令和五年東京都議会会議録第三号

○議長(三宅しげき君) 百二十二番酒井大史君。
   〔百二十二番酒井大史君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○百二十二番(酒井大史君) 初めに、子供、子育て施策について質問をいたします。
 東京都は、こども未来アクションを作成し、チルドレンファーストの社会実現へ踏み出しました。東京都子供・子育て支援総合計画と併せて、子育て支援策の展開や継続的に子供との対話を実践し、子供政策をバージョンアップしていくという姿勢には期待が膨らみます。
 現実の社会には、幸せな家庭だけではなく、虐待を受けている子供、学校でいじめられている子供、学校に行けない、行かない子供も存在している現状で、自分から意見表明できる子供のみならず、苦しい状況に置かれている子供たちの声なき声にこそ重きを置き、受け止めることが行政、政治の責任であり、誰も取り残さない子育て、子育ちを支援していくことが必要であると考えます。
 継続的に子供との対話を実践し、子供施策をバージョンアップしていくことは本アクションの根幹に当たると私は考えます。
 そこで、様々な環境に置かれた幅広い子供たちといかに対話を継続し、子供たちの支援につなげていくのか、知事に所見をお伺いいたします。
 次に、不登校児童生徒への対応について伺います。
 教育庁の統計調査によると、東京都の令和三年度における不登校児童生徒は二万七千百八十七人とされています。小学校における出現率は一・三三%、中学校においては五・七六%と、ともに八年連続で増加し、国全体と比べて若干ではありますけれども、都内の出現率は高くなっています。
 不登校の要因として、小学校、中学校ともに群を抜いて高いのは、本人の無気力、不安、続いて、小学校では家庭での親子の関わり方、中学校では学業の不振などが多いとされています。
 知事は所信表明で、多様な機会を確保すると述べましたが、まさに学校に戻るだけが目標ではなく、社会との関わりをいかに保っていくかが重要であり、市区町村が実施している教育支援センターやNPO法人との連携支援が必要と考えます。
 実際、立川市の教育支援センターでは、関わりを持てている児童は、不登校児童の約一割にとどまっています。
 都としてはこの問題にどのように対応していくのか、教育支援センターの運営に対する支援について見解を伺います。
 さらに、義務教育期間中は、市区町村で不登校児童や生徒の存在を把握していますが、中学校を卒業し進学等をしない子供の実態はつかめなくなります。
 毎年、義務教育終了時、進学も就職もしない子供たちが一定数おり、地元立川市においては、年度によって前後はいたしますが、総じて一%弱の子供たちが進路未定で卒業しています。
 東京都では、チャレンジスクールやエンカレッジスクールなどにおいて、学習意欲のある子供たちへの対応はしておりますが、義務教育終了後の進路の決まっていない子供たちへの継続的な支援を行っていくことも必要であると考えますが、都教育委員会の所見を伺います。
 次に、学校におけるいじめ問題について伺います。
 東京都は、スクールカウンセラーの配置、学校非公式サイト等の監視など、これまでも様々な対応をしていることは承知しています。しかしながら、令和三年度における小学校一校当たりの認知件数は四十二・六件、中学校では八・九件、高等学校では二十七・三件と、令和二年度には減少したものの、再び上昇に転じています。
 いじめられた児童生徒の多くは学級担任に相談しているとのことですが、いじめ問題は相談即解決とならない事例も多く、息の長い対応をしていかなければなりません。
 特に、親を含め誰にも相談をしていない児童生徒がいることは深刻な問題であり、相談しやすい環境整備が重要と考えますが、都教育委員会の取組について伺います。
 いじめの態様には、言葉の暴力から、身体に危害を加えられるなど、十四歳以上であれば刑事罰の対象になる事案もあります。いじめられている子供を救うことと併せて、いじめている側の子供に悪いことを認識させることが、その子自身の将来にもつながると考えます。
 都として、いじめの加害者に対する教育的指導についていかに取り組んでいるのか、見解を伺います。
 次に、犯罪抑止のための教育について伺います。
 最近問題となっている特殊詐欺の受け子や強盗事件の実行役として、ヤミバイトに陥る若年者への対策は急務の課題です。
 これまで、犯罪の被害者にならないための取組や教育は、様々な場面で実施されてまいりました。しかし、昨今、自分が意図せず、あるいは意図していたことを大きく上回る犯罪の加害者に仕立て上げられる状況は、社会、当事者の未来という観点からも重大な問題であると考えます。
 警視庁もヤミバイトの募集や応募への抑止として、Digi Policeを通じて情報発信や注意喚起にも努めています。また、私の知人には、元刑務官として、罪を犯した後の現実を教える活動をされている方もいます。
 そこで、都立高校において、犯罪の加害者にならないための知識習得に焦点を当てて、警視庁と連携して実例を交えた教育、講習等をさらに推進していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、なぜ社会にはルールがあるのか、法律はなぜ守らなくてはいけないのかなど、小中学校の段階において、学齢期に応じた法教育もさらに推進していく必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、障害者歯科医療について伺います。
 都はこれまでも、障害のある方が身近な医療機関で定期的に口腔ケアや歯科健診を受けられるよう、東京都歯科保健対策推進協議会で支援策等を検討してきています。障害のある方の歯科診療に関しては、地域の診療所で対応できることが望ましいものの、障害の状況や治療内容によっては麻酔科医との連携も必要とのことです。
 都内における専門的な医療機関は、飯田橋にある東京都立心身障害者口腔保健センターと歯科大学病院など、二十三区内にある高次医療機関に限られており、多摩地域の歯科医師会からは、多摩地域に当センターの分院あるいは拠点施設の設置を求める声もあります。
 そこで、障害のある方が速やかに必要な治療を受けられ、地域の歯科医療機関と専門的な機関との連携を推進するために、多摩地域の障害者歯科医療の提供体制の整備を求めるものですが、都の見解を伺います。
 次に、JR南武線を活用した羽田空港ダイレクトアクセスについて伺います。
 この区間は、快速運転の区間拡大のための待避線の設置と併せて、思い起こせば八年前の平成二十七年第一回定例会一般質問にて私が、当時同じ会派であった小山議員が予算委員会で提案をしたのが始まりでした。
 平成二十九年第一回都議会定例会での一般質問で取り上げた当時は、南武線沿線五市、川崎、稲城、府中、国立、立川で協議会、勉強会も発足をしていました。
 私は、川崎市内の南武支線や東海道貨物支線を活用して羽田空港に直結することが、多摩地域の便益のみならず、川崎市沿線住民にとっても理想的なプランと考えていました。
 昨年十二月及び昨日の本会議における他会派の代表質問では、武蔵野南線の貨物路線の活用や羽田空港アクセス線への接続も提案をされ、多摩地域から羽田空港へのアクセス向上の議論が党派を問わず展開されていることを大変うれしく思っております。
 昨年、都市整備局長は、沿線自治体や鉄道事業者間で課題について検討することが必要、沿線自治体の取組などを見極めながら適切に対応するという趣旨の答弁をしましたが、昨日、知事からは、踏み込んだ印象の答弁をされておりました。
 そこで、そもそも東京都は、沿線自治体がどのような取組をしたら適切な対応を取るつもりだったのか、見解をお伺いいたします。
 最後に、尖閣諸島活用基金について伺います。
 二〇一二年四月、東京が尖閣諸島を守ると元都知事の石原氏が表明をし、寄附を募ったことに端を発し、民主党政権が国有化したことで寄附の返還も難しいことから、二〇一三年三月に条例を制定、十四億円を超える基金が現在も塩漬け状態になっています。
 今年は基金創設から十年、当時を知る議員もこの議場にも少なくなってまいりました。基金の在り方を真剣に考える時期と思います。
 かねてより、水源林や離島の土地所有権を外国人が取得することに不安を抱く向きもあり、尖閣諸島の購入と活用を目的に募った寄附金の使い道として、水源地や離島の買占めを防ぐ目的であれば、寄附者の思いに沿うものではないかとも考えます。
 まずは課題の検討を求めるものですが、都の見解を伺います。
 以上で質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 酒井大史議員の一般質問にお答えいたします。
 子供との対話についてのご質問がございました。
 子供を客体ではなく、主体として捉えていく。この基本スタンスを踏まえ、子供との対話を実践しながら、子供目線に立った政策を練り上げ、先月、こども未来アクションを取りまとめをいたしたところでございます。
 引き続き、こども未来アクションを基軸に様々な工夫を凝らしながら、一人一人の実情に寄り添い、子供との対話を実践してまいります。
 なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、教育支援センターへの支援についてでございますが、これまで都教育委員会は、不登校の子供の学びの機会を確保できるよう、区市町村に対し、教育支援センターの新規設置や、家庭訪問等を行う支援員の配置を行う場合の経費を補助するなど、教育支援センターにおける取組を支援してまいりました。
 今後とも、こうした取組を通して、不登校の子供の自立に向けた支援を行ってまいります。
 次に、義務教育終了後の子供たちへの支援についてでございますが、都教育委員会は、義務教育終了後、進路が決まっていない子供を対象に、高校への進学等に関する相談に応じており、教育相談センターにおいて、都立高校の情報や入学に向けた説明を行っています。
 また、進学を希望する子供に対しては、学びのセーフティネット事業において、学校外での学習機会を提供しております。
 次に、いじめの防止に向けた取組についてでございますが、都教育委員会は、いじめの早期発見や早期解決などに資するため、学校が実施する定期的なアンケートのほか、ウェブチャット等で受け付けている子供専用のSNS相談等を通して、子供が相談しやすい環境づくりを促進しています。
 次に、いじめを行った子供への指導についてでございますが、都教育委員会は、いじめを行った子供が自分の行為を反省し、よりよい人間関係を築くことができるよう、スクールカウンセラーによる心理面からの支援の事例や警察等の関係機関と連携した指導の事例等、効果的な取組を示し、学校が適切に対応できるようにしています。
 次に、犯罪加害者にならないための教育についてでございますが、都立高校では、毎年度、警視庁と連携してセーフティー教室等を実施しており、引き続き、非行防止や犯罪被害防止教育に加えて、様々な誘いを断れず犯罪に加担させられた事例を取り上げるなど、生徒の非行防止のため、多様な観点から指導を行ってまいります。
 次に、小中学校での法に関する教育についてでございますが、都教育委員会は、子供たちが法や決まりを学び、社会の担い手としての資質、能力を身につけられるよう、区市町村教育委員会と連携して法に関する教育のための資料を作成し、各学校での活用を促してまいりました。
 また、各学校では、子供たちの成長に応じて、道徳科や社会科で法に関する教育を行っております。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 障害者歯科医療に関するご質問にお答えをいたします。
 都は、都立心身障害者口腔保健センターで、地域の歯科医師等を対象に、障害の特性や障害者への対応方法などを学ぶ研修や臨床実習を実施しています。
 また、地域の歯科診療所と専門的な医療機関との連携づくりなどを進める区市町村を支援するとともに、東京都歯科保健対策推進協議会等で連携の在り方を検討するなど、障害者歯科医療の提供体制の整備に取り組んでいます。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 南武線を活用した羽田空港アクセスについてでございます。
 東京圏における鉄道ネットワークは、基本的に国の答申に基づき整備などが進められていることから、まず、答申に反映されることが必要でございます。
 本路線には、川崎市内の一部区間における複線化の検討や、貨物線の運行区間等におけるダイヤ調整、空港への接続方法など、様々な技術的課題が想定されております。
 都といたしましては、沿線自治体や鉄道事業者間で、こうした課題の解決策の検討や、整備効果、事業性等の見通しを立てるとともに、国の答申への反映が必要と認識しており、関係者の取組を見極めながら適切に対応してまいります。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 尖閣諸島活用基金についてでございますが、本基金は、尖閣諸島を公の所有として安定させ、活用してほしいという寄附者の志を受け、条例に基づき設置したものでございまして、国による尖閣諸島の活用に関する取組のための資金とすることとしてございます。
 都といたしましては、こうした寄附者の志が生かされますよう、所有者である国に対して、尖閣諸島の活用を要望してございます。

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