○議長(三宅しげき君) 十五番清水とし子さん。
〔十五番清水とし子君登壇〕
○十五番(清水とし子君) 日野市は、一九九八年に農業基本条例を制定し、農業を基幹産業として位置づけ、学校給食への地場野菜の利用、農の学校での援農ボランティアの養成などに取り組み、二〇一九年には生産緑地の貸借制度を活用して、全国初の女性新規就農者が誕生しました。東京の農業、農地を守り、発展させていくために質問をいたします。
最初に、学校給食への地場野菜の活用についてです。
東京の農業政策を考える上で、学校給食は重要な役割を果たしています。地域の食文化や農業への理解を深める食の教育、農業者の安定した販路、地産地消による環境負荷の低減にも寄与しています。
都として、地場野菜の学校給食への活用を通じて、食育の推進、地産地消、持続可能な農業を推進していくべきと考えますが、いかがですか。
国は、第四次食育推進基本計画で、学校給食における地場産等の目標設定値を食材数ベースから金額ベースに見直すことで、その割合を維持向上させていく方針を出しました。都はこれをどう受け止め、対応していますか。
また、利用実態を把握し、利用促進に資する調査方法を検討すべきと考えますが、いかがですか。
学校給食への地場野菜の利用を増やすには、農家と学校の栄養士をつなぐコーディネーターを配置した供給しやすいシステムや、農業者の負担を軽減する配送システムの構築が欠かせません。
しかし、このようなシステムは、売上げだけで賄えないのが実態ですが、現在ある都の支援制度は三年間の限定です。
東京都市長会も、来年度予算編成に対する要望書で、学校給食へ地場産農産物をより多く、より供給しやすいシステムの構築、農業者の負担を最低限に抑える配送システムの構築を求めています。都の支援制度のさらなる拡充を求めますが、いかがですか。
栄養教諭からは、地場産の野菜は自治体で価格を決めて給食用に買い取っているところはよいが、学校で普通に買っているところは使えないという声が寄せられ、JAからも、行政などの位置づけがないと価格に左右されやすいと伺いました。
小平市では、市内農産物等を使った学校に対し補助金を出す仕組みをつくり、利用が一気に増えました。都としても、地場野菜を利用しやすくするために農家等への財政的支援を求めますが、いかがですか。
次に、農地の確保について伺います。
生産緑地の貸借制度はできましたが、特定生産緑地の期限は十年間、相続が発生した場合には途中で返却することになりかねません。そのため、実際の貸借期間は大抵五年以内だそうです。
これでは、年数がかかる果樹栽培はできませんし、貸借契約期間が短いと施設の補助金制度も利用できません。新規就農者が安定して農業を継続するために、長期の貸借を促す支援策が求められます。
東京都農業会議の東京都の農業振興・農地保全施策に関する意見でも、長期間の農地貸借を促す奨励金制度や、荒廃農地の無償譲渡または十年以上の無償貸付をする場合の再生支援制度の創設を求めています。都として農地の長期貸借や荒廃農地の再生に対する支援を求めますが、いかがですか。
現在、都は、区市の生産緑地買取りに対して二分の一補助を行っています。
日野市では昨年、生産緑地の買取り申出は十五件あり、総額は約五十三億四千万円、一件当たり三億五千万円です。半額補助ではとても買い取ることはできません。補助率の抜本的な引上げなど、制度の拡充を求めますが、いかがですか。
相続税を払うために農地を売らなければならないという問題を解決しなければ、農地は残せません。農業に必要な集荷施設や農機具倉庫、屋敷林なども納税猶予の対象にするなど、納税制度の改善を都として国に要望することを求めますが、いかがですか。
国は、みどりの食料システム戦略で有機農業の割合などの数値目標を掲げました。しかし、農家からは、有機栽培に取り組んでも消費者は価格の安い方を選ぶ、これではやる気にならないという声も寄せられました。有機農業への転換を促すには、安定した販路の確保が不可欠です。
国は、有機農業に取り組む市町村の取組を推進するための支援制度を開始しました。その中で、消費先の柱に学校給食を位置づけています。
また、有機農業を推進している千葉県のいすみ市でも、学校給食を有機農産物の安定した販路として位置づけています。
都として、有機農業を普及していくためには、有機肥料等への支援を行うとともに、有機農産物の安定した販路を確保するための支援が必要ですが、いかがですか。
東京の農地は減少を続けているものの、都民の八割は農地、農業を残したいと思い、生産緑地の貸借制度を活用した新たな担い手も生まれています。また、コロナ禍やウクライナ危機を教訓に、農業資材などの国内回帰の動きも起きています。
今、東京都の農業振興プランの見直し作業では、持続可能な農業の取組の中で、学校給食との連携が議論されています。こうしたことを踏まえ、都の今後の農業施策を抜本的に拡充強化すべきですが、知事の見解を伺います。
次に、聞こえの支援、補聴器補助制度の拡充についてです。
二〇二二年五月二十五日、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律が制定されました。行政は、障害のある方はもとより、障害者でない方による情報の取得にも資する施策展開が求められることになります。
聞こえの支援では、高齢難聴者のような方々も含めて、本人の望む形で、必要な情報を取得し利用することが保障されるようにしていくことが必要となりますが、いかがですか。
加齢性難聴は、本人が気づかないうちに進行していたという声も寄せられています。できるだけ早期に難聴高齢者を発見し、適切な支援を行うには、健診での聴覚検査などが必要ですが、職場健診には聴覚検査が入っているのに、高齢者の健診には入っていません。
高齢者健診の項目に聴覚検査を入れるよう、都として国に求めるとともに、それまでの間、健診などに取り組む区市町村を支援することを求めます。
また、聞こえの相談会など、聞こえづらさを抱えた人を医療につなぐ自治体の取組が進んでいますが、都としてこうした取組を支援していくことが必要ではありませんか。
補聴器は、その方に合った丁寧な調整が必要です。細かい調整ができる補聴器は十万から十数万円もします。都内自治体で助成制度が広がっていますが、その補助額は、多くが二から三万円台です。自己負担が大きく断念する方や、財政力の違いによる自治体間の差が生まれてはなりません。
現在、区市町村に行っている補聴器に関する包括補助の補助率を抜本的に引き上げるべきと考えますが、いかがですか。
次に、雨天時浸入水対策への支援です。
多摩地域では、豪雨の際に老朽化した下水管に雨水や地下水が浸入し、下水の量が急増します。
日野市では、豪雨時に浅川水再生センターが受入れ流量を制限したために、下水が都の流域下水道幹線のマンホールからあふれ出し、近隣の住宅に流れ込むという被害が度々引き起こされています。
家のトイレから下水があふれてくるのを必死で抑えた、水が引いた後も玄関やガレージに汚水の臭いがしたなど、近隣の方々の被害は深刻です。
溢水は下水道管への浸入水により起きるのですが、直接的な原因の一つは、最終的に処理をする都の水再生センターが受入れ水量を制限したことであり、溢水箇所は都の流域下水道幹線のマンホールです。都としてこの事態をどう受け止めていますか。
日野市では、雨天時浸入水対策工事を優先度をつけて行っていますが、計画完了には十年はかかります。雨天時浸入水対策は、市町村の対策を促進するための財政的支援と、都の水再生センターの受入れ水量を増やす緊急対策の両方が求められています。
東京都市長会や三多摩上下水道及び道路建設促進協議会もそれを繰り返し求めています。都として要請に応えるべきではありませんか。
最後に、日野市の元副市長をめぐる疑惑問題についてです。
組合施行の川辺堀之内土地区画整理事業において、日野市の元副市長が市の補助金を詐取した事件は、今年五月、懲役二年、執行猶予四年の有罪判決が確定しました。
その後、不正な公金の支出は組合の理事、監事、職員全員に及び、その額は市の補助金四億一千万円をはるかに超える約六億七千万円に上ることが明らかになりました。
組合施行の区画整理事業の監督権限を持つ東京都は、なぜこれだけ大規模で長期間にわたる不正を見逃したのでしょうか。
都がこの不正に気づくべき機会はありました。それは、不正が行われている最中の二〇一七年七月に、都民から寄せられた、元副市長が当該組合の理事長相談役をしているのではないかという問合せで、元副市長が地方公務員法に反する兼職の可能性を示唆するものでした。
都は、この問合せに関してどのような調査をしたのでしょうか。その際、元副市長を理事長相談役とすることを諮った理事会の会議録は確認していますか。
理事会の会議録には、現在、日野市立病院市長代行の職をおやりになっている河内氏にお願いしたい旨を理事会に提案しとあり、地方公務員法の兼業禁止に当たることは明白です。都はなぜ、このことを問題としなかったのですか。
また、この調査の中で都は、元副市長個人が当該組合と業務委託契約を結んでいたことも確認しています。当該組合のコンサルタント業務は、既に日野市企業公社に委託されていたのに、元副市長にも業務委託契約を結ぶのは不自然です。
さらに、個人と契約することそのものも、都の組合施行区画整理事業の手引にある、十分な技術的能力及び、高い信頼性を有した業者を入札等によって選定するというやり方に反しています。なぜ、都の手引にも反する元副市長と当該組合の業務委託契約を容認したのですか。
都と共に日野市も組合に対して必要な助言指導を行うことになっています。都はなぜ、明らかになったこれらの事実を日野市に情報提供しなかったのですか。
都が監督する組合施行の区画整理事業で起きた不正問題で有罪が確定したことをどう受け止めていますか。
不正の全容解明は途上にあります。都がこれまでの対応を猛省し、不正の全容解明に全力を尽くすことを求めて、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 清水とし子議員の一般質問にお答えいたします。
都の農業施策についてのお尋ねです。
東京の農業は、都民に新鮮な野菜を提供し、防災や環境保全等の多面的な機能を有しております。
このため、農業経営の下支えを行うほか、生産の基盤となる農地を次世代に承継するサポートを速やかに進めてまいります。また、農地と担い手のマッチングの後押しも行います。
東京産食材の魅力を発信し、学校給食への提供など、地産地消を推進してまいります。
持続可能な東京農業の実現に向けて施策を展開してまいります。
その他の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたします。
〔教育長浜佳葉子君登壇〕
○教育長(浜佳葉子君) 給食における地場産物等の使用についてでございますが、都教育委員会は、都立学校及び区市町村教育委員会に対して、国が示した目標値を周知し、地場産物等の活用を促しております。
また、使用実態を把握するため、文部科学省により、年に一回対象校を抽出し、地場産物等の金額に関する調査が行われております。
〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕
○産業労働局長(坂本雅彦君) 七点のご質問にお答えいたします。
まず、都内産の野菜の学校給食での活用についてでございますが、都では、都有地を活用し農場運営を行い、そこで生産された野菜を給食の材料として都内の小中学校へ供給し、地産地消を推進しております。
次に、都内産の野菜の学校給食での活用支援についてでございますが、都は、区市町村等が地元で取れた野菜について、地産地消を進める取組を支援しており、学校給食への供給に係る経費の一部にも補助を行っているところでございます。
次に、都内産の野菜の学校給食での利用促進についてでございますが、都は、区市町村等が地元で取れた野菜を学校給食へ供給する場合の経費の一部に補助を行っております。
次に、農地の長期貸借や再生についてでございますが、都は、農地の貸手と借手のマッチングを後押しするほか、借手による農地整備に対する支援を行っております。
次に、区市による生産緑地の買取りへの支援についてでございますが、都では、区市が生産緑地を買い取る場合に、その経費に補助を行う仕組みによりまして、引き続き都市農地の保全を進めてまいります。
次に、農業に係る相続時の納税猶予についてでございますが、都は、農業経営に必要な施設の用地などを相続時に納税猶予の対象とするよう、国に対し要望を行っております。
最後に、有機農業の普及についてでございますが、都は、化学肥料の使用を減らし、堆肥を使う農家の取組を後押しいたします。
また、農薬を削減し野菜を生産する農家を飲食店に紹介するなど、販路開拓の支援を行っております。
〔福祉保健局長西山智之君登壇〕
○福祉保健局長(西山智之君) 三点のご質問にお答えをいたします。
まず、高齢者等に対する聞こえの支援についてでございますが、高齢者や障害者をはじめ、全ての人が必要な情報を容易に入手できる環境を整備することは重要でございます。
このため、都は、情報伝達の際に、障害特性等に応じた必要な配慮等について記載した情報バリアフリーガイドラインを策定し、区市町村や事業者が、聴力の弱い方々にとって聞こえやすい環境を整備する取組を促進してございます。
次に、高齢者の聞こえの相談会についてでございますが、この相談会は、区市町村が独自に実施している事業と承知しております。
都は、区市町村が地域の実情に応じて主体的に実施する高齢者への福祉サービスの充実に資する事業を包括補助で支援しており、区市町村からの申請について審査を行い、適切に対応しております。
最後に、高齢者への補聴器支給等についてでございますが、都は、区市町村が行う高齢者への補聴器支給等の事業を地域の実情に応じて柔軟に実施できるよう、包括補助事業の選択事業として支援しており、補助率は二分の一となっております。
これによる補助実績は、平成三十年度の二自治体から、令和三年度は十二自治体へと増加しております。
〔下水道局長奥山宏二君登壇〕
○下水道局長(奥山宏二君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、流域下水道幹線の溢水についてでございますが、浅川水再生センターは、汚水を処理する分流式下水道施設でありまして、大量の雨水の受入れは想定しておりません。
豪雨時に市町村が管理する公共下水道の汚水管から、本来は流入することのない雨水が流域下水道幹線に大量に流入した場合には、設備の浸水などによる水再生センターの機能喪失を防ぐために、流入水量の調整が必要となります。
汚水管に雨水が浸入する雨天時浸入水対策は、国のガイドラインでは発生源対策が基本とされておりますが、流域下水道を管理する都も、公共下水道を管理する市町村と連携して取り組んでおります。
次に、雨天時浸入水対策への支援についてでございますが、雨天時浸入水対策は、発生源対策が必要であることから、都では、流域下水道幹線内の水位を測定し、その情報を市町村と共有することで原因箇所を絞り込み、市町村の効果的、効率的な対策につながるよう、技術支援を実施しております。
引き続き、市町村への技術支援を通じて、雨天時浸入水対策を促進してまいります。
〔都市整備局長福田至君登壇〕
○都市整備局長(福田至君) 五点のご質問にお答えいたします。
まず、区画整理事業の問合せへの対応についてでございます。
都は、平成二十九年七月に、元副市長の当該区画整理組合の相談役への就任の有無について、都民からの問合せがあったことを受け、組合に確認を行いました。
元副市長の相談役への就任につきましては、組合から、総会に諮り組合員に了解を得ているとの回答を受けるとともに、理事会議事録等により確認しております。
なお、問合せをいただいた都民に対しては、その旨を伝えております。
次に、元副市長の相談役への就任についてでございます。
都は当時、都民から、元副市長の組合相談役への就任の有無について問合せを受け、そのことについて組合から、総会に諮り組合員に了解を得ているとの回答を受けるとともに、理事会議事録等により確認したものでございます。
次に、組合と元副市長との業務委託契約についてでございます。
都民からの問合せを受け、相談役への就任の有無について確認した際に、当該区画整理組合が元副市長と業務委託契約をしていたことを把握したものであり、書類上明白な法令違反は認められませんでした。
次に、業務委託契約に関する情報提供についてでございます。
当時、業務委託契約について、書類上明白な法令違反は認められず、日野市には情報提供しておりません。
最後に、元副市長に対する判決についてでございます。
本年五月に元副市長を被告とする詐欺事件の有罪判決が確定したことは承知しております。
なお、都は、令和二年二月に当該組合の事業運営に関する調査の依頼を日野市から受け、調査を進める中で組合の会計の不正に関して把握したことから、同年五月に是正の勧告を実施しております。
今後とも、土地区画整理法に基づき、地域のまちづくりを主体的に行う地元市とも連携し、組合に対して必要な指導等を実施してまいります。
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