令和四年東京都議会会議録第十四号

○副議長(本橋ひろたか君) 四番吉住はるお君。
   〔四番吉住はるお君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四番(吉住はるお君) 初めに、新宿区歌舞伎町で社会問題化している、いわゆるトー横キッズについて伺います。
 トー横キッズとは、もともとは歌舞伎町にある新宿東宝ビル東側道路にたむろする青少年たちのことをいいます。現在は、そのたまり場を東宝ビル西側のシネシティ広場へと移しています。
 トー横キッズの多くは十代前半から二十代前半で、中には十二歳の子もいるそうです。親との不仲やDV、いじめなどにより居場所を失い、強い孤独を感じて、同じような思いや経験を持つ仲間を求めて集まっています。
 トー横キッズは、昨年からメディアなどに多く取り上げられるようになりましたが、その理由が犯罪です。未成年の飲酒、喫煙、市販薬の過剰摂取や暴行、殺人など、多くの事件が起きており、中には、中高生が性暴力や性的搾取などの被害に遭うケースもあり、自殺も発生しています。
 現在、警視庁による毎日のパトロールに加え、大規模な一斉補導活動も実施されていますが、補導された少年少女の多くが再び歌舞伎町に戻ってきてしまうのが現状です。
 こうした状況を受け、地元自治体の新宿区では、歌舞伎町地区に集まる若者や女性の犯罪被害防止につなげるためのアウトリーチ活動を行うNPOなどの団体と連携し、この問題に取り組んでいます。
 トー横の若者は全国各地から集まっています。新宿区では、区外から集まってきた若者の支援に、住民税だけを原資にすることは区民の理解を得ることが難しいと考え、歌舞伎町安全・安心対策寄附金を創設しました。
 このトー横の問題は、一人一人の個別事情に寄り添い、継続した相談と支援が必要となるため、行政の取組だけでは解決に導くのが難しく、NPOなどの団体との連携は非常に重要ですが、中には十分な資金が得られず、継続的なボランティアを募ることに苦労している団体もあります。
 東京都においても、こうした子供たちを取り締まるだけでなく、地元自治体やNPOなどの団体と密接に連携し、解決に導く取組が必要と考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、家庭での子育て支援策の強化について伺います。
 核家族化の進行や地域のつながりが希薄化する中で、少子化対策や虐待防止といった観点から、在宅での子育て家庭をいかにサポートできるかが非常に大きなテーマです。
 これまで、国や都道府県は、待機児童をゼロにする取組に力を注いできました。福祉保健局の発表では、平成二十九年には八千五百八十六人だった都の待機児童数は、令和四年四月一日時点で三百人となりました。
 しかしながら、全国的に少子化には全く歯止めがかからない状況です。コロナ禍も影響していると思われますが、令和二年の都の出生数は九万九千六百十一人と、前年より二千百五十七人減り、五年連続で減少しました。少子化対策として、保育園の増設に力を入れてきたこれまでの支援から、様々なライフスタイルに応じた子育て支援の強化が求められています。
 国立社会保障・人口問題研究所による調査結果からも分かるように、可能なら子供が小さい頃は自分の手で子育てをしたいというご家庭もかなりの割合であると思われます。
 都は、特に育児負担が大きい三歳未満の在宅子育て家庭について、これまで以上に幅広く支援を充実すべきだと考えますが、見解を伺います。
 次に、国民健康保険について伺います。
 平成三十年の制度改革により、都は区市町村と共に保険者となり、財政運営の中心的な役割を担うこととなりました。国保の加入者は高齢者が多く、一人当たり医療費は今後も増加が見込まれます。
 先日、報道にもあったように、令和三年度の概算の国民医療費は、コロナ禍による受診控えの反動などもあり、過去最大となりました。仮にこの傾向が続くと、今後も国保加入者の負担が大きく増えることを区市町村は懸念しています。
 国は、都道府県内の保険料水準の統一に向けた議論を進めるよう求めており、都がイニシアチブを発揮することが期待されています。国保制度に対し、より主体的に向き合うことはもとより、保健事業のみならず、都民の健康づくりにも一層推進することが重要です。
 そこで、一人当たり医療費が増加傾向にあることを踏まえ、都としてどのように対応していくのか、また、国が求める保険料水準の統一に向けどのように進めていくのか、見解を伺います。
 次に、介護現場改革の推進について伺います。
 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる社会の実現が重要です。高齢化により介護ニーズは増大していますが、一方、サービスを提供する人材は慢性的に不足しており、今後も状況が改善する道筋はまだ見えていません。
 都は、こうした中にあって、持続可能な介護の体制を構築し、安心して東京に住み続けられるような取組を進めていくことが必要です。
 今後ますます増大する介護ニーズに対応するためには、介護現場の生産性の向上を図る取組を一層推進していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、地域の防災力向上の取組について伺います。
 都は、本年五月、いつ起きてもおかしくない巨大地震を見据え、新たな被害想定を公表しました。
 知事は、地域防災計画の修正を今年度末をめどに取りまとめると所信表明において言及されています。
 都民の安全・安心を確保するためには、地域防災力を向上させ、帰宅困難者対策をはじめ、様々な事態に備えることが必要です。そのためには、町会や自治会をはじめとする自治防災組織の強化が不可欠ですが、高齢化などにより地域コミュニティの活動低下が懸念されています。
 町会や自治会が実施する防災訓練などの取組に、地元の企業なども積極的に加わり、連携協力を強化できるような仕組みづくりが必要だと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、商店街の現状と支援について伺います。
 商店街は住民の買物を支える商業機能のみならず、高齢者の見守り、防犯、防災活動など、地域コミュニティを支える様々な機能を有しており、欠かせない存在です。最近行われた私の地元の商店街でのイベントには、多くの人が訪れ、大変な盛り上がりを見せていました。商店街は地域のにぎわいを生み出し、他者との触れ合いや交流の場となっており、その存在の大きさを改めて実感したところです。
 しかしながら、都内の商店街は、平成二十二年から令和元年までの十年間で約八%減少するなど、活力の低下が懸念されています。地元の商店主からは、商店街の活動の担い手がおらず、このままでは存続できない、自らのお店を経営しながら商店街の活動をしており、補助金の申請手続もままならないなど、切実な声も聞かれます。
 都は、商店街のこうした現状をどのように捉え、地域コミュニティの核である商店街が地域とともに持続的に発展していくためにどのように支援していくのか、見解を伺います。
 次に、下請取引の適正化の推進について伺います。
 現在、原材料価格の高騰や円安の進行により、仕入価格が高騰し、企業経営に深刻な影響を与えています。とりわけ、大手企業からの発注を受け製造などを行う、いわゆる下請企業の中には、仕入価格が高騰しているにもかかわらず、取引価格に転嫁できない事例も珍しくありません。
 こうした問題を解決するためには、相談窓口で下請企業が来るのを待つのではなく、積極的に現場に赴き、解決のために時間をかけてサポートしていくことが重要と考えます。また、国においては、親事業者に対し、下請事業者との望ましい取引を宣言する企業を募るパートナーシップ構築宣言制度を立ち上げ、登録企業を広く発信するとともに、助成金の加点とするなどのサポートを行っています。
 都においては、こうした国の制度の普及に努めるとともに、厳しい状況にある下請企業が経営を継続できるよう、しっかりと寄り添った支援を行っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、エシカル消費の推進について伺います。
 エシカルとは、直訳すると、倫理的な、道徳的なという意味です。エシカル消費とは、人や社会、環境に配慮した消費行動と都の運営するホームページにも記載があります。まだまだ多くの都民にとって、エシカルという言葉自体になじみがないのが現状です。
 開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを意味するフェアトレードや、元の製品に新たな付加価値を持たせて別の製品として再生するアップサイクルなどの考え方も十分に知られていません。
 また、一見、環境に配慮しているような取組に見えても、製品、サービスのライフサイクル全体で環境負荷を評価するライフサイクルアセスメントのような考え方に基づくと、実はかえって環境負荷が高いということもあり得ます。
 エシカル消費を普及させるためには、こういった様々な考え方を都民の皆様にしっかりと理解してもらうことが重要であり、その上で、社会全体で機運を高めていくことが必要だと考えますが、今後、都としてどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、都心部における道路ネットワークの整備について伺います。
 道路は、社会経済活動や都民生活を支える極めて重要な都市基盤です。中でも、区部の放射道路や環状道路などの骨格幹線道路の整備は、東京の都市力をさらに高める上で不可欠です。
 私の地元である新宿区内においては、本年五月に、環状第四号線のうち、余丁町から河田町までの約三百三十メートルの区間が交通開放するなど、整備は着実に進んでいると実感していますが、新宿区内の都市計画道路の完成率はいまだ約六割であり、都心五区の中で最も低い状況です。
 新宿区をはじめ、高度な経済活動が展開される都心部における骨格幹線道路網の形成は、広範な分野への波及効果により、高い整備効果が期待できることから、ミッシングリンクの解消に向けた取組をさらに加速させるべきだと考えます。
 そこで、新宿区内における骨格幹線道路の整備の取組状況について伺います。
 最後に、公共交通空白地域対策について伺います。
 令和三年第四回定例会において、我が党の西山都議は、交通空白地域における交通弱者対策が急務であると指摘し、コミュニティバス事業を続けるために大きな財政的負担を強いられている区市町村の事例を挙げながら、この課題に都としてどのように取り組んでいくのか、見解を伺いました。
 この質問に対し、地域の特性に応じた移動手段の確保策について検討を進めていくとの答弁があり、そして、本年三月には基本方針が策定され、それに基づき支援策が拡充されたと認識しています。
 そこで、拡充された支援策に対する区市町村の反応と補助の活用状況、今後の取組について伺います。
 以上で質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 吉住はるお議員の一般質問にお答えいたします。
 子供政策についてのお尋ねです。
 様々な不安や悩みを抱えた若者が繁華街に居場所を求めて集まる、いわゆるトー横キッズの問題ですが、社会的に注目されていて、大きな課題となっております。
 一人一人に寄り添い、きめ細かな子供政策を展開していく、そのためには地域における多様な主体と協働、連携を深めまして、社会全体で子供へのサポートを強化することが重要です。
 このため、都は、区市町村がNPOなど様々な団体と連携しながら、新たな課題に柔軟に対応することができますよう、地域の実情に応じた独自の取組を支援してまいります。こうした取組を通じて、子供が安心して暮らせる東京を実現してまいります。
 なお、その他の質問につきましては、東京都技監及び関係局長からの答弁といたします。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 新宿区内における骨格幹線道路の整備についてでございますが、道路は、交通、物流機能の強化はもとより、災害時には救急救援活動等を担う極めて重要な都市基盤でございます。
 こうした認識の下、都は、骨格幹線道路の整備を推進しておりまして、新宿区内では、本年十一月に、環状第三号線のうち、暫定二車線となっている新宿区市谷薬王寺町から市谷柳町までの四百メートルの区間を四車線で交通開放し、交通渋滞の緩和等を図ります。
 また、本年十二月には、環状第五の一号線のうち、渋谷区千駄ヶ谷五丁目から新宿区内藤町までの約八百メートルの区間を新たに交通開放する予定であり、新宿、渋谷の両副都心を結ぶ道路ネットワークが強化されます。
 今後とも、東京の持続的な発展を支える骨格幹線道路の整備を積極的に推進してまいります。
   〔福祉保健局長西山智之君登壇〕

○福祉保健局長(西山智之君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、在宅子育て家庭への支援についてでございますが、地域のつながりが薄く、核家族の多い東京において、孤立しがちな在宅子育て家庭を支援することは重要でございます。
 このため、都は、三歳未満の子供を育てる保護者の負担を軽減するため、家事育児サポーターを派遣する区市町村を支援するほか、保育所等が空き定員を活用して子供を預かる取組や、地域の子育て家庭を対象に保育所体験や育児健康相談等を行う取組を支援しております。
 今年度は、有識者や区市町村職員等で構成する検討ワーキングを設置して、子育て家庭に寄り添い、様々な支援をコーディネートする人材を養成するための研修プログラム等の作成を進めてございます。
 今後とも、在宅でも安心して子育てできるよう、区市町村と連携しながら、子供と家庭を一層支援してまいります。
 次に、国民健康保険についてでございますが、先般、国が公表した令和三年度の医療費の動向では、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響等による減少の反動もあり、国保加入者も含め、全国的に医療費が増加したとされてございます。
 国保加入者は高齢者が多く、今後も医療費の増加が見込まれることから、都は、区市町村の保健事業等を一層支援するとともに、国に対し、新型コロナや診療報酬の特例が医療費の動向に与える影響について検証等を行い、必要な措置を講じるよう要望してまいります。
 また、国は、都道府県の国保運営方針に保険料水準の統一に向けた記載を義務づけることとしておりまして、来年度の運営方針改定に向け、策定主体である都が中心となって、区市町村と具体的な議論を進めてまいります。
 最後に、介護現場の生産性向上についてでございますが、高齢化が進展し、今後一層の増加が見込まれる介護ニーズに対応していくためには、限られた人的資源で質の高いサービスを提供できるようにすることが重要でございます。
 都は、事業者の生産性向上に向けた介護現場の改革を推進するため、東京都福祉保健財団にワンストップの窓口を設置して、デジタル機器や次世代の介護機器の導入など、職場環境整備への支援と、セミナーの開催や専門家による個別相談など、組織、人材マネジメントへの支援を一体的に進めております。
 さらに、今年度は、機器等の導入経費補助の申請書類を簡素化するなど、事業者の事務負担軽減を図り、より利用しやすい仕組みに改善をしております。
 今後とも、こうした支援を通じて、事業者による介護現場の生産性向上の取組を一層推進してまいります。
   〔総務局長野間達也君登壇〕

○総務局長(野間達也君) 地域防災力の向上についてでございますが、発災時の避難所運営など、地域の防災活動を円滑に実施するためには、町会、自治会等の主体的な取組に加え、共助の担い手となる地元企業の参画が欠かせません。
 このため、都は、企業等に対し、一時滞在施設の提供や帰宅困難者用の食料備蓄、区市町村が行う駅前滞留者の対策訓練など、地域防災活動への参加を促してまいりました。
 今後は、職場の防災対策を推進する事業所防災リーダーを通じ、地元の防災イベントや実動訓練への参加を促してまいります。加えて、町会連合会等と連携し、町会、自治会に対しても、企業との協働の呼びかけなど、企業と地域の両面からの働きかけを行ってまいります。
 こうした取組によりまして、地域防災力のさらなる向上を図り、都民の安全・安心を守ってまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、商店街への支援についてでございますが、東京の商店街は住民の日常の買物の場であるとともに、地域コミュニティの中心として重要な役割を果たしております。
 一方で、買物のスタイルの変化に応じた来客や、今後の担い手の確保のほか、まちとしての活力の維持など、様々な厳しい課題に直面もしてございます。
 このため、都は、商店街の集客につながるイベントの開催を支援するほか、支払いをデジタルで対応するための後押しなども行ってまいりました。また、新たな担い手を増やすため、女性や若者が商店街で商売の経験を積む場を提供するほか、出店する際の負担の軽減を図ってきたところでございます。
 さらに、商店街の活性化に向け、専門家がアドバイスを行い、その実現に必要な経費に助成をする取組等によりまして、今後とも商店街のより一層の振興につなげてまいります。
 次に、中小企業の取引価格等の適正化についてでございますが、原油価格の高騰や円安の進行などによりまして、材料コストの上昇の続く中、中小企業が経営を着実に継続していくため、適正な価格で取引を行うことは重要でございます。
 このため、都は、取引の適正化に向け講習会を開催するほか、中小企業振興公社に専門の組織を設け、相談対応や紛争解決の後押しを行っております。
 今年度は、相談員が企業の現場を巡回し、値引き要請への対応などに関して助言をする取組を充実いたしました。
 これに合わせまして、下請企業との間で適正な取引を行うことを宣言した場合に、国が補助金の採択に当たって優遇を行う仕組みについて周知を行っております。
 今後、こうした国の制度の普及に向け、さらに情報提供を進めるほか、取引の適正化につながる支援の充実を検討いたします。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) エシカル消費の推進についてでございますが、都民がエシカル消費の意義を理解した上で、日常的に具体的な行動へとつなげていくことが重要でございます。
 都は今月、エシカル消費に積極的に取り組んでいる企業等に協力を呼びかけ、理解促進や機運醸成を図るためのプロジェクト、TOKYOエシカルを開始いたしました。
 このプロジェクトを通じて、フェアトレードやアップサイクルなど、エシカル消費につながる様々な考え方をはじめ、参加企業や国内外の取組事例や商品等に関する情報を分かりやすく発信するとともに、体験学習の場を設けるなど、身近で実践できる取組を推進してまいります。
 日常の消費生活において、エシカルな商品等を都民誰もが自ら選択できる環境を目指し、持続可能な社会の実現につなげてまいります。
   〔都市整備局長福田至君登壇〕

○都市整備局長(福田至君) 地域特性に応じた移動手段の確保策についてでございますが、地域に適した移動サービスを構築し、誰もが活動しやすいまちを実現するためには、区市町村が関係者と緊密な連携を図りながら、主体的に取り組むことが重要でございます。
 このため、都は、地域公共交通計画の策定、デマンド交通の導入、路線の見直しに関する費用を新たに補助対象に加えるなど、今年度から区市町村の地域公共交通の取組に対する支援の拡充を行いました。
 拡充したメニューに対し、相談や問合せを数多くいただいており、九月時点での補助件数は、拡充した七件を含め十八件と、昨年度の十三件を既に上回っております。
 引き続き、他の区市町村に対しても活用を働きかけ、子育て世代や高齢者、丘陵地の住民などの外出を支える、地域の移動手段の確保策に取り組んでまいります。

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