令和四年東京都議会会議録第十八号

   午後三時三十五分開議
○副議長(本橋ひろたか君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十二番五十嵐えりさん。
   〔五十二番五十嵐えり君登壇〕

○五十二番(五十嵐えり君) 初めに、都政運営について伺います。
 私は、格差の問題に取り組みたくて東京都議会議員になりました。ところが、令和四年度の予算概要には、あらゆる面で段差のない共生社会とあり、令和三年第三回定例会の所信表明で知事は、あらゆる面で段差のない真の成熟社会を築くと述べられ、格差という語が落ちました。段差とは、辞書によれば物理的な高低差を意味し、過去の都議会の議事録を検索いたしましたが、以前の段差の意味は全て道路のバリアフリーなど物理的な意味でした。都の政策を見れば、子供の貧困対策や就労支援など経済的な意味での格差対策も含むということは分かるんですが、一見すると、都には格差がないのかと思われかねません。
 そこで、なぜ知事は、令和三年三回の定例会の所信表明から、格差ではなく段差のない共生社会といい始めたのか、見解を伺います。
 あわせて、都のいう段差のない社会の実現に向けた取組について知事に伺います。
 次に、中高年シングル女性の貧困問題が深刻です。私も長年非正規を経験しており、人ごとではありません。戦後、夫が働き、家事は妻が担い、子供は二人という標準世帯をモデルにして、雇用、税制、社会保障制度がつくられており、この枠から外れる多くの女性が貧困に陥っています。
 先日、民間団体が公表した四十代以上の単身女性の生活状況の実態調査によると、単身女性は収入が低く、家計に余裕がないと回答した方が非常に多い状況です。
 都は、こうした中高年シングル女性についての実態を把握するとともに、相談体制や広報の強化、資格取得支援などに取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、五輪汚職です。
 私は、高橋元理事の受託収賄という任務懈怠によって組織委員会に損害が生じたのではないか、大会組織委員会の根拠法である一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づけば、会社法の規定と同じように、組織委員会は元理事に損害賠償請求権を有するのではと十一月九日のオリ・パラ特別委員会でも指摘いたしました。
 その後、組織委員会と電通などとの談合疑惑も報道されています。談合によって組織委員会の契約が不当に高くつり上がっていたのであれば、都が都議会に報告した収支均衡に疑義が生じ、清算結了できません。
 そこで、談合による損害賠償など、清算法人の清算業務への影響があるのではないでしょうか。評議員会の招集等の検討も含めて、評議員として法令上の職責を果たすべきと考えますが、潮田副知事の所見を求めます。
 次に、東京都人権部の問題です。
 小池知事の朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文不送付が、都職員の忖度を招いています。忖度の原因である知事の言動を改めるべきです。来年は関東大震災百年目の節目であり、朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文を再開すべきです。都は、追悼文の不送付に関し、三月と九月に行われる大法要で全ての方に対して哀悼の意を表しているとのことですが、大法要への追悼文の文言からは、そのようには読み取れません。
 せめて来年の法要の追悼文に、小池知事が平成二十八年に朝鮮人犠牲者追悼式に最後に出されたように、多くの在日朝鮮人の方々がいわれのない被害を受け犠牲になられたという事件は、我が国の歴史の中でもまれに見る痛ましい出来事でしたとの一文を加えるなど、知事は大法要の追悼文の中で朝鮮人犠牲者への哀悼の意を明確に示すべきと考えますが、見解を伺います。
 二〇一八年四月にも、東京都人権部の幹部らが、人権プラザでの在日ブラジル人の写真展に関して差別的な発言をして、その発言に対して人権啓発センターの専門員らが、人権部の職員が使うには不適切と感じる言葉を不用意に使うことに大変憂慮する旨を指摘する文書を出したと聞きました。以前から人権部職員の人権意識や人権啓発センターとの関係性に問題があったのではないかと疑われる出来事であり、私は十一月三十日の総務委員会でこの事実の調査を求めましたが、調査の結果を求めます。
 また、都は、人権部職員の人権意識の向上のための研修や人権啓発センターとの関係構築を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、ヘイトスピーチ対策です。
 東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例には、ヘイトスピーチに関する規定がありますが、不十分です。現に、東京都内で多くのヘイトスピーチが行われており、私の住む武蔵野市でも例外ではありません。都としてヘイトスピーチは許さないという強いメッセージが必要です。
 現在、都は、人権条例に基づきヘイトスピーチとしたものについては当該表現活動の概要等として発言の内容は公表していますが、氏名は公表していません。これでは抑止の効果もほとんどありません。せめてヘイトスピーチを行った者の氏名の公表を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 ヘイトスピーチは具体的な個人の権利侵害が想定しづらく、ヘイトスピーチをされた人たちが警察や弁護士にも相談しづらいとのことです。東京都人権条例で定められた性的マイノリティーの方には、専門電話相談があります。ヘイトスピーチについても、専門相談窓口を設置すべきですが、見解を求めます。
 次に、ヘルプマークの普及についてです。
 ヘルプマークは内部障害や難病の方など、外見では分かりにくい障害や難病を周囲に知らせるものですが、先日、マークに酷似したグッズも問題となりました。必要とする人が適切に入手できることが必要ですが、先日、都内全ての市区町村の役所にヘルプマークの入手方法を尋ねたところ、障害の有無や内容を尋ねられたり、市区町村が発行するヘルプカードと混同しているような対応も複数ありました。
 都と共に市区町村でもヘルプマークの普及啓発に取り組むことも重要ですが、都の見解を伺います。
 本年十月の参議院文教科学委員会で、ヘルプマークの普及について問われた文部科学大臣が、東京都から具体的な提案があればしっかりと対応していく旨答弁しています。子供たちにも広く知ってもらうため、学習指導要領に明記するなど具体的な提案が必要です。
 そこで、都は、ヘルプマークの普及啓発について国にも働きかけていくべきですが、見解を伺います。
 次に、失語症です。
 脳卒中や頭部のけがにより、言語機能に障害を持つ失語症も外見からは分かりにくく、見えない障害といわれます。失語症になると、言葉を聞いたり文字を読んだりして理解することに障害が生じ、意思疎通が困難になり、日常生活上の支援が必要になります。患者は全国に約五十万人いるとされますが、まだまだ社会で知られていません。市区町村の地域生活支援事業の必須事業である意思疎通支援事業の対象には失語が位置づけられていますが、市区町村自体の取組も少ない現状です。
 そこで、都は、市区町村が失語症者向け意思疎通支援事業に取り組むよう、都が市区町村へ事業の立ち上げを積極的に働きかけるべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、ICT支援員です。
 現在、都はICT支援員として全ての都立学校にデジタルサポーターを一人常駐させています。デジタルサポーターは、コロナ禍での子供の学びの充実のためにも必要です。
 都は、こうしたデジタルサポーターが能力を発揮できるよう、サポーターへの支援が重要と考えますが、都の見解を求めます。
 ただ、実際のところ、サポーターのほとんどが派遣社員であり、身分に不安を感じておられたりするようです。また、様々な事情で学校に欠員が生じたケースもあるようです。教育庁にも、学校や受託業者から月報等により報告が上がっていると思いますが、サポーターの適正な配置体制は子供の教育環境に直結する問題です。
 都は、各校に配置されているサポーターの業務の状況をどのように把握し、業務の質の向上に努めているのか、見解を求めます。
 終わりに、本日、どの質問も私にとっては当事者の顔が浮かび、当事者の方からそれぞれお話を聞いたものです。皆それぞれが都によりよい政策を求めるものです。政治は、こうした立場の弱い方、障害がある方、声を上げられない人のために行うべきであり、都には、コロナ禍、物価高の中、特にそうした視点で政策を行ってほしいと申し上げて質問を終わります。(拍手)
   〔副知事潮田勉君登壇〕

○副知事(潮田勉君) 五十嵐えり議員の一般質問にお答えいたします。
 東京二〇二〇大会についてでありますが、清算法人は、法令に定められた清算業務が終了した場合、評議員会の承認をもって清算結了となります。清算法人におきましては、本件が清算業務にどのような影響を与えるか法的側面などからも確認しているところであり、都としても適切に対応するよう伝えております。
 評議員としては、これまで法令及び定款に定められた職務を遂行してきており、今後も法令等にのっとり職務を遂行してまいります。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立学校のデジタルサポーターへの支援についてでございますが、教育のデジタル化を推進するためには、学校で直接ICT支援を行う支援員が必要でございます。
 このため、都教育委員会は、委託業務により全ての都立学校に授業でのデジタル活用を助言、支援するデジタルサポーターと、都立学校を巡回してサポーターの活動に必要な調整を行うコーディネーターを配置しています。
 コーディネーターはデジタルサポーターに対して研修、学校との調整、業務上の助言などの支援を行っています。
 次に、デジタルサポーターの業務の向上についてでございますが、都教育委員会は、毎月、委託業者からの業務報告を受けており、報告の中で業務上の課題等を把握した場合には必要な調整を行っております。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 関東大震災で犠牲になられた方々に対する追悼についてでございますが、東京都は、毎年三月と九月に都立横網町公園で執り行われている大法要におきまして、東京で起こった甚大な災害と、それに続く様々な事情で亡くなられた全ての方々に対して、都知事より哀悼の意を表しております。
   〔政策企画局長中村倫治君登壇〕

○政策企画局長(中村倫治君) 段差のない社会についてであります。
 東京二〇二〇大会を機に、まちの段差解消や心のバリアフリーが大きく進みました。今後、これをさらに発展させ、物理的、制度的、心理的な数々のバリアを取り除き、人と人とが理解し合い共に暮らす環境を段差のない社会と表現しております。
 こうした社会の実現のため、「未来の東京」戦略では、子育て、ひとり親世帯や生活困窮者など、様々な不安や困難を抱える方々への状況に応じたセーフティーネットの充実強化を図っております。
 今後も、あらゆる施策の多様性と包摂性を一層高め、共生社会の構築に各局と連携して取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、生活に困窮する中高年女性への支援についてでございますが、都は、住居を失い不安定な就労に従事する方等に対し、TOKYOチャレンジネットにおいて、生活、住居、就労等の総合的な支援や介護の資格取得等に関する支援を行っており、昨年度からは広報を強化しております。
 また、平成二十八年度から女性専用のフリーダイヤルを設置し、女性相談員が丁寧に状況を聞き取り、必要な支援を行うなどにより実態を把握しております。
 引き続き、区市等の自立相談支援機関とも連携し、生活に困窮する方を支援してまいります。
 次に、区市町村による普及啓発についてでございますが、都は、ホームページ等でヘルプマークを周知するほか、区市町村にヘルプマーク等を紹介するポスターを配布するなど、普及啓発に取り組んでおります。
 また、ヘルプマークの作成や活用等に取り組む区市町村を包括補助で支援しており、引き続き、区市町村との会議の場などで取組を働きかけてまいります。
 次に、ヘルプマークの普及啓発についてでございますが、ヘルプマークはJIS規格として全国共通マークに位置づけられ、全ての都道府県で使われております。
 都は、国に対し、ヘルプマークを身につけた方が全国どこでも適切な援助等を受けられるよう広域的な普及を図ることを提案要求しており、引き続き働きかけてまいります。
 最後に、失語症者の意思疎通支援についてでございますが、失語により意思疎通が難しい方の支援体制は、国制度に基づき、区市町村による整備が求められております。
 このため、都は、失語症者向けの意思疎通支援者を養成するとともに、当事者と支援者の会話サロンをモデル的に設置し、その実施状況を区市町村に提供しており、引き続き、区市町村の体制整備を促してまいります。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都人権啓発センターとの連携についてでございますが、平成三十年当時の人権部職員の発言の事実については承知しておりません。人権部では、職員に対して人権啓発センターとも連携し、転入時の研修をはじめ、必要な研修を適切に実施してございます。
 次に、ヘイトスピーチに関する氏名、団体名の公表についてでございますが、都では、人権尊重条例に基づき、都民等からの申出を受け、ヘイトスピーチと認められる表現活動の概要を公表してございます。
 この概要公表は、発言者に対する制裁を行うことではなく、不当な差別的言動の実態を広く都民に伝え、啓発していくことを目的としてございまして、氏名、団体名の公表は行ってございません。
 最後に、ヘイトスピーチに関する相談窓口についてでございますが、都は、東京都人権プラザにおいて人権相談を実施しており、ヘイトスピーチに関する相談にも対応してございます。
 また、相談者が人権救済を行う人権侵犯事件としての調査、救済を希望する場合は、東京法務局の相談窓口を紹介することとしてございます。

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