令和四年東京都議会会議録第十八号

○副議長(本橋ひろたか君) 十七番竹平ちはるさん。
   〔十七番竹平ちはる君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○十七番(竹平ちはる君) 初めに、がん治療と仕事の両立支援について質問します。
 がん治療の進歩により、がんになっても治療しながら働くことが可能になってきましたが、国の調査によると、がんで三人に一人は離職していることが分かりました。
 一方、昨年、都内五十六病院で外来治療中のがん患者に対して都が行った治療と仕事の両立に関する調査によると、回答した人のうち、会社にテレワークや時差出勤などの柔軟な働き方が導入または推進されたと答えた方は五五・一%に対し、柔軟な働き方の制度の仕組みがないと答えた方は三二・四%でした。
 自由記載の欄には、上司の理解は得られたが、同僚の理解はあまり得られていないなどの記載もあり、企業や従業員に対する理解が十分ではない事例もあることが分かりました。
 このようなことから、がんに罹患しても治療を受けながら仕事が継続できるよう、職場全体のがん治療に対する理解を促すとともに、働きやすい職場環境を整えることが重要と考えますが、見解を求めます。
 企業が、フレックスタイムや時短勤務などの柔軟な働き方の導入を進めるに当たっては、企業への普及啓発と併せ、導入する企業へのインセンティブの付与が必要と考えます。
 都は平成二十九年から、国や他の道府県に先駆けて、がん患者の方を新たに雇用したり復職をさせた企業に対して助成金の支給を開始しています。支給件数は年々増えつつありますが、企業への浸透はまだまだ十分とはいえません。こうした支援内容が中小企業の方にも今以上にしっかりと伝わるよう、より一層、周知の充実を図ることが必要です。
 そこで、都は、がんを発症した社員が仕事と治療を両立しながら就労できるよう、企業に対して支援制度をさらに広めるとともに、がん治療の方の柔軟な働き方の導入を支援する仕組みを一層推進、強化していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、がん治療に伴う外見の変化を補うアピアランスケアについて質問します。
 がん患者は、抗がん剤などの使用による頭髪の脱毛や手術による乳房の切除等により外見に変化が生じ、がんに罹患する前のように地域で自分らしく生活することが困難な場合があります。こうしたアピアランスの問題など、日常生活を送る上での障壁を軽減し、解消することは必要です。
 現在、アピアランスケアに対する支援として、ウイッグや乳房の補整具などの購入費用の助成を始めた自治体は都内十三か所まで広がっています。
 私は、本年第一回定例会の一般質問でも求めてきましたが、アピアランスケアに取り組む区市町村を都として支援すべきです。見解を求めます。
 次に、女性専用外来について質問します。
 女性は、思春期、妊娠、出産、子育て、仕事、さらには更年期、老年期などのライフステージにおいて女性ホルモンの変動があり、心身の変化に応じたきめ細やかな医療の提供が必要だと考えます。
 都議会公明党は、二〇〇二年第三回定例会で、女性の心身に現れる症状を総合的に診察する女性専用外来の設置を提案し、二〇〇三年七月に大塚病院で、都立病院初の女性専用外来が開設されました。その後、大久保病院、墨東病院、多摩総合医療センター、多摩南部地域病院にも開設されました。
 また、令和元年十月、大塚病院では、女性生涯外来として充実が図られ、女性医師による女性外来をはじめ様々な専門外来が緊密な連携を図り、幅広い疾患に対応しています。看護師による女性医療コンシェルジュを配置し、女性の不安に寄り添いながら相談に応じ、各専門外来につないでいると聞いています。
 近年、働く女性は多くなり、女性のライフスタイルが多様化しており、女性特有の疾患にワンストップで対応できる体制が必要です。
 こうした女性の医療ニーズに応えるため、都立病院において女性への医療のさらなる充実を図るべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 次に、命の尊さを学ぶ授業について質問します。
 近年は、情報化の進展など児童生徒を取り巻く環境が変化し、若年層の性感染症やインターネットを介した性被害の増加が課題となっています。
 都は今年度から、中学生以上の十代の方を対象として、思春期特有の健康上の悩みに対し、看護師などの専門職が電話や対面、メールなどで相談できる、とうきょう若者ヘルスサポートを開設しました。また、都立高校等における産婦人科医を活用したユースヘルスケア事業も開始され、中高生への取組が進んだことは評価いたします。
 一方、先日、公立の小学校で、長年、命の授業を行っている助産師の方から、授業の内容を伺いました。子供たちの目線に立ち、小学一年生から六年生までの学齢に応じた授業を行っており、子供たちからは、命の大切さ、生まれてくることのすばらしさ、自分も周りの人も大切にすることが分かったなど、授業後の子供たちの声をお聞きしました。
 このように、思春期における性教育、健康教育をより効果的なものにしていくためにも、小学一年生から、命の尊さを学ぶ意義は大きいといえます。単なる性教育というのではなく、命という視点を重視し、一人一人が貴い存在であることを学ぶ授業は極めて重要です。
 そこで、産婦人科医や助産師等による外部講師を活用し、公立小学校での性教育、命の授業を一層充実させていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、人工呼吸器を使用する医療的ケア児の保護者付添期間について質問します。
 都議会公明党の要望により、都教育委員会は令和三年度から、都立特別支援学校に入学する医療的ケア児について、入学前から健康観察による保護者付添期間の短縮化モデル事業に取り組み、着実に成果は出てきていると認識しています。
 しかし、人工呼吸器を使用する児童については、依然として付添期間が長くなっています。この背景には、都教育委員会の人工呼吸器ガイドラインにおいて、一年程度の付添いを求めてきたことがあると考えます。保護者にとっては大きな負担であり、付添期間の短縮を求める声をいただいています。
 そこで、人工呼吸器を使用する医療的ケア児についても、入学前から健康観察等を行うことにより、入学後の保護者の付添期間を短縮できるようにすべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、都市農業について質問します。
 先日、住民や障害のある方などが気軽に農業を体験できる都内にある農福連携農園のすぎのこ農園を視察させていただきました。この農園では、障害のある方々に対して、農作業の体験だけでなく、就労を目指した販売実習など、障害の程度に合わせた多様な支援を展開しているとお聞きしました。
 都内では、相続などによって毎年約五十ヘクタールの生産緑地が減少していると聞いています。こうした生産緑地を区市が買上げ、すぎのこ農園のように、障害者や高齢者など区民が楽しみながら土に触れることができる場として活用することは大きな意義があると考えます。しかし、生産緑地の買取りは自治体にとって大きな負担です。
 都は、区市による農福連携農園や区民農園の設置を後押しするため、買取りの申出のあった生産緑地について、区市による買取りや活用への支援を強化すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、防災意識向上に向けた取組について質問します。
 都議会公明党は、東日本大震災の際、被災地で避難所生活における課題を学び、その一つが、女性視点での防災対策です。我が党が提案させていただいた「東京くらし防災」は、発刊後、とても大きな反響の下、多くの都民に活用されていますが、発刊からは既に五年近くが経過しており、改定が必要です。
 この間にも、全国で大地震が発生し、昨年十月には都内の最大震度五強を記録する地震や、今年に入ってからも、宮城県、福島県で震度六強の地震が起きています。また、令和元年の台風十九号は、国内で四十年ぶりに死者が百人を超えるという甚大な被害をもたらしました。
 こうした中、都は本年五月、被害想定を十年ぶりに見直しました。これまでのハード、ソフト両面からの対策が実を結び、前回、十年前の想定から被害が減少する一方、高齢者人口の増加や高層住宅居住者の増加などに伴う新たな課題も浮き彫りとなりました。
 こうした社会情勢の変化や知見を踏まえ、いつ発生してもおかしくない大規模災害に備えるため、最新の情報を発信することで都民の防災意識を高めるべきと考えますが、見解を求めます。
 最後に、高齢者、障害者をはじめ住民から強い要望がある都営新宿線瑞江駅のエレベーター整備について質問します。
 現在、瑞江駅の南口には、地下鉄乗り場と連結した地下駐輪場用のエレベーターが設置されています。しかし、自転車を運ぶ人とつえやシルバーカーを押す高齢者、ベビーカーを押す方、車椅子を利用する方などが同時に利用することもあり、危険な場面も生じております。
 都が進める駅のバリアフリールートの複数化においては、瑞江駅のエレベーターの設置が計画されていますが、駅を利用する方々からは、早期の設置を望む声をいただいています。
 そこで、エレベーターの設置場所を含め、進捗状況について答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 竹平ちはる議員の一般質問にお答えいたします。
 都立病院での女性医療についてのお尋ねがございました。
 私は、知事就任以来、女性活躍の推進を都政の重要課題と位置づけてまいりました。近年、女性のライフスタイルは多様化しており、職場、家庭、地域など活躍の場が広がっており、専門性の高い医療にとどまらず、患者一人一人の状況に応じたきめ細かい支援など、女性が安心して受診できる環境の必要性が高まっております。
 このため、大久保病院に、乳がんなど女性特有の疾患の早期発見、早期治療や、不安に寄り添いながらの相談などの機能を有する女性医療センターを設け、女性のライフステージに応じた診療体制を整えてまいります。
 今後とも、地域の医療機関等と連携しながら、様々な医療ニーズに適切に対応し、女性が生き生きと活躍できる社会の実現を目指してまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をさせていただきます。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、小学校の性教育における外部講師の活用についてでございますが、都教育委員会は、平成三十年度に学習指導要領の内容を踏まえ、性教育の手引を改定し、全ての学校に配布いたしました。
 手引には、生命の尊さや思春期に現れる変化など、小学校における発達段階に応じた指導事例や、産婦人科医や助産師等の専門的知識を有する外部人材と連携した授業の進め方等を掲載しています。
 都教育委員会は、この手引を踏まえ、外部講師の活用事例等について、区市町村教育委員会の担当者連絡会等で周知するなど、学校の取組を支援してまいります。
 次に、人工呼吸器を使用する医療的ケア児についてでございますが、これまでの人工呼吸器管理のガイドラインでは、学校が管理を開始するには、季節等による体調変化を観察する必要があるため、年間を通じた登校実績により判断することとし、その間の保護者の付添いを依頼してまいりました。
 都教育委員会は、付添期間の短縮を図るため、令和三年度から、入学前から就学予定児が通う施設等に看護師を派遣し、健康観察を行うモデル事業を実施してまいりました。こうした取組の成果を検証した上でガイドラインを改定したところでございます。
 今後、個別の状況に応じた学校による人工呼吸器の管理の開始に向け、入学前から健康観察を行うことを保護者等に丁寧に説明し、協力を得ることで、付添期間の短縮を図ってまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、がん治療と仕事の両立支援についてでございますが、がん患者が治療と仕事を両立するためには、職場でのがんに対する正しい理解や働きやすい職場環境づくりなどが重要でございます。
 都は今年度、がん治療の基礎知識に加え、近年普及してきたテレワークや時差出勤など柔軟な働き方の活用方法等をまとめた企業向けハンドブックや職場研修用の映像教材などを作成するとともに、実際に治療と仕事を両立している患者の経験談や企業の具体的な取組事例などを紹介するセミナーをオンラインで開催する予定でございます。
 今後とも、がん患者が治療を受けながら働き続けられるよう、職場における両立支援の取組を進めてまいります。
 次に、がん患者へのアピアランスケアについてでございますが、がん患者が適切な医療を受けながら、がんに罹患する前と変わらず、自分らしく生活するためには、がん治療による外見の変化を補うアピアランスケアが重要でございます。
 都はこれまで、ウイッグや人工乳房の購入費用の助成などに取り組む自治体に、費用助成の対象品目や助成額などを調査してまいりました。
 今後、この調査結果も踏まえ、区市町村においてアピアランスケアに関する取組が進むよう、具体的な支援策について検討を進めてまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、がんの治療と仕事の両立に向けた支援についてでございますが、がんを発症した方が治療を続けながら仕事をできるよう、職場の環境を整備することは重要でございます。
 これまで都は、がんを含めた病気の治療と仕事を両立できる職場環境づくりを支援するため、中小企業に専門家を派遣し助言を行うほか、社内に相談の仕組みをつくり、研修会などを行った場合に助成を実施してまいりました。
 また、がん患者等を雇い入れたり、治療による休職から職場に復帰をさせた会社に奨励金を支給してございまして、これにフレックスタイムなどの柔軟な勤務制度を導入すると、加算も行っております。
 今後は、これらの支援の内容が各企業により一層伝わるよう、経済団体と連携した取組を進めるとともに、柔軟な働き方を広げるための制度の充実を検討いたします。
 次に、生産緑地の買取りと活用への支援についてでございますが、東京の農業振興を図る上で、生産緑地を地元の自治体が買い上げ、農的な利用を行い、将来の都市農業の活性化へと結びつける取組は効果的でございます。
 このため、都は、区市が生産緑地を購入し、住民や障害を持つ方等が農作業を行う場として活用する取組に助成を行っております。また、そうした購入と活用を増やすため、農園の整備と運営のノウハウを幅広く発信できるモデル的な事例づくりを進めているところでございます。
 今後は、住民が農業に親しむ機会の確保や農福連携をより効果的に進めることができるよう、生産緑地を区市が買い上げるための支援の強化や、それらの取組を軌道に乗せるためのサポートの導入を検討いたします。
 こうした取組によりまして、都市農業の振興を進めてまいります。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 防災意識向上に向けた取組についてでございますが、災害時に都民が適切な防災行動を取るためには、平時の備えや発災時の避難など、常に新しい情報を提供していくことが重要でございます。
 このため、都は、防災アプリや「東京くらし防災」等を活用し、家庭での日常備蓄や家具転倒防止の必要性、家族の安否確認方法など、平時と発災時に取るべき行動を分かりやすく周知してまいりました。
 今後、災害をより一層、自分事として捉えられるよう、地域ごとの地震による被災リスクを視覚的に確認できるデジタルマップを年度内に作成してまいります。また、「東京くらし防災」の改定など、社会状況の変化や蓄積された知見を踏まえた普及啓発方法を検討してまいります。
 こうした取組によりまして、東京の防災力を向上させてまいります。
   〔交通局長武市玲子君登壇〕

○交通局長(武市玲子君) 新宿線瑞江駅のエレベーター整備についてでございますが、都営地下鉄では、お客様の利便性向上を図るため、駅の構造や周辺状況等を踏まえながら、バリアフリールートの複数化を進めております。
 瑞江駅につきましては、南口に区が設置した駐輪場のエレベーターを駅でも利用しており、自転車の乗り入れがあることから、混雑する朝のラッシュ時間帯等に、高齢者や車椅子をご使用のお客様が乗りづらいなどの課題がございます。
 このため、新たにお客様専用のエレベーターを増設することとし、現在、北口への設置につきまして、関係者と協議しながら設計を進めております。
 今後、来年度の工事着手、令和六年度のエレベーター供用開始に向けて着実に取り組んでまいります。

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