令和五年東京都議会会議録第三号

○議長(三宅しげき君) 三十四番原純子さん。
   〔三十四番原純子君登壇〕

○三十四番(原純子君) 最初に、江戸川区民を苦しめている羽田新ルートの問題です。
 二〇二〇年三月二十九日、江戸川区では、これまでの南風悪天候時着陸便に荒川新ルート離陸便が加わり、荒川沿い住宅地の住民は、航空機の騒音で朝七時から起こされる日々が始まりました。
 二〇二一年度の江戸川区上空の飛行日数は三百三十九日、飛行回数は三万百四十一回、つまり、ほぼ毎日、朝夕を中心に九十便近くがひっきりなしに頭上を飛んでいきます。
 テレワークに集中できない、コロナ禍なのに換気ができない、日々騒音に悩まされ心身共にどうにかなりそうですなどの訴えが寄せられています。川沿いには学校もあり、常に落下物、墜落などの危険が付きまとっています。
 共産党江戸川区議団が昨年実施した区民アンケートに回答した一千四百三名のうち四五%もの方々が、新ルートの撤回、中止を求めています。都心低空飛行に反対する江戸川区民の会は、毎週水曜の朝、スタンディングでこの問題を区民にアピールし続け、百回を超えました。
 都は、羽田新ルートが住民の生活環境を悪化させ、暮らしを脅かしているという認識はお持ちですか。
 住民は、羽田新ルートを中止し、元の海上ルートに戻すことを一貫して求めていますが、国交省の固定化回避検討会でも、荒川離陸ルートは検討の対象にすらなっていません。住民の声を無視する国の姿勢は決して許されません。
 住民の反対は、江戸川区以外でも、そして、ルート直下以外の地域でも広がっています。品川区では、早急に新ルートの運用停止を求める意見書を国に提出することを求める請願が、区内の全町会長、自治会長二百一名の過半数、百一名の署名とともに区議会に提出されました。
 危険な羽田新ルートは、離陸便、着陸便とも直ちに中止すべきです。都民の安全な暮らしに責任を持つ東京都が、国に対して強く中止を迫ることを求めます。
 次に、葛西臨海水族園の建て替え事業についてです。
 都立で唯一の水族館である葛西臨海水族園は、年間百四十万人を超える来園者があり、多くの人に親しまれ、小中学校の教育や大学の調査研究にも活用されています。国内外の水族館との連携も活発で、まさに都民の財産です。開園から三十年以上がたち、設備の老朽化により、現在、建て替え整備事業が計画されています。
 水族園が立地する葛西臨海公園は、東京都と都民が力を合わせ、長い時間をかけて自然環境を整えてきた歴史があり、今は野鳥が飛来し羽を休める干潟や湿地帯、樹林が広がる東京東部の貴重な公園です。また、源流から海に至る川の流れや、そこに生きる淡水魚を子供の目線で見ることができる淡水生物館は、水族園と並ぶ貴重な施設です。
 ところが、水族園の建て替え計画により淡水生物館が解体されます。あわせて、小川と木々の散歩道、流れのエリアが壊され、樹木が大量に伐採される可能性が高いことが分かりました。
 二月十日の環境・建設委員会には、二つの団体から、計画の詳細の公表、樹木の伐採はしないこと、淡水生物館を残してほしいなどの陳情が出されました。
 改めて、新しい水族園の計画敷地には何本の樹木があり、うち何本伐採し、何本移植をする計画なのか、都民に明らかにしてください。
 葛西臨海公園は海沿いで、干潟や樹林では野鳥や多くの生き物が生息する自然豊かな公園です。樹木は公園の主役です。日本野鳥の会東京支部の方は、公園の木は一本でも切ってほしくないとおっしゃっていました。樹木の大量伐採は許されません。伐採を避ける計画につくり直すべきであり、情報を都民に公表すべきですが、いかがですか。
 建て替え計画をPFI方式にしたため、都民の公園なのに、どんなものになるのかも都民に全く知らされず、都民の意見など生かすすべもありません。都民不在のPFI事業は撤回すべきですが、見解を伺います。
 次に、特別支援学校の教育条件整備について伺います。
 都議会全会一致で制定されたこども基本条例は、都は、子供の学ぶ意欲や学ぶ権利を尊重し、一人一人の個性に着目し、自立性や主体性を育むために必要な環境の整備を図るとうたっており、それは障害のある子供たちも一緒です。知事はどう認識していますか。
 私の地元江戸川区にある鹿本学園は、知的障害の小中学部と肢体不自由の小中高等部の併置校です。隣同士だった小岩、江戸川の両特別支援学校を統合し、二〇一四年に開校されました。
 児童生徒数三百七十三人でのスタート直後から在籍数が増え続け、今年度は四百五十人にもなりました。教職員は二百四十三人、職員室は四つもある大所帯です。
 敷地を統合し改築した結果、校舎と校庭が道路で隔てられ、橋を渡らないと行けません。子供たちは、校庭に行くときも、体育館や図書コーナーに行くときも列をつくって歩きます。校内の移動さえ、安全を確保するには管理的にならざるを得ません。
 スクールバスは二十八台にもなり、うち二コースは六十五分かかるそうです。朝、二十八台全部が学校に到着し校門を閉めるまで、子供たちは下車できません。最初に到着した子供はバスの中で二十分近くも待つことになります。教育環境として、余りにも大規模で、改善が求められます。
 子供一人一人の障害の特性に応じた専門的な教育を実現するため、特別支援学校の施設や教育環境の整備は都の重要な仕事ですが、どう認識していますか。
 教室不足も深刻です。鹿本学園では、知的障害部門の教室が足りず、中学部三年生は肢体不自由部門の校舎で学んでいます。さらに、図工室などの特別教室や会議室を普通教室に転用しているのが十一室、教室を間仕切りして二学級で使っているのが六室という実態です。パーティションで区切った細長い教室で、壁にぴたりと机をつけ、縦に一列に並んで課題をする子供たち。窓側にベランダがないため、二方向避難経路が確保されていない部屋もありました。先生方は、新年度の入学児童数が増えるたびに、教室をどう確保するか悩んでいます。
 鹿本学園の在籍児童生徒が増加し、授業、通学などの面で子供にしわ寄せが行っていることについて、都教委はどのように認識していますか。
 都内で、鹿本より児童生徒数が多いのは王子特別支援学校と羽村特別支援学校ですが、この二校は近隣に学校建設計画があり、開校すれば在籍児童生徒数を減らせる見込みです。一方、鹿本学園のある地域に学校新設の計画はなく、このままではあふれてしまいます。
 この地域に特別支援学校の新設を急ぐ必要がありますが、いかがですか。
 都の特別支援教育推進計画(第二期)第二次実施計画には、新たな施設整備計画が明記されず、検討中とされたまま一年が過ぎようとしています。進捗状況と発表の見通しをお示しください。
 江東区の墨東特別支援学校も深刻です。以前は子供の数が百人くらいだったのが、現在は百六十七人、スクールバスも、本来の屋根つき駐車場七台分に対し現在十四台で、来年度はさらに増える予定とのことです。朝はエレベーターが渋滞し、教員が車椅子を押してスロープを三階まで上がっています。特別教室の転用は二十室、間仕切り教室二室となっています。
 東部地域に特別支援学校を新設してほしいとの要望が都民から出されています。早急に検討すべきと考えますが、いかがですか。
 八王子特別支援学校は、学校新設により教室不足が解消されました。一時は小学部から高等部まで四百六十人が在籍し、ほぼ全ての教室が間仕切り教室となり、転用教室での対応が続いていたそうです。
 二〇一九年に八王子西特別支援学校が新設され、今は小学部と中学一年生で八十五人、教職員は三十八人の落ち着いた学校になっています。今後、中三までそろっても百二十人ぐらいの規模です。
 私は、学校を見学させていただきましたが、間仕切り教室はゼロになり、図工室、作業室、音楽室、プレールームなどの特別教室や更衣室などが十分確保されていました。かつては廊下にあった図書コーナーも図書室として整備され、長椅子でゆったり本を広げて読めるようになっていました。授業中に落ちつかなくて廊下を歩いていた子供が、その後、空き教室で一人穏やかに机に向かって過ごせていました。
 このような教育環境を子供たちに保障することこそが東京都に求められています。どう認識していますか。
 全日本教職員組合、教組共闘連絡会と障害児学校の設置基準策定を求め、豊かな障害児教育の実現をめざす会は、一校当たりの児童生徒を百五十人以下にする提言を発表しています。
 東京都としても、子供たちの豊かな成長、発達を保障する立場で、特別支援学校の適正規模について調査研究することが必要ですが、いかがですか。
 二つ以上の障害を持つ重複障害児が、重度重複学級ではなく普通学級とされている実態があります。子供の実態に合わせ、三人で一学級の重度重複学級の対象とすべきです。いかがですか。
 教職員の適切な配置も必須です。鹿本学園は、統合前は四人の養護教諭が配置されていましたが、統合後は三人になってしまいました。都の加算一人がついているものの、とても足りません。栄養職員は、どんな大規模校でも配置基準は一人です。
 都教委は、養護教諭、栄養職員、事務職員について、児童生徒数に応じた定数改善を国に求めています。国に求めるのは重要ですが、まずは都独自に配置することを求めますが、いかがですか。
 現場の声をよく聞きながら教育環境整備を進めることを強く求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 原純子議員の一般質問にお答えいたします。
 障害のある子供の教育についてのお尋ねでした。
 障害の有無や種類、程度にかかわらず、子供の学ぶ権利を尊重し、可能性を最大限に伸ばすことができるよう、きめ細かな支援に取り組むことが重要でございます。
 その他の質問につきましては、教育長、東京都技監及び都市整備局長が答弁をいたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 九点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別支援学校の施設等の整備についてでございますが、学校施設やスクールバス等の教育環境の整備は都教育委員会の役割と認識しており、適切に対応しております。
 次に、鹿本学園についてでございますが、本校では在籍者数が増加しておりますが、授業等に支障が生じないように工夫しながら学校を運営しております。
 引き続き、特別支援学校については、児童生徒数の将来推計なども見据えて適切に対応してまいります。
 次に、特別支援学校の整備についてでございますが、児童生徒数の将来推計や全都的な配置バランスなどを勘案した上で、特別支援学校の新設や増改築などを実施しております。
 次に、特別支援学校の施設整備計画についてでございますが、児童生徒数の将来推計や全都的な配置バランスなどを勘案した上で、関係者とも調整しながら新設や増改築などを検討しており、決定後に公表する予定でございます。
 次に、特別支援学校の新設要望についてでございますが、児童生徒数の将来推計や全都的な配置バランスなどを勘案した上で、特別支援学校の新設や増改築などを実施しております。
 次に、特別支援学校の教育環境についてでございますが、特別支援学校の施設設備の整備は都教育委員会の役割と認識しております。
 施設を整備するに当たっては、特別教室の種類や教室の面積等の標準を示した都の施設整備標準等を踏まえ行っております。
 次に、特別支援学校の規模についてでございますが、校種、障害種別、建築条件や地域事情等を考慮して、特別支援学校ごとに規模を設定しております。
 次に、重度重複学級についてでございますが、対象となる重複障害の認定に当たっては、学校教育法施行令に定める障害の程度に二つ以上該当することが必要でございます。
 都教育委員会では、法令の定める障害の程度に該当するか否かについて、児童生徒の発達や行動、疾病等の側面から総合的に判断し、重度重複学級の対象者を認定しております。
 次に、特別支援学校における養護教諭等の配置についてでございますが、都においては、国の標準法に基づく定数に加え、障害種別の異なる部門を設置する場合には、児童生徒にきめ細かく対応できるよう、養護教諭等を加算し、配置しております。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、葛西臨海水族園の整備事業についてでございますが、計画敷地全体の樹木の総数は要求水準書で示しているとおり約千九百本でございますが、新施設の建築面積は計画敷地の約三分の一であり、かつ樹木の少ない芝生広場を中心に建設いたします。
 実際に支障となる樹木は、現在事業者が行っている設計において明らかになります。
 次に、新施設整備における樹木の取扱いについてでございますが、新施設の設計に当たっては、樹木への影響を極力減らすよう配慮することとしております。
 支障となる樹木の取扱いについては、今後、設計に合わせて調査を実施の上、不健全木や移植が困難な大径木などを除き、移植を前提に検討することとしております。
 こうしたことを含め、事業の進捗状況について適切に公表していきます。
 最後に、事業手法についてでございますが、新施設の整備については、民間の自由な発想や最新技術等を活用するとともに、工期の短縮やコスト縮減が期待できることから、都が事業のモニタリングを行いながらPFI手法により進めることといたしました。
 整備に向けては、パブリックコメントにより都民意見を広く聴取した上で、基本構想及び事業計画を策定しております。
 また、新施設の概要については、都のホームページ上で公表しております。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 羽田新飛行経路に関する都の認識についてでございます。
 将来にわたり東京が国際競争力を持ちながら持続的な発展を続けていくためには、羽田空港の機能強化を図ることが不可欠でございます。
 新飛行経路について、都民の皆様から騒音や落下物に対する不安など様々なご意見があることは承知しております。
 都はこれまで、国に対し、騒音影響の軽減をはじめ様々な対策を求めてきており、引き続き、丁寧な情報提供と騒音、安全対策の実施などを求めてまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時四十二分休憩

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