令和四年東京都議会会議録第十八号

○議長(三宅しげき君) 九十番伊藤しょうこう君。
   〔九十番伊藤しょうこう君登壇〕

○九十番(伊藤しょうこう君) 災害対策について伺います。
 都は、土砂災害防止法に基づき土砂災害特別警戒区域を指定し、災害を未然に防止するため、開発の制限などを行っております。十一月現在、都内全域の土砂災害特別警戒区域は一万三千六百十五か所。そのうち、島しょと西多摩、そして、私の地元八王子を合計すると一万か所となり、全体の約七三%にも上ります。
 しかし、島しょ部や多摩西部地域では、平たんな土地は少なく、特別警戒区域からの移転が困難な場所も存在します。よって、住み続けるためには、擁壁の設置や住宅改修が必要になるなど大きな負担が生じ、住み慣れた地域に居住することを諦めねばならない懸念もあります。
 今後、都として、土砂災害特別警戒区域内の建築物の安全対策を推進するための支援を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に地籍調査について伺います。
 地籍調査とは、一筆ごとの土地の所有者、地番などを調査し、境界の位置と面積を測量する調査のことであり、市区町村が実施主体となります。土地の記録は登記所で管理していますが、その半分ほどが明治時代につくられたもので、境界や形状などが現実とは異なる場合も多く、土地の面積も正確ではないこともあります。
 そこで、地籍調査により登記簿の記載の修正や地図が更新され、様々な行政事務の基礎資料として活用されることが期待されています。
 しかし、地籍調査を実施していない地域では、災害時に、まず、土地の境界確認から始める必要があり、被災地の復旧、復興が遅れる要因にもなります。
 つまり、地籍調査の成果は、迅速な災害復旧、復興における重要な基盤となりますが、都市部での地権者の多さや境界確定の難しさなどにより三大都市圏では遅れが目立ち、東京都も二四%となっています。
 実施主体である市区町村も予算や人員に制約がある中で民間事業者とも連携を図りながら進めていますが、都として地籍調査の進捗に向けて市区町村への支援などにどのように取り組むのか見解を伺います。
 次に、町会、自治会への支援について伺います。
 遠くの親類より近くの他人ということわざもありますが、防災、環境美化など、隣近所の助け合いは極めて大事であり、我が党は、地域コミュニティの要となる町会、自治会活動への支援を政策の柱の一つとしてきました。
 しかし、多くの町会、自治会では、例えば、マンションの住人を個別に訪問してもなかなか加入してくれないなど、町会離れによる加入率の低下や高齢化等による役員の担い手不足などの問題を抱えています。
 都は、これらの問題を解決する一助として、地域の底力助成に加えて、町会・自治会応援キャラバンなど、新しい取組を始めていますが、町会、自治会役員の方など、現場の声に丁寧に耳を傾け、もう一歩踏み込んだ取組が必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、アスリートの学校現場への参画について伺います。
 私は、昨年の一般質問において、国際大会などで活躍したアスリートの技術や経験を学校現場で発揮してもらうよう、導入に本腰を入れるべきと提案したところ、教育長からは、アスリートなどが小学校の体育の授業で活躍できるように、人材の発掘や確保、事前研修の実施方法を検討するとの答弁がありました。
 そして、都教委は昨年度から、専門性を有する外部人材を小学校の講師として活用する取組を始めたとのことです。
 アスリートの参画により、多忙な教員の負担軽減の一助にもなりますし、また、パラリンピアンの参画で、障害がある方への理解の促進にもつながると考えます。
 もちろん導入に当たっては、アスリートの確保や現場の理解など課題はありますが、小学校だけでなく中学や高校にも展開してほしいと提案します。
 そこで、体育の授業におけるアスリートなど外部人材の活用の現状と今後の取組について見解を伺います。
 次に、南大沢スマートシティについて伺います。
 最先端のテクノロジーを都市に実装し、都民が質の高い生活を送るスマート東京の実現のため、先行実施エリアとして、5G活用サービスを創出する西新宿や、地域課題を踏まえたモビリティーサービスを目指す南大沢などで取組が進められています。
 内閣府のガイドブックによると、新技術や各種のデータ活用をまちづくりに取り入れたスマートシティを進める意義は、市民福祉の向上を掲げており、基本コンセプトも、新技術ありきではなく、課題の解決、ビジョンの実現を重視しています。
 さて、南大沢スマートシティについては、令和二年度に、都は、地元自治体や企業等と協議会を立ち上げ、現在、実施計画はバージョンツーとなっています。地域の特性や課題を踏まえ、モビリティー、まちのにぎわい、情報を基本方針として、先端技術を活用した実証実験を昨年と今年も実施しています。
 そこで、南大沢スマートシティの取組の目的と現在の状況、さらには、今後の展開について見解を伺います。
 続いて、十月にオープンした東京たま未来メッセについて伺います。
 東京たま未来メッセは、多摩地域の産業集積の強みを生かし、都における産業の振興を図る施設として開館しました。
 実際、多摩地域の各企業が出展するものづくりEXPOや保健、医療や介護事業者による健康フェアなど様々なイベントが行われ、コロナ禍でありながら、多くの人や事業所でにぎわっています。
 こうした利活用を通じて、広域的な産業交流の中核を担うことにより、東京の産業、サービスのイノベーションを生み出していくことが期待されています。
 まだ開館して二か月足らずでありますが、都として、この施設を活用し、今後どのように多摩地域の活性化につなげていくのか伺います。
 次に、就農準備の支援に関して、先日視察に伺いました東京農業アカデミー八王子研修農場について伺います。
 この研修農場は、開設して三年目、東京だからできる農業をキャッチフレーズに、毎年五名の研修生を受け入れ、栽培実習だけでなく、マーケティングの座学など、プロの農家を育てることを目指しています。
 さて、東京の農業は、畑と消費地が近いことが最大のメリットであり、この研修農場でつくられた野菜も、銀座など都心部で飛ぶように売れるそうです。
 その一方で、貸借による農地の確保に新規就農希望者が苦労することを受けて、都有地に営農経験が積めるように、農場整備も予定しています。
 都は、新たな就農希望者が都内で営農の場を確保し就農を開始できるよう支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、経済安全保障に係る警視庁の取組について伺います。
 近年、暮らしや産業に不可欠なものや材料が不足する事態が相次いでいます。新型コロナ流行初期のマスク不足や、半導体不足で給湯器の供給不足などの事態もありました。
 グローバル化により、企業の供給網が世界中に広がった結果、新型コロナの世界的流行やロシアによる軍事侵攻など、何かが起きるとものが入らなくなるリスクが高まっています。
 こうした国際情勢の複雑化や社会構造の変化等に伴い、経済活動に関して国民生活の安全を守るため、国は、経済安全保障推進法を公布し、特許の非公開化などで技術流出を防ぐ制度も柱に据えています。
 つまり、大企業だけでなく中小零細事業者がつくり上げ保有する高度な技術、情報の海外への流出防止のため、官民挙げての対策が急務です。
 警視庁は、周知啓発のため、狙われる日本の技術というドラマを制作し、公開しましたが、動画作成の狙いと、今後の取組について伺います。
 次に、大人の発達障害への対応について伺います。
 文部科学省によると、令和二年度に全国の小中高校で、発達障害を持ち特別な指導を受けている児童生徒は約十六万五千人となり、調査開始以来最多となりました。
 また、発達障害と診断された年齢については、厚労省によると、未成年は約二十二万五千人に対し、二十歳以降は約二十四万三千人と、発達障害は、成人になってから診断される方が多いそうです。
 社会人になっても、単純なミスを繰り返す、人間関係がうまくいかないなど、生きづらさを感じる方や、自分はほかの人と何かが違うのかもと悩んでいる方も多いそうです。
 発達障害は、コミュニケーションが苦手で特定のことへのこだわりが強い自閉スペクトラム症や、年齢に比べて落ち着きがない、ミスが多い注意欠陥多動性障害、そして、知的発達には問題ないが、読む、書くなどに困難がある学習障害の三つに分類されますが、障害には多様性があり、連続体として重なり合っていることもあります。
 知的障害を伴わない場合、子供の頃は、少し変わった人だと認識されながらも普通に大人になるケースも多くあり、むしろ興味があることに集中する特性から、学校では優秀な成績を取り、本人も周囲も発達障害であると気づかないこともあるそうです。
 こうした中、大人の発達障害に対して悩みを抱える当事者の支援や相談窓口を充実させること、そして、職場などの理解を広めていくことは、本人にとっても周囲に対しても必要な施策と考えます。また、発達障害と認定されないグレーゾーンの方への支援も必要です。
 こうした状況を踏まえ、大人の発達障害に対してどのように取り組むのか、知事に伺います。
 最後に、太陽光パネル義務化の条例と補正予算について一言申し上げます。
 この事業は、個人の所有する自宅を対象としており、所要経費から事業効果まで全体像を明らかにし、都民の理解と納得をいただき、都と都民が協力すべき事業です。
 今回の改正条例案では、いわゆるエリアマネジメントに係る改正は一年先、義務化に係る改正は二年先となっています。
 いい換えれば、今定例会で条例改正をしても、直ちに改正の効力は生じません。太陽光パネル事業を進めるため、条例が効力を生じる前に準備を進めたいとの意図は理解できますが、来年の第一回定例会予算特別委員会での審議がどうして待てないのでしょうか。
 脱炭素社会に向けての再生可能エネルギーの導入については理解します。
 今後、条例の内容、補正予算の趣旨を踏まえ、今定例会で義務化を決定することの是非について、我が会派はしっかりと議論していくことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 伊藤しょうこう議員の一般質問にお答えいたします。
 発達障害のある方への支援についてのお尋ねがございました。
 自閉症や学習障害などの発達障害は、脳機能の障害であり、多くは子供のうちに症状が現れるとされております。
 一方、周りの理解を十分得られず、長い間、その症状が見逃され、大人になってから障害に気づくこともございます。
 都は、発達障害のある方が、安心して地域で暮らせるよう、乳幼児期から成人期までの多様な相談に応じる体制を整えるとともに、地域における区市町村の取組を支援いたしております。
 昨今、成人期の方からの相談が多いため、来月から、医療面でのサポートも含めまして、成人期向けの専門相談に対応することといたしております。
 障害のある方もない方も、互いに尊重し、支え合いながら、地域の中で共に生活する共生社会の実現を目指してまいります。
 なお、その他の質問につきましては、警視総監、教育長及び関係局長が答弁いたします。
   〔警視総監小島裕史君登壇〕

○警視総監(小島裕史君) 企業を対象とした技術情報等の流出防止に向けた取組についてでありますが、東京には、独自の高度な技術を保有する企業が多数存在しており、その技術情報等の外国への流出が懸念されているところ、こうした取組は、経済安全保障の推進上、極めて重要であると認識をしております。
 そのため、警視庁では、これまで延べ二千六百社以上の企業に対し、技術流出の具体的手口や有効な対策等を提供するアウトリーチ活動を行ってまいりました。その中で、今般、企業からの要望を受け、社員の危機意識醸成等を支援するため、ドラマ、プライド・オーダー、狙われる日本の技術を制作いたしました。
 当庁では、経済安全保障を推進すべく、今後もこうした技術情報等の流出防止対策に鋭意取り組んでまいります。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) アスリートなどの外部人材の活用についてでございますが、都教育委員会は、今年度から体育の授業において外部人材の募集を新たに開始しており、国際大会に出場したアスリートを含む十三名が研修を修了し、小学校での授業を行っています。
 競技の専門家から直接指導を受けることは、子供たちに刺激を与え、スポーツを身近に感じてもらうためにも有効であり、区市町村教育委員会からも多数の実施希望がございます。
 引き続き、各競技の関係団体等へPRを行うなど、アスリート等、専門性の高い人材の発掘や確保を進め、子供たちの学びの充実を図ってまいります。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、土砂災害特別警戒区域内の既存建築物の安全対策についてでございます。
 都はこれまで、特別警戒区域内の既存建築物について、安全性の確保に向けた改修等が進むよう、区市町村に対し、国の補助制度の活用を働きかけてまいりました。
 近年、大型の台風や記録的な大雨による大規模な土砂災害が発生していることから、都民の生命を守るためには、特別警戒区域内の土砂災害に対する建築物等の安全性を確保することがますます重要となってきております。
 このため、都は今後、区市町村が既存建築物の安全対策に、より積極的に取り組めるよう、擁壁の設置や外壁の補強等に対する支援策について検討してまいります。
 次に、地籍調査に関する市区町村への支援についてでございます。
 地籍調査は、土地の境界や権利関係を明確にし、災害後の迅速な復興等を図る上で重要でございます。都内では、島しょ地域を除き、市区町村が主体となって実施しており、都は、市区町村の主体的な取組が進むよう、様々な機会を捉えて技術的支援を行っております。
 具体的には、自治体等から成る全国国土調査協会と連携し、実務上必要な手順や測量技術等について研修を行うとともに、市区町村との連絡会を開催し、自治体間の情報共有や意見交換を行う機会の提供等を行っております。
 さらに、測量や立会い等を通じた実践的なノウハウを蓄積し、都市部における効率的な調査方法を確立するため、今後、国の参画も得ながら研究会を立ち上げ、地籍調査の加速に努めてまいります。
 最後に、南大沢スマートシティの取組についてでございます。
 南大沢地区は、スマート東京実施戦略において、最先端の研究とICT活用による地域住民の生活向上が融合した持続可能なスマートなまちを目指すこととしております。
 当地区は、高齢化の進展や丘陵地で坂が多いなどの特性があり、移動の負担軽減やまちのにぎわいの創出等が課題となっております。
 このため、都は、令和二年度に、産学公から成る協議会を設置し、効果等を検証しながら、実践的なまちづくりを推進しております。今年度は、電動キックボードのシェアリングサービスや3Dマップを活用したARナビアプリの提供等を先月から開始しております。
 引き続き、都民生活の向上を目指し、先端技術の社会実装を進めるとともに、ノウハウや技術を蓄積し、他地域にも横展開することで、スマート東京の実現につなげてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 町会、自治会支援についてでございますが、町会、自治会は、共助の中核として重要な役割を果たしていることから、より一層の活性化を図る必要がございます。
 そのため、都は今年度から、区市町村と共に、事業の企画から実施まで支援する応援キャラバンを実施しております。
 事業に参加した町会からは、苦労して準備して祭りなどを行うと、新規住民も楽しんでくれるが、結局、加入につながらないといった悩みの声も聞かれます。
 都はこれまで、加入促進の取組を広く共有してまいりましたが、今後新たにキャラバンチームが現地で直接、未加入者を含めた住民等から、町会、自治会に対する意識やニーズを丁寧に聞き取り、新規住民等が町会、自治会の様々な活動に日頃から関心を持って参加できる取組を検討してまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京たま未来メッセの活用についてでございますが、多摩地域の産業振興を図るため、東京たま未来メッセを活用して、中小企業が都県域を越えて交流し、イノベーションを生み出すよう支援をすることが重要でございます。
 このため、都は、多摩に集積する中小企業や研究機関等と隣接県や地元市による産学公ネットワークをつくり、これを同メッセに置いた専門人材が活用して、商談会等の開催を支援しております。また、多摩の中小企業の優れた製品を展示し、大企業と協力して、イノベーションの創出を図る取組を行いました。さらに、環境保護や物流の整備等、地域の行政課題の解決に向け、スタートアップの力を生かし、新たな技術を生み出すためのイベントも開催をしたところでございます。
 今後は、多摩地域を中心に、数多くの企業が参加する展示会の開催を検討し、地域の産業の活性化につなげてまいります。
 次に、就農を希望する方の農地の確保についてでございますが、東京で新たに農業を始めることを目指す方が、農地を確保して、耕作や様々な作業を円滑に開始できるよう、支援をすることは重要でございます。
 これまで都は、貸出可能な農地を探し、その所有者と就農を希望する方とのマッチングを行う農業委員会の取組をサポートしてまいりました。また、農業を基礎から学べるよう、都が運営する研修農場の生徒に対し、地元とつながりをつくり、農地の確保を容易にする方法などを助言しております。
 現在は、農地を確保できない方に、生産の場を一定期間提供する仕組みづくりを進めておりまして、農作業で使う土地や施設のほか、運営の方法などを取り決めた上で、具体的な整備に着手いたします。
 これによりまして、都内での新規就農を促進してまいります。

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