君登壇〕

○港湾局長(矢岡俊樹君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京港におけるブルーカーボンの取組についてでございますが、CO2の吸収源として期待されているワカメやアマモなどの藻場等を創出していくことは重要であります。
 このため、都は今年度、海水の濁りや水流等の現況調査を踏まえて選定した港内の二か所にワカメとアマモを移植し生育状況の検証を進めているところでございます。
 来年度は、この検証結果を基にして生育環境の改善策の検討を進めるとともに、具体的な藻場等の整備箇所や整備方法、整備スケジュール等について取りまとめてまいります。
 今後とも、都は、脱炭素社会の実現に向け、ブルーカーボンの取組を着実に進めてまいります。
 次に、環境に配慮した船舶の導入についてでございますが、水素や蓄電池を使用する船舶には、軽油等を使用する従来型の船に比較して航行できる時間が短いといった課題があり、さらなる技術開発が必要な状況にございます。
 このため、都は、東京港や河川などで使用する小型船に水素エネルギー等を動力とする船舶を新たに導入するとともに、航行時間や航行速度等のデータの蓄積を通じ、技術開発に貢献する取組を行うことなどにより、環境に配慮した船舶の普及拡大につなげてまいります。
 来年度は、具体的な船舶の設計に着手し、令和八年度の導入に向け、着実に取組を進めてまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) ケアリーバーに対する支援についてでございますが、都は今年度から、児童養護施設の退所者等を支援するため、十八歳で措置解除となった方にアパートなどを借り上げる施設等に一年分の経費を独自に補助しています。
 支援を受けているケアリーバーや事業者等からは、職場や学校など、新しい環境への適応や人間関係の構築に一定の時間がかかるとの声がありました。
 こうしたケアリーバーの実態や、大学等の修学年限も踏まえ、来年度から支援期間を最長四年間、二十二歳の年度末まで延長いたします。さらに、自立援助ホームの退所者も新たに対象に加えるなど、ケアリーバーへの支援を一層強化してまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 労働者協同組合についてのご質問にお答えいたします。
 労働者協同組合は、介護や子育てなど地域の様々なニーズに応じた事業を行い、多様な就労機会を創出することが期待できます。これを地域課題を解決する担い手として、区市町村と連携して活動の促進を図ることは重要でございます。
 このため、都は昨年十月から、組合設立の受付が始まるに当たり、相談の窓口を設け、説明会を開催するほか、専用のウェブサイトやワークショップを通じて活動事例などを幅広く紹介をしてまいりました。さらに、組合との連携に向け、庁内や区市町村に内容の周知を図ったところでございます。
 今後は、組合の設立や運営を学ぶ機会を年間を通じて提供し、法人格の取得を目指す団体等へきめ細かい支援を行うほか、ウェブサイトでの事例発信を増やします。これらによりまして労働者協同組合の活動を後押ししてまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時三十六分休憩

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