令和四年東京都議会会議録第十八号

○議長(三宅しげき君) 二十四番磯山亮君。
   〔二十四番磯山亮君登壇〕

○二十四番(磯山亮君) 子供や子育て家庭に対する支援は、国や都、市区町村それぞれにおいて取組が進められているものの、少子化、人口減少に歯止めがかかっていません。
 地域コミュニティが希薄化する中、コロナ禍も相まって、子供や子育て家庭を取り巻く状況は深刻さを増しています。今こそ子供政策を強力に推進し、一人一人の子供が健やかに育つことができる社会を実現し、社会の持続的な発展を確保しなければなりません。
 大事なことは、全ての子供と子育て家庭への支援の充実です。
 都はこれまで、働き方の観点から、待機児童解消のために、認可保育所の整備などに取り組むなど実績を重ねてきましたが、共働き世帯を前提とした制度の充実だけでなく、核家族化の進展などにより孤立感が増している、在宅で子育てを行う家庭に対する支援にも取り組んでいくことが重要です。
 ある調査では、子育て中、どんなときに孤立や孤独を感じているか聞いたところ、子供と二人きりでいるときに感じる割合が一番多かったとの結果も出ています。国においても、未就園児の親に対する支援の必要性について議論されています。
 安心して子供を産み育てることができる社会を構築するため、在宅子育て家庭を含めた、あらゆる子供、子育て家庭に対する支援に取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 私は、障害者は雇わないといけないという風潮を変えたい、障害者の特性や能力に応じて企業の戦力として活躍する、明るい障害者雇用の実現を進めていきたいと考えています。
 そのアプローチの一つが、第一回定例会で提案したニューロダイバーシティの推進です。ニューロダイバーシティは、多様性を受け入れる考え方の一つです。
 障害者の特性を理解し、周囲による少しの支援、協力があれば、その能力が開花することも多くあります。特に、発達障害者には高度な集中力や分析力を持つ方も多く、ゲームのバグを発見する業務をはじめ、様々な企業で活躍しています。
 こうした発達障害の方を、高度のデジタル人材として積極的に採用する取組をもっと進めていけば、人材不足に悩むIT業界にも寄与し、日本の経済成長を牽引する原動力にもなっていきます。
 先日、都が開催した障害者雇用を促進するオンラインイベントでもこのテーマが取り上げられました。発達障害人材には、まだまだ活躍の可能性があります。それを引き出すためには、個々の特性を広く認め、理解し、サポートし合える環境づくりを行政としても支援していくことが必要です。
 そこで、都は、社会のデジタル化やIT人材の確保が急がれる状況を障害者が活躍できる好機と捉え、ニューロダイバーシティを普及する取組を一層推進し、発達障害者がその特性や能力を生かして働ける場が広がるよう取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 デジタル化は、特別支援学校において劇的な変化を引き起こす可能性を秘めています。第一回定例会で提案したeスポーツの活用について、都は明日、特別支援学校五校をオンラインでつなぎ、オセロ大会を開催します。
 身体的な障害がある児童にとって、移動の負担が軽減されれば、ほかの子供たちが体験する日常と同じ経験を得ることや、児童同士の交流の機会につながります。
 オンラインを活用したオセロ大会のように、障害のある子供たちの交流の機会を増やす取組は、都全体の特別支援学校に拡充していくべきと考えますが、今後の取組の方針を伺います。
 特別支援学校に通う児童生徒は多様な症状を持っているため、勉強をもっとしたいという声も聞かれます。
 先日、小平市の特別支援学校を視察し、二人の児童の授業の様子を拝見しました。生まれつき力を入れることが不得意な肢体不自由の児童がアイパッドで文字を入力。マイクロソフトのチームを使い、お互いの意見を発表し合い、その後、先生がコメント。そこには、生徒同士や先生とのコミュニケーションを通じた授業が存在していました。先生のスキルも高く、質の高い教育現場でした。
 デジタル技術を活用し、個に合わせた教育を提供することは、令和のスタンダードになるべきと考えます。
 肢体不自由の子供が、コミュニケーションの幅を広げながら、主体的に学べるようにするためには、障害に応じた支援機材など、デジタル機器の活用を充実させる取組を加速させることが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 特異な才能や特性ゆえに学校で著しく困難を抱えている子供たちに対して、その困難に着目し、その様子と周囲の環境との相互作用を考慮しながら、困難を解消するとともに才能を伸ばしていくために、国も既に動き出しています。
 実際に、勉強はできるが、授業態度が悪い、他者への攻撃性がある、協調性がないといった児童の指導経験がある教員の方から、今考えれば、ひょっとしたら2Eに当てはまるのではないかと思うといった経験談も伺いました。
 これまでは、各学校、教育委員会といったそれぞれの現場で対応されてきましたが、指導のばらつきや教員の負担感につながっているのが現状ではないかと考えます。
 そこで、特定分野に特異な才能のある子供たちが抱えている困難の解消に向け、都教育委員会として、一人一人に応じたきめ細やかな学びを実現するために、市区町村教育委員会に対して、事例の共有や教員への周知を促進していくことが効果的な指導の実現に寄与すると考えますが、見解を伺います。
 都市農業の振興に関しての課題は多く、例えば相続税や後継者の問題、また、地方のような大規模な農業生産を行うことができないため、生産量が少なく、高コストになることなどが挙げられます。
 一方、都市農業の強みも存在します。例えば、世界でもトップクラスの消費地である東京という大都市に位置しており、さらに、東京のグルメといえば、世界中の観光客が求めてやってきます。
 小平市の中にも都心の有名なレストランに農産物を提供している農家もあり、多摩地域の農産物が東京のグルメを支えています。地産地消を進め、農家の農業所得を増やすことが農業のやりがいを高め、後継者問題の解決にもつながります。
 一方、市内飲食店では、地場産の農産物の品質の良さなどを理由に使用したいといった声があります。しかしながら、コストが高くなるため、導入に踏み切れない現状があります。
 そこで、地産地消の推進の観点から、都内飲食店への地場産農産物の導入とメニューの開発等に対して支援を行うべきと考えますが、都の見解を伺います。
 文化庁では、地域の世代を超えて受け継がれてきた食文化を百年続く食文化、百年フードと名づけ、継承していく取組を行っています。
 昨年、小平市を含む地域において、武蔵野地域のうどん文化が江戸時代から続く郷土料理として認定されました。また、武蔵野うどんは、食べるだけでなく、うどんづくり体験などのイベントを開催すると地元の親子にも大人気です。
 このように多摩地域における特産品を生かした体験イベントと併せて、そのご当地の食を楽しんでもらうことにより、一層、食文化の魅力を感じていただくことができると考えます。
 外国人観光客も戻りつつある中で、インバウンドに向けても日本の食を生かしていくことが重要です。
 そこで、多摩地域の観光振興における食の文化を生かした取組を進めてはどうかと考えますが、都の見解を伺います。
 令和三年度に都内の消費生活センターに寄せられたトイレの詰まり解消等の修理に関する相談は九百三十三件と高止まりの状況にあり、若年層を中心に被害が広がっています。安価な代金が記載されているウェブサイトのフリーダイヤルに電話をし、修理を依頼したが、修理方法と代金を次々と提案され、最終的には二十五万円という法外な金額を支払った例があります。
 令和三年十月十五日、このトイレの詰まりをきっかけにした高額な修理契約に係る紛争はあっせん解決しました。東京都消費者被害救済委員会はクーリングオフができると判断。既払い金の返還及び債務不存在の確認を行う合意がなされました。
 しかしながら、同種の被害は後を絶たず、多くの被害者が泣き寝入りしているのが現状です。被害者全てを救済するためには、サポート体制の拡充と、被害撲滅のため、高額請求を行う悪徳事業者の取締りを強化することが必要です。
 水回り修理、鍵の修理、害虫駆除などの緊急対応に関する消費者被害の防止、救済にどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 臓器移植とは、重い病気や事故などにより臓器の機能が低下した人に他者の健康な臓器を移植して機能を回復させる医療であり、善意の第三者に支えられています。
 日本で臓器移植を希望して待機している方は一万五千人を超えるのに対し、移植を受けられる方は年間およそ四百人となっています。臓器移植は自国内で確保すべきとされていますが、国内での移植の見込みが立たないことから、海外での移植を希望して渡航する人もいます。
 しかし、海外移植をあっせんする公的な組織がなく、中には臓器売買が疑われるような事例も発生しています。また、海外で臓器移植を受けた方が、国内での受診に苦慮する現実もあります。
 多くの人が国内で移植を受けられずに待っている現状を踏まえると、一層の支援が必要であると考えますが、都の認識を伺います。
 獣害対策というと、西多摩地域などのイノシシや猿を思い浮かべる方が多いと思いますが、近年、区部や北多摩地域など都市部において、農家の方が丹精を込めてつくった農産物がハクビシンやアライグマなど中型の野生動物に食べられる被害が増加しています。
 特に、梨やトウモロコシなどハクビシン等が好んで食べる農産物を生産している農家の方からは、収穫直前に食べられてしまい大きな減収になったなどの声が寄せられており、その被害は深刻です。
 都は、イノシシなどによる被害への対策だけでなく、都市部におけるハクビシン等の中型野生動物による農産物被害にしっかり対応していくべきと考えますが、見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 磯山亮議員の一般質問にお答えいたします。
 子供政策についてのお尋ねでございました。
 次の世代に幸せと希望に満ちた持続可能な社会を引き継ぐためには、この先の未来を担う子供たちを社会全体で支え、大切に育んでいかなければなりません。
 こうした認識の下、子供の成長段階を通じて切れ目のない支援を展開し、全ての子供、子育て家庭が不安や孤独を感じることなく、安心して生活を送ることができる環境を整えておきます。
 不妊治療費の助成など妊娠前からの支援や、妊産婦等への相談支援やケアの実施、家事育児サポーターの派遣など、妊娠、出産、子育て期にわたる支援を強力に展開しております。
 さらに、家庭訪問などを通じまして顔の見える関係をつくって、全ての子供と子育て家庭につながることで、日常的な悩みや不安に寄り添う仕組みを構築してまいります。
 子供と子育てに温かい社会づくりに向けて、子供政策を強力に展開してまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁いたします。
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、オンラインを活用した交流についてでございますが、都教育委員会は昨年度から、障害により対面での交流が困難な子供たちが、eスポーツのようにオンライン上で他校の生徒と対戦できるよう、特別支援学校のオセロ大会を実施しております。
 また、本年度から、特別支援学校間をオンラインでつなぎ、一緒に授業を受ける取組を実施しております。
 今後、オンラインによるレクリエーションや共同学習等を実施する学校の効果的な事例を取りまとめ、より多くの特別支援学校に広げ、障害のある子供の交流機会を増やしてまいります。
 次に、肢体不自由特別支援学校でのデジタル活用でございますが、都教育委員会は、体の動きに制約のある子供がデジタルを活用して主体的に学べるよう、一人一台端末に加え、障害の実態に応じ必要な支援機器を整備しています。
 各学校では、簡易な手の動きや視線により、画面操作や文字入力を行う支援機器を用いて、絵画の制作や意見交換などを行っています。また、都教育委員会が指定した研究校では、これらの機器を活用して、互いの学習成果を発表し合う取組などを行っています。
 今後、これらの取組を動画で共有し、研修等により教員の指導力を高め、子供たちがデジタルを活用し、様々な人と関わりながら学びを深められるようにしてまいります。
 次に、特異な才能のある子供たちへの支援についてでございますが、子供たちの実態に応じて個別最適な学びを実現することは重要でございます。
 学校においては、特定分野に特異な才能のある子供についても、他の子供たちと認め合いながら持てる力を発揮できるよう、学習や生活上の困難に対応するとともに、一人一人の能力を伸ばすための指導を工夫しています。
 今後、都教育委員会は、特異な才能のある子供たちに関する国の有識者会議で示された支援の事例等を、区市町村教育委員会との連絡会や管理職対象の研修等で周知することにより、個に応じた多様な学びが行われるよう、学校の取組の充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、デジタル分野での発達障害者の活躍についてでございますが、発達障害者の中には高い集中力や分析力を持つ方がおり、そうした特性を生かしてIT企業等での就業を支援することは、企業の人材確保の面で効果的でございます。
 このため、都は、障害者雇用を促進するイベントで、発達障害の方を雇用し、その定着を図ったIT企業の事例などを紹介いたしました。また、来月に開催する大規模な就職面接会では、IT関連の業界団体と連携し、事業者とのマッチングを行います。さらに、そうした団体と協力し、発達障害者が職場体験実習を行い、就職できる後押しも進めております。
 今後は、事業者による先進的な取組事例の紹介や、採用から職場定着までのモデルづくりなどを検討いたします。
 これらによりまして、発達障害者のデジタル分野での活躍を推進いたします。
 次に、都内における地産地消の推進についてでございますが、東京での農産物の地産地消を推進するため、地域の身近な飲食店等が近隣で取れた野菜などを利用するよう、後押しをすることは効果的でございます。
 これまで都は、都心のレストラン等が東京産の食材の提供を受け新たな料理メニューをつくり、都内の農家と取引を始めるよう後押しを行ってまいりました。
 今後は、その取組を地元の住民が気軽に利用する飲食店と農家との間の取引にも広げ、身近な地域での地産地消の推進に結びつけます。
 また、地産地消を区市町村を通じサポートする事業について、今後、地域の農家や地元で取れた野菜などを使う飲食店の状況に詳しいJAなどを直接支援する仕組みの導入を検討いたします。
 これらによりまして、東京産農作物の地産地消を推進してまいります。
 次に、多摩の食文化を生かした観光振興についてでございますが、多摩地域には伝統的な食文化が数多くあり、これを観光資源として活用し、地元への誘客に結びつける取組は重要でございます。
 これまで都は、多摩の観光協会等が江戸時代から続く伝統的な食事をテーマとしたイベントを開催する場合などに支援を行い、旅行者の誘致につなげてまいりました。また、こうした多摩の様々な観光振興の取組を、ウェブサイトを通じ多言語で国内外に向けて情報提供をしております。
 今後は、多摩地域の豊かな自然を食文化と組み合わせて、国内外から旅行者を迎えるツアーをつくるなど、地元の取組への支援を検討いたします。
 これらによりまして、多摩地域の観光振興を着実に進めてまいります。
 最後に、野生動物による農業被害への対策についてでございますが、農業者が作物を安定的に収穫することができるよう、野生動物による被害を抑えることは重要でございます。
 これまで都は、多摩の山間地におけるイノシシ等や、住宅と農地が混在する市街地でのハクビシンなどによる農業への被害の状況に加え、それらの動物の生息の状況や行動パターンの調査を行ってまいりました。これを踏まえまして、イノシシや猿など大型動物の畑地への侵入防止や捕獲等に取り組む地元自治体を支援してまいりました。
 今後は、ハクビシンやアライグマなど中型動物による被害を予防し抑える取組を速やかに進めるため、農業協同組合による農家への情報提供や、侵入防止や捕獲に向けた支援を検討してまいります。
 これらによりまして、東京の農業経営の支援を進めてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 消費者被害への対応についてでございますが、消費者が緊急の必要に迫られた際に、付け込まれて不当に高額な料金を請求されるケースなどが近年多く発生しておりまして、被害防止に向けた啓発や相談等による救済、事業者指導等に総合的に取り組むことが重要でございます。
 都は、消費生活行政のホームページ、東京くらしWEBやSNSなどで、被害の事例や被害に遭わないための情報を都民に広く発信し、注意喚起を行っております。
 また、消費生活総合センターで、被害に遭った消費者に助言や解決に向けたあっせんを行うほか、都内全域の相談窓口で適切な対応が図られるよう、最新情報等を区市町村と共有しております。
 悪質事業者に対しましては、特定商取引法や景品表示法等に基づき厳正な行政処分や指導を実施してまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 臓器移植に関するご質問にお答えをいたします。
 都は、毎年十月の臓器移植普及推進月間を中心に、移植医療の重要性を伝えるリーフレットや臓器提供意思表示カードを配布するなど普及啓発を行ってございます。
 また、都内二か所の医療機関に臓器移植コーディネーターを配置し、都民に対する正しい知識の普及や関係機関への情報提供に加え、臓器提供者が現れた場合に医療機関等との連絡調整を行ってございます。
 さらに、コーディネーターが中心となって医療機関等と情報や課題を共有する連絡会を開催し、臓器提供発生時のシミュレーション等を実施するとともに、年内にはウェブサイト上で院内体制整備に関するマニュアル等を共有いたします。
 こうした取組により、今後も臓器移植の推進に向けて一層取り組んでまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時十一分休憩

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