令和四年東京都議会会議録第十号

○副議長(本橋ひろたか君) 九番漢人あきこさん。
   〔九番漢人あきこ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○九番(漢人あきこ君) 知事、そして議場の皆さん、東京都でたった一か所、全国でも二十七か所しかない貴重な自然環境があることをご存じですか。小金井のはけと呼ばれる国分寺崖線と野川のエリアです。十七年前から都と市民団体がこの地域で自然再生事業に取り組んできました。
 そして、こちらです。(パネルを示す)これは、はけの森と野川と草原の生態系図です。地元の環境団体が、辛うじて残っているこの貴重な自然環境を次の世代に引き継ぐ責任があるとの思いで作られたもので、オオタカを頂点とした豊かな生態系が精緻に描かれています。
 知事と担当部局、そして各会派にお届けしました。ぜひ、じっくりとご覧ください。
 このエリアは、どぶ川だった野川を清流に復活させ、湧水や水辺環境を守り育んできた都市部ならではの地域の市民の思いと力が実現した貴重な自然環境です。
 東京都は、この環境を守り次の世代に残すべき、この環境を壊す道路計画はストップするべき、そのような小金井市民の大きな思いが、昨年の都議選で私、漢人あきこを当選させ、本日のこの質問の場を迎えました。
 第一問目は、小金井三・四・一号線及び三・四・一一号線ほかについて質問します。
 東京における都市計画道路の整備方針、第四次事業化計画は、小池知事が初当選した二〇一六年の都知事選直前の三月に決定されました。
 その選挙で行われた市民団体のアンケートで、小池候補は小金井の二路線についてこのように答えています、優先整備路線に位置づけることが不適切だと判断される場合は、必要に応じ、見直しを進めていきたいと考えておりますと。初心を忘れないでください。
 まず、道路予定地の自然環境について伺います。
 知事は、二〇二〇年の候補者アンケートでは、どのように環境を守っていくか、環境への配慮も重要なテーマであり、現地の地形や景観を踏まえた検討が必要と考えているとし、二路線の自然環境や景観への配慮に言及しています。
 この道路予定地を含む一帯は、先ほど述べたように、都市計画公園、武蔵野公園と重なり、国分寺崖線は東京都景観条例に基づく景観基本軸に指定され、さらには、野川第一、第二調節池とその周辺エリアについては、自然再生推進法に基づく自然再生協議会の取組が行われている地域であるなど、国分寺崖線の緑や野川の水辺の保全の対象として幾重にも網がかけられています。
 また、都は、近隣の国分寺崖線の一部を、東京における自然の保護と回復に関する条例に基づき緑地保全地域に指定しています。
 知事は、この道路予定地を含むエリアの自然環境をどのように認識していますか。知事のご認識をしっかりとここで伺いたいと思います。
 次に、環境概況調査の結果を受けた見解を伺います。
 都が実施者となり、市民団体、都、小金井市などで構成された協議会が、都内唯一の自然再生事業に取り組んでいるこのエリアを、都自ら道路事業で分断し、都市部に奇跡的に残っている豊かな生態系を著しく傷つける事業を進めようとしています。
 都は、今、三・四・一一号線ほかの環境概況調査を行っていますが、背景にはこのような矛盾があります。昨年十一月の調査報告書によると、植物では三百二十九種の在来種が確認され、在来種率は七〇%近く、植物、昆虫、野鳥などに多くの重要種が存在し、猛禽類の生息する豊かな生態系であることが改めて確認されました。
 一方、調査結果の考察では、こう指摘されています。道路事業による影響としては、道路構造によっては道路敷地内が直接改変により生育できなくなることのほか、道路周辺が日照や風況などの影響変化が生じるなど間接的影響を受ける可能性があると。小金井市長、市議会、市民の懸念を裏づけるものとなっています。
 今回の環境概況調査の結果と考察を踏まえた見解を伺います。
 次は、この質問では最後の質問です。
 第四次の優先整備路線から六年が過ぎましたが、二路線は事業認可申請には至っていません。まだ立ち止まることは可能です。
 小金井市議会は、見直し、中止を求める意見書を六年間で十一本提出し、市長も、市民の望まない都市計画道路は造らせないと表明、要望書を知事へ提出し、知事会談でも直接伝えています。
 現在改定中の都市計画マスタープランのパブリックコメントでは、寄せられた四百三十件の八〇%が道路整備に関するもの、そのうち自然環境を損なうことによる二路線の中止など否定的意見が九〇%に上りました。また、市長は市議会で、優先整備、この二路線についても検証、見直しの対象であると答弁をしています。
 昨年の都議選で私が当選したことも含め、これが小金井市の民意です。このように地元住民の合意のない事業は中止すべきです。見解を伺います。
 次に、同じく貴重な自然エリアの一部である都立武蔵野公園の整備及び維持管理について質問します。
 武蔵野公園、特にくじら山下原っぱといわれるエリアは、長年にわたって市民が守り育んできた経緯のある自然環境です。
 都は、生物多様性度が高い都立公園を対象に生物多様性保全利用計画を策定するため、武蔵野公園でも専門家や環境団体のヒアリングが行われています。
 その一方で、四月には、その原っぱの環境を損なう防災放送設備の工事が突然開始されました。環境団体等の要請で急遽行われた現地説明会には六十人近い市民が参加し、現在工事は中断しています。相反する事態が進行していたんです。
 都は、武蔵野公園の整備や維持管理については、計画段階から地元住民との協働を重視すべきです。このたびの工事について、そして今後の整備や維持管理について、都の対応を伺います。
 次に、都民にとって大切な自然の宝庫、檜原村で計画されている産業廃棄物等の焼却処理施設について伺います。
 この施設が許可されれば、都内での十一年ぶりの産廃焼却施設の新設となります。地域環境の保全、脱炭素対策、持続可能な社会形成という大きな時代の課題に、明らかに逆行する計画です。
 今問われているのは、廃棄物焼却施設の許可基準である周辺地域の生活環境の保全に適正な配慮がなされたものであることです。計画反対の都知事への要請には、何と全村民の半数を超す署名が添えられ、村議会は計画反対の村民意思を伝える意見書を議決するなど、地元では反対の声が高まっています。
 日量九十六トンの産廃焼却施設は、多摩地域はもちろん湾岸の工業地帯を除けば都内最大規模で、恐らく全都の建築廃材や廃プラなどが持ち込まれて焼却されます。国立公園内に位置し、自然環境を誇り、地域の活性化を目指してきた檜原村の皆さんの反対は当然です。
 地元住民、議会の重く明確な意思を都としてどう受け止めていますか。基本的な認識を伺います。
 さらに、稼働に必要な水の確保等、雨水の地下浸透による地下水等への影響、絶滅危惧種も含めた周辺生態系への影響など、事業者が十分に説明責任を果たしたとはいえません。
 都は、専門家の意見も聞きながら審査することになります。幅広い住民の懸念、疑問をしっかりと受け止め、十分な調査に基づいた透明性の高い検討を行うことを求めます。いかがですか。
 次に、気候危機対策、東京電力ホールディングス株式会社への株主提案について質問します。
 私は、都に対して東京電力への石炭火力の早期廃止及び再生可能エネルギーの導入拡大の株主提案を求めてきました。
 このたび、都は、株主提案を行いはしたんですけれども、その筆頭提案は、運転可能な休停止発電所の再稼働や試運転開始予定の発電所の確実な稼働です。これは、柏崎刈羽原発の再稼働や横須賀石炭火力の稼働を求めるものではありませんか。
 先日のG7気候・エネルギー・環境大臣会合でも合意されたばかりの脱石炭と二〇三五年電力部門の脱炭素化にも反するものであり、撤回すべきです。
 二〇三〇年カーボンハーフに向けて必須なのは、電力消費量の大幅な抑制であり、東京電力に求めるべきは、石炭火力の早期廃止と強力な再生可能エネルギーの導入拡大です。これまでのような国に判断を委ねる姿勢を脱して、都としての責任ある回答を求めます。
 最後に、ジェンダー平等、人権政策として、男女混合名簿の全校での導入について質問します。
 三月末に更新された東京都男女平等参画推進総合計画では、無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスへの取組が重視され、学校教育の場からのジェンダー平等意識の醸成は必須です。また、人権尊重条例の観点からも、多様な性自認に配慮し尊重する混合名簿への転換が急がれます。
 昨年九月に私が行った調査では、都内全区市町村立小中学校の出席簿の混合名簿実施率は、小学校は九割、中学校は六割でした。今年に入って少し増えているようです。
 実は、二〇〇二年男女平等参画のための東京都行動計画では、混合名簿の導入の推進、全校での導入を掲げていました。ところが、都教委は、二〇〇四年、各市区町村教育委員会に対して、男らしさや女らしさを全て否定するような誤った考え方としてのジェンダーフリーに基づく混合名簿を作成することはあってはならないと通知し、その後の行動計画から男女混合名簿を削除したという経過があります。
 ジェンダーバックラッシュによって滞った年月を真摯に受け止め、二十年前に掲げた男女混合名簿の全校での導入に向けた基本的な考え方と具体的な方針を示してください。
 再質問を留保して、質問を終わります。(拍手)
   〔教育長浜佳葉子君登壇〕

○教育長(浜佳葉子君) 漢人あきこ議員の一般質問にお答えいたします。
 学校における出席簿等の名簿についてでございますが、男女平等教育の推進に向け、性別による無意識の思い込みの解消が必要でございます。
 都教育委員会は、本年四月に、都内全公立学校の教員に配布した指導資料人権教育プログラムに、男女混合名簿について記載するとともに、五月には、都内公立学校の校長を対象とした研修会等で混合名簿を使用するなど、男女で分ける必然性がない場合の教育活動を適切に見直していくことの重要性等について周知をいたしました。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、小金井三・四・一号線及び小金井三・四・一一号線ほかの自然環境についてでございますが、これらの路線は、貴重な自然が残る国分寺崖線や野川と交差しているため、その整備に当たっては、現地の地形状況や景観を踏まえた検討が必要でございます。
 このうち、小金井三・四・一一号線ほかにつきましては、環境概況調査や地質調査を実施しておりまして、その結果を基に、現在、自然環境や景観に配慮した道路構造等の検討を進めているところでございます。
 次に、環境概況調査等を踏まえた見解についてでございますが、小金井三・四・一一号線ほかについては、周辺の動植物の生息、生育状況等を把握するための環境概況調査を実施し、昨年十一月に調査報告書を取りまとめております。
 本報告書では、現地調査により希少種をはじめとする動植物が確認されていることを受け、本路線の整備により生じる影響及びその範囲等について考察を行い、今後実施すべきモニタリング調査の計画案を示しております。
 現在、本路線の事業化に向けまして、報告書の内容も踏まえ、自然環境や景観に配慮した道路構造及び必要な保全対策等について検討を進めているところでございます。
 次に、二路線の整備についてでございますが、この二路線は、第四次事業化計画において優先整備路線に位置づけられておりまして、武蔵野公園などの広域避難場所へのアクセス向上や、生活道路への通過交通抑制による地域の安全性向上などに資する重要な路線でございます。
 このうち、小金井三・四・一一号線ほかでは、小金井市等の意見も踏まえ、事業の目的や整備効果等を広く周知するため、これまで意見交換会やオープンハウス等を開催してまいりました。また、環境概況調査の概要等をまとめた広報紙を小金井市内の全戸に配布いたしました。
 この二路線について様々な意見があることは承知しております。引き続き、事業化に向けまして、市民の皆様との意見交換を行うなど、丁寧に対応してまいります。
 最後に、武蔵野公園の整備と維持管理についてでございますが、武蔵野公園は広域避難場所に指定されており、防災公園としての整備を着実に進めることが重要でございます。
 現在、避難者に情報提供を行う園内放送設備や、停電時にも点灯する照明設備の設置工事を進めておりまして、自然環境に配慮するとともに、利用者等に丁寧に説明しながら取り組んでまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、焼却施設設置に当たっての住民意見についてでございますが、産業廃棄物の処理については、事業者が自らの責任で行うこととされており、処理施設の整備についても民間主体で行われてございます。
 廃棄物処理法では、こうした処理施設の設置により周辺地域の生活環境に支障が生じることがないよう、許可基準において、生活環境の保全等について適正な配慮がなされるものであることが定められてございます。
 檜原村で計画されている産業廃棄物の焼却施設について、村民から反対意見があることは認識してございます。
 今後、法に定められた手続にのっとりまして、許可要件への適合について、公正かつ厳正に審査を実施してまいります。
 次に、審査に当たっての調査検討についてでございますが、廃棄物処理施設の設置許可の手続におきましては、事業者の申請書や生活環境影響調査書を告示、縦覧するとともに、生活環境保全上の意見について、地元自治体からの聴取や、利害関係者は意見書を提出できることが定められてございます。
 また、審査に当たっては、生活環境の保全に関する専門家の意見を聞くことが定められてございます。
 檜原村で計画されている施設については、四月十八日に告示し、四月十九日から五月十八日まで縦覧した後、六月一日まで利害関係者からの意見書を受け付けました。
 今後、住民等から提出された意見を含め、許可要件に適合しているかについて、専門家の意見を聞きながら、公正かつ厳正に、透明性の高い審査を実施してまいります。
 次に、東京電力への株主提案についてでございますが、今夏、今冬における厳しい電力需給が想定される中、この危機を乗り越え、都民、事業者の生活、経営を守ることに全力で取り組む必要がございます。
 このため、都は、脱炭素化の視点も踏まえた電力の安定供給の確保に向け、東京電力に対して株主提案を実施いたしました。
 電源構成等のエネルギー政策の在り方につきましては、国レベルで議論、検討がなされるべきものでございます。
 都は、都民の安全・安心な生活が確保されるよう、電力の安定供給に向け、運転可能な休停止発電所の再稼働等による電源確保を求めてまいります。
 最後に、カーボンハーフに向けた取組についてでございますが、二〇五〇年CO2排出実質ゼロの実現に向け、マイルストーンとなる二〇三〇年までの行動がとりわけ重要でございます。
 このため、都は、東京電力に対し、電力の安定供給の確保に加え、再エネ電源及び利用の最大化に向けた電力系統の増強等についても株主提案を実施いたしました。
 電源構成等のエネルギー政策の在り方については、国レベルで議論、検討がなされるべきものでございます。
 都は、二〇三〇年カーボンハーフの実現に向け、建物や自動車のゼロエミッション化、再生可能エネルギーの利用拡大等の取組を一層加速させてまいります。
   〔九番漢人あきこ君登壇〕

○九番(漢人あきこ君) 都市計画道路小金井二路線について再質問します。
 知事、ご答弁いただけなかったの、大変残念です。丁寧な対応をしていくといいながら、この一般質問のこの場でのご答弁もいただけないというのは、あまりにも小金井市民をばかにしている行為だというふうにいわざるを得ません。
 この間、この道路の問題について、私、環境・建設委員会あるいは文書質問を通していろいろ確認をしてまいりました。道路の必要性については議論されてきたかもしれませんけれども、その前提となるこの地域の環境については、選定過程でもほとんど議論がされていないことが分かりました。
 知事は、本日私が申し上げたような、この道路予定地域一帯に対しての認識を持っていらっしゃいますか。この地域は、先ほどいった、都内唯一であることだけではありません。全国でも類のない、都市部における、市街地における、市民参加による自然再生事業が成功している、とても貴重な地域なんです。そこを、東京都が実行者として行っているにもかかわらず、それを壊してしまうようなことを今行おうとしています。
 道路建設なのか、環境保全なのか、大きな岐路が問われています。とはいっても、ここで知事に、ここで事業を中止すべきといっても、先ほどの答弁は変わらないと思います。
 しかし、この自然環境についての認識だけは、しっかりとここでご答弁をいただきたい。それがなければ、小金井市民としても、この問題についてしっかりと向き合うことができません。
 また、知事は、現地視察をするということも、かつて約束されました。それも含めてしっかりと、小金井のこの現状についてご答弁をいただきたいと思います。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 小金井の二路線について再質問がございました。
 先ほど答弁したとおり、この二路線については、貴重な自然が残る国分寺崖線や野川と交差し、また、様々な意見があることは承知しております。
 都といたしましては、引き続き、事業化に向けまして、自然環境や景観に配慮しながら検討を進めるとともに、市民の皆様との意見交換を行うなど、丁寧に対応してまいります。

○議長(三宅しげき君) 以上をもって質問は終わりました。

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