令和五年東京都議会会議録第三号

   午後三時五分開議

○議長(三宅しげき君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十番鈴木純君。
   〔二十番鈴木純君登壇〕

○二十番(鈴木純君) 初めに、教職員等による児童生徒性暴力への対策について、伺わせていただきます。
 児童生徒への性暴力を行う教職員等が後を絶たないことを受け、児童生徒への性暴力を防止するための教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律が昨年四月に施行されました。子供たちが信頼する教職員による性暴力は、子供の心や体を深く傷つけるものであり、決してあってはならず、根絶に向けた取組を進めていかなくてはなりません。
 こうした一部の教育職員等の行為により、児童生徒の健やかな成長を阻害し、多くの教職員等の社会的な尊厳が損なわれる事態となっています。
 また、教職員による性暴力は、学校という閉ざされた空間で発生するものであることに加え、教職員と子供という特殊な関係であることから、子供が声を上げにくく、発見しにくい特性があるといわれています。
 こうした背景を踏まえ、法では、早期発見に向けた取組や相談を受けた場合の警察への告発義務、専門家の協力を得て調査を行うことなど、児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を総合的かつ効果的に推進することが定められています。
 そこで、この法律の趣旨を踏まえ、教職員による児童生徒性暴力に対して、都教育委員会ではどのような対策を行っていくのかを伺い、次の質問に移ります。
 激甚化する風水害や切迫性の高い首都直下地震など、東京は今まさに様々な危機に直面しています。
 こうした中、都は昨年十二月にTOKYO強靱化プロジェクトを策定し、都民の安全・安心を確保できる、強靱な持続可能な都市を実現していくこととしておりますが、ここからは、このプロジェクトの具体化に向け、防災、減災の観点から質問を行います。
 まず、防災意識の醸成についてであります。
 今から百年前の一九二三年九月一日にマグニチュード七・九の巨大地震が東京をはじめ関東を襲いました。この地震の被害は何といっても火災であり、当時の東京市の世帯数四十八万三千世帯のうち、約六割強の三十万世帯余りが全焼しています。火災で大きな被害が出る中、神田和泉町・佐久間町では、住民同士が助け合い、二列縦隊のバケツリレーによる必死の消火活動を続けた結果、焼失を逃れました。焼け野原の中で、震災前の姿をとどめる神田和泉町・佐久間町を、当時の報告書では、東京の大焦土の中にアフリカの砂漠の中に存するというオアシスの感を呈したといわれています。
 関東大震災から百年がたち、高層建築物が競うように建てられ、耐火、耐震の建物に覆われているように東京のまちも当時から大きく変化し、社会の状況も変わりましたが、神田和泉町・佐久間町の住民の共助の取組のように、関東大震災では現在も教訓となり得る事例は事を欠きません。
 今年は関東大震災から百年という節目の機会に、どのように機運を醸成していくのか、都の見解を伺います。
 次に、区市町村連携について伺います。
 昨年の第二回定例会一般質問において、都と区市町村間で締結された災害時の相互協力協定を基に、支援受入れや応援などの連携を一層強化することを求めました。都のみならず、被災現場の最前線を担う区市町村においても、受援応援体制を整え、大規模災害への対応力を強化することは、東京都全体の防災力を高める上で意義があることと考えます。
 今後、都として、区市町村の体制づくりや連携強化に向け、どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、自主防災組織の活動拠点における通信環境の確保について伺います。
 阪神・淡路大震災では、地震によって倒壊した建物から救出され、生き延びることができた人の約八割が、家族や近所の住民等によって救出されたとの調査結果があります。共助の担い手となる自主防災組織は、発災時に地域の声かけや避難誘導など、地域の防災活動について重要な役割を担うこととなるため、周辺の被害状況など、災害情報を収集した上で活動を行うことが不可欠であります。
 そこで、自主防災組織の活動拠点において、災害情報を収集するためのスマートフォンの電源確保だけでなく、通信環境の確保を進める区市町村の取組を支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、下水道施設の耐震対策について伺います。
 今月に発生したトルコ南部を震源とした大地震では、建物やインフラに甚大な被害が生じています。一方、日本では、首都直下地震が今後三十年以内に七〇%の確率でマグニチュード七クラスの地震が発生することも予測されています。
 昨年五月に改定された都の被害想定では、改善されているものの、インフラに甚大な被害が生じることが示されており、震災対策は一刻の猶予もありません。
 特に、震災時に下水道管が損傷し、トイレが使用できなくなった場合、生活に支障を及ぼすことになり、加えて、下水道施設が被災した場合には、まちや都民を守ることができず、浸水被害が発生することも予想されます。
 下水道施設は、都民の生活を支える重要なインフラであり、震災対策をより一層強化していく必要があると考えますが、下水道施設の耐震化の取組について伺います。
 次に、東京都災害薬事コーディネーターの設置について伺います。
 発災時には、被災者のニーズに応じた適切な医療を提供する必要があり、そのためには、医療に欠かすことのできない医薬品を迅速に供給することが重要となります。熊本地震や東日本大震災の際にも薬剤師が被災地に入り、医薬品の発注管理や限られた医薬品在庫からの代替薬の選択等を担い、医療提供に大きく貢献しました。
 区市町村においては、各地区薬剤師会から災害薬事コーディネーターが選任され、医薬品の供給調整を行うこととなっておりますが、しかし、東京都では、医師である災害医療コーディネーターがその役割を担い、災害薬事コーディネーターは設置しておりません。
 そこで、都全域においても、薬剤師の専門性を生かした医薬品供給体制の強化を図るべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、大規模風水害時の情報発信について伺います。
 都では、大規模風水害時の広域避難先の確保に向け、都立施設はもとより、国、民間施設と積極的に今現在も調整を進めていることはまず評価しております。
 一方で、広域避難先は、平時から周知が図られなければ、災害時に有効に活用されないことが考えられます。広域避難先には限りがあることから、平時からあまり周知を行い過ぎると、本来、親戚、知人宅等への自主避難が可能な方も広域避難先に避難してしまい、収容力が足りなくなってしまう可能性があるということも分かりますので、要望にとどめますが、広域避難自体があまり住民に認識されていない現状においては、何らかの周知策をぜひとも検討していただきたいと思います。
 そういった意味でも、行政から提供する防災情報の発信は極めて重要です。広域避難は、遠方の避難先に避難しなければならないことが想定されることにおいて、東京都をはじめ行政は、メディアなどとも連携して、より効果的な防災情報等の発信に努め、住民を適切な避難行動へと誘導していく必要があります。
 そこで、大規模風水害時の情報発信の一層の強化を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、都営地下鉄の大規模水害対策について伺います。
 交通局は、今般、浸水対策施設整備計画を策定し、大規模水害に対しては、ほかの鉄道事業者等と連携し整備を着実に進めることで、地下鉄トンネル内の浸水範囲が縮小されることなどの効果があるとしていますが、台東区の都営浅草線の浅草駅、蔵前駅、浅草橋駅や大江戸線の蔵前駅など、一部の区間では引き続き浸水することが見込まれています。
 地下鉄は、都民生活を支える重要な役割を担っており、将来的には全ての区間での浸水の解消を目指して対策を講じていく必要があると考えます。都営地下鉄の大規模水害対策にどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、火山対策について伺います。
 昨年第二回定例会において、都への影響が想定される富士山噴火降灰対策について確認させていただきました。その後、都は、桜島の噴火対策に取り組む鹿児島市等を視察し、具体的な対策や課題等について意見交換を実施したと聞いており、そうして得られた情報等を活用し、国の検討を待たずして、富士山噴火降灰対策の具体化に着手していることを評価しています。
 一方、都は現在、被害想定を踏まえ、都民の命と暮らしを守るため、防災対策の羅針盤となる地域防災計画の修正に取り組んでおりますが、富士山噴火降灰対策については、引き続き着実に推進すべきと考えております。
 そこで、富士山噴火時は大量の降灰が予想されていますが、首都機能の維持等のためには迅速な降灰除去が必要であります。いつ起こるとも知れない富士山噴火に備え、早急に対策を具体化すべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、複合災害に向けた強靱化の取組について伺います。
 関東大震災が発生した九月は、台風の発生、接近が最も多い時期でもあります。実際に地震が発生した際にも、日本海側にあった台風の影響で関東では強風が吹いており、昼どきの時間帯での火の使用も多い中での発生で、火災の延焼が拡大したともいわれております。また、地震発生から数週間後には、台風の接近等により集中豪雨が発生し、神奈川県等で大きな被害が発生したとの記録があります。
 単独で生じる災害への対策はもちろん重要でありますが、首都直下地震の後に大型台風に見舞われるケース、自然災害が同時に発生してしまったケース、続けて発生したケースなど、被害を激甚化、長期化させる最悪のケースも想定しておかなければなりません。
 こうした複合災害への対応を的確に行うためには、国や区市町村などの関係機関と協力をしながら、さきに発生した災害の被害や復旧の状況を掌握し、それに応じて、次の被害に備えた都民への情報発信や避難先の確保を行うことができる体制を整備しておくことが重要であります。
 今後、複合災害に備え、関係機関と連携して東京の強靱化を推進するべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 本日は、防災をメインに様々な切り口で質問を行わせていただきました。関東大震災から百年の節目を受け、都民の皆様には、ご自分が住んでいる地域の避難所はどこか、自宅に数日分の備蓄はあるかなど、改めて災害への備えを確認していただき、また、都としてはしっかりと対策を進めていただくことを要望し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鈴木純議員の一般質問にお答えいたします。
 複合災害に向けた強靱化の取組についてのお尋ねでございました。
 風水害や地震などの災害は複合的に発生するおそれがあり、都はこうした脅威からも、首都東京の壊滅的な被害を防がなければなりません。
 このため、TOKYO強靱化プロジェクトにおきましては、関係機関との連携の重要性も踏まえ、複合災害に対し強化すべき方向性をお示しいたしました。
 具体的には、ハードの備えに加え、ソフト対策として、国や区市町村、事業者等との情報共有や発信、広域的な避難を含めた協力体制の強化など、関係機関と連携し、各施策をレベルアップしてまいります。
 今後、都民の安全・安心の確保に向けまして、ハード、ソフト両面で万全の備えを固めることで、複合災害に対しましても強靱な東京をつくり上げてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 教職員による児童生徒への性暴力対策についてでございますが、都教育委員会では、昨年四月の法施行を受け、教職員に対して、事例演習やセルフチェックによる意識啓発の徹底を図るとともに、弁護士による第三者相談窓口の開設や、全児童生徒への相談シートの配布等を通じ、声を上げやすい仕組みを整えてまいりました。
 また、事案発生時に児童生徒の保護や事実確認をより適切かつ迅速に行えるよう、医療や心理等の専門的知見を取り入れ、学校等関係者が取るべき具体的な行動を記した都独自の初動対応マニュアルを新たに策定いたします。
 こうした取組により、児童生徒に対する性暴力への対策を適切かつ総合的に推進してまいります。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、都民の防災に対する機運醸成についてでございますが、大規模災害時に都民が適切な行動を取るためには、日頃から都民一人一人が過去の経験から学び、防災意識を高めることが重要でございます。
 このため、都は、関東大震災百年を契機に、震災の教訓を踏まえた自助、共助の重要性を訴求するため、シンポジウムを開催することとしており、幅広い層を対象とした効果的な普及促進につなげてまいります。また、これまで実施してきた各種セミナーに関東大震災の教訓を盛り込むことなどを検討し、自助、共助の意識の浸透を図ってまいります。
 これらにより、都民の防災意識のさらなる向上に取り組んでまいります。
 次に、防災対策における区市町村との連携についてでございますが、大規模災害発生時に、救出救助機関の受入れや自治体間の相互応援を円滑に行うためには、都や区市町村があらかじめ体制を整備しておくことが重要でございます。
 このため、都は昨年六月に、都内全区市町村が参加する会議体を立ち上げ、災害時の支援受入れや応援に関する意見交換等を行っており、今後、こうした会議などで得た区市町村の意見を集約し、受援応援計画に反映してまいります。
 また、区市町村ごとの課題を整理し、体制整備や計画策定に向けて必要な支援をきめ細かく行っていくことで、東京の災害対応力を向上させてまいります。
 次に、自主防災組織に対する区市町村の取組支援でございますが、地域防災の要である自主防災組織が災害時の活動に不可欠な被災情報を確実に収集するためには、通信機器の電源や通信環境の確保が重要でございます。
 都はこれまで、令和元年房総半島台風による被害の教訓等を踏まえ、自主防災組織が活動拠点に非常用発電機を整備する際に支援を行う区市町村に対し、その費用の一部を助成する事業を実施してまいりました。
 さらに、自主防災組織が通信環境を確保できるよう、Wi-Fi機器を設置する場合も対象といたしまして、災害時における活動環境の整備に取り組んでまいります。
 次に、大規模風水害時における情報発信についてでございますが、発災時に適切な避難誘導を行うには、行政が防災情報を効果的に発信し、住民等に確実に伝える必要がございます。
 このため、都は今年度、国と共同で区市町村、メディア事業者等で構成する検討会を設置いたしました。高齢者や若者など、住民それぞれの状況に応じた情報発信手段の効果的な組合せや水害リスク、取るべき備えを住民に直接伝える方策を検討し、昨年九月に中間のまとめを行いました。
 引き続き、地域特性や住民意識等も踏まえた検討を進め、大規模風水害時における情報発信の強化を図ってまいります。
 最後に、富士山の降灰対策についてでございますが、富士山噴火時には、降灰に伴う交通網の混乱や停電の発生等が懸念されるため、都は、TOKYO強靱化プロジェクトにおいて、噴火時の都市活動の維持を目指し、降灰除去体制の確立等に取り組むことといたしました。
 国においては、降灰対策の指針の策定を検討しており、それを踏まえ、都としての対応策を策定することとなります。
 現在、経済活動の継続に不可欠な道路の除灰を進めるための方策を検討しております。具体的には、関係局や関係事業者と連携し、必要な資器材の確保策や降灰の収集運搬方法等について検討を重ねてございます。
   〔下水道局長奥山宏二君登壇〕

○下水道局長(奥山宏二君) 下水道施設の耐震化の取組についてでありますが、下水道局では、下水道管の流下機能を確保するため、避難所や一時滞在施設等から排水を受ける下水道管とマンホールの接続部の耐震化などを実施しております。今後、震災後に人が集まる施設など、対象施設を順次拡大してまいります。
 また、水再生センターやポンプ所では、震災時にも揚水機能等の最低限の下水道機能を全ての施設で一系統確保しており、さらに施設能力を最大限発揮するため、水処理施設の流入渠等にも拡大し、耐震化を進めております。
 今後、公園の地下などの雨水調整池等を新たな対象とし、大規模地震後の豪雨時にも貯留機能を確保してまいります。
 これらにより、東京の強靱化に向け、下水道施設の耐震化を推進してまいります。
   〔福祉保健局健康危機管理担当局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(佐藤智秀君) 災害発生時の医薬品供給体制に関するご質問にお答えいたします。
 災害時には、医療救護所等で活動する医療救護班等のニーズを集約し、適切に医薬品を供給する必要がございます。そのため、区市町村の災害薬事コーディネーターが医薬品供給の調整を行い、調達できない場合には都に要請することになっております。
 都は現在、災害対策本部の下に、都全域の医薬品供給など、医療救護全体の調整などを担う医師である災害医療コーディネーターを置いておりますが、薬剤師の災害薬事コーディネーターを新たに置き、体制強化を図ります。
 今後、東京都薬剤師会等と発災時の具体的な業務手順の検討を行うとともに、来年度修正する地域防災計画に位置づけるなど、確実に機能するよう取り組んでまいります。
   〔交通局長武市玲子君登壇〕

○交通局長(武市玲子君) 都営地下鉄の大規模水害対策についてでございますが、大規模水害時には、トンネル等地下鉄ネットワークを通じて浸水被害が広範囲に拡大することが想定されるため、駅出入口等、地上からの水の流入防止に加え、地下部での浸水区域の拡大を防止することが重要となります。
 このため、今般策定した浸水対策施設整備計画では、トンネル内に防水ゲートを、乗換駅構内に防水扉を整備することとし、他路線との接続の多い大江戸線を先行して整備するなど、効率的、効果的に対策を進めてまいります。
 また、浸水深が深い一部の駅出入口等につきましては、建て替えなどの抜本的な対策が必要でございまして、駅の大規模改修等の機会を捉えて対策を検討、実施いたします。
 今後とも、浸水対策を着実に進め、災害に強い都営交通の実現を目指してまいります。

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