令和四年東京都議会会議録第十号

   午後六時五分開議
○副議長(本橋ひろたか君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十二番斉藤りえさん。
   〔三十二番斉藤りえ君登壇〕

○三十二番(斉藤りえ君) 東京都議会立憲民主党の斉藤りえです。
 初めに、デフリンピック招致について伺います。
 ブラジルのカシアスドスルで開催されていた夏季デフリンピック競技大会が、五月十五日に閉会しました。
 日本は代表選手百四十九名を派遣しましたが、新型コロナウイルス感染症の陽性者が、五月十日時点で計十一名確認され、十一日以降の全競技での試合を全て出場辞退するということになりました。当事者、関係者にとっては大変厳しい決断で、まさに断腸の思いであったと思います。
 私も、この結果は極めて残念でありますが、この悔しさをばねにして、今後の飛躍を期待したいと思います。
 デフリンピックに関しては、次回、二〇二五年大会を、この日本で、この東京で開催してほしいという強い期待、強い希望が寄せられています。次回大会の開催地は、九月にウィーンで開かれる国際ろう者スポーツ委員会の総会で決定する予定ですが、それまでに開催都市としての意思が求められます。
 小池知事は、二〇二〇年七月の都知事選挙において、デフリンピックなど、障害者スポーツ大会の東京開催推進を公約で掲げ、先日の所信でも、招致主体たる団体を積極的に応援すると表明されました。
 私は、東京都が招致団体とも手を携えながら、東京招致を実現し、大会が成功することを切に願うものですが、デフリンピック大会の東京開催について、知事の見解をお伺いします。
 東京でのデフリンピック開催に向けては、多くの課題があると感じています。特に課題なのは、デフリンピックやデフスポーツのことが、ほとんど知られていないということです。
 東京都の二〇二一年十月の調査では、パラリンピックの認知度が八八・四%であったのに対し、デフリンピックは、わずか一〇・四%でした。デフスポーツをたくさんの人に知っていただくことは大切な取組の一つだと考えています。
 東京都として、デフスポーツの普及にもしっかりと取り組み、ろう者やろう文化への理解を深めていくことにつなげていくことが重要と考えますが、見解をお伺いします。
 次に、情報コミュニケーションについて伺います。
 私は、昨年十月、第三回定例会で手話言語条例の制定などを質問しましたが、これに対して東京都は、障害者差別解消条例に位置づけているという答弁でした。
 しかし、その後、都議会各会派の皆様のご尽力によって、議員提出議案として検討されてきたことは、うれしくもあり、感謝を申し上げたいと思います。
 世の中には、私のように、耳の聞こえない人がいるということをもっと広く知ってほしいと思いますし、できれば、東京都庁など、公的機関では、積極的に合理的な配慮をしていただければと思います。
 例えば、聴覚障害者の人が、東京都のホームページで報道発表資料を見ても、その問合せ先には電話番号しか記載されていません。もしメールアドレスが記載されていれば、すぐに確認したいことでも、問合せがしやすくなると思います。多様な障害者がアクセスしやすい都庁の情報提供について、見解をお伺いします。
 私は、五月に市川市にある聴覚特別支援学校を視察しましたが、そこでは、宿舎のドアやお風呂や洗面台、トイレの横など、様々な場所にライトが点滅する機器が設置されていました。ノックの合図を光で知らせたり、緊急事態を知らせるライトです。点滅パターンや光の色などを加えれば、より多くの情報を伝達することも可能となり、私は、こうした機器の設置、あるいは貸出しサービスのようなことが広まることを期待しています。
 私ごとながら、先日、私はコロナに感染し、都立病院に入院し、二週間近くを個室で過ごしました。その間、看護師さんが部屋に入ってくる際、ドアをゆっくり開けるなどの配慮をしてくださいましたが、それに気づかず、現れる看護師さんに驚いたことがありました。
 私の場合は大丈夫でしたが、着替え中であったり、プライバシーへの配慮は、聴覚障害者、あるいは耳が遠くなられた高齢者の方々などにも求められると思います。
 そこで、聴覚障害者などに対する配慮について、都立病院の取組をお伺いします。
 また、これも民間病院で経験したことですが、体が急に痛くなり、病院に連絡し、議場や委員会で使用している音声アプリのUDトークや筆談ボードを使っての診察をお願いしたところ、手話通訳者を同行していただけないと診療できないと断られたことがありました。
 私は、障害のある人が受診しやすくなるよう、民間病院に対しても周知や理解を深めていく支えを求めるものですが、見解をお伺いします。
 電車に乗っていた際も、困ったことが起こります。先日、乗っていた電車が突然止まりました。止まっていることは、乗る前であれば、改札前の人だかりに気づきますが、乗っているときはなかなか気づきません。
 耳が聞こえる方は、車内放送によって知ることができるのでしょうが、聴覚障害者は、車内の掲示板を常に見ているわけではないので、気づきません。また、乗務員の方がお話しされている車内放送の内容も知ることができません。緊急の場合、情報伝達に時間差があっては逃げ遅れる可能性もあります。
 都営地下鉄の車両では、車内の液晶モニターを使うなどして、多国語情報も含めて情報発信しているようですが、視覚的にも注意を引く工夫を凝らすとともに、情報量や迅速さでも格差のない取組をお願いしたいと思います。
 都営地下鉄の車内で、聴覚障害者の乗客に対してどのように情報を伝達しているのか、今後の対応も含めまして、見解をお伺いします。
 ほかにも、地震などでエレベーターに閉じ込められた場合、エレベーターの中には、受話器のマークがついたボタンがありますが、このボタンを押しても、対応していただいているのか、いつ頃復旧できるのか、私たちは知ることができません。
 こうした事例はたくさんあると思いますので、ぜひ、聴覚障害や言語障害のある方々などが抱える困り事を調べていただきたいと思います。
 また、情報の伝え方は様々で、外国人に対しては、易しい日本語、視覚障害者の方には、テキストの読み上げ機能、学習障害の方、例えば俳優のトム・クルーズさんも公言しているディスレクシア、文字の読み書きが難しい障害を抱える人に対しては、絵で伝えるという方法があります。
 当事者団体などの意見を聞きながら、多様な情報コミュニケーションの強化に向けて積極的に取り組んでいくべきだと考えますが、見解をお伺いします。
 私がこのように一般質問できるのも、文章を読み上げるアプリがあるからです。一方で、私は、ふだん、相手の口元を見て、話の内容を読み取りますが、今では、みんながマスクをしているため、口元が見えず、苦労をしています。
 私に限らず、障害者の方々は、様々な苦労や困難を抱えていますが、私は、それを技術力の面でも克服していくような取組を大いに期待しています。
 そこで、私は、障害者からのお困り事を酌み上げ、それを製品やサービスの開発に生かすなど、社会課題解決型の事業を積極的に支援し、障害者の抱える苦労や困難の解決に向け取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いします。
 障害者の抱える苦労や困難の解決のためには、ハード面だけでなく、ソフト面での取組も大変重要です。今後とも、心のバリアフリーが進むことを大いに期待し、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 斉藤りえ議員の一般質問にお答えいたします。
 デフリンピックについてのご質問であります。
 デフリンピックは、聴覚障害者による総合的な国際大会であり、聴覚障害者のスポーツ振興や社会参画の促進に寄与してきました。あわせて、聞こえる人と聞こえない人の交流が進み、多様性の大切さを発信する機会ともなります。
 東京での開催に当たりましては、競技団体はもとより、国など様々な関係者の協力が不可欠であります。
 都といたしましても、デフリンピックの招致主体である全日本ろうあ連盟を、関係者と密に連携しながら、積極的に応援をいたします。
 今後もパラスポーツの一層の発展とともに、共生社会の実現につながるよう取り組んでまいります。
 なお、その他の質問につきましては、関係局長から答弁をいたします。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) デフスポーツの普及啓発についてでございます。
 東京二〇二〇大会を契機に高まったパラスポーツへの関心や機運をさらに高めていくことは重要でございます。
 パラスポーツの一つにデフスポーツがあり、都はこれまで、障害者スポーツのポータルサイトでデフリンピック大会の記事を掲載するほか、参加体験型イベント、チャレスポTOKYOでのパネル展示等を通じて、広く情報発信を行ってまいりました。
 また、特別支援学校活用促進事業において、デフスポーツの体験教室を実施してきました。
 今後とも、こうした取組を通じてデフスポーツの普及啓発を図り、多様性に富んだ社会の実現を目指してまいります。
   〔政策企画局長野間達也君登壇〕

○政策企画局長(野間達也君) 聴覚障害者に向けた情報提供についてでございますが、障害の有無にかかわらず、誰もが情報を得やすい環境を整備することは重要でございます。
 都のホームページにおいては、東京都公式ホームページ作成に関する統一基準等に基づき、ウェブアクセシビリティーの向上に努めてまいりました。
 具体的には、ホームページの問合せ先について、ページにメールアドレス等を記載するか、これらの情報が掲載されたページへのリンクを張ることとしてございます。報道発表資料につきましても同様の設定となっております。
 今後とも、各局に対して統一基準等の徹底を図るとともに、アクセシビリティーに配慮し、誰もが使いやすいホームページとなるように工夫してまいります。
   〔病院経営本部長西山智之君登壇〕

○病院経営本部長(西山智之君) 都立病院の聴覚障害者への配慮についてでございますが、診療に当たっては、患者が配慮してほしいことなど、一人一人の状況や希望を電子カルテに記載して、関係する職員で共有するなど、様々な取組を行っています。
 具体的には、職員が病室に入る際は、ペンライトやカーテンを揺らすなどの合図をして、患者の返事を確認してからカーテンを開けるなどの配慮を行っております。
 また、病室の入り口への人感センサー付ライトの設置や、患者の携帯電話や病院が貸し出したPHSへ連絡し、振動や光の点滅で職員の入室を知らせる工夫も行ってございます。
 今後とも、聴覚に障害がある患者が安心して療養できる環境を整えてまいります。
   〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、医療機関での障害者への対応についてであります。
 都は、障害者差別解消条例に基づき、障害者への不当な差別的取扱いの禁止や、過重な負担のない範囲での合理的配慮の提供を事業者に義務づけており、ホームページやパンフレットなど、様々な媒体により広く普及啓発をしております。
 医療機関に対しましては、障害者差別解消法に基づく国のガイドラインを周知するとともに、都の病院管理の手引に、障害者への理解促進等に関する項目を設け、適切な運営を求めているところです。
 また、医療従事者に対しても、研修会の場を通じ、法や条例の趣旨などの周知を図っており、今後とも障害者への理解が進むよう働きかけてまいります。
 次に、障害者の情報コミュニケーションについてであります。
 都は、障害特性に応じ、意思疎通を支援する多様なデジタル機器の情報を広く発信するとともに、地域での相談支援体制の強化を図るため、区市町村の職員を対象に、最新機器等に関する研修などを実施しております。
 都庁舎や事業所では、聴覚障害者への対応として、タブレット端末等を活用し、文字情報や遠隔手話通訳により、窓口対応等を可能とする環境整備などを進めております。
 今後とも、様々な障害所団体等の意見も聞きながら、障害者の情報コミュニケーションに関する取組を進めてまいります。
   〔交通局長武市玲子君登壇〕

○交通局長(武市玲子君) 聴覚に障害のあるお客様に対する都営地下鉄車内での情報提供についてでございますが、都営地下鉄では、行き先や次の駅等を案内する車内表示器を全車両に設置しており、列車の運転を見合せた場合などには、その理由や当該列車の状況等につきまして、多言語による文字情報で提供しております。
 また、お客様に必要な情報をより分かりやすく伝えるため、車両の更新に合わせ、表示器を視認性の高い液晶モニターに順次変更しております。
 さらに、お客様が、スマートフォン等を通じ、遅延の状況などを確認できるよう、ツイッターや都営交通アプリなどで随時運行情報を提供しております。
 引き続き、聴覚に障害のあるお客様を含め、誰もが安心して利用できるよう、情報発信の充実に努めてまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 障害者の課題解決に役立つ製品開発についてでございますが、中小企業が、障害者の困難の克服につながる製品や技術の開発を進めることは重要でございます。
 都は、中小企業が大企業や大学等と連携し、障害を持つ方の課題の解決に結びつく製品などを開発する取組に必要な経費に助成をしております。
 また、産業技術研究センターにおきまして、技術開発の相談や商品の性能評価などの支援を行っているところでございます。
 こうした取組によりまして、引き続き、障害者のための製品や技術の開発に取り組む中小企業を後押ししてまいります。

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