令和四年東京都議会会議録第十四号

○副議長(本橋ひろたか君) 百番藤井とものり君。
   〔百番藤井とものり君登壇〕

○百番(藤井とものり君) まず、太陽光パネル設置義務化についてお伺いをいたします。
 そもそも義務化という表現は、これから都がやろうとしていることを正確にいい表しているのか、疑問を持たざるを得ません。
 都の計画では、新規着工数の約半数が対象となるとしております。そもそも、半数近くの屋根に太陽光パネルが設置されることについても実現可能性は疑われますが、もし実現したとしても五〇%にすぎません。
 多くの都民は、義務化というワードに対しては、一〇〇%つけてくださいと都から義務づけられているものと考えていても不思議ではありません。このままだと都民をミスリードしかねないと思います。
 大手住宅メーカーに対し、一定の数値目標を満たしているか否かを報告させるという意味での義務化であることを徹底して周知するか、あるいは義務化という文言それ自体を撤回すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 そもそも我が国は、自由主義経済で成り立っております。私有財産制度を前提とし、自らどのような財産を取得するのか、利用するのか、各人の自由な意思決定に委ねられるべきものであります。
 施主さんが屋根に太陽光パネルを設置するか否かは、あくまでも各人の判断に委ねられるべきものであり、本来、行政機関である東京都が義務づける、強制する類いの話ではありません。脱炭素という錦の御旗が掲げられておりますが、都民からすれば、迷惑な話ということにもなりかねません。
 大手の住宅メーカーにとっても営業の自由があり、太陽光パネルがついた家を営業しろと都から強制されるいわれはありません。これは飲食店に対する営業時短と同様で、あくまで要請でしかなく、命令は法令上困難といえます。これまでどおり、義務ではなく支援にとどめるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、事業、政策効果についてお伺いをいたします。
 二〇三〇年度に太陽光発電量二百万キロワットを実現可能としていますが、仮に実現できたとしても、都内電力消費量の約四%にすぎません。既存の発電設備や送電線を減らすという意思決定も困難であり、社会全体として見れば、既存の発電、送電設備を維持しつつ、新たに太陽光発電にも投資することを意味し、いわば二重投資ともなりかねません。
 太陽光発電をした場合、例えば既存の火力発電に対する設備投資を減らすという意思決定をすれば、安定供給という観点からは、いわば危険な賭けに出ることにもなりかねません。他方、最大の事業目的であるCO2の削減にいかほど貢献すると都はお考えなのでしょうか。
 莫大な資源、財源を投じて行う事業ですので、やらないよりもやった方がましといったレベルの話ではなく、具体的な削減目標を定め、政策における費用対効果を明確にする中で取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、都民に対して一つの家計の単位で見た場合、売電収入等により、初期投資分を超える百五十九万円の経済的メリットが得られると説明しています。
 皆さんご存じのとおり、売電収入は、電力料金に上乗せされている再エネ賦課金が原資となってございます。太陽光発電で生み出した電力を自身で払った電力料金の上乗せ分で購入しているにすぎず、パネルをつけないという選択をした、あるいは経済的事情からつけたくてもつけられない方々も含め、広く国民の負担、犠牲の上で成り立っている制度ともいえます。
 さらに、やがて売電される電力量が増えていけば、FITにおける固定買取り価格を高く維持することは、やがて困難となるはずであります。
 また、再三の言及となりますが、火力発電等、既存の設備を維持するためのコストの大半は固定費であり、社会全体としての価値向上分は、火力発電設備においては、変動費に当たる燃料費の削減分にすぎないと考えることもできます。
 脱炭素は大切ですが、今のスキームのままでは、そもそもCO2削減にどれほど寄与するのか不明瞭であり、他方で都民生活、事業活動に対し、多大な制約、犠牲を強いることにもなりかねないものと率直に憂慮をしているものであります。制度の在り方を含め、私の懸念に対する都の見解を伺い、次の質問に移ります。
 私の地元練馬区では、二年連続で待機児童がゼロとなりました。特別区全体でも、本年度は二十三区中十八区でゼロに至ったようであります。このことは間違いなく良いニュースでありますけれども、他方で、保育所の定員割れといった新たな課題も浮上しております。
 NHKが特別区を対象としたアンケート調査によれば、認可保育所において、ゼロ歳児クラスの五三%、一歳児クラスの三一%、二歳児クラスの四〇%で定員割れが起きているとの報道がなされております。
 いわゆる待機児童対策は、いたちごっこにも例えられてまいりました。待機児童を解消するために保育所をつくるものの、定員増以上に保育需要を喚起し、また待機児童を生み出す、そのスパイラルから抜け出すことができず、これまで待機児童問題は一向に解決してまいりませんでした。くしくもその循環から抜け出す要因となったものは、これまでの旺盛な保育需要に陰りが出始めているということであります。
 私の地元練馬区における保育所の入所申込み数は、令和二年度六千百七十六件、三年度五千七百七十七件、四年度五千五百五十六件と減少傾向にあります。そもそも、就学前児童数が減少していることに加え、コロナ禍で保育所に対する利用の考え方に変化が生じている可能性も指摘されております。
 今後の保育需要の動向は慎重に見極めなければなりませんけれども、待機児童解消のために量的拡大に注力してきたこれまでの都の保育施策については、おのずと見直す必要性があるのではないでしょうか。
 この間、中長期的には就学前児童数が減少することが予想されながらも、短期的には、喫緊の課題である待機児童解消のために、急ピッチで保育所定員を拡大してきた側面があります。知事が公約の一丁目一番地として掲げた待機児童ゼロですが、都内の待機児童数が九割以上削減される一方で、同時に空き定員も目立ち始めていることに鑑みると、待機児童解消のための量的拡大といったフェーズからの脱却、保育所の必要整備量の再検討を含め、戦略を見直していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 現実に認可保育所の空き定員がさらに増えてきた場合、施設の集約なり転用といった選択を余儀なくされるケースも出てくると思います。
 私の地元練馬区においては、特に一歳児一年保育、小規模保育、認証保育所などは、児童が集まりにくい傾向にあると伺っております。これらの施設は、待機児童の受皿として機能してきた側面もあると思いますが、都としてどのような対応するのか、見解を伺います。
 最後に、高校生医療費無償化についてお伺いいたします。
 この間、区長会との間で、財源負担をめぐる協議が行われてまいりましたが、そもそも高校生まで医療費を無償化することについての妥当性については、十分な議論は交わされてきたでしょうか。
 もちろん子育て世帯に対する経済的支援は重要ですが、高校生の医療費を無償にしてしまうことの弊害についても慎重に検討すべきではないでしょうか。
 知事は、高校生は生涯にわたる健康づくりの基礎を担う大切な時期、自身の健康管理、できる取組は重要と述べられています。もちろん自分自身で健康管理を行うことは重要ですが、そのために必要なことは、無償化によって病院にかかりやすくすることではなく、病院にかからずに済むように、高校生自身で健康管理に気をつけてもらうように促していくことではないでしょうか。
 ただだから病院に通う、もらえる薬はもらっておこう、そんな心理が働いてしまうとするならば、あたかも医療サービスが無償で提供されているかのような幻想を抱かせかねません。本来伝えるべきは、適正なサービスには適正な対価が必要であるということであり、仮にコンビニ受診を誘発すれば、医療費は高騰し、当然ながら自身の健康保険料にも跳ね返ってまいります。
 先行的に、本年度より、高校生医療費を無償化した都下の市においては、様々な原因が考えられるものの、結果として利用者が増加したと伺っております。ただでさえ、昨今の健康保険料の値上がりに対しては、都民の皆さんから大変厳しいご指摘をいただきます。
 重ねて申し上げますが、子育て世帯に対する経済的支援は重要ですし、何ら否定するものではありません。しかし、それが高校生医療費を無償化することなのでしょうか。
 都として、コンビニ受診などの弊害をどのように認識し、予防していくおつもりなのか見解を伺い、私の一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○知事(小池百合子君) 藤井とものり議員の一般質問にお答えいたします。
 保育施設についてのお答えをさせていただきます。
 私は、就任直後から待機児童の解消、これを都政の最重要課題の一つに位置づけて、保育所等の整備の促進、人材の確保・定着の支援、利用者支援の充実、この三つを柱として保育サービスを拡充してきたわけであります。
 「未来の東京」戦略では、政策目標として、待機児童の解消、そしてその継続を掲げておりまして、引き続き、子供と子育て家庭を支援するために、区市町村や保育事業者の皆様と連携しながら、保育サービスの充実に取り組んでまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長からの答弁といたします。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、太陽光発電設備の設置義務化についてでございますが、ゼロエミッション東京の実現に向けては、都内CO2排出量の七割超を占める建物の脱炭素化が急務でございます。
 新たな制度は、大手住宅供給事業者に対し、断熱、省エネ性能の確保、事業者の総量での再エネ設備等の設置を義務づける仕組みとなってございます。
 太陽光発電設備に関するワンストップ窓口の設置やSNS等多様な媒体の活用によりまして、分かりやすい情報発信を行うことで、都民や事業者の理解と共感を得てまいります。
 次に、新制度における事業者の役割についてでございますが、ハウスメーカー等の住宅供給事業者は、都が定める指針に基づき必要な措置を講じ、環境への負荷低減に努めることが求められてございます。
 新制度は、こうした事業者のうち、都内に一定以上の新築住宅を供給するハウスメーカー等を対象に、太陽光パネルの設置や断熱、省エネ性能の確保等を義務づける仕組みでございます。
 次に、再エネ目標達成に向けた制度導入の効果についてでございますが、新制度による太陽光発電設備の導入量は、年間四万キロワット程度を見込んでございまして、二〇三〇年度に向けては大規模建築物への設置や波及効果等により、新築建物で七十五万キロワット程度を想定してございます。
 あわせて、既存建物や公共施設への導入量の増加により、二百万キロワット以上の太陽光発電設備導入を目指すとともに、蓄電池等の導入を進めてまいります。
 加えて、系統電力の再エネ化や都外再エネ設備の利用促進等によりまして、二〇三〇年再エネ電力利用割合五〇%程度を目指してまいります。
 最後に、固定価格買取り制度による国民負担についてでございますが、本制度は、電気の利用者のご負担で再エネ導入を支える制度として国が設けたものでございますが、再エネ賦課金は、再エネ電力の買取り総額から、電力の市場価格に連動する回避可能費用等を控除して算出されます。
 再エネ電力の買取り単価は、再エネのコスト低減により年々下がってございまして、また、近年上昇傾向にある回避可能費用等が現行水準で推移した場合、今後、賦課金負担が減少する可能性がございます。
 加えて、買取り総額の大勢を占めておりますメガソーラー等の買取りが終了する二〇三〇年代半ば頃には、賦課金負担は大幅に減少するものと見込まれてございます。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、保育所等の取組への支援についてでございますが、都は、保育所等がゼロ歳児の空き定員を待機児童の多い一歳児の受入れに活用できるよう定員変更を行う取組を支援するほか、空きスペース等を活用して、在宅子育て家庭の子供を受け入れる取組を支援してございます。
 また、認証保育所が、短時間勤務などの多様なニーズに対応できるよう補助要件を見直すとともに、放課後の居場所対策として学齢児の受入れも可能としております。
 今後とも、保育の実施主体である区市町村と連携しながら、保育所等の取組を支援してまいります。
 次に、高校生等医療費助成事業についてでありますが、高校生の世代は、生涯にわたる健康づくりの基礎を培う大切な時期であり、自らの健康をコントロールし、改善できるよう支援することは重要です。
 このため、都は、子育てを支援する福祉施策の充実に向け、区市町村が実施する高校生等への医療費助成事業に対し、所得制限や通院時の一部自己負担等の基準を設けた上で補助することとしております。

○議長(三宅しげき君) 以上をもって質問は終わりました。

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